説明

混合樹脂発泡粒子の製造方法

【課題】ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する、型内成形に好適な混合樹脂発泡粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂からなる混合樹脂粒子を、発泡剤を使用して発泡させる混合樹脂発泡粒子の製造方法である。混合樹脂粒子は、特定組成を有し、ポリオレフィン系樹脂からなる連続相中にポリ乳酸系樹脂からなる分散相が分散した構造を有する。混合樹脂粒子の断面においては、分散相が平均粒径0.350μm以下で分散されており、かつ断面積100μm2あたりに分散された粒径0.700μmを超える上記分散相の数が6.0個以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内成形に用いられる混合樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリスチレン樹脂等の汎用樹脂からなる発泡体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性に優れていることから、多分野にわたって使用されてきた。近年、地球環境に対する意識が高まっており、石油資源の枯渇などの環境問題がクローズアップされる中、従来の石油資源を原料とする上記の汎用樹脂に変わって、カーボンニュートラルな材料としてポリ乳酸が注目されている。しかし、ポリ乳酸は、汎用樹脂と比べて、物性、特に耐熱性などの観点から改善すべき課題があり、価格の面でも高価なものであることが実用化の妨げになっている。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られ、カーボンニュートラルの考え方から環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸系樹脂は、環境に優しい植物由来の発泡用汎用樹脂として用いられることが期待されており、ポリ乳酸系樹脂を原料とする発泡体の研究が行われている。また、上述の課題を受けてポリ乳酸系樹脂を有効に活用するために、ポリオレフィン系樹脂を配合した検討が様々な分野で行われている。
具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを配合し、押出発泡された発泡体(特許文献1参照)及びポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを配合した樹脂組成物(特許文献2参照)が開発されている。
【0004】
ところで、発泡粒子は、型内成形などにより形状的な制約を受けずに所望の形状の発泡体を製造することができ、軽量性、緩衝性、及び断熱性などの目的に応じた物性設計も容易であるため実用性が高い。そのため、ポリ乳酸を有効に配合した発泡粒子の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/083705号パンフレット
【特許文献2】特開2007−277444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリ乳酸を配合した発泡粒子においては、押出発泡成形とは異なり、該発泡粒子を得る際の加熱発泡工程における水の存在によってポリ乳酸が加水分解するおそれがある。その結果、得られる発泡粒子の物性及び型内成形性が低下するおそれがある。更に、上記発泡粒子を用いて水蒸気を加熱媒体とする型内成形により発泡粒子成形体を得ようとすると、水の存在下でポリ乳酸の加水分解が起こり、型内成形性が更に悪化したり、得られる発泡粒子成形体の収縮率が大きくなったり、機械的物性が低下したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであって、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する、型内成形に好適な混合樹脂発泡粒子の製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂からなる混合樹脂粒子を、発泡剤を使用して発泡させる混合樹脂発泡粒子の製造方法であって、
上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)とを重量比(A/B)80/20〜60/40で含有し、上記ポリオレフィン系樹脂からなる連続相中に上記ポリ乳酸系樹脂からなる分散相が分散した構造を有しており、
上記混合樹脂粒子の断面においては、上記分散相が平均粒径0.350μm以下で分散されており、かつ断面積100μm2あたりに分散された粒径0.700μmを超える上記分散相の数が6.0個以下であることを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の混合樹脂発泡粒子の製造方法においては、上記のように特定の混合樹脂粒子を用いて混合樹脂発泡粒子を製造している。
即ち、特定の配合割合でポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有し、上記ポリオレフィン系樹脂からなる連続相中に上記ポリ乳酸系樹脂からなる分散相が分散した構造を有する上記混合樹脂粒子を採用している。さらに、上記分散相が平均分散径0.350μm以下で分散されており、かつ断面積100μm2あたりに分散された粒径0.700μmを超える上記分散相の数が6.0個以下である上記混合樹脂粒子を採用している。そのため、上記混合樹脂粒子においては、上記ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相を上記ポリオレフィン系樹脂からなる上記連続相が包含しており、上記ポリ乳酸系樹脂は、比較的小さな分散相として上記ポリオレフィン系樹脂に取り囲まれる。
【0010】
したがって、上記混合樹脂粒子に発泡剤を含有させてなる上記発泡性混合樹脂粒子を発泡させても、上記ポリ乳酸系樹脂は外部に露出し難くなり、発泡時に水分と接触する確率を小さくすることができる。そのため、上記ポリ乳酸系樹脂の加水分解を抑制することが可能になる。
さらに、発泡後に得られる上記混合樹脂発泡粒子は、内部に気泡を含有するが、該気泡に上記ポリ乳酸系樹脂が露出する確率が小さくなる。そのため、型内成形時における上記ポリ乳酸系樹脂の加水分解をも抑制することができる。
したがって、成形性の悪化及び収縮率の増大を抑制し、型内成形においても機械的物性の優れた発泡粒子成形体の製造が可能になる。
このように、本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する、型内成形に好適な混合樹脂発泡粒子の製造方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明の製造方法によって得られた混合樹脂発泡粒子においては、上記ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相が上記混合樹脂発泡粒子の表面に露出し難く、さらに上記混合樹脂発泡粒子が包含する気泡にも露出し難い。それ故、上記ポリ乳酸系樹脂の加水分解が抑制され、上記混合樹脂発泡粒子は、上述のごとく型内成形に好適なものになる。
【0012】
また、上記混合樹脂発泡粒子を型内成形すると発泡粒子成形体を得ることができる。この場合には、上述のごとく型内成形時におけるポリ乳酸の加水分解が抑制される。したがって、上記発泡粒子成形体は、優れた寸法安定性、耐久性、及び機械的物性を示すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1にかかる、混合樹脂粒子断面のTEM写真(倍率:10000倍)を示す写真代用図。
【図2】実施例3にかかる、混合樹脂粒子断面のTEM写真(倍率:10000倍)を示す写真代用図。
【図3】実施例5にかかる、混合樹脂粒子断面のTEM写真(倍率:10000倍)を示す写真代用図。
【図4】実施例6にかかる、混合樹脂粒子断面のTEM写真(倍率:10000倍)を示す写真代用図。
【図5】比較例1にかかる、混合樹脂粒子断面のTEM写真(倍率:10000倍)を示す写真代用図。
【図6】実施例1にかかる、所定の押出方向に押出して作製されたストランド状の混合樹脂粒子を示す説明図(a)、混合樹脂粒子を押出方向と垂直な方向において切断した状態を示す説明図(b)。
【図7】実施例1にかかる、発泡粒子のDSC曲線に基づく、混合樹脂発泡粒子の融解熱量の測定方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリ乳酸は、エステル結合による高分子量体であり、水の存在下で加水分解が起こり易い樹脂である。したがって、型内成形可能な発泡粒子を得るためには、水分の影響をできるだけ排除する必要があり、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との混合樹脂中のモルフォロジーを制御する必要がある。
本発明においては、樹脂粒子において上述のごとくポリオレフィン系樹脂を海構造(連続相)とし、ポリ乳酸系樹脂が島構造(分散相)となる特定のモルフォロジーを形成することにより、該樹脂粒子の発泡後においても良好な特性を示す発泡粒子が得られる。
即ち、ポリ乳酸系樹脂をポリオレフィン系樹脂で包むことにより、外部からの水の影響を極力少なくすることができるため、上記のごとく発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を製造する際、更には製造後に得られる発泡粒子において、基材樹脂中のポリ乳酸系樹脂の加水分解を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂を含有する混合樹脂粒子に発泡剤が含有されてなる発泡性混合樹脂粒子を発泡させて、上記混合樹脂発泡粒子を得る。
具体的には、例えば上記混合樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒及び物理発泡剤と共に分散させて加熱したり、或いは上記混合樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に分散させて加熱し、次いで物理発泡剤を上記耐圧容器内へ圧入したりすることにより、上記混合樹脂粒子に上記発泡剤を含浸させて上記発泡性混合樹脂粒子を得る。次いで、該発泡性混合樹脂粒子を上記耐圧容器内よりも低い圧力下に放出することにより上記発泡性混合樹脂粒子を発泡させて混合樹脂発泡粒子を得ることができる。
このように、上記混合樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に発泡剤存在下かつ加熱条件下で分散させて得られる発泡性混合樹脂粒子を、分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して上記混合樹脂発泡粒子を得ることができる(請求項2)。
【0016】
また、例えば耐圧容器内に上記混合樹脂粒子を充填し、物理発泡剤を上記耐圧容器内に圧入することにより上記混合樹脂粒子に上記発泡剤を含浸させて発泡性混合樹脂粒子を作製し、該発泡性混合樹脂粒子を予備発泡機に投入し、水蒸気、熱風、或いはそれらの混合物などの加熱媒体にて加熱することにより上記発泡性混合樹脂粒子を発泡させて混合樹脂発泡粒子を得ることも考えられる。
このように、発泡剤を使用して上記混合樹脂粒子から上記混合樹脂発泡粒子を得る方法としては本発明の所期の目的を妨げない範囲において周知の方法を採用することができる。
【0017】
上記のごとくポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との混合樹脂粒子を用い発泡粒子を製造すると、発泡時の延伸によりポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂が三次元的に引き伸ばされるとともに気泡を形成する。形成される気泡の気泡壁厚みは、発泡倍率や気泡数にもよるが、通常は0.5〜20μmである。
【0018】
本発明においては、上記混合樹脂発泡粒子の作製にあたって、ポリオレフィン系樹脂からなる連続相中に上記ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相が平均粒径0.350μm以下で分散し、かつ断面積100μm2あたりに分散した粒径0.700μmを超える上記分散相の数が6.0個以下である上記混合樹脂粒子を用いている。
粒径の大きな上記分散相の数が多すぎると、発泡により上記混合樹脂発泡粒子の気泡壁が形成する際に、気泡壁の場所によってはその厚み方向にポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相のみが存在する箇所が増え、ポリ乳酸系樹脂が発泡粒子の表面及び気泡壁に露出する確率が高くなるおそれがある。なお、本発明により得られる混合樹脂発泡粒子においては、単にポリ乳酸系樹脂が混合樹脂発泡粒子の表面及び気泡壁に露出しないようにするだけではなく、後工程の型内成形における混合樹脂発泡粒子の二次発泡などを充分に考慮して上記分散相の状態が決められている。
このような観点から、粒径0.700μmを超える上記分散相の数は上述のごとく6.0(個/100μm2)以下が好ましく、より好ましくは5.0(個/100μm2)以下、さらに好ましくは4.0(個/100μm2)以下がよい。
さらに、粒径0.500μmを超える分散相の数は15.0(個/100μm2)以下が好ましく、10.0(個/100μm2)以下がより好ましい。
【0019】
また、上記分散相の平均粒径が大きすぎる場合も同様に、上記分散相のみが気泡壁厚方向に存在する箇所が増え、ポリ乳酸系樹脂が露出する確率が高くなるおそれがある。この観点から上記分散相の平均粒径は上述のごとく0.350μm以下であることが好ましい。
【0020】
また、発泡粒子を製造する際の発泡温度において、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂の粘度、張力は必ずしも一致しない。ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相の平均粒径が上記範囲外の場合には、発泡時における両者の粘度、張力の差異により配向延伸が異なることから、気泡膜が破けるなど独立気泡率低下の原因になるおそれがある。
【0021】
更に、混合樹脂発泡粒子を型内成形する際には、一般に飽和蒸気を加熱媒体として金型内に供給して加熱するが、ポリ乳酸系樹脂がポリオレフィン系樹脂に包囲されていないと、加熱成形時にも発泡粒子の連泡化の原因になるため、上記のようにポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相の粒径を調整する必要がある。
即ち、粒径が極端に大きな分散相が少なく、かつ、該分散相全体の平均粒径が小さい方が、発泡により気泡壁を形成した際に、ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相がポリオレフィン系樹脂からなる上記連続相に充分に被覆されて、水(蒸気等を含む)からの影響を少なくし、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を抑制することができる。
更には、このような分散状態を形成することで、上記混合樹脂発泡粒子を成形してなる発泡粒子成形体においても、水分の影響を小さくすることができ、製品としての耐久性向上が期待できる。
また、混練設備や混練工程等を含めた生産性と成形品製造の安定性という観点から上記分散相の平均粒径は0.05〜0.350μmが好ましく、0.05〜0.300μmがより好ましい。
【0022】
上記混合樹脂発泡粒子を得るためには、まず、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂から構成される混合樹脂粒子を作製する。
上記混合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを溶融混練し、押出すことによって製造することができる。
上述の海島構造となるモルフォロジーは、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂の基材樹脂の溶融混練時に制御することが可能である。溶融混練する際の、溶融した樹脂の粘度や体積分率がモルフォロジーの形成に影響を及ぼす。
【0023】
本発明において、上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)とを重量比(A/B)80/20〜60/40で含有する。
上記ポリオレフィン系樹脂の重量比が60未満で、上記ポリ乳酸系樹脂の重量比が40を超える場合には、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂の溶融粘度や加工条件等を制御しても、ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相の平均粒子径を小さく制御したり、断面積100μm2あたりにおける粒径0.700μmを超える上記分散相の数を少なく制御したりすることが困難になるおそれがある。さらにこの場合には、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂の溶融粘度や加工条件等によっては、ポリ乳酸系樹脂及びポリオレフィン系樹脂がそれぞれ連続相を形成する共連続構造や、ポリ乳酸系樹脂が連続相でポリオレフィン系樹脂が分散相となるモルフォロジーを形成するおそれがある。
一方、上記ポリオレフィン系樹脂の重量比が80を超え、上記ポリ乳酸系樹脂の重量比が20未満の場合には、ポリ乳酸系樹脂の含有量が少なすぎて、植物由来樹脂であるポリ乳酸系樹脂を有効利用した環境対応型の発泡体に十分に対応できなくなる。
このような観点から、本発明において上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)との重量比(A/B)は、上述のごとく80/20〜60/40であり、75/25〜62/38であることが好ましい。
【0024】
また、一般に、異種ポリマー同士(エラストマー/ポリマー)の混練では、得られる分散成分の最小分散粒子径Dは下記の式(1)で与えられる。式(1)において、C:定数、μd:分散相成分の溶融粘度、μm:連続相成分の溶融粘度、G:せん断速度、f:分散粒子の体積分率である。
【0025】
【数1】

【0026】
ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂の非相溶系において、ポリ乳酸系樹脂を分散相成分としてポリオレフィン系樹脂の連続相中に細かく分散した状態とするには、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との溶融粘度比(μPO/μPLA)を小さくすることが好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂からなる分散相の粒径を小さくするには、混練性の影響を加味すると、両溶融粘度比をできるだけ1に近づけ両樹脂の溶融粘度差をなくし、強い混練作用を付与することも好ましいと考えられる。
【0027】
また、溶融粘度比の代わりに、これと負の相関を有するメルトフローレート(MFR)の比を制御することにより、ポリ乳酸系樹脂からなる分散相の粒径を小さくすることができる。即ち、ポリ乳酸系樹脂のMFR/ポリオレフィン系樹脂のMFR(MFR比)を調整することにより、分散相の粒径を小さくすることが可能になる。
上述のMFR比は0.1〜4にすることが好ましく、より好ましくは0.3〜3がよい。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂とを押出機で溶融混練するにあたり、混練性や分散性を向上させるためには、押出機の種類やスクリュー形状等を周知技術のとおり最適化することが好ましい。上記混合樹脂粒子は、単軸押出機や二軸押出機を使用して作製することができるが、ポリ乳酸系樹脂からなる分散相の粒径を上述のごとく制御するという観点から二軸押出機を使用することが好ましい。
また、押出機での混練押出を複数回繰り返し行って、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂の分散状態を良好にさせることもできる。
【0029】
上記ポリオレフィン系樹脂からなる上記連続相中でのポリ乳酸系樹脂からなる分散相の粒径は、例えば以下のような方法により制御することができる。
即ち、二軸押出機を用いて十分なせん断を与え混練する方法、単軸押出機を用いて十分なせん断を与え混練する方法、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂との相溶性を向上させる成分を配合し、二軸押出機又は単軸押出機で混練する方法等を採用して制御することができる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂との相溶性を向上させる成分を配合して二軸押出機で混練する方法を採用することがよい。
【0030】
上述のポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸との相溶性を向上させる成分としては、スチレン系エラストマー及び/又はエポキシ基を有するエチレン系共重合体を採用することができる。これらの少なくとも一方を上記ポリオレフィン系樹脂及び上記ポリ乳酸系樹脂に加えて混合することにより、オレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂間の界面張力を下げ、相溶性を高めることができる。その結果、ポリ乳酸系樹脂からなる上記分散相の粒径を小さくすることができる。なお、これらの中でもスチレン系エラストマーが好ましい。
【0031】
したがって、上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)との合計量100重量部あたりにスチレン系エラストマーを0.5〜20重量部含有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上述のように分散相の粒径が制御された海島構造への制御がより容易になる。
【0032】
スチレン系エラストマーが上記範囲内で添加されていることにより、上述の効果に加えて、上記混合樹脂発泡粒子及び該混合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体の機械的物性をより向上させることができる。この観点から、スチレン系エラストマーの含有量は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)との合計量100重量部に対して1〜10重量部であることがより好ましい。
【0033】
上記スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、SBSの二重結合を完全に水素添加したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、SBSの二重結合を部分的に水素添加したスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン(SBBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、SISの二重結合を水素添加したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)などのように、芳香族ビニル単量体単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとからなる非水素化ブロック共重合体およびその水素化物等を用いることができる。
【0034】
また、上記混合樹脂粒子中には、発泡助剤を予め添加しておくことができる。該発泡助剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、シリコーン、メタクリル酸メチル系共重合体及び架橋ポリスチレン等の高分子を採用することができる。
基材樹脂に発泡助剤を添加する場合には、発泡助剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、分散性等を考慮して通常は発泡助剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
【0035】
発泡倍率の向上及び気泡径の調整という観点から、上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂の合計量100重量部に対して、発泡助剤を0.001〜5重量部含有することが好ましい(請求項3)。
【0036】
特に、軟化状態の発泡性混合樹脂粒子を耐圧容器内から低圧域に放出して混合樹脂発泡粒子を製造する場合には、発泡剤を含浸させる上記混合樹脂粒子は、上述のごとく上記ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂の合計量100重量部に対して発泡助剤を0.001〜5重量部含有することが好ましく、該発泡助剤の含有量はより好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部がよい。
【0037】
本発明においては、加水分解し易いポリ乳酸系樹脂を配合していることから、基材樹脂に配合する添加剤としては極力親水性の物質を避け、疎水性物質を選択して添加することが好ましい。発泡助剤として疎水性発泡助剤を採用することにより、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑えながら発泡助剤としての効果が得られる。
【0038】
上記発泡助剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に好ましくは、上記発泡助剤がポリテトラフルオロエチレンであることがよい(請求項4)。
この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を十分に抑制しつつ、発泡倍率の向上及び気泡径の均一化を図ることができる。
【0039】
また、上記ポリ乳酸系樹脂は、分子鎖末端が封鎖されていることが好ましい。これにより、ポリ乳酸系樹脂の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えうる上記混合樹脂発泡粒子が得られやすくなる。更には型内成形により得られる発泡粒子成形体の耐久性が向上する。
【0040】
上記末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソイアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。
具体的には、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol 1)などの芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol P、ラインケミー社製Stabaxol P400など)、ポリ(4−4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド(例えば日清紡ケミカル(株)製カルボジライトLA-1)などが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、末端封鎖剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0041】
このように、上記ポリ乳酸系樹脂は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物から選ばれる1種以上の改質剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることが好ましい(請求項6)。
【0042】
また、上記ポリ乳酸系樹脂としては、樹脂中に乳酸に由来する単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。
上記ポリ乳酸系樹脂には、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)これら(a)〜(d)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0043】
上記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、上記(c)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、上記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0044】
次に、本発明において、上記ポリオレフィン系樹脂とは、次の(a)〜(e)のいずれかに該当する樹脂を意味する。
(a)エチレン及び、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン(以下、これらを総称して単にオレフィンという)の単独重合体。
(b)2種以上のオレフィンから選ばれる共重合体。
(c)上記オレフィン成分とスチレンなどの他のモノマー成分とからなる共重合体であって、かつ共重合体のオレフィン成分単位が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90%以上の共重合体。
(d)上記(a)、(b)、(c)の群から選ばれる2種以上の混合物。
(e)上記(a)、(b)、(c)及び(d)の群から選ばれる1種又は2種以上と、上記((a)、(b)、(c)及び(d)とは異なる他の熱可塑性樹脂又は/及び他のエラストマーとの混合樹脂組成物であって、該組成物中のオレフィン系樹脂成分が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の混合樹脂組成物。
【0045】
また、上記ポリオレフィン系樹脂とは、また、次の(f)〜(h)のいずれかに該当する樹脂であることが好ましい。
(f)プロピレン単独重合体。
(g)プロピレンと他のモノマーからなる共重合体であって、かつプロピレン成分が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である共重合体。
(h)上記(f)及び(g)の群から選ばれる1種又は2種以上と、上記(f)及び(g)とは異なる他の熱可塑性樹脂及び/又はエラストマーとの混合樹脂組成物であって、該混合樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂成分が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である混合樹脂組成物。
【0046】
上記(a)の単独重合体は、具体的には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等である。
上記(b)の共重合体は、具体的には、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体であり、これら共重合体はブロック重合体、ランダム共重合体いずれでも良い。
【0047】
上記(e)又は(h)における他の熱可塑性樹脂及びエラストマーとしては、例えば酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等がある。
【0048】
本発明において、上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体が好ましく、中でもエチレン−プロピレン共重合体がより好ましい。
【0049】
次に、上記ポリオレフィン系樹脂及び上記ポリ乳酸系樹脂を含有する上記混合樹脂粒子は、例えば次のようにして作製することができる。
まず、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂を含有する基材樹脂を押出機で該基材樹脂が十分溶融する温度以上に加熱して溶融混練する。次いで、ストランド状に押出し、該ストランド状の押出物を水没させることにより急冷した後、便宜の長さに切断するか又はストランドを便宜長さに切断後又は切断と同時に、急冷する。このようにして上記混合樹脂粒子を得ることができる。即ち、所謂、ストランドカット方式や、アンダーウォーターカット方式などの従来公知の方法にて得ることができる。
【0050】
基材樹脂から作製される上記混合樹脂粒子の1個当りの重量は、0.05〜10mgにすることが好ましく、0.1〜4mgにすることがより好ましい。
0.05mg未満の場合には、その混合樹脂粒子の製造が困難になる。一方、10mgを超える場合には、発泡剤の均一な含浸が困難になり、上記混合樹脂発泡粒子の密度分布が大きくなったり、型内成形時の充填性が悪くなるおそれがある。
上記混合樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、円筒状等を採用することができる。
【0051】
上記基材樹脂を上記のように押出機で溶融混練しストランド状等に押出して上記混合樹脂粒子を得る工程においては、基材樹脂の構成成分であるポリ乳酸系樹脂を予め乾燥させておくことが好ましい。この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制することができる。また、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制するために、ベント口付き押出機を使用して、真空吸引を行ってポリ乳酸系樹脂から水分を除去する方法も採用することができる。ポリ乳酸系樹脂の水分を除去することにより、上記混合樹脂粒子中に気泡が発生することを抑制し、押出製造時の安定性を向上させることができる。
【0052】
また、基材樹脂には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加することができる。これにより基材樹脂を着色することができ、着色された上記混合樹脂粒子を用いれば、着色された混合樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体を得ることができる。また、発泡工程時に、耐圧容器内に、混合樹脂粒子、分散媒、発泡剤を仕込む際に着色顔料又は染料を同時に添加することにより、着色された混合樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体を得ることも可能である。
着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような、顔料及び染料としては、公知のものを用いることができる。
【0053】
基材樹脂に着色顔料、染料等の添加剤を添加する場合には、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
着色顔料又は染料の添加量は着色の色によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましい。
【0054】
また、着色剤の他にも、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤等の添加剤を基材樹脂に混合することも可能である。なお、廃棄やリサイクルを想定すると、顔料及び染料等の上記添加剤を高濃度で添加することは好ましくない。
【0055】
上記混合樹脂発泡粒子は、例えば、上記混合樹脂粒子を加圧可能な密閉容器(例えば、オートクレーブ)中の水などの分散媒に分散させ、分散剤を添加し、所要量の発泡剤を圧入し加圧し所要時間加温下に撹拌して発泡剤を混合樹脂粒子に含浸させた後、水性媒体とともに一緒に内容物を容器内圧力より低圧域下に放出して発泡させることにより得られる。この放出時には容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。また、特に高発泡倍率の混合樹脂発泡粒子を得るにあたっては、上記の方法で得られた混合樹脂発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生工程を経て、加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの加圧気体により例えば0.01〜0.10MPa(G)の圧力にて加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を容器内から取り出してスチームや熱風などの加熱媒体を用いて加熱することにより、高い発泡倍率の混合樹脂発泡粒子を得ることができる(この工程を以下、二段発泡という)。
なお、発泡倍率を高くでき、型内成形性に優れ、物性の良好な発泡粒子が得られるという観点から、上記のとおり発泡性混合樹脂粒子を低圧域へ放出する発泡方法が好ましいが、発泡性混合樹脂粒子を予備発泡機により加熱発泡させる方法でも混合樹脂発泡粒子を得てもよい。
【0056】
上記混合樹脂粒子を分散させる分散媒としては、上記した水以外にも、上記混合樹脂粒子を溶解させないものであればこれを使用することができる。水以外の分散媒としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。好ましくは水がよい。
また、上記混合樹脂粒子を分散媒に分散させるに際しては、必要に応じて分散剤を分散媒に添加することができる。
上記分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを使用することもできる。
これら分散剤は、上記混合樹脂粒子100重量部あたり0.2〜2重量部使用することができる。
【0057】
上記発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水を、単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの発泡剤のなかでも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機系物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましい。より好ましくは二酸化炭素がよい。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。有機系物理発泡剤を使用する場合には、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが好ましい。
【0058】
上記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、添加剤等の配合量、目的とする混合樹脂発泡粒子の見かけ密度等に応じて適宜調整することができる。例えば物理発泡剤として二酸化炭素を用いる場合には、基材樹脂100重量部あたり0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部使用することがよい。
なお、上記基材樹脂は、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂を含有し、さらに選択成分である上述の熱可塑性エラストマー等を含有する場合には、これも含有する重合体成分全体を意味する。
【0059】
軽量性、型内成形性、及び機械的物性に優れるという観点から、上記の方法により得られる混合樹脂発泡粒子は、見かけ密度が15〜150g/Lであることが好ましく、30〜80g/Lであることがより好ましい。さらに、型内成形性をより向上できるという観点から、混合樹脂発泡粒子の平均気泡径は50〜500μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましい。
【0060】
次に、上記混合樹脂発泡粒子を用いた発泡粒子成形体の製造にあたっては、公知の型内成形方法を採用することができる。
例えば、従来公知の発泡粒子成形金型を用い、圧縮成形法、クラッキング成形法、加圧成形法、圧縮充填成形法、常圧充填成形法(例えば、特公昭46−38359号公報、特公昭51−22951号公報、特公平4−46217号公報、特公平6−22919号公報、特公平6−49795号公報等参照)などの従来公知の型内成形法を採用することができる。
【0061】
また、上記型内成形においては、必要に応じて、上述した二段発泡における操作と同様の発泡粒子内の圧力を高める操作を行い発泡粒子内の圧力を0.01〜0.10MPa(G)に調整した発泡粒子を使用することができる。
【0062】
型内成形法としては、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型のキャビティー内に発泡粒子を充填し、飽和蒸気圧が0.10〜0.38MPa(G)、好ましくは0.20〜0.30MPa(G)の水蒸気を供給して金型内で発泡粒子同士を加熱することにより膨張、融着させ、次いで得られた発泡粒子成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法や、後述する連続式の型内成形法等が挙げられる。
【0063】
また、上記型内成形法における水蒸気加熱の方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組み合わせる従来公知の方法を採用できる。特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。なお、発泡粒子型内成形時の上記0.10〜0.38MPa(G)の飽和蒸気圧は、型内成形工程において、金型内に供給される水蒸気の飽和蒸気圧の最大値である。
【0064】
また、上記発泡粒子成形体は、必要に応じて発泡粒子内の圧力を0.01〜0.10MPa(G)に調整した後、発泡粒子を通路内の上下に沿って連続的に移動するベルトによって形成される型内に連続的に供給し、水蒸気加熱領域を通過する際に飽和蒸気圧が0.10〜0.38MPa(G)の水蒸気を供給して発泡粒子を膨張、融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた発泡粒子成形体を通路内から取り出し、適宜長さに順次切断する連続式型内成形法(例えば特開平9−104026号、特開平9−104027号及び特開平10−180888号等参照)により製造することもできる。
【0065】
また、上記混合樹脂発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体の融着率は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。融着率が高い発泡粒子成形体は機械的強度、特に曲げ強度に優れる。
なお、上記融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面発泡粒子の個数に基づく材料破壊率を意味し、融着していない部分は材料破壊せず、発泡粒子の界面で剥離する。
【0066】
また、機械的物性に優れるという観点から、上記発泡粒子成形体は、密度が10〜100g/Lであることが好ましく、15〜60g/Lであることがより好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、本例の実施例について説明する。
本例においては、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する混合樹脂粒子を作製し、該混合樹脂発泡粒子を用いて混合樹脂発泡粒子を作製する。さらに混合樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製する。
【0068】
(実施例1)
内径30mmの二軸押出機により、後述の表1に示す配合比にて配合したポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び熱可塑性エラストマーをポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)1000ppmと共に混合して押出機に供給し、溶融混練した。次いで、溶融物を押出機先端に取り付けた口金の小孔からストランド状に押出し、水槽で冷却し、ストランドを重量が略2mgになるように切断し、乾燥して混合樹脂粒子を得た。
混合樹脂粒子の作製における樹脂の配合組成、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂のMFR比、混練機の種類、加工温度、発泡助剤の種類、その含有量、粒子重量、及び粒子の長さを後述の表1に示す。
【0069】
また、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、熱可塑性エラストマー、及び混合樹脂粒子についてのMFR(g/10分)を、JIS K7210(1999年)に基づき温度190℃、荷重2.16kgの試験条件にて測定した。その結果を表1に示す(ただし、表1、後述の表2及び表3において、上記試験条件とは異なる条件が記載されている場合は、表に記載の条件にしたがってMFRを測定した)。
【0070】
「TEM観察」
次に、混合樹脂粒子について、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂の分散状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
具体的には、まず、混合樹脂粒子についてエポキシ樹脂包埋を行い、混合樹脂粒子を四酸化ルテニウム(RuO4)で染色、必要に応じて四酸化オスミウム(OsO4)で染色した。次いで、染色した混合樹脂粒子についてミクロトームを用いて薄膜化片を作製し、混合樹脂粒子の断面をTEM(倍率10000倍)で観察した。その結果を図1に示す。
なお、TEM観察においては、粒子重量約2mg、長さ約2mmのストランド状の混合樹脂粒子1の押出方向Aに対する垂直断面15の中心部を、混合樹脂粒子1を押出す向きAから観察した(図6(a)及び(b)参照)。
【0071】
そして、混合樹脂粒子の断面におけるポリオレフィン系樹脂に分散されたポリ乳酸系樹脂(分散相)の平均粒子径を算出した。分散相の平均粒子径は、混合樹脂粒子の体積を二等分する断面の中心部のTEM写真から、写真上の全ての分散相の面積を画像処理により求め、その円相当径として算出した。また、TEM写真に基づいて、断面100μm2あたりにおける粒径(円相当径)0.5μmを超える分散相の数、及び粒径(円相当径)0.7μmを超える分散相の数を計測した。その結果を後述の表1に示す。
【0072】
次に、混合樹脂粒子を用いて混合樹脂発泡粒子を作製した。
具体的には、まず、上記のようにして得られた混合樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた5Lの密閉容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.004重量部、及び硫酸アルミニウム0.01重量部を添加した。次いで、撹拌下で後述の表1に示す発泡温度にまで昇温し、密閉容器内に発泡剤としての炭酸ガスを3.5MPa(G)になるまで圧入し、発泡温度で15分間保持した。その後、背圧を加えながら内容物を大気圧下に放出して表1に示す見かけ密度の混合樹脂発泡粒子を得た。なお、分散剤、界面活性剤、硫酸アルミニウムの添加量(重量部)は、混合樹脂粒子100重量部に対する量である。
混合樹脂発泡粒子の製造条件(発泡剤の種類、釜内圧力、及び発泡温度)を後述の表4に示す。
また、得られた混合樹脂発泡粒子について、その性状を以下のようにして調べた。その結果を表4に示す。
【0073】
「見かけ密度」
混合樹脂発泡粒子の見かけ密度は次のようにして測定した。
混合樹脂発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置する。次に同恒温室内にて、10日間放置した約500mlの混合樹脂発泡粒子(混合樹脂発泡粒子群の質量W1(g))を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。そして、金網等の道具の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる混合樹脂発泡粒子群の容積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた混合樹脂発泡粒子群の質量W1を容積V1で割り算(W1/V1)することにより見かけ密度を求めた。その結果を表4に示す。
【0074】
「嵩密度」
混合樹脂発泡粒子の嵩密度は以下のようにして測定した。
混合樹脂発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置する。次に同恒温室内にて、10日間放置した約500mlの混合樹脂発泡粒子(混合樹脂発泡粒子群の質量W2(g))を空のメスシリンダー中に入れて、メスシリンダーの目盛りから該混合樹脂発泡粒子群の嵩体積V2(L)を読み取り、混合樹脂発泡粒子群の質量W2(g)を嵩体積V2で割り算(W1/V1)することにより求めた。その結果を表4に示す。
【0075】
「融解熱量(ピークM)及び融解熱量(ピークH)」
混合樹脂発泡粒子の融解熱量(ピークM)及び融解熱量(ピークH)を以下のようにして測定した。
発泡粒子の融解熱量(ピークM)及び融解熱量(ピークH)は、発泡粒子1〜8mgを熱流束示差走査熱量測定法にて10℃/minの速度で220℃まで昇温して得たDSC曲線における各ピークの面積に相当し、部分面積解析法により次のように求めた。
図7に示すように得られたDSC曲線上において、温度80℃に対応するDSC曲線上の点αと、樹脂の融解終了温度Teに対応するDSC曲線上の点βとを結ぶ線分α−βを引く。次に最も低温側に観察されるピークLと、ピークLの高温側に隣接するピークMとの間の谷部(谷底)にあたるDSC曲線上の点γ1からグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記線分(α−β)と交わる点をδ1とする。更にピークMの高温側に隣接するピークHが観察される場合は、ピークMとピークMに隣接するピークHとの間の谷部(谷底)にあたるDSC曲線上の点γ2からグラフの縦軸と平行な直線を引き、上記線分α−βと交わる点をδ2とする。
このとき、吸熱ピークの熱量に相当する各ピークの面積は、ピークLにおいては、ピークLを示すDSC曲線と、線分δ1−γ1と、線分α−δ1とによって囲まれる面積S1であり、ピークMにおいては、ピークMを示すDSC曲線と、線分δ1−γ1と、線分δ2−γ2と、線分δ1−δ2とによって囲まれる面積S2であり、ピークHにおいては、ピークHを示すDSC曲線と、線分δ2−γ2と、線分δ2−βとによって囲まれる面積S3として定められる。
各ピークの熱量(融解熱量(L)、融解熱量(M)、及び融解熱量(H))J/gは、上記のように定められた各ピークの面積S1、S2、及びS3にそれぞれ基づいて熱流束示差走査熱量測定装置によって演算されて自動的に算出した。その結果を表4に示す。
【0076】
「独立気泡率」
混合樹脂発泡粒子の独立気泡率を以下のようにして測定した。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し、次に同恒温室内にて、10日間放置した嵩体積約20cm3の混合樹脂発泡粒子を測定用サンプルとし正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定する。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記の式(2)により独立気泡率を計算し、N=5の平均値で求めた。その結果を表4に示す。
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(2)
(ただし、Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm3)、Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm3)、W:発泡粒子の重量(g)、ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3
【0077】
「平均気泡径」
混合樹脂発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定した。
混合樹脂発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を2分割し、走査型電子顕微鏡にて切断面の拡大写真を撮影する。次に、写真上に発泡粒子の表面から中心付近を通り反対側の表面まで達する線分を引き、線分と交わっている気泡数を数える。そして、線分の長さ(実際の長さ)を気泡数で除して、気泡1個当たりの気泡径を求め、これを個々の混合樹脂発泡粒子の気泡径(μm)とする。この操作を混合樹脂発泡粒子10個について同様に行ない、得られる測定値の平均値を平均気泡径(μm)とする。その結果を表4に示す。
【0078】
「メルトフローレート(MFR)」
混合樹脂発泡粒子のMFR(g/10分)は、次のようにして測定した。
JIS K7210(1999年)に基づき温度190℃、荷重2.16kg試験条件にてMFRを測定した。その結果を表4に示す。なお、当然のことながら上記測定において溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が入らないようにする。また、混合樹脂発泡粒子から測定試料を調整する際には、不必要な熱及びせん断を測定試料に加えないようにして発泡粒子を真空オーブンにて加熱し脱泡したものを試料とする。その際の真空オーブンでの脱泡条件は、発泡粒子の基材樹脂の融点以上の温度、かつ減圧下とする。
【0079】
次に、混合樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。
まず、混合樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による加圧成形により型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、本加熱圧力より0.08MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表6に示す成形加熱スチーム圧力で加熱した。
【0080】
加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリプロピレンとポリ乳酸とを含有する発泡粒子成形体を得た。
このようにして得られた発泡粒子成形体について、下記の各種物性を評価し、その結果を表6に示す。
【0081】
「成形性の評価」
成形性の評価は、0.20MPa(G)から0.38MPa(G)まで0.02MPaの間隔で本加熱圧力を変えて成形を行い、後述のように発泡粒子成形体の外観、融着性、回復性を評価することにより行った。
そして、2点以上の成形圧で、外観、融着性及び回復性の全項目が「○」という評価の場合を「◎」として評価し、1点の成形圧で全項目が「○」という評価の場合を「○」として評価し、全項目を満足する成形圧がない場合を「×」として評価した。その結果を表6に示す。
【0082】
上述の外観評価は、発泡粒子成形体の表面を観察し、表面に発泡粒子の二次発泡不良による粒子間隙が目立たない場合を「○」として評価し、目立つ場合を「×」として評価することにより行った。
【0083】
また、融着性評価は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合(融着率)に基づいて行った。具体的には、発泡粒子成形体の破断面を観察し、目視により内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子数をそれぞれ計測した。次いで、内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の合計数に対する内部で破断した発泡粒子の割合を算出し、これを百分率で表して融着率(%)とした。融着率の値を表6に示す。融着性評価は、融着率が50%以上の場合を「○」として評価し、50%未満の場合を「×」として評価することにより行った。
【0084】
また、回復性評価は、成形体の厚み方向の寸法を測定して行った。
具体的には、縦約200mm、横約250mmの成形体における端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測し、成形体厚み比(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%))を求め、成形体厚み比が95%以上の場合を「○」として評価し、95%未満の場合を「×」として評価することにより行った。
【0085】
「成形体の耐久性評価」
発泡粒子成形体を温度65℃、相対湿度80%の条件下に14日間保管し、その後80℃のオーブンにて12時間乾燥させた。次いで、温度23℃、相対湿度50%の条件下に14日間保管し、JIS K6767(1999年)に準拠して圧縮応力の試験を行った。圧縮応力の測定試験は試験片のサイズを縦50mm×横50mm×厚み25mmとし、試験速度を10mm/minとして行った。そして、50%圧縮時の圧縮応力を測定し、65℃、80%RH保管前の値と保管後の値とを比較し、圧縮応力維持率(%)を求めた。圧縮応力維持率Aは、保管前の圧縮応力をB、保管後の圧縮応力をCとすると、A=C/B×100という式から算出できる。
圧縮応力維持率が95%以上の場合を「◎」として評価し、90%以上かつ95%未満の場合を「○」として評価し、90%未満の場合を「×」として評価した。その結果を表6に示す。
【0086】
「成形体密度」
また、発泡粒子成形体の嵩密度を測定した。
即ち、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体の外形寸法から嵩体積を求める。次いで該発泡粒子成形体の質量(g)を精秤する。上記のとおり求められた発泡粒子成形体の質量を嵩体積にて除し、単位換算することにより発泡粒子成形体の嵩密度(g/L)求めた。その結果を表6に示す。
【0087】
「粒子内圧」
また、発泡粒子成形体を作製する際の発泡粒子の内圧を測定した。
具体的には、型内成形直前の発泡粒子の一部(以下、発泡粒子群という)を使用して、次の操作を行うことにより求められる。
内圧が高められた型内成形直前の発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴を多数穿設した70mm×100mm程度のポリエチレン製袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温恒湿室に移動する。続いてその恒温恒湿室内の秤に乗せて重量をよみとる。この重量の測定は、上記した発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから120秒後におこなう。この時の重量をQ(g)とする。続いてその発泡粒子群の入った袋を同恒温恒湿室に10日間放置する。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過とともに気泡壁を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、10日間後では平衡に達しているので実質的にその重量は安定する。よってこの10日間後に再度その発泡粒子群の入った袋の重量を同恒温恒湿室内にて測定し、この重量をU(g)とする。続いて直ちに同恒温恒湿室内にて袋から発泡粒子群の全てを取り出して袋のみの重量を読み取るものとする。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、下記の式(3)により発泡粒子の内圧P(MPa)が計算される。なお、この内圧Pはゲージ圧に相当する。
【0088】
P=(W÷M)×R×T÷V ・・・(3)
但し、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気を採用されているので、ここでは296(K)の定数である。Vは発泡粒子群の見かけ体積から発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積を差し引いた体積(L)を意味する。
【0089】
なお、発泡粒子群の見かけ体積は、10日間後に袋から取り出された発泡粒子群の全量を直ちに同恒温恒湿室内にて23℃の水100cm3が収容されたメスシリンダー内の水に水没させた時の目盛り上昇分から、発泡粒子群の体積Y(cm3)を算出し、これをリットル(L)単位に換算することによって求められる。発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積(L)は、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)を発泡粒子をヒートプレスにて脱泡して得られる樹脂の密度(g/cm3)にて除し、単位換算して求められる。また、発泡粒子群の見かけ密度(g/cm3)は、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)を体積Y(cm3)で除すことにより求められる。
なお、以上の測定においては、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)が0.5000〜10.0000gで、かつ体積Yが50〜90cm3となる量の複数個の発泡粒子群が使用される。その結果を表6に示す。
【0090】
「従来品との圧縮物性比」
また、従来品との圧縮物性比を調べた。
具体的には、まず、ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂混合樹脂発泡粒子成形体から切断して得られた試験片(全面の表皮がカットされたもの)を使用し、JIS K6767(1999年)に準拠して圧縮応力の試験を行った。圧縮応力の測定試験は試験片のサイズを縦50mm×横50mm×厚み25mmとし、試験速度を10mm/minとして行った。得られた応力―歪線図より混合樹脂発泡粒子成形体の50%歪時の応力(Sa)を求めた。
また、ポリ乳酸系樹脂を配合せずポリプロピレン系樹脂のみを基材樹脂とする以外は、比較対象の実施例または後述の比較例と同様にして発泡粒子成形体(従来品)を作製した。次いで、同様にして上記圧縮試験を行い、従来品の50%歪時の応力(Sb)を求めた。
従来品との圧縮物性比は、混合樹脂発泡粒子成形体の50%歪時の応力(Sa)を従来品の50%歪時の応力(Sb)で除した値を百分率(Sa/Sb×100)で表すことにより求めた。したがって、従来品と混合樹脂発泡粒子成形体の50%歪時の応力は、同密度の発泡粒子成形体どうしでの比較である。その結果を表6に示す。
【0091】
(実施例2)
本例においては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製し、該混合樹脂粒子を用いて、発泡剤としての炭酸ガスを2.5MPa(G)になるまで圧入した点を除いては実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製した。さらに、該混合樹脂発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察を行ったところ、ほぼ実施例1と同じ状態の連続相及び分散相が確認された。
【0092】
(実施例3)
本例においては、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合を変更した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察(倍率10000倍)を行った結果を図2に示す。
【0093】
(実施例4)
本例においては、実施例1とはポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂と熱可塑性エラストマーの配合割合を変更した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて、発泡剤としての炭酸ガスを2.5MPa(G)になるまで圧入した点を除いては実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製した。さらに、該混合樹脂発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1、表4、及び表6に示す。
【0094】
(実施例5)
本例においては、実施例1とはポリ乳酸の種類を変更(表1参照)した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察を行った結果を図3(倍率10000倍)に示す。
【0095】
(実施例6)
本例においては、実施例1とはポリ乳酸系樹脂の種類を変更し(表2参照)、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合を変更した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察(倍率10000倍)を行った結果を図4に示す。
【0096】
(実施例7〜9)
本例においては、実施例1とは熱可塑性エラストマーの種類を変更(表2参照)した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2、表4、及び表6に示す。
【0097】
(実施例10)
本例においては、実施例1の二軸押出機の代わりに内径40mmの単軸押出機を用いた点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2、表4、及び表6に示す。
【0098】
(実施例11)
本例においては、実施例2において作製した混合樹脂発泡粒子を表4に示す条件で2段発泡させ、さらに低密度の混合樹脂発泡粒子を作製した。また、該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察を行ったところ、ほぼ実施例1と同じ状態の連続相及び分散相が確認された。
【0099】
(実施例12)
本例においては、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合を変更し、二軸押出機の代わりに単軸押出機を用いた点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表4、及び表6に示す。
【0100】
(実施例13)
本例においては、実施例2において作製した混合樹脂発泡粒子を表4に示す条件で2段発泡させ、さらに低密度の混合樹脂発泡粒子を作製した。また、該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本実施例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表4、及び表6に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察を行ったところ、ほぼ実施例1と同じ状態の連続相及び分散相が確認された。
【0101】
(比較例1)
本例においては、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合及びポリ乳酸の種類を変更し、さらに二軸押出機の代わりに単軸押出機を用いた点を除いては実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本比較例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表5、及び表7に示す。
なお、本例において作製した混合樹脂粒子について実施例1と同様にTEM観察(倍率10000倍)を行った結果を図5に示す。
【0102】
(比較例2)
本例においては、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合及びポリ乳酸の種類を変更した点を除いては実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本比較例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表5、及び表7に示す。
【0103】
(比較例3)
本例においては、熱可塑性エラストマーを添加せず、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との配合割合及びポリ乳酸の種類を変更し、さらに二軸押出機での加工温度をより高く設定した点を除いては、実施例1と同様にして混合樹脂粒子を作製した。また、該混合樹脂粒子を用いて実施例1と同様にして混合樹脂発泡粒子を作製し、さらに該混合樹脂発泡粒子を用いて実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
本比較例においても、混合樹脂粒子の配合、分散相の分散状態、混合樹脂発泡粒子の性状、発泡粒子成形体の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表3、表5、及び表7に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
表1〜7より知られるごとく、本発明の実施例1〜13において作製した混合樹脂発泡粒子を用いた場合には、型内成形を良好に行うことができ、収縮などのない製品外観の良好な発泡粒子成形体を作製することができる。これに対し、比較例1〜3においては、成形性が悪く、収縮等が起こって製品外観が悪くなっていた。また、比較例1〜3においては、従来品からの圧縮物性の低下が非常に大きいことから、耐久性の試験はあえて行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂からなる混合樹脂粒子を、発泡剤を使用して発泡させる混合樹脂発泡粒子の製造方法であって、
上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)とを重量比(A/B)80/20〜60/40で含有し、上記ポリオレフィン系樹脂からなる連続相中に上記ポリ乳酸系樹脂からなる分散相が分散した構造を有しており、
上記混合樹脂粒子の断面においては、上記分散相が平均粒径0.350μm以下で分散されており、かつ断面積100μm2あたりに分散された粒径0.700μmを超える上記分散相の数が6.0個以下であることを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の混合樹脂発泡粒子の製造方法において、上記混合樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に発泡剤存在下かつ加熱条件下で分散させて得られる発泡性混合樹脂粒子を、分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して上記混合樹脂発泡粒子を得ることを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の混合樹脂発泡粒子の製造方法において、上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂及びポリ乳酸系樹脂の合計量100重量部に対して、発泡助剤を0.001〜5重量部含有することを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の混合樹脂発泡粒子の製造方法において、上記発泡助剤がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合樹脂発泡粒子の製造方法において、上記混合樹脂粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と上記ポリ乳酸系樹脂(B)との合計量100重量部あたりにスチレン系エラストマーを0.5〜20重量部含有することを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合樹脂発泡粒子の製造方法において、上記ポリ乳酸系樹脂は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物から選ばれる1種以上の改質剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする混合樹脂発泡粒子の製造方法。

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−132274(P2011−132274A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290097(P2009−290097)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】