混合装置及びそれを用いた混合方法
【課題】 少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する際に、撹拌中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる混合装置、及び、この混合装置を用いた混合方法を提供する。
【解決手段】 本発明の混合装置1は、撹拌槽11と、該攪拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1攪拌翼13と、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14とを備える。
【解決手段】 本発明の混合装置1は、撹拌槽11と、該攪拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1攪拌翼13と、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置及びそれを用いた混合方法に関し、更に詳しくは、高分子を含む液状成分と、添加剤等の他の成分とを十分に混合する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子は、目的に応じた多角的な分子設計のもと、広い分野で用いられており、例えば、粘着剤、塗料等を製造する際には、そのものが液状である高分子;有機溶媒、水等に溶解した高分子溶液;水系媒体等に分散した高分子分散液等の高分子成分が配合されてなる原料組成物が用いられている。この原料組成物は、例えば、上記高分子成分に、各種添加剤が配合されて、粘度、pH等の物性が所定範囲にあるように調製されたものであるが、上記の高分子成分及び添加剤の種類によっては、添加剤が所定量含有されていても、混合状態が不十分である場合がある。
【0003】
上記のような不十分な混合状態は、上記高分子成分が高粘度である場合、起泡しやすい性質を有する場合等に顕著であるが、公知の撹拌装置等により、所望の原料組成物を製造しているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する際に、撹拌中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる混合装置、及び、この混合装置を用いた混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、撹拌翼及び邪魔板を特定の関係等を満たすように配設することにより、撹拌槽内の未混合領域をなくし、十分な混合状態の混合物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする混合装置。
2.上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記1に記載の混合装置。
3.上記第1撹拌翼の翼端における高さが、上記第1邪魔板の張出端部における高さと異なる上記1又は2に記載の混合装置。
4.上記第1邪魔板の張出端部が、上記第1撹拌翼の翼端より高い位置にある上記3に記載の混合装置。
5.更に、上記第1撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第2撹拌翼を備え、該第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記4に記載の混合装置。
6.更に、上記撹拌槽の内壁の、上記第2撹拌翼の配設位置より高い位置に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板と、上記第2撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第3撹拌翼とを備え、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記5に記載の混合装置。
7. 上記第1攪拌翼、上記第2攪拌翼及び上記第3攪拌翼の少なくとも1つが傾斜型撹拌翼である上記1乃至6のいずれかに記載の混合装置。
8.上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、該翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、該上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、該下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にある上記7に記載の混合装置。
9.上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、上記撹拌槽の内壁に斜めに配設されている上記1乃至8のいずれかに記載の混合装置。
10.上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、鉛直線に対し、10〜75度斜めに配設されている上記9に記載の混合装置。
11.混合原料が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種の液状成分を含む上記1乃至10のいずれかに記載の混合装置。
12.上記1乃至11のいずれかに記載の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする混合方法。
13.上記液状成分が全量投入された撹拌槽に、上記他の成分を添加しながら撹拌混合する上記12に記載の混合方法。
14.上記撹拌槽が減圧されている上記12又は13に記載の混合方法。
15.上記液状成分が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種である上記12乃至14のいずれかに記載の混合方法。
16.上記他の成分が、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤、有機溶剤及び水から選ばれた少なくとも1種である上記12乃至15のいずれかに記載の混合方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の混合装置によれば、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する際に、撹拌混合中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。特に、高粘度の成分を用いる場合であっても、それ以外の成分が偏在することなく、安定した物性の混合物を得ることができる。
本発明の混合方法によれば、液状高分子、高分子の溶液、高分子の分散液等の液状成分と、高分子用添加剤等の他の成分とを撹拌混合を効率よく行うことができ、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.混合装置
本発明の混合装置は、撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする。尚、本発明の混合装置において、撹拌翼及び邪魔板は、回転軸を中心として撹拌翼が回転している際に、接触しない位置関係にある。
【0008】
本発明の混合装置を、概略図を用いて説明する。
図1は、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す混合装置の例であり、この混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13と、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14とを備える。図1の混合装置1は、第1邪魔板14の張出端部を、第1撹拌翼13の翼端より高い位置とした態様であるが、第1邪魔板14の張出端部が、第1撹拌翼13の翼端より低い位置であってもよい。
本発明の混合装置は、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板以外に、後述のように、更に、撹拌翼及び/又は邪魔板の配設数を増やすことができる。また、混合装置における他の付帯設備として、原料成分導入装置、パージガス導入装置、熱交換装置、還流装置、液循環装置、温度測定装置、精留装置、観察用窓、サンプリング装置等を備えることができる。
【0009】
上記撹拌槽は、通常、横断面の形状が、円形、多角形等である、有底の縦型容器である。また、直胴形であってよいし、側面が膨らんだ形状を有する等、くびれ部を有してもよい。更に、底面の面積より、上部の開口面積が大きいバケツ形状でもよい。また、底面は、平面でも凹面でもよく、液を排出するための排出口を有してもよい。
【0010】
上記撹拌槽の構成材料は、混合原料、混合方法等の種類により選択される。例えば、金属、合金、樹脂等が挙げられるが、酸、アルカリ等に対する耐性に優れた材料、耐熱性に優れた材料等が適宜、選択される。具体的な構成材料は、ステンレス、ジルコニウム又はその合金、ニッケル合金等であり、内壁面がグラスライニング処理された容器を用いることもできる。
【0011】
上記撹拌槽の容積は、特に限定されないが、工業的な生産効率の観点から、好ましくは1〜100m3である。
【0012】
上記回転軸は、撹拌翼を固定するために配設され、通常、棒状体である。その表面は、平滑であってよいし、溝等が形成されていてもよい。上記回転軸の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により、上記撹拌槽と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
尚、上記回転軸は、通常、回転駆動装置の所定箇所に挿入され、常時、上記撹拌槽の中心部に位置するように固定される。
【0013】
上記第1撹拌翼は、通常、四角形、楕円形又はこれらの変形形状(平板状、曲板状、ねじれ形状等)の翼(以下、「羽根」ともいう。)を備える部材である。この羽根は、切り欠き、溝、穴、貫通孔等を有してもよい。
【0014】
上記第1撹拌翼としては、〔i〕羽根が鉛直線(通常、回転軸の延長線)に対し傾斜した(回転軸の回転方向に対して羽根が斜め上向き又は斜め下向きになっている)傾斜角を有するプロペラ、パドル翼(例えば、図2の符号13)、タービン翼等を備えるもの(以下、併せて「傾斜型撹拌翼」という。)や、〔ii〕羽根が傾斜せず(0度)、鉛直線上に配設された、パドル翼、タービン翼等を備えるものを用いることができる。傾斜型撹拌翼の場合、鉛直線(回転軸の延長線)に対して左に傾いていても、右に傾いていてもよいが、その好ましい傾斜角は、鉛直線(0度)に対して、0度を超えて80度以下であり、より好ましくは10〜75度、更に好ましくは20〜70度、特に好ましくは30〜60度である。この範囲とすることにより、邪魔板との相乗効果により、液の流れを多方向とすることができ、混合を円滑に進めることができる。従って、本発明においては、傾斜型撹拌翼を用いることが好ましい。
本発明においては、上記傾斜型撹拌翼を構成する翼(羽根)を、この翼の上端部及び下端部(それぞれ、撹拌槽の内壁側から翼を同じ高さで見たときの翼端の最上部及び最下部である。)が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜75度、更に好ましくは20〜70度、特に好ましくは30〜60度である。
尚、本明細書において、図2のように、翼(羽根)が傾斜している場合の、「翼(羽根)の傾斜角」は、以下のように規定する。即ち、撹拌槽の内壁側から第1撹拌翼13の(傾斜している)羽根131を見たとき、この羽根131が鉛直線(回転軸12の延長線)上方より左に45度傾斜している場合(図2の場合)には、「傾斜角+45度」とし、鉛直線(回転軸12の延長線)上方より右に45度傾斜している場合には、「傾斜角−45度」と表記する。
図2の第1撹拌翼13(傾斜型撹拌翼)において、羽根131は、回転軸12が時計回りに回転した場合、液の流れを下向きとし、また、反時計回りに回転した場合には、液の流れを上向きとすることができる。
また、上記第1撹拌翼の翼端、即ち、羽根の先端は、羽根の形状にかかわらず、回転軸における第1撹拌翼の固定部から見て水平方向にあってよいし、斜め方向にあってもよい。例えば、図1は、第1撹拌翼13の翼端が、回転軸12におけるその固定部から見て水平方向(回転軸12に対して垂直方向)に位置している。第1撹拌翼13が備える羽根の種類によっては、翼端が、水平方向(回転軸12に対して垂直方向)に位置しなくてもよい。
【0015】
更に、上記第1撹拌翼の羽根の数は、特に限定されず、1つでも、2つでも、3つ以上でもよい。
上記羽根の数が2以上の奇数の場合、各羽根の長さは全て同じであることが好ましい。一方、上記数が偶数である場合、各長さが全て同じであってよいし、1つおきに同じ長さであってもよい。即ち、同一形状の、又は、互いに異なる形状の2種類の羽根を備えてもよい。
【0016】
上記第1撹拌翼を構成する羽根の長さは、特に限定されないが、長すぎると、撹拌動力が増加し、短すぎると、十分な混合が不可能となる。上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離x1、即ち、上記第1撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離x1、更に言い換えると、上記第1撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さx1は、上記撹拌槽の内径を2rとした場合、好ましくは0.25×r≦x1≦0.95×r、より好ましくは0.5×r≦x1≦0.8×r、更に好ましくは0.4×r≦x1≦0.7×rである(図12参照)。
【0017】
上記第1撹拌翼13又は13aは、回転軸12の下方に配設される。その配設場所は、回転軸12の最下端でよいし(図1、図2、図7、図8等参照)、回転軸12の最下端を余して、最下端より上方でもよい(図13参照)。回転軸12の最下端に配設された例として、図2は、回転軸12の最下端に、傾斜する4つの板状平羽根131を有する傾斜型の第1撹拌翼13が配設されていることを示す。
【0018】
また、上記第1撹拌翼の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により選択され、上記撹拌槽の場合と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
【0019】
次に、上記第1邪魔板は、上記撹拌槽の内壁に、略回転軸方向に張り出すように配設された、通常、板状、棒状等の形状を有するものである。この第1邪魔板の張出方向は、上記回転軸に向かって水平方向であってよいし、斜め方向であってもよい。
上記第1邪魔板の配設数は、特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。2つ、又は、3つ以上とする場合には、通常、同じ形状及び長さのものを用い、上記撹拌槽の内壁における同じ高さに、略等間隔(2つの場合は略180度間隔、3つの場合は略120度間隔、4つの場合は略90度間隔、以下同じ。図3及び図4参照)に配設する。
尚、上記第1邪魔板は、略回転軸方向に張り出すように配設される。この「略回転軸方向」の態様には、混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときに、撹拌槽の上方から見た、図3のように、上記第1邪魔板が回転軸にまっすぐに向かって張り出す態様や、図4のように、上記第1邪魔板が回転軸から若干ずれた方向に向かって張り出す態様がある。
【0020】
上記第1邪魔板が板状の場合は、四角形等の平板;曲板等とすることができ、それらを組み合わせた変形形状でもよい。また、棒状の場合は、直線でも、曲線でもよい。いずれの場合も、各断面の形状及び面積は、特に限定されない。更に、これらは、各々、途中から折れ曲がっていてもよい。更に、切り欠き、溝、穴、貫通孔等を有してもよい。
また、上記第1邪魔板は、上記撹拌槽の内壁に鉛直に配設されてよいし、斜めに傾斜させて配設されてもよい。
【0021】
本発明において、上記第1邪魔板としては、板状であることが好ましく、上記のように、鉛直又は斜め(図5及び図6参照)に配設することができる。これらのうち、斜めに配設することが好ましい。鉛直線に対する傾斜角は、好ましくは15〜80度、より好ましくは20〜65度、更に好ましくは30〜60度の各範囲である。尚、図5は、回転軸側から撹拌槽の内壁に配設された邪魔板を見た図であり、この邪魔板が撹拌槽の内壁面111に、鉛直線3の上方より右側へ傾斜角45度(以下、右側へ傾く場合を「傾斜角+45度」とする。)をもって斜めに配設され、邪魔板の端面141が手前側(回転軸側)にあることを示す。また、図6も、回転軸側から撹拌槽の内壁に配設された邪魔板を見た図であり、この邪魔板が撹拌槽の内壁面111に、鉛直線3の上方より左側へ傾斜角45度(以下、左側へ傾く場合を「傾斜角−45度」とする。)をもって斜めに配設され、邪魔板の端面141が手前側(回転軸側)にあることを示す。即ち、上記第1邪魔板が斜めに配設されている場合、上記撹拌槽の内壁に対して右上がり(図5)であってよいし、左上がり(右下がり、図6)であってもよい。図5において、回転軸(撹拌翼)の回転によって液が、図面の左から右へ流れてきた場合、邪魔板の上向きの面に当たって、水平より斜め上方への流れを形成する。一方、液が、図面の右から左へ流れてきた場合、下向きの面に当たって、水平より斜め下方への流れを形成する。このように、邪魔板を斜めに配設することにより、十分な混合を進めることができる。
【0022】
上記第1邪魔板は、通常、所定の物品等により上記撹拌翼の内壁に固定されるが、邪魔板の張り出す方向を変化させる、あるいは、邪魔板に傾斜角を与える等のため、可動手段を備える固定装置により固定されてもよい。
【0023】
上記第1邪魔板の張出長さは、特に限定されない。この第1邪魔板の張出端部から上記撹拌翼の内壁までの最短距離、即ち、撹拌槽の上方から第1邪魔板を投影したときの、第1邪魔板が張り出した端部から上記撹拌翼の内壁までの長さy1は、上記撹拌槽の内径を2rとした場合、好ましくは0.05×r以上、より好ましくは0.20×r≦y1≦0.50×r、更に好ましくは0.30×r≦y1≦0.60×rである。
【0024】
本発明において、上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離x1と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離y1との和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x1+y1≧rであり、より好ましくはx1+y1>r、更に好ましくは1.1×r≦x1+y1≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x1+y1≦1.5×rである(図12参照)。
上記関係(x1+y1≧r)とすることにより、上記第1撹拌翼の翼端における高さ、及び、上記第1邪魔板の張出端部における高さが異なる位置関係にあり、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の循環が十分となり、更に、起泡あるいは泡の混入が抑制される。一方、x1+y1<rの場合、撹拌槽内における原料成分の縦方向の循環が不十分となる傾向にあり、撹拌翼と邪魔板の隙間の剪断により泡が発生したり、液の粘度によっては、撹拌翼間にドーナツ状の未混合部分を生じさせ、これを邪魔板で破壊できず、均一な混合を進めにくくなる傾向にある。
【0025】
上記関係(x1+y1≧r)が満たされる場合、上記第1邪魔板の張出端部と、上記第1撹拌翼の翼端との位置関係(上下関係)は、特に限定されない。上記第1邪魔板の張出端部が高い位置にあってよいし、上記第1撹拌翼の翼端が高い位置にあってもよい。
本発明においては、混合効率等の観点から、上記第1邪魔板の張出端部が高い位置にあることが好ましく、上記第1邪魔板の全体が、上記第1撹拌翼の全体より高い位置にあることが好ましい(図1参照)。
【0026】
また、上記第1邪魔板の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により選択され、上記撹拌槽の場合と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
【0027】
本発明の混合装置は、回転軸12に2つの撹拌翼13a及び13bを有し、更に、該撹拌翼13aより上の位置であり且つ該攪拌翼13bより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14を備える態様とすることもできる(図7参照)。
即ち、図7に示す混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13aと、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14と、上記第1撹拌翼13aの上方の上記回転軸12に配設される第2撹拌翼13bとを備える。
【0028】
上記第2撹拌翼は、第1撹拌翼と全く同じものを用いてよいし、この第1撹拌翼と異なるものを用いてもよい。後者の場合、上記第1撹拌翼の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0029】
このような第1及び第2撹拌翼を備える2段型混合装置において、上記第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離をx2とし、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離をy1としたとき、x2及びy1の和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x2+y1≧rであり、より好ましくはx2+y1>r、更に好ましくは1.1×r≦x2+y1≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x2+y1≦1.5×rである。
上記関係(x2+y1≧r)とすることにより、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の循環が十分となり、更に、起泡あるいは泡の混入が抑制される。
尚、上記距離x2は、上記第2撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離であり、更に詳しくは、上記第2撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さである。
【0030】
上記第1撹拌翼と、上記第2撹拌翼との間隔長さは、各撹拌翼の形状及び長さ、第1邪魔板の形状及び長さ等により選択される。また、第1撹拌翼の回転軸上の配設位置、第1撹拌翼の撹拌槽底部からの距離、全ての混合原料を撹拌槽に投入したときの液面高さ等により選択される場合もある。
【0031】
また、本発明の混合装置は、回転軸12に3つの撹拌翼13a、13b及び13cを有し、更に、該撹拌翼13aより上の位置であり且つ該攪拌翼13bより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14aと、上記撹拌翼13bより上の位置であり且つ上記攪拌翼13cより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14bとを備える態様とすることもできる(図11参照)。
即ち、図11に示す混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13aと、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14aと、上記第1撹拌翼13aの上方の上記回転軸12に配設される第2撹拌翼13bと、上記邪魔板14aの上方の上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板14bと、上記第1撹拌翼13bの上方の上記回転軸12に配設される第3撹拌翼13cとを備える。
【0032】
上記第3撹拌翼は、第1撹拌翼のみと全く同じものを用いてよいし、第2撹拌翼のみ(第1撹拌翼と異なる場合)と全く同じものを用いてよいし、第1撹拌翼及び第2撹拌翼と異なるものを用いてもよい。後者の場合、第1及び第2撹拌翼が同じ場合、及び、第1及び第2撹拌翼が異なる場合のいずれの場合においても、上記第1撹拌翼の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0033】
また、上記第2邪魔板は、第1邪魔板と全く同じものを用いてよいし、この第1邪魔板と異なるものを用いてもよい。後者の場合、上記第1邪魔板の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0034】
このような第1、第2及び第3撹拌翼を備える混合装置において、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離をx3とし、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離をy2としたとき、x3及びy2の和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x3+y2≧rであり、より好ましくはx3+y2>r、更に好ましくは1.1×r≦x3+y2≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x3+y2≦1.5×rである。
上記関係(x3+y2≧r)とすることにより、上記2段型混合装置を用いた場合に比べ、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の混合がより効率的となる。
尚、上記距離x3は、上記第3撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離であり、更に詳しくは、上記第3撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さである。
【0035】
本発明の混合装置は、更に、第4撹拌翼、第5撹拌翼...、及び第3邪魔板、第4邪魔板...等が配設されたものとすることができる。それぞれについて、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板と同じ態様とすることができ、配設位置、方法等においても、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板の関係等と同様とすることができる。
【0036】
本発明の混合装置は、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する装置として有用であり、撹拌混合中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができるという点で、後述の「混合方法」に説明される原料成分の混合に特に好適である。
【0037】
2.混合方法
本発明の混合方法は、上記本発明の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする。即ち、混合原料として、液状成分(以下、成分[a]ともいう。)の1種以上と、他の成分(以下、成分[b]ともいう。)の1種以上とを用いて、混合物を得るものである。
使用する混合装置は、原料成分の種類、量等により選択され、また、撹拌翼及び邪魔板の種類、数、傾斜角、配設位置等も選択される。原料成分が多量である場合には、多段型混合装置を用いることが好ましい。
【0038】
上記成分[a]の物性は、特に限定されない。但し、1種のみ用いる場合のそれ自身、及び、2種以上を用いる場合の少なくとも1種が、ブルックフィールド型粘度計(25℃)により、0.1〜数百万mPa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。
【0039】
上記成分[a]としては、単一物質を用いてよいし、組成物を用いてもよい。
前者(単一物質)の場合、高分子(繰り返し単位を有する化合物)及びそれ以外の化合物のいずれでもよい。また、これらの組合せでもよい。
高分子(以下、「液状高分子」という。)としては、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ジエン系(共)重合体及びその水素化物、珪素含有高分子化合物、ポリオレフィン、他のポリオール、ポリアミン、ポリイソシアネート等が挙げられる。尚、上記化合物は、一定又は不定の位置がハロゲン置換されたもの;一定又は不定の位置に、該化合物が有さない他の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基、クロロスルホン基、エポキシ基、イソシアネート基、シリル基)を備えるものであってもよい。
また、液状高分子以外の化合物としては、上記範囲の粘度を有するアルコール、カルボン酸、エステル(多官能アクリレート、多官能メタクリレート等)、珪素含有化合物等が挙げられる。
【0040】
後者(組成物)の場合、無機系物質、有機系物質(上記の液状高分子又はそれ以外の化合物であってもよい。)等が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解した溶液、又は分散した分散液(エマルション等)を用いることができるが、少なくとも1種が高分子(液状、固体のいずれでもよい。)を含むことが好ましい。
上記の溶液又は分散液とする場合に用いられる有機溶媒としては、脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アミン、エーテル等が挙げられる。
上記成分[a]として、単一物質と、組成物とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記成分[b]としては、上記成分[a]の種類、混合物の使用目的等により、選択される。従って、固体でも液体(液状)でもよい。
例えば、上記成分[a]が、高分子(液状、固体のいずれでもよい。)であり、混合物を機能性高分子組成物とするためには、目的に応じた添加剤等が成分[b]として用いられる。この添加剤としては、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤のなかには、固体のものもあれば、液体のものもある。
また、上記成分[a]が、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等のエステル;反応性の珪素含有化合物等であり、混合物を硬化性樹脂組成物等とするためには、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤等の添加剤が成分[b]として用いられる。
また、上記成分[a]が、アルコールを含む場合には、酸化防止剤等の添加剤が成分[b]として用いられる。
【0042】
上記の成分[a]及び成分[b]の使用方法は、特に限定されない。尚、上記成分[a]及び液体(液状)の上記成分[b]の使用の際には、予め、真空脱泡等の方法による脱泡処理を行ってもよい。撹拌槽への導入は、両者を同時に行ってよいし、交互に導入してよいし、一方の全量を先に導入した後、他方を導入してよいし、両者を少量ずつ添加(連続添加、間欠添加又はランダム添加)してもよい。
本発明においては、上記成分[a]が全量投入された撹拌槽に、上記成分[b]を添加(連続添加、間欠添加又はランダム添加)しながら撹拌混合することが好ましい。
【0043】
上記の成分[a]及び成分[b]の撹拌混合は、上記混合装置の回転軸及び撹拌翼を回転させて行われる。上記回転軸の回転数は、特に限定されないが、上記の成分[a]及び成分[b]の種類、回転軸及び撹拌翼の強度、回転軸を固定する回転駆動装置の能力等によって、適宜、選択される。この回転数は、撹拌混合中、終始一定でもよいし、変化させてもよい。
また、上記の成分[a]及び成分[b]の種類によっては、加熱又は冷却しながら混合してもよい。更に、撹拌槽の内部は、常圧であってよいし、減圧されていてもよい。減圧されている場合には、撹拌による気泡を消滅させることができるため、混合時間をより短縮することができる。また、撹拌槽の雰囲気は、目的に応じて選択されるが、空気中であってよいし、窒素ガス等の不活性ガス中であってもよい。
【0044】
本発明の混合方法によると、成分[a]及び成分[b]が均一に混合した混合物を短時間で得ることができる。成分[a]及び成分[b]の物性、例えば、粘度、pH、比重、粒度等が異なる場合に好適である。
【0045】
本発明の混合方法において用いる混合装置は、上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、この翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させた撹拌翼(図8参照)、即ち、傾斜型撹拌翼の羽根の表面が、回転方向に向かって斜め下方向を向くように配設された撹拌翼を備えるものを用いることが好ましい。特に、図7及び図11に示す混合装置において、x1+y1≧r、x2+y1≧r、x3+y2≧r等を満たす場合には、物性が安定した所期の混合物を容易に得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下に例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる例に限定されるものではない。尚、下記記載において、「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0047】
以下の例で用いた混合装置を構成する撹拌槽11は、鏡底(10%SD)であり、内径2,600mm、高さ3,750mm及び内容積15m3のSUS製有底円筒状容器である。また、この撹拌槽11の上方には、撹拌翼を固定するための回転軸12が配設されている。尚、撹拌翼及び邪魔板については、各実験例において、詳細な装置構成を示した。
また、混合原料のうち、液状成分は、主成分がポリアクリル酸エステルであり、固形分濃度が60%、pHが1.5、25℃における粘度が100mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)のエマルションである。このエマルション10,000kg(体積約10m3)に対し、固形分濃度が100%、pHが6.5、25℃における粘度が190mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)、比重が0.91である消泡剤(商品名「ノプコ267A」、サンノプコ社製)5kg、固形分濃度が35%、pHが1.5、25℃における粘度が30mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)であるアルカリ可溶エマルション型増粘剤(商品名「B−500」、東亞合成社製)135kg、及び25%のアンモニア水75kgである。
【0048】
実験例1
本例における混合装置1は、上記撹拌槽11と、回転軸12と、この回転軸12の最下端(撹拌槽11の底部からの高さ300mm)に配設された、長さ1,650mm、幅250mm及び厚さ16mmの平板状平羽根(傾斜角+45度)が4枚、90度間隔で固定された傾斜型撹拌翼13aと、この撹拌翼13aの固定部上端から370mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ形状、長さ及び傾斜角を有する傾斜型撹拌翼13bと、撹拌槽11の内壁面に対して斜め(傾斜角−45度)に、撹拌槽11の底部から592mm上方の高さで、対向して180度間隔に2箇所配設された平板状邪魔板14とを備える(図7参照)。この平板状邪魔板14の大きさは、長さ1,050mm、幅200mm及び厚さ16mmの長径型邪魔板である。尚、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14の張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は1,050mmである。また、撹拌翼13a及び13bの各平羽根の傾斜角が+45度であり、撹拌槽内壁面に斜めに配設されている邪魔板14の傾斜角が−45度であるので、回転軸の回転により撹拌翼13a及び13bと邪魔板14とが最も接近した場合、平行の関係にある。従って、邪魔板14は、撹拌に伴う旋回流に対して上方への流れを形成する。
【0049】
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a及び13b並びに邪魔板14は、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、図7に示す所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は50分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表1に示した。
次いで、撹拌槽11から回収した混合液の一部を採取し、ベーカー式アプリケーターにより、厚さ50μmのPETフィルム上に塗布して、厚さ100μmの塗膜を作製した。その後、縦150mm及び横300mmの面積範囲における泡の数を計測したところ、18個であった(表1参照)。
尚、表1の「混合条件」における撹拌翼及び邪魔板の欄の数字は、配設数を意味する。以下も同様である。
【0050】
実験例2
実験例1で用いた装置(図7)において、撹拌槽内壁面に斜めに配設する邪魔板14の傾斜角を、+45度とした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。即ち、この邪魔板14は、撹拌翼13a及び13bに最も接近した場合、撹拌翼13a及び13bの各平羽根と垂直の関係にある。従って、邪魔板14は、撹拌に伴う旋回流に対して下方への流れを形成する。
所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、実験例1と同様にして粘度の最大値及び最小値並びに泡の数を得た(表1参照)。
【0051】
【表1】
【0052】
実験例3
本例における混合装置1は、上記撹拌槽11と、回転軸12と、この回転軸12の最下端(撹拌槽11の底部からの高さ300mm)に配設された、実験例1の撹拌翼13aと同じ形状、長さ及び傾斜角を有する撹拌翼13aと、この撹拌翼13aの固定部下端から535mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ撹拌翼13bと、この撹拌翼13bの固定部下端から更に525mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ撹拌翼13cと、撹拌槽11の内壁面に対して斜め(傾斜角−45度)に、撹拌槽11の底部から477mm上方の高さで、対向して180度間隔に2箇所配設された平板状邪魔板14a(長さ400mm、幅525mm及び厚さ16mmの短径型邪魔板)と、この邪魔板14aの固定部上端から180mm上方の高さであって、且つ、上記邪魔板14aの配設位置から90度ずらして、対向して180度間隔に2箇所配設された、上記邪魔板14aと同じ形状及び長さを有する邪魔板14bと、を備える(図9及び図10参照)。尚、図10の(i)は、図9におけるA−A切断面の断面図である。また、(ii)は、図9において2つの邪魔板14bが手前側及び奥側にあるため図示されておらず、これらの位置関係を表すB−B切断面の断面図である。
また、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mm、撹拌翼13bを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mm、撹拌翼13cを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14aの張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は400mm、邪魔板14bの張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は400mmである。更に、撹拌翼13a、13b及び13cの各平羽根の傾斜角が+45度であり、撹拌槽内壁面に斜めに配設されている邪魔板14a及び14bの傾斜角が−45度であるので、最も接近した場合、平行の位置関係にある。従って、邪魔板14a及び14bは、撹拌に伴う旋回流に対して上方への流れを形成する。
【0053】
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、図9に示す所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は40分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表2に示した。
次いで、撹拌槽11から混合液を回収し、実験例1と同様にして所定面積範囲における泡の数を計測し、その結果を表2に示した。
【0054】
実験例4
本例における混合装置1は、実験例3における邪魔板14a及び14bを、いずれも、実験例1における平板状邪魔板14(長さ1,050mm、幅200mm及び厚さ16mm、傾斜角−45度)とした装置である。
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は30分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表1に示した。
次いで、撹拌槽11から混合液を回収し、実験例1と同様にして所定面積範囲における泡の数を計測し、その結果を表2に示した。
【0055】
実験例5
実験例4で用いた混合装置1において、撹拌槽内壁面に斜めに配設する邪魔板14a及び14bの傾斜角を、+45度とした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0056】
実験例6
実験例4で用いた装置において、邪魔板を各段において2つずつ増やし、90度間隔に4箇所ずつとした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0057】
実験例7
実験例4の混合装置を用い、以下の要領で混合物を製造した。
撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、撹拌槽11内部を減圧し、内圧を−600mmHgとした。次いで、圧力を保持したまま、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。その後、内圧を大気圧とし、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、実施例4と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0058】
実験例8
本例における混合装置1は、実験例3における邪魔板14a及び14bの代わりに、回転軸方向への長さ260mm、幅2,700mm及び厚さ16mmの平板状邪魔板14の4枚を、鉛直に、撹拌槽11の底部から505mm上方に邪魔板14の下端が来るように90度間隔で固定した傾斜角を有さない邪魔板付き装置である(図14参照)。尚、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14の張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は260mmである。
【0059】
上記混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14は、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は40分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定したところ、最大値は上層部における13,650mPa・sであり、最小値は中央部における11,350mPa・sであった。
次いで、実験例1と同様にして泡の数を計測したところ、34個であった。
【0060】
実験例9
実験例3における混合装置において、邪魔板14a及び14bを除去した混合装置1(図15参照)を用いた以外は、実験例3と同様にして、所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0061】
実験例10
実験例9における混合装置1を用い、撹拌翼の回転数を60rpmとした以外は、実験例3と同様にして、所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
以上の実験より、下記のことが明らかである。
実験例9は、邪魔板が配設されていない混合装置を用いた例であり、撹拌槽内の全体にわたって、pHは一定であっても、部分的に粘度が異なっており、粘度の最大値と最小値との差が2,650mPa・sと大きく、不均一であることが分かる。また、泡の数が35個と多かった。
実験例10は、実験例9よりも回転数を上げた例であるが、粘度の最大値と最小値との差が1,110mPa・sと半減したが、泡の数が増加した。
実験例8は、傾斜角を有さない邪魔板を配設した混合装置を用いた例であり、混合原料の停滞部分(特に、旋回流に対して邪魔板14の裏側)が発生したためか、粘度の最大値と最小値との差が2,300mPa・sと大きく、泡数も34個と多かった。
実験例1及び2は、回転する2つの撹拌翼の間に邪魔板が配設された混合装置を用いた例であり、粘度の最大値と最小値との差が、それぞれ、1,000mPa・s及び1,050mPa・sであり、また、泡の数が、それぞれ、18個及び21個と良化した。
実験例3は、3つの撹拌翼と、各撹拌翼の間の2つの邪魔板とを備える混合装置において、回転軸方向への長さが短い邪魔板を用いた例であり、粘度の最大値と最小値との差が900mPa・sと更に良化したが、泡の数が20を超えた。
実験例4〜6は、3つの撹拌翼と、各撹拌翼の間の2つの邪魔板とを備える混合装置において、回転軸方向への長さが長い邪魔板を用いた例であり、pHが一定となるまでの時間が30分と短縮化するだけでなく、混合原料の循環効率が十分であり、粘度差が一層小さくなった。また、実験例7は、撹拌混合の初期において、量的に多いエマルションを減圧下で撹拌したことから、十分な脱気雰囲気とすることができ、更に粘度が均一な混合物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の混合装置は、少なくとも液状成分を含む2種以上の混合原料を用い、撹拌中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。
特に、液状成分が高分子を含む場合には、塗料、粘着剤、接着剤、インキ、ポッティング剤、シーリング剤、化粧品、硬化性組成物、添加剤等の機能性高分子組成物を効率よく製造することができる。従って、温度、雰囲気等により、分解、変質等のおそれのある成分を用いる等の場合には、短時間で均一な混合物を得ることができ、有用である。
また、塗料、粘着剤等は、気泡が存在すると、塗工後、膨れや破裂等による欠陥が発生することがあるため、泡の混入を抑制することができる本発明の混合装置は、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の混合装置の一例であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図2】傾斜型撹拌翼が回転軸に配設されたことを示す斜視図である。
【図3】混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときの、撹拌槽の上方から見た、回転軸、撹拌翼及び邪魔板の各位置関係の一例を示す概略図である。
【図4】他の混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときの、撹拌槽の上方から見た、回転軸、撹拌翼及び邪魔板の各位置関係の一例を示す概略図である。
【図5】撹拌槽の内壁に傾斜角+45度の角度で傾斜して配設され、回転軸側から邪魔板の端面が見える邪魔板を示す概略図である。
【図6】撹拌槽の内壁に傾斜角−45度の角度で傾斜して配設され、回転軸側から邪魔板の端面が見える邪魔板を示す概略図である。
【図7】実験例1の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図8】実験例1の混合装置において、2つの傾斜型撹拌翼が回転軸に配設されたことを示す斜視図である。
【図9】実験例3の混合装置であり、撹拌槽を破断して内部の構造を示す概略図である。
【図10】図9におけるA−Aの断面図及びB−Bの断面図であり、(i)は、第1邪魔板の配設位置におけるA−A切断面の断面図、(ii)は、第2邪魔板の配設位置におけるB−B切断面の断面図である。
【図11】実験例4の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図12】図11の混合装置の部分拡大図である。
【図13】本発明の混合装置の他の例を示す概略図である。
【図14】実験例8の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図15】実験例9及び10の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0066】
1;混合装置
11;撹拌槽
111;撹拌槽の内壁面
12;回転軸
13及び13a;第1撹拌翼
13b;第2撹拌翼
13c;第3撹拌翼
131;羽根
14及び14a;第1邪魔板
14b;第2邪魔板
14d;他の邪魔板
141;邪魔板の回転軸側端面
2;液面
3;鉛直線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置及びそれを用いた混合方法に関し、更に詳しくは、高分子を含む液状成分と、添加剤等の他の成分とを十分に混合する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子は、目的に応じた多角的な分子設計のもと、広い分野で用いられており、例えば、粘着剤、塗料等を製造する際には、そのものが液状である高分子;有機溶媒、水等に溶解した高分子溶液;水系媒体等に分散した高分子分散液等の高分子成分が配合されてなる原料組成物が用いられている。この原料組成物は、例えば、上記高分子成分に、各種添加剤が配合されて、粘度、pH等の物性が所定範囲にあるように調製されたものであるが、上記の高分子成分及び添加剤の種類によっては、添加剤が所定量含有されていても、混合状態が不十分である場合がある。
【0003】
上記のような不十分な混合状態は、上記高分子成分が高粘度である場合、起泡しやすい性質を有する場合等に顕著であるが、公知の撹拌装置等により、所望の原料組成物を製造しているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する際に、撹拌中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる混合装置、及び、この混合装置を用いた混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、撹拌翼及び邪魔板を特定の関係等を満たすように配設することにより、撹拌槽内の未混合領域をなくし、十分な混合状態の混合物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする混合装置。
2.上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記1に記載の混合装置。
3.上記第1撹拌翼の翼端における高さが、上記第1邪魔板の張出端部における高さと異なる上記1又は2に記載の混合装置。
4.上記第1邪魔板の張出端部が、上記第1撹拌翼の翼端より高い位置にある上記3に記載の混合装置。
5.更に、上記第1撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第2撹拌翼を備え、該第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記4に記載の混合装置。
6.更に、上記撹拌槽の内壁の、上記第2撹拌翼の配設位置より高い位置に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板と、上記第2撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第3撹拌翼とを備え、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である上記5に記載の混合装置。
7. 上記第1攪拌翼、上記第2攪拌翼及び上記第3攪拌翼の少なくとも1つが傾斜型撹拌翼である上記1乃至6のいずれかに記載の混合装置。
8.上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、該翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、該上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、該下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にある上記7に記載の混合装置。
9.上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、上記撹拌槽の内壁に斜めに配設されている上記1乃至8のいずれかに記載の混合装置。
10.上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、鉛直線に対し、10〜75度斜めに配設されている上記9に記載の混合装置。
11.混合原料が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種の液状成分を含む上記1乃至10のいずれかに記載の混合装置。
12.上記1乃至11のいずれかに記載の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする混合方法。
13.上記液状成分が全量投入された撹拌槽に、上記他の成分を添加しながら撹拌混合する上記12に記載の混合方法。
14.上記撹拌槽が減圧されている上記12又は13に記載の混合方法。
15.上記液状成分が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種である上記12乃至14のいずれかに記載の混合方法。
16.上記他の成分が、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤、有機溶剤及び水から選ばれた少なくとも1種である上記12乃至15のいずれかに記載の混合方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の混合装置によれば、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する際に、撹拌混合中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。特に、高粘度の成分を用いる場合であっても、それ以外の成分が偏在することなく、安定した物性の混合物を得ることができる。
本発明の混合方法によれば、液状高分子、高分子の溶液、高分子の分散液等の液状成分と、高分子用添加剤等の他の成分とを撹拌混合を効率よく行うことができ、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.混合装置
本発明の混合装置は、撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする。尚、本発明の混合装置において、撹拌翼及び邪魔板は、回転軸を中心として撹拌翼が回転している際に、接触しない位置関係にある。
【0008】
本発明の混合装置を、概略図を用いて説明する。
図1は、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す混合装置の例であり、この混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13と、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14とを備える。図1の混合装置1は、第1邪魔板14の張出端部を、第1撹拌翼13の翼端より高い位置とした態様であるが、第1邪魔板14の張出端部が、第1撹拌翼13の翼端より低い位置であってもよい。
本発明の混合装置は、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板以外に、後述のように、更に、撹拌翼及び/又は邪魔板の配設数を増やすことができる。また、混合装置における他の付帯設備として、原料成分導入装置、パージガス導入装置、熱交換装置、還流装置、液循環装置、温度測定装置、精留装置、観察用窓、サンプリング装置等を備えることができる。
【0009】
上記撹拌槽は、通常、横断面の形状が、円形、多角形等である、有底の縦型容器である。また、直胴形であってよいし、側面が膨らんだ形状を有する等、くびれ部を有してもよい。更に、底面の面積より、上部の開口面積が大きいバケツ形状でもよい。また、底面は、平面でも凹面でもよく、液を排出するための排出口を有してもよい。
【0010】
上記撹拌槽の構成材料は、混合原料、混合方法等の種類により選択される。例えば、金属、合金、樹脂等が挙げられるが、酸、アルカリ等に対する耐性に優れた材料、耐熱性に優れた材料等が適宜、選択される。具体的な構成材料は、ステンレス、ジルコニウム又はその合金、ニッケル合金等であり、内壁面がグラスライニング処理された容器を用いることもできる。
【0011】
上記撹拌槽の容積は、特に限定されないが、工業的な生産効率の観点から、好ましくは1〜100m3である。
【0012】
上記回転軸は、撹拌翼を固定するために配設され、通常、棒状体である。その表面は、平滑であってよいし、溝等が形成されていてもよい。上記回転軸の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により、上記撹拌槽と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
尚、上記回転軸は、通常、回転駆動装置の所定箇所に挿入され、常時、上記撹拌槽の中心部に位置するように固定される。
【0013】
上記第1撹拌翼は、通常、四角形、楕円形又はこれらの変形形状(平板状、曲板状、ねじれ形状等)の翼(以下、「羽根」ともいう。)を備える部材である。この羽根は、切り欠き、溝、穴、貫通孔等を有してもよい。
【0014】
上記第1撹拌翼としては、〔i〕羽根が鉛直線(通常、回転軸の延長線)に対し傾斜した(回転軸の回転方向に対して羽根が斜め上向き又は斜め下向きになっている)傾斜角を有するプロペラ、パドル翼(例えば、図2の符号13)、タービン翼等を備えるもの(以下、併せて「傾斜型撹拌翼」という。)や、〔ii〕羽根が傾斜せず(0度)、鉛直線上に配設された、パドル翼、タービン翼等を備えるものを用いることができる。傾斜型撹拌翼の場合、鉛直線(回転軸の延長線)に対して左に傾いていても、右に傾いていてもよいが、その好ましい傾斜角は、鉛直線(0度)に対して、0度を超えて80度以下であり、より好ましくは10〜75度、更に好ましくは20〜70度、特に好ましくは30〜60度である。この範囲とすることにより、邪魔板との相乗効果により、液の流れを多方向とすることができ、混合を円滑に進めることができる。従って、本発明においては、傾斜型撹拌翼を用いることが好ましい。
本発明においては、上記傾斜型撹拌翼を構成する翼(羽根)を、この翼の上端部及び下端部(それぞれ、撹拌槽の内壁側から翼を同じ高さで見たときの翼端の最上部及び最下部である。)が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜75度、更に好ましくは20〜70度、特に好ましくは30〜60度である。
尚、本明細書において、図2のように、翼(羽根)が傾斜している場合の、「翼(羽根)の傾斜角」は、以下のように規定する。即ち、撹拌槽の内壁側から第1撹拌翼13の(傾斜している)羽根131を見たとき、この羽根131が鉛直線(回転軸12の延長線)上方より左に45度傾斜している場合(図2の場合)には、「傾斜角+45度」とし、鉛直線(回転軸12の延長線)上方より右に45度傾斜している場合には、「傾斜角−45度」と表記する。
図2の第1撹拌翼13(傾斜型撹拌翼)において、羽根131は、回転軸12が時計回りに回転した場合、液の流れを下向きとし、また、反時計回りに回転した場合には、液の流れを上向きとすることができる。
また、上記第1撹拌翼の翼端、即ち、羽根の先端は、羽根の形状にかかわらず、回転軸における第1撹拌翼の固定部から見て水平方向にあってよいし、斜め方向にあってもよい。例えば、図1は、第1撹拌翼13の翼端が、回転軸12におけるその固定部から見て水平方向(回転軸12に対して垂直方向)に位置している。第1撹拌翼13が備える羽根の種類によっては、翼端が、水平方向(回転軸12に対して垂直方向)に位置しなくてもよい。
【0015】
更に、上記第1撹拌翼の羽根の数は、特に限定されず、1つでも、2つでも、3つ以上でもよい。
上記羽根の数が2以上の奇数の場合、各羽根の長さは全て同じであることが好ましい。一方、上記数が偶数である場合、各長さが全て同じであってよいし、1つおきに同じ長さであってもよい。即ち、同一形状の、又は、互いに異なる形状の2種類の羽根を備えてもよい。
【0016】
上記第1撹拌翼を構成する羽根の長さは、特に限定されないが、長すぎると、撹拌動力が増加し、短すぎると、十分な混合が不可能となる。上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離x1、即ち、上記第1撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離x1、更に言い換えると、上記第1撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さx1は、上記撹拌槽の内径を2rとした場合、好ましくは0.25×r≦x1≦0.95×r、より好ましくは0.5×r≦x1≦0.8×r、更に好ましくは0.4×r≦x1≦0.7×rである(図12参照)。
【0017】
上記第1撹拌翼13又は13aは、回転軸12の下方に配設される。その配設場所は、回転軸12の最下端でよいし(図1、図2、図7、図8等参照)、回転軸12の最下端を余して、最下端より上方でもよい(図13参照)。回転軸12の最下端に配設された例として、図2は、回転軸12の最下端に、傾斜する4つの板状平羽根131を有する傾斜型の第1撹拌翼13が配設されていることを示す。
【0018】
また、上記第1撹拌翼の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により選択され、上記撹拌槽の場合と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
【0019】
次に、上記第1邪魔板は、上記撹拌槽の内壁に、略回転軸方向に張り出すように配設された、通常、板状、棒状等の形状を有するものである。この第1邪魔板の張出方向は、上記回転軸に向かって水平方向であってよいし、斜め方向であってもよい。
上記第1邪魔板の配設数は、特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。2つ、又は、3つ以上とする場合には、通常、同じ形状及び長さのものを用い、上記撹拌槽の内壁における同じ高さに、略等間隔(2つの場合は略180度間隔、3つの場合は略120度間隔、4つの場合は略90度間隔、以下同じ。図3及び図4参照)に配設する。
尚、上記第1邪魔板は、略回転軸方向に張り出すように配設される。この「略回転軸方向」の態様には、混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときに、撹拌槽の上方から見た、図3のように、上記第1邪魔板が回転軸にまっすぐに向かって張り出す態様や、図4のように、上記第1邪魔板が回転軸から若干ずれた方向に向かって張り出す態様がある。
【0020】
上記第1邪魔板が板状の場合は、四角形等の平板;曲板等とすることができ、それらを組み合わせた変形形状でもよい。また、棒状の場合は、直線でも、曲線でもよい。いずれの場合も、各断面の形状及び面積は、特に限定されない。更に、これらは、各々、途中から折れ曲がっていてもよい。更に、切り欠き、溝、穴、貫通孔等を有してもよい。
また、上記第1邪魔板は、上記撹拌槽の内壁に鉛直に配設されてよいし、斜めに傾斜させて配設されてもよい。
【0021】
本発明において、上記第1邪魔板としては、板状であることが好ましく、上記のように、鉛直又は斜め(図5及び図6参照)に配設することができる。これらのうち、斜めに配設することが好ましい。鉛直線に対する傾斜角は、好ましくは15〜80度、より好ましくは20〜65度、更に好ましくは30〜60度の各範囲である。尚、図5は、回転軸側から撹拌槽の内壁に配設された邪魔板を見た図であり、この邪魔板が撹拌槽の内壁面111に、鉛直線3の上方より右側へ傾斜角45度(以下、右側へ傾く場合を「傾斜角+45度」とする。)をもって斜めに配設され、邪魔板の端面141が手前側(回転軸側)にあることを示す。また、図6も、回転軸側から撹拌槽の内壁に配設された邪魔板を見た図であり、この邪魔板が撹拌槽の内壁面111に、鉛直線3の上方より左側へ傾斜角45度(以下、左側へ傾く場合を「傾斜角−45度」とする。)をもって斜めに配設され、邪魔板の端面141が手前側(回転軸側)にあることを示す。即ち、上記第1邪魔板が斜めに配設されている場合、上記撹拌槽の内壁に対して右上がり(図5)であってよいし、左上がり(右下がり、図6)であってもよい。図5において、回転軸(撹拌翼)の回転によって液が、図面の左から右へ流れてきた場合、邪魔板の上向きの面に当たって、水平より斜め上方への流れを形成する。一方、液が、図面の右から左へ流れてきた場合、下向きの面に当たって、水平より斜め下方への流れを形成する。このように、邪魔板を斜めに配設することにより、十分な混合を進めることができる。
【0022】
上記第1邪魔板は、通常、所定の物品等により上記撹拌翼の内壁に固定されるが、邪魔板の張り出す方向を変化させる、あるいは、邪魔板に傾斜角を与える等のため、可動手段を備える固定装置により固定されてもよい。
【0023】
上記第1邪魔板の張出長さは、特に限定されない。この第1邪魔板の張出端部から上記撹拌翼の内壁までの最短距離、即ち、撹拌槽の上方から第1邪魔板を投影したときの、第1邪魔板が張り出した端部から上記撹拌翼の内壁までの長さy1は、上記撹拌槽の内径を2rとした場合、好ましくは0.05×r以上、より好ましくは0.20×r≦y1≦0.50×r、更に好ましくは0.30×r≦y1≦0.60×rである。
【0024】
本発明において、上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離x1と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離y1との和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x1+y1≧rであり、より好ましくはx1+y1>r、更に好ましくは1.1×r≦x1+y1≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x1+y1≦1.5×rである(図12参照)。
上記関係(x1+y1≧r)とすることにより、上記第1撹拌翼の翼端における高さ、及び、上記第1邪魔板の張出端部における高さが異なる位置関係にあり、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の循環が十分となり、更に、起泡あるいは泡の混入が抑制される。一方、x1+y1<rの場合、撹拌槽内における原料成分の縦方向の循環が不十分となる傾向にあり、撹拌翼と邪魔板の隙間の剪断により泡が発生したり、液の粘度によっては、撹拌翼間にドーナツ状の未混合部分を生じさせ、これを邪魔板で破壊できず、均一な混合を進めにくくなる傾向にある。
【0025】
上記関係(x1+y1≧r)が満たされる場合、上記第1邪魔板の張出端部と、上記第1撹拌翼の翼端との位置関係(上下関係)は、特に限定されない。上記第1邪魔板の張出端部が高い位置にあってよいし、上記第1撹拌翼の翼端が高い位置にあってもよい。
本発明においては、混合効率等の観点から、上記第1邪魔板の張出端部が高い位置にあることが好ましく、上記第1邪魔板の全体が、上記第1撹拌翼の全体より高い位置にあることが好ましい(図1参照)。
【0026】
また、上記第1邪魔板の構成材料は、通常、金属又は合金であるが、混合原料の種類により選択され、上記撹拌槽の場合と同様、表面がグラスライニング処理されていてもよい。
【0027】
本発明の混合装置は、回転軸12に2つの撹拌翼13a及び13bを有し、更に、該撹拌翼13aより上の位置であり且つ該攪拌翼13bより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14を備える態様とすることもできる(図7参照)。
即ち、図7に示す混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13aと、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14と、上記第1撹拌翼13aの上方の上記回転軸12に配設される第2撹拌翼13bとを備える。
【0028】
上記第2撹拌翼は、第1撹拌翼と全く同じものを用いてよいし、この第1撹拌翼と異なるものを用いてもよい。後者の場合、上記第1撹拌翼の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0029】
このような第1及び第2撹拌翼を備える2段型混合装置において、上記第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離をx2とし、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離をy1としたとき、x2及びy1の和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x2+y1≧rであり、より好ましくはx2+y1>r、更に好ましくは1.1×r≦x2+y1≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x2+y1≦1.5×rである。
上記関係(x2+y1≧r)とすることにより、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の循環が十分となり、更に、起泡あるいは泡の混入が抑制される。
尚、上記距離x2は、上記第2撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離であり、更に詳しくは、上記第2撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さである。
【0030】
上記第1撹拌翼と、上記第2撹拌翼との間隔長さは、各撹拌翼の形状及び長さ、第1邪魔板の形状及び長さ等により選択される。また、第1撹拌翼の回転軸上の配設位置、第1撹拌翼の撹拌槽底部からの距離、全ての混合原料を撹拌槽に投入したときの液面高さ等により選択される場合もある。
【0031】
また、本発明の混合装置は、回転軸12に3つの撹拌翼13a、13b及び13cを有し、更に、該撹拌翼13aより上の位置であり且つ該攪拌翼13bより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14aと、上記撹拌翼13bより上の位置であり且つ上記攪拌翼13cより下の位置である、撹拌槽11の内壁に配設された邪魔板14bとを備える態様とすることもできる(図11参照)。
即ち、図11に示す混合装置1は、撹拌槽11と、該撹拌槽11内の中心部に垂設される回転軸12と、該回転軸12に配設される第1撹拌翼13aと、上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板14aと、上記第1撹拌翼13aの上方の上記回転軸12に配設される第2撹拌翼13bと、上記邪魔板14aの上方の上記撹拌槽11の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板14bと、上記第1撹拌翼13bの上方の上記回転軸12に配設される第3撹拌翼13cとを備える。
【0032】
上記第3撹拌翼は、第1撹拌翼のみと全く同じものを用いてよいし、第2撹拌翼のみ(第1撹拌翼と異なる場合)と全く同じものを用いてよいし、第1撹拌翼及び第2撹拌翼と異なるものを用いてもよい。後者の場合、第1及び第2撹拌翼が同じ場合、及び、第1及び第2撹拌翼が異なる場合のいずれの場合においても、上記第1撹拌翼の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0033】
また、上記第2邪魔板は、第1邪魔板と全く同じものを用いてよいし、この第1邪魔板と異なるものを用いてもよい。後者の場合、上記第1邪魔板の説明の範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0034】
このような第1、第2及び第3撹拌翼を備える混合装置において、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離をx3とし、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離をy2としたとき、x3及びy2の和は、好ましくは、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上、即ち、x3+y2≧rであり、より好ましくはx3+y2>r、更に好ましくは1.1×r≦x3+y2≦1.75×r、特に好ましくは1.1×r≦x3+y2≦1.5×rである。
上記関係(x3+y2≧r)とすることにより、上記2段型混合装置を用いた場合に比べ、撹拌混合による撹拌槽中の原料成分の混合がより効率的となる。
尚、上記距離x3は、上記第3撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、上記回転軸の中心までの最短距離であり、更に詳しくは、上記第3撹拌翼における、最大長さを有する羽根の先端から、回転軸の中心線に対して垂線を引いたときのその長さである。
【0035】
本発明の混合装置は、更に、第4撹拌翼、第5撹拌翼...、及び第3邪魔板、第4邪魔板...等が配設されたものとすることができる。それぞれについて、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板と同じ態様とすることができ、配設位置、方法等においても、上記の第1撹拌翼及び第1邪魔板の関係等と同様とすることができる。
【0036】
本発明の混合装置は、少なくとも液状成分を含む2種以上の成分を混合する装置として有用であり、撹拌混合中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができるという点で、後述の「混合方法」に説明される原料成分の混合に特に好適である。
【0037】
2.混合方法
本発明の混合方法は、上記本発明の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする。即ち、混合原料として、液状成分(以下、成分[a]ともいう。)の1種以上と、他の成分(以下、成分[b]ともいう。)の1種以上とを用いて、混合物を得るものである。
使用する混合装置は、原料成分の種類、量等により選択され、また、撹拌翼及び邪魔板の種類、数、傾斜角、配設位置等も選択される。原料成分が多量である場合には、多段型混合装置を用いることが好ましい。
【0038】
上記成分[a]の物性は、特に限定されない。但し、1種のみ用いる場合のそれ自身、及び、2種以上を用いる場合の少なくとも1種が、ブルックフィールド型粘度計(25℃)により、0.1〜数百万mPa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。
【0039】
上記成分[a]としては、単一物質を用いてよいし、組成物を用いてもよい。
前者(単一物質)の場合、高分子(繰り返し単位を有する化合物)及びそれ以外の化合物のいずれでもよい。また、これらの組合せでもよい。
高分子(以下、「液状高分子」という。)としては、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ジエン系(共)重合体及びその水素化物、珪素含有高分子化合物、ポリオレフィン、他のポリオール、ポリアミン、ポリイソシアネート等が挙げられる。尚、上記化合物は、一定又は不定の位置がハロゲン置換されたもの;一定又は不定の位置に、該化合物が有さない他の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基、クロロスルホン基、エポキシ基、イソシアネート基、シリル基)を備えるものであってもよい。
また、液状高分子以外の化合物としては、上記範囲の粘度を有するアルコール、カルボン酸、エステル(多官能アクリレート、多官能メタクリレート等)、珪素含有化合物等が挙げられる。
【0040】
後者(組成物)の場合、無機系物質、有機系物質(上記の液状高分子又はそれ以外の化合物であってもよい。)等が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解した溶液、又は分散した分散液(エマルション等)を用いることができるが、少なくとも1種が高分子(液状、固体のいずれでもよい。)を含むことが好ましい。
上記の溶液又は分散液とする場合に用いられる有機溶媒としては、脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アミン、エーテル等が挙げられる。
上記成分[a]として、単一物質と、組成物とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記成分[b]としては、上記成分[a]の種類、混合物の使用目的等により、選択される。従って、固体でも液体(液状)でもよい。
例えば、上記成分[a]が、高分子(液状、固体のいずれでもよい。)であり、混合物を機能性高分子組成物とするためには、目的に応じた添加剤等が成分[b]として用いられる。この添加剤としては、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤のなかには、固体のものもあれば、液体のものもある。
また、上記成分[a]が、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等のエステル;反応性の珪素含有化合物等であり、混合物を硬化性樹脂組成物等とするためには、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤等の添加剤が成分[b]として用いられる。
また、上記成分[a]が、アルコールを含む場合には、酸化防止剤等の添加剤が成分[b]として用いられる。
【0042】
上記の成分[a]及び成分[b]の使用方法は、特に限定されない。尚、上記成分[a]及び液体(液状)の上記成分[b]の使用の際には、予め、真空脱泡等の方法による脱泡処理を行ってもよい。撹拌槽への導入は、両者を同時に行ってよいし、交互に導入してよいし、一方の全量を先に導入した後、他方を導入してよいし、両者を少量ずつ添加(連続添加、間欠添加又はランダム添加)してもよい。
本発明においては、上記成分[a]が全量投入された撹拌槽に、上記成分[b]を添加(連続添加、間欠添加又はランダム添加)しながら撹拌混合することが好ましい。
【0043】
上記の成分[a]及び成分[b]の撹拌混合は、上記混合装置の回転軸及び撹拌翼を回転させて行われる。上記回転軸の回転数は、特に限定されないが、上記の成分[a]及び成分[b]の種類、回転軸及び撹拌翼の強度、回転軸を固定する回転駆動装置の能力等によって、適宜、選択される。この回転数は、撹拌混合中、終始一定でもよいし、変化させてもよい。
また、上記の成分[a]及び成分[b]の種類によっては、加熱又は冷却しながら混合してもよい。更に、撹拌槽の内部は、常圧であってよいし、減圧されていてもよい。減圧されている場合には、撹拌による気泡を消滅させることができるため、混合時間をより短縮することができる。また、撹拌槽の雰囲気は、目的に応じて選択されるが、空気中であってよいし、窒素ガス等の不活性ガス中であってもよい。
【0044】
本発明の混合方法によると、成分[a]及び成分[b]が均一に混合した混合物を短時間で得ることができる。成分[a]及び成分[b]の物性、例えば、粘度、pH、比重、粒度等が異なる場合に好適である。
【0045】
本発明の混合方法において用いる混合装置は、上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、この翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させた撹拌翼(図8参照)、即ち、傾斜型撹拌翼の羽根の表面が、回転方向に向かって斜め下方向を向くように配設された撹拌翼を備えるものを用いることが好ましい。特に、図7及び図11に示す混合装置において、x1+y1≧r、x2+y1≧r、x3+y2≧r等を満たす場合には、物性が安定した所期の混合物を容易に得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下に例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる例に限定されるものではない。尚、下記記載において、「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0047】
以下の例で用いた混合装置を構成する撹拌槽11は、鏡底(10%SD)であり、内径2,600mm、高さ3,750mm及び内容積15m3のSUS製有底円筒状容器である。また、この撹拌槽11の上方には、撹拌翼を固定するための回転軸12が配設されている。尚、撹拌翼及び邪魔板については、各実験例において、詳細な装置構成を示した。
また、混合原料のうち、液状成分は、主成分がポリアクリル酸エステルであり、固形分濃度が60%、pHが1.5、25℃における粘度が100mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)のエマルションである。このエマルション10,000kg(体積約10m3)に対し、固形分濃度が100%、pHが6.5、25℃における粘度が190mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)、比重が0.91である消泡剤(商品名「ノプコ267A」、サンノプコ社製)5kg、固形分濃度が35%、pHが1.5、25℃における粘度が30mPa・s(ブルックフィールド型粘度計による)であるアルカリ可溶エマルション型増粘剤(商品名「B−500」、東亞合成社製)135kg、及び25%のアンモニア水75kgである。
【0048】
実験例1
本例における混合装置1は、上記撹拌槽11と、回転軸12と、この回転軸12の最下端(撹拌槽11の底部からの高さ300mm)に配設された、長さ1,650mm、幅250mm及び厚さ16mmの平板状平羽根(傾斜角+45度)が4枚、90度間隔で固定された傾斜型撹拌翼13aと、この撹拌翼13aの固定部上端から370mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ形状、長さ及び傾斜角を有する傾斜型撹拌翼13bと、撹拌槽11の内壁面に対して斜め(傾斜角−45度)に、撹拌槽11の底部から592mm上方の高さで、対向して180度間隔に2箇所配設された平板状邪魔板14とを備える(図7参照)。この平板状邪魔板14の大きさは、長さ1,050mm、幅200mm及び厚さ16mmの長径型邪魔板である。尚、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14の張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は1,050mmである。また、撹拌翼13a及び13bの各平羽根の傾斜角が+45度であり、撹拌槽内壁面に斜めに配設されている邪魔板14の傾斜角が−45度であるので、回転軸の回転により撹拌翼13a及び13bと邪魔板14とが最も接近した場合、平行の関係にある。従って、邪魔板14は、撹拌に伴う旋回流に対して上方への流れを形成する。
【0049】
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a及び13b並びに邪魔板14は、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、図7に示す所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は50分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表1に示した。
次いで、撹拌槽11から回収した混合液の一部を採取し、ベーカー式アプリケーターにより、厚さ50μmのPETフィルム上に塗布して、厚さ100μmの塗膜を作製した。その後、縦150mm及び横300mmの面積範囲における泡の数を計測したところ、18個であった(表1参照)。
尚、表1の「混合条件」における撹拌翼及び邪魔板の欄の数字は、配設数を意味する。以下も同様である。
【0050】
実験例2
実験例1で用いた装置(図7)において、撹拌槽内壁面に斜めに配設する邪魔板14の傾斜角を、+45度とした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。即ち、この邪魔板14は、撹拌翼13a及び13bに最も接近した場合、撹拌翼13a及び13bの各平羽根と垂直の関係にある。従って、邪魔板14は、撹拌に伴う旋回流に対して下方への流れを形成する。
所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、実験例1と同様にして粘度の最大値及び最小値並びに泡の数を得た(表1参照)。
【0051】
【表1】
【0052】
実験例3
本例における混合装置1は、上記撹拌槽11と、回転軸12と、この回転軸12の最下端(撹拌槽11の底部からの高さ300mm)に配設された、実験例1の撹拌翼13aと同じ形状、長さ及び傾斜角を有する撹拌翼13aと、この撹拌翼13aの固定部下端から535mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ撹拌翼13bと、この撹拌翼13bの固定部下端から更に525mm上方に配設された、上記撹拌翼13aと同じ撹拌翼13cと、撹拌槽11の内壁面に対して斜め(傾斜角−45度)に、撹拌槽11の底部から477mm上方の高さで、対向して180度間隔に2箇所配設された平板状邪魔板14a(長さ400mm、幅525mm及び厚さ16mmの短径型邪魔板)と、この邪魔板14aの固定部上端から180mm上方の高さであって、且つ、上記邪魔板14aの配設位置から90度ずらして、対向して180度間隔に2箇所配設された、上記邪魔板14aと同じ形状及び長さを有する邪魔板14bと、を備える(図9及び図10参照)。尚、図10の(i)は、図9におけるA−A切断面の断面図である。また、(ii)は、図9において2つの邪魔板14bが手前側及び奥側にあるため図示されておらず、これらの位置関係を表すB−B切断面の断面図である。
また、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mm、撹拌翼13bを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mm、撹拌翼13cを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14aの張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は400mm、邪魔板14bの張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は400mmである。更に、撹拌翼13a、13b及び13cの各平羽根の傾斜角が+45度であり、撹拌槽内壁面に斜めに配設されている邪魔板14a及び14bの傾斜角が−45度であるので、最も接近した場合、平行の位置関係にある。従って、邪魔板14a及び14bは、撹拌に伴う旋回流に対して上方への流れを形成する。
【0053】
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、図9に示す所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は40分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表2に示した。
次いで、撹拌槽11から混合液を回収し、実験例1と同様にして所定面積範囲における泡の数を計測し、その結果を表2に示した。
【0054】
実験例4
本例における混合装置1は、実験例3における邪魔板14a及び14bを、いずれも、実験例1における平板状邪魔板14(長さ1,050mm、幅200mm及び厚さ16mm、傾斜角−45度)とした装置である。
上記の混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は30分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定し、最大値及び最小値を表1に示した。
次いで、撹拌槽11から混合液を回収し、実験例1と同様にして所定面積範囲における泡の数を計測し、その結果を表2に示した。
【0055】
実験例5
実験例4で用いた混合装置1において、撹拌槽内壁面に斜めに配設する邪魔板14a及び14bの傾斜角を、+45度とした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0056】
実験例6
実験例4で用いた装置において、邪魔板を各段において2つずつ増やし、90度間隔に4箇所ずつとした以外は、実験例1と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0057】
実験例7
実験例4の混合装置を用い、以下の要領で混合物を製造した。
撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、撹拌槽11内部を減圧し、内圧を−600mmHgとした。次いで、圧力を保持したまま、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。その後、内圧を大気圧とし、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14a及び14bは、液面より上側に露出することはなかった。
その後、実施例4と同様にして混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0058】
実験例8
本例における混合装置1は、実験例3における邪魔板14a及び14bの代わりに、回転軸方向への長さ260mm、幅2,700mm及び厚さ16mmの平板状邪魔板14の4枚を、鉛直に、撹拌槽11の底部から505mm上方に邪魔板14の下端が来るように90度間隔で固定した傾斜角を有さない邪魔板付き装置である(図14参照)。尚、撹拌翼13aを構成する平羽根の先端と、回転軸12との最短距離は1,650mmであり、邪魔板14の張出端部と、撹拌槽11の内壁との最短距離は260mmである。
【0059】
上記混合装置1を用い、まず、撹拌槽11内に、エマルションの全量を仕込み、その後、消泡剤の全量を投入し、時計回りの回転数40rpmで10分間撹拌した。次いで、同じ回転数で撹拌しながら、増粘剤の全量を添加し、続いてアンモニア水を添加した。全ての混合原料が投入されたときの、静止液面高さは、計算上、撹拌槽11の底部から2,060mmであり、回転数40rpmで撹拌したとき、撹拌翼13a、13b及び13c並びに邪魔板14は、液面より上側に露出することはなかった。
その後、アンモニア水の添加後、10分ごとに、所定の6箇所P1〜P6(回転軸周辺の上層部、中央部及び下層部、並びに撹拌槽内壁近傍の上層部、中央部及び下層部)における混合液のpHをモニターしながら、6箇所全てにおいてpHが6.7となったところで撹拌を終了した。経過時間は40分であった。このとき、撹拌槽11内の上層部、中央部及び下層部における各混合液の粘度(25℃)をブルックフィールド型粘度計により測定したところ、最大値は上層部における13,650mPa・sであり、最小値は中央部における11,350mPa・sであった。
次いで、実験例1と同様にして泡の数を計測したところ、34個であった。
【0060】
実験例9
実験例3における混合装置において、邪魔板14a及び14bを除去した混合装置1(図15参照)を用いた以外は、実験例3と同様にして、所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0061】
実験例10
実験例9における混合装置1を用い、撹拌翼の回転数を60rpmとした以外は、実験例3と同様にして、所定の6箇所におけるpHが6.7となったところで撹拌を終了し、混合物を製造した。各評価結果を表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
以上の実験より、下記のことが明らかである。
実験例9は、邪魔板が配設されていない混合装置を用いた例であり、撹拌槽内の全体にわたって、pHは一定であっても、部分的に粘度が異なっており、粘度の最大値と最小値との差が2,650mPa・sと大きく、不均一であることが分かる。また、泡の数が35個と多かった。
実験例10は、実験例9よりも回転数を上げた例であるが、粘度の最大値と最小値との差が1,110mPa・sと半減したが、泡の数が増加した。
実験例8は、傾斜角を有さない邪魔板を配設した混合装置を用いた例であり、混合原料の停滞部分(特に、旋回流に対して邪魔板14の裏側)が発生したためか、粘度の最大値と最小値との差が2,300mPa・sと大きく、泡数も34個と多かった。
実験例1及び2は、回転する2つの撹拌翼の間に邪魔板が配設された混合装置を用いた例であり、粘度の最大値と最小値との差が、それぞれ、1,000mPa・s及び1,050mPa・sであり、また、泡の数が、それぞれ、18個及び21個と良化した。
実験例3は、3つの撹拌翼と、各撹拌翼の間の2つの邪魔板とを備える混合装置において、回転軸方向への長さが短い邪魔板を用いた例であり、粘度の最大値と最小値との差が900mPa・sと更に良化したが、泡の数が20を超えた。
実験例4〜6は、3つの撹拌翼と、各撹拌翼の間の2つの邪魔板とを備える混合装置において、回転軸方向への長さが長い邪魔板を用いた例であり、pHが一定となるまでの時間が30分と短縮化するだけでなく、混合原料の循環効率が十分であり、粘度差が一層小さくなった。また、実験例7は、撹拌混合の初期において、量的に多いエマルションを減圧下で撹拌したことから、十分な脱気雰囲気とすることができ、更に粘度が均一な混合物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の混合装置は、少なくとも液状成分を含む2種以上の混合原料を用い、撹拌中に、起泡あるいは泡の混入が抑制され、粘度等物性のばらつきの小さい混合物を容易に得ることができる。
特に、液状成分が高分子を含む場合には、塗料、粘着剤、接着剤、インキ、ポッティング剤、シーリング剤、化粧品、硬化性組成物、添加剤等の機能性高分子組成物を効率よく製造することができる。従って、温度、雰囲気等により、分解、変質等のおそれのある成分を用いる等の場合には、短時間で均一な混合物を得ることができ、有用である。
また、塗料、粘着剤等は、気泡が存在すると、塗工後、膨れや破裂等による欠陥が発生することがあるため、泡の混入を抑制することができる本発明の混合装置は、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の混合装置の一例であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図2】傾斜型撹拌翼が回転軸に配設されたことを示す斜視図である。
【図3】混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときの、撹拌槽の上方から見た、回転軸、撹拌翼及び邪魔板の各位置関係の一例を示す概略図である。
【図4】他の混合装置の撹拌槽を、邪魔板の配設位置において破断したときの、撹拌槽の上方から見た、回転軸、撹拌翼及び邪魔板の各位置関係の一例を示す概略図である。
【図5】撹拌槽の内壁に傾斜角+45度の角度で傾斜して配設され、回転軸側から邪魔板の端面が見える邪魔板を示す概略図である。
【図6】撹拌槽の内壁に傾斜角−45度の角度で傾斜して配設され、回転軸側から邪魔板の端面が見える邪魔板を示す概略図である。
【図7】実験例1の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図8】実験例1の混合装置において、2つの傾斜型撹拌翼が回転軸に配設されたことを示す斜視図である。
【図9】実験例3の混合装置であり、撹拌槽を破断して内部の構造を示す概略図である。
【図10】図9におけるA−Aの断面図及びB−Bの断面図であり、(i)は、第1邪魔板の配設位置におけるA−A切断面の断面図、(ii)は、第2邪魔板の配設位置におけるB−B切断面の断面図である。
【図11】実験例4の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図12】図11の混合装置の部分拡大図である。
【図13】本発明の混合装置の他の例を示す概略図である。
【図14】実験例8の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【図15】実験例9及び10の混合装置であり、撹拌槽を破断したときの、内部の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0066】
1;混合装置
11;撹拌槽
111;撹拌槽の内壁面
12;回転軸
13及び13a;第1撹拌翼
13b;第2撹拌翼
13c;第3撹拌翼
131;羽根
14及び14a;第1邪魔板
14b;第2邪魔板
14d;他の邪魔板
141;邪魔板の回転軸側端面
2;液面
3;鉛直線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする混合装置。
【請求項2】
上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
上記第1撹拌翼の翼端における高さが、上記第1邪魔板の張出端部における高さと異なる請求項1又は2に記載の混合装置。
【請求項4】
上記第1邪魔板の張出端部が、上記第1撹拌翼の翼端より高い位置にある請求項3に記載の混合装置。
【請求項5】
更に、上記第1撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第2撹拌翼を備え、該第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項4に記載の混合装置。
【請求項6】
更に、上記撹拌槽の内壁の、上記第2撹拌翼の配設位置より高い位置に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板と、上記第2撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第3撹拌翼とを備え、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項5に記載の混合装置。
【請求項7】
上記第1攪拌翼、上記第2攪拌翼及び上記第3攪拌翼の少なくとも1つが傾斜型撹拌翼である請求項1乃至6のいずれかに記載の混合装置。
【請求項8】
上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、該翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、該上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、該下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にある請求項7に記載の混合装置。
【請求項9】
上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、上記撹拌槽の内壁に斜めに配設されている請求項1乃至8のいずれかに記載の混合装置。
【請求項10】
上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、鉛直線に対して、10〜75度の範囲の角度に傾斜している請求項9に記載の混合装置。
【請求項11】
混合原料が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種の液状成分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載の混合装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする混合方法。
【請求項13】
上記液状成分が全量投入された撹拌槽に、上記他の成分を添加しながら撹拌混合する請求項12に記載の混合方法。
【請求項14】
上記撹拌槽が減圧されている請求項12又は13に記載の混合方法。
【請求項15】
上記液状成分が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種である請求項12乃至14のいずれかに記載の混合方法。
【請求項16】
上記他の成分が、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤、有機溶剤及び水から選ばれた少なくとも1種である請求項12乃至15のいずれかに記載の混合方法。
【請求項1】
撹拌槽と、該攪拌槽内の中心部に垂設される回転軸と、該回転軸に配設される第1攪拌翼と、上記撹拌槽の内壁に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第1邪魔板とを備えることを特徴とする混合装置。
【請求項2】
上記第1撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
上記第1撹拌翼の翼端における高さが、上記第1邪魔板の張出端部における高さと異なる請求項1又は2に記載の混合装置。
【請求項4】
上記第1邪魔板の張出端部が、上記第1撹拌翼の翼端より高い位置にある請求項3に記載の混合装置。
【請求項5】
更に、上記第1撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第2撹拌翼を備え、該第2撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第1邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項4に記載の混合装置。
【請求項6】
更に、上記撹拌槽の内壁の、上記第2撹拌翼の配設位置より高い位置に配設され且つ略回転軸方向に張り出した第2邪魔板と、上記第2撹拌翼の上方の上記回転軸に配設される第3撹拌翼とを備え、上記第3撹拌翼の翼端から上記回転軸の中心までの最短距離と、上記第2邪魔板の張出端部から上記撹拌槽の内壁までの最短距離との和が、上記撹拌槽の内径の半分長さ以上である請求項5に記載の混合装置。
【請求項7】
上記第1攪拌翼、上記第2攪拌翼及び上記第3攪拌翼の少なくとも1つが傾斜型撹拌翼である請求項1乃至6のいずれかに記載の混合装置。
【請求項8】
上記傾斜型撹拌翼を構成する翼を、該翼の上端部及び下端部が、鉛直な仮想面上にともに存在する状態から、該上端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向に向かって前方に移動させ、該下端部を上記傾斜型撹拌翼の回転方向と逆方向に向かって後方に移動させるように傾斜させて、傾斜角が、鉛直線に対して、0度を超えて80度以下の範囲にある請求項7に記載の混合装置。
【請求項9】
上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、上記撹拌槽の内壁に斜めに配設されている請求項1乃至8のいずれかに記載の混合装置。
【請求項10】
上記第1邪魔板及び上記第2邪魔板の少なくとも1つが、鉛直線に対して、10〜75度の範囲の角度に傾斜している請求項9に記載の混合装置。
【請求項11】
混合原料が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種の液状成分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載の混合装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の混合装置を用い、液状成分と、他の成分とを撹拌混合することを特徴とする混合方法。
【請求項13】
上記液状成分が全量投入された撹拌槽に、上記他の成分を添加しながら撹拌混合する請求項12に記載の混合方法。
【請求項14】
上記撹拌槽が減圧されている請求項12又は13に記載の混合方法。
【請求項15】
上記液状成分が、液状高分子、高分子の溶液、及び高分子の分散液から選ばれた少なくとも1種である請求項12乃至14のいずれかに記載の混合方法。
【請求項16】
上記他の成分が、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、光吸収剤、滑剤、充填剤、有機溶剤及び水から選ばれた少なくとも1種である請求項12乃至15のいずれかに記載の混合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−136432(P2007−136432A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337819(P2005−337819)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】
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