説明

混合試料の特性決定法

異なる個体からの核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法であって、各粒子は1つまたは複数の個体からの核酸を含み、粒子を分離し、少なくとも2個の個々の粒子を担体に加え、少なくとも2個の粒子のそれぞれをその都度個々に、疎水性領域に囲まれた、担体の親水性反応部位に10μl未満の容量で加えるので、正確に1個の粒子が反応部位ごとに存在するステップ、遺伝子型を用いて各粒子を混合試料からの個体と関連付けるために、担体に加えられた粒子の少なくとも2個を担体の反応部位において分析するステップであり、分析された粒子の少なくとも80%が個体と関連付けられるステップ、および、分析された粒子をさらに特性決定するステップ、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法であって、各粒子は1つまたは複数の個体の核酸を含み、特に、混合試料中に存在する個体の核酸を有する粒子の絶対数および/または相対数の定量法、および/または混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型の決定法、特に、混合試料中に含まれる核酸からの個体の所定配列の絶対的および/または相対的コピー数の定量法に関する。さらに本発明は、異なる個体の核酸を有する粒子を含む混合試料からの、1つまたは複数の個体の遺伝子型を決定するためのキットであって、混合試料中に含まれる核酸からの、個体の所定配列の絶対的および/または相対的コピー数の定量に特に適したキットに関する。
【背景技術】
【0002】
混合試料、すなわち異なる個体の核酸を含む生体試料を特徴付ける多くの技術分野において、混合試料中にその核酸を含む、1つまたは複数の個体の同定、および/または1つまたは複数の特異的な遺伝子型の特徴付けのための技術に関する要望が高まっている。実際例えば、法医学、遺伝子技術、例えばクローニングまたは医療診断における応用が挙げられる。
【0003】
法医学においては、犯罪現場からの試料は、加害者の特定に関して識別可能な混合試料から結論を導き出すために、2人以上の異なる人の核酸を含んだものしか使用できないことが多い。一般に、どのように混合試料が構成されているか、特にどのくらい多くの異なる個体の核酸を混合試料中に含んだものから、および混合試料中の単一個体の核酸の量比が他に較べてどのくらいのものから構成されているのかは、通常不明である。
【0004】
また、医療診断においては、混合試料の特性決定が課題となることが多い。検査を受ける妊婦に感染のリスクを有する羊膜穿刺または絨毛膜生検の別法として、出生前診断において既に出生前の段階で重篤状態を識別できるようにするために、胎児の細胞を含む母親の血液から胎児の遺伝子型を決定する試みが近年行われている。多くの一部の重篤な状態はゲノム中の核酸配列の正常なコピー数からの逸脱によって生じるので、このような状態を発生の初期の段階で、ある染色体またはある遺伝子部分のコピー数を測定することにより、予め確実に診断することができる。全染色体のコピー数の増加による可能性がある重篤な異常の一例としては、18トリソミー(エドワード症候群)、13トリソミー(パトー症候群)、また21トリソミー(ダウン症候群)が挙げられる。健常な個体では1細胞あたりの染色体のコピー数が2本しかないのに対し、それぞれのこれらの状態では、1細胞あたりの18、13および21番に対応する染色体のコピー数が3本である。すべての3つの場合、関係する染色体のコピー数の増加が、最も重篤な発生上の問題を引き起こす。全染色体のコピー数の増加が原因であるとされる異常に加えて、遺伝子または遺伝子部分のコピー数の変化に関する多くの異常が知られている。ほんの一例として、精神的および身体的能力の進行性衰退を伴った、異常な無意識運動が特徴的な進行性神経変性異常であるハンチントン病が、これに関連して挙げられるだろう。胎児細胞中の、相当する染色体、遺伝子または遺伝子部分のコピー数を決定することによって、相当するこの種の異常を出生前に予め診断することができる。しかし、母親の血液から胎児の遺伝子型を判定することには問題が多い。なぜなら母親の血液中の胎児の細胞はわずか約1:1000000の割合(胎児の細胞/母親の細胞)でしかなく、また母親の細胞と胎児の細胞間の正確な相対比は初期では不明で、さらに複雑で高価な検査をしなければ明らかにできないからである。
【0005】
同様の問題は、癌の診断、例えば癌細胞の存在を調べる生体試料の検査においても存在する。もし生体試料が実際に癌細胞を含んでいれば、これが健常細胞と癌細胞を含む混合試料であり(これは本発明において2個の異なる個体の細胞とみなされるのだが)、他に対する個体細胞種の量比は不明であり、また癌の進行がどの段階であるかを決定するためには複雑で高額な検査により決定しなければならない。
【0006】
異なる個体の核酸が存在すること、および他に対するこれらの異なる核酸の量比が未知である結果として、特性決定されるべき個体の核酸にさらに含まれている他の個体の核酸が、特性決定されるべき個体の核酸の特性決定を妨害するので、混合試料を直接遺伝子検査することが不可能であったり間違った結果を導き出したりしていることが多い。これは特に、胎児の細胞を含んだ母親の血液の場合など、混合試料中の特性決定されるべき個体の核酸量が、それとともに存在する他の個体の核酸量に比べて著しく少ない場合である。もし混合試料が特性決定されるべき個体に関して富化されても、例えば蛍光標識抗体を用いて胎児の細胞を富化しても、特性決定される個体に関して純粋な試料を得ることは一般にできない。公知の方法においては、誤った正の結果(母親の細胞が間違って胎児の細胞として分類される)および/または誤った負の結果(胎児の細胞が見落とされる)が生じる。
【0007】
上記の問題はまた、相当する細胞がきれいに単離できていない、およびそれに付随した他の細胞が認識されずに単離物中に存在する場合の個体細胞検査において生じる。組織から個々の細胞を単離する際に、他の細胞の細胞膜断片を含む核酸が標的細胞に付着することが多いので、個体細胞は他の細胞の核酸によって望ましくない汚染を受けることが多い。このような細胞単離物の特性決定において得られた結果は、存在する他の細胞の影響で誤っていることが多い。(非特許文献1)
【非特許文献1】Fendt & Raffeld, J.Clinical Pathology (2000), 53:666-672.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことは下記の概念実験に関して説明されうる。患者の生体試料に関して、細胞が癌細胞に変異したかどうかを判定することを目的とする。この点で、検出されるべき癌細胞は健常細胞と比較してある遺伝子の2倍のコピー数のmRNAを有するので、癌細胞はその遺伝子を過剰発現することが知られている。もし例えば、健常細胞が付着した癌細胞からなる混合試料を検査すれば、健常細胞に対応する遺伝子の発現と変異細胞に対応する遺伝子の発現の合計からなる混合された結果が得られる。mRNA含量によって定量されうる遺伝子発現は、健常細胞と比較して測定される。この点で、1個の健常細胞に対応する遺伝子発現が100%であり、2個の健常細胞のそれは200%、3個の健常細胞のそれは300%であるが、1個の癌細胞の遺伝子発現は200%となる。従って、1個の健常細胞と1個の癌細胞からなる混合試料を検査すれば、遺伝子発現は300%となり(健常細胞の100%に癌細胞の200%を加える)、(100%+100%=)200%の遺伝子発現である2個の健常細胞からなる対照試料との関係は、300/200=1.5の試料/対照試料比となる。一方、他の細胞の細胞成分を含まない個々の細胞を用いて2つの実験を行えば、健常細胞(100%遺伝子発現)の検査では、試料の対照試料(100%遺伝子発現する1個の健常細胞)に対する比は1となる。一方、癌細胞(200%遺伝子発現)の検査においては、試料の対照試料(100%遺伝子発現する1個の健常細胞)に対する比は2となり、2個の細胞の実験に対する1.5の比と比較して検出が著しく容易である。
【0009】
しかし、たとえ他の核酸を含まない純粋な個々の細胞が個体の細胞検査のために存在したとしても、通常のマイクロタイタープレート中の個々の細胞はしばしば容器の縁に知らないうちに付着することが多く、PCRに典型的な50μl未満の容量の反応溶液を加えても懸濁されないので、統計的にその場合の40から70%と思われる結果しか、それに対して行ったPCRの増幅産物中に得られない。通常のピペッティング装置を用いて1ウェル当たり正確に1個の細胞が注入される96ウェルマイクロタイタープレート中では、増幅反応は従って通常の方法では試料の約35〜65パーセントに対してしか行われない。
【0010】
現在、異なる個体の核酸を含む混合試料を用いて、定性的および/または定量的組成に対して、すなわち核酸が混合試料中に含まれおよび/または個々の異なる核酸の他に対する量比が不明である異なる個体の数から、混合試料中に含まれる個体の遺伝子型に関して確実にかつ速やかに分析できる方法はない。むしろ、この目的のための公知の方法は、検査される個体とは異なる他の個体の核酸の影響を受けて、不正確または少なくとも信頼できない結果を導き出す。さらにこれらの方法は概して時間がかかり、コストが嵩む。
【0011】
本発明の目的は従って、個体の核酸を有する混合試料中に存在する粒子の絶対数および/または相対数、および/または1つまたは複数の個体の遺伝子型を、混合試料から、簡単に、速やかに、特に確実に決定することができる、異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法を利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、特許請求項1に記載の方法により、特に異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法により、特に混合試料中に存在する個体の核酸を有する粒子の絶対数および/または相対数の定量、および/または混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型の決定のために、特に混合試料中に含まれる核酸からの個体の所定配列の絶対的および/または相対的コピー数の定量のために達成することであり、ここで各粒子は1つまたは複数の個体の核酸を含み、a)粒子を分離し、および少なくとも2個の個々の粒子を担体上へ適用するステップであって、少なくとも2個の粒子のそれぞれを担体の親水性反応部位に10μl未満の容量でそれぞれ個々に加え、各親水性反応部位は疎水性領域によって囲まれているので、正確に1個の粒子が各反応部位に対して存在するステップ、b)担体の反応部位上の担体上に加えられた少なくとも2個の粒子を増幅反応を用いて、その粒子を混合試料からの個体と遺伝子型によってそれぞれ関連付けるために検査するステップであって、個体の検査される粒子の少なくとも80%が異なる個体と関連付けられるステップ、およびc)さらに検査される粒子を特徴付けるステップを含む方法により達成することである。
【0013】
本発明の意義において、混合試料は試料、特に核酸をそれぞれ含む少なくとも2個の粒子を含む生体試料と理解され、ここで少なくとも2個の異なる個体の核酸は、粒子あたりまたは粒子全体中の試料に含まれる。用語「粒子」はここでは小断片を意味する。核酸は粒子中に含まれうる、または粒子に結合しうる。相当する粒子の例としては、細胞、特にその中に核酸が含まれる未溶解細胞およびたとえばハイブリダイゼーションを介してプライマーと結合する核酸を有する磁性粒子が挙げられる。
【0014】
用語「個体」は、本発明の意義において、他と異なる個人−ヒトの場合−だけでなく、むしろ特にまたその遺伝子型に関して他から区別される個人の異なる細胞種を含む。この例としては、遺伝学的モザイクやキメラ、すなわち最初異なる遺伝子型の混合または交換により生じる人の異なる遺伝子型(キメラ)の細胞または個体において発生する人の異なる遺伝子型(遺伝学的モザイク)の細胞が挙げられる。遺伝学的モザイクの例としては、LOH(「異型接合性の喪失」)を介して発生する癌細胞が挙げられる。
【0015】
混合試料の特性決定法は、本発明において特に、混合試料がその組成に関して定性的および/または定量的に特徴付けられることを意味する。混合試料の特性決定とは従って例えば、混合試料中に存在する異なる個体の絶対数の定量、混合試料中の個体の相対数/頻度の定量(例えば細胞種AおよびBを含む生体試料中の細胞種Aのパーセント割合の決定)および/または混合試料中に代表される1つまたは複数の個体の遺伝子型の決定を含む。
【0016】
本発明の意義において、1つまたは複数の個体の遺伝子型の判定は、特に少なくとも1つの所定配列が個体に存在するか否かに関しての特性決定、少なくとも1つの所定配列のコピー数および/または核酸配列に関しての特性決定、すなわち特に所定配列、例えばゲノム、遺伝子または遺伝子部位の絶対数または相対数の決定を意味すると理解されるであろう。
【0017】
さらに個体中の所定配列数の相対定量とは、本発明の意義において、個体のゲノムが含む所定配列のコピーが対照試料のそれより少ないか、同じか、より多いのかを判定することを意味し、個体中の所定配列数の絶対定量とは、本発明の意義において、個体のゲノム中に存在する所定配列の具体的なコピー数を決定することを意味する。
【0018】
さらに、用語「相同配列」は、本発明の意義において、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、さらに特に好ましくは少なくとも95%のヌクレオチド配列に関して類似性を有する配列を示し、一方、非相同配列は互いに相応して低い配列類似性を有する配列である。
【0019】
本発明の方法を用いれば、異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料を、速やかに簡単におよび特に確実に特徴付けることができる。この方法を用いれば、特に混合試料中に存在する個体の核酸を含む粒子の絶対数および相対数に関して、確実な結果を得ることができる。さらにこれによれば、混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型を確実に判定することができる。
【0020】
本発明の方法の重要な特徴は、混合試料の粒子または細胞をまずステップa)において分離し、先行技術から公知である多くの個々の工程とは対照的に、他の細胞を含まない、またはそれに結合した他の細胞成分が入らない、担体の反応部位ごとに、正確に1個の粒子または1個の細胞を後で入れることを可能にすることである。このようにして、この細胞またはこの粒子を、その個体と無関係な核酸の影響を受けることなく分析できることが保証される。
【0021】
さらに、その都度1個の細胞を疎水性領域に囲まれた担体の親水性反応部位上に加えることにより、単離細胞に含まれた液体から形成された、または細胞から加えられた液滴の形成は、反応部位上に加えられた後、比較的しっかりと担体に固着することができるので、本発明の方法の次のステップb)およびc)を、細胞を密閉反応容器などに移さずに、直接反応部位で行うことができる。このようにして複雑で時間のかかる移し変えのステップを一方では回避する。さらにこのようにして、対応する多数の複数のプローブを、担体上に構成された他から空間的に離れた親水性反応部位上に、空間的に他と接近している液滴がわずかな振動や液滴容量が多すぎて液滴が流れることにより他と混合する危険性無しに、並行して準備することができる。
【0022】
特に、本発明により提供されたこのような担体上に粒子が加えられる有利性は、通常のマイクロタイタープレートと比べて、分析される材料の光制御が実際の分析より前に直接可能であるということである。例えば、正確にただ1つの単細胞を各反応部位上に加えたことを、顕微鏡によって確認することができる。顕微鏡の精度が深度に関して欠けていることや他の理由から、かなりの費用と複雑さ無しでは、このようなことは3次元の反応容器中では不可能である。従って、例えばPCRを通じて行われるステップb)における遺伝子型の最適化と組み合わせて、検査される粒子の少なくとも80%は個体と関係がありうる、または個体と関係があることを保証することができる。
【0023】
細胞を好ましくは1μl未満の容量で反応部位上に導入することにより、ステップb)およびc)の方法を、試料をあらかじめ気化により濃縮したりまたは密閉反応容器中に移したりすることなく、直接反応部位で実行することができる。さらに、最小限の液量が分離後の細胞に残るので、次のステップb)およびc)の方法が酵素反応を含む場合に、これらのステップの方法を妨害する可能性のある、反応部位での大量の汚染物質の混入を防ぐ。これと対照的に、多くの公知の個体の細胞の工程においては、細胞を細胞培養用培地または血液などの体液から単離し、かなりの容量の細胞培養用培地または体液中の細胞を、反応容器に入れる。有意な量の汚染物質がこの容量の細胞培養用培地または体液中に含まれるので、さらに時間や手間のかかる試料の洗浄無しでは、この工程での酵素反応は不可能である。
【0024】
以上の理由から、少なくとも2個の個々の粒子に対して、それぞれ100nl未満、特に好ましくは10nl未満、さらに特に好ましくは1nl未満、最も好ましくは100pl未満の容量で、担体の対応する反応部位上に加えることが好ましい。
【0025】
本発明の方法のさらに重要な特徴は、反応部位上に個々に加えられた少なくとも2個の細胞または粒子を、担体の反応部位上で行われた判定によって、核酸を含む混合試料中を代表する個体の加えられる粒子から、混合試料中に含まれた個体に対して関連付けを行うことであり、ここで検査される粒子の少なくとも80%が個体と関係がありうる、または個体と関係がある。このようにして、ステップc)の方法による検査される粒子のさらなる特性決定の前に、一方では反応部位に加えられた細胞が、無関係な個体の細胞成分を含まない、実質的に純粋な個体の細胞であることが確認される。一方では、したがって加えられた細胞のそれぞれが標的細胞であるか偽陽性細胞であるかを確認することができる。したがって、この後に行われる検査される細胞のさらなる特性決定の結果を独自に個体と関連付けることができる。分離および遺伝子学的分析による加えられる粒子の混合試料中に含まれた個体との次の関連付けの結果として、明白な結論をこのようにして導き出すことができる。
【0026】
ステップb)の方法における遺伝子型による検査において、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、さらに特に好ましくは98%、最も好ましくは100%の検査される粒子を、個体と関連付けることができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、ステップc)の方法による検査される粒子のさらなる特性決定は、個体の核酸を有する混合試料中に存在する粒子の絶対数および/または相対数の決定、および/または担体の反応部位上に加えられた粒子の遺伝子型の判定を含む。このようにして、混合試料の定量的および/または定性的組成に関する結果が得られる。この実施形態においては、例えば、胎児の細胞を含む母親の血液から、胎児が21トリソミーを有しているかどうかを決定することができる。このほかに、患者における癌の進行をこの実施形態で決定することができ、癌組織中、すなわち癌細胞と健常体細胞を含む混合試料中の癌細胞のパーセント割合を決定する。
【0028】
好ましくは担体の反応部位上に加えられる粒子は細胞であり、特に好ましくは未溶解細胞である。溶解細胞と対照的に未溶解細胞では、個体の全ゲノムを含むことを光制御により保証することができるので、未溶解細胞が好ましい。このほかに、粒子はその都度特定の個体の核酸を有するあらゆる断片、例えばDNAまたはRNAプローブで標識された断片、プローブ上にハイブリダイズされたDNAまたはRNAで標識された断片であることができる。
【0029】
本発明の概念をさらに発展させたものとして、分離および/または少なくとも2個の粒子の担体上への適用を、キャピラリーを用いて、レーザープレッシャーカタパルティング法(「レーザープレッシャーカタパルティング」法)を用いて、または好ましくは蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いたフローサイトメーターを用いて行うことが提案される。本発明において、各上記の技術を用いて、個々の細胞を混合試料から意図的に他の細胞成分を含まないように調製することができ、担体上に加えることができることが明らかとなった。粒子または細胞が1つの個体の核酸しか有さず、従って無関係な核酸の影響を受けずに遺伝子学的に検査することができるので、これは好都合である。上記の方法のさらに有利な点は、これを用いて、粒子または細胞をきわめて少ない液量で担体に加えることができ、従って直接および酵素的に、すなわちさらに洗浄して検査することができることである。これと比較して、個体の細胞を調製するための通例の工程、例えばマイクロマニピュレーションにおいては、個体の細胞がキャピラリーで高希釈懸濁液から顕微鏡を用いて吸い上げられ、細胞はかなりの量の液体とともに単離される。液体中に含まれる汚染物質、例えば細胞培養用培地や血液中のプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、塩などが含まれる結果として、このような単離物を酵素反応に用いる前に、このような単離物から液体だけでなく汚染物質を除去する必要がある。
【0030】
上記技術の1つを利用できる市販の装置の例としては、例えばエッペンドルフ社、ハンブルクのマニュアルキャピラリーシステム、AVISO Gmbh、ゲーラの自動装置CellCelector、例えばPALM社、ベルンリートのレーザープレッシャーカタパルティング法に基づく装置、および例えばベクトン・ディッキンソン社およびダコ・サイトメーション社からのFACS装置が挙げられる。
【0031】
FACS装置の操作方法は通常以下のとおりである。粒子または細胞を含む懸濁液をノズルを通して導入し、そこで液体の流れは、個々の液滴を有する他から分離された個々の液滴に分割され、各々は所定の数の細胞を含む。すべての液滴または選抜された個々の液滴は、ノズルから分離された後、電気的に帯電しており、個々の液滴は電場を通って案内され、それにより1つまたは複数の電気的に帯電した液滴が選択的に担体上に導かれる。個々の液滴が電場を通って導かれると、電気的に帯電した液滴または小滴だけが屈曲し、相応して位置付けられた担体上に加えられる。懸濁液はノズルで、周期的な圧力変動を、ノズルを通じて液体噴流に加える圧電性調節によって分離され、その結果、規定された再現可能な大きさの液滴がノズルで生じ、これらは液体噴流から引きはがされる。懸濁液中の細胞濃度、懸濁液の流速および圧電性調節を対応するように設定することによって、各液滴が規定された再現可能な大きさを有し、所定の数の細胞、例えば正確に1個の細胞を含む状態を達成することができる。小滴はノズルから、重力による圧力変動の衝撃により分離される。
【0032】
本発明の方法において用いられる担体は、好ましくはスライド、特に好ましくはスライドガラスであり、一方ではなぜならこれらは平らであり、また他方では、これらは親水性領域(ここでまた反応部位とも言う)および疎水性領域を設けるのに非常に適しているからである。
【0033】
担体上に加えられた液滴中で次の酵素反応が可能となるように、本発明の概念をさらに発展させて、担体上に実質的に円形の親水性反応部位を作製し、これらを少なくとも実質的に円環状疎水性領域で囲むことが提案される。対称配列となるように、円環状疎水性領域は好ましくは、同心円状に円形の親水性領域を囲むものとする。
【0034】
担体の親水性反応部位を囲む疎水性領域が、その外側を親水性領域によって囲まれるとき、担体上にさらに良い液滴を形成することができ、外側の親水性領域は好ましくは本質的に円環状であり、特に好ましくは同心円状に疎水性領域を囲む。外側の親水性の円環は好ましくは、その外側を疎水性領域によって囲まれる。従って特に好ましい配列は、2個の円環によって同心円状に囲まれた親水性領域から構成され、2個の円環のうち内側は疎水性であり、2個の円環のうち外側は親水性であり、外側の親水性の環はその外側を疎水性領域によって囲まれている。
【0035】
親水性反応部位の親水性およびそれを囲む範囲の疎水性を、10μl未満の水を反応部位に加えたとき、20〜70°、好ましくは30〜60°、特に好ましくは40〜50°の接触角の水滴が形成されるように設定するとき、特に良好な結果が、特に得られる。このようにして、反応部位にしっかりと固着する安定な液滴ができるので、例えば実験室中で担体の移動中に発生するような担体のごくわずかな振動によっても、液滴がガラスプレートから分離しない、またはガラスプレート上を流れないことが保証される。
【0036】
親水性反応部位の直径は0.3〜3mmの範囲になることが好ましく、実質的に円形が好ましい。
【0037】
複数の試料を並行して調製できるようにするために、本発明の概念をさらに発展させたものによれば、2〜1000個、好ましくは12〜256個、特に好ましくは24〜96個、さらに特に好ましくは48個の異なる本質的に円形の親水性反応部位を担体上に提供し、親水性反応部位は実質的に円形の疎水性領域によってそれぞれ同心円状に囲まれており、疎水性領域はその外側で実質的に円環状親水性領域によって囲まれており、円環状親水性領域は好ましくはその外側で再び疎水性領域に隣接していることが提案される。
【0038】
本発明の方法は基本的に、用いられる粒子の性質に依存しない、混合試料中に代表される異なる個体の数に依存しないすべての混合試料の特性決定に適当である。良好な結果は特に、混合試料が少なくとも2個ただし10個未満の異なる個体の核酸、特に好ましくは少なくとも2個ただし5個以下の異なる個体の核酸、さらに特に好ましくは2個または3個の異なる個体の核酸、最も好ましくは正確に2個の異なる個体の核酸を含むときに得られる。
【0039】
本発明に基づく方法は基本的に、他に対する個々の核酸の濃度差に関係なく、すべての混合試料に用いることができる。混合試料中に含まれる単一個体の他に対する核酸濃度の差が1:1000〜1:1、好ましくは1:100〜1:1、特に好ましくは1:10〜1:1となるとき、良好な結果が特に得られる。
【0040】
しかし、もし混合試料における検査される個体の核酸の割合が、他の個体の核酸に対して1:1000未満となるなら、例えば胎児の細胞を含む母親の血液の場合はいつも、ステップa)によって分離する前および担体上へ加える前に、検査される個体の核酸を有する粒子に関して、混合試料を富化することが好都合であることが明らかにされている。なぜなら、そうしなければ統計学上、検査される個体の標的粒子が担体上に加えられるまで、多数の粒子を検査しなければならないからである。富化は当業者に公知のすべての方法、例えば富化される細胞種に特異的に結合し、従ってその細胞種を標識する蛍光標識抗体を用いて行うことができる。このほかに、コーティングされたキャッチング粒子またはコーティングされた磁性粒子を用いることができる。さらに適当な富化法の例としては、フローサイトメーター、特に一般に粒子の分類および/またはそれらの富化に蛍光標識抗体で作動する蛍光標示式細胞分取器(FACS)の利用が挙げられる。この装置は、富化される粒子または細胞種の富化中に、蛍光認識と富化が1つの装置で行われるので有利である。
【0041】
上記の特徴の結果、本発明の方法は特に、胎児の細胞を含んだ母親の血液を含む混合試料の特性決定、好ましくは母親の血液を含む胎児の細胞からなる混合試料の特性決定に適当である。
【0042】
同様に本発明の方法は、健常細胞とまたLOHによって特徴付けられる癌細胞を含む混合試料の特性決定、好ましくは健常細胞とまたLOHによって特徴付けられる癌細胞からなる混合試料の特性決定のためにある。
【0043】
さらに本発明の方法は、健常細胞とまたMIN(マイクロサテライト不安定性)によって特徴付けられる癌細胞を含む混合試料の特性決定、好ましくは健常細胞とまたMINによって特徴付けられる癌細胞からなる混合試料の特性決定に好適に提供されることが判明している。
【0044】
本発明によれば、粒子を分離し少なくとも2個の個々の粒子をそれぞれ疎水性領域に囲まれた担体の1個の親水性反応部位上に10μl未満の容量で加えた後、各個々の担体の反応部位上に加えられた粒子がステップb)の方法によって混合試料中に代表される個体と関連付けられ、ステップb)の方法で検査された粒子はその後さらにステップc)の方法によって特徴付けられる。ステップb)による粒子の混合試料中に含まれる個体との関連付けは好ましくは増幅反応を用いて行われ、標的個体に特異的な遺伝子部分のプライマーペアを適切にこの増幅反応に用いる。
【0045】
検査される粒子のさらなる特性決定は例えば、個体の核酸を含む混合試料中に存在する粒子の絶対数の決定、または全混合試料に関係した個体の核酸を含む粒子の相対比の決定と関係付けることができる。同様に混合試料のさらなる特性決定は、染色体、遺伝子または遺伝子部位の相対的または絶対的コピー数の決定でありうる。後者の場合特に、ステップc)による粒子のさらなる特性決定をまた担体の反応部位上で増幅反応を用いて行うことが好ましい。
【0046】
増幅反応は、核酸、すなわちDNAまたはRNAを複製することができる、好ましくはほとんど指数関数的に複製する、当業者のすべてに公知の反応でありうる。特に、増幅反応としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことが好都合であることが明らかとなっている。
【0047】
行われる増幅反応の種類とは関係なく、特に粒子が細胞である場合、反応部位上に加えられた粒子を熱的にまたは増幅反応を行う少なくとも1つの加熱/冷却サイクルによって可溶化することが好都合であることが明らかになっている。
【0048】
行われる増幅反応は特異的増幅反応であることが有利である。
【0049】
特に混合試料中の粒子がきわめて少量の核酸、例えば1pg未満しか含まない場合、これは例えばその表面上に存在するプローブを介して加水分解される核酸を有する磁性粒子が粒子として用いられる場合に起こりうるのだが、ステップb)による粒子の混合試料中に含まれる個体との関連付のための増幅反応より前および/またはステップc)による検査される粒子のさらなる特性決定のための増幅反応より前に、粒子中または粒子上に含まれた核酸を非特異的PCRにより複製することが好都合であることが明らかにされている。非特異的PCRの後に、特異的PCRを行うことができる。
【0050】
本発明によれば、ステップb)によって、担体上のそれぞれの反応部位上にそれぞれ個々に入れられた少なくとも2つの粒子は、遺伝子型によって担体の反応部位上でこれらを混合試料からの個体と関連付けるために検査される。この目的のために以下に記載された実施形態は特に適当であることが明らかにされている。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、増幅反応を行うために必要な反応成分、PCRの場合好ましくはプライマーが、粒子を反応部位上に加える前に、親水性反応部位上に存在している。しかしまた、粒子を加えた後、反応成分を担体の親水性反応部位上に液体の形で粒子上に加えることも可能である。
【0052】
本発明の概念をさらに発展させて、増幅反応を、他と相同なおよび/またはコードされたDNA範囲と相同でないおよび特に好ましくはコードされないDNA範囲と相同でない1個の配列または少なくとも2個の配列の増幅に適応することが提案される。公知の方法において、コードされないDNA範囲は実質的にコードされたDNA範囲よりも多型であるので、コードされないDNA範囲からの配列の増幅によって、個体に特異的な配列を比較的高い確率で増幅することができる。このことは、法医学における混合試料および胎児の細胞を含む母親の血液からの胎児の細胞の遺伝子型の特性決定の両方に好都合である。
【0053】
同じ理由から、増幅反応を1個の配列または他と相同および/または相同でない少なくとも2個の高度多型配列の増幅に適応することが好都合であることが明らかとなっている。特に増幅反応が1個の配列または他と相同および/または相同でない少なくとも2個の配列の増幅に適応される場合、良好な結果が、STR配列、VNTR配列、SNP配列、およびいくつかの望ましいこれらの組み合わせからなる群から選択される配列に対して得られる。STRすなわち縦列型反復配列は、ただ2〜4bp長の反復単位からなる高度多型配列であり、単一個体間に高い可変性を有する。これと対照的に、VNTRすなわち縦列反復配列多型は約15〜30bp長の反復DNA部分からなり、その全長はこの塩基単位の反復数によって決定される。VNTR配列は一般に高度多型であり、すなわちそれぞれの反復単位の数は異なる個体間ではっきり区別される。SNP(単一ヌクレオチド多型)に関しては、相同配列がただそれぞれ1塩基によって区別される、最も単純な多型である。単一個体間で極めてはっきり区別されるので、これらの配列はまた本発明の方法を行うのに非常に適している。またこれ以外にすべての他の高度多型配列はマーカーとして本発明による方法に適当である。
【0054】
さらに、増幅反応または特にステップc)において用いられる増幅反応を、1個または、他と相同であるおよび/または他と相同でない少なくとも2個の配列を増幅するのに適応することは好ましく、それは個体のゲノム中の対立遺伝子ごとに1度だけ起こる。従って増幅産物の特性決定において、個体の個々の対立遺伝子についての結果を得ることができるので、例えば、混合試料中の個体の多くの個々の対立遺伝子を決定することができる。
【0055】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、ステップb)による検査およびステップc)による検査をうける粒子のさらなる特性決定を同時に、すなわち1ステップで行う。
【0056】
増幅反応を好ましくは、他と相同であるおよび/または探索される個々の混合試料と相同でない1〜100個、好ましくは2〜20個、特に好ましくは5〜15個の配列の増幅に適応する。このようにして十分に異なる増幅産物が、標的とされる個体に特異的な結果を得るために、増幅産物の特性決定中に得られる。しかし、実験のコストおよび複雑さが大きすぎるということはない。
【0057】
ステップc)の方法により検査される粒子のさらなる特性決定に関しては、増幅反応中に得られた異なる増幅産物の数を例えば決定することができ、数の決定には好ましくは、少なくとも1つの増幅産物が存在するか存在しないかの判定、また得られた増幅産物の第二の物理的におよび/または化学的に測定可能なパラメーターの判定を含む。増幅産物が存在するか存在しないかの判定に関しては、当業者に公知のすべての方法をこの目的のために、例えばゲル電気泳動、ハイブリダイゼーション技術など、特に例えばDNAアレイといわれるものを用いることができる。この点について、用いられる検出方法に基づいて、想定されるPCR産物の存在量を超える、およびPCR産物の存在量未満に閾値を決めることは好都合でありうる。
【0058】
増幅反応が正しく行われているか、特に初期に用いられるサーマルサイクラーに欠陥がないかを調べるために、本発明の概念をさらに発展させたものとして、PCRが正常に働けば公知の長さの増幅産物を公知の数生じる対照試料と同一条件下で、増幅反応を並行して行うことが提案される。
【0059】
ステップc)の方法によって検査される粒子のさらなる特性決定に関しては、増幅される、他と相同であるおよび/または相同でない配列の正の増幅反応に対する相対頻度がそれぞれ少なくとも実質的に同じ水準であるような方法で、増幅反応におけるパラメーターを設定することが好都合であることが、さらに明らかになっている。従って、分析中に間違えた結果を導き出すかもしれない、増幅反応を行う中でのいくらかの不正規性の結果として、唯一の個体の増幅産物だけが得られ、他は得られないということは、確実に不可能になる。増幅反応におけるパラメーターが、他と相同であるおよび/または他と相同でない各配列の正の増幅反応に対する相対頻度が0.2と1未満の間、好ましくは0.4〜0.6、また特に好ましくは約0.5となるように選択されるとき、良好な結果が特に得られる。
【0060】
増幅産物の特性決定に関しては、特に混合試料中に代表される個体の所定配列の相対コピー数が決定される場合、検査される少なくとも2個の粒子の増幅反応より前、後、または好ましくは並行して、少なくとも1つの増幅反応は、対照試料と同一条件下、その都度混合試料から1個の反応部位上に入れられた少なくとも2つの粒子に用いられたものと同一条件下で行われるべきであり、ここで対照試料は好ましくは加えられた粒子と同量の核酸を有し、および対照試料は好ましくは公知の遺伝子型を有する。この少なくとも1つの増幅反応で得られた異なる増幅産物の数を、加えられた粒子で行われた増幅反応での異なる増幅産物の数と比較すると、検査された個体の検査された所定配列の相対コピー数を決定することができる。
【0061】
検査される個体の所定配列の絶対コピー数が決定される場合に関しては、本発明のさらなる発展において、少なくとも2個の加えられた粒子ともに、少なくとも1つの度数分布とともに行われた増幅反応で得られた異なる増幅産物の数と比較することが提案される。この種の度数分布は好ましくは、混合試料から反応部位上に入れられた少なくとも2つの粒子に用いられたものと同じ反応条件下、少なくとも2個の異なる対照試料を用いて、別々に同じ増幅反応をそれぞれ複数回行うことにより得られ、ここで粒子中に含まれるのと同量の核酸を増幅反応中に用い、少なくとも2個の異なる対照試料はそれぞれ他とは異なる公知のコピー数の所定配列を有する。この点について、反応試料の増幅反応は、検査される粒子の増幅反応より前、後、または−特に好ましくは−並行して行うことができる。次に対照試料について得られた異なる増幅産物の数を決定することによって、およびこれらの数を担体の反応部位上に加えられた粒子に対して行われた増幅反応で得られた異なる増幅産物の数と比較することによって、検査される個体の所定配列の絶対コピー数を決定することができる。
【0062】
度数分布は好ましくは、繰り返し、例えば10回または100回行われた最小2個の対照試料それぞれの増幅反応の記録に用いられる。公知のコピー数の所定配列を有する出発原料は度数分布の記録のための増幅反応において用いられるので、検査される混合試料の粒子中の所定の配列のコピー数を比較することで、結果が確実に導き出される。
【0063】
ステップb)の方法による、担体の反応部位上で行われた遺伝子型による、少なくとも2個の検査される粒子の混合試料中に含まれた個体への関連付けのためおよび/またはステップc)の方法による検査される粒子のさらなる特性決定のために増幅反応を行うことの代案として、検査される粒子の混合試料中に含まれる個体への関連付けおよび/または担体の反応部位上で検査される粒子のさらなる特性決定をまた、mRNAレベルでの遺伝子発現検査によって行うこともできる。
【0064】
さらに本発明の課題は、異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法であって、各粒子は1つまたは複数の個体の核酸を含み、
a)粒子を分離し、2〜1000個、好ましくは2〜100個、特に好ましくは2〜10個、さらに特に好ましくは2〜5個の粒子を、担体の親水性反応部位上に10μl未満の容量で加えるステップであって、親水性反応部位は疎水性領域に囲まれているステップと、b)粒子を遺伝子型によって混合試料からの個体とそれぞれ関連付けるために、反応部位上に加えられた粒子を含む、担体の少なくとも2個の反応部位を検査するステップであって、少なくとも80%の検査された粒子が1個の個体と関連付けられるステップと、c)さらに検査された粒子を特徴付けるステップとを含む特性決定法である。
【0065】
さらに本発明は、異なる個体の核酸を有する粒子を含む混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型を決定する、本発明による上記の方法を行うためのキットに関し、a)少なくとも1つのPCR中、混合試料中に含まれる核酸の少なくとも1つの中に含まれる多型範囲を増幅することができる、少なくとも1つのプライマーペアと、b)その上に少なくとも1個、好ましくは2〜1000個、特に好ましくは24〜96個の、疎水性領域に囲まれた親水性反応部位が設けられている、担体、好ましくはスライドガラスと、c)もし必要であればPCR緩衝液と、d)a)によるPCRを行うためのプロトコルとを含むキットに関する。
【0066】
本発明の意義において多型の範囲は、例えば配列長または配列そのものの中で、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに特に好ましくは少なくとも90%の確率で他と無関係な不規則に選ばれた個体間から区別されるゲノム範囲であると理解される。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、キット中に含まれる担体上に設けられた親水性反応部位は本質的に円形であり、それぞれ実質的に円環状の疎水性領域によって囲まれており、疎水性領域は同心円状にその外側で実質的に円環状の親水性領域によって囲まれており、親水性反応部位の直径は0.3〜3mmとなる。外側の親水性円環は好ましくはその外側で疎水性領域によって囲まれている。
【0068】
また選択肢として、本発明によるキットは成分a)、b)、d)および任意にc)に加えて下記の成分の1つを含むことができる。e1)公知の遺伝子型および好ましくは所定配列に関して公知のコピー数を含む対照試料および/または、e2)対照試料を有するd)による手順において規定されたものと同一条件下で行った少なくとも1つの増幅反応の結果であって、ここで反応条件は少なくとも1つの増幅産物が20%と100%未満の間の確率で生じるように選択されるおよび/または、e3)少なくとも2個の異なる対照試料を有する手順d)中で規定されたものと同じ少なくとも1つの増幅反応および同じ反応条件下、それぞれ複数回行われた分離により得られた少なくとも1つの度数分布であって、ここで少なくとも2個の異なる対照試料はそれぞれ、他と異なる公知のコピー数の所定配列を有し、また対照試料中に得られた異なる増幅産物の数を次に判定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下に本発明を、その例示として実施例を用いて説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
下記の検査の目的は、混合試料中に含まれる、癌細胞を含むヒトの健常細胞および癌細胞の数を定量的相対的に測定することであった。
【0071】
検査のために、スライドガラスを担体として用い、その担体上には空間的に他から離れた48個の円形の親水性反応部位が設けられており、それぞれは同心円状に囲まれ、内側から外側に向かって円形の疎水性領域と隣接する円環状親水性領域になっていた。
【0072】
判定のために、混合試料、すなわち癌組織からの細胞をレーザーキャプチャー顕微鏡を用いて選抜し、混合試料から無作為に取り出した1個の細胞をその都度、1μl未満の容量で担体の48個の親水性反応部位上に加えた。その後、反応溶液を遺伝子部位D85522を増幅するプライマーペア、反応緩衝液およびTaqポリメラーゼを含む各反応部位に加え、各反応部位上に存在する全液量を1μlとした。その後、個々の液滴をオイルでコーティングし、担体をPCRサーマルサイクラー中に移し、PCRを行った。最後に、一部を各液滴から取り、これをゲルに付し、液滴の一部に含まれる増幅産物をゲル電気泳動により電気泳動分離を行い、個々のDNAバンドを視覚化した。
【0073】
健常なヘテロ接合体細胞は遺伝子部位D85522の2個の対立遺伝子を含むが、LOH癌細胞はその対立遺伝子が欠失により失われているので(「異型接合性の喪失」)、このような対立遺伝子を1つしか持たない。
【0074】
このゲル電気泳動から、検査された48個の細胞のうち12個だけがPCRにおいて1個の増幅産物を与え、従ってLOH癌細胞を関連付けることができ、一方他の36個の試料がPCRにおいて2個の増幅産物を与えることがわかった。その結果、この組織中の癌細胞の相対頻度は25%となった。
【0075】
(実施例2)
存在する生体試料が女性と男性の細胞を含んだ試料であるのかどうか、もしそうならば、その混合試料中の女性の細胞の割合はどのくらいなのかを、調べる。
【0076】
細胞懸濁液の無作為な試料をDAKO社のFACSソーターにより分類し、その都度その細胞のうちの1個を、実施例1に記載した担体の48個の反応部位上に加えた。
【0077】
その後、反応溶液を男性および女性の細胞に特異的なプライマーペア、反応緩衝液およびTaqポリメラーゼを含む各反応部位に加えた。
【0078】
この処理においてはその都度2pmolの5個のプライマーペアを用い、マルチプレックスPCR中で、ヒト男性DNA(XY型)の5個の異なるPCR断片またはヒト女性DNA(XX型)の4個の異なるPCR断片を増幅させた。これらは下記のプライマーであった。
【0079】
【表1】

【0080】
全体で反応溶液はそれぞれ下記の内容物を含む。
【0081】
【表2】

【0082】
その都度1μlのこの反応溶液を個々の反応部位にピペットで加えた。その後、個々の液滴をオイルでコーティングし、担体をPCRサーマルサイクラー中に移し、下記の温度に調節してPCRを行った。
【0083】
94°C 10分
94°C 30秒
64°C 60秒
72°C 60秒 35サイクル
72°C 10分
PCR後、4μlの「6xローディングダイ」(MBI Fermentas)を各液滴に加え、3μlの得られたPCR/ダイ混合物を8%PAA−TBEゲルにのせ、通常の電気泳動条件で電気泳動を行った。プロメガ製100bpラダーを標準物質として用いた。その後ゲルを臭化エチジウムで染色し、各試料について異なる増幅産物の数を数えた。
【0084】
その結果、48個の試料のうち2個が男性の細胞であり、一方残りの46個の試料が女性の細胞であることがわかった。この混合試料中の女性の細胞の割合はしたがって96%となった。
【0085】
(実施例3)
この実施例においては、21トリソミーの遺伝子型を含む細胞が存在するかどうかを、1ステップで調べる。
【0086】
健常な体細胞はダイソミーである、すなわち2コピーの染色体を有するが、21トリソミー細胞では3コピーの21番染色体を有する。
【0087】
検査を行うために、混合試料からの48個の個々の細胞をそれぞれ実施例1に記載した担体の1反応部位に加え、マルチプレックスPCRに付した。21番染色体に特異的な20個のPCR産物を増幅するプライマーペアを用いた。
【0088】
下記の結果が得られた。(検査された細胞の数:48)
【0089】
【表3】

【0090】
得られた値を、同一条件下、2個の異なる対照試料、すなわち21番染色体の2個のコピーを有する健常細胞の1つと21トリソミー細胞の1つで、既述のPCRが複数回行われた度数分布表と比較し、各判定で得られた増幅産物の数を決定し、度数分布表の形にした。
【0091】
度数分布表と比較すると、検査された混合試料中、21トリソミーを有する2個の細胞が含まれている、すなわちこれらの試料はPCR中15の増幅産物および17の増幅産物であるが、他の46個の試料は21番染色体の2個のコピーだけを含んでいることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法であって、各粒子は1つまたは複数の個体の核酸を含み、特に前記混合試料中に存在する個体の核酸を有する粒子の絶対数および/または相対数の定量のため、および/または前記混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型の判定のため、特に前記混合試料中に得られる個々の核酸の所定配列の絶対的なおよび/または相対的なコピー数の定量からの特性決定法であり、
a) 前記各粒子を分離し、担体上へ少なくとも2個の個々の粒子を加えるステップであって、前記少なくとも2個の粒子のそれぞれを前記担体の親水性反応部位上に10μl未満の容量でそれぞれ個々に加え、正確に1個の粒子が前記親水性反応部位のそれぞれに存在するように、前記親水性反応部位のそれぞれを疎水性領域によって囲むステップと、
b) 前記担体の反応部位上に加えられた前記少なくとも2個の粒子を、遺伝子型により、前記混合試料からの個体とそれぞれ関連付けるために検査するステップであって、前記検査された粒子の少なくとも80%の粒子が関連付けられるステップと、
c) 前記検査された粒子を特徴付けるステップとを含む、特性決定法。
【請求項2】
前記少なくとも2個の個々の粒子をそれぞれ、100nl未満、好ましくは10nl未満、特に好ましくは2nl未満、さらに特に好ましくは100pl以下の容量で、対応する前記担体の反応部位上に加える、請求項1に記載の特性決定方法。
【請求項3】
前記ステップb)における前記遺伝子型による検査において、前記検査される粒子のうち少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%、さらに特に好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%が、個体と関連付けられる、請求項1または2に記載の特性決定方法。
【請求項4】
前記ステップc)による前記検査された粒子の特性決定が、個体の核酸および/または遺伝子型を有する前記混合試料中に存在する粒子の絶対数および/または相対数の決定である、請求項1に記載の特性決定方法。
【請求項5】
前記担体の反応部位上に加えられた前記少なくとも2個の粒子が、細胞、好ましくは未溶解細胞または好ましくはその上に核酸が結合した磁性粒子である、請求項1または2に記載の特性決定方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの粒子の前記担体上への前記分離および/または加えることを、キャピラリー、レーザープレッシャーカタパルティング法、又はフローサイトメーターを用いて、好ましくは蛍光標示式細胞分取器(「FACS」)をあわせて用いて行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項7】
前記担体が、スライド、好ましくはスライドガラスである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項8】
前記担体上の親水性反応部位が、本質的に円形であり、本質的に円環状疎水性領域によって、好ましくは同心円状に囲まれている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項9】
前記親水性反応部位を囲む前記疎水性領域が、前記担体の外側で親水性領域によって囲まれており、前記親水性領域は、好ましくは本質的に円環状であり、前記疎水性領域を囲んでおり、特に好ましくは同心円状にそれを囲んでおり、前記親水性領域はその外側で疎水性領域によって囲まれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項10】
前記親水性反応部位の親水性およびそれを囲む範囲の疎水性は、前記親水性反応部位に10μl未満の水を加えると、20°から70°、好ましくは30°から60°特に好ましくは40から50°の接触角で水滴が形成されるように、設定されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項11】
前記親水性反応部位が、実質的に円形であり、0.3から3mmの直径を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項12】
前記担体が、2個から1000個、好ましくは12個から256個、特に好ましくは24個から96個、さらに特に好ましくは48個の異なる実質的に円形の前記親水性反応部位を有し、前記親水性反応部位はそれぞれ同心円状に実質的に円環状疎水性領域によって囲まれており、前記疎水性領域はその外側で実質的に円環状親水性領域によって囲まれており、前記円環状親水性領域は同様にその外側で疎水性領域によって囲まれている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項13】
前記混合試料が、少なくとも2個の異なる個体ただし10個以下の個体、特に好ましくは少なくとも2個ただし5個以下の個体、さらに特に好ましくは2個または3個の個体、最も好ましくは正確に2個の異なる個体の核酸を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項14】
前記混合試料中の単一個体に含まれる核酸の、他に対する濃度差が、1:1000から1:1、好ましくは1:100から1:1、特に好ましくは1:10から1:1となる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項15】
前記混合試料が、前記ステップa)による前記分離の前および前記担体上へ加える前に、前記検査された個体の核酸を有する粒子に関して富化され、ここで富化は好ましくは、富化され標識される粒子種に特異的に結合する蛍光標識抗体を用いて、コーティングされたキャッチャー粒子またはコーティングされた磁性粒子を用いて、またはフローサイトメーターを用いて、好ましくは蛍光標示式細胞分取器(FACS)をあわせて用いて行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項16】
前記混合試料が胎児の細胞を含む母親の血液を含む、または好ましくは胎児の細胞を含む母親の血液から構成される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項17】
前記混合試料が、健常細胞と、LOHを有する癌細胞との混合物である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項18】
前記混合試料が、健常細胞と、MINを有する癌細胞との混合物である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップb)による遺伝子型による前記少なくとも2個の粒子の検査および/または前記ステップc)による検査された粒子のさらなる特性決定を、前記担体の前記反応部位上で増幅反応によって行い、前記増幅反応の反応容量が好ましくは10μl未満、特に好ましくは5μl未満、さらに特に好ましくは1μl未満となる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項20】
前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応PCRである、請求項19に記載の特性決定方法。
【請求項21】
前記反応部位上に加えられた前期少なくとも2個の粒子が細胞であり、前記細胞が前記増幅反応を行う前に熱的にまたは少なくとも1回の加熱/冷却サイクルによって可溶化させられる、請求項19または20に記載の特性決定方法。
【請求項22】
特異的増幅反応が行われる、請求項19〜21のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項23】
前記ステップb)による前記混合試料に含まれる個体との関連付けを目的とした前記少なくとも2個の粒子の検査のための前記増幅反応および/または前記ステップc)による検査される粒子の特性決定のための前記増幅反応より前に、前記少なくとも2個の加えられた粒子中または粒子上に含まれる核酸を非特異的PCRによって増幅する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項24】
前記少なくとも2個の粒子を前記反応部位上に加える前に、前記増幅反応を行うのに必要な反応成分、好ましくはプライマーを前記親水性反応部位上に加える、請求項19〜23のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項25】
前記増幅反応を、他と相同なおよび/またはコードされたDNA範囲および/またはコードされないDNA範囲と相同でない1個または多くとも2個の配列の増幅に適応する、請求項19〜24のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項26】
前記増幅反応を、他と相同なおよび/または相同でない1個または多くとも2個の高度多型配列の増幅に適応し、高度多型配列は好ましくはSTR配列、VNTR配列、SNP配列およびこれらの望ましい組合せのいずれかからなる群から選択される、請求項19〜25のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項27】
前記増幅反応を、他と相同なおよび/または相同でない1から100個、好ましくは2から20個、特に好ましくは5から15個の配列の増幅に適応する、請求項19〜26のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項28】
前記増幅反応中に得られた異なる増幅産物の数を決定する前記増幅反応の分析であって、数の決定には好ましくは少なくとも1つの増幅産物が存在するか存在しないかの判定、また得られた増幅産物の第二の物理的におよび/または化学的に測定可能なパラメーターの判定を含む、請求項19〜27のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項29】
前記増幅産物が存在するか存在しないかを、ゲル電気泳動を用いて、DNAアレイ上のハイブリダイゼーション技術、ビーズシステムを用いて、他の光学、電気または電気化学測定を用いて行う、請求項28に記載の特性決定方法。
【請求項30】
前記増幅産物がSTR部分および/またはVNTR部分であり、第二のパラメーターとして得られた前記増幅産物の長さを、好ましくはキャピラリー電気泳動で決定し、得られた異なる前記増幅産物の数が異なる長さの得られた前記増幅産物の数に対応する、請求項28又は29に記載の特性決定方法。
【請求項31】
前記増幅産物がSNP部分であり、第二のパラメーターとして得られた前記増幅産物の配列を、好ましくはDNAシークエンシングまたはハイブリダイゼーション法によって決定し、得られた異なる前記増幅産物の数が異なる配列中に得られた前記増幅産物の数に対応する、請求項28または29に記載の特性決定方法。
【請求項32】
前記増幅反応におけるパラメーターが、正の増幅反応の相対頻度が他と相同なおよび/または相同でない各配列に対する各場合において少なくとも実質的に同じ、および/またはその中で他と相同なおよび/または相同でない各配列の正の増幅反応に対する相対頻度が0.2と1未満の間、好ましくは0.4から0.6、また特に好ましくは約0.5となる様に選択される、請求項19〜31のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項33】
前記増幅産物の特性決定に関して、少なくとも1つの増幅反応が、前記混合試料から前記反応部位上に加えられた前記少なくとも2個の粒子のために用いられる条件と同一条件下で対照試料を用いて行われ、前記対照試料は好ましくは加えられた粒子と同量の核酸を有しおよび好ましくは公知の遺伝子型を有し、この少なくとも1つの増幅反応で得られた異なる前記増幅産物の数を、加えられた粒子を用いて行われた増幅反応で得られた異なる増幅産物の数と比較する、請求項19〜32のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項34】
前記少なくとも3個の加えられた粒子を用いて行われた前記増幅反応で得られた異なる前記増幅産物の数を、別々に同じ前記増幅反応をそれぞれ複数回、前記混合試料から前記反応部位上に加えられた粒子に対して用いたものと同じ反応条件下で行うことにより得られた少なくとも1つの度数分布と比較し、粒子中に含まれたものと同量の核酸が、少なくとも2個の異なる対照試料とともに前記増幅反応中に用いるまたは用いられ、前記少なくとも2個の異なる対照試料はそれぞれ他と異なる、公知のコピー数の所定配列、さらに前記対照試料ごとに含まれる異なる前記増幅産物の数を次に判定する、請求項19〜33のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項35】
前記少なくとも2個の粒子の、遺伝子型による、前記混合試料中に含まれた個体との関連付けを目的とした前記ステップb)による検査および/または前記ステップc)による検査される粒子のさらなる特性決定を、前記担体の前記反応部位上でmRNAプラン上の遺伝子発現検査によって行う、請求項1〜18のいずれか一項に記載の特性決定方法。
【請求項36】
異なる個体の核酸を有する少なくとも2個の粒子を含む混合試料の特性決定法であって、各粒子は1つまたは複数の個体の核酸を含み、特に前記混合試料中に存在する個体の核酸を有する粒子の絶対数および/または相対数の定量のため、および/または前記混合試料からの1つまたは複数の個体の遺伝子型の判定のため、特に混合試料中に得られる個々の核酸の所定配列の絶対的および/または相対的コピー数の定量からの特性決定法であり、
a) 前記各粒子を分離し、2個から1000個、好ましくは2個から100個、特に好ましくは2個から10個、さらに特に好ましくは2個から5個の粒子を担体の親水性反応部位上に加えるステップであって、前記親水性反応部位の10μl未満の容量が疎水性領域に囲まれているステップと、
b) 前記各粒子を遺伝子型によって前記混合試料からの個体とそれぞれ関連付けるために、前記反応部位上に加えられた粒子を有する前記担体の前記少なくとも2個の前記反応部位を検査するステップであって、前記検査された粒子の少なくとも80%が1個の個体と関連付けられるステップと、
c) さらに前記検査された粒子を特徴付けるステップとを含む、特性決定方法。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法を行うためのキットであって、
a) 混合試料中に含まれる核酸の少なくとも1つに含まれる多型範囲の、少なくとも1つのPCRによる増幅に適合した少なくとも1つのプライマーペアと、
b) その上に、それぞれ疎水性領域によって囲まれた少なくとも2個の、好ましくは2個から1000個の、特に好ましくは24個から96個の親水性反応部位が設けられている、担体、好ましくはスライドガラスと、
c) もし必要であればPCR緩衝液と、
d) a)によるPCRを行うためのプロトコルとを含む、キット。
【請求項38】
前記担体上の前記親水性反応部位が実質的に円形であり、それぞれ同心円状に実質的に円環状疎水性領域によって囲まれており、前記疎水性領域は同心円状にその外側で実質的に円環状親水性領域によって囲まれており、前記親水性反応部位の直径が0.3から3mmである、請求項37に記載のキット。

【公表番号】特表2009−531037(P2009−531037A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501879(P2009−501879)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001328
【国際公開番号】WO2007/110124
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(502096196)アドヴァリティクス アーゲー (9)
【Fターム(参考)】