説明

混練を改善するためのオゾンの使用

【課題】混練を改善するためのオゾンの使用の提供。
【解決手段】本発明の目的は、オゾンの存在下で少なくとも1つの機械的撹拌器(「フレーザー」)を使用して、薄力粉を含む生地を混練する新規方法である。この方法で製造された生地は、パン又は関連する製品(例えば、膨らませたピザ生地)等、製パン穀物製品の最終品の製造に使用することが可能である。
本発明の更なる目的は、オゾンの存在下において混練可能なように構成した新規混練装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、薄力粉を含む生地をオゾンの存在下で混練する新規方法である。この方法で製造された生地は、パン又は関連する製品(例えば、膨らませたピザ生地)等、製パン穀物製品の最終品の製造に使用することが可能である。
【0002】
本発明の更なる目的は、オゾンの存在下において混練可能なように構成した新規混練装置に関する。
【背景技術】
【0003】
混練は、小麦粉、水、並びに、一定量の塩化ナトリウム及びパン種(パンイースト)を、空気の存在下で密に混合する作業である。混練は、3つの基本物質(小麦粉、水及び空気)から、粘弾性特性を有する均一かつ滑らかで丈夫な生地を形成可能な、従来からの化学工学的作業と考えることができる。最終製品(焼いた製品)の質は、この作業を適切に実施するか否かに大きく依存している。
【0004】
「小麦粉(flour)」は、種々の軟質小麦の粒を微細に粉砕することによって得られるものである。小麦粉の平均粒子径は50〜60μmであり、最小径が約6μmであり、最大径が約220μmである。
【0005】
一方で、硬質小麦を粉砕することにより得られる「粗挽き粉(meal)」は、粒子径が小麦粉とは異なり、平均粒子径が約600μm、最小径が約300μm、最大径が約900μmである。
【0006】
産業又は半産業における混練では、数十〜数百キログラムもの基本成分を混練作業中に混練する場合があり、1時間当たりに生産される生地の量が、通常では毎時100kgを超え、高速混練装置(ニーダー)を使用する場合には毎時1000kgを超えることもある。このような混練作業に使用されるニーダーは、混練用ボウル(又は「ニーダー本体」)、駆動装置及びフレーザー(fraser)を有している。フレーザーとは、パン製造技術において混合に使用される機械的に可動な部分を指す総称である。フレーザーは、混合したり、形成される粘弾性媒体に機械エネルギーを伝達したり、また、この粘弾性媒体を打ったりというあらゆる操作を実施することができる特定の目的を有する可動ミキサーアームとして定義することができる。
【0007】
形成された生地において、小麦粉の2つの主成分、すなわちデンプンとグルテンが生地の総体積のそれぞれ60%及び30%を占め、一方、混練段階で添加された空気の部分が、同総体積の約10%を占める。
【0008】
混練作業の際には、成分(水+小麦粉+イースト+海塩)が、酸化的雰囲気(周囲の空気)の存在下で密に混合される。混練における周囲の空気の生地への添加は、混合、撹拌、折り畳み及び剪断といった多様な機械的応力を生地に加えることによって実施される。こうした機械的応力によって、概して、形成される生地と周囲の空気との界面が常に新たに形成され、これにより、空気中から、形成される粘弾性媒体へと酸素及び窒素が移動する。これには、
・特定の粘度と特有の特性(粘弾性)とを有する均一な構造を形成する、
・全ての酸化段階に必要とされる酸素を含む空気を添加して、密に混合する
という2つの目的がある。
【0009】
混練段階で取り込まれる気体中に存在する酸素は、以下の少なくとも2つの主な経路を通じて作用する:
・タンパク質部分に対して直接作用する(生地中で低分子量タンパク質及び高分子量タンパク質のジスルフィド基の間で生じる変換を改変する)
・酸化酵素、特にはペルオキシダーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼがこの気体(酸素)を使用する。
この経路により、システイン中に豊富に含まれる小さな可溶性タンパク質が迅速に酸化される。こうして、分子量の非常に大きいタンパク質が反応できるようになるため、結果として生地の「強度」が増す。
【0010】
これと平行して、タンパク質のチオール基の酸化により、生地のレオロジー特性が変化する。観測されるレオロジー変化は、有益なものである。この変化により、混練したり長時間寝かせたりすることに対する抵抗性が改善される可能性があり、最終的にはパンの体積が増大する可能性がある。この変化は、激しく混練する際に特に重要であり、これによる最も明らかな効果として、パンの中身がより白くなり、かつ、パンの体積が増大する。
【0011】
グルテンタンパク質の酸化、及び、混練中に酸素により他の有益な効果を生じさせるためには、酵素と基質の接触が頻繁に繰り返され、かつ、大きなエネルギーが供給されることが必要であるということに注意することが重要である。
【0012】
酸素の作用を促進する方法として、一つには、新たな界面が形成される実際の速度を上げる、すなわち撹拌器(フレーザー)の回転速度を上げると同時に、より大きな機械エネルギーを伝達することが考えられる。しかし、この従来から用いられる方法は、エネルギーが過剰に供給されるために生地が最終的に固着するという欠点を有しており、これは特に危険ですらある。
【0013】
従って、従来の混練方法では、機械的混合による生地への酸素の供給を制御し、これにより酸素の有益な効果を得、同時に、使用されるエネルギーの損失及び特有の問題(生地の固着)を回避することが困難である。
【0014】
酸素の供給及び効果の制御における問題点は、英語圏の諸国で開発された「チョーリーウッド(Chorleywood)方法」式の新規高速混練方法及び類似する方法を使用する際に顕著となる。連続的に短時間で混練する場合には、機械的な側面とは無関係に、気体の移動の制御における問題点は更に深刻となる。
【0015】
これと同時に、生地についてのいくつかの特定の特性が大きく注目されており、製パン業界において大いに追求されている。これらの中でも、生地の良好な気体保持特性、生地の良好な濡れ性(水の定着速度)、生地の良好な機械加工性(分割、成型、抵抗性)、発酵及び焼成時における成形生地の体積の増加、微生物混入の危険性の低減を挙げることができる。生地製造ラインの工業的な管理という観点から、混練するため、かつ、混練した製品の質のばらつきを減らすために、簡略化、及び、より多くのパラメータの設定が望まれている。
【0016】
特許文献1に、生地成分(小麦粉、水等)の混合時間を10秒未満とするための方法が記載されている。この文献には、生地成分を混合する手段として、スパイラルミキサ、ウォームミキサ(worm mixer)及びドウフック等の伝統的な機械的手段の代わりに、高圧(30〜100バール)における水の注入について教示されている。この特許文献1には、記載される方法において、オゾンを使用して酸化に潜在的に寄与させることについて記載されているが、オゾンの存在下における機械式混合アームによる混練については教示されていない。
【0017】
特許文献2には、小麦粉、処理水、塩及びイーストを混合することによって生地を混練する際に、混合前にオゾンを水に添加して汚染物質を除去するという方法が記載されている。この文献は、湿潤用の水の中のある種の不純物がイーストの増殖を遅らせる点、及び、ある種の不純物が望ましくない臭気を本質的に引き起こす点について触れている。特許文献2に記載の高度浄化ユニットから出る際、湿潤水として使用される水は、オゾンを含んでいない。更に、オゾンを過剰に使用することにより、得られる生地の感覚刺激特性に悪い影響が及ぼされる可能性があることが記載されている。オゾンの使用量は、水中の除去すべき不純物の量のみに関係して計算され、制限されている、すなわち特許文献2には、オゾン水の存在下における混練方法は記載されていない。
【0018】
特許文献3には、麺生地の製造方法が記載されている。この特許出願の主たる目的は、塩化ナトリウムは循環器系疾患の発症を引き起こす傾向があるために、麺の製造における塩化ナトリウムの使用量を減らすことである。この文献において提示された案は、乳清は種々のミネラル塩を含むため、これを使用すると、NaClの量を減らして麺を製造することができるため、乳清(チーズの製造において、凝結した牛乳から分離された部分)を使用するというものである。この方法においては、乳清により、製造された麺にチーズの匂いがつく可能性があり、この著しく受け入れ難い匂いを麺から除去するため、乳清のミネラル塩溶液をオゾンで処理することが推奨されている。オゾンを、塩基性のpHにおいて、オゾンと反応する有機物質の存在下で生理食塩水に通過させる。これらの要因によりオゾンの反応又は分解が促進され、これによって、混練の時点では溶液中にオゾンは存在しない。特許文献2の場合と同様、この方法の作業条件下においては小麦粉と接触する時点でオゾンは全く存在せず、これらの事例はいずれも、オゾン水を使用する混練作業に関するものではない。いずれの事例においても、オゾンの役割は汚染除去/臭気除去の役割のみである。また、特許文献3が、特に、硬質小麦から製造される(日本の)麺の製造方法に関するものであり、後にパン製造に使用するための生地を軟質小麦から製造する方法に関するものではないということが注目されるであろう。
【0019】
特許文献4には、前駆体分子にオゾンを反応させて得られる有機化合物(パラアルデヒド、(過)オゾン化物等)を小麦製粉用添加剤として使用することについて記載されている。この文献においては、混練中にオゾンそのものを添加することについては記載も示唆もない。
【0020】
特許文献5〜8等は、混練装置の機械的詳細及びそれを使用する混練方法に関する。特に、これらの文献には、生地への酸素の供給を制御する方法が記載されている。しかし、これらのいずれの文献にも、混練作業におけるオゾンの使用についての記載や示唆はない。
【0021】
特許文献9は、あらかじめ洗浄して湿らせた粒子を粉砕することによって、食品安全性の高い小麦粉を製造する際に、粉砕前、又は、粉砕と同時に、上記粒子をオゾンに接触させるという方法に関する。従って、この方法においては、オゾンを、粒子の粉砕前又は粉砕と同時に粒子に添加しており、小麦粉に添加しているわけではない。従って、特許文献9は、(後に混練作業に使用される可能性のある)小麦粉の製造方法に関するものであり、既に粉砕した小麦粉を使用する混練方法に関するものではない。
【特許文献1】米国特許出願US2004/0022917号
【特許文献2】ロシア特許出願RU2166852号
【特許文献3】特許出願JP−3−175941号
【特許文献4】英国特許出願GB186940号
【特許文献5】フランス特許FR2831023号
【特許文献6】英国特許GB880182号
【特許文献7】ドイツ特許DE19624229号
【特許文献8】米国特許US5089283号
【特許文献9】国際出願WO0143556号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
発明の要約
今回、本出願人は、薄力粉を含む生地の混練方法であって、混練作業をオゾンの存在下で少なくとも1つの機械的撹拌器(「フレーザー」)を使用して実施することを特徴とする方法によって、上記の問題を解決できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の好ましい実施形態においては、生地成分(水、小麦粉等)を混合するための撹拌を、高圧下での水の注入による混合システムを全く使用せず、少なくとも1つの機械的撹拌器(「フレーザー」)によってのみ実施される。
【0024】
オゾンは、オゾン発生器により酸素から従来どおりに生産でき、以下の2つの方法で生地に添加することが可能である:
・生地に添加する湿潤用の水を、あらかじめオゾン化する方法、
・混練装置の上部気体空間に、すなわち、製造する生地の固体相又は液体相に接する気体中に、オゾンを供給する方法。
【0025】
オゾンは、これらの各経路を別個に又は組み合わせて使用して供給することが可能であり、また、このように供給することが好都合である。また、後述するように、オゾンは、選択的に、順次に、連続的に、又は、液体経路によるオゾン供給と気体経路によるオゾン供給とを連続的に繰り返すことにより、添加してもよい。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、本出願人は、当業者に公知の混練装置を、オゾンの存在下で混練を実施できるように構成した。混合速度が限られている「従来型」の混練装置、及び、混合速度の速い連続式高速混練装置を、オゾンの存在下で混練可能なように構成した。
【0027】
従来からの混練方法に比べ、本発明の混練方法によって得られる利点として、とりわけ、
・混合速度が決まっている場合に混練時間が短い、又は、時間が決まっている場合に混合速度が低い、いずれの場合も混練に使用されるエネルギーが少なくなる、
・使用する機械エネルギーは小さいにもかかわらず、グルテンネットワーク構造が改善される、
・生地の発酵の際のCOの生成及び保持特性が改善される、
・生地の濡れ性が改善される、
・生地の「機械加工性」が改善される、すなわち適切な加工及び成形のための能力がより良好になる、
・微生物学的な質が向上する
点を挙げることができる。
【0028】
更に、オゾンの使用によって、生地製造の工業的な管理に関するいくつかの要件、特には、
・生地が固着する危険性の軽減、
・混練の簡略化及びパラメータ化の向上、
・混練後の製品特性のばらつきの低減
を満たすことが可能である。
【0029】
図面の簡単な説明
図1は、混合速度があまり速くなく、混練時にオゾンを使用するように構成されてはいない「従来型」の混練装置を概略的に示す。
図2は、混合速度があまり速くなく、本発明により、混練時にオゾンを使用するように構成されている「従来型」の混練装置の例を概略的に示す。
図3は、混合速度が速く、混練時にオゾンを使用するように構成されていない、(高速混練用の)「連続式」の混練装置を概略的に示す。
図4は、混合速度が速く、本発明により、混練時にオゾンを使用するように構成されている、(高速混練用の)「連続式」の混練装置の例を概略的に示す。
図5は、本発明によってオゾン処理した生地の気体生成及び保持特性の向上を、オゾン処理していない生地と比較して、レオ発酵計(rheo−fermentometer)によって測定して示したグラフである。
図6は、本発明によってオゾン処理した生地の機械加工性及び抵抗性の向上を、オゾン処理していない生地と比較して、コンシストグラフ(consistograph)によって測定して示した曲線である。
【0030】
既に述べたように、混練は、小麦粉、水、並びに、一定量の塩化ナトリウム及びパン種(又はイースト)を、空気の存在下で密に混合する作業である。
【0031】
従来からの混練作業においては、初期の小麦粉100kg当たり、50〜65kgという多量の水を添加する。通常、初期の小麦粉の水含有量は8〜14%である。従って、もとより水分含量が最も高い小麦粉には水を多量に添加する必要がないため、最終的な水の総量は、小麦粉乾燥物に対して、一般的には60〜85%であり、最も頻繁には65〜75%である。
【0032】
本発明の範囲内においては、小麦粉乾燥物に対する最終的な水の総量は、小麦粉の初期の湿気を考慮に入れ、少なくとも60%かつ75%以下の間であることが好ましい。
【0033】
海塩の量は、一般的に2重量%程度であり、すなわち小麦粉100kg当たりNaClは2gである。塩は感覚刺激的な役割を有するだけでなく、最終製品の技術的特性にも影響を及ぼすということに注意する必要がある。他の塩を添加することも可能であるが、この場合、その塩は特定の添加剤であろう。
【0034】
また、新鮮なイーストを一般的に、小麦粉に対して約2重量%、すなわち小麦粉100kg当たり2kg使用する。
【0035】
混練は、一般的に室温で実施する。他の温度での実施も可能であるが、温度の変化に関係して一般的に影響が観測される場合がある。本発明によってオゾンの存在下で実施する混練に関しては、温度の変化に関係する影響は観測されなかった。
【0036】
本発明を実施するために必要なオゾンは、典型的には、ベクターオゾンガス生成器(オゾン発生器)を通過させることによって製造する。ベクター気体は、必然的に、エネルギー及び経済性の観点から許容可能な条件下でオゾンを製造することができる充分量の酸素部分を含む必要がある。空気、純粋な酸素、又は、これら2つの気体を種々の割合で混合した混合物を使用することができる。オゾン発生器を通過させる際、このベクター気体に含まれる酸素部分の少なくとも一部が、オゾンに変換される。
【0037】
本出願人は、ベクター気体中のオゾンの適切な濃度は、気体の種類にかかわらず、通常は5g O/m tpn〜250g O/m tpn、より好ましくは15g O/m tpn〜150g O/m tpnとなるように選択することが都合よいことを見出した。上記した、ベクター気体中のオゾン濃度の値は、あくまで指標の目的で記載するものであり、特に、オゾンを生地に添加する方法が以下に示すように多様であることに鑑み、本発明を限定するものではない。
【0038】
オゾンを湿潤用の水によって供給する場合、この水はあらかじめオゾン化されているか、又は、超オゾン化されていなければならない。
【0039】
本発明のもとで選択するオゾン水又は超オゾン水のオゾン濃度は、特には混練装置の種類、混練する生地の体積、及び、最終製品に必要とされる特性に応じて多様であってよい。一般に、生地の重量当たりに添加する水の量に照らして、水中のオゾン濃度は、水1リットル当たりのオゾンの量をミリグラムで表すと、20mg/l〜100mg/lであり、好ましくは40mg/l〜80mg/lである。この値は、オゾンが溶解している水の厳密な温度によって変化するものではない。
【0040】
オゾン水又は超オゾン水の製造には、極めて小さな圧力(1.5バールの絶対圧力)、又は、これより高い圧力(最大2.2バールの絶対圧力)のもとで作動可能な装置を使用する必要がある。当業者に公知の特殊な装置を使用することで、高圧のもとでオゾンを水中に溶解させることができるが、一般的には、オゾンがわずかに損失するために、この作業の全収率はわずかに減少する可能性がある。
【0041】
例えば、オゾン水又は超オゾン水を、以下で記載する装置を使用して製造することができるが、これに限定されない。
【0042】
オゾン水を製造するため、多孔拡散バブリング装置を有し、オゾンガスを液体相へ移動させるのに充分な高さの液体(適用圧力)を入れた任意の種類の溶解反応器を使用することができる。
【0043】
反応器中におけるオゾンの溶解は液体の荷重のみによるものであるため、オゾンの溶解量は制約される(液体の荷重は、反応器の高さによって制限される)。このオゾン溶解装置の使用によって少量のオゾンを混練装置へ供給することができ、これにより少量のオゾンが湿潤用の水によって運搬される。
【0044】
オゾンの使用量が多く、かつ、比較的短時間で混練装置に添加しなければならない場合、いわゆる超オゾン水を使用する必要がある。この目的のため、幾何学的に許容可能な特徴を有し、かつ、混練段階において必要とされる量のオゾンを、加圧により溶解可能な装置を使用してもよい。
【0045】
当業者であれば使用可能な第1の装置は、上部気体空間が圧力下に維持されている多孔質円板装置を備えたオゾン反応器で構成されている。反応器内にある水柱に更に圧力がかかることによって、オゾンの適用圧力が実質上増大し、これにより溶解推進圧(移動推進圧)が実質上増大する。
【0046】
超オゾン水を製造する第2の案は、適度の適用圧力下で大容量の気体を添加することができる水注入器式の一段又は多段型の静的装置を使用することからなる。この種の装置によれば溶解率が高くなり、形成中の生地に小容量の水で必要な量のオゾンを供給することができる。
【0047】
これらの装置は、空気、酸素、これら2つの気体を種々の割合で混合した混合物等、オゾンを運搬するベクター気体の種類にかかわらず、適用することができる。
【0048】
当業者であれば、オゾンの添加量に関連して、使用する水注入器の段階の数及び大きさを決定できるであろう。
【0049】
超オゾン水を製造するために、他の装置を使用することも可能である。これらは、オゾン化気体を、液体相に添加する前に圧縮する装置、あるいは、オゾンの圧縮及び液体相への溶解を同時に実施することができる装置である。これらの装置のうち、圧力ブースター又は同種の装置を使用することが可能である。本発明の方法に適合する大きさの装置の例として、SIHI社やAllimand社から市販されている型式を挙げることができる。これらの種の装置を使用した場合、更に消費されるエネルギーの量は無視できない量であるため、作業のエネルギー収率がわずかに悪化する。
【0050】
生地にオゾンを添加するための他の経路は、オゾンを含むベクター気体を混練装置の上部気体空間に添加することからなる。オゾンは、1回の操作で添加してもよいし(例えば、その後、混練装置(実際には「反応器」である)が閉じる)、あるいは、混練装置にベクター気体を連続的に通過させることによって添加してもよい。
【0051】
上述のとおり、オゾンは、小麦粉に添加する湿潤用の水を経由して添加してもよいし、また、ベクター気体に含まれるオゾンを混練装置の上部気体空間へ取り込むことによって添加してもよい。オゾンは、選択的に、順次に、連続的に、又は、液体経路によるオゾン供給と気体経路によるオゾン供給とを連続的に繰り返すことにより、添加してもよい。
【0052】
生地の形成には小麦粉の第1の湿潤段階が含まれるため、オゾンの一回目の添加は水媒体中で実施されることが好ましい。生地が形成されて一回目の酸化反応が生じた後、オゾンの二回目の添加を、気体媒体によって(すなわち、混練装置の上部気体空間にオゾンが取り込まれることによって)都合よく実施することができる。この時点において、オゾン雰囲気中で混練が実施され、生地によって形成された粘弾性構造への移動が実施される。オゾンを更に供給するためには、混練の際に更に湿潤させることが有用であろう。
【0053】
湿潤の段階において、オゾンの一部を水を経由して添加すると同時に、オゾンの一部を気体を経由して添加してよく、混練の段階において、オゾンを気体経由で連続的に添加してよい。また、混練の第1段階において、液体経路と気体経路とをそれぞれ短時間で連続的に繰り返すことによるオゾンの供給も考えられる。オゾンを添加するために選択される方法は、使用する混練設備の性質に応じて、特に、得られる最終製品(焼いた製品)に望まれる特性に応じて選択される。
【0054】
本発明の方法は、微減圧状態において、又は、圧力下においても作動可能な閉鎖型の混練装置(ニーダー)を使用して実施することができる。第1段階(混練の第1段階)において微減圧状態において作動し、次いで第2段階において低圧下において、あるいは任意に大気圧下において作動する混練装置が何種か市販されているという現状に着目する必要がある。また、この種の混練装置は、気体状のオゾン又は追加のオゾン水を、気体状については低圧下、又は、大気圧下、又は、高圧下のいずれかで混練の第2段階において、あるいは、オゾン水については第1及び/又は第2段階において、添加することができるため、本出願人により明らかとなった本発明において使用することが可能である。
【0055】
本発明の範囲内において、オゾンを添加する時点において、混練装置の気体相における圧力は、少なくとも絶対圧1.1バールかつ絶対圧1.6バール以下であることが好ましい。より好ましくは、気体相の圧力が、少なくとも絶対圧1.3バールかつ絶対圧1.5バール以下であり、最も好ましい値は絶対圧約1.4バールである。湿潤用の水(オゾン水であってよい)の圧力に関しては、圧力が、好ましくは少なくとも絶対圧0.5バールかつ絶対圧2.2バール以下であり、より好ましくは少なくとも絶対圧1.7バールかつ絶対圧1.9バール以下であり、最も好ましい値は絶対圧約1.8バールである。
【0056】
小麦粉の湿潤用に使用する水、又は、混練装置に添加することができる気体ベクターに運搬されるオゾンを使用する装置としては、従来からの混練装置には限定されない。本出願人の発明は、部分的に密閉可能な装置であれば、任意の現代式の高速混練装置に適用可能である。これについては、「チョーリーウッド法」式、Amflow(登録商標)及びDo−Maker(登録商標)連続方式、並びに、限られた時間で高速又は超高速(毎分400回転)で混練可能な他の任意の方式の装置が挙げられる。
【0057】
しかし、本発明において、生地成分(水、小麦粉等)を混合するための撹拌は、高圧下で水を注入するという混合システムを使用せずに、少なくとも1つの機械式撹拌器(「フレーザー」)の使用によってのみ実施することが好ましい。
【0058】
混練装置に関しては、公知の装置を2種に分類することができる。第1には、撹拌器の回転速度があまり速くない(200rpmに達する可能性のある型もあるが、通常は40〜80rpm)いわゆる「従来型」又は「不連続式」の混練装置である。第2には、撹拌器の回転速度が速く、一般的には100rpmを超え、場合によっては600rpmに達するいわゆる「連続式」又は高速混練装置である。
【0059】
「従来型」の混練装置に関しては、撹拌器(「フレーザー」)は斜軸を有していてもよく、この場合には、撹拌ボウルの回転は、自由であっても、電動であってもよい。また、らせん形で垂直設置式の撹拌器を使用してもよく、この場合には、撹拌ボウルの回転は、通常は電動である。「従来型」の混練装置においては、ボウルの対称軸が通常は垂直であることに着目されるであろうが、稀な型式として、水平型の不連続式混練装置も少数ある。
【0060】
従来型の混練装置の例を、図1に概略的に示す。
【0061】
この従来型の混練装置において、フレーム1は、一般的に鋳鉄又は機械溶接構造で作られていて、機械式の駆動装置(モータ、速度調節器、ギア)及び概してステンレス鋼製の混練用ボウル2を有している。作動時、ボウル2は、低速で回転するか、又は、駆動装置若しくは支持装置6によって自由に回転する。
【0062】
ボウル2の内部では、混合することにより機械的応力を加える目的の撹拌器(「フレーザー」)3が、速度40〜80rpmの回転運動で駆動されている。上述のように、撹拌器は、斜軸を有するもの又は垂直軸を有するもの(ほぼ、らせん状)の2種類であってよい。
【0063】
混練用ボウルの上部を安全装置5又は密閉蓋によって閉じることにより、混練用ボウルを備えた閉鎖型システムとすることができる。フレーム1は、制御/調整パネル4を含む。
【0064】
この従来型の混練装置の使用においては、実際に混練作業を実施する前に、小麦粉、水、海塩(塩化ナトリウム)並びにイーストをボウルに入れた後、混合する。
【0065】
本発明の範囲内において、本出願人は、従来型の混練及び高速混練の両者について、オゾンの存在下における混練を実施する方法を決定するため、検討を実施した。
【0066】
従来型の混練装置を本発明によるオゾンの使用に適合するように構成した例を、図2に概略的に示す。
【0067】
この混練装置の部品1〜6は、図1を参照して上述した従来型の混練装置(オゾンの使用に合わせた構成ではない)におけるものと同じものを意味するが、部品5が密閉装置を形成している。
【0068】
本発明によれば、この装置は、密閉蓋7、オゾンガス導入口8及び/又はオゾン水若しくは超オゾン水導入口9、排出口10、及び、撹拌器(「フレーザー」)3の周囲の密閉通路11によって形成されている。密閉通路11は、撹拌器3は通過するが水や空気は通さないように圧縮式シールで形成されていることが好ましい。
【0069】
連続混練(高速混練)用の装置に関しては、オゾンの使用に合わせた構成ではない連続式の混練装置の例を、図3に概略的に示す。
【0070】
この混練装置の鍵となる構成部品は、以下のとおりである:
・小麦粉の湿潤に必要とされる水が入っていて、調節バルブが設置された配管によって混練装置の本体に接続されている水槽21;
・小麦粉を入れて混練装置の本体内へ送出するための小麦粉槽22。この槽も、調節バルブが設置された配管によって混練装置の本体に接続されている;
・生地の発酵に必要とされるイーストが入っていて、同様に調節バルブが設置された配管によって混練装置の本体に接続されているイースト槽23;
・生地の混練に必要とされる塩が入っていて、同様に調節バルブが設置された配管によって混練装置の本体に接続されている海塩NaClの槽29;
・水平軸を有し、通常はステンレス鋼製の円筒形の装置で構成され、製造した生地を放出するためのほぼ円筒状の開口部28が設置された円錐形の装置を一端に有している混練装置の本体25。他端には、混練装置フレーザー26と生地を前方に運ぶための装置27とを有している中央軸を駆動するため、電動駆動装置24が設置されている。
【0071】
混練の段階において、小麦粉、湿潤用の水、海塩及びイーストが所定の量でニーダーの第1の領域に添加され、ここで混合されて、作業の第1段階が実施される。形成された生地は生地コンベア27によって引き取られ、混練撹拌器(「フレーザー」)26を有する別の混練部位へと押される。最後に、使用できる状態になった生地が、円錐状スクリュー装置によってニーダー本体の外に押し出される。一般的には、貯蔵装置と反応器本体との間に位置する調節バルブは、シーケンス制御を備えた自動調整バルブである。
【0072】
この実施形態の一変形形態において、(高速混練用の)連続式の混練装置は、水平軸を有し、その内周にアルキメデスのスクリュー装置を有していて、生地を排出口に向かって前方へ移動させることができる円筒形の本体で構成されていてよい。撹拌器(「フレーザー」)は同様に、水平な駆動軸に保持されているが、この変形形態においては、生地の前方への移動は、実際の混練作業から切り離されている。
【0073】
(高速混練用の)連続式の混練装置を本発明によるオゾンの使用に合わせて構成した例を、図4に概略的に示す。
【0074】
混練装置の部品21〜29は、図3を参照して上述した高速混練装置におけるものと同じものを意味する。本発明によれば、この装置は、オゾンガスの導入口30及び/又はオゾン水若しくは超オゾン水の導入口31、及び、調節バルブ32によって形成されている。
【0075】
本出願人は、生地に添加するオゾンの量が、本発明の方法を特徴付ける重要なパラメータであることに着目した。
【0076】
典型的には、オゾンの添加量は、1時間当たりに製造される生地の量(キログラム)に対して、1時間当たりに添加するオゾンの量(グラム)で測定及び表わされる。この測定値は混練時の湿潤後の最終生地の重量に対するものであるという理解にもとづき、製造される生地1kg当たりに0.004〜0.06gのオゾン(O)を添加することが好ましい。オゾンの正確な添加量は、第1には混練の工業上の種類に応じて決まり、第2には生地に求められる詳細な質に応じて決まる。
【0077】
下記の表1は、単位時間当たりのオゾンの添加量と使用する混練方法との関係を示す。
【0078】
表1:単位時間当たりのオゾンの添加量と方法との関係
【0079】
【表1】

【0080】
最終製品の上記個々の質について、製造される生地の量(1時間当たりの量(kg)で表される)は、典型的にはこの種の製品に適用される工業的方法の標準的な製造量と対応するように選択される。記載したオゾンの量は、小麦粉の種類及び質に関係して、典型的には小麦の起源に関係して異なるであろう。例えば、1時間当たりの生地製造量が250kgである従来型の半産業的方法によって混練する、工業生産された従来のパンについては、小麦粉の特性、使用する混練装置の種類、及び、パンの最終的な質に関係して、1時間当たり1.2〜12gのオゾンを使用する必要がある。
【0081】
結果
エネルギー費の低減
本出願人は、本発明によるオゾンの存在下での混練によって、従来からの混練方法と比較して、エネルギー費を低減可能であることを発見した。
【0082】
第1に、同じ混練速度について、生地が形成される速度の加速が観測された。例えば、従来からの方法においては、第1の混練速度40rpmにおいて、混練の質が「改善された」とみなされるためには、混練時間は3〜4分間かかると観察された。オゾンの存在下で混練を実施する場合には、他の全てのパラメータは変わらないが、上記時間は2〜3分間に短縮される。改善された混練において、一般的には、第2の混練速度は約80rpmである。従来からの方法においては、混練時間は、この作動条件下で約10〜12分間である。これが、オゾンの存在下で混練を実施する場合には、7〜9分間に短縮される。本出願人は、上記結果が「強力」及び「超強力」型の混練について確認され、一定の混練速度における混練時間が、典型的には(従来からの方法での)当初の混練時間の16%〜27%短縮されることに着目した。
【0083】
正確な混練時間は、使用する混練装置の種類に大きく依存するが、本発明による少なくとも1つの機械的撹拌器を使用するオゾンの存在下での混練においては、上記時間は、一般的には、好ましくは2分超である。
【0084】
また、混練時間及び得られる生地の質が固定されている場合には、生地の質に関して同様の結果を得るために、オゾンを使用することによって混合アームの回転速度を低減することが可能である。例えば、混練が「改善された」とみなされるためには、従来からの第2の混練段階の速度は約80rpmである。混練の際にオゾンを使用すると、同じ混練方法において、撹拌器の回転速度を64rpm〜67rpmと大幅に低減できる。一般的に、混練時間が同じ場合に、オゾンを使用することによって回転速度を18%〜27%低減することが可能である。
【0085】
当業者であれば容易に理解できるように、オゾンの添加による混練時の消費エネルギーの全体的な低減は、典型的には、伝統的に使用される当初のエネルギーの15%〜23%である。
【0086】
レオ発酵計による検討
生地、特にはグルテンネットワークの成分の粘弾性構造に対してオゾンが及ぼす影響を検討するため、本出願人はレオ発酵計の技術を用いた。この方法では、生成する炭素ガス(CO)の体積と、生地内に保持される体積とを測定する。次いで、放出されたCOの体積を表わす上記2つの値の差を割り出すことができる。この測定方法により、グルテンネットワークの酸化の程度について間接的な情報を得ることができると考えられる。
【0087】
図5において、4つの曲線は、
A−オゾンで処理した試料について測定した、生地のCO総生成量、
B−生地中のCOガスの保持量(オゾンで処理した試料)、
C−生地のCO総生成量(オゾン処理していない基準試料)、及び
D−生地中のCOガスの保持量(オゾン処理していない基準試料)
に関するものである。
【0088】
これら4つのグラフの座標軸は、生地によって生成又は保持される気体の体積(10−3リットルで表す)(Y軸)、及び、4つのグラフについて同じ値に限定されている時間(時間で表す)(X軸)を示す。
【0089】
これら4つのグラフを比較することによって、同一の試験/測定時間において、オゾンで処理した生地は非処理の生地より多くのCOを放出する(グラフAとCとの比較)ことが示され、このことは、酸化が良好であると顕著な発酵が引き起こされるということを明瞭に実証するものである。
【0090】
グラフBとDとを比較することによって、同一の観測時間において、オゾンで処理した生地による気体の保持が、非処理の基準に比べて良好であることが示される。
【0091】
COの生成曲線と保持曲線との間の差(放出されたCOの体積を示す)については、オゾンで処理した試料の方が非処理の試料に比べて小さい。
【0092】
コンシストグラフを使用した検討
コンシストグラフは、工業上の条件とほぼ同様に、生地の粘度及び生地の形成時間を測定するのに最も適したツールである。この技術によれば、オゾンの存在下における混練が、生地の機械加工性(分割性及び成形性)及び生地の抵抗性をどの程度改善可能であるかを判断することができる。
【0093】
コンシストグラフでは、座標軸は、実施かつ記録された測定値を示す、すなわちY軸上に圧力(10−3バールで表す)、X軸上に時間(秒で表す)を示す。2つのグラフを比較することによって、混練する試料が小型ニーダーの壁面に及ぼす圧力の差が得られ、これは、生地の成熟、生地の粘度、従ってその後の機械加工性を間接的に示す。
【0094】
本出願人によって得られた結果は図6の曲線から分かるが、一方が、小型混練段階においてオゾン処理していない基準試料に関し、他方が、小型混練段階においてオゾンで処理した基準試料に関する。
【0095】
これら2つのグラフを比較することによって、混練の際にオゾンで処理した試料では、非処理の試料に比べて圧力が速く立ち上がり、最大圧力はほぼ同一であり、この試料の圧力は非処理の試料の圧力よりもゆっくりと低下することを示す。
【0096】
従って、オゾン雰囲気において混練することにより、得られる生地は、後の機械加工性が良好になる傾向が顕著であり、かつ、抵抗性(後の取り扱い、搬送又は成形作業において、混練時間に対する質の維持)が大きくなる傾向が顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
例として、本発明に関する使用の事例を後述する。
【0098】
軟質小麦55型の小麦粉50kg(水含有量13%、乾燥物(DM)に対するタンパク質の割合が11.4%)、イースト1.0kg、及び、海塩500gを、オゾン雰囲気において混練可能なように改変した、固定ボウルを備えるREX式(商品名:VMI)の混練装置であるモデルLEW/GLEWに添加した。改変は、密閉状態のまま撹拌器を通過させたステンレス鋼製の蓋を使用すること、及び、圧縮式シールによりボウルの周囲から水や空気が通らないようにすることによって実施した。密閉蓋は、可撓性シールを有する円形のフランジと、蓋を混練用ボウルに対して位置決めするための誘導システムとを間に挟んで、混練用ボウルに取り付けた。その全体を、可動式オートクレーブ型の可動式高速取り付け装置によって所定の位置に保持した。蓋には、調節バルブが取り付けられたオゾンガス用の導入口、調節バルブが取り付けられたオゾン水又は超オゾン水用の導入口、及び、遮断バルブが設置された上部気体空間のための排出口又は放出口を配置した。
【0099】
本発明に従って用意するオゾン水(湿潤用の水)30リットル中にオゾン1440mgをあらかじめ溶解させた後、混練装置に添加した。混練に要する湿潤用の水に、このように最初にオゾンを添加することによって、生地1kg当たりオゾン18mgを生地に供給することが可能であった(混練用ボウル内の生地の重量、80kg)。撹拌器(「フレーザー」)の回転速度を40rpmとして2分45秒間フライセージ(fraisage)(前混練段階)した後、混練装置を停止させて、あらかじめベクター気体1リットル当たり80mgのO濃度までオゾン化した酸素30リットルで、上部気体空間を満たした。従って、ベクター気体によって上部気体空間に供給されたオゾンの量は2400mgに相当する、すなわち生地1kg当たり、更に30mgのオゾン(湿潤させた最終生地に対して)が追加されたことになる。
【0100】
これらの条件のもとで、供給されたオゾンの総量は、水によって供給された1440mg+ベクター気体によって供給された2400mg、すなわち生地80kgにオゾン計3840mgであり、従って製造された生地1kg当たりのオゾン重量は48mgである。
【0101】
気体を混練装置の上部気体空間へと加えてすぐに、混練速度80rpmで8分間作動するように装置を設定した。この混練時間の完了後、装置を停止させ、同時に混練エネルギーの測定を記録した。上述のように定義した2つの混練段階の際、オゾンの存在下において消費された電気エネルギーは、1.2Kwhであった。
【0102】
同じ混練装置により、同じ小麦粉を使用して同じ作動条件下で、オゾンは使用せずに前もって実施した実験においては、2つの段階、すなわちフライセージ及び混練の間に消費されたエネルギーの読み取り値は1.5Kwhであった。
【0103】
従って、この特定の例において、混練段階においてオゾンを使用したことによって、同じ設備を使用する従来からの混練方法と比較して、エネルギー消費が約20%低減されたことが分かった。
【0104】
このように製造して得られた生地を使用し、本出願人は、専門家らにBIPEA法に従ってパンを製造させ、結果へのコメントを同専門家らに求めたところ、以下が明らかになった:
・着目されるパラメータのほとんどについて同一の質であること、
・生地の抵抗が良好であること、
・成形時の引き伸ばしが良好であること、
・パンの体積が約12%増加していること。
【0105】
これらの結果に基づいて、本出願人は、同じ設備及び同じ作業方法により、回転速度を可能な限り低減して測定を実施し、同様の結果を得た。
【0106】
上記のような実験を何度か実施した結果を調べたところ、エネルギー費の削減の項目で上述した値を割り出すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】混合速度があまり速くなく、混練時にオゾンを使用するように構成されてはいない「従来型」の混練装置を概略的に示す。
【図2】混合速度があまり速くなく、本発明により、混練時にオゾンを使用するように構成されている「従来型」の混練装置の例を概略的に示す。
【図3】混合速度が速く、混練時にオゾンを使用するように構成されていない、(高速混練用の)「連続式」の混練装置を概略的に示す。
【図4】混合速度が速く、本発明により、混練時にオゾンを使用するように構成されている、(高速混練用の)「連続式」の混練装置の例を概略的に示す。
【図5】本発明によってオゾン処理した生地の気体生成及び保持特性の向上を、オゾン処理していない生地と比較して、レオ発酵計によって測定して示したグラフである。
【図6】本発明によってオゾン処理した生地の機械加工性及び抵抗性の向上を、オゾン処理していない生地と比較して、コンシストグラフによって測定して示した曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄力粉を含む生地の混練方法であって、混練作業をオゾンの存在下で少なくとも1つの機械的撹拌器(「フレーザー」)を使用して実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
オゾンを、小麦粉に添加する湿潤用の水に溶解させた状態で供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オゾンを含む湿潤用の水を、オゾンを含むベクター気体から調製する
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ベクター気体は、空気、酸素、又は、これら2つの気体の混合物である
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
湿潤用のオゾン水又は超オゾン水の調製を、多孔質装置を備えたバブリング式の溶解反応器を使用し、水注入器式の一段若しくは多段型の加圧式溶解装置の使用、又は、乾燥型若しくは液封型の圧力ブースター若しくはコンプレッサーの使用により上部気体空間を加圧して、又は加圧せずに、前記溶解反応器を作動させることによって実施する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
湿潤用の水の圧力が、少なくとも絶対圧0.5バールかつ絶対圧2.2バール以下であり、好ましくは少なくとも絶対圧1.7バールかつ絶対圧1.9バール以下である
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
オゾンを、混練装置の上部気体空間に添加する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
混練装置の、オゾンを含む上部気体空間を、オゾンを含むベクター気体から調製する
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ベクター気体は、空気、酸素、又は、これら2つの気体の混合物である
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混練装置の気体相における圧力は、少なくとも絶対圧1.1バールかつ絶対圧1.6バール以下、好ましくは少なくとも絶対圧1.3バールかつ絶対圧1.5バール以下である
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
オゾンを、小麦粉に添加する湿潤用の水に溶解させた状態で、及び、混練装置の上部気体空間に供給する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
オゾンを、選択的に、順次に、連続的に、又は、液体経路によるオゾン供給と気体経路によるオゾン供給とを連続的に繰り返すことにより、添加する
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1時間当たりのオゾンの量(グラム)で表わされる、生地に添加するオゾンの量を、1時間当たりに製造される生地の量(キログラムで表わされる)で割った値は、0.004〜0.06である
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
用いる混練は、従来型、強力型又は超強力型である
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
混練時間は短くとも2分間である
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
混練用ボウル(2)又はニーダー本体(25)、フレーザー(3又は26)、及び、駆動装置(6又は24)を有し、オゾンの存在下で混練可能な混練装置であって、
オゾンガス導入口(8又は30)及び/又はオゾン水若しくは超オゾン水導入口(9又は31)を更に有することを特徴とする混練装置。
【請求項17】
密閉蓋(5)により閉じている混練用ボウル(2)を有し、前記蓋(5)は撹拌器(3)を密閉状態で通過させるための圧縮式シール(11)を含み、混合速度が40〜200rpm、好ましくは40〜80rpmの、いわゆる「従来型」の混練を実施できる
ことを特徴とする請求項16に記載の混練装置。
【請求項18】
水槽(21)、塩槽(29)、小麦粉槽(22)、イースト槽(23)、生地を前方に運ぶための装置(27)、及び、生地放出口(28)を有し、混合速度が100〜600rpmの連続式の混練を実施できる
ことを特徴とする請求項16に記載の混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−529212(P2007−529212A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503376(P2007−503376)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000628
【国際公開番号】WO2005/099457
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(502217724)グリーン テクノロジーズ サルル (1)
【Fターム(参考)】