説明

混練機及び押出し成形装置

【課題】被混練物を一度に混練される一定量以上繋げて排出することが可能な混練機を提供する。
【解決手段】軸状の混練スクリュー14と、混練スクリューを回転させる混練スクリュー駆動部15と、混練スクリューを囲繞して混練スクリューとの間に被混練物Wを混練する混練空間Sを形成するとともに混練空間で混練された被混練物を排出する混練部排出口16が設けられた混練シリンダー部17と、混練部排出口を開閉する混練部開閉機構18と、混練空間内で被混練物を循環させる循環流路19と、を有し、一定量の被混練物を混練空間内で循環させて被混練物の流動体W1を混練部排出口から排出できるようにした混練部と、混練部排出口から排出された流動体を、一定量以上、貯留可能に設けられたバッファー部10と、バッファー部に貯留された流動体を装置外部に排出する排出部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被混練物を循環させて混練する混練機及び押出し成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用材料や医療用材料の特性を向上させるために、複数のポリマー同士、もしくはポリマーと有機粉末や無機粉末といった被混練物を混練する様々な装置が検討されている。そのような装置の1つとして、特許文献1に示すように、スクリュー(混練スクリュー)にその先端面と基端側の側面とを連結する貫通孔(循環流路)を形成して内部帰還型のスクリューとした混練機が知られている。
この混練機によれば、スクリューを高速で回転させることにより、投入された被混練物を循環させながら被混練物に強い剪断力を与えて溶融させ、被混練物の分散相サイズを数十ナノメータ程度まで小さくなるように分散させた押出し成形品が製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の混練機では、一定量の被混練物を循環させ流動体にして混練するので、混練された被混練物を排出してから次の混練を行う必要がある。このため、混練された被混練物を一定量以上の流動体として一度に取出すことができず、混練機から排出された流動体で押出し成形を行う場合には一定量以上を必要とする押出し成形品を製造することができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる混練機及びそれを用いた押出し成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の混練機は、軸状の混練スクリューと、該混練スクリューを回転させる混練スクリュー駆動部と、前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、を有し、一定量の前記被混練物を前記混練空間内で循環させて前記被混練物の流動体を前記混練部排出口から排出できるようにした混練部と、前記混練部排出口から排出された前記流動体を、前記一定量以上、貯留可能に設けられたバッファー部と、該バッファー部に貯留された前記流動体を装置外部に排出する排出部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、混練部では混練スクリュー駆動部により混練スクリューを回転させ、混練スクリューと混練シリンダー部との間の混練空間で循環させて被混練物を一定量ずつ混練することができる。そして、混練部開閉機構によって混練部排出口を開くことで混練部排出口から被混練物を流動体として排出することができる。これらを順に繰返すことにより、混練部から混練が終了した一定量以上の流動体をバッファー部に貯留することができる。そして、バッファー部に貯留された流動体は、排出部によって装置外部に排出される。
このように、バッファー部に一定量以上の流動体を貯留してから排出できるので、流動体を排出するタイミングを調整することが可能となり、混練部で一度に混練される一定量以上の被混練物の流動体をまとめて排出することができる。
【0008】
また、上記の混練機において、前記排出部は、前記バッファー部に連通する排出流路と、該排出流路内で、前記流動体を搬送する排出スクリューと、該排出スクリューを回転させる排出スクリュー駆動部と、前記排出スクリューの搬送方向下流側に設けられた排出部排出口と、を備えることがより好ましい。
この発明によれば、排出スクリューによって被混練物の流動体を加圧して、排出部排出口から連続的に排出することができる。
【0009】
また、上記の混練機において、前記排出スクリューは、搬送方向上流側の側方に、前記排出流路において前記バッファー部と連通する開口が位置するように設けられ、前記バッファー部と前記排出流路との間には、前記開口の大きさを規制して、前記バッファー部内の前記流動体の前記排出流路への流出量を規制するバッファー部開閉機構が設けられたことがより好ましい。
この発明によれば、バッファー部開閉機構によって開口の大きさを規制することで、バッファー部に貯留された被混練物の流動体が排出流路に排出される速度を調整することができる。
【0010】
また、上記の混練機において、前記バッファー部内の前記流動体を前記排出流路に移送する移送機構が設けられたことがより好ましい。
この発明によれば、バッファー部に貯留された流動体をより確実に排出流路に移送することができる。
【0011】
また、上記の混練機において、前記移送機構は、逆止弁を有するピストンを往復駆動することによって、前記バッファー部内の前記流動体を前記排出流路側に移送する構成からなることがより好ましい。
この発明によれば、移送機構は逆止弁を有するピストンをバッファー部内で往復駆動する構成からなるので、移送機構をバッファー部の外部に設ける場合に比べ、装置構成をコンパクト化することができる。
【0012】
また、上記の混練機において、前記排出部は、前記バッファー部に連通する排出部排出口と、該排出部排出口の大きさを規制して、前記バッファー部内の前記流動体の排出量を規制する排出部開閉機構と、を備えることがより好ましい。
この発明によれば、排出部開閉機構によって排出部排出口の大きさを規制することで、バッファー部に貯留された被混練物の流動体が装置外部に排出される速度を調整することができる。
【0013】
また、本発明の押出し成形装置は、上記のいずれかに記載の混練機を備え、該混練機の前記排出部から前記流動体を金型に押出して成形を行うことがより好ましい。
この発明によれば、上記と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の混練機及び押出し成形装置によれば、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の押出し成形装置の軸方向の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の押出し成形装置のピストンの構成と動作を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の押出し成形装置の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態の押出し成形装置の動作を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態の押出し成形装置の軸方向の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の押出し成形装置の変形例を示す軸方向の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の混練機の軸方向の断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の混練機を用いた押出し成形装置の軸方向の断面図である。
【図9】本発明の各実施形態の押出し成形装置で得られた押出し成形品の構成を模式的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る押出し成形装置の第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。図1は、押出し成形装置の軸方向の断面図である。
この押出し成形装置1は、被混練物Wを混練する混練機2と、この混練機2に取付けられた金型3と、金型3から押出される押出し成形品W5の向きを調整するローラ4と、内部を水が循環する水槽5と、一定の速度で回転可能な回転部6aを有する引取り機6とを備え、混練機2で混練された被混練物Wを金型3に押出し、水槽5で冷却された押出し成形品W5を引取り機6の回転部6aで引っ張りながら巻取り、押出し成形を行う装置である。
この混練機2は、通常の使用において方向D1が鉛直方向下向きになるように設置される。なお、本実施形態では、被混練物Wは高分子材料と粉末粒子からなる2種類の材料で構成されている。
【0017】
高分子材料の被混練物Wとしては、熱可塑性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(低密度・高密度・直鎖状低密度・超高分子量)、アイオノマー樹脂(例えばエチレン−メタクリル酸コポリマーアイオノマー樹脂等)、ポリプロピレン(ホモ・ランダム・ブロック・アタクチック・シンジオタクチック)、超高分子量ポリプロピレン、ポリブテン、4−メチルペンテン−1ポリマー、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、プタジェン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂など)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、酢酸セルロース、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、生分解性ポリマー、およびその共重合体などを用いることができる。
【0018】
また、粉末粒子の被混練物Wとしては、分子材料と複合化できる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば無機物では硫酸バリウム・炭酸カルシウムなどの金属無機塩、アルミナなどの金属酸化物、窒化ホウ素などの窒素化合物、粉末炭素・針状炭素・カーボンナノチューブ・フラーレンなどの単一物もしくは複合物、有機物ではポリ4フッ化エチレン粉末・超高分子量粉末・ポリイミド粉末などを添加してもよい。無機物と有機物の複合粒子であっても構わない。また、上記粉末粒子の添加量についても、高分子材料と複合化できる量であれば特に限定されるものではない。さらに、無機物と有機物からなる粉末粒子の複合化に際して、使用する無機物は単独であっても、二種以上の複合であっても良い。
また、被混練物Wにおいて樹脂混合物に分散させる成分として常用の各種添加成分、例えば、相溶化剤、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などの添加剤を用いても良い。
【0019】
本実施形態の混練機2は、一定量の被混練物Wを混練して水平方向Eのうちの一方である第1の搬送方向E1に搬送して排出する混練部9と、混練部9から排出された被混練物Wの流動体W1を、一定量以上貯留可能に設けられたバッファー部10と、バッファー部10に貯留された流動体を金型3に押出す排出部11と、バッファー部10内の被混練物Wを排出部11に移送する移送機構12と、を備える。
そして、混練部9、バッファー部10及び排出部11は、不図示の温調手段により、被混練物Wが溶融する一定の温度に内部が制御された直方体状のベース体8の内部にそれぞれ形成され、混練部9はベース体8の内部の中でも上方に、バッファー部10は混練部9の第1の搬送方向E1側の下方に、排出部11は混練部9の下方にそれぞれ形成されている。
【0020】
混練部9は、略円柱状の混練スクリュー14と、混練スクリュー14を回転させる混練スクリュー駆動部15と、混練スクリュー14を囲繞して混練スクリュー14との間に被混練物Wを混練する混練空間Sを形成するとともに混練空間Sで混練された被混練物Wの流動体W1を排出する混練部排出口16が設けられた混練シリンダー部17と、混練部排出口16を開閉する混練部開閉機構18と、混練空間S内で被混練物Wを循環させる循環流路19と、を有する。
【0021】
本実施形態の混練シリンダー部17は、ベース体8の内部に円柱状の穴部として水平方向Eに延在するように形成されている。また、混練スクリュー14は外周部に螺旋状のスクリュー14cが形成され、混練シリンダー部17の内部に混練シリンダー部17と同軸に配置されている。これにより、混練スクリュー14は第1の搬送方向E1に被混練物Wを搬送できるようになっている。
また、混練部排出口16は、混練シリンダー部17のうちの第1の搬送方向E1側の端部下方に形成されている。
また、本実施形態の循環流路19は混練スクリュー14の内部に形成されている。すなわち、循環流路19は、混練スクリュー14の第1の搬送方向E1側の端部である先端部14aから第1の搬送方向E1とは反対方向の第2の搬送方向E2に混練スクリュー14の内部まで延びる先端側循環流路19aと、この先端側循環流路19aの第2の搬送方向E2側の端部から先端側循環流路19aに直交する方向に延びて混練スクリュー14の外周部14bに少なくとも1カ所(図では2カ所)で連通する基端側循環流路19bとで構成されている。
【0022】
混練スクリュー駆動部15は、混練スクリュー14の第2の搬送方向E2側においてベース体8の第2の搬送方向E2側の側面8aに取付けられ、混練スクリュー14を例えば2段階に速度を変えて回転させることが可能となっている。
混練部開閉機構18は、水平方向Eに移動して混練部排出口16の流路を塞ぐことが可能な板状の混練シャッター22と、混練シャッター22の第1の搬送方向E1側においてベース体8の第1の搬送方向E1側の側面8bに取付けられ混練シャッター22を混練部排出口16に対して進退させる混練シャッター開閉部23と、を有する。
ベース体8には、天面8cから下方に延びて混練シリンダー部17の第2の搬送方向E2側に連通する材料投入口8dが形成され、この材料投入口8dには被混練物Wを貯留し材料投入口8dに供給するホッパー24が取付けられている。
【0023】
バッファー部10は混練部9の混練部排出口16の下方に、混練部排出口16に連通して形成されている。そして、本実施形態においては、バッファー部10は、混練部9で被混練物Wが一度に混練される一定量の例えば約2倍の容積を有するように設定されている。
排出部11は、バッファー部10に連通する円柱状の穴部である排出流路27と、排出流路27内で、流動体W1を搬送するため外周部に螺旋状のスクリューが形成された略円柱状の排出スクリュー28と、排出スクリュー28を回転させる排出スクリュー駆動部29と、排出スクリュー28の第2の搬送方向E2側に設けられた排出部排出口30と、を備える。
排出流路27は、バッファー部10の第2の搬送方向E2側に、混練シリンダー部17に隣接して水平方向Eに延在するように形成されている。排出スクリュー28は、排出流路27の内部に排出流路27と同軸に配置され、排出スクリュー駆動部29に連結された端部側で回転可能に支持されている。
排出スクリュー駆動部29は、排出スクリュー28の第2の搬送方向E2側において、ベース体8の側面8aに取付けられている。
排出部排出口30は、排出流路27の第2の搬送方向E2側の端部から下方にベース体8の底面8eまで延ばされている。そして、排出流路27の底面8e側の開口には金型3が取付けられている。
【0024】
移送機構12は、バッファー部10の内部及び排出スクリュー28の第1の搬送方向E1側の端部との間を移動可能に設けられ逆止弁33を有するピストン34と、このピストン34を水平方向Eに往復駆動させるピストン移送部35と、水平方向Eに延在しピストン34とピストン移送部35とを連結する棒状の軸部39と、を備えている。
ピストン移送部35は、ピストン34の第1の搬送方向E1側においてベース体8の側面8bに取付けられている。
そして、混練スクリュー駆動部15、排出スクリュー駆動部29、混練シャッター開閉部23及びピストン移送部35の動作は、これらにそれぞれ接続されベース体8の側面8aに取付けられた制御部36により制御される。
【0025】
図2は、ピストン34の構成を示す断面図であり、図2(a)は移送機構12がピストン34を第2の搬送方向E2側に移動させる時、図2(b)はピストン34を第1の搬送方向E1側に移動させる時の状態を示している。そして、このピストン34が有する逆止弁33により、以下に説明するように流動体W1が第2の搬送方向E2のみに流れるように構成されている。
図2(a)に示すように、円柱状のピストン34には、ピストン34の軸線C1に沿う方向に貫通する本体側係止孔34aと移送孔34bとがそれぞれ複数形成されている。
逆止弁33は、ピストン34よりわずかに小径の円板部33aと、この円板部33aから軸線C1に沿う方向に突出しピストン34のピストン側係止孔34aに軸線C1に沿う方向に一定距離進退可能に挿通された逆止弁側係止部33bと、からなる。
【0026】
このように構成されたピストン34は、図2(a)に示すように移送機構12がピストン34を第2の搬送方向E2側に移動させる時には、後述するように逆止弁33の第2の搬送方向E2側に配置された流動体W1が逆止弁33を第1の搬送方向E1側に押すことになる。このため、逆止弁33がピストン34に密着して移送孔34bが塞がれるので、流動体W1が第1の搬送方向E1側に流れるのを防止することが可能となる。
また、図2(b)に示すように移送機構12がピストン34を第1の搬送方向E1側に移動させる時には、後述するようにピストン34の第1の搬送方向E1側に配置された流動体W1が移送孔34bから流れ込み、逆止弁33を第2の搬送方向E2側に押すことになる。このため逆止弁33は、ピストン34のピストン側係止孔34aに逆止弁33の逆止弁側係止部33bが係止された状態でピストン34とともに移動される。これにより、流動体W1は、移送孔34bを経由しピストン34と逆止弁33との間に形成された隙間を通って第2の搬送方向E2側に流れることが可能となる。
【0027】
次に、以上のように構成された押出し成形装置1で所望の長さの押出し成形品W5を製造する動作について混練機2の動作を中心に説明する。図3及び図4は押出し成形装置1の動作を示す説明図である。
図1は、混練された一定量の被混練物Wの流動体W1が混練部9の混練部排出口16から排出されバッファー部10に貯留された時の状態を示している。
なお、各図は連続的に動作する押出し成形装置1の途中の状態を示しており、排出流路27及び排出部排出口30に図示された流動体W1は押出し成形の開始時には存在しないものである。
この図1に示す状態から、制御部36は、混練シャッター開閉部23により混練シャッター22を混練部排出口16に進出させて混練部排出口16を閉止し、被混練物Wを混練するために混練スクリュー駆動部15によって混練スクリュー14を2段階の速度のうち回転速度の速い方の第2の回転速度で回転させる。そして、ホッパー24に貯留された被混練物Wのうち一度に混練部9で混練される一定量を材料投入口8dを通して混練シリンダー部17の内部に投入する。
【0028】
すると、図3に示すように、混練シリンダー部17内に投入された被混練物Wは、混練スクリュー14のスクリュー14cの回転により第1の搬送方向E1に押出され、混練空間Sを通って混練スクリュー14の先端部14a側に移動されていく。
この間、被混練物Wは混練空間Sにおいて混練スクリュー14から剪断力を受けて発熱、溶融し、被混練物Wが流動体W1となって混練されていく。そして、先端部14aに到達した流動体W1は先端部14aと混練シリンダー部17との間で大きな剪断力を受けつつ先端側循環流路19aに流入し、先端側循環流路19aと基端側循環流路19bとをこの順で通って混練スクリュー14の外周部14bに戻り、再び混練空間S内を混練スクリュー14の先端部14a側に押出される。こうして、一定量の被混練物Wは流動体W1として、混練空間S及び循環流路19内を循環しながら繰返し混練されていく。
【0029】
このようにして、被混練物Wが一定時間混練され1回目の混練が終了するまでの間に、図4に示すように、制御部36は、ピストン34を混練部排出口16の第2の搬送方向E2側に移動させて、混練部排出口16の下方が解放された状態とする。そして、混練スクリュー14の回転速度を第1の回転速度まで低下させ、第1のシャッター開閉部23により第1のシャッター22を混練部排出口16から退避させて混練部排出口16をバッファー部10に連通させる。
これにより、図1に示すように、混練部9内の一定量の流動体W1は、混練スクリュー14の回転により順次先端部14a側に搬送され、流動体W1が先端部14aに到達すると、混練部排出口16を通して下方に落下していき、バッファー部10内に貯留されていく。
【0030】
バッファー部10内に一定量の流動体W1が排出されたら、制御部36は、第1のシャッター開閉部23を駆動して第1のシャッター22によって混練部排出口16を閉止する。そして混練部9では、上記と同様にして次の一定量の被混練物Wで混練を行う。
一方、バッファー部10と移送機構12の側では、制御部36は、ピストン移送部35によりピストン34を第1の搬送方向E1側に移動させ、バッファー部10内に貯留されている一定量の流動体W1をピストン34に形成された移送孔34bを通して逆止弁33の第2の搬送方向E2側に移動させる。
【0031】
次に、図3に示すように、制御部36は、ピストン移送部35によりピストン34で一定量の流動体W1を第2の搬送方向E2側に移動させる。その際、前述したように流動体W1がピストン34を第1の搬送方向E1側に流れるのが防止される。
そしてこの時、排出スクリュー28は排出スクリュー駆動部29により押出し成形に必要な一定の回転速度で回転されている。このため、ピストン34によってバッファー部10から移送された一定量の流動体W1は、図4に示すように、排出スクリュー28によって排出流路27内で第2の搬送方向E2に搬送され、排出部排出口30に一定速度で搬送される。
【0032】
なお、制御部36は、排出スクリュー28から流動体W1が安定して排出されるように、ピストン移送部35によりピストン34で流動体W1を第2の搬送方向E2に一定の圧力で押圧させる。
そして、排出部排出口30に搬送された流動体W1は、図1に示すように、排出部排出口30及び金型3を通って一定の形状に押出されて押出し成形品W5となり、水槽5で冷却され引取り機6の回転部6aで引っ張りながら巻取り取られる。
【0033】
このように、混練部排出口16が閉止された状態では、混練部9の側と、バッファー部10と移送機構12の側との間が遮断され、それぞれが独立して動作を行う。そして、混練部9で2回目以降の混練が終了した時に、予め混練部排出口16の第2の搬送方向E2側にピストン34をその都度退避させておき、混練部排出口16をバッファー部10に連通させてバッファー部10内に一定量の流動体W1を排出する。バッファー部10内に貯留された一定量の流動体W1は前述したようにピストン34により排出スクリュー28側に搬送されるが、排出スクリュー28に供給する流動体W1が途切れないように、排出スクリュー28の第1の搬送方向E1側の端部の流動体W1が無くなる前に一定量の流動体W1を排出スクリュー28に搬送し、既に排出スクリュー28で搬送されている流動体W1に搬送した一定量の流動体W1をくっつけて一体化する。
そして、制御部36は、以上説明した一連の動作を所望の長さの押出し成形品W5を製造するまで繰返し行い、その後、混練スクリュー駆動部15や排出スクリュー駆動部29等の動作を停止させる。
【0034】
こうして、本発明の第1実施形態の押出し成形装置1によれば、混練部9では混練スクリュー駆動部15により混練スクリュー14を回転させ、混練スクリュー14と混練シリンダー部17との間の混練空間Sで循環させて被混練物Wを一定量ずつ溶融させ混練することができる。そして、混練部開閉機構18によって混練部排出口16を開くことで混練部排出口16から被混練物Wを流動体W1として排出することができる。そして、これらを順に繰返すことにより、混練部9から混練が終了した一定量以上の流動体W1をバッファー部10に貯留することができる。
また、移送機構12のピストン34により、バッファー部10内に貯留された流動体W1を移動させるので、移送機構12が無く流動体W1がバッファー部10から流れ出して排出流路27に移動する場合に比べ、より確実に流動体W1を排出流路27に移送することができる。
【0035】
また、移送機構12は、逆止弁33を有するピストン34をバッファー部10内で往復駆動する構成からなるので、移送機構をバッファー部10の外部に設ける場合に比べ、装置構成をコンパクト化することができる。
また、この排出部11は、排出流路27、排出スクリュー28と、排出スクリュー駆動部29と、排出部排出口30と、を備えるので、排出スクリュー28によって流動体W1を加圧して、排出部排出口30から連続的に押出すことができる。
【0036】
なお、本実施形態では、混練部9からバッファー部10に一定量の流動体W1が排出される毎に移送機構12によりその一定量の流動体W1をバッファー部10から排出流路27内の排出スクリュー28側に移送した。しかし、排出部排出口30から流動体W1が排出される速度によっては、移送機構12の動作タイミングを変えてバッファー部10に流動体W1を一定量の2倍以上貯留してから、移送機構12によりその流動体W1をまとめてバッファー部10から排出スクリュー28側に移送してもよい。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図5に示すように、本実施形態の押出し成形装置51の混練機52は、上記実施形態の混練機2の移送機構12を削除し、排出部11に代えて排出部54を備えている。
この排出部54は、水平方向Eに延在し第1の搬送方向E1側の端部に形成された開口55aがバッファー部10の下部に連通する排出流路55と、排出流路55の内部に排出流路55と同軸に配置され第1の搬送方向E1側の端部が開口55aの下方まで延びる排出スクリュー56と、排出スクリュー56を回転させる排出スクリュー駆動部29と、排出流路55の第2の搬送方向E2側に設けられた排出部排出口30と、を有する。
【0038】
この混練機52の動作は、上記実施形態における混練機2の動作と以下の点のみ異なる。すなわち、上記実施形態における混練機2では、排出スクリュー28の第1の搬送方向E1側の端部の流動体W1が無くなる前に移送機構12により流動体W1を排出スクリュー28に搬送した。これに対し、本実施形態の混練機52では、排出スクリュー56の第1の搬送方向E1側の端部上の流動体W1が無くなる前に、混練部9の混練部排出口16から一定量の流動体W1を排出する。
このような本発明の第2実施形態の押出し成形装置51によれば、流動体W1に作用する重力により、移送機構12を用いることなくバッファー部10内に貯留される流動体W1を排出スクリュー56に移動させることができる。
【0039】
次に、本実施形態の変形例について説明する。図6に示すように、本変形例の混練機60は上記実施形態の混練機52の構成に加えて、バッファー部10の下部に、開口55aの大きさを規制して、バッファー部10内の流動体W1の排出流路55への流出量を規制するバッファー部開閉機構57が設けられている。
このバッファー部開閉機構57は、水平方向Eに移動し開口55aの流路を塞ぐことが可能な板状のバッファーシャッター58と、バッファーシャッター58の第1の搬送方向E1側においてベース体8の側面8bに取付けられバッファーシャッター58を開口55aに対して進退させるバッファーシャッター開閉部59と、を有する。そして、バッファーシャッター開閉部59は制御部36に接続され、その動作が制御される。
【0040】
この混練機60の動作は、上記実施形態における混練機52の動作と以下の点のみ異なる。すなわち、上記実施形態における混練機52では、混練部9の混練部排出口16から排出された流動体W1は、自身に作用する重力により排出スクリュー56の第1の搬送方向E1側の端部上に移動した。これに対し、本変形例の混練機60では、混練部排出口16から排出された流動体W1は、大きさが規制される開口55aを通ってから排出スクリュー56に移動する。
このような本変形例の押出し成形装置51によれば、バッファー部開閉機構57によって開口55aの大きさを規制することで、バッファー部10に貯留された流動体W1が排出流路55に排出される速度を調整することができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態の混練機62は、上記実施形態の混練機2の移送機構12を削除し、排出部11に替えて排出部67を備えている。
この排出部67は、バッファー部10の下部にバッファー部10からベース体8の底面8eまで貫通するように形成された排出部排出口65と、排出部排出口65の大きさを規制して、バッファー部10内の流動体W1の排出量を規制する排出部開閉機構66と、を有する。
排出部開閉機構66は、水平方向Eに移動し排出部排出口65を塞ぐことが可能な板状の排出部シャッター70と、排出部シャッター70の第1の搬送方向E1側においてベース体8の側面8bに取付けられ排出部シャッター70を排出部排出口65に対して進退させる排出部シャッター開閉部71と、を有する。そして、排出部シャッター開閉部71は制御部36に接続され、その動作が制御される。
【0042】
この混練機62の動作は、上記実施形態における混練機2の動作と以下の点のみ異なる。すなわち、上記実施形態における混練機2では、バッファー部10に貯留された流動体W1を移送機構12により排出スクリュー28に搬送した。これに対し、本実施形態の混練機52では、バッファー部10に被混練物Wが一度に混練される一定量の約2倍の流動体W1が貯留された時に、排出部シャッター開閉部71で排出部シャッター70を進退させることにより排出部排出口65の大きさが規制され、排出部排出口65から流動体W1が排出される。
このような本発明の第3実施形態の混練器62によれば、排出部開閉機構66によって排出部排出口65の大きさを規制することで、バッファー部10に貯留された被混練物Wの流動体W1が装置外部に排出される速度を調整することができる。
【0043】
なお、図8に示すように、本実施形態の混練機62の排出部排出口65から排出される流動体W1を以下に示す押出し機構75に供給したうえで金型3に押出すことで、この混練機62を用いた押出し成形装置61で押出し成形品W5を製造することができる。
この押出し機構75としては、図5に示す排出部54のように排出スクリュー56を回転させて流動体W1を押出すものであってもよいし、定容積ポンプ等を用いて流動体W1を押出すものであってもよい。
【0044】
なお、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記第1実施形態から第3実施形態では、循環流路19は混練スクリュー14の内部に形成したが、循環流路はベース体8に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記第1実施形態から第3実施形態では、方向D1が鉛直方向下向きになるように設定した。しかし、方向D1は任意の方向を向いていてもよい。
混練シリンダー部17内に収容される被混練物Wの流動体W1の量が増えれば流動体W1は混練シリンダー部17から溢れ出て混練部排出口16から排出される。従って、方向D1が任意の方向を向くように設定してもよい。
また、第1実施形態では、方向D1が任意の方向を向く場合には、流動体W1をより確実に移動させるために、混練スクリュー14の先端部14aからバッファー部10まで流動体W1を移動させる流動体移動機構を設けてもよい。なお、第2実施形態でも同様に、混練スクリュー14の先端部14aから排出スクリュー56まで流動体W1を移動させる流動体移動機構を設けてもよい。
また、上記第1実施形態から第3実施形態では、混練部開閉機構18、バッファー部開閉機構57及び排出部開閉機構66は、それぞれ流路を塞ぐためシャッターを進退させる機構としたが、流路に取付けた弁を開閉させる機構であってもよい。
【0046】
また、上記第1実施形態から第3実施形態では、被混練物Wの混練が完了したことを混練した時間により検出した。しかし、この混練の完了となる時間を、以下に説明するように、予め混練スクリュー14の回転数等を同一条件とし被混練物Wを混練する時間を変えて射出成形を行った試験結果から判断してもよい。
【0047】
2種類以上の被混練物Wを混練して製造された押出し成形品W5の場合には、図9に示すように、押出し成形品W5から切出されるサンプルW6はマトリックスと呼ばれる基本相W7と、ドメインと呼ばれる分散相W8と、で構成されている。ここで、例えば10mm×10mmで厚さ1mmという所定の大きさのサンプルW6を押出し成形品W5から切出し、この分散相W8の粒子のサイズを計測する。そして、分散相W8の各粒子の径が最も大きくなる方向の粒径を分散相粒径W9とし、分散相粒径W9の平均値μ、標準偏差σをそれぞれ求める。
そして、次式で示される変動係数Kを求める。なお、この変動係数Kは、被混練物Wの分散性が高くなる程小さな値を示すものである。
K=σ/μ×100(%) ・・・(1)
【0048】
そして、変動係数Kで分散性を評価し、この変動係数Kが所定の値より小さくなった場合に混練が完了していると判断する。
混練スクリュー14の回転速度等を同一条件にして、混練させる時間のみを変化させた被混練物Wによる押出し成形品W5を複数製造する。この複数の押出し成形品W5からサンプルW6をそれぞれ切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各サンプルW6における変動係数Kをそれぞれ求め、混練させる時間に対する変動係数Kの変化を求める。
変動係数Kが所定の値より小さくなるのに要する被混練物Wを混練させる時間を求め、以降の押出し成形においてはこの求めた時間だけ被混練物Wの混練を行うことで、変動係数Kが所定の値より小さく分散性の高い押出し成形品W5を製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
1、51、61 押出し成形装置
2、52、60、62 混練機
9 混練部
10 バッファー部
11、54、67 排出部
12 移送機構
14 混練スクリュー
15 混練スクリュー駆動部
16 混練部排出口
17 混練シリンダー部
18 混練部開閉機構
19 循環流路
27、55 排出流路
28、56 搬送スクリュー
29 搬送スクリュー駆動部
30、65 排出部排出口
33 逆止弁
34 ピストン
57 バッファー部開閉機構
66 排出部開閉機構
S 混練空間
W 被混練物
W1 流動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の混練スクリューと、該混練スクリューを回転させる混練スクリュー駆動部と、前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、を有し、一定量の前記被混練物を前記混練空間内で循環させて前記被混練物の流動体を前記混練部排出口から排出できるようにした混練部と、
前記混練部排出口から排出された前記流動体を、前記一定量以上、貯留可能に設けられたバッファー部と、
該バッファー部に貯留された前記流動体を装置外部に排出する排出部と、を備えることを特徴とする混練機。
【請求項2】
請求項1に記載の混練機において、
前記排出部は、
前記バッファー部に連通する排出流路と、
該排出流路内で、前記流動体を搬送する排出スクリューと、
該排出スクリューを回転させる排出スクリュー駆動部と、
前記排出スクリューの搬送方向下流側に設けられた排出部排出口と、を備えることを特徴とする混練機。
【請求項3】
請求項2に記載の混練機において、
前記排出スクリューは、搬送方向上流側の側方に、前記排出流路において前記バッファー部と連通する開口が位置するように設けられ、
前記バッファー部と前記排出流路との間には、前記開口の大きさを規制して、前記バッファー部内の前記流動体の前記排出流路への流出量を規制するバッファー部開閉機構が設けられたことを特徴とする混練機。
【請求項4】
請求項2に記載の混練機において、
前記バッファー部内の前記流動体を前記排出流路に移送する移送機構が設けられたことを特徴とする混練機。
【請求項5】
請求項4に記載の混練機において、
前記移送機構は、逆止弁を有するピストンを往復駆動することによって、前記バッファー部内の前記流動体を前記排出流路側に移送する構成からなることを特徴とする混練機。
【請求項6】
請求項1に記載の混練機において、
前記排出部は、前記バッファー部に連通する排出部排出口と、
該排出部排出口の大きさを規制して、前記バッファー部内の前記流動体の排出量を規制する排出部開閉機構と、を備えることを特徴とする混練機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の混練機を備え、
該混練機の前記排出部から前記流動体の供給を受けて成形を行うことを特徴とする押出し成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−247425(P2010−247425A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99185(P2009−99185)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】