説明

混練装置

【課題】混練部材の耐摩耗性を向上させ、被混練物の混練並びに搬送を良好に効率良く行うことが可能な混練装置を提供する。
【解決手段】外周面に混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体を混練しながら混練物を搬送する混練装置において、混練部材の上端面30aに硬化肉盛り32が行われ、また、混練部材の搬送面の上端面部分に切り欠き凹部30dが形成され、そこにも硬化肉盛りが行われる。その場合、肉盛り処理は、肉盛り面が切り欠き凹部を超えて搬送面にまで延び、搬送側肉盛り面32aと混練物搬送面30b間に段差d’が形成されるように行われる。このような構成では、ロッドの耐磨耗性を向上させ、硬化肉盛りが剥がれることのない効率的な混練並びに搬送が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置、特に、外周面にロッド、パドル、スクリュー羽などの混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体あるいはそれと液体の混合物などの被混練物を混練しながら混練物を搬送する混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却所では、ゴミ焼却時の排煙から集塵された飛灰を無害化するために、その飛灰、ダイオキシン吸着用の活性炭の粉、及び酸性ガスの中和剤、ないしは固化用セメントなどの粉体と、重金属溶出防止用の薬溶液と希釈用の水を混合した混合液などの液体とを混練し、その混練物を不定形の粒状ないし塊状に固化させる処理が行なわれている。
【0003】
混練には、上記の種類の混練装置が用いられており、投入口から投入された粉体は、回転する回転軸の混練部材によりかき混ぜられ、混練物となる。混練部材が螺旋形に配置されていることにより、混練物は排出口側に搬送されてそこから排出される(特許文献1)。
【0004】
ところで、混練部材の端面(上端面)あるいは搬送面には、粉体や混練物が激しくぶつかり合い、磨耗が生じるので、混練部材の上端面あるいは搬送面等の磨耗部には、耐摩耗性処理、例えば硬化肉盛り処理が行われており、混練部材の耐摩耗性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−105840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬化肉盛りは混練部材の上端面あるいは搬送面などの磨耗部に施され、磨耗部が平面であるので、硬化金属の溶融の仕方によって肉盛り部が剥がれたりする。これを防止するために、肉盛り部を高く(厚く)すると、混練物の衝撃を受けやすくなり、剥離する要因を高めてしまう。
【0007】
また、混練部材の搬送面に硬化肉盛りを施すと、混練物が搬送されるとき混練物が肉盛りの突出した部分に引っかかり滑るので、突出部の下方にある母材が削り取られてしまい、母材の磨耗を早めてしまう、という欠点がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、混練部材の耐摩耗性を向上させ、被混練物の混練並びに搬送を良好に効率良く行うことが可能な混練装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
外周面に混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体を混練しながら混練物を搬送する混練装置であって、
前記混練部材の上端面に連続する混練物搬送面の上端面部分に切り欠き凹部を形成して、該上端面と切り欠き凹部に一層の硬化肉盛り処理が施され、
前記硬化肉盛り処理は、肉盛り面が切り欠き凹部の底面を超えて搬送面にまで延び、搬送側肉盛り面と該搬送面との間に段差が形成されるように、行われることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
外周面に混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体を混練しながら混練物を搬送する混練装置であって、
前記混練部材の上端面に連続する混練物搬送面の上端面部分に切り欠き凹部を形成して、該上端面と切り欠き凹部に一層の硬化肉盛り処理が施され、
前記切り欠き凹部は、混練物搬送面と対称な面にも形成され、該両面の切り欠き凹部に対して硬化肉盛り処理が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、混練部材の磨耗部に硬化肉盛り処理が行われるので、混練部材の耐摩耗性が向上するとともに、硬化肉盛りが剥がれることがないので、被混練物の混練並びに搬送を良好に効率良く行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における混練装置の筐体の上側の大部分を取り払った状態で示す平面図である。
【図2】同混練装置の筐体内の一方の回転軸に沿った側面図である。
【図3】(a)は混練部材としての硬化肉盛りされたロッドの斜視図、(b)はその縦断面図、(c)は(a)のX−X’に沿った断面図である。
【図4】ロッドの両側に硬化肉盛りを施したロッドの斜視図、(b)はその縦断面図、(c)は(a)のX−X’に沿った断面図である。
【図5】混練部材としての硬化肉盛りされたスクリュー羽を、一部断面で示した斜視図である。
【図6】硬化肉盛りされたスクリュー羽の他の実施例を示す断面図である。
【図7】混練部材としての硬化肉盛りされたパドルの斜視図である。
【図8】硬化肉盛りされたパドルの他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1、図2には、本発明実施例に係る混練装置が図示されており、混練装置はベースのフレーム2上に配置される。混練装置の筐体1の右端部の上側(図2)には、不図示のホッパーから飛灰、ダイオキシン吸着用の活性炭の粉、及び硫酸中和用の消石灰、ないしは固化用セメントなどの粉体を筐体1内に投入(投下)するための投入口1aが設けられ、左端部の下側には、粉体と、薬溶液と希釈用の水の混合液とを混練した飛灰混練物を不図示のコンベア上へ排出するための排出口1bが設けられている。
【0015】
筐体1内には、ギア11、12を介して互いに逆方向に不等速回転する2本の回転軸3,4が、軸受5,6と、ギアケース9に固定された2つの軸受7,8によって回転可能に支持されている。回転軸3、4は、例えば5:4の比で不等速回転される。
【0016】
回転軸3,4において投入口1aの直下の部分は、それより排出口1b側の部分より径が大きなスクリュー部3a,4aとなっており、そのスクリュー部3a,4aのそれぞれの外周面には、回転軸3,4の軸方向に沿って所定ピッチの連続した螺旋形に形成されたスクリュー羽3b,4bが設けられている。スクリュー部3a,4aの径は同じであり、スクリュー羽3b,4bの径も同じである。ただし、スクリュー羽3b,4bの螺旋形の巻回方向は互いに逆になっており、また、スクリュー羽3b,4bのピッチ比は回転軸3、4の回転比と逆比の1:1.25となっている。
【0017】
また、回転軸3,4のスクリュー部3a,4aより排出口1b側で排出口1bの近傍までの部分には、混練部材としての複数のロッド3c,4cが回転軸3,4の軸方向に所定距離のピッチ(間隔)で、且つ周方向に所定角度のピッチで互いに逆方向の螺旋形に並ぶようにして回転軸3,4の外周面に対し垂直に立設されている。回転軸3,4のロッド3c,4cを設けた部分の径は同じであり、ロッド3c,4cの寸法も同じであり、ロッド3c,4cの回転軸3,4の軸方向へのピッチも同じである。但し、回転軸3,4の周方向におけるロッド3c,4cの角度ピッチは異なり、その角度ピッチ比は、回転軸3、4の回転比と同じ比の45°:36°の角度ピッチ比となっている。ロッド3c,4cは回転軸3,4において排出口1bより手前の途中までは1条だけ設けられているが、排出口1bの近傍部分では複数条設けられている。
【0018】
フレーム2には、モータ14が設けられており、モータ14が回転すると、その回転がサイクロ減速機15,スプロケット16,チェーン17及びスプロケット13を介して回転軸3に伝達されて回転軸3が一方向に回転し、さらにギア11,12を介して回転軸4が逆方向に回転する。
【0019】
また、図2に示すように、混練装置には、重金属溶出防止用の薬溶液と希釈用の水を混合した混合液を注入するための配管(ノズル)18が設けられている。
【0020】
ところで、以上の構成において、後述する混練時にスクリュー羽3bがスクリュー部4aの外周面とスクリュー羽4bの両面に付着した粉体を掻き落とし、スクリュー羽4bがスクリュー部3aの外周面とスクリュー羽3bの両面に付着した粉体を掻き落とすセルフクリーニングと、ロッド3cが回転軸4の外周面に付着した飛灰混練物を掻き落とし、ロッド4cが回転軸3の外周面に付着した飛灰混練物を掻き落とすセルフクリーニングが行なわれるようになっている。
【0021】
このために、回転軸3,4は、スクリュー羽3b,4bどうしが互いに相手の間に入り、スクリュー羽3bの先端がスクリュー部4aの外周面、スクリュー羽4bの先端がスクリュー部3aの外周面にほぼ接触する、すなわち接触するか或いはごく近くまで接近し、さらにロッド3cの先端が回転軸4の外周面、ロッド4cの先端が回転軸3の外周面にほぼ接触するように配置されている。
【0022】
また、図1、図2には、煩雑になるため図示されていないが、混練部材としてロッドの磨耗部には、図3に示したように、硬化肉盛り処理が施される。図3(a)はロッド20の斜視図を、図3(b)はその縦断面図、図3(c)は図3(a)のX−X’に沿った断面図を示す。ロッド20は図1、図2におけるロッド3cあるいは4cに対応しており、図3において上側がロッドの上端面に、また下方端が回転軸3あるいは4に取り付けられる部分である。
【0023】
図3(a)、(b)、(c)から明らかなように、ロッド20の上端面20a並びに上端面20aに連続するロッドの混練物搬送面20bには硬化肉盛り処理が施される。ロッド20は炭素鋼(S45C)、クロム・モリブデン鋼(SCM440)あるいはステンレススチール(SUS304)などからできており、硬化肉盛りは、ロッド20を母材として、タングステン・カーバイトを80%を含有した耐磨耗硬化肉盛り棒(例えば、Elastodur8811(商品名))を、母材面から30°ないし40°傾け、硬化肉盛り棒の先端を母材に付けて炎を当てガス溶接することによって行われる。
【0024】
ロッド20には、その搬送面20bに対応する上端面部分に切り欠き凹部20cが、所定の深さdで(図3(b))、また混練物を搬送する搬送面に対応して円弧状(図3(c))に形成されるので、硬化肉盛り21は上端面20aを覆って、切り欠き凹部20c全体に施される。そのとき、切り欠き凹部20cに硬化肉盛りされた肉盛り面21aと搬送面20bが同じ面、つまりつら位置となるように硬化肉盛り処理を施すようにする。このように、肉盛り面と搬送面が同じ面位置となるように硬化肉盛りを行うことにより、両面に段差(高低差)が生じないので、混練物が滑らかに搬送され、混練物が段差に衝突することがなくなるので母材のこの部分における磨耗を減少させることができる。また、硬化肉盛りは、切り欠き凹部20cにも施されるので、硬化肉盛りのロッドに対する溶接強度が向上し、また、硬化肉盛り21の上端面20aからの高さhを少なくすることができるので、硬化肉盛り21が混練物との衝撃により剥がれるのを防止することができる。
【0025】
なお、混練装置では、回転軸3、4が搬送途中で逆転され、搬送方向が逆になるモードの種類もあるので、このような混練装置では、ロッドには、図3に示された搬送面と対称な面にも搬送面が存在する。そこで、図4(a)、(b)、(c)に示したように、ロッド20の上端面20aの両搬送面に対応する部分に円弧状の切り欠き凹部20d、20eが形成され、上端面20aと両切り欠き凹部20d、20eに硬化肉盛り22が施される。このとき、図3の場合と異なり、上端面の中心部には硬化肉盛りは行われない。その他は、図3の場合と同じで、図3において逆の搬送面にも同様な硬化肉盛りが行われたのと同じ効果が得られる。
【0026】
混練は、上述したように円筒状のロッドのほかに、スクリュー羽でも行われるので、図5に示したように、スクリュー羽30にも、硬化肉盛り31を施す。スクリュー羽30は、図1、図2のスクリュー羽3b、4bに対応するもので、図5において下方部が回転軸3あるいは4に取り付けられる部分である。
【0027】
ロッドの場合と同様に、スクリュー羽の上端面30aで、スクリュー羽の搬送面30bに対応する上端面部分に切り欠き凹部30cが、所定の深さで、搬送面全面に渡って形成され、硬化肉盛り31が、上端面30a並びに切り欠き凹部30cに施される。そのとき、切り欠き凹部30cに硬化肉盛りされた肉盛り面31aとスクリュー羽30の搬送面30bが、段差なく同じ面位置となるように硬化肉盛り処理が施される。それにより、ロッドの実施例で述べたのと同様な効果が得られる。
【0028】
また、図6に示したように、スクリュー羽30に形成される切り欠き凹部30dを、図5に示した切り欠き凹部30cより浅くして、硬化肉盛り32を上端面30a、それに切り欠き凹部30dに施す。そのとき、硬化肉盛り32を、切り欠き凹部30dの底面を超えて搬送面30bに延びるように行い、硬化肉盛りの搬送側の面32aとスクリュー羽30の搬送面30bに段差d’を持たせるようにする。この場合には、スクリュー羽の角部(図6で左上側の角)での耐磨耗性、並びにこの部分での硬化肉盛りの強度を向上させることができる。なお、この場合、段差d’は、その部分でのスクリュー羽の磨耗を少なくするために、できるだけ少ない段差となるように、硬化肉盛りを行うようにする。
【0029】
また、混練部材は、図7に示したように板状のパドル40とすることもできる。パドルの場合も、ロッドやスクリュー羽と同様に、パドル40の上端面40aで、その搬送面40bに対応する上端面部分に切り欠き凹部40cが、所定の深さで、搬送面全面に渡って形成され、硬化肉盛り41が、上端面40a並びに切り欠き凹部40cに施される。そのとき、切り欠き凹部40cに硬化肉盛りされた肉盛り面41aとパドル40の搬送面40bが同じ面位置となるように硬化肉盛り処理が施される。それにより、ロッドあるいはスクリュー羽で述べたのと同様な効果が得られる。
【0030】
また、図8に示したように、パドル40に形成される切り欠き凹部40dを、図7に示した切り欠き凹部40cより浅くして、硬化肉盛り42を上端面40a、それに切り欠き凹部40dに施す。そのとき、硬化肉盛り42を、切り欠き凹部40dの底面を超えて搬送面40bに延びるように行い、硬化肉盛りの搬送側の面42aとパドル40の搬送面40に僅かの段差を持たせるようにする。この場合には、図6でスクリュー羽に関して述べたのと同様な効果が得られる。
【0031】
板状のスクリュー羽並びにパドルの場合も、搬送面30b、40bと逆の面も搬送面となる混練装置では、図4の場合と同様に、両搬送面に硬化肉盛り処理を施すようにする。
【0032】
このような混練装置において、投入された粉体はスクリュー羽3b、4bにより混練されながら排出口1b側へ搬送され、粉体は、ノズル18から混合液と混合され、ロッド3c,4cにより混練されつつさらに排出口1b側へ送られ、排出口1bからコンベア上に排出される。
【0033】
スクリュー羽3b、4b並びにロッド3c、4cの磨耗部には、上述したような硬化肉盛り処理が行われるので、混練部材の耐摩耗性を向上させ、また硬化肉盛りが剥がれることがなく、被混練物の混練並びに搬送を良好に効率良く行うことが可能になる。
【0034】
なお、上述した実施例では、不等速に逆回転する2本の回転軸に取り付けられる混練部材に硬化肉盛りが行われたが、一つの回転軸に螺旋形に取り付けられる混練部材により混練並びに搬送が行われる混練装置の混練部材にも、同様な硬化肉盛りを行い、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1a 投入口
1b 排出口
3,4 回転軸
3b,4b スクリュー羽
3c,4c ロッド
14 モータ
20 ロッド
21、22 硬化肉盛り
30 スクリュー羽
31、32 硬化肉盛り
40 パドル
41、42 硬化肉盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体を混練しながら混練物を搬送する混練装置であって、
前記混練部材の上端面に連続する混練物搬送面の上端面部分に切り欠き凹部を形成して、該上端面と切り欠き凹部に一層の硬化肉盛り処理が施され、
前記硬化肉盛り処理は、肉盛り面が切り欠き凹部の底面を超えて搬送面にまで延び、搬送側肉盛り面と該搬送面との間に段差が形成されるように、行われることを特徴とする混練装置。
【請求項2】
外周面に混練部材が設けられた回転軸を回転させ、混練部材により粉体を混練しながら混練物を搬送する混練装置であって、
前記混練部材の上端面に連続する混練物搬送面の上端面部分に切り欠き凹部を形成して、該上端面と切り欠き凹部に一層の硬化肉盛り処理が施され、
前記切り欠き凹部は、混練物搬送面と対称な面にも形成され、該両面の切り欠き凹部に対して硬化肉盛り処理が行われることを特徴とする混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143763(P2012−143763A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108090(P2012−108090)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2007−233560(P2007−233560)の分割
【原出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(594148520)株式会社新日南 (11)
【Fターム(参考)】