説明

清拭シートの収納パック

【課題】 準備の手間を軽減することができる清拭シートの収納パックを提供しようとするもの。
【解決手段】 吸水性の清拭シート2が透水性の袋状体3に複数枚たたまれて収容され、使用時には前記袋状体3を介して清拭シート2に含水させ、次いで袋状体3全体で水切りするようにした。使用時には透水性の袋状体を介して複数枚の吸水性の清拭シートに含水させ、次いで袋状体全体で水切りするという簡易な手順で使用者は清拭シートを用意することが出来る。また、袋状体全体で水切りする際に手加減などの微妙な感覚によって含水残量を適宜コントロールした状態で、熱処理(加熱や冷却)を行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、濡れタオル・おしぼり・布巾その他の清拭シートの収納パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院や養護施設等では巡回して被介護者のおしめ交換をしたり体を拭いたりするため、おしめや濡れタオル等の介護用品を運搬する介護用運搬車が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この介護用運搬車は、新しい濡れタオルの加温収納庫、整理棚、汚れたおしめや使用済みのタオルを収容する蓋付きポリバケツなどを手押し台車に載せたものである。
【0004】
前記使用済みのタオルは業者で洗浄して反復・再利用されており、清潔となったタオルは多数枚が平重ねの状態で使用者(病院や養護施設等)に返納される。そして、病院や養護施設等で手が空いた職員が前記平重ね状態のタオルを順次丸めておき、介護の準備時にはおしぼり状に丸めた状態で水に湿らせ加温収納庫に収容して60℃くらいに加温していた。
【0005】
しかし、前記のような濡れタオルの準備作業はかなりの手間であり相当な負担となっているという問題があった。
【特許文献1】特開2001―120607号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、準備の手間を軽減することができる清拭シートの収納パックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の清拭シートの収納パックは、吸水性の清拭シートが透水性の袋状体に複数枚たたまれて収容され、使用時には前記袋状体を介して清拭シートに含水させ、次いで袋状体全体で水切りするようにしたことを特徴とする。
【0008】
この清拭シートの収納パックは前記のように構成したので、使用時には透水性の袋状体を介して複数枚の吸水性の清拭シートに含水させ、次いで袋状体全体で水切りするという簡易な手順で使用者は清拭シートを用意することが出来る。
【0009】
また、袋状体全体で水切りする際に手加減などの微妙な感覚によって含水残量を適宜コントロールした状態で、熱処理(加熱や冷却)を行うことが出来る。よって、例えば病院や養護施設等で巡回して被介護者のおしめ交換をしたり体を拭いたりする際に、保温庫で加熱を開始してから実際に使用するまでの所要時間や季節の温度の高低(夏と冬等)などの具体的な状況に応じて、被介護者が気持ちの良い肌触りが得られるように熱処理前の含水残量を調節することが出来る。
【0010】
ここで、たたまれた吸水性の清拭シートの態様として、おしぼり状に丸めたりまた折り畳んだりしておくことができる。前記吸水性の清拭シートの素材として、不織布、紙、布、綿(コットン)などを例示することが出来、使い捨てとすることが衛生上安心であるが、洗浄殺菌して反復利用することもできる。前記透水性の袋状体として、多数の開孔を有するネット状のものやフィルム状のもの、不織布状のものなどを例示することが出来る。
【0011】
(2) 前記透水性の袋状体はネット状のものであることとしてもよい。このように構成すると、透水性と機械的強度とを両立させることが出来る。ネットを構成する繊維の材質としてポリエチレンやポリプロピレン、綿、絹、不織布などを用いることができる。前記繊維の直径は例えば200μm程度とすることができるが強度があればより細くてもよいし、逆により太くてもよい。ネットは細かい格子状(略正方形状)や菱形状その他の形状の連続する形状とすることができ、格子の場合その1単位の長さは1〜3mm程度とすることができる。このネットは筒状に編み上げて適宜長さでカットし、ここにたたんだ複数の清拭シートを収容して封をすることができる。
【0012】
(3) 前記透水性の袋状体は多数の開孔を有する合成樹脂製フィルム材であって、引張強度が0.5〜10.0kgfであることとしてもよい。このように構成すると、清拭シートが5個程度の少ない場合から100個程度の比較的多い場合まで、吸水した水の重みで袋状体の開孔から破れることなく好適に使用することができる。また、合成樹脂製フィルム材の開孔同士の幅が比較的短くても破れ難いこととなる。前記合成樹脂の材質として、ポリエチレンやポリプロピレンを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0014】
使用者は簡易な手順で清拭シートを用意することが出来るので、準備の手間を軽減することができる清拭シートの収納パックを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
この清拭シートの収納パックは、病院や養護施設、老人ホーム、介護施設等で巡回して被介護者のおしめ交換をしたり体を拭いたりする際に利用することができる。また飲食店などでお客に供する際に使用することができる。
【0017】
(実施形態1)
図1及び図3に示すように、この実施形態の清拭シートの収納パック1は(図3A参照)、吸水性の清拭シート2が透水性の袋状体3に複数枚たたまれて収容され、使用時には前記袋状体3を介して清拭シート2に含水させ(図3B参照)、次いで袋状体3全体で水切りをした後(図3C参照)、熱処理するようにしている(図3D参照)。
【0018】
前記吸水性の清拭シート2として縦横約31cmのコットン不織布を用い、これを市販の装置により2つ折りにして更におしぼり状にまるめたものとしており、1回使用する毎に使い捨てとしている。
【0019】
前記透水性の袋状体3は、ポリエチレン製の繊維からなる多数の開孔4を有するネット状のものとした。前記繊維の直径は約190〜230μmであり、その引張強度は1.2〜1.6kgfであった。ネットは細かい格子状であり、各格子の長さは1〜2mm程度としている。このネットは市販の装置により筒状に編み上げて適宜長さ(30cm程度)でカットしたものであり、ここに複数の清拭シート2(約50枚)を収容してヒートシールにより封をしている。前記清拭シート2約50枚を収容した状態での楕円形状の長径は約30cmであり、高さ方向の長さ(コットンタオルの長さ方向)は約25cmであった。
【0020】
前記熱処理として、約60℃程度の保温庫5(加温収納庫)に収容するようにしている(図3D参照)。すなわち介護の準備時には水に湿らせ水切りし、保温庫5に収容して60℃くらいに加温しておく。なお、冷却して飲食店等で供することもできる。
【0021】
次に、この実施形態の清拭シートの収納パックの使用状態を説明する。
【0022】
この清拭シートの収納パック1は上記のように構成したので、使用時には透水性の袋状体3を介して複数枚の吸水性の清拭シート2に含水させ(図3B参照)、次いで袋状体3全体で水切りをした後(図3C参照)、熱処理する(図3D参照)という簡易な手順で使用者は熱処理を施した清拭シートを用意することが出来(図3E参照)、準備の手間を軽減することができるという利点がある。
【0023】
ここで、前記透水性の袋状体3を介して清拭シート2(コットンタオル)に含水させ次いで袋状体3全体で水切りする際の水の抜け方は、水中に20秒浸漬して上げたときに外圧をかけずに20秒以内に含水残量95%以下まで抜けるようにすると準備時の作業性に優れる。
【0024】
また、袋状体3全体で水切りする際に手加減などの微妙な感覚によって含水残量を適宜コントロールして、熱処理を行うことが出来る。よって、例えば病院や養護施設等で巡回して被介護者のおしめ交換をしたり体を拭いたりする際に、熱処理を開始してから実際に使用するまでの所要時間や季節の温度の高低(夏と冬等)などの具体的な状況に応じて、被介護者が気持ちの良い肌触りが得られるように熱処理前の含水残量を調節することが出来るという利点がある。すなわち、水切りのために押さえて絞る際(纏めて一遍に絞れる)に力の加え具合により湿らせ方(水分の含み具合)を人間の感覚で調整することが出来る。またこの清拭シートの収納パック1は、保温器に1タッチで収容することが出来る。
【0025】
さらに前記透水性の袋状体3はネット状のものとしており、透水性と機械的強度とを両立させることが出来る。
【0026】
(実施形態2)
実施形態2の清拭シートの収納パックは、透水性の袋状体をネットではなくフィルム材で形成した点で前記実施形態1と異なる。
【0027】
図2及び図3に示すように、この実施形態の清拭シートの収納パック(図3A参照)は、吸水性の清拭シート2が透水性の袋状体3に複数枚たたまれて収容され、使用時には前記袋状体3を介して清拭シート2に含水させ(図3B参照)、次いで袋状体3全体で水切りをした後(図3C参照)、熱処理するようにしている(図3D参照)。
【0028】
前記吸水性の清拭シート2として縦横約31cmのコットン不織布を用い、これを市販の装置により2つ折りにして更におしぼり状にまるめたものとしており、1回使用する毎に使い捨てとしている。
【0029】
前記透水性の袋状体3は多数の開孔4を有する厚みが20〜40μmの高密度ポリエチレンフィルム材であって、前記開孔4相互間の間隔が6mm以上20mm以下であることとしている。ここで前記開孔4の孔径は、直径1.0〜4.0mm程度が吸水性や排水性の点で好ましい。なお、フィルム材の開孔4相互間の幅を3mmとした場合の強度は0.25〜0.30kgfであり、5mmとしたときの強度は0.30〜0.45kgfであった。このフィルム材は筒状に推し出して適宜長さ(30cm程度)でカットしたものであり、ここに複数の清拭シート2(約50枚)を収容してヒートシールにより封をしている。前記清拭シート2約50枚を収容した状態での楕円形状の長径は約30cmであり、高さ方向の長さ(コットンタオルの長さ方向)は約25cmであった。
【0030】
前記熱処理として、約60℃程度の保温庫5(加温収納庫)に収容するようにしている(図3D参照)。すなわち介護の準備時には水に湿らせ水切りし、保温庫5に収容して60℃くらいに加温しておく。なお、冷却して飲食店等で供することもできる。
【0031】
次に、この実施形態の清拭シートの収納パックの使用状態を説明する。
【0032】
この清拭シートの収納パック1は上記のように構成したので、使用時には透水性の袋状体3を介して複数枚の吸水性の清拭シート2に含水させ(図3B参照)、次いで袋状体3全体で水切りをした後(図3C参照)、熱処理する(図3D参照)という簡易な手順で使用者は熱処理を施した清拭シートを用意することが出来(図3E参照)、準備の手間を軽減することができるという利点がある。
【0033】
また、袋状体3全体で水切りする際に手加減などの微妙な感覚によって含水残量を適宜コントロールして、熱処理を行うことが出来る。よって、例えば病院や養護施設等で巡回して被介護者のおしめ交換をしたり体を拭いたりする際に、熱処理を開始してから実際に使用するまでの所要時間や季節の温度の高低(夏と冬等)などの具体的な状況に応じて、被介護者が気持ちの良い肌触りが得られるように熱処理前の含水残量を調節することが出来るという利点がある。すなわち、水切りのために押さえて絞る際(纏めて一遍に絞れる)に力の加え具合により湿らせ方(水分の含み具合)を人間の感覚で調整することが出来る。またこの清拭シートの収納パック1は、保温器に1タッチで収容することが出来る。
【0034】
さらに、前記透水性の袋状体3は多数の開孔4を有する厚みが20〜40μmの高密度ポリエチレンフィルム材であって、前記開孔4相互間の間隔が6mm以上20mm以下であることとしており、水切りする際の排水性とフィルム材の機械的強度とをバランスよく両立させることが出来る。
【実施例1】
【0035】
実施形態1の清拭シートの収納パック(ネットタイプ)は、清拭シートとしてコットンタオル50本を収容した状態の乾燥重量が526.9gであった。これを20秒間水に浸漬して引き上げた時の重量は3528gであった。ここから20秒間自然に水切りした時の重量は3333gであった。(水切り後の清拭シートの収納パックの重量)/(含水後の清拭シートの収納パックの重量)の含水残量は94.5%であり、速やかに排水した。ネットに破れや切れは発生しなかった。
【実施例2】
【0036】
(1)実施形態2の清拭シートの収納パック(フィルムタイプ)は、開孔の半径が1.5mmで、開孔相互間の間隔が縦方向で7.5mm、横方向で9.7mmであった。開孔1個の面積は7.07mmで、開孔の全面積は3750mmと算出された。このフィルム材の表面積は250mm×300mm=750000mm(片面換算の計算)であり、孔面積/フィルム材の表面積により孔面積率を算出すると約5.0%であった。
【0037】
清拭シートとしてコットンタオル50本を収容した状態の乾燥重量は540.1gであった。これを20秒間水に浸漬して引き上げた時の重量は3656.5gであった。ここから20秒間自然に水切りした時の重量は3210gであった。(水切り後の清拭シートの収納パックの重量)/(含水後の清拭シートの収納パックの重量)の含水残量は87.8%であり、速やかに排水した。水浸漬後にフィルムは破れなかった。
【0038】
(2)実施形態2の清拭シートの収納パック(フィルムタイプ)は、開孔の半径が3.0mmで、開孔相互間の間隔が縦方向で4.0mm、横方向で6.7mmであった。開孔1個の面積は28.26mmで、開孔の全面積は15000mmと算出された。このフィルム材の表面積は250mm×300mm=750000mm(片面換算の計算)であり、孔面積/フィルム材の表面積により孔面積率を算出すると約20.0%であった。
【0039】
清拭シートとしてコットンタオル50本を収容した状態の乾燥重量は536.1gであった。これを20秒間水に浸漬して引き上げた時の重量は4143.3gであった。ここから20秒間自然に水切りした時の重量は3682gであった。水浸漬後にフィルムが破れやすい傾向がみられた。
【0040】
(3)実施形態2の清拭シートの収納パック(フィルムタイプ)は、開孔の半径が3.0mmで、開孔相互間の間隔が縦方向で17mm、横方向で19mm(6mm以上20mm以下)であった。開孔1個の面積は28.26mmで、開孔の全面積は3750mmと算出された。このフィルム材の表面積は250mm×300mm=750000mm(片面換算の計算)であり、孔面積/フィルム材の表面積により孔面積率を算出すると約5.0%であった。
【0041】
清拭シートとしてコットンタオル50本を収容した状態の乾燥重量は536.0gであった。これを20秒間水に浸漬して引き上げた時の重量は4143.0gであった。ここから20秒間自然に水切りした時の重量は3680gであった。水浸漬後にフィルムは破れなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
準備の手間を軽減することができることによって、種々の清拭シートの収納パックの用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の清拭シートの収納パックの実施形態1を説明する斜視図。
【図2】この発明の清拭シートの収納パックの実施形態2を説明する斜視図。
【図3】図1及び図2の清拭シートの収納パックの使用状態を説明する図。
【符号の説明】
【0044】
2 清拭シート
3 袋状体
4 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性の清拭シート(2)が透水性の袋状体(3)に複数枚たたまれて収容され、使用時には前記袋状体(3)を介して清拭シート(2)に含水させ、次いで袋状体(3)全体で水切りするようにしたことを特徴とする清拭シートの収納パック。
【請求項2】
前記透水性の袋状体(3)はネット状のものである請求項1記載の清拭シートの収納パック。
【請求項3】
前記透水性の袋状体(3)は多数の開孔(4)を有する合成樹脂製フィルム材であって、引張強度が0.5〜10.0kgfである請求項1記載の清拭シートの収納パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−84133(P2007−84133A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278098(P2005−278098)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(592182791)株式会社スミロン (10)
【Fターム(参考)】