説明

清掃シートおよび清掃用具

【課題】使用性が向上された清掃シートないし清掃用具を提供する。
【解決手段】
清掃シート装着部材に取付可能な清掃シートであって、清掃面を構成する中央部と、
前記中央部に対して、所定の一方向に沿った少なくとも一方側に設けられている少なくとも一つの端部を有し、前記端部は、第1の伸張率を有する第1の部分と、前記第1の部分より高い伸張率を有する第2の部分を有し、前記第2の部分は、前記一方向に沿って、前記第1の部分と前記中央部の間に設けられており、前記第1の部分と前記第2の部分との境界部にて清掃シート装着部材に着脱自在に保持されるよう構成されていることを特徴とする清掃シート、ないし当該清掃シートを備えた清掃用具が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃シートおよび清掃用具に係り、特に、床面等の清掃対象の拭き掃除等に好適に用いることができる清掃シートおよび清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃対象の拭き掃除に用いられる清掃シートが種々提案されている。例えば、特許文献1には、内層シートと、内層シートの両側に配置されている外層シートが一体化された清掃シートが開示されている。清掃シートは、清掃用具の清掃シート装着部材に装着して使用することができる。この場合、清掃シート装着部材の清掃部に清掃シートの中央部を配置する。そして、清掃シートの両端部を、清掃シート装着部材に設けられている係止部材の間に押し込むことにより、清掃シートの両端部は、係止部材の間に挟まれた状態で保持される。従来の清掃シートでは、中央部に低交絡部が形成され、端部に高交絡部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−20615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
清掃シートを清掃用具の清掃シート装着部材に装着した状態で、摩擦抵抗の大きい床面等を清掃する際には、清掃シートには、清掃シート装着部材の移動方向と逆方向の引張応力が作用する。ここで、従来の清掃シートは、中央部に低交絡部が形成されているが、端部の伸張率が全体でほぼ同じである。清掃作業時において、清掃シートに引張応力が作用した場合、清掃シートの端部の伸長率が小さいと、すなわち端部の剛性が大きいと、清掃シートの端部が係止部材から外れ易い。一方、清掃シートの脱落を防止するべく、端部の伸長率を大きくする、すなわち端部の剛性を小さくすると、係止部材に保持された端部が引張応力で破損し易くなり、清掃シートの保持確保と破損のしにくさのバランスがとりにくい。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、使用性を向上させた清掃技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は特許請求の範囲に記載の発明によって解決される。本発明によれば、清掃シート装着部材に取付可能な清掃シートが構成される。この清掃シートは、好ましくは不織布で構成される。本発明に係る清掃シートは、清掃面を構成する中央部と、中央部に対して、所定の一方向に沿った少なくとも一方側に設けられている少なくとも一つの端部を有する。当該端部は、一方向に沿いつつ、中央部の一方側のみに形成してもよい。また中央部の両側に形成してもよい。当該は、所定の第1の伸張率を有する第1の部分と、第1の部分より高い所定の第2の伸張率を有する第2の部分を有する。そして第2の部分は、上記の一方向に沿って、第1の部分と前記中央部の間に設けられている。そして清掃シートは、第1の部分と第2の部分との境界部にて、清掃シート装着部材に着脱自在に保持されるよう構成されている。境界部は、少なくとも一部が保持されていればよい。
【0006】
「清掃シートの伸張率(mm/N)」は、清掃シートの伸び易さの指標である。伸張率が高いほど、シートは伸び易くなる。
第1の部分と第2の部分の伸張率を変える方法としては、例えば、第1の部分と第2の部分における、シート部材の重ね枚数を変える方法を用いることができる。あるいは、第1の部分と第2の部分における繊維の交絡状態を変える方法を用いることができる。あるいは、第1の部分と第2の部分の原綿の構成を変える方法を用いることができる。
【0007】
この構成により本発明では、清掃シート装着部材に装着されている清掃シートに対して清掃中の引張応力が作用した場合、上記境界部においては、伸張率が低い(伸び難い)第1の部分は、その剛性により、引張応力で破損されることなく、清掃シート装着部材による保持状態を維持する一方、第1の部分より中央部側に設けられている伸張率が高い(伸び易い)第2の部分が伸びることによって、引張応力が効果的に吸収され、これにより、清掃作業時に、清掃シートが清掃シート装着部材から外れるのを防止することができる。
【0008】
本発明の異なる形態では、第1の部分と第2の部分におけるシート部材の重ね枚数によって第1の部分と第2の部分の伸張率を変えている。この場合、伸張率が高い第2の部分は、1つのシート部材によって構成してもよいし、複数のシート部材を重ねて構成してもよい。1つのシート部材によって構成された第2の部分は、「シート部材の重ね枚数が1である第2の部分」ということができる。また、伸張率が低い第1の部分は、第2の部分より多い数のシート部材を重ねて構成される。シート部材を重ねる方法としては、異なるシート部材を重ねる方法や、1つのシート部材を折り返して重ねる方法等を用いることができる。重ねたシート部材は、結合するのが好ましい。結合方法としては、種々の方法を用いることができる。
本形態では、第1の部分と第2の部分のシート部材の重ね枚数が異なっているため、第1の部分と第2の部分との境界部を容易に視認することができる。これにより、境界部を保持部材に保持させる作業が容易である。また、伸張率が異なる第1の部分と第2の部分が設けられている端部を有する清掃シートを容易に、低コストで製造することができる。
【0009】
本発明のさらに異なる形態では、端部の第1の部分では、重ねられたシート部材がエンボス加工によって結合されている。好適には、熱可塑性繊維を含む複数のシート部材を重ね、熱エンボス加工によって複数のシート部材を結合する方法が用いられる。熱可塑性繊維を含むシート部材としては、種々のシート部材を用いることができる。
本形態では、第1の部分と第2の部分の伸張率をより容易に変えることができる。
【0010】
本発明のさらに異なる形態では、端部は、第2の部分より伸張率が低い第3の部分が設けられている。この第3の部分は、一方向に沿って、第2の部分より中央部側に設けられている。第3の部分の伸張率は、第1の部分の伸張率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本形態では、第2の部分より中央部側に、第2の部分より低い伸張率を有する第3の部分が設けられているため、清掃シートが清掃シート装着部材から外れるのを防止しながら、中央部側の強度を保つことができる。
【0011】
本発明のさらに異なる形態では、上記した清掃シートおよび清掃シート装着部材を有する清掃用具が構成可能である。
また本発明のさらに異なる形態においては、保持部材は、互いに対向状に配置された複数の弾性保持片を有し、清掃シートの境界部が当該複数の保持片間を通じて保持部材を貫通するように押し込まれるとともに当該複数の保持片によって挟持されることにより、境界部が前記保持部材に保持される。
【0012】
本発明により、使用性の向上した清掃シートないし清掃用具が提供される。本発明の他の特質、作用および効果については、本明細書、特許請求の範囲、添付図面を参照することで直ちに理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】清掃用具の一実施の形態の斜視図である。
【図2】ヘッドの平面図である。
【図3】一実施の形態の清掃シート200の概略構成を示す図である、
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】一実施の形態の清掃シート200を展開した状態を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図5のVII−VII線断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図5のIX−IX線断面図である。
【図10】第2のX−X線断面図である。
【図11】本発明の動作を説明する図である。
【図12】実施例1の概略構成を示す図である。
【図13】実施例2および3の概略構成を示す図である。
【図14】実施例4の概略構成を示す図である。
【図15】比較例1の概略構成を示す図である。
【図16】比較例2および3の概略構成を示す図である。
【図17】比較例4〜6の概略構成を示す図である。
【図18】比較例7の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以上および以下の記載に係る構成ないし方法は、本発明にかかる「清掃シート」ないし「清掃用具」の製造および使用、当該「清掃シート」ないし「清掃用具」の構成要素の使用を実現せしめるべく、他の構成ないし方法と別に、あるいはこれらと組み合わせて用いることができる。本発明の代表的実施形態は、これらの組み合わせも包含し、添付図面を参照しつつ詳細に説明される。以下の詳細な説明は、本発明の好ましい適用例を実施するための詳細情報を当業者に教示するに留まり、本発明の技術的範囲は、当該詳細な説明によって制限されず、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。このため、以下の詳細な説明における構成や方法ステップの組み合わせは、広義の意味において、本発明を実施するのに全て必須であるというものではなく、添付図面の参照番号とともに記載された詳細な説明において、本発明の代表的形態を開示するに留まるものである。
【0015】
本発明の清掃用具の一実施の形態100の斜視図が図1に示されている。本実施の形態の清掃用具100は、清掃シート200が装着されるヘッド110と、パイプ130と、ハンドル150を有している。パイプ130は、複数のパイプ部材133が連結機構によって連結されて構成されている。連結機構としては、例えば、一方のパイプ部材の一方側端部に設けられたオス側の連結部材と、他方のパイプ部材の他方側端部に設けられたメス側の連結部材により構成される連結機構が用いられる。オス側の連結部材とメス側の連結部材とが連結された連結箇所は、カバー部材132によって覆われる。パイプ130の一方側の端部は、ハンドル150に接続される。また、パイプ130の他方側の端部は、ヘッド110に設けられている接続機構131に接続される。本実施の形態では、ヘッド110が本発明の「清掃シート装着部材」に対応し、ハンドル150が本発明の「把持部材」に対応し、パイプ130が本発明の「ヘッドとハンドルを接続する接続部材」に対応する。なお、パイプ130を構成するパイプ部材133の数は適宜選択可能である。また、ハンドル150は、ヘッド110に設けられている接続機構131に直接接続することもできる。
【0016】
ヘッド110は、図2に示されているように、平板状に形成されており、接続機構131が取り付けられる上面112と、上面112と反対側の下面(装着面あるいは清掃部)111(図10参照)を有している。上面112には、保持部材120が設けられている。保持部材120は、図2に示されているように、切り込み線によって区分されている複数の保持片121を有している。保持片121は、弾性を有している。
清掃シート200は、詳しくは後述するが、図5および図6に示されているように、中央部200bと、中央部200bの両側に設けられている端部200aおよび200cを有している。中央部200bは清掃シート200の主たる清掃面を構成するする。また端部200cは清掃シート装着部材(ヘッド110)への装着部を構成する。
清掃シート200の中央部200bは、ヘッド110の下面(装着面または清掃部)111に対向する箇所に配置され、端部200aおよび200cは、上面112上に配置される。すなわち、清掃シート200は、中央部200bと両端部200aおよび200cによってヘッド110を覆うようにヘッド110に装着される。そして、清掃シート200の端部200aおよび200cをヘッド110の上面112上に配置した状態で、保持部材120(保持片121)に対応する箇所を指で押し込んで離す。これにより、清掃シート200の端部200aおよび200cは、互いに対向しながら隣接する保持片121の間に一部が挟まれた状態で、着脱自在に保持される。
【0017】
なお、本実施の形態の清掃用具100を用いて清掃を行う際には、一般的には、ヘッド110を、中央部200bと端部200aあるいは200bとの境界線(例えば、後述する折返し線201、202)に沿った方向に交差する方向(図2では、上下方向)に移動させる。勿論、これ以外の方向に移動させて清掃を行うこともできる。
【0018】
次に、本実施の形態の清掃用具100で使用される清掃シートの一実施の形態200を説明する。
一実施の形態の清掃シート200は、図4に示されているように、単一の内層シート210と、内層シート210の両面側に配置されている単一の外層シート220および230により、3層構造の清掃シートとして構成される。なお、「3層構造の清掃シート」という記載は、全ての箇所が3層構造を有している清掃シートだけでなく、主要箇所(例えば、中央部200b)は3層構造を有しているが、他の箇所は3層構造を有していない(例えば、単層構造または2層構造)清掃シートを包含する。これは、3層構造以外の多層構造についても同様である。
【0019】
内層シート210としては、親水性を有する不織布シートが用いられる。親水性を有する不織布シートは、総合的に親水性を有していればよく、親水性繊維と疎水性繊維により形成される不織布シートを用いることもできる。親水性繊維としては、例えば、レーヨン繊維、コットン繊維、パルプ繊維等を用いることができる。本実施の形態では、吸水性および保水性が優れているレーヨン繊維のみにより形成されている不織布シートが用いられている。内層シート210が本発明の「含浸体」あるいは「第3の不織布シート」あるいは「第3のシート」に対応する。
また、内層シート210として、ウォータージェット法(水流交絡法)を用いて製造された不織布シート(スパンレース不織布シート)が用いられている。ウォータージェット法は、例えば、繊維がランダムに並べられたウェブに対して、ウェブの移送方向に交差する方向に配置された複数のノズルから高圧水流を噴射することによって、繊維が絡み合ったスパンレース不織布を製造する方法である。本実施の形態では、高圧水流を噴射するノズルとして、口径92μmのオリフィスが幅2.0mmに亘って連続的に配置されており、更に、これが3.0mmの間隔(オリフィスピッチ)で配置されているノズルを用いている。このようなノズルを用いることにより、スパンレース不織布にエアースルー部分が形成され、仕上がり時に筋状の模様が発生する。これにより、内層シート210の比容積比が大きくなり、内層シート210の含浸量(保水量)が増大する。筋状の模様が、本発明の「内層シートの表面に形成された凹凸」に対応する。なお、オリフィスピッチ(凹凸の間隔)は、2.0〜10.0mm、好適には、2.0〜3.0mmの範囲内に設定される。オリフィスピッチが10.0mmを超えると、繊維同士の絡みが弱くなり、繊維の毛羽抜けが増加する。また、強度が低下するため、親水性繊維のみで不織布シートを構成するのが困難となる。勿論、内層シート210は、これ以外の製造方法、例えば、エアースルー法、スパンボンド法、サーマルボンド法、ポイントボンド法、メルトブロー法、ケミカルボンド法、エアレイド法等を用いて製造された不織布シートを用いることもできる。
内層シート210の坪量は、洗浄剤放出量等の観点から40gsm〜70gsmの範囲とするのが好ましいが、70gsm以上であってもよい。
【0020】
外層シート220および230としては、疎水性を有する不織布シートが用いられる。疎水性を有する不織布シートは、総合的に疎水性を有していればよく、疎水性繊維と親水性繊維により形成される不織布シートを用いることもできる。疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ナイロン繊維等を用いることができる。外層シート220および230の一方および他方が、それぞれ本発明の「第1の不織布シート」または「第1のシート」および「第2の不織布シート」または「第2のシート」に対応する。
また、本実施の形態では、外層シート220および230として、ウォータージェット法(水流交絡法)を用いて製造されたスパンレース不織布シートが用いられている。勿論、外層シート220および230は、これ以外の種々の方法を用いて製造された不織布シートを用いることができる。
【0021】
また、本実施の形態の清掃シート200では、外層シート220(230)は、図4に示されているように、内層シート210と対向する側の層(内側層)222(232)と、内層シート210と対向する側と反対側の層(外側層)221(231)の2層構造に形成されている。
本実施の形態では、外層シート220および230は、熱可塑性繊維を主成分とする繊維により形成されている。また、内側層222および232は、外側層221および231を形成している熱可塑性繊維の融点より低い融点を有する熱可塑性繊維により形成されている。
外側層221および231は、例えば、熱可塑性繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を主成分とし、残りはレーヨン繊維で構成されている。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維とレーヨン繊維の配合割合が、[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維:レーヨン繊維=80重量%:20重量%]である。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維は、繊度が1.1dtexのものが30重量%、3.3dtexのものが50重量%の割合で混合されている。
一方、内側層222および232では、熱可塑性繊維として、繊度が2.2dtexのポリエチレン(PE)繊維/ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(芯鞘構造)が用いられている。例えば、ポリエチレン(PE)繊維/ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維とレーヨン繊維の配合割合が、[ポリエチレン(PE)繊維/ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維:レーヨン繊維=70重量%:30重量%]である。
外層シート220および230の坪量は、洗浄剤放出量等の観点から、30gsm以上であれば特に問題はないが、機能、生産性、コスト等の観点から、35gsm〜40gsmの範囲内であるのが好ましい。
【0022】
このように、外層シート220および230の内側層222および232に、外側層221および231に配置されている熱可塑性繊維の融点より低い融点を有する熱可塑性繊維を配置することにより、内層シート210が熱融着性繊維を含んでいない場合にも、外層シート220の内側層222および外層シート230の内側層232に配置されている低融点の熱可塑性繊維によって、内層シート210と外層シート220および230とを接合することができる。
なお、内側層222(232)と外側層221(231)を有する外層シート220(230)を、内側層222(232)に配置されている熱可塑性繊維の融点より高く、外側層221(231)に配置されている熱可塑性繊維の融点より低い温度で加熱すると、内側層222(232)に熱融着層が形成される。これにより、外層シート220(230)の内側層222(232)に配置されている繊維の殆どが融着によって繋がれ、内層シート210から外層シート220(230)に放出される洗浄剤の量が抑制される。
【0023】
前述したように、従来の清掃シートは、中央部に低交絡部が形成されているが端部の伸張率がほぼ同じである。このため、清掃シートの端部を清掃用具のヘッドの保持部材によって保持している状態で清掃作業を行っている時に、清掃シートが保持部材から外れ易い。
そこで、本発明では、清掃シートの端部に、第1の伸張率を有する第1の部分と、第1の部分より高い伸張率を有する第2の部分を設けている。そして、第2の部分を第1の部分より中央部側に配置するとともに、第1の部分と第2の部分との境界部を、清掃用具のヘッド110の保持部材120によって保持される箇所に配置している。
【0024】
内層シート210、外層シート220および230が配設された状態が図3および図4に示されている。図4は、図3のIV−IV線断面図である。
図3に示されているように、清掃シート200は、幅M(例えば、205mm)と長さS(例えば、275mm)を有する四角形に形成されている。内層シート210は、幅N(例えば、90mm)と長さSを有する四角形に形成されている。外層シート220および230は、Mより短い幅(例えば、190mm)と長さSを有する四角形に形成されている。
外層シート220(230)は、基部220c(230c)と、幅方向の一方側の縁部から所定長さの折返し部220a(230a)を有している。折返し部220a(230a)は、折返し線220b(230b)の箇所で内側層222(232)側に折り返され、基部220c(230c)の一部と重ねられている。そして、図4に示されているように、内層シート210の両面側に、それぞれ折り返し部220a、230aが折り返された外層シート220、230が配置される。この時、外層シート220の内側層222および外層シート230の内側層232が、内層シート210側に配置される(対向するように配置される)。また、内層シート210は、幅方向(図3の上下方向、図4の左右方向)に沿って、幅Mの中央に配置される。また、外層シート220の折返し部220aおよび外層シート230の折返し部230aが、それぞれ、内層シート210を挟んで、幅方向の一方側および他方側に配置される。また、清掃シート200には、幅方向の中央側に、内層シート210の幅Nより長い間隔R(R≧N)離れた箇所に折返し線201および202が設けられている。
これにより、図3に示されているように、清掃シート200は、折返し線201および202によって、幅方向の両側に端部200aおよび200cが設けられ、中央側に中央部200bが設けられる。また、端部200a(200c)には、幅方向の一方の端部側(他方の端部側)から、外層シート220(230)の折返し部220a(230a)と基部220c(230c)の一部が重ねられた2層構造の第1の部分200a1(200c1)、外層シート220(230)の基部220c(230c)により構成される1層構造の第2の部分200a2(200c2)、外層シート220の基部220cと外層シート230の基部230cが重ねられた2層構造の第3の部分200a3(200c3)が設けられる。なお、中央部200bは、外層シート220の基部220c、外層シート230の基部230cおよび内層シート210が重ねられた3層構造を有している。
折り返し線201および202は、清掃シート200をヘッド110に装着する際に、清掃シート200の中央部200bをヘッド110の下面(清掃部)111に対向する箇所に位置決めするための目安となる。清掃シート200の中央部200bの幅(折り返し線201と202の間隔)Rは、清掃用具100のヘッド110の下面(清掃部)111の幅W以上(R≧W)に設定するのが好ましい。また、内層シート210の幅Nは、清掃用具100のヘッド110の下面(清掃部)111の幅W以下(N≦W)に設定するのが好ましい。勿論、間隔R、幅N、幅Wの関係は、これに限定されない。
【0025】
なお、本実施の形態では、折り返し線201、202、220a、230aに沿った方向(図3の左右方向)を「長さ方向」と呼び、折り返し線201、202、220b、230bと交差する(直交する)方向(図3の上下方向)を「幅方向」と呼ぶ。清掃シート200に折り返し線201、202、220b、230bがない場合には、端部200a、200cが延びている方向(図3の左右方向)を「長さ方向」と呼び、端部200a、200cが延びている方向と交差する(直交する)方向(図3の上下方向)を「幅方向」と呼ぶ。本実施の形態の「幅方向」が、本発明の「一つの方向」に対応する。
【0026】
内層シート210、外層シート220および230が図3および図4に示されているように配置されている状態で、内層シート210を外層シート220および230に固定するために、内層シート210と外層シート220および230は、図5および図6に示されているように接合される。図6は、図5のVI−VI線断面図である。
ここで、内層シート210と外層シート220あるいは230が接合されていると、内層シート210に含浸されている洗浄剤は、接合部を介して外層シート220あるいは230に放出される。このため、内層シート210と外層シート220および230との接合は、通常の清掃時に使用される箇所(主要清掃箇所)の中心から離れた個所、すなわち、接合部を介した洗浄剤による清掃への影響が少ない箇所で行うのが好ましい。本実施の形態では、内層シート210が配置される中央部200bがヘッド110の下面(清掃部)111に対向する箇所に配置されるため、中央部200bで清掃が行われる。すなわち、清掃シート200の中央部200bが、「主要清掃箇所」となる。
そこで、本実施の形態では、図5に示されているように、内層シート210は、外層シート220および230の長さ方向(図5の左右方向)両側の縁部(端部)で接合されている。すなわち、内層シート210と外層シート220および230との接合箇所は、通常の清掃時に使用される箇所(主要清掃箇所)の中心から外れた箇所に設定されている。
【0027】
接合方法としては、種々の接合方法を用いることができる。本実施の形態では、熱エンボス加工方法を用いて接合されている。図5には、外層シート220および230の長さ方向両端の縁部に形成されている熱エンボス加工部203が示されている。図7に示されているように、外層シート220および230に熱エンボス加工を施すことによって、熱エンボス加工部203と、内層シート210と外層シート220および230とを接合する接合部203aが形成される。本実施の形態では、外層シート220および230は熱可塑性繊維を含む繊維によって形成されている。このため、外層シート220および230に対する熱エンボス加工によって、外層シート220および230を形成している熱可塑性繊維(特に、外層シート220の内側層222および外層シート230の内側層232に配置されている、低融点を有する熱可塑性繊維)によって、内層シート210と外層シート220および230が接合される。
なお、本明細書では、内層シート210と外層シート220および230を接合するための熱エンボス加工を「第1の熱エンボス加工」という。
【0028】
また、本実施の形態では、内層シート210に含浸されている洗浄剤が幅方向(図5の上下方向)の端部から流れ出るのを防止する必要がある。
本実施の形態では、図6に示されているように、内層シート210の幅方向両側に設けられている第3の部分200a3および200c3において、外層シート220と230が接合されている。外層シート220と230を接合する接合方法としては、種々の接合方法を用いることができる。本実施の形態では、凹凸部を有するローラーを用いた熱エンボス加工方法を用いて接合されている。図8に示されているように、外層シート220および230に熱エンボス加工を施すことによって、熱エンボス加工部204、内層シート210と外層シート220および230とを接合する接合部204aが形成されている。
本実施の形態では、外層シート220および230には、低融点を有する熱可塑性繊維が配置されている。また、第3の部分200a3および200c3には、内層シート210が配置されていない。したがって、第3の部分200a3および200c3において、外層シート220と230を熱エンボス加工によって容易に接合することができる。
熱エンボス加工による外層シート220と230の接合によって、第3の部分200a3および200c3の強度が向上する。
なお、本実施の形態では、第3の部分200a3および200c3において外層シート220と230を接合するための熱エンボス加工を「第2の熱エンボス加工」という。
本実施の形態では、第1の熱エンボス加工を内層シート210の長さ方向両端の縁部にのみ施したが、第3の部分200a3および200c3の長さ方向両端の縁部にも施してもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、第1の部分200a1(200c1)の伸張率を、第2の部分200a2(200c2)の伸張率より低くするために、第1の部分200a1(200c1)において、外層シート220の折返し部220aと基部220cの一部(外層シート230の折返し部230aと基部230cの一部)が接合されている。外層シート220の折返し部220aと基部220cの一部(外層シート230の折返し部230aと基部230cの一部)を接合する接合方法としては、種々の接合方法を用いることができる。本実施の形態では、凹凸部を有するローラーを用いた熱エンボス加工方法を用いて接合されている。
本実施の形態では、外層シート220(230)には、低融点を有する熱可塑性繊維が配置されている。また、外層シート220の折返し部220aと基部220cの間(外層シート230の折返し部230aと基部230cの間)には、内層シート210が配置されていない。したがって、第1の部分200a1(200c1)において、外層シート220の折返し部220aと基部220cの一部(外層シート230の折返し部230aと基部230cの一部)を熱エンボス加工によって容易に接合することができる。
この熱エンボス加工によって、外層シート220の折返し部220aと基部220cの一部によって形成される第1の部分200a1、外層シート230の折返し部230aと基部230cの一部によって形成される第1の部分200c1の伸張率が、第2の部分200a2、200c2の伸張率より低くなる。すなわち、第1の部分200a1および200c1は、第2の部分200a2および200c2より伸び難くなる。
なお、シートの伸張率(mm/N)は、伸び易さの指標であり、伸張率が高いほど、シートは伸び易い。
本明細書では、第1の部分200a1および200c1において外層シート220と230を接合するための熱エンボス加工を「第3の熱エンボス加工」という。
【0030】
また、内層シート210には、洗浄剤が含浸される。洗浄剤としては、清掃対象の汚れを除去することができる適宜の洗浄剤を用いることができる、例えば、水を主成分とし、アルコール、界面活性剤、溶剤、防腐剤等が配合された洗浄剤を用いることができる。また、洗浄剤には、床保護剤、研磨剤、消臭剤、香料等を添加してもよい。内層シート210に含浸させる洗浄剤の量は、適宜設定することができる。例えば、含浸前の清掃シート200(内層シート210と外層シート220および230)の重量に対して2.0倍〜5.0倍の量の洗浄剤を含浸させる。洗浄剤を内層シート210に含浸させる方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、予め洗浄剤が含浸された内層シート210を用いて清掃シート200を形成する方法を用いることができる。あるいは、清掃シート200を形成した後、外層シート220および230の中央部200bに洗浄剤を塗布し、外層シート220および230を介して内層シート210に洗浄剤を含浸させる方法を用いることができる。
【0031】
本実施の形態の清掃シート200をヘッド110に装着した状態が図10に示されている。なお、図10は、図2のX−X線断面図(幅方向断面図)である。
図10に示されているように、清掃シート200の中央部200bは、ヘッド110の下面(清掃部)111に対向する箇所に配置されている。また、清掃シート200の端部200aおよび200cは、それぞれ折り返し線201および202に沿って折り返され、ヘッド110の上面112上に配置されている。ここで、本実施の形態では、第1の部分200a1および200c1の長さ(折返し部220aおよび230aの長さ)が20mmに設定されている。このため、清掃シート200の中央部100bをヘッド110の下面(清掃部)112に対向する箇所に配置するとともに、端部200aおよび200cをヘッド110の上面112上に配置すると、第1の部分200a1と第2の部分200a2との境界部200P1および第1の部分200c1と第2の部分200c2との境界部200Q1の一部が、保持部材120(保持片121)に対向する箇所に配置される。そして、この状態で、保持片121と対向する箇所を保持片121の間に指で押し込んで離すと、第1の部分200a1と第2の部分200a2との境界部200P1および第1の部分200c1と第2の部分200c2との境界部200Q1の一部が、保持片121の間に挟持されて保持される。なお、境界部200P1および200Q1の、保持片121によって挟持されている部分の間の部分は、対向する保持片121の間を通って押し込まれる(図11参照)。そして、この時、図10に示されているように、第1の部分200a1および200c1が、第2の部分200a2および200c2より中央側(中央部200bと反対側)に配置された状態で保持片121によって保持される。
本実施の形態では、伸張率が低い第1の部分200a1(200c1)と伸張率が高い第2の部分200a2(200c2)との境界部200P1(200Q1)の一部が、対向する保持片121に挟持されている。すなわち、伸張率が変化する変局点が保持されている。これにより、清掃作業を行っている時に、清掃箇所の摩擦力によって、清掃シート200にヘッド110の移動方向(例えば、図10の左右方向)と逆方向の引張応力が作用しても、伸張率が高い第2の部分200a2あるいは200c2によって引張応力を効果的に吸収することができ、清掃シート200の端部200aあるいは200cが保持片121から外れるのを防止することができる。
また、清掃シート200をヘッド110から取り外す際には、伸張率が低い第1の部分200a1(200c1)を引っ張ることによって、境界部200P1(200Q1)を係止片121の間から容易に引き抜くことができる。これにより、清掃シート200を容易にヘッド110から取り外すことができる。
また、本実施の形態では、伸張率が高い第2の部分200a2(200c2)を、1層構造とし、伸張率が低い第1の部分200a1(200c1)を、シート部材を折り返して重ねた2層構造としている。これにより、伸張率が異なる第1の部分200a1(200c1)と第2の部分200a2(200c2)を有する清掃シートを容易に、抵コストで製造することができる。
また、本実施の形態では、第1の部分200a1(200c1)の層数で2層あるのに対し、第2の部分200a2(200c2)の層数が1層であるため、第1の部分200a1(200c1)と第2の部分200a2(200c2)との境界部200P1(200Q1)を外観上、容易に視認することができ、作業シートの装着性を向上することができる。
【0032】
本発明の作用を、図11を参照して概念的に説明する。なお、図11では、説明を簡単にするために、清掃シート200の端部200a(200c)には、第1の伸張率を有する第1の部材Xと、第1の伸張率より高い第2の伸張率を有し、第1の部材Xより中央部200b側に配置されている第2の部材Yが設けられているものとする。第1の部材Xは上記した第1の部分200a1(200c1)に概ね対応し、第2の部材Yは上記した第2の部分200a2(200c2)に概ね対応している。そして、第1の部材Xと第2の部材Yとの境界部Zの一部がヘッド110の保持部材120(保持片121)によって保持されている状態で、ヘッド110が図11の白矢印Gの方向(右方向)に移動するものとする。境界部Zは、上記した境界部200P1(200Q1)に概ね対応している。
ヘッド110が白矢印G方向に移動すると、図11(1)に示されているように、清掃箇所の摩擦力によって、白矢印G側に配置されている端部の第2の部材Yに黒矢印F方向に引張応力が作用する。
従来例では、清掃シートの中央部に低交絡部が形成され、端部に高交絡部が形成されているが、端部の伸張率が全体でほぼ同じであるため、低交絡部による引張応力Fの吸収効果が低。このため、保持部材120(保持片121)に保持されている部材が均一に伸び、清掃シート200の端部200a(200c)が保持部材120(保持片121)から外れ易い。
これに対して、本実施の形態では、図11(2)に示されているように、伸張率が低い第1の部材Xと伸張率が高い第2の部材Yとの境界部Zの一部が保持片121によって保持されているため、伸張率が高い第2の部材Yが伸び易くなり、引張応力を効果的に吸収することができる。この場合、第1の部材Xと第2の部材Yとの境界部Zの一部が保持片121に保持されている状態が維持される。
なお、清掃シート200の端部に作用する引張応力が増大すると、図11(3)に示されているように、第1の部材Xと第2の部材Yとの境界部Zが引っ張られて、保持片121の間から抜け出る。この場合には、清掃シート200の端部200a(200c)の保持状態が解除される。
なお、伸張率が低い第1の部材Xを引っ張ることにより、清掃シート200の端部200a(200c)の保持状態を容易に解除することができる。
【0033】
次に、本発明の清掃シートの実施例1〜4と比較例1〜7について、保持片によって保持されている清掃シートを外すのに必要なエネルギーを測定した。実施例1〜4および比較例1〜7の清掃シートの構成は、図12〜図18に示されている。
なお、実施例1〜4および比較例1〜7は、幅Mが205mmに設定されている。また、第1の部材Xと第2の部材Yとの境界部Zが、幅方向の端部(縁部)から20mm〜40mmの範囲内に配置されている場合に、清掃シートをヘッドに装着した時に、第1の部材Xと第2の部材Yとの境界部Zがヘッドの保持片に対応する箇所に配置されるものとする。
また、以下では、「MD方向」は、製造時における機械方向を表す。また、「CD方向」は、MD方向に直交する方向を表す。
また、「伸張率(mm/N)」は、幅が25mmのシートを、幅方向に直交する方向に引っ張った時の、[引張応力(N)−伸張量(mm)]曲線の初期の傾きの逆数で表されている。
【0034】
[実施例1]
実施例1は、図12に示されている構成を有している。外層シート220および230は、幅が190mmであり、一方側の端部が折り返されて折返し部240および250が形成されている。折返し部240および250の長さT1は、20mmである。そして、内層シート210の両面側に、外層シート220および230が配置されている。なお、特に明記しないが、各実施例において、必要な箇所には熱エンボス加工が施される。
実施例1では、低伸張率を有する第1の部分200a1(200c1)、すなわち、第1の部材Xは、外層シート220と230を用いた2層構造である。また、高伸張率を有する第2の部分200a2(200c2)、すなわち、第2の部材Yは、外層シート220(230)を用いた1層構造である。また、外層シート220および230のCD方向が、シートの幅方向(図12の左右方向)と一致している。
実施例1の第1の部材Xの伸張率は[1.00](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[3.30](mm/N)である。
【0035】
[実施例2]
実施例2は、図13に示されている構成を有している。外層シート320および330は、幅Tが170mmである。そして、内層シート310の両面側に、外層シート220および230が配置されているとともに、幅方向の両端部に、幅Kが20mmである外層シート340および350が配置されている。
実施例2では、低伸張率を有する第1の部分300a1(300c1)、すなわち、第1の部材Xは、外層シート320(330)と340(350)を用いた2層構造である。また、高伸張率を有する第2の部分300a2(300c2)、すなわち、第2の部材Yは、外層シート320(330)を用いた1層構造である。また、外層シート320および330のCD方向が、シートの幅方向(図13の左右方向)と一致しており、外層シート340および350のMD方向が、シートの幅方向と一致している。
実施例2の第1の部材Xの伸張率は[0.08](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[3.30](mm/N)である。
【0036】
[実施例3]
実施例3は、図13に示されている構成を有している。外層シート320および330は、幅Tが170mmである。そして、内層シート310の両面側に、外層シート320および330が配置されているとともに、幅方向の両端部(両縁部)に、幅Kが20mmである70g/mのスパンボンド不織布(SB)340および350が配置されている。
実施例3では、低伸張率を有する第1の部分300a1(300c1)、すなわち、第1の部材Xは、外層シート320(330)と70g/mのスパンボンド不織布340(350)を用いた2層構造である。また、高伸張率を有する第2の部分300a2(300c2)、すなわち、第2の部材Yは、外層シート320(330)を用いた1層構造である。また、外層シート320および330のCD方向が、シートの幅方向(図13の左右方向)と一致している。
実施例3の第1の部材Xの伸張率は[0.06](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[3.30](mm/N)である。
【0037】
[実施例4]
実施例4は、図14に示されている構成を有している。外層シート420、430、440および450は、幅Tが170mmである。そして、内層シート410の両面側に、外層シート420、430および440、450が配置されているとともに、幅方向の両端部(両縁部)に、幅Kが20mmである70g/mのスパンボンド不織布460および470が配置されている。
実施例4では、低伸張率を有する第1の部分400a1(400c1)、すなわち、第1の部材Xは、外層シート420、430(440、450)と70g/mのスパンボンド不織布460(470)を用いた3層構造である。また、高伸張率を有する第2の部分400a2(400c2)、すなわち、第2の部材Yは、外層シート420、430(440、450)を用いた2層構造である。また、外層シート420、430、440および450のCD方向が、シートの幅方向(図14の左右方向)に一致している。
実施例4の第1の部材Xの伸張率は[0.06](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[1.00](mm/N)である。
【0038】
[比較例1]
比較例1は、図15に示されている構成を有している。外層シート520および530は、幅Tが150mmである。そして、内層シート510の両面側に、外層シート520および530が配置されている。
比較例1では、幅方向の両端部から幅が55mmである第1の部分500a1(500c1)は、外層シート520(530)を用いた1層構造である。また、外層シート520および530のCD方向が、シートの幅方向(図15の左右方向)に一致している。
比較例1の第1の部材Xの伸張率は[3.30](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[3.30](mm/N)である。
【0039】
[比較例2]
比較例2は、図16に示されている構成を有している。外層シート620および630は、幅が205mmである。そして、内層シート610の両面側に、外層シート620および630が配置されている。
比較例2では、幅方向の両端部から幅が55mmである第1の部分600a(600c)は、外層シート620と630を用いた2層構造である。また、外層シート620および630のCD方向が、シートの幅方向(図16の左右方向)と一致している。
比較例2の第1の部材Xの伸張率は[1.00](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[1.00](mm/N)である。
【0040】
[比較例3]
比較例3は、図16に示されている構成を有している。外層シート620および630は、幅が205mmである。そして、内層シート610の両面側に、外層シート620および630が配置されている。
比較例3では、幅方向の両端部から幅が55mmである第1の部分600a(600c)は、外層シート620と630を用いた2層構造である。また、外層シート620のCD方向および外層シート630のMD方向が、シートの幅方向(図16の左右方向)と一致している。
比較例3の第1の部材Xの伸張率は[0.08](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[0.08](mm/N)である。
【0041】
[比較例4]
比較例4は、図17に示されている構成を有している。外層シート720および730は、幅Tが150mmである。そして、内層シート710の両面側に、外層シート720および730が配置されている。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの位置に、幅Kが20mmである外層シート740および750が配置されている。
比較例4では、幅方向の両端部から幅20mmの幅を有する第1の部分700a1(700c1)は、外層シート720(730)を用いた1層構造である。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの範囲の第2の部分700a2(700c2)は、外層シート720、740(730、750)を用いた2層構造である。また、外層シート720、730、740および750のCD方向とシートの幅方向(図17の左右方向)が一致している。
比較例4の第1の部材Xの伸張率は[3.30](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[1.00](mm/N)である。
【0042】
[比較例5]
比較例5は、図17に示されている構成を有している。外層シート720および730は、幅Tが150mmである。そして、内層シート710の両面側に、外層シート720および730が配置されている。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの位置に、幅Kが20mmである外層シート740および750が配置されている。
比較例5では、幅方向の両端部から幅20mmの幅を有する第1の部分700a1(700c1)は、外層シート720(730)を用いた1層構造である。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの範囲の第2の部分700a2(700c2)は、外層シート720、740(730、750)を用いた2層構造である。また、外層シート720、730のCD方向および外層シート740、750のMD方向とシートの幅方向(図17の左右方向)が一致している。
比較例5の第1の部材Xの伸張率は[3.30](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[0.08](mm/N)である。
【0043】
[比較例6]
比較例6は、図17に示されている構成を有している。外層シート720および730は、幅Tが150mmである。そして、内層シート710の両面側に、外層シート720および730が配置されている。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの位置に、幅Kが20mmである70g/mのスパンボンド不織布740および750が配置されている。
比較例6では、幅方向の両端部から幅20mmの幅を有する第1の部分700a1(700c1)は、外層シート720(730)を用いた1層構造である。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの範囲の第2の部分700a2(700c2)は、外層シート720(730)と70g/mのスパンボンド不織布740(750)を用いた2層構造である。また、外層シート720および730のCD方向が、シートの幅方向(図17の左右方向)と一致している。
比較例6の第1の部材Xの伸張率は[3.30](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[0.06](mm/N)である。
【0044】
[比較例7]
比較例7は、図18に示されている構成を有している。外層シート820、830、840および850は、幅Tが150mmである。そして、内層シート810の両面側に、外層シート820、830および840、850が配置されている。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの位置に、幅Kが20mmである70g/mのスパンボンド不織布860および870が配置されている。
比較例7では、幅方向の両端部から幅20mmの幅を有する第1の部分800a1(800c1)は、外層シート820と830(840と850)を用いた2層構造である。また、幅方向の両端部から20mm〜40mmの範囲の第2の部分800a2(800c2)は、外層シート820、830(840、850)と70g/mのスパンボンド不織布860(870)を用いた3層構造である。また、外層シート820、830、840および850のCD方向とシートの幅方向(図18の左右方向)が一致している。
比較例7の第1の部材Xの伸張率は[1.00](mm/N)であり、第2の部材Yの伸張率は[0.06](mm/N)である。
【0045】
ヘッド110の保持片121に保持されている実施例1〜4および比較例1〜7を、保持片121から外すのに必要なエネルギー(J)を測定した。必要なエネルギーの測定は、以下の条件で行った。
(1) 固定されたヘッドの保持片121に、試料の一部を押し込む。この時、疑似指を用いることによって、試料の押し込み量が一定になるように調整した。
(2) 次に、ヘッドの保持片121に保持されている試料の設定箇所を引っ張る。そして、試料が保持片121から外れた時の引張応力を測定した。
(3) 以上の測定を、同じ試料の複数片に対して行った。
この結果、実施例1〜4を保持片121から外すためには0.09(J)〜0.20(J)のエネルギーが必要であったのに対し、比較例1〜7を保持部材120から外すのに必要なエネルギーは0.01(J)〜0.05(J)で十分であった。なお、実施例1〜4では、[第1の部材Xの伸張率<第2の部材Yの伸張率]に設定され、比較例1〜3では、[第1の部材Xの伸張率=第2の部材Yの伸張率]に設定され、比較例4〜7では、[第1の部材Xの伸張率>第2の部材Yの伸張率]に設定されている。
このことから、第1の部材Xの伸張率を第2の部材Yの伸張率より小さくすることによって、清掃時に、清掃シート200がヘッド110の保持片121から外れるのを効果的に防止することができることが明らかになった。
【0046】
以上のように、本実施の形態の清掃シートは、内層シート(含浸体)の両面側に配置される外層シートには、内層シートと対向する側(内側)に熱融着層が形成されている。これにより、含浸体から外層シートへの洗浄剤の放出量を抑制することができる。したがって、清掃時(清掃シートの表面に荷重が印加されている時)に、清掃シートの表面から適切な量の洗浄剤を放出することができる。
また、内層シートと外層シートが、内層シートの縁部で接続されており、内層シートと外層シートとの間に空間が形成されている。これにより、接合部を介して内層シートから外層シートに放出される洗浄剤の量を抑制することができる。
また、清掃シートの端部に、低伸張率を有する第1の部分と高伸張率を有する第2の部分、第2の部分が第1の部分より中央部側に配置されるように設けている。そして、第1の部分と第2の部分との境界部を係止片で保持している。これにより、清掃時に、清掃シートの端部が保持部材120(保持片121)から外れるのを効果的に防止することができる。
【0047】
なお、伸張率が高い部分を形成する方法として、重ねられたシート部材を、熱エンボス加工によって接合する方法を用いたが、伸張率を変える方法はこの方法に限定されない。例えば、熱エンボス加工以外の接合方法によって、重ねられたシート部材を接合する方法を用いることができる。また、ウォータージェット法(水流交絡法)によって不織布シート(スパンレース不織布シート)を製造する際に、ノズルを塞いでウォータージェットが届かなくすることで、当該部位の伸張率を高くする方法、原綿の構成を変えることによって伸張率を変える方法等を用いることができる。
また、前記した実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
また、内層シートに洗浄剤を含浸させてウェット状態で清掃するウェットシートについて説明したが、内層シートに洗浄剤を含浸させないでドライ状態で清掃するドライシートとして構成することもできる。
また、清掃シートの構成は、実施の形態で説明した構成に限定することなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の追加、変更、削除が可能である。
また、請求項には、「外層シートは、熱可塑性繊維を含む繊維により形成されており、内層シートと対向する側に配置されている熱可塑性繊維の融点が、内層シートと対向する側と反対側に配置されている熱可塑性繊維の融点より低く設定されている」構成、「内層シートと外層シートとの接合箇所が外層シートの縁部に設定され、内層シートの中央部では、内層シートと外層シートの間に空間が形成されている」構成、「内層シートは、清掃シート装着部材の清掃部(装着面)に配置される、清掃シートの中央部に配置されている」構成を記載することができる。
【0048】
清掃対象をウェット状態で清掃する清掃シートとしては、例えば、洗浄剤が含浸されている含浸体(例えば、内層シート)と、含浸体の両面側に配置されている外層シートを備える清掃シートが用いられる。このような清掃シートを用いる場合、清掃対象を適切なウェット状態(湿潤状態)で清掃可能な清掃領域(清掃部積)は、外層シートの外側の表面からの洗浄剤の放出特性によって定まる。また、外層シートの外側の表面からの洗浄剤の放出特性は、含浸体から外層シートへの洗浄剤の放出特性によって定まる。また、含浸体から外層シートへの洗浄剤の放出特性は、含浸体に含浸可能な洗浄剤の量や、含浸体から外層シートに放出される洗浄剤の量によって定まる。含浸体から外層シートに放出される洗浄剤の量を調節する手法としては、含浸体と外層シートとの間に空間(隙間)を設ける手法や、外層シートの内側(含浸体と対向する側)に熱融着層を形成する手法等を用いることができる。上記の実施形態では、含浸体から外層シートへの洗浄剤の放出特性を調節する手法を用いている実施の形態が示されている。
上記の清掃シートは、単独で(清掃用具の清掃シート装着部材に装着することなく)清掃対象を清掃することもできる。また、本発明の清掃シートあるいは清掃用具は、平面状、曲面状、凹凸状、段差状等の種々の形状を有する清掃対象を清掃することができる。
また、以下で説明する清掃シートは、清掃対象をドライ状態で清掃する清掃シートとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
100 清掃用具
110 ヘッド(清掃シート装着部材)
120 保持部材
121 保持片
130 パイプ
131 接続機構
150 ハンドル
200、300、400、500、600、700、800 清掃シート
200a、200c、300a、300c、400a、400c、500a、500c、
200a1、200c1 第1の部分
200a2、200c2 第2の部分
200a3、200c3 第3の部分
200P1、200Q1 第1の境界部
200P2、200Q2 第2の境界部
600a、600c、700a、700c、800a、800c 端部
200b、300b、400b、500b、600b、700b、800b 中央部(清掃部)
201、202、220b、230b 折り返し線
220a、230a 折返し部
210、310、410、510、610、710、810 内層シート
220、230、320、330、420、430、520、530、620、630、720、730、820、830 外層シート
221、231 外側層
222、232 内側層(熱融着層)
203、204 熱エンボス加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃シート装着部材に取付可能な清掃シートであって、
清掃面を構成する中央部と、
前記中央部に対して、所定の一方向に沿った少なくとも一方側に設けられている少なくとも一つの端部を有し、
前記端部は、第1の伸張率を有する第1の部分と、前記第1の部分より高い伸張率を有する第2の部分を有し、前記第2の部分は、前記一方向に沿って、前記第1の部分と前記中央部の間に設けられており、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界部にて清掃シート装着部材に着脱自在に保持されるよう構成されていることを特徴とする清掃シート。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃シートであって、前記第2の部分は、単一のシート部材によってまたは複数のシート部材が積層状に接合されて構成されており、前記第1の部分は、前記第2の部分より多い数のシート部材が積層状に接合されて構成され、これによって前記第2の部分の伸長率が前記第1の部分の伸長率よりも高くなるように構成されていることを特徴とする清掃シート。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃シートであって、前記第1の部分は、前記積層されたシート部材がエンボス加工によって接合されていることを特徴とする清掃シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の清掃シートであって、前記端部の少なくとも一方は、前記第2の部分より低い伸張率を有する第3の部分が、前記一方向に沿って、前記第2の部分と前記中央部の間に設けられていることを特徴とする清掃シート。
【請求項5】
請求項1〜4までのいずれか一項に記載の清掃シートおよび清掃シート装着部材を有する清掃用具であって、
前記清掃シート装着部材は、清掃部と、保持部材と、を有しており、
前記清掃シートが前記清掃シート装着部材に取付けられる際、前記清掃シートの中央部は前記清掃部に配され、前記境界部が前記保持部材に着脱自在に保持されるよう構成されていることを特徴とする清掃用具。
【請求項6】
請求項5に記載の清掃用具であって、
前記保持部材は、互いに対向状に配置された複数の弾性保持片を有し、前記清掃シートの境界部が当該複数の保持片間を通じて前記保持部材を貫通するように押し込まれるとともに当該複数の保持片によって挟持されることにより、前記境界部が前記保持部材に保持されることを特徴とする清掃用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate