説明

清掃性に優れたダストシート

【課題】床上の髪の毛,煙草と灰,土砂等の塵の取り込みを多くし、取り込んだ塵を外に出すのを減らしてダスト捕集性と保持性を高め、清掃性を良くする。
【解決手段】スパンボンド法によって得られた繊維層の上にポリエステル短繊維とポリオレフィン短繊維の混繊短繊維層を積層して交絡処理を施し、一体化してなる不織布からなり、その50%圧縮応力が1.5N/5cm2以上で、かつ50%圧縮応力緩和率が5〜15%の範囲にあるダストシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として床上の髪の毛やパウダー,煙草灰,土砂等のダスト捕集性及びダスト保持性がよく、清掃性に優れたダストシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
床の掃除にあたり、モップに装着し、モップ柄に適度の力を加えながら移動させることにより床上の清掃を行なうために不織布を基材とするダストシートが広く用いられている。しかし、床上のダストには髪の毛や塵埃,砂,煙草灰など、様々な異物が混在しているため、これらに対する優れた捕集性が必要であり、またダストシートには一旦捕集したダストが脱落しないようなダスト保持性も必要となる。
【0003】
ところがダストの種類によりダストを捕集し、保持する特性は一様でなく、従ってこれら各種ダストに応じた捕集性と保持性が求められ、ダストシートに薬剤を添加したり、あるいは構成する繊維を熱融着させて捕集性や保持性を向上させていた。しかし、これらのダストシートは薬品処理や複雑な製法が求められるため、コスト高となる難があり、本出願人はさきに安価でダスト捕集性と保持性に優れたダストシートを提案した。(例えば特許文献1参照)
このダストシートは長繊維層と短繊維層が積層され、繊維同志の交絡によって一体化されたシートであって、短繊維層表面の靜摩擦係数が0.5以下で、かつダストシートの剪断弾性率が60g/cm2・100%以上というダストシートである。
【特許文献1】特開2004−283501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本出願人は更に塵取りの機構について検討し、その考え方を考究したところ、ダストのかき集め,かき取り,からまりなどの各機能に対応し、夫々必要な特性が異なり、前記提案に係る短繊維層表面の靜摩擦係数,剪断弾性率だけでは、清掃効果になお一部に不充分さがあることを知見した。本発明は、上記知見にもとづき、上記特性以外で更に
シートの50%圧縮応力,50%圧縮応力緩和率が清掃機能に大きな役割を有していることを見いだすことにより塵取り機構において、かき集め,かき取り,からまり等に対応してより効果的な清掃機能を付与し、塵の捕集効率を向上せしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、上記目的を達成するための本発明ダストシートは、スパンボンド法によって得られた繊維層の上に短繊維層を積層し、交絡処理を施して一体化してなる不織布であって、該不織布の50%圧縮応力が1.5N/5cm2以上であり、かつ50%圧縮応力緩和率が5〜15%の範囲であるシートの構成にある。
【0006】
ここで、上記スパンボンド法によって得られた繊維層はポリエステル長繊維層であることが好ましく、また、積層される短繊維層はポリエステル短繊維とポリオレフィン短繊維の混繊であって、ポリオレフィン短繊維の配合が15〜80質量%の範囲であることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明ダストシートは、50%圧縮応力を1.5N/5cm2以上と大きくしたことにより、取り込み量を多くすることができると共に、50%圧縮応力緩和率を5〜15%に保持し、比較的小さくしたことにより取り込んだダストの放出を少なくしているので、ダストモップに装着使用するときは床上の髪の毛,煙草と灰,土砂等のクリーニング効果が従来のものに比し頗る効率的となり、しかもダスト捕集性,ダスト保持性に優れた効果を有いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、更に上記本発明の具体的態様について詳述する。
【0009】
本発明ダストシートはスパンボンド法によって得られた繊維層に短繊維層を積層して交絡一体化した不織布よりなるもので、特にその50%圧縮応力を1.5N/5cm2以上とし、50%圧縮応力緩和率を5〜15%の範囲としてダスト捕集性,ダスト保持性を高めたものである。
【0010】
この本発明ダストシートは基本的な考え方として、先ず塵取りの機構(ワイピングメカニズム)を考え、その結果、かき集めについては繊維の弾性率強さが重要な要素であり、太デニール,高弾性率繊維が好適であること、また、かき取りについては静電気,繊維のしなやかさが重要な要素で、これには細デニール,低弾性率繊維が好適であると共に、繊維を構成するポリマーの組み合わせも関連すること、更にダストのからまりには繊維のからまりから立体捲縮繊維,嵩高繊維が好適であることを見いだし、これらの考え方に基づいてダスト構成繊維や圧縮ヘタリ率などを考慮し、50%圧縮応力及び50%圧縮応力緩和率を特定することが有効であることを知り、本発明に到達したのである。
【0011】
本発明ダストシートは、先ずダストシートを構成する不織布としてスパンボンド法によって得られた繊維層の上に短繊維層を積層し、交絡処理を施し一体化した不織布が用いられる。ここで、スパンボンド法によって得られる繊維層としては、スパンボンド可能な繊維であれば使用可能であるが、通常、長繊維層であり、なかでも実用的にはポリエステル長繊維層が用いられる。また短繊維層を構成する繊維としては天然繊維,合成繊維の各短繊維の使用も可能であるが、本発明ダストシートにおいてはポリエステル短繊維と、ポリオレフィン短繊維、例えばポリプロピレン短繊維との混繊を用いることが好適である。そしてこの場合、スパンボンド法による繊維と、短繊維との配合としてはスパンボンド繊維は10〜33%の範囲が好ましい。10%以下ではスパンボンド繊維(長繊維)の基布効果がなくなり、一方、33%を越えれば混繊短繊維側の繊維が少なくなるため塵の保持が劣る。従って、10〜33%の範囲が好適である。
【0012】
一方、混繊短繊維層におけるポリエステルと、ポリオレフィン各短繊維の配合としては、ポリオレフィン短繊維が15〜80質量%の範囲であることが好ましい。15質量%以下ではポリオレフィン繊維が少ないため、塵のかき集め保持効果が弱く、一方、80質量%を越えるとポリエステル繊維の効果が少なく、ヘタリ率が高くなり塵の保持が低下する。従って、ポリオレフィン繊維、実用的にはポリプロピレン繊維が用いられるが、15〜80質量%の配合が好適である。
【0013】
なお、使用されるポリエステル,ポリオレフィン各繊維の繊度としては、ポリエステル繊維はスパンボンドの場合も含め特に限定はなく、一般的に使用される範囲の繊度でよく、通常、1.0〜30dtex、好ましくは2〜15dtexである。1.0dtex以下であると、塵をかき取り保持する性能に乏しくなり、30dtex以上であると塵を掻き取るのに太すぎて保持する性能に欠ける難がある。
【0014】
一方、ポリオレフィン繊維、例えばポリプロピレン繊維,ポリエチレン繊維の繊度も略前記と同様でよく、1.0〜30dtex、好ましくは2〜15dtexである。そして、スパンボンド法によって得られた繊維層と混繊短繊維層との積層からなる繊維層の目付は25〜200g/m2、とりわけ40〜150g/m2 が好ましく、目付25g/m2以下では短繊維とスパンボンド法による繊維のバランス上、塵量の保持の限界となり、目付200g/m2以上では上記両繊維のバランス上、塵量の保持の限界となり、何れも好ましくない。
【0015】
次に上記積層による繊維層の密度は目付と厚さで決まるので、目付範囲が決まれば後は厚さの範囲である。厚さは塵を保持するための容積の確保のためであり、圧縮弾性率が発揮される範囲が好ましく、0.5mm〜2.5mm、特に0.8mm〜2.5mmが好適である。厚さが0.5mm以下では塵を保持するための容積の確保が不充分であり、厚さ3.5mm以上では塵を保持するための容積が過剰になるので好ましくない。
【0016】
しかして、本発明は上述の如き繊維構成による積層繊維層に交絡処理を施し、繊維同志の交絡によって一体化されて不織布に形成される。交絡処理はニードルパンチ加工や、ウォータージェット加工など、種々の加工があるが、最も一般的にはニードルパンチ加工であり、針の種類(太さ)や針深さ,打ち込み本数を適宜、調整することによって行なわれる。そして、本発明ダストシートは上記一体化された不織布の50%圧縮応力が1.5N/5cm2以上で、かつ50%圧縮応力緩和率が5〜15%の範囲である特性を有するシートとして形成される。
【0017】
不織布の50%圧縮応力はモップが床面を移動するときにかかる不織布の繊維の状態を示し、50%圧縮応力によって塵の取り込みの大きさが異なる。50%圧縮応力が小さいと塵の取り込みが少なく、逆に50%圧縮応力が大きいと塵の取り込みが多いことを示す。 従って、不織布の繊維の状態を好適にする50%圧縮応力は少なくとも1.5N/5cm2以上が必要となる。 一方、不織布の50%圧縮応力緩和率はモップが床面を移動する時の前後の繊維の状態を示し、50%圧縮応力緩和率が小さいと取り込みが少なく、逆に50%圧縮応力緩和率が大きいと折角取り込んだ塵が外に出てしまう。この意味で不織布の繊維の状態を好適にする50%圧縮応力緩和率は5%〜15%の範囲ある。従って、本発明ダストシートにおいては、不織布の50%圧縮応力が1.5N/5cm2以上で、50%圧縮応力緩和率が5〜15%の範囲が特定される。
【0018】
以上のようなダストシートは、これを作成するに際しては、以下のような方法が用いられる。即ち、先ずポリエステルとポリオレフィンからなる短繊維層と、スパンボンド法によって得られたポリエステル長繊維とを積層し、短繊維層から長繊維層へとニードル加工し、次いで、長繊維層から短繊維層へニードル加工し、更に必要に応じ短繊維層からニードル加工する。この時のニードル加工条件は針の種類,針深さと打ち込み本数で決められるが、目付25〜200g/m2,厚さ0.5〜3.5mmの範囲として上記決められた加工条件に従って作成し、所望のサイズとして巻取ることにより最終の本発明ダストシートが得られる。以下、実施例を掲げる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長51mmのポリエステル繊維(PET繊維)80質量%と、繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長64mmのポリプロピレン繊維(PP繊維)20質量%を均一に混繊し、カーディング加工して目付約35g/m2の短繊維層となし、連続的に該短繊維層をスパンボンド法(SB)によって得られた繊度2.2デシテックス(dtex)で目付15g/m2のポリエステルの長繊維層に積層し、引き続きニードルパンチ機によりスパンボンドの長繊維層から短繊維層に向けて針深さ9mm、打ち込み本数35本/cm2の処理をし、次いで短繊維層から針深さ11mm、打ち込み本数65本/cm2で処理し、更にスパンボンドの長繊維層から針深さ6.5mm、打ち込み本数65本/cm2のニードル加工を連続的に施して本発明のダストシートを得た。
(実施例2)
繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長51mmのポリエステル繊維20質量%と、繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長64mmのポリプロピレン繊維80質量%を均一に混繊し、カーディング加工して目付約35g/m2の短繊維層となし、連続的に該短繊維層をスパンボンド法によって得られた繊度2.2デシテックス(dtex)で目付15g/m2のポリエステルの長繊維層に積層し、引き続きニードルパンチ機によりスパンボンドの長繊維層から短繊維層に向けて針深さ9mm、打ち込み本数35本/cm2の処理をし、次いで短繊維層から針深さ11mm、打ち込み本数65本/cm2で処理し、更にスパンボンドの長繊維層から針深さ6.5mm、打ち込み本数65本/cm2のニードル加工を連続的に施して本発明のダストシートを得た。
(実施例3)
繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長51mmのポリエステル繊維50質量%と、繊度6.6デシテックス(dtex)で繊維長64mmのポリプロピレン繊維50質量%を均一に混繊し、カーディング加工して目付約35g/m2の短繊維層となし、連続的に該短繊維層をスパンボンド法によって得られた繊度2.2デシテックスで目付15g/m2のポリエステルの長繊維層に積層し、引き続きニードルパンチ機によりスパンボンドの長繊維層から短繊維層に向けて針深さ9mm、打ち込み本数35本/cm2の処理をし、次いで短繊維層から針深さ11mm、打ち込み本数65本/cm2で処理し、更にスパンボンドの長繊維層から針深さ6.5mm、打ち込み本数65本/cm2のニードル加工を連続的に施して本発明のダストシートを得た。
(比較例1)
繊度2.2デシテックス(dtex)で繊維長51mmのポリエステル繊維をカーディング加工により目付約30g/m2の短繊維層となして連続的に該短繊維層をスパンボンド法によって得られた繊度2.2デシテックス(dtex)で目付15g/m2のポリエステルの長繊維層に積層し、引き続きニードルパンチ機によりスパンボンドの長繊維層から短繊維層に向けて針深さ9mm、打ち込み本数35本/cm2の処理をし、次いで短繊維層から針深さ11mm、打ち込み本数65本/cm2で処理し、更にスパンボンドの長繊維層から針深さ6.5mm、打ち込み本数65本/cm2のニードル加工を連続的に施して比較ダストシートを得た。
(比較例2)
繊度22.2デシテックス(dtex)で繊維長51mmのポリエステル繊維をカーディング加工により目付約30g/m2の短繊維層となして連続的に該短繊維層をスパンボンド法によって得られた繊度2.2デシテックス(dtex)で目付15g/m2のポリエステルの長繊維層に積層し、引き続きニードルパンチ機によりスパンボンドの長繊維層から短繊維層に向けて針深さ9mm、打ち込み本数35本/cm2の処理をし、次いで短繊維層から針深さ11mm、打ち込み本数65本/cm2で処理し、更にスパンボンドの長繊維層から針深さ6.5mm、打ち込み本数65本/cm2のニードル加工を連続的に施して比較ダストシートを得た。
(比較例3)
ポリエステル短繊維とポリエステルと改質ポリプロピレンからなる芯鞘短繊維との混繊層と、スパンボンド法により得られたポリエステル長繊維層が一体化された市販品の不織布を比較ダストシートとした。
【0020】
かくして上記得られた本発明ダストシートと比較ダストシートについてその特性評価とクリーニング評価をした。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

上記表中の50%圧縮応力,50%圧縮応力緩和率は下記により測定した。
(1)50%圧縮応力
圧縮試験は東洋ボールドイン社製50Kgテンシロンを用い、圧縮面積10.0cmφで圧縮速度2mm/minで試料を50%まで圧縮し、試料の圧縮変形率50%の応力を測定する。得られた応力を圧縮面積で除し単位面積当たりに換算して示した。測定回数はn=3の平均で示し、単位はN/cm2である。
(2)50%圧縮応力緩和率
圧縮試験は東洋ボールドイン社製50Kgテンシロンを用い、圧縮面積10.0cmφで、圧縮速度2mm/minで試料を50%まで圧縮し(変形応力:HN)、3分間維持してその時の圧縮応力(hN)を測定する。次式により圧縮応力緩和率を計算する。測定回数はn=3の平均で示し、単位は%である。
【0022】
応力緩和率(R)=(h/H)×100(%)
また、実施例及び比較例のダストシートのクリーニング評価は下記に基づいて行ない、評価した。
・クリーニング評価
(1)床(表面仕上げイサムフロアーV硬質アクリル防塵塗料(イサム塗料株式会社))
(2)除具はスリーエムダストモップ(DKIT−M 実効 巾:9cm、長さ:61cm、重さ970g)
(3)塵は(イ)髪の毛、(ロ)煙草と灰、(ハ)土砂(JIS KS4.5.6同比率混合)
・評価
(1)試料をスリーエムダストモップに取り付ける。
(2)床面は巾65cm、長さ5mの範囲とした。
(3)手前に巾55cm、長さ30cmの範囲に均一に塵を撒く。
(4)均一に撒いた塵の手前にダストモップを静かに置き
(5)柄は約30度の角度でゆっくりと一方向に拭き取り、静かに持ち上げ試料シートに 絡みついた各種塵の着塵量を計測する。
【0023】
【表2】

集塵率(塵取り面積100cm2、目付100g当たり)
D=((Pd/Td)/(S×M))×(100×100)(%)
D:集塵率(%)
S:試料の実接した面積(cm2)(本テスト:549cm2
Pd:試料に付着したダスト量(g)
Td:床に散布したダスト量(g)
M:試料の目付(g/m2
100:100(cm2) 面積
100:100(g/m2)目付
以上の結果より、前記表1に示す如く本発明による50%圧縮応力ならびに50%圧縮応力緩和率の範囲は清掃性に極めて関連性を有してダスト捕集性とダスト保持性に優れた効果を発揮することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド法によって得られた繊維層の上に短繊維層を積層し、交絡処理を施して一体化してなる不織布であって、該不織布の50%圧縮応力が1.5N/5cm2以上であり、かつ50%圧縮応力緩和率が5〜15%の範囲であることを特徴とする清掃性に優れたダストシート。
【請求項2】
スパンボンド法によって得られた繊維層がポリエステル長繊維層である請求項1記載の清掃性に優れたダストシート。
【請求項3】
積層される短繊維層がポリエステル短繊維とポリオレフィン短繊維の混繊からなり、ポリオレフィン短繊維の配合が15〜80質量%の範囲である請求項1または2記載の清掃性に優れたダストシート。

【公開番号】特開2007−154376(P2007−154376A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353385(P2005−353385)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】