説明

清掃用シート

【課題】 ダストを効率よく捕集でき、しかも清掃作業中における構成繊維の抜け落ちが防止された清掃用シートを提供すること。
【解決手段】 清掃用シート1は、繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体2を具備する。繊維集合体2は、繊維交絡度の低い低交絡部4と、該低交絡部4よりも繊維交絡度の高い高交絡部5とを有している。低交絡部4は高交絡部5によって囲まれている。低交絡部4の面積の総和は清掃用シート1の面積に対して好ましくは80〜98%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面等の清掃に特に好適に用いられる清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維ウエブ水流交絡させて形成された繊維集合体を有する清掃用シートが種々知られている。この種の清掃用シートにおけるダストの捕集性を高めるには、構成繊維の自由度を高くすることが有効である。そのためには繊維の交絡の程度を低くすればよい。しかし、繊維の交絡の程度を低くすると、シートの強度が低下して、清掃作業中にシートから繊維が抜け落ちやすくなる。例えばフローリングの清掃中に、フローリングの溝やバリに繊維が引っかかり抜けてしまいやすくなる。
【0003】
そこで、ダストの捕集性とシートの強度維持を同時に達成することを目的として、低交絡状態のシートに、一方向に延びる高交絡部をストライプ状に形成した清掃用シートが多数提案されている(例えば特許文献1ないし3参照)。しかし、これらのシートによっても繊維の抜け落ちが十分に防止されておらず、未だ改良の余地があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−369782号公報
【特許文献2】特開2003−508号公報
【特許文献3】特開2003−70707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体を具備し、該繊維集合体が、繊維交絡度の低い低交絡部と、該低交絡部よりも繊維交絡度の高い高交絡部とを有し、該低交絡部が該高交絡部によって囲まれている清掃用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また本発明は、前記清掃用シートの好ましい製造方法として、
繊維ウエブを水流交絡させて繊維集合体の低交絡体を形成し、次いで該低交絡体を更に水流交絡させて該低交絡体の交絡状態よりも高交絡状態であり且つ閉じた形状を有する高交絡部を該低交絡体に形成する清掃用シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の清掃用シートによれば、細かな埃から髪の毛やパン粉といった比較的大きなダストまで効率よく捕集でき、しかも清掃作業中における構成繊維の抜け落ちが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の清掃用シートの一実施形態の要部における斜視図が示されている。本実施形態の清掃用シート1は、繊維ウエブの水流交絡で形成された繊維集合体2と、繊維集合体2の内部に配された格子状の網状シート3とから構成されている。繊維集合体2と網状シート3とは、水流交絡によって繊維集合体2の構成繊維と網状シート3とが交絡し、両者が一体化している。
【0010】
繊維集合体2は、繊維交絡度の低い低交絡部4と、低交絡部4よりも繊維交絡度の高い高交絡部5とから構成されている。高交絡部5の厚みは、低交絡部4の厚みよりも小さくなっている。低交絡部4と高交絡部5とでは坪量は実質的に同じになっている。その結果、低交絡部4は高交絡部5よりも密度が小さくなっている。
【0011】
低交絡部4は菱形または波形をしている。一方、高交絡部5は一定幅の直線状をしている。高交絡部5は格子状のパターンを形成している。図1から明らかなように、シート1の周辺域を除き、低交絡部4は高交絡部5によって囲まれている。つまり各低交絡部4は高交絡部5によって離間しており、個々に独立している。低交絡部4は高交絡部5に必ず完全に囲まれている必要はなく、高交絡部5は、点線状、ドット状で囲むのも含まれる。
【0012】
低交絡部4は、繊維交絡度が低い部位であることから構成繊維の自由度が高くなっている。従って低交絡部4は、細かな埃から髪の毛やパン粉といった比較的大きなダストまで効率よく捕集することができる。この観点から、低交絡部4における繊維の交絡係数は0.05〜0.8N・m/g、特に0.1〜0.7N・m/gという低い値であることが好ましい。交絡係数は構成繊維間の交絡状態を表す尺度であり、低交絡部4における、その繊維配向に対する垂直方向の応力−ひずみ曲線の初期勾配で表される。その値が小さいほど繊維間の交絡が弱いといえる。このとき、繊維配向とは引張強度試験時の最大点荷重値が最大となる方向であり、応力は引張荷重をつかみ幅(引張強度試験時の試験片幅)及び低交絡部4の坪量で割った値であり、ひずみは伸び量を示す。
【0013】
前述の通り、低交絡部4が主にダストの捕集に関与する部位であるのに対して、高交絡部5は主に繊維の抜け落ち防止に関与する部位である。詳細には、低交絡部4では、構成繊維はその繊維交絡度が低い状態にあることから、シート1を用いた清掃作業中に、清掃対象面の角部やバリ等に繊維が引っかかり抜け落ちてしまいやすい。これを防止するために、低交絡部4を高交絡部5で囲繞し、低交絡部4の構成繊維を高交絡部5によってシート内に確実に固定している。低交絡部4が高交絡部5で囲繞されていることによって、特に、シート1をその平面方向に対してどのような方向に向けて清掃しても繊維の抜け落ちが防止される。つまり、繊維の抜け落ち防止効果に関して、本実施形態の清掃用シート1は異方性がない。これに対して、先に述べた特許文献1ないし3に記載の清掃用シートでは、本実施形態の高交絡部5に相当する部位が、一方向に延びるストライプ状に形成されているので、該部位の延びる方向にシートを向けて清掃を行うと繊維の抜け落ちが起こりやすい。
【0014】
構成繊維の抜け落ちを確実に防止する観点から、高交絡部5における繊維の交絡係数は0.81〜3.0N・m/g、特に1.0〜3.0N・m/gという高い値であることが好ましい。
【0015】
構成繊維の抜け落ちを防止するためには、高交絡部5の面積を大きくすればよい。しかし、高交絡部5は低交絡部4に比較してダストの捕集能が低いので、高交絡部5の面積を大きくしすぎることは、シート1全体のダストの捕集能を低下させることになる。逆に、低交絡部4の面積を大きくすればダストの捕集能は高まるが、繊維の抜け落ちが起こりやすくなる。これらの観点から、シート1における低交絡部4の面積の総和は、シート1の面積に対して80〜98%、特に85〜95%であることが好ましい(以下、この値を面積率ともいう)。
【0016】
低交絡部4の面積もダストの捕集能に影響を及ぼす。具体的には、同程度の繊維交絡度を有する低交絡部で比較した場合、面積の大きな低交絡部の方が、面積の小さな低交絡部よりもダストを捕集しやすい。この理由は、面積の大きな低交絡部の方が、面積の小さな低交絡部に比較して、繊維が自由に動くことのできる部分の長さが長いからである。従って、ダストの捕集能を高める観点からは、個々の低交絡部4の面積は大きい方が有利である。しかし、低交絡部4の面積が大きすぎると、低交絡部4に含まれる繊維が、それを囲む高交絡部5によって固定される確率が低下するので、繊維の抜け落ちが起こりやすくなる。これらの観点から、個々の低交絡部4の面積は20〜10000mm2、特に200〜5000mm2であることが好ましい。
【0017】
同面積で同程度の繊維交絡度を有する低交絡部で比較した場合、形状に異方性のない低交絡部の方が、形状に大きな異方性を有する低交絡部よりも、繊維の抜け落ちが起こりにくい。この観点から、低交絡部4はできるだけ異方性の小さな形状であることが好ましい。また、本発明者らの検討の結果、低交絡部4のアスペクト比が好ましくは5:1以下、更に好ましくは3:1以下であれば、繊維の抜け落ち防止に十分効果的である。低交絡部の形状が複雑でアスペクト比が容易に求められない場合には、低交絡部の重心の位置を求め、それを通る最も長い横断線と最も短い横断線との比をもってアスペクト比とする。
【0018】
構成繊維の抜け落ち防止には、該繊維の繊維長も関係している。具体的には、構成繊維の繊維長が短すぎると、繊維が高交絡部5によって固定される確率が低下するので、繊維が抜け落ちやすくなる傾向にある。従って、繊維が長くなればなるほど抜け落ち防止には効果的である。しかし、繊維が長すぎると繊維ウエブの形成や、繊維ウエブの水流交絡に支障を来す場合がある。これらの観点から、構成繊維の繊維長は30〜70mm、特に35〜65mmであることが好ましい。繊維集合体2が複数の繊維から構成されている場合には、すべての構成繊維が前記の繊維長の範囲を満たすことが最も好ましい。しかし、最も配合比率の高い繊維が前記の繊維長の範囲を満たしていれば、繊維の抜け落ち防止に十分に効果的である。
【0019】
次に、本実施形態の清掃用シート1の構成材料について説明する。シート1における繊維集合体2は、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の繊維を含んでいる。またアセテート等の半合成繊維、キュプラ、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることもできる。これら各種繊維を組み合わせて用いてもよい。繊維集合体2に熱融着繊維が含まれていることが好ましい。熱融着繊維としては、高融点重合体を芯成分とし、高融点重合体の融点よりも少なくとも10℃以上低融点の低融点重合体を鞘成分とした芯鞘型複合繊維、あるいは高融点重合体と低融点重合体とを接合させたサイド・バイ・サイド型複合繊維が好ましく用いられる。複合繊維を構成する高融点重合体と低融点重合体との組み合わせとしては、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、高融点ポリエステル/低融点ポリエステル等が挙げられる。
【0020】
繊維集合体2の坪量は30〜100g/m2、特に40〜70g/m2であることが好ましい。ダストの捕集性を向上させ得る界面活性剤や潤滑剤を、繊維集合体2に施してもよい。
【0021】
網状シート3としては、例えばポリプロピレンのような熱可塑性樹脂製の格子状ネットを用いることができる。網状シート3の線径は好ましくは50〜600μm、更に好ましくは100〜400μmである。また、線間距離は好ましくは2〜30mm、更に好ましくは4〜20mmである。また網状シート3として、本出願人の先の出願に係る特開平7−184815号公報の図4(a)ないし(c)に記載のものを用いることもできる。網状シート3の構成材料は熱収縮性であってもよい。熱収縮性の材料を用い、シート1の製造時に加熱処理を施すことにより、見掛け厚みが大きなシート1を得ることができる。また、網状シートのかわりに、不織布、紙、穴あきフィルム等を用いることも出来る。不織布としてはスパンボンド不織布が好ましい。
【0022】
次に、本実施形態の清掃用シート1の製造方法の好ましい一実施形態を、図2及び図3を参照して説明する。本実施形態の清掃用シート1の製造方法においては、網状シート3の両面に上層繊維ウエブ2a及び下層繊維ウエブ2bをそれぞれ重ね合わせる重ね合わせ工程と、水流交絡によって繊維ウエブ2a及び2bの構成繊維間を交絡させて低交絡状態の繊維集合体を形成すると共に該構成繊維と網状シート3とを交絡させて、両者がー体化された低交絡体6を形成する低交絡工程と、低交絡体6を更に水流交絡させて低交絡体6の交絡状態よりも高交絡状態であり且つ閉じた形状を有する高交絡部を形成する高交絡工程とが、この順で進行する。
【0023】
図3には、本実施形態の清掃用シート1の製造方法に好ましく用いられる製造装置10が示されている。製造装置10は、重ね合わせ部10A、低交絡処理部10B、高交絡処理部10C及び乾燥部10Dに大別される。
【0024】
このような構成の製造装置10においては、先ず、重ね合わせ部10Aにおけるカード機11A、11Bの各々から連続的に繊維ウエブ2a及び2bがそれぞれ繰り出される。ー方、カード機11A、11Bの間には網状シート3のロール12が配設され、ロール12から網状シート3が繰り出される。そして網状シート3の両面に、繊維ウエブ2a及び2bがそれぞれ重ね合わされて重ね合わせ体7が形成される。
【0025】
低交絡処理部10Bにおいて、重ね合わせ体7は、周面がワイヤーメッシュやパンチングメタル等の透水性材料から構成されているドラム13aの該周面に抱かれた状態下に、該ドラム13aの周面に対向して設置された第1のウォータージェットノズル14aから噴出される高圧のジェット水流により交絡処理される。交絡処理は、重ね合わせ体7の一方の面から行われる。これにより、重ね合わせ体7中の繊維ウエブ2a,2bの構成繊維間が交絡されて低交絡状態の繊維集合体が形成されると共に該構成織維と網状シート3とが交絡されて、三者が一体化された低交絡体6が得られる。繊維集合体を低交絡状態とするために、ジェット水流の水圧を適切に調整する。繊維集合体の坪量にもよるが、1.0〜8.0MPa程度の水圧でジェット水流を噴射することで、満足すべき低交絡状態が得られる。
【0026】
次いで低交絡体6は無端縁ベルト15と共によって搬送され、更にその表裏が反転されて、第2のウォータージェットノズル14bから噴出される高圧のジェット水流により再度交絡処理される。この交絡処理は、先に行われた交絡処理面と反対側の面から行われる。交絡処理は、先に述べたドラム13aと同様の構造を有するドラム13bの周面に低交絡体6が抱かれた状態下に行われる。ジェット水流の水圧は、先に行った交絡処理と同条件とすることができる。表裏に交絡処理を行うことで、交絡の程度が表裏で同程度の清掃用シートを得ることができる。
【0027】
2度目の交絡処理が行われた低交絡体6は、透水性材料からなる無端縁ベルト16によって搬送され、サクションボックス17によって過剰の水分が除去される。次いで低交絡体6は、再び表裏が反転されて高交絡処理部10Cに導入される。高交絡処理部10Cは、低交絡体6を搬送する透水性材料からなる無端縁ベルト18を備えている。無端縁ベルト18上にはノズルヘッド19a,19bが設置されている。無端縁ベルト18を挟んでノズルヘッド19a,19bと対向する位置には、サクションボックス20が設置されている。
【0028】
図3には、高交絡処理部10Cの要部が拡大されて示されている。高交絡処理部10Cには、低交絡体6の搬送方向(図3中、矢印で示す)と直交する方向にわたり多数の噴射ノズル21が配置されたノズルヘッド19a,19bが配置されている。ノズルヘッド19a,19bは低交絡体6の搬送方向の上流側に1列、下流側に1列の合計2列配置されている。ノズルヘッド19a,19bは、低交絡体6の搬送方向と直交する方向に往復運動が可能な構造になっている。各ノズルヘッド19a,19bに設けられた噴射ノズル21は等間隔になっている。
【0029】
高交絡処理部10Cにおいては、低交絡体6を、図4中、矢印で示す方向に搬送させた状態下に、ノズルヘッド19a,19bを搬送方向と直交する方向に往復運動させつつ、噴射ノズル21から低交絡体6へ向けて高圧ジェット水流を噴射する。これによって低交絡体6を更に水流交絡させて、低交絡体6の交絡状態よりも高交絡状態であり且つ閉じた形状を有する高交絡部5を形成する。高交絡部5内には水流交絡が施されていないので、低交絡状態が維持されて低交絡部4となっている。繊維集合体の坪量にもよるが、2.0〜15.0MPa程度の水圧でジェット水流を噴射することで、満足すべき高交絡状態が得られる。
【0030】
ノズルヘッド19a,19bは同振幅で互いに反対方向へ同速度で往復運動をしている。往復運動の周期は1/2周期ずれている。各ノズルヘッド19a,19bの往復運動が等速運動である場合には、ノズルヘッド19aによって図4に示す正弦波曲線のパターンからなる高交絡部5aが形成され、ノズルヘッド19bによって同図に示す正弦波曲線のパターンからなる高交絡部5bが形成される。両者の正弦波曲線のパターンを重畳したものが最終的に得られる高交絡部5のパターンとなり、そのパターンが図4に示されている。
【0031】
一方、図1及び図3に示す格子状のパターンからなる高交絡部5を形成するためには各ノズルヘッド19a,19bの往復運動を変速運動とすればよい。その場合には、ノズルヘッド19aによって図5に示す三角波のパターンからなる高交絡部5aが形成され、ノズルヘッド19bによって同図に示す三角波のパターンからなる高交絡部5bが形成される。両者の三角波のパターンを重畳したものが最終的に得られる高交絡部5のパターンとなり、そのパターンが図5に示されている。
【0032】
このようにして低交絡部4及び高交絡部5を有する繊維集合体2を備えた清掃用シート1が得られる。この状態のシート1はサクションボックス20によって水分が除去されているものの未だ含水状態にあるので、これを乾燥部10Dに導入して更に水分を除去して乾燥状態にする。このようにして目的とする清掃用シート1が得られる。
【0033】
得られた清掃用シートは、フローリング等の床面の清掃に特に好適に用いられる。また比較的広い面積のテーブルや机などの家具、テレビやビデオデッキ、冷蔵庫などの家電製品等の清掃に用いることもできる。
【0034】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態における各低交絡部4は同形状であったが、形状の異なる2種以上の低交絡部を形成してもよい。
【0035】
また前記実施形態においては、繊維集合体2内に網状シート3が配置されていたが、所望の保形性や強度が保たれる範囲において網状シートを用いる必要はない。特に本実施形態のシート1には、強度や保形性を維持する作用を有する高交絡部5が形成されているので、網状シート3を用いなくても所望の保形性や強度を維持することができる。
【0036】
また、前記実施形態のシート1はその表裏に凹凸が形成されていない実質的に平坦なものであったが、これに代えて、本出願人の先の出願に係る特許第3537775号明細書に記載されているような多数の凸部及び凹部を有する清掃用シートに低交絡部及び高交絡部を形成してもよい。
【0037】
また前記実施形態の製造方法においては、一連の製造ラインの中で閉じた形状の高交絡部5を形成したが、これに代えて、先ず低交絡体6に、一方向に延び且つ所定の間隔で形成された直線又は曲線状の第1の高交絡部群を形成し、一旦巻き取った後、又は巻き取らずに引き続いて、第1の高交絡部群が形成された低交絡体6の搬送方向を変えて(例えば90度変えて)、一方向に延び且つ所定間隔で形成された直線又は曲線状の第2の高交絡部群を、第1の高交絡部群と交差するように形成してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0039】
〔実施例1〕
ポリエステル繊維(1.3デニール(1.4dtex)×38mm/2.0デニール(2.2dtex)×51mm=70%/30%)を原料とし、常法のカード法を用い坪量27g/m2 の繊維ウエブを得た。網状シートとしてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8mm、線径300μm)を用いた。網状シートの上下に繊維ウエブを重ね合わせた後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で交絡一体化し、繊維集合体を有する低交絡体を得た。
【0040】
次いで低交絡体に、一方向に延びる直線状の第1の高交絡部群を等間隔で形成した。各高交絡部の幅は2mmで、隣り合う高交絡部間のピッチは40mmであった。ジェット水流の水圧は2〜15MPaであった。高交絡部は、低交絡体の流れ方向に対して45度傾斜するように形成した。引き続き、同交絡条件にて、第1の高交絡部群と直交する直線状の第2の高交絡部群を形成した。第2の高交絡部の幅及びピッチは第1の高交絡部と同様であった。このようにして菱形の低交絡部が高交絡部で囲繞されたシートを得た。その後、流動パラフィンとノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)9:1(重量比)からなる油剤をシートに対して5重量%塗布して清掃用シートを得た。
【0041】
得られた清掃用シートを乾燥させた後、流動パラフィン90 %とノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)10%とからなる油剤をシートに対して5%塗工した。
【0042】
〔実施例2〕
ポリエステル繊維(1.3デニール(1.4dtex)×38mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量29g/m2の繊維ウエブを得た。また高交絡部を幅2mm、ピッチ30mmで形成した。高交絡部は、低交絡体の流れ方向及び幅方向にそれぞれ一致するように形成した。これら以外は実施例1と同様にして清掃用シートを得た。
【0043】
〔比較例1〕
実施例2において、水圧2〜15MPaの条件で高交絡の水流交絡を行い高交絡体を得た。その後の高交絡部の形成は行わなかった。これら以外は実施例2と同様にして清掃用シートを得た。
【0044】
〔比較例2〕
実施例1において、低交絡体の製造後、高交絡部の形成を行わなかった以外は実施例1と同様にして清掃用シートを得た。
【0045】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた清掃用シートについて、低交絡部の面積及び面積率を測定した。また以下の方法で低交絡部及び高交絡部の交絡係数を測定した。更に7種ダストの捕集性能、髪の毛の捕集性能、毛糸の捕集性能、繊維脱落量を以下の方法で評価、測定した。これらの結果を表1に示す。
【0046】
〔交絡係数〕
低交絡部及び高交絡部からそれぞれ格子状ネットを抜き取り繊維集合体のみとし、繊維配向と直交方向に幅15mmのサンプルを切り出した。このサンプルを引張試験機によって50mmのチャック間距離で把持し、繊維配向と直交方向に30mm/min の速度で引っ張り、サンプルの伸びに対する引張荷重値を測定した。そして、引張荷重値F(g)を、サンプル幅(m)と繊維集合体の坪量W(g/m2)で割った値を応力S(m)として応力−ひずみ(伸度)曲線を求めた。
応力S(m)=(F/0.015)/W
【0047】
繊維の絡合のみからなる繊維集合体は、この応力−ひずみ(伸度)曲線の初期に直線関係が成り立つ。この直線の傾きを求め、その値を交絡係数E(m)とした。例えば、図6のような応力−ひずみ(伸度)曲線において、比例限界をPとし、このPにおける応力をSP 、ひずみ(伸度)をγP とすると、交絡係数はE=SP /γP で示される。(SP =60m、γ=86%であるとき、E=60/0.86=70mとなる。)ただし、このOPは厳密には直線にはならないこともあるので、その際には直線に近似する必要がある。
【0048】
〔土ほこりの捕集性能〕
クイックルワイパー(花王(株)製)にシートを装着した。90cm×90cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上に、土ほこりのモデルとしてのJIS試験用ダスト7種(関東ローム層、細粒)を0.03g散布し(ハケを用いて全面に均一散布)、フローリングを1往復で3列清掃した。更に反対側から1往復で3列清掃した。その後、残ったダストをフローリングから取り除いた。この操作を連続4回した後、汚れたシートの重量を測定した。この重量から清掃前のシートの重量を差し引いてダストの捕集量を算出した。捕集されたダストの重量を、散布した全ダスト重量(0.12g=0.03g×4回)で除し、これに100を乗じて、その値を土ほこりの捕集率(%)とした。この値が60以上であれば満足すべき土ほこりの捕集性を有すると判断される。そこで表1には、土ほこりの捕集率の値と共にその値が60以上の場合には「○」を、60未満の場合には「×」を併記した。
【0049】
〔髪の毛の捕集性能〕
クイックルワイパー(花王(株)製)にシートを装着した。30cm×60cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上に約20cmの髪の毛を10本散布した。その上にシートを乗せて一定のストローク(60cm)で1往復清掃してシートに捕集された髪の毛の本数を測定した。この操作を3回実施して、30本中何本の髪の毛が捕集されたかを測定した。捕集された髪の毛の数を30で除し、これに100を乗じて、その値を髪の毛の捕集率(%)とした。この値が80以上であれば満足すべき髪の毛の捕集性を有すると判断される。そこで表1には、髪の毛の捕集率の値と共にその値が80以上の場合には「○」を、80未満の場合には「×」を併記した。
【0050】
〔毛糸の捕集性能〕
クイックルワイパー(花王(株)製)にシートを装着した。360cm×270cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)の上に、市販アクリル100%毛糸を3mmにカットしたものを粉ふるい機にて0.5g均一に散布した。たたみ1畳分の面積を12分割し、各分割部を1往復清掃し、次の分割部を清掃する作業を繰り返して、すべての分割部を清掃した。清掃後のシートの重量を測定し、測定された重量から、清掃前のシートの重量を差し引き、その値を毛糸の捕集量(g)とした。この捕集量を散布量、即ち0.5gで除しパーセントで示したものを捕集率(%)とした(捕集率(%)=捕集量(g)/0.5g×100)。この値が65以上であれば満足すべき毛糸の捕集性を有すると判断される。そこで表1には、毛糸の捕集率の値と共にその値が65以上の場合には「○」を、65未満の場合には「×」を併記した。
【0051】
〔繊維脱落量〕
クイックルワイパー(花王(株)製)にシートを装着した。30cm×60cmのフローリング(松下電工製 KEC6015F)をシートを装着したワイパーで、縦溝に沿って100往復清掃した。清掃後、抜けた繊維を回収し重量測定した。この値が8mg以下であれば脱落量が十分に少ないと判断される。そこで表1には、脱落量の値と共にその値が8mg以下の場合には「○」を、8mg超の場合には「×」を併記した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の清掃用シートは、比較例の清掃用シートとほぼ同等かそれ以上のダスト捕集率を発揮しつつ、比較例の清掃用シートに比較して繊維脱落量が極めて少ないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の清掃用シートの一実施形態における要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す清掃用シートの好適な製造装置を示す模式図である。
【図3】図2に示す製造装置における高交絡部の要部を示す模式図である。
【図4】高交絡部の形成パターンを示す図である。
【図5】高交絡部の別の形成パターンを示す図である。
【図6】応力−歪み曲線の特性線図である。
【符号の説明】
【0055】
1 清掃用シート
2 繊維集合体
3 網状シート
4 低交絡部
5 高交絡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体を具備し、該繊維集合体が、繊維交絡度の低い低交絡部と、該低交絡部よりも繊維交絡度の高い高交絡部とを有し、該低交絡部が該高交絡部によって囲まれている清掃用シート。
【請求項2】
低交絡部の面積の総和が清掃用シートの面積に対して80〜98%である請求項1記載の清掃用シート。
【請求項3】
個々の低交絡部の面積が20〜10000mm2である請求項1又は2記載の清掃用シート。
【請求項4】
低交絡部における繊維の交絡係数が0.05〜0.8N・m/gであり、高交絡部における繊維の交絡係数が0.81〜3.0N・m/gである請求項1ないし3の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
繊維長が30〜70mmの繊維が含まれている請求項1ないし4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
請求項1記載の清掃用シートの製造方法であって、
繊維ウエブを水流交絡させて繊維集合体の低交絡体を形成し、次いで該低交絡体を更に水流交絡させて該低交絡体の交絡状態よりも高交絡状態であり且つ閉じた形状を有する高交絡部を該低交絡体に形成する清掃用シートの製造方法。
【請求項7】
低交絡体を一方向に搬送させた状態下に、搬送方向と直交する方向にわたり多数の噴射ノズルが配置されたノズルヘッドを、搬送方向と直交する方向に往復運動させつつ、噴射ノズルから低交絡体へ向けて高圧ジェット水流を噴射して、低交絡体に高交絡部を形成する請求項6記載の清掃用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−187313(P2006−187313A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381578(P2004−381578)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】