説明

清掃装置及び光学機器

【課題】塵埃を除去することができる清掃装置を提供すること。
【解決手段】帯電粒子を含み揮発性を有する溶液を保持する保持部2と、保持部2に保持された溶液を出力する出力部6と、帯電粒子と逆極性の電位を有し、帯電粒子を引きつけて回収する回収部8とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカメラ等の光学機器用の清掃装置及びその清掃装置を備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃部を備えるアクセサリ装置(清掃装置)が知られている(下記特許文献1参照)。このアクセサリ装置にはレンズマウントが設けられている。このレンズマウントによってアクセサリ装置はカメラボディに設けられたカメラマウントに着脱可能である。
【0003】
清掃部は送風室と吸引室と循環室とを有する。
【0004】
送風室には、円筒電極と、この円筒電極に対向する針状電極とが設けられている。
【0005】
吸引室には、送風室と同様に、円筒電極と、この円筒電極に対向する針状電極とが設けられている。
【0006】
循環室には2つのフィルタが設けられている。一方のフィルタは循環室と送風室との間に配置され、他方のフィルタは循環室と吸引室との間に配置されている。
【0007】
カメラボディのバッテリにより充電されたコンデンサによって針状電極は負に高圧帯電され、円筒状電極は正に高圧帯電される。その結果、円筒状電極と針状電極との間にコロナ放電が発生し、イオン化された空気流が発生する。
【0008】
送風室で発生した空気流は光学フィルタに吹き付けられる。空気流はイオン化されているので、光学フィルタ上に帯電して付着したゴミが除去される。
【0009】
光学フィルタに吹き付けられた空気流は吸引室に吸引される。
【0010】
吸引室に吸引された空気は循環室を介して送風室に戻される。このとき、空気中のゴミはフィルタによって除去される。
【特許文献1】特開2005−295152号公報(段落0027〜0031、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の清掃装置では、静電気により光学フィルタに付着した金属粉、プラスチック粉等のゴミを除去できる。しかし、塗膜、皮膚等の有機物のゴミや、油等によって光学フィルタに付着した金属粉、プラスチック粉等を確実に除去できない。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は塵埃を除去することができる清掃装置及び光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため請求項1の発明の清掃装置は、帯電粒子を含み揮発性を有する溶液を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記溶液を出力する出力部と、前記帯電粒子と逆極性の電位を有し、前記帯電粒子を引きつけて回収する回収部とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載された清掃装置であって、前記出力部は、前記溶液を霧状に噴出する噴霧器、又は、前記溶液を塗布する塗布器であることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1に記載された清掃装置であって、カメラ本体に含まれる光学系による像を撮像する撮像部を密封可能な密封部を含み、前記出力部は、前記密封部により密封された部分に前記溶液を出力することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1に記載された清掃装置であって、レンズ鏡筒の光学系による像が形成されるカメラ本体に形成されたレンズ鏡筒取り付け部に係合可能なマウント部を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載された清掃装置であって、前記溶液に含有される前記帯電粒子には、粒径が10×10−9m以下のものが含まれることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明の光学機器は、請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された清掃装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、塵埃を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1はこの発明の第1実施形態に係る清掃装置をカメラボディに装着した状態を示す概念図、図2は図1に示す清掃装置の構成を示す概念図である。
【0022】
図1に示すように、清掃装置10は交換レンズ型一眼レフカメラのカメラボディ(カメラ本体)91に装着されて使用される。カメラボディ91の前面には図示しない交換レンズ(レンズ鏡筒)を装着するためのレンズマウント92が設けられている。カメラボディ91内には固体撮像素子であるCCD(charge-coupled device)93が収容されている。CCD93の前方にはローパスフィルタ94が配置されている。また、カメラボディ91内にはクイックリターンミラー(図示せず)によって反射された光をファインダへ反射するペンタプリズム95が収容されている。
【0023】
図2に示すように、清掃装置10は清掃装置本体1と溶剤槽(保持部)2とセンターアーム駆動機構3とマウント装着部(マウント部)4とセンターアーム5とノズル(出力部)6とゴミ吸着部(回収部)8とを有する。
【0024】
清掃装置本体1は筐体状である。
【0025】
溶剤槽2は清掃措置本体1内に収容されている。溶剤槽2は例えばナノ粒子含有溶剤を貯える。
【0026】
ナノ粒子含有溶剤は溶剤とナノ粒子と界面活性剤とで構成される。
【0027】
溶剤としては、芳香族、脂肪族系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤が挙げられる。芳香族、脂肪族系溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、高沸点溶剤、ターペン/ナフテン系溶剤等が挙げられる。エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プチル、酢酸イソプチル等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、IPA、グリコール系溶剤等が挙げられる。ケトン系溶剤としてはアセトン、MEK、MIBK、アノン等が挙げられる。
【0028】
ナノ粒子(粒子の粒径がnm(ナノメートル)で示されるもの)としては、金属ナノ粒子、セラミックス粒子、ガラス粒子、プラスチック粒子等が挙げられる。ナノ粒子は例えばプラスに帯電している。
【0029】
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)であるのものと、非イオン性(ノニオン性)であるのものとに大別される。また、界面活性剤は低分子系のものと高分子系のものとに分類されることもある。
【0030】
アニオン性界面活性剤は、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、或いはリン酸構造を持つものが多い。カルボン酸系のものとして、石鹸の主成分である脂肪酸塩やコール酸塩が、スルホン酸系のものとして、合成洗剤に多く使われる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやポリアクリルアミドゲル、電気泳導にも利用されるラウリル硫酸ナトリウム等がある。
【0031】
カチオン性界面活性剤は、親水基としてテトラアルキルアンモニウムを持つものが多い。逆性石鹸等に利用される。
【0032】
双性(両性)界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を持っているもので、上記のそれぞれを組み合わせた構造を持つ。
【0033】
非イオン性(ノニオン性)界面活性剤として、イオン化しない親水性部分を持つもので、アルキルグリコシドのような低分子系のもの、或いはポリエチレングリコールやポリビニルアルコールのような高分子系のものが存在する。
【0034】
陰イオン系(アニオン系)界面活性剤の具体例としては次のものがある。
【0035】
脂肪酸系(陰イオン)−純石けん分(脂肪酸ナトリウム)、純石けん分(脂肪酸カリウム)、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼン系−直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルコール系(陰イオン)−アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィン系−アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、ノルマルパラフィン系−アルキルスルホン酸ナトリウム。
【0036】
非イオン系(ノニオン系)界面活性剤の具体例としては次のものがある。
【0037】
脂肪酸系(非イオン系)−しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、高級アルコール系(非イオン系)−ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェノール系−ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル。
【0038】
両性イオン界面活性剤の具体例としては次のものがある。
【0039】
アミノ酸系−アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、ベタイン系−アルキルベタイン、アミンオキシド系−アルキルアミンオキシド。
【0040】
陽イオン系界面活性剤の具体例としては次のものがある。
【0041】
第四級アンモニウム塩基−アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩。
【0042】
センターアーム駆動機構3は清掃装置本体1内に設けられている。センターアーム駆動機構3はセンターアーム5をx軸方向及びy軸方向(図1、図2参照)へ移動させる。
【0043】
マウント装着部4は清掃装置本体1の前面(カメラボディ91側面)に設けられている。マウント装着部4はカメラボディ91のレンズマウント92に着脱可能である。マウント装着部4がレンズマウント92に固定されることにより、清掃装置1がカメラボディ91に装着される。
【0044】
センターアーム5はほぼ筒状であり、x軸及びy軸に直交するz軸方向(図2参照)へ伸縮可能である。
【0045】
塗布ノズル6の大部分はセンターアーム5に収容され、塗布ノズル6の先端部はセンターアーム5から突出し、他端部は溶剤槽2に接続されている。塗布ノズル6の先端部にはパッド(塗布器)7が設けられている。パッド7はスポンジ状の部材であり、溶剤がパッド7に浸み込む。パッド7をローパスフィルタ94に押しつけると、浸み込んだ溶剤が滲み出る。
【0046】
センターアーム5の先端部にゴミ吸着部8が設けられている。ゴミ吸着部8として所定の電位を発生させるための電極が用いられている。
【0047】
次のこの清掃装置の動作について説明する。
【0048】
予めカメラボディ91から交換レンズを外しておく。
【0049】
まず、図1に示すように、清掃装置のセンターアーム5及びノズル6をカメラボディ91内に挿入するとともに、マウント装着部4をカメラボディ91のレンズマウント92に固定する。このようにして清掃装置10をカメラボディ91に装着する。
【0050】
図示しない清掃スタートボタンを押すと、センターアーム5が伸び、パッド7がローパスフィルタ94に所定の圧力で接触し、その後、センターアーム5とともにパッド7がx軸方向及びy軸方向へ動く。その結果、パット7から滲み出た溶剤(プラスに帯電したナノ粒子を含有する溶剤)がローパスフィルタ94の全面に塗布される。ローパスフィルタ94に塗布された溶剤は皮脂、油等を分解する。
【0051】
溶剤の塗布後、センターアーム5は縮み、パッド7から離れる。溶剤は自然乾燥する。このとき、ナノ粒子はローパスフィルタ94上のゴミに付着する。ナノ粒子はプラスに帯電しているので、ゴミはプラスに帯電する。すなわち、溶剤をローパスフィルタ94に塗布し、乾燥させることによって、ローパスフィルタ94に付着した多種類のゴミは全てプラスに帯電したゴミとなる。
【0052】
溶剤の乾燥後、センターアーム5を伸ばし、ゴミ吸着部8をローパスフィルタ94に近づけるとともに、ゴミ吸着部8をマイナスに帯電させる。その結果、ローパスフィルタ94上のプラスに帯電したゴミが電場の力によってゴミ吸着部8に吸引され、ローパスフィルタ94上のゴミが除去される。
【0053】
以上のように、第1実施形態によれば、ナノ粒子含有溶剤によってローパスフィルタ94上のゴミをプラスに帯電させ、そのゴミをマイナスに帯電したゴミ吸着部8で吸引するので、ゴミの種類にかかわらずローパスフィルタ94上の全てのゴミを確実に除去できる。
【0054】
図3はこの発明の第2実施形態に係る清掃装置の囲い枠がローパスフィルタを覆っている状態を示す概念図である。
【0055】
第1実施形態と共通する部分については同一符号を付してその説明を省略する。以下、主な相違部分についてだけ説明する。
【0056】
第2実施形態では、図3に示すように、センターアーム205の先端部に囲い枠(密封部)211が設けられている。囲い枠211はローパスフィルタ94を囲う。囲い枠211の内面にはシール部材(図示せず)が設けられており、このシール部材によって囲い枠211とローパスフィルタ94との間が水密状態にシールされる。
【0057】
ノズル206の先端部は囲い枠211に接続されており、ノズル206の先端部にはパッドが設けられていない。ノズル206の後端部は溶剤槽(図示せず)に接続されている。
【0058】
センターアーム205はz軸方向へ伸縮するが、x軸、y軸方向へ動かない。
【0059】
次に、清掃装置の動作について説明する。第1実施形態と共通する動作については説明を省略する。
【0060】
図示しない清掃スタートボタンを押すと、センターアーム205が伸び、囲い枠211がローパスフィルタ94に嵌合する。
【0061】
その後、ノズル206を介して溶剤槽内のナノ粒子含有溶剤nが囲い枠211内に供給され、ローパルフィルタ94が前面を溶剤で浸される。
【0062】
その結果、溶剤によって皮脂や油が分解されるとともに、ナノ粒子がゴミに付着し、ゴミがプラスに帯電する。
その後、ゴミ吸着部8をマイナスに帯電させる。その結果、ゴミ込み吸着部8はプラスに帯電したゴミを吸引する。
ゴミ吸引後、囲い枠211内の溶剤をノズル6を介して溶剤槽に戻す。
【0063】
最後に、センターアーム205を縮めて囲い枠211をローパスフィルタ94から外す。
【0064】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0065】
なお、第1実施形態の変形例としては、パッドの代わりに刷毛を用いたものや、パッドの代わりにナノ粒子含有溶剤を霧状にしてローパスフィルタ94に吹き付ける噴霧器を用いたものなどが考えられる。
【0066】
また、第1実施形態ではセンターアーム5によってノズル6をx軸方向及びy軸方向へ移動できるようにしたが、パッド7の大きさがローパスフィルタ94の大きさとほぼ同じ場合やパッド7の代わりに噴霧器を用いた場合には、ノズル6をx軸方向及びy軸方向へ移動できるようにしなくともよい。
【0067】
なお、第1実施形態では、ナノ粒子含有溶剤をパッド7によってローパスフィフィルタ
に塗布した後、ナノ粒子含有溶剤を自然乾燥させたが、ブロアやヒーター等を用いてナノ粒子溶剤を強制的に乾燥させてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、ゴミをプラスに帯電させる溶剤としてナノ粒子含有溶剤を用いたが、溶剤はこれに限られず、ナノ粒子よりも大きな粒子を含有した溶剤であってもよく、要はゴミを帯電させることができるものであればよい。
【0069】
なお、上述の実施形態では、ナノ粒子によってゴミをプラスに帯電させ、ゴミ吸着部8をマイナスに帯電させたが、ゴミをマイナスに帯電させ、ゴミ吸着部8をプラスに帯電させてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態は、ローパスフィルタ94を清掃するものであるが、清掃の対象物はローパスフィルタ94に限られず、ローパスフィルタ94が設けられていない場合等、CCD93を清掃対象物とすることもできる。
【0071】
なお、上述の実施形態では、清掃装置をカメラボディに装着して使用するようにしたが、清掃装置を小型化し、カメラボディに設けて、清掃装置内蔵のカメラとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係る清掃装置をカメラボディに装着した状態を示す概念図である。
【図2】図2は図1に示す清掃装置の構成を示す概念図である。
【図3】図3はこの発明の第2実施形態に係る清掃装置の囲い枠がローパスフィルタを覆っている状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0073】
1:清掃装置本体、2:溶剤槽(保持部)、4:マウント装着部(マウント部)、5:センターアーム、6:ノズル(出力部)、7:パッド(塗布器)、8:ゴミ吸着部(回収部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電粒子を含み揮発性を有する溶液を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記溶液を出力する出力部と、
前記帯電粒子と逆極性の電位を有し、前記帯電粒子を引きつけて回収する回収部とを含むことを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載された清掃装置であって、
前記出力部は、前記溶液を霧状に噴出する噴霧器、又は、前記溶液を塗布する塗布器であることを特徴とする清掃措置。
【請求項3】
請求項1に記載された清掃装置であって、
カメラ本体に含まれる光学系による像を撮像する撮像部を密封可能な密封部を含み、
前記出力部は、前記密封部により密封された部分に前記溶液を出力することを特徴とする清掃装置。
【請求項4】
請求項1に記載された清掃装置であって、
レンズ鏡筒の光学系による像が形成されるカメラ本体に形成されたレンズ鏡筒取り付け部に係合可能なマウント部を含むことを特徴とする清掃装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載された清掃装置であって、
前記溶液に含有される前記帯電粒子には、粒径が10×10−9m以下のものが含まれることを特徴とする清掃装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された清掃装置を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−160656(P2008−160656A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349331(P2006−349331)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】