説明

減衰力調整式緩衝器

【課題】減衰力調整式緩衝器において、減衰力の制御精度を高める。
【解決手段】作動流体が封入されたシリンダ内に、ピストンロッドが連結されたピストンを挿入し、ピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを減衰力調整機構24のパイロット型のメインバルブ41,50によって制御して減衰力を発生させる。ソレノイドアクチュエータ38によりスプール61を移動させてパイロット室44、53の内圧を変化させることより、減衰力を調整する。パイロット室44、53の背部にセンサ室72、73を設け、これらの室の隔壁70,71に歪センサ74,75を装着する。コントローラにより、歪センサ74,75が検出する隔壁70,71の歪に基づき、パイロット室44,53の圧力を演算し、パイロット室45,53の圧力に基づいてソレノイドアクチュエータ38に制御電流を供給して減衰力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰力特性を調整可能な減衰力調整式緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のサスペンション装置に装着される緩衝器は、一般的に、流体が封入されたシリンダ内にピストンロッドが連結されたピストンを摺動可能に挿入し、ピストンロッドのストロークに対して、シリンダ内のピストンの摺動によって生じる流体の流れをオリフィス、ディスクバルブ等からなる減衰力発生機構によって制御して減衰力を発生させるようになっている。また、ソレノイドバルブを用いて減衰力発生機構の流路を開閉しすることにより、ソレノイドへの通電電流によって減衰力特性を調整可能とした減衰力調整式緩衝器がある。
【0003】
例えば特許文献1に記載された油圧緩衝器では、減衰力発生機構であるメインディスクバルブの背部に背圧室(パイロット室)を形成し、流体の流れの一部を背圧室に導入し、メインディスクバルブに対して、背圧室の内圧を閉弁方向に作用させ、ソレノイドバルブ(パイロット弁)によって背圧室の内圧を調整することにより、メインディスクバルブの開弁を制御するようにしている。これにより、減衰力特性の調整の自由度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−193013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に減衰力調整式緩衝器では、減衰力調整用のソレノイドバルブとして、スプール弁等の流量制御弁、又は、ポペット弁等の圧力制御弁が使用されている。ソレノイドバルブとして流量制御弁を用いるものでは、通電電流によって作動流体の流路面積を変化させることにより減衰力を調整する。この場合、実際の減衰力は、ピストン速度に依存して変化するが、所定のピストン速度でピストンが動作していると仮定して流路面積を変化させている。しかし、車両走行中にピストン速度は時々刻々と変化するため、正確な減衰力制御を行うことは困難である。一方、ソレノイドバルブとして圧力制御弁を用いるものは、ピストン速度にかかわらず減衰力を直接制御することができ、減衰力の制御精度が高い。しかしながら、圧力制御弁の弁体には、車両走行中には、常時高い圧力が作用するため、高出力のソレノイドが必要であり、ソレノイドの大型化及び消費電力の増大が問題となる。
【0006】
本発明は、正確な減衰力制御が可能な減衰力調整式緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を発生させ、その減衰力を調整可能とした減衰力調整機構と、前記減衰力調整機構の減衰力を調整するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラとを備えた減衰力調整式緩衝器において、
作動流体の圧力によって歪を生じる部分に歪検出手段を設け、前記コントローラは、前記歪検出手段の検出信号に基づき、前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る減衰力調整式緩衝器によれば、正確な減衰力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る減衰力調整式緩衝器の縦断面図である。
【図2】図1に示す減衰力調整式緩衝器の減衰力調整機構を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2に示す減衰力調整機構の伸び側の減衰弁を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る減衰力調整式緩衝器1は、シリンダ2の外側に外筒3が設けられた二重筒構造になっており、シリンダ2と外筒3との間にリザーバ4が形成されている。シリンダ2内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されており、このピストン5によってシリンダ2内がシリンダ上室2aとシリンダ下室2bの2室に画成されている。ピストン5には、ピストンロッド6の一端がナット7によって連結されており、ピストンロッド6の他端側は、シリンダ上室2aを通り、シリンダ2および外筒3の上端部に装着されたロッドガイド8およびシール部材9に挿通されてシリンダ2の外部へ延出されている。シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2bとリザーバ4とを区画するベースバルブ10が設けられている。そして、シリンダ2内には油液が封入されており、リザーバ4内には油液およびガスが封入されている。
【0011】
ピストン5には、シリンダ上下室2a,2b間を連通させる油路11,12が設けられている。油路11には、シリンダ下室2b側からシリンダ上室2a側への油液の流通のみを許容する逆止弁13が設けられている。油路12には、シリンダ下室2b側の油液の圧力が所定圧力に達したとき、開弁してこれをシリンダ上室2a側へリリーフするリリーフ弁14が設けられている。また、ベースバルブ10には、シリンダ下室2bとリザーバ4とを連通させる油路15,16が設けられている。油路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2b側への油液の流通のみを許容する逆止弁17が設けられている。油路16には、シリンダ下室2b側の油液の圧力が所定圧力に達したとき、開弁してこれをリザーバ4側へリリーフするリリーフ弁18が設けられている。
【0012】
シリンダ2の外周には、略円筒状の通路部材19が嵌合されて、シリンダ2と通路部材19との間に環状油路20,21が形成されている。環状油路20は、シリンダ2の上端部付近の側壁に設けられた油路22を介してシリンダ上室2aに連通され、環状油路21は、シリンダ2の下端部付近の側壁に設けられた油路23を介してシリンダ下室2bに連通されている。外筒3の側面部には、減衰力調整機構24が取付けられており、減衰力調整機構24のケース25に設けられた3つの接続ポート26,27,28が、それぞれ接続管29,30,31を介して環状油路20,21およびリザーバ4に接続されている。
【0013】
減衰力調整機構24について、主に図2及び図3を参照して説明する。
図2に示すように、減衰力調整機構24は、スリーブ32が挿通されてナット33によって一体に結合された4つのバルブボディ34,35,36,37が、略有底円筒状のケース24内に嵌合され、ケース24の開口部に比例ソレノイドアクチュエータ38(以下、アクチュエータ38という)が取付けられて、ケース24の内部がバルブボディ34,36によって、接続ポート26,27,28にそれぞれ連通する3つの油室24a,24b,24cに区画されている。スリーブ32は、アクチュエータ38に螺着され、その内部にアクチュエータ38の作動ロッド39が挿入されている。
【0014】
バルブボディ34には、油室24a,24b間を連通させる油路40が設けられている。油路40には、油室24a側の油液の圧力を受けて開弁して、その開度に応じた減衰力を発生させるパイロット型減衰弁であるメインバルブ41(ディスクバルブ)が設けられている。メインバルブ41には、ディスク状の複数のシール部材42が積層され、シール部材42と、バルブボディ35およびバルブボディ35に外嵌された環状のシート部材43によって、メインバルブ41の背面側にパイロット室44が形成されており、パイロット室44の内圧がメインバルブ41の閉弁方向に作用するようになっている。パイロット室44は、シール部材42に設けられた固定オリフィス45を介して油路40に連通され、また、スリーブ32の側壁に設けられたポート46に連通されている。スリーブ32には、ポート46とは軸方向に異なる位置に、油室24bに連通するポート47が設けられている。
【0015】
バルブボディ36には、油室24b,24c間を連通させる油路48が設けられている。油路48には、油室24b側の油液の圧力を受けて開弁して、その開度に応じた減衰力を発生させる上流側のサブバルブ49(ディスクバルブ)および下流側のメインバルブ50(ディスクバルブ)が設けられている。メインバルブ50には、ディスク状の複数のシール部材51が積層され、シール部材51と、バルブボディ37およびバルブボディ37に外嵌された環状のシート部材52によって、メインバルブ50の背面側にパイロット室53が形成されており、パイロット室53の内圧がメインバルブ50の閉弁方向に作用するようになっている。パイロット室53は、シール部材51に設けられた固定オリフィス54を介して油路48に連通され、また、スリーブ32の側壁に設けられたポート55に連通されている。スリーブ32には、ポート55とは軸方向に異なる位置に、油室24cに連通するポート56が設けられている。なお、サブバルブ49の開弁圧力は、メインバルブ50の開弁圧力よりも充分小さく設定されている。
【0016】
スリーブ32内には、ポート46,47およびポート55,56にそれぞれに対向する環状溝59,60を有するスプール61が摺動可能に嵌装されている。スプール61は、一端部が戻しバネ62に当接され、他端部がアクチュエータ38の作動ロッド39に当接されており、アクチュエータ38の推力に応じて戻しバネ62のバネ力に抗して移動して、ポート46,47間およびポート55,56間の流路面積を調整するようになっている。
【0017】
図3を参照して(図3には、伸び側のバルブボディ35のみを示す)、バルブボディ35,37には、それぞれパイロット室44,53の背部に隔壁70,71を挟んでセンサ室72,73が形成されている。センサ室72,73の内部は、パイロット室44,53及びケース25内の油室24b、24cに対して完全にシールされて大気圧となっている。センサ室72,73内の隔壁70,71には、歪検出手段として歪センサ74,75が装着されている。歪センサ74,75は、パイロット室44,53と、センサ室72,73との差圧によって隔壁70,71に生じる歪を検出するように計測方向及び計測感度が設定されている。センサ室72には、導管76,77の一端部が接続され、導管76,77の他端部は、ケース25の側壁を貫通して外部に開口している。歪センサ74,75には、信号線78,79が接続され、信号線78,79は、導管76,77に挿通されて外部へ延出され、コントローラ(図示せず)に接続されている。
【0018】
歪センサ74、75としては、金属薄膜による通常の歪ゲージを用いることができるが、ここでは、半導体歪ゲージを用いることが望ましい。従来から知られている通常の歪ゲージは、Cu−Ni系合金やNi−Cr系合金の金属薄膜の配線パターンを可撓性のあるポリイミドやエポキシ樹脂フィルムで覆った構造である。歪ゲージは、被測定物に接着剤で接着して使用し、金属薄膜が歪を受けて変形した時の抵抗変化から歪量を算出するものである。また、金属薄膜の歪ゲージでは、抵抗変化が小さいため、得られる電気信号を増幅する必要があり、そのため外部のアンプが必要となる。
【0019】
これに対して、半導体歪ゲージは、検知部が金属薄膜ではなく、シリコン等の半導体に不純物をドープして形成した半導体ピエゾ抵抗を利用したものである。半導体歪ゲージは、歪に対する抵抗変化率が金属薄膜を用いた従前の歪ゲージの数十倍と大きく、微小な歪、例えば、1με程度の歪を測定することが可能である。また、半導体歪ゲージは抵抗変化が大きいため、得られた電気信号を外部のアンプを用いずに使用することもでき、また、半導体歪ゲージの数ミリ角のチップにアンプ回路や温度センサ及び温度補償回路等を作りこむことも可能である。さらには、無線回路等を設けて、被接触でデータを取り出すことも可能である。
【0020】
この半導体歪ゲージは、被測定物に接着剤や金属接合により固定することも可能であり、また、半導体歪ゲージを金属板に接着し、スポット溶接により固定することも可能である。
【0021】
本実施形態においては、半導体歪ゲージを用いることにより、通常の金属薄膜による歪ゲージを用いた場合に比して、歪量の測定精度を高め、また、取付スペースを小さくすることができるので、半導体歪ゲージを用いることが望ましいが、必要な測定精度及び取付スペースが得られれば、通常の歪ゲージを用いてもよい。
【0022】
次に、減衰力調整式緩衝器1の作動ついて説明する。ピストンロッド6の伸び行程時には、ピストン5の移動にともないピストン15の油路11の逆止弁13が閉じてシリンダ上室2a側の油液が加圧され、メインバルブ41の開弁前においては、油路22、環状油路20および接続管29を通って減衰力調整機構24の接続ポート26へ流れ、さらに、油室24a、油路40、固定オリフィス45、パイロット室44、ポート46、環状溝59、ポート47、油室24b、接続ポート27、接続管30、環状油路21および油路23を通ってシリンダ下室2b側へ流れる。そして、シリンダ上室2a側の圧力がメインバルブ41の開弁圧力に達すると、メインバルブ41が開いて油液が油路40から油室24bへ直接流れる。このとき、ピストンロッド6がシリンダ2から退出した分の油液がリザーバ4からベースバルブ10の油路15の逆止弁17を開いてシリンダ下室2bへ流れる。
【0023】
これにより、伸び行程時には、ピストン速度が低く、メインバルブ41の開弁前には、固定オリフィス45およびスプール弁のポート46,47間の流路面積に応じてオリフィス特性の減衰力が発生し、ピストン速度が高まり、シリンダ上室2a側の圧力が上昇してメインバルブ41が開くと、その開度に応じてバルブ特性の減衰力が発生する。そして、アクチュエータ38によってスプール61を移動させて、ポート46,47間の流路面積を調整することにより、オリフィス特性を直接調整するとともに、ポート46,47間の圧力損失によってパイロット室44の圧力(メインバルブ41の閉弁方向に作用する圧力)を変化させてバルブ特性を調整する。
【0024】
ピストンロッド6の縮み行程時には、ピストン5の移動にともない、ピストン5の逆止弁13が開いてシリンダ下室2bの油液が油路11を通ってシリンダ上室2aに直接流入することによってシリンダ上下室2a,2bがほぼ同圧力となるので、減衰力調整機構24の接続ポート26,27間では油液の流れが生じない。そして、ピストンロッド6のシリンダ2への侵入にともなってベースバルブ10の逆止弁17が閉じ、ピストンロッド6が侵入した分、シリンダ2内の油液が加圧されて、メインバルブ41の開弁前においては、シリンダ下室2bから、油路23、環状油路21および接続管30を通って減衰力調整機構24の接続ポート27へ流れ、さらに、油室24b、油路48、固定オリフィス54、パイロット室53、ポート55、環状溝60、ポート56、油室24c、接続ポート28および接続管31を通ってリザーバ4へ流れる。そして、シリンダ上室2a側の圧力がメインバルブ41の開弁圧力に達すると、メインバルブ41が開いて油液が油路48から油室24cへ直接流れる。
【0025】
これにより、縮み行程時には、ピストン速度が低く、メインバルブ50の開弁前には、サブバルブ49、固定オリフィス54およびスプール弁のポート55,56間の流路面積に応じてオリフィス特性の減衰力が発生し、ピストン速度が高まり、シリンダ上室2a側の圧力が上昇してメインバルブ50が開くと、その開度に応じてバルブ特性の減衰力が発生する。そして、アクチュエータ38によってスプール61を移動させて、ポート55,56間の流路面積を調整することにより、オリフィス特性を直接調整するとともに、ポート55,56間の圧力損失によってパイロット室44の圧力(メインバルブ50の閉弁方向に作用する圧力)を変化させてバルブ特性を調整する。
【0026】
次にコントローラによる減衰力調整式緩衝器1の減衰力制御について説明する。
コントローラは、歪センサ74,75を含む各種センサによって検出した隔壁70,71の歪、車両車速、車両加速度、ステアリング操舵角度、車両ブレーキの作動、バネ上加速度、バネ上バネ下間の相対変位及び相対速度等の車両走行状態を表す検出信号を受信し、これらをスカイフック制御等のサスペンション制御理論に基づく所定の論理規則に従って処理し、車両走行状態に応じて各車輪の減衰力調整式緩衝器1に対して目標減衰力を演算し、その減衰力調整機構24のアクチュエータ38に制御電流を供給する。このとき、コントローラは、歪センサ74,75によって検出した検出信号に基づき、隔壁70,71の歪を検出し、隔壁70,71の歪から演算処理により、パイロット室44,53の圧力を求め、さらに、パイロット室44,53の圧力から減衰力調整式緩衝器1によって発生する減衰力を演算する。そして、減衰力調整式緩衝器1の減衰力が目標減衰力となるようにアクチュエータ38への制御電流を決定する。
【0027】
これにより、スプール61によってポート46,47間及びポート47,56間の流路面積を調整する流量制御弁を用いていながら、歪センサ74,75によって検出したパイロット室44,53の圧力に基づき、実際の減衰力を演算して減衰力制御を実行することができるので、減衰力制御の精度を高めることができ、車両の操縦安定性及び乗心地を効果的に向上させることができる。
【0028】
この場合、歪センサ7475,75からの検出信号及び現在のアクチュエータ38への供給電流からピストン速度を演算し、このピストン速度及び目標減衰力からアクチュエータ38に供給すべき制御電流を決定するようにしてもよい。このとき、演算ピストン速度を、遅い、中間、速い等の複数段階に分け、この段階に応じて予め設定した減衰力と供給電流との関係を用いて制御を実行してもよい。これにより、あるピストン速度における減衰力と供給電流との関係を用いて制御していた従来の流量制御弁を用いたサスペンション制御システムに対して、ピストン速度を考慮することにより、減衰力制御の精度を高めることができ、高精度の操縦安定性、乗り心地及び姿勢の制御が可能となる。
【0029】
更に、図2中に仮想線(二点鎖線)で示すように、アクチュエータ38の作動ロッド39に歪センサ80を装着して、作動ロッド39の歪を検出するようにしてもよい。これにより、作動ロッド39の歪に基づき、アクチュエータ38の推力を得ることができる。この場合、歪センサ80の検出信号は、作動ロット39の動きを妨げないように信号線81、又は、無線通信によってコントローラに送信する。
【0030】
歪センサ80は、アクチュエータ38の推力による作動ロッド39の歪に加えて、油液の流れによってスプール61に励起される高周波振動をスプール61に連結された作動ロッド39の歪の変動として検出する。アクチュエータ38の推力による低周波成分にスプール61の高周波振動成分が重畳された歪センサ80の検出信号からフィルタ処理等によって各成分を抽出する。そして、低周波成分を用いた減衰力制御のためのアクチュエータ38の推力制御に加えて、高周波成分を用いて、アクチュエータ38の出力がスプール61の高周波振動成分を打消すように、アクチュエータ38への制御電流に高周波成分を重畳する。これにより、スプール61の高周波振動を抑制することができ、車両の乗心地を向上させることができる。
【0031】
なお、歪センサ74、75は、上記実施形態では、センサ室72,73内に取付けられているが、パイロット室44、53内に直接取付けるようにしてもよい。また、歪センサをシリンダ2の上部側及び下部側に設けて、これらの歪センサにより、シリンダ上下室2a、2bの内圧によるシリンダ2の歪を検出し、これによりピストン速度を演算して減衰力制御を行うことができる。また、シリンダ内の圧力の差分を減衰力として、フィードバック制御を行うこともできる。この場合、上部側の歪センサと下部側の歪センサの検出信号の差分を用いることで、曲げ力等のノイズをキャンセルすることが可能となる。このように、シリンダ上室2a又はシリンダ下室2bの圧力によって歪が生じる部位に歪センサを設けることにより、減衰力制御が可能となる。
【0032】
上記実施形態では、一例として主減衰バルブの開弁特性を調整するパイロット圧を流量制御弁によって制御するパイロット型の減衰力調整式緩衝器について説明したが、本発明は、これに限らず、ピストン部等に主減衰バルブを設け、この主減衰バルブをバイパスする通路を設け、このバイパス通路の流路面積をアクチュエータにより調整する減衰力調整式緩衝器にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…減衰力調整式緩衝器、2…シリンダ、5…ピストン、6…ピストンロッド、24…減衰力調整機構、38…ソレノイドアクチュエータ(アクチュエータ)、74,75…歪センサ(歪検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を発生させ、その減衰力を調整可能とした減衰力調整機構と、前記減衰力調整機構の減衰力を調整するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラとを備えた減衰力調整式緩衝器において、
作動流体の圧力によって歪を生じる部分に歪検出手段を設け、前記コントローラは、前記歪検出手段の検出信号に基づき、前記アクチュエータを制御することを特徴とする減衰力調整式緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72550(P2013−72550A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214706(P2011−214706)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】