説明

減速機異常診断方法及び減速機異常診断装置

【課題】本発明は、定量的な判断基準を導入することで、異常の診断を正確に行うことができる減速機異常診断方法及び減速機異常診断装置を提供する。
【解決手段】モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、減速機に関する外乱推定値を推定するオブザーバ23と、外乱推定値の周波数成分からクランク軸の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出するスペクトル特定手段24と、スペクトル特定手段24により特定された特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、特定スペクトルの振幅がしきい値を超えた場合を異常と診断し、特定スペクトルの振幅がしきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断する診断手段25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素、例えば、内歯歯車に噛み合う外歯歯車を偏心回転させるためのクランク軸を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断方法及び減速機異常診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機異常診断方法として、診断対象部分に取り付けられたセンサの情報に基づいて減速機の異常を診断する方法がある。この診断方法は、非破壊的にロボットや工作機械などの異常の発見を行うことができる点で非常に有効な方法である半面、異常を生じた後の事後的な発見となるため種々の不都合があった。例えば、減速機を直して、ロボットを復旧させるまで非常に多くの時間がかかっていた。また、生産現場において、ロボットなど稼働しているときに異常が発見された場合には、ロボットが復旧するまで生産ラインを停止させなければならなかった。
【0003】
そこで、事前に異常を予知することで、上記問題を回避することができる異常診断方法の一例として、特許文献1に開示されている方法が知られている。この発見方法は、ロボットの自由端に設けた振動センサによって診断対象となる関節部の振動パターンを検出し、検出された振動パターンを正常なロボットの振動パターンと比較し、その比較結果を判断することで関節部の異常を事前に予知するものである。関節部の異常は、軸受や歯車や減速機の摩耗劣化などによる異常である。関節部の異常は、異常時と正常時の振動波形の周波数成分の平均値、ピーク値などを比較することによって診断されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−52712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の方法では、センサにより検出された信号には種々のノイズが含まれているため、関節部の診断に有効とされる信号のみが直接的に抽出されず、検出された信号から異常の発生を正確に予知することができない心配があった。言い換えると、従来の方法は、センサにより検出された信号の周波数成分と正常時の周波数成分との差が大きければ故障間近とするものであるが、診断検出信号にノイズなどが含まれている場合には、関節部の異常を反映させる信号とノイズとが混ざった状態となり、関節部の異常時と正常時の違いを明確に区別できない恐れがあった。
【0006】
また、センサにより検出された信号は重力の影響を受けて変化するため、関節部の位置・姿勢によっては、検出された信号の大きさが一定せず、診断結果の信頼性が損なわれるという問題があった。
【0007】
また、ロボットや工作機械などに異常を検出するためのセンサを取り付ける必要があり、センサ購入費用の分だけ余計にコストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、定量的な判断基準を導入することで、異常の診断を正確に行うことができ、これにより機械の稼働率を高めて生産性を向上することができる減速機異常診断方法及び減速機異常診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明の請求項1の発明は、入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断方法において、モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、前記減速機に関する外乱推定値をオブザーバにより推定し、周波数解析により得られた前記外乱推定値の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出し、該特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断方法において、モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得された速度フィードバックに基づいて加速度を算出し、周波数解析により得られた前記加速度の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出し、該特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の減速機異常診断方法において、前記しきい値は、前記中間軸要素が正常であるときに、周波数解析により得られた前記外乱推定値又は前記加速度の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応して抽出されたスペクトルの振幅に相当する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の減速機異常診断方法において、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えたとき、前記減速機が異常である情報を外部に出力する。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の減速機異常診断方法において、前記減速機を備えたロボットのモデルを表示する表示装置の画面上で、前記減速機を示す部分のみを強調表示して異常を知らせる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の減速機異常診断方法において、前記減速機の異常を診断する際に、前記減速機を備えたロボットのモデルを表示する表示装置の画面上で、前記減速機を示す部分を指定して異常の診断を開始する。
【0015】
請求項7の発明は、入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断装置において、モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、前記減速機の入力側で前記減速機に関する外乱推定値を推定するオブザーバと、前記外乱推定値の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出するスペクトル特定手段と、前記スペクトル特定手段により特定された前記特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断する診断手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1又は7記載の発明によれば、減速機の動作状態を反映させる外乱推定値を用いて診断することで、ノイズがデータに含まれることを排除することができ、これにより、減速機の異常を直接的かつ正確に診断することができる。また、外乱推定値はオブザーバにより推定されるから、重力の影響を含まないデータを取得することができ、これにより、ロボットや工作機械などの位置・姿勢に影響されずに、減速機の異常を正確に診断することができる。中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する周波数で外乱推定値の特定スペクトルを抽出することで、減速機の異常を診断するための最適なスペクトルをサンプリングすることができる。したがって、定量的な判断基準に基づいて、減速機の異常の診断を正確に実施することができる。これにより、機械の稼働率を高めて生産性を向上することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、減速機の動作状態を反映させる加速度を用いることによっても、減速機の異常を正確に診断することができる。したがって、請求項1記載の発明と同様の効果を奏し、定量的な判断基準に基づいて、減速機の異常の診断を正確に行うことができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、特定スペクトルの振幅がしきい値と同程度ないしはそれより小さいときは、減速機が正常であると診断することができる。逆に、特定スペクトルの振幅がしきい値を超えるときは、減速機が異常であると判断することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、アラームライトやアラーム音などにより、減速機が異常である情報を外部に出力することで、工場の作業者等が減速機の異常を認識することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、減速機の異常を視覚的に認識することができ、作業性が向上する。また、請求項6記載の発明によれば、表示装置の画面上で減速機を示す部分を指定することで異常の診断を開始することができるから、ロボットに対して減速機の異常診断を容易に開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る減速機異常診断装置の一実施形態を含むシステム構成図である。減速機異常診断装置2は、入力軸としてのクランク軸の故障などの異常を図示しない減速機の異常と擬制する診断装置であり、ロボット5を制御する装置本体3と、装置本体3との間で信号の送受信を行う端末装置4とから構成されている。この減速機異常診断装置2と、モータと一体の減速機を備えたロボット5とから減速機異常診断システム1が構成されている。ロボット5と装置本体3は動力線7と信号線8を介して電気的に相互接続し、装置本体3と端末装置4はLANケーブル9を介して電気的に相互接続している。以下において、各構成要素について説明する。
【0022】
ロボット5は、嵌合部品の嵌合作業を行うために用いられる一般的なものであり、ベース10と、ベース10に続く胴体部11と、第1の関節部12を介して胴体部11に続く上腕部13と、第2の関節部14を介して上腕部13に続く前腕部15と、第3の関節部16を介して前腕部15に続く手首要素17と、手首要素27に続くハンドツール18とからなっている。ハンドツール18は、相対向する一対の把持爪19a,19bを備えており、この一対の把持爪19a,19bの間でワーク20が把持されるようになっている。
【0023】
第1,2,3の関節部12,14,16は、各関節部を介して隣接する動作部材(被駆動部材)を相対的に回転動作させる部分であり、減速機を有するモータを備えている。モータの回転は減速機で減速され、隣接する動作部材が相対的に回転動作するようになっている。動作部材とは、上腕部13、前腕部15、手首要素17に相当する。減速機は、一般的なものであり、筒壁に固定して設けられた内歯歯車と、この内歯歯車に噛み合う外歯歯車と、外歯歯車に嵌合して外歯歯車を偏心回転させるクランク軸(中間軸要素)とを備えている。クランク軸は、モータの出力軸に連結されている。内歯歯車は、外歯歯車より歯数が一つだけ多くなっている。このため、外歯歯車がクランク軸と共に1回転することで、内歯歯車が1ピッチ分だけ反対方向に回転する。したがって、この減速機構では、少なくとも外歯歯車の歯数の逆数を減速比として入力回転を減速するようになっている。
【0024】
ロボット5にケーブル9を介して接続する装置本体3は、従来と同様の構成であり、図示しないプロセッサ、ROM、RAM、不揮発性メモリ、各種インターファース、送信制御回路や受信制御回路などで構成されたデジタルサーボ回路を備えている。各種メモリ、各種インターフェース、デジタルサーボ回路は、システムバスを介してプロセッサに接続している。デジタルサーボ回路は、サーボモータを帰還データに基づいて、位置ループ制御、速度ループ制御すると共に、トランジスタインバータ等のサーボアンプからの電流フィードバック信号に基づいて電流ループ制御する回路である。インターフェースには、センサや、ディスプレイモニタや、CCDカメラなどを接続することができる。
【0025】
端末装置4は、本体21と、ディスプレイ22とを備えたパーソナルコンピュータに相当するものであり、外乱推定値を推定するオブザーバ23と、外乱推定値の周波数成分からクランク軸の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出するスペクトル特定手段24と、特定スペクトルの振幅とクランク軸が正常であるときの振幅に基づいたしきい値とを比較し判断する診断手段25とを備えている。
【0026】
本体21にはシステムプログラムや動作プログラムなどが記憶されていて、マニュアル操作の場合は、オペレータが図示しないキーボートを介して必要な情報を入力することで異常診断動作プログラムが起動し、オブザーバ23、スペクトル特定手段24、診断手段25がそれぞれ機能するようになっている。
【0027】
オブザーバ23は、モータにより相対的に回転運動する一対の動作部材が一定速度(一定周期)で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、減速機に関する外乱トルク(外乱推定値)を推定するためのものである。
【0028】
スペクトル特定手段24は、外乱トルクの時系列データを周波数解析することによって得られた周波数成分から、一対の動作部材が一定速度で相対回転しているときのクランク軸の回転周波数の定数倍に対応する特定された対象スペクトル(特定スペクトル)を抽出するものである。
【0029】
診断手段25は、クランク軸が正常に動作しているときの外乱トルクを周波数解析することによって得られるしきい値としての基準スペクトsルと、スペクトル特定手段により特定された対象スペクトルとを比較し、総合的又は選択的に対象スペクトルの振幅が基準スペクトルを超えた場合を異常と診断し、診断対象スペクトルの振幅が基準スペクトルの振幅と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断するものである。
【0030】
次に、図1に示すロボット5を対象とし、図3のフローチャートに基づき、減速機の異常診断方法をフローチャートに従って説明する。図1に示すロボット5は、3軸の回転軸を有するロボットであるが、説明の都合上、任意の軸の関節部に注目して異常診断の説明をすることとする。
【0031】
診断対象となる減速機は、前段及び後段減速機構を備え、前段減速機構によりモータ出力軸のN回転をクランク軸のn回転に減速し、さらに、後段減速機構によりクランク軸のn回転を出力側(内歯歯車側)の1回転に減速するものとする。すなわち、この減速機は、モータの回転数を1/Nの減速比で減速するものとする。
【0032】
ステップS1では、端末装置4は装置本体3から所定のサンプリング周期Δt毎に速度フィードバック値及びトルク指令値を受信する。ステップS2では、オブザーバ23により、受信された速度フィードバック値及びトルク指令値からクランク軸の回転周期と同期する周期成分を含む外乱トルクを推定する。ステップS3では、速度フィードバック値、トルク指令値、推定された外乱トルクは、時系列データとして記憶する。
【0033】
次に、ステップS4で、速度フィードバック値vがしきい値Lvより大きく、かつ、関節部が一定速度で相対回転しているときの対象データを抽出する。図4には、対象データ抽出ルーチンを詳細に示す図を示す。図示するように、先ず、速度フィードバック値から加速度aを算出する。この加速度aが、予め設定されたしきい値La内に、一定のサンプリング期間Td以上に亘って連続して収まっているときを、関節部が一定速度で相対回転しているときとみなし、この一定期間Td内の外乱トルクの時系列データを抽出する。抽出する外乱トルクのデータ数Npは、少なくともクランク軸が1回転する周期Tpをサンプリング周期Δtで除した値以上とする。すなわち、データ数Npは、Tp/ΔA以上とする。クランク軸が1回転する周期は、クランク軸の回転周波数Vpの逆数として算出する。
【0034】
次に、ステップS5で、クランク軸の回転周波数Vpは、一定期間Td内で抽出された最初の速度フィードバック値voに、クランク軸のn回転をモータ出力軸のN回転で除した値、すなわち、減速比n/Nを乗じることで算出する(Vp=vo×(n/N))。
【0035】
必要なデータ数の外乱トルクのデータ配列が用意された後、ステップS6で、周波数解析(フーリエ解析)を行い、ステップS7で、クランク軸の回転周波数Vpの整数倍(Vp,2×Vp3×Vp,Np×Vp)に対応する周期成分として特定された対象スペクトルの振幅(F(1),F(2),F(3),・・・,F(Np))を求める。
【0036】
一方、診断の基準となる基準スペクトルは、同様の方法で、減速機が正常(クランク軸が正常)に動作しているときのスペクトル(F01,F02,F03,・・・,F0N)にマージン(余裕分)を加えた値をしきい値(Lf1,Lf2,Lf3,・・・,LfN)として求める。なお、マージンを小さく設定すれば、異常の予知(故障の兆候)でなく、異常の発見(故障の発見)に使用することができる。
【0037】
最後に、ステップS8で、診断対象スペクトルの振幅と基準スペクトルの振幅とを比較して、例えば、一つでも診断対象スペクトルの振幅が基準スペクトルの振幅を超えた場合を異常とみなし、ステップS9でアラーム音を出力する。なお、アラーム音を出力すると同時にロボットを非常停止する機能を加えれば、故障時にロボット5を停止させる装置として使用することができる。
【0038】
なお、異常診断のための動作プログラムを所定時間T毎に定期的に起動させて、診断対象スペクトルの増分値を算出し、この増分値を基準となるしきい値と比較して、異常診断をすることもできる。すなわち、(今回のF(1)−前回のF(1))/T,(今回のF(2)−前回のF(2))/T,・・・,(今回のF(Np)−前回のF(Np))/Tを判断に使っても良い。
【0039】
以上により、本実施形態によれば、クランク軸の異常を外乱推定値を用いて予知することで、ノイズの影響や重力の影響を排除することができ、定量的な判断基準に基づいて、減速機の異常を直接的かつ正確に予知することができる。また、異常診断を定期的に行うことで、クランク軸の交換時期が事前に認識されるため、ロボット5のメンテナンスや復旧などの作業性を大幅に高めることができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。本実施形態では、ロボット5に備えられた減速機の異常が診断されているが、工作機械や車両に備えられた減速機の異常を診断することもできる。また、本実施形態では、トルク指令と速度フィードバックから推定された外乱推定値の周波数成分に基づいて減速機の異常が診断されているが、回転運動する一対の動作部材が一定速度で相対回転しているときの速度フィードバックから算出された加速度の周波数成分に基づいて、減速機の異常を診断することもできる。
【0041】
また、本実施形態では、減速機が異常であると診断された場合はアラーム音を出力するようになっているが、減速機を備えたロボット5のモデルを表示する端末装置4のディスプレイ22の画面上で、減速機を示す部分のみを強調表示して異常を知らせることも可能である。
【0042】
また、本実施形態では、キーボートを介して必要な情報を入力することで動作プログラムが起動するようになっているが、減速機を備えたロボット5のモデルを表示するディスプレイ22の画面上で、減速機を示す部分をポインティングデバイスなどで指定して動作プログラムを起動することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る減速機異常診断装置の一実施形態を含むシステム構成図である。
【図2】同じく減速機異常診断装置の構成図である。
【図3】同じく減速機異常診断方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS4の詳細を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
2 減速機異常診断装置
3 装置本体
4 端末装置
5 ロボット
12 第1の関節部
14 第2の関節部
16 第3の関節部
23 オブザーバ
24 スペクトル特定手段
25 診断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断方法において、
モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、前記減速機に関する外乱推定値をオブザーバにより推定し、
周波数解析により得られた前記外乱推定値の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出し、
該特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、
前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断する、減速機異常診断方法。
【請求項2】
入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断方法において、
モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得された速度フィードバックに基づいて加速度を算出し、
周波数解析により得られた前記加速度の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出し、
該特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、
前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断する、減速機異常診断方法。
【請求項3】
前記しきい値は、前記中間軸要素が正常であるときに、周波数解析により得られた前記外乱推定値又は前記加速度の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応して抽出されたスペクトルの振幅に相当する請求項1又は2に記載の減速機異常診断方法。
【請求項4】
前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えたとき、前記減速機が異常である情報を外部に出力する請求項1〜3の何れか1項に記載の減速機異常診断方法。
【請求項5】
前記減速機を備えたロボットのモデルを表示する表示装置の画面上で、前記減速機を示す部分のみを強調表示して異常を知らせる請求項4に記載の減速機異常診断方法。
【請求項6】
前記減速機の異常を診断する際に、前記減速機を備えたロボットのモデルを表示する表示装置の画面上で、前記減速機を示す部分を指定して異常の診断を開始する請求項1〜5のいずれか1項に記載の減速機異常診断方法。
【請求項7】
入力軸と出力軸の中間にあって回転を伝達し、前記入力軸の回転に比例して回転する中間軸要素を有する減速機の異常を診断する減速機異常診断装置において、
モータを駆動源として相対的に回転運動する一対の被駆動部材が一定速度で相対回転しているときに取得されたトルク指令と速度フィードバックとに基づいて、前記減速機の入力側で前記減速機に関する外乱推定値を推定するオブザーバと、
前記外乱推定値の周波数成分から前記中間軸要素の回転周波数の定数倍に対応する特定スペクトルを抽出するスペクトル特定手段と、
前記スペクトル特定手段により特定された前記特定スペクトルの振幅としきい値とを比較し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値を超えた場合を異常と診断し、前記特定スペクトルの振幅が前記しきい値と同程度ないしそれより小さい場合を正常と診断する診断手段と、
を備える減速機異常診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate