説明

減速装置

【課題】 潤滑油中に混入した金属粉を確実に捕捉する。
【解決手段】遊星歯車減速機構16よりも下側に出力軸17と一体に回転する磁性プレート27を設けることにより、潤滑油中を沈降してきた金属粉Mを、磁性プレート27の表面に吸着して捕捉する構成とする。この場合、捕捉された金属粉Mは、磁性プレート27の磁気によって吸着されているので、減速装置11の作動時に潤滑油がハウジング12内で攪拌されたとしても、金属粉Mが磁性プレート27から離脱してしまうのを抑えることができる。従って、潤滑油中に混入した金属粉Mが、上側軸受19、下側軸受20の内部に侵入するのを防止でき、上,下の軸受19,20によって支持された出力軸17を長期に亘って円滑に回転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーンの旋回装置等に好適に用いられる減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより大略構成されている。そして、下部走行体と上部旋回体との間には、上部旋回体を旋回させる旋回装置が設けられ、該旋回装置には、油圧モータ等からなる回転源の回転を減速してトルクを増大させる減速装置が設けられている。
【0003】
この種の従来技術による減速装置は、通常、上,下方向に延びる筒状のハウジングと、該ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する減速機構と、ハウジング内に軸受を介して回転可能に設けられ減速機構により減速された回転を出力する出力軸とを備えて構成されている。そして、ハウジング内には、減速機構を構成する歯車、出力軸を支持する軸受等を潤滑する潤滑油が充填され、この潤滑油は、ハウジングの下端側に設けられたオイルシールによってハウジング内に封止されている。
【0004】
ところで、上述の減速装置を作動させた場合には、例えば減速機構を構成する各歯車の噛合部等から発生した摩耗粉、減速装置を構成する各部材の加工時に洗浄によって除去しきれずに残留した切粉等の金属粉が、ハウジング内の潤滑油中に混入するようになる。
【0005】
そして、これらの金属粉は、出力軸を支持する軸受内に浸入することにより出力軸の円滑な回転を阻害したり、潤滑油を封止するオイルシールに付着することにより当該オイルシールの摩耗を早めるという不具合がある。
【0006】
これに対し、従来では、ハウジング内に上,下の軸受を介して回転可能に支持され減速機構により減速された回転を出力する出力軸と、該出力軸に形成された雄ねじ部に螺合することにより各軸受を与圧するナット部材と、該ナット部材を出力軸に対して回止めする回止め部材とを備え、ハウジングのうち上側軸受が取付けられる部位に該上側軸受を外周側から取囲む環状溝を設けると共に、回止め部材に上側軸受の外周側を全周に亘って覆うスカート部を設ける構成とした減速装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平9−144854号公報
【0008】
この従来技術による減速装置は、潤滑油中に混入した金属粉が軸受内に浸入するのを回止め部材に設けたスカート部によって抑えることができ、かつ、潤滑油中を沈降する金属粉を、回止め部材のスカート部に沿ってハウジングに設けた環状溝内に案内することができる。そして、溝部の近傍位置に開口する排油パイプを通じてハウジング内の潤滑油を外部に排出することにより、環状溝内に滞留した金属粉を排油と一緒に外部に排出することができる構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した従来技術による減速装置は、ハウジングの環状溝内に滞留した金属粉を、排油と一緒にハウジングの外部に排出する構成となっているため、ハウジング内の潤滑油を外部に排出しない限りは、金属粉は潤滑油と共にハウジング内に残留することになる。
【0010】
このため、減速装置の作動によってハウジング内で潤滑油が攪拌されると、環状溝内に滞留した金属粉が潤滑油の流れによって再びハウジング内を浮遊するようになり、この金属粉が軸受内に浸入して出力軸の円滑な回転を阻害したり、オイルシールのリップ部に付着してその摩耗を早めるという問題がある。
【0011】
また、上述した従来技術による減速装置は、上側軸受の外周側に設けた環状溝の近傍位置に排油パイプが開口しているため、上側軸受とオイルシールとの間に貯溜された潤滑油は排油パイプを通じて外部に排出することができず、ハウジング内に充填された全ての潤滑油を排出する場合には、減速装置を分解する煩雑な作業が必要となる。
【0012】
また、上側軸受の外周側が回止め部材のスカート部によって覆われているため、組立てられた減速装置のハウジング内に新たに潤滑油を充填するときには、回止め部材のスカート部に邪魔されて上側軸受とオイルシールとの間の空間内に潤滑油を供給しにくくなり、ハウジング内に適量の潤滑油を充填するまでに時間がかかる。このように、従来技術による減速装置は、ハウジング内に充填された潤滑油を交換するときの作業性が悪く、メンテナンス性の低下を招くという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、潤滑油中に混入した金属粉を確実に捕捉することができるようにした減速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するため本発明は、上,下方向に延びる筒状のハウジングと、ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する減速機構と、減速機構よりも上,下方向の下側に位置してハウジング内に回転可能に設けられ減速機構により減速された回転を出力する出力軸とを備えてなる減速装置に適用される。
【0015】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、減速機構よりも下側には磁性をもったプレートを出力軸およびハウジングのうち一方に対して固定して設け、該プレートによってハウジング内に充填された潤滑油中の金属粉を捕捉することにある。
【0016】
請求項2の発明は、プレートは出力軸を径方向外側から取囲む環状の板体により形成し、プレートにはハウジング内の潤滑油が流通する油孔を設ける構成としたことにある。
【0017】
請求項3の発明は、ハウジングと出力軸との間には出力軸を回転可能に支持する軸受を設け、出力軸の外周側には軸受の上側に位置して該軸受を軸方向に与圧するナット部材を螺着して設け、プレートはナット部材に取付けることにより出力軸に対して固定する構成としたことにある。
【0018】
請求項4の発明は、出力軸の外周側には減速機構を構成するキャリアがスプライン結合される雄スプラインを設け、プレートは雄スプラインの外周側に嵌合した状態でナット部材に取付ける構成としたことにある。
【0019】
請求項5の発明は、ハウジングと出力軸との間には出力軸を回転可能に支持する軸受を設け、出力軸の外周側には軸受の上側に位置して該軸受を軸方向に与圧するナット部材を螺着して設け、プレートは軸受の内輪とナット部材との間で挟持することにより出力軸に対して固定する構成としたことにある。
【0020】
請求項6の発明は、ハウジングの下側部位と出力軸との間には該出力軸を回転可能に支持する軸受を設けると共に、ハウジングの下側部位には軸受の下側に位置してハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールを設け、出力軸の外周側には軸受の下側に位置してオイルシールが摺接するスリーブを設け、プレートは軸受の内輪とスリーブとの間で挟持することにより出力軸に対して固定する構成としたことにある。
【0021】
請求項7の発明は、ハウジングの内側面には減速機構よりも下側に位置して出力軸を外周側から取囲む環状の取付座を設け、プレートは取付座に取付けることによりハウジングに対して固定する構成としたことにある。
【0022】
請求項8の発明は、ハウジングの下側部位と出力軸との間には該出力軸を回転可能に支持する軸受を設けると共に、ハウジングの下側部位には軸受の下側に位置してシール保持部材を設け、シール保持部材にはハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールを設け、プレートはシール保持部材とオイルシールとの間で挟持することによりハウジングに対して固定する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、減速機構よりも下側に磁性をもったプレートを設ける構成としたので、減速機構を構成する各歯車の噛合部等から発生した摩耗粉等の金属粉が、ハウジング内の潤滑油中に混入したとしても、この金属粉をプレートによって吸着して捕捉することができる。この場合、金属粉はプレートに吸着されているので、減速装置の作動時に潤滑油が攪拌されたとしても、金属粉がハウジング内を浮遊するのを確実に抑えることができる。従って、潤滑油中に混入した金属粉が、軸受内に浸入して出力軸の円滑な回転を阻害したり、ハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールに付着してその摩耗を早めるのを防止でき、減速装置の信頼性を高めることができる。
【0024】
また、潤滑油中に混入した金属粉をプレートによって捕捉することにより、潤滑油を長期に亘って清浄な状態に保つことができるので、金属粉を除去するために潤滑油をハウジングの外部に排出する頻度を少なくすることができ、メンテナンス性を高めることができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、プレートにハウジング内の潤滑油が流通する油孔を設ける構成としたので、例えばプレートの上方からハウジング内に潤滑油を供給するときに、この潤滑油はプレートに設けた油孔を通じて該プレートの下方へと流込むようになる。これにより、ハウジング内への潤滑油の供給作業をプレートに邪魔されることなく速やかに行なうことができ、メンテナンス性を高めることができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、軸受の上側に位置して出力軸の外周側に螺着されたナット部材にプレートを取付ける構成としたので、潤滑油中を沈降してくる金属粉を、軸受よりも上方でプレートによって捕捉することができ、当該金属粉が軸受内に浸入するのを確実に防止することができる。この場合、プレートは、既存の部品であるナット部材を利用して取付けられるので、プレートを取付けるために新たな部品を追加して設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、プレートを、出力軸に設けた雄スプラインの外周側に嵌合した状態でナット部材に取付ける構成としたので、プレートを利用してナット部材の回止め(弛止め)を行うことができる。即ち、ナット部材に取付けられる既存の回止め部材に代えてプレートをナット部材に取付けることにより、部品点数の増加を招くことなく、このプレートによって金属粉を捕捉する作用とナット部材を回止めする作用とを兼用することができる。従って、既存の減速装置に用いられる回止め部材を磁性をもったプレートに交換するだけで、潤滑油中に混入した金属粉をプレートによって捕捉し、当該潤滑油を清浄化することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、プレートを、軸受の内輪とナット部材との間で挟持することにより出力軸に対して固定する構成としたので、このプレートの取付作業を簡略化することができる。また、プレートを取付けるための専用のボルト等の部品を不要とすることができるので、部品点数の増大を抑えることができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、ハウジングの下部側には軸受とオイルシールとを設け、出力軸の外周側にはオイルシールが摺接するスリーブを設け、プレートは軸受の内輪とスリーブとの間で挟持する構成としたので、これら軸受、オイルシール、スリーブ等の既存の部品を利用してプレートを出力軸に対して固定することができる。これにより、プレートの取付作業を簡略化することができ、また、プレートを取付けるための専用のボルト等の部品を不要にできる分、部品点数の増大を抑えることができる。
【0030】
請求項7の発明によれば、プレートを、ハウジングの内側面に設けた取付座に取付けることにより該ハウジングに対して固定したので、プレートが出力軸と一緒に回転するときに、プレートに捕捉された金属粉が該プレートから離脱するのを抑えることができる。また、ハウジングとプレートとの間に金属粉が通過する隙間が形成されることがないため、減速装置の作動によって潤滑油が攪拌されることにより、金属粉がハウジングの内側面に沿って潤滑油中を沈降したとしても、この金属粉をプレートによって確実に捕捉することができる。
【0031】
請求項8の発明によれば、ハウジングの下部側にシール保持部材とオイルシールとを設け、プレートはシール保持部材とオイルシールとの間で挟持する構成としたので、これらシール保持部材、オイルシール等の既存の部品を利用してプレートをハウジングに対して固定することができる。これにより、プレートの取付作業を簡略化することができ、また、プレートを取付けるための専用のボルト等の部品を不要にできる分、部品点数の増大を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る減速装置の実施の形態を、図1ないし図14を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
まず、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示し、本実施の形態は、油圧ショベルに搭載される旋回装置に適用した場合を例に挙げて述べる。
【0034】
図中、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前部側に俯仰動可能に設けられ、土砂等の掘削作業を行う作業装置5とにより大略構成されている。
【0035】
ここで、旋回輪3は、図2に示すように、下部走行体2を構成する丸胴2A上に固定された内輪3Aと、上部旋回体4を構成する旋回フレーム4Aの下面側に固定された外輪3Bと、内輪3Aと外輪3Bとの間に配設された複数の鋼球3C(1個のみ図示)とにより構成されている。そして、内輪3Aの内周側には全周に亘って内歯3Dが形成され、内歯3Dの内周側には、該内歯3Dと後述するピニオン18との噛合部を潤滑するグリスを収容したグリスバス6が設けられている。
【0036】
7は上部旋回体4を下部走行体2上で旋回させる旋回装置で、該旋回装置7は、回転源としての油圧モータ8と、該油圧モータ8のモータ軸8Aの回転を減速し、旋回輪3に大きな回転力(トルク)を伝達する後述の減速装置11とにより大略構成されている。この場合、例えば油圧モータ8のモータケース等には、減速装置11内に潤滑油を供給するための給油パイプ9が設けられている。
【0037】
11は油圧モータ8(モータ軸8A)の回転を減速する減速装置で、該減速装置11は、後述のハウジング12、遊星歯車減速機構15,16、出力軸17、上,下の軸受19,20、オイルシール25、磁性プレート27等により構成されている。
【0038】
12は減速装置11の外殻をなす筒状のハウジングで、該ハウジング12は、旋回フレーム4Aの上面側にボルトを用いて固定された段付き円筒状の下側ハウジング13と、該下側ハウジング13の上端側にボルトを用いて固定された円筒状の上側ハウジング14とにより、上,下方向に延びる円筒体として構成されている。
【0039】
ここで、下側ハウジング13の内周側には、後述の上側軸受19が取付けられる上側軸受取付部13Aと、後述の下側軸受20が取付けられる下側軸受取付部13Bとが上,下方向に離間して設けられている。
【0040】
一方、上側ハウジング14の上端側には油圧モータ8が取付けられ、該油圧モータ8のモータ軸8Aは上側ハウジング14内に延びている。また、上側ハウジング14の内周側には、後述の遊星歯車15Bが噛合する上側内歯14Aと、後述の遊星歯車16Bが噛合する下側内歯14Bとが、それぞれ全周に亘って形成されている。
【0041】
15は油圧モータ8の下側に位置してハウジング12内に設けられた1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構15は、油圧モータ8のモータ軸8Aにスプライン結合された太陽歯車15Aと、該太陽歯車15Aと上側ハウジング14の上側内歯14Aとに噛合し、太陽歯車15Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車15B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車15Bを回転可能に支持するキャリア15Cとにより構成されている。
【0042】
16は遊星歯車減速機構15の下側に位置してハウジング12内に設けられた2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構16は、遊星歯車減速機構15のキャリア15Cにスプライン結合された太陽歯車16Aと、該太陽歯車16Aと上側ハウジング14の下側内歯14Bとに噛合し、太陽歯車16Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車16Bと、該各遊星歯車16Bを回転可能に支持するキャリア16Cとにより構成されている。
【0043】
17はハウジング12内に上,下方向に延びて設けられた出力軸で、該出力軸17は、小径軸部17Aと大径軸部17Bとを有する段付き円柱状に形成され、後述の上側軸受19、下側軸受20を介して下側ハウジング13に回転可能に支持されている。そして、出力軸17は、各遊星歯車減速機構15,16によって2段減速された油圧モータ8の回転を出力するものである。
【0044】
ここで、小径軸部17Aの上端側には、図3および図4に示すように、遊星歯車減速機構16のキャリア16Cが嵌合する雄スプライン(軸スプライン)17Cと、雄スプライン17Cよりも下側に位置し後述のナット部材21が螺着される雄ねじ部17Dとが形成されている。
【0045】
18は出力軸17の大径軸部17B下端側に一体に設けられたピニオンで、該ピニオン18は、ハウジング12(下側ハウジング13)の下端側から下方に突出し、旋回輪3の内歯3Dに噛合している。そして、ピニオン18は出力軸17の回転を旋回輪3(内輪3A)に伝達するものである。
【0046】
19は下側ハウジング13の上側軸受取付部13Aに取付けられた上側軸受で、該上側軸受19は、例えば円錐ころ軸受からなり、上側軸受取付部13Aに嵌合した外輪19Aと、出力軸17の小径軸部17Aに嵌合して固定された内輪19Bと、外輪19Aと内輪19Bとの間に設けられた複数の略円錐状の転動体19Cとにより構成されている。
【0047】
20は下側ハウジング13の下側軸受取付部13Bに取付けられた下側軸受で、該下側軸受20は、上側軸受19と同様な円錐ころ軸受からなり、下側軸受取付部13Bに嵌合された外輪20Aと、出力軸17の大径軸部17Bに嵌合して固定された内輪20Bと、外輪20Aと内輪20Bとの間に設けられた複数の略円錐状の転動体20Cとにより構成されている。
【0048】
ここで、これら上側軸受19と下側軸受20とは、後述のナット部材21によって軸方向に適度に与圧された状態で、出力軸17をハウジング12に対して回転可能に支持するものである。
【0049】
21は遊星歯車減速機構16の下側に位置して出力軸17の雄ねじ部17Dに螺着されたナット部材で、該ナット部材21は、図3に示すように、出力軸17の雄ねじ部17Dに螺着されることにより、その下面を上側軸受19の内輪19Bに当接させ、当該上側軸受19と下側軸受20とを軸方向に適度に与圧するものである。
【0050】
また、ナット部材21の上面側には後述の磁性プレート27が取付けられ、ナット部材21は、この磁性プレート27によって出力軸17に対して回止めされる構成となっている。
【0051】
22はハウジング12を構成する下側ハウジング13の下端側に取付けられたシール保持部材で、該シール保持部材22は、下側ハウジング13の下端面にボルト23を用いて固定された環状なフランジ部22Aと、該フランジ部22Aから下向きに突出した円筒部22Bとにより構成されている。そして、シール保持部材22は、円筒部22Bの内周側に後述のオイルシール25が嵌合することにより、当該オイルシール25をハウジング12の下端側で保持するものである。
【0052】
24はピニオン18と下側軸受20との間に位置し出力軸17の大径軸部17Bに嵌合して固定された円筒状のスリーブで、該スリーブ24は、出力軸17と一体に回転するものである。ここで、スリーブ24の上面は、下側軸受20を構成する内輪20Bの下面に当接し、スリーブ24の下面は、ピニオン18の上面に当接している。そして、スリーブ24の外周面は、シール保持部材22を構成する円筒部22Bの内周面と対面し、後述するオイルシール25の内周側が摺接するシール面24Aとなっている。
【0053】
25はシール保持部材22によってハウジング12の下端側に保持された環状のオイルシールで、オイルシール25の外周側は、シール保持部材22の円筒部22Bに嵌合して固定され、オイルシール25の内周側は、出力軸17側に取付けられたスリーブ24のシール面24Aに適度な弾性をもって摺接している。そして、オイルシール25は、ハウジング12内に充填された潤滑油を封止するもので、当該潤滑油により、遊星歯車減速機構15,16、上側軸受19、下側軸受20等を潤滑する構成となっている。
【0054】
26はハウジング12を構成する下側ハウジング13の下端側に設けられた排油パイプで、該排油パイプ26は、上側軸受19と下側軸受20との間に位置して下側ハウジング13内に開口している。そして、排油パイプ26は、ハウジング12内に充填された潤滑油を、ハウジング12の外部に排出するものである。
【0055】
27は遊星歯車減速機構16の下側に位置してナット部材21に取付けられた磁性プレートで、該磁性プレート27は、図3ないし図5に示すように、例えば鉄系金属等の磁性材料を用いて、ナット部材21よりも大径で下側ハウジング13の内側面よりも僅かに小径な環状なプレートとして形成されている。そして、この磁性材料によって形成されたプレートに着磁器を用いた着磁処理を施すことにより、永久磁石となった磁性プレート27が構成されている。
【0056】
そして、磁性プレート27は、ボルト28を用いてナット部材21に取付けられることにより、遊星歯車減速機構16と上側軸受19との間でハウジング12内を上,下に仕切り、出力軸17と一体に回転しつつハウジング12内の潤滑油中に混入した金属粉を吸着して捕捉するものである。
【0057】
ここで、図5に示すように、磁性プレート27の中心部には、出力軸17の雄スプライン17Cに嵌合する雌スプライン(穴スプライン)27Aが形成され、該雌スプライン27Aを径方向から挟む2箇所には、ボルト28が挿通されるボルト挿通孔27Bが穿設されている。また、磁性プレート27の外周側には、雌スプライン27Aを取囲み周方向に均等な間隔をもって配置された複数(例えば、8個)の油孔27Cが穿設されている。
【0058】
そして、磁性プレート27は、図3および図4に示すように、雌スプライン27Aを出力軸17の雄スプライン17Cに嵌合した状態で、各ボルト挿通孔27Bに挿通したボルト28をナット部材21に螺着することにより、ナット部材21を介して出力軸17に対して固定される構成となっている。
【0059】
これにより、磁性プレート27は、ナット部材21を出力軸17に対して回止めする役目を果たすと共に、ハウジング12の内側面との間に微小な隙間を保ちつつ出力軸17と一体に回転し、潤滑油中に混入した金属粉を吸着して捕捉する役目を果たすものである。なお、磁性プレート27の各油孔27Cは、例えば減速装置11を組立てた後、給油パイプ9からハウジング12内に潤滑油を供給するときに、この潤滑油を磁性プレート27の下方へと導くことにより、給油作業を迅速に行なうものである。
【0060】
本実施の形態による減速装置11は上述の如き構成を有するもので、油圧モータ8のモータ軸8Aが回転すると、このモータ軸8Aの回転が遊星歯車減速機構15,16によって2段減速されて出力軸17に伝わり、ピニオン18は大きな回転力(トルク)をもって回転する。
【0061】
そして、ピニオン18が旋回輪3の内輪3Aに設けた内歯3Dと噛合しつつ内輪3Aに沿って公転し、このピニオン18の公転力がハウジング12を介して旋回フレーム4Aに伝わることにより、該旋回フレーム4Aが丸胴2A上で旋回する。
【0062】
ここで、上述した減速装置11の作動時には、遊星歯車減速機構15,16を構成する太陽歯車15A,16Aと各遊星歯車15B,16Bとの噛合部等から発生した摩耗粉、遊星歯車減速機構15,16を構成する各部材の加工時に洗浄によって除去しきれずに残留した切粉等の金属粉Mが、ハウジング12内の潤滑油中に混入するようになる(図3参照)。
【0063】
そして、潤滑油中に混入した金属粉Mは、減速装置11の作動によって潤滑油と一緒にハウジング12内で攪拌されつつ、自重によって遊星歯車減速機構16の下方へと沈降していく。
【0064】
ここで、本実施の形態による減速装置11は、遊星歯車減速機構16よりも下側に位置して出力軸17と一体に回転する磁性プレート27を設けている。このため、遊星歯車減速機構16の下方へと沈降してきた金属粉Mを、磁性プレート27の磁気によって該磁性プレート27の表面に吸着して捕捉することができる。
【0065】
この場合、捕捉された金属粉Mは、磁性プレート27の磁気によって吸着されているので、減速装置11の作動時に潤滑油がハウジング12内で攪拌されたとしても、金属粉Mが磁性プレート27から離脱してしまうのを抑えることができる。従って、潤滑油中に混入した金属粉Mが、上側軸受19、下側軸受20の内部に侵入するのを防止でき、上,下の軸受19,20によって支持された出力軸17を長期に亘って円滑に回転させることができる。また、潤滑油中に混入した金属粉Mが、スリーブ24の外周面とオイルシール25との摺接部分に付着するのを防止でき、オイルシール25の寿命を延ばすことができる。
【0066】
しかも、潤滑油中に混入した金属粉Mを磁性プレート27によって捕捉することにより、潤滑油を長期に亘って清浄な状態に保つことができるので、金属粉Mを除去するために潤滑油をハウジング12の外部に排出する頻度を少なくすることができ、減速装置11のメンテナンス性を高めることができる。
【0067】
ここで、潤滑油中に混入した金属粉Mが磁性プレート27の表面に吸着されることにより、磁性プレート27の表面に金属粉Mが堆積した場合には、ボルト28を抜取って磁性プレート27をナット部材21から取外す。そして、例えば磁性プレート27に付着した金属粉Mを拭取って除去した後、この清掃した磁性プレート27をナット部材21に取付けることにより、あるいは新たな磁性プレート27をナット部材21に取付けることにより、この磁性プレート27によって金属粉Mを捕捉することができる。従って、ハウジング12内の潤滑油を長期に亘って清浄な状態に保つことができ、減速装置11の信頼性を高めることができる。
【0068】
また、磁性プレート27には複数の油孔27Cを設ける構成としたので、例えば減速装置11の組立て時等において、給油パイプ9等を通じてハウジング12内に潤滑油を供給するときに、この潤滑油は磁性プレート27に設けた各油孔27Cを通じて該磁性プレート27の下方へと円滑に流込むことができる。これにより、ハウジング12内への潤滑油の供給作業を、磁性プレート27に邪魔されることなく速やかに行なうことができ、メンテナンス性を高めることができる。
【0069】
しかも、本実施の形態による減速装置11は、磁性プレート27に雌スプライン27Aを形成し、磁性プレート27は、雌スプライン27Aを出力軸17の雄スプライン17Cに嵌合させた状態で、ナット部材21にボルト28を用いて固定する構成としている。これにより、磁性プレート27は、潤滑油中の金属粉Mを捕捉する作用と、上,下の軸受19,20を与圧するナット部材21を出力軸17に対して回止め(弛止め)する作用とを兼用することができる。
【0070】
従って、例えばナット部材21に取付けられる既存の回止め部材に代えて、本実施の形態による磁性プレート27をナット部材21に取付けることにより、部品点数の増加を招くことなく、この磁性プレート27によって潤滑油中に混入した金属粉Mを捕捉することができる。
【0071】
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、出力軸に取付けられたナット部材と軸受の内輪との間で磁性プレートを挟持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0072】
図中、31は本実施の形態による減速装置で、該減速装置31は、上述した第1の実施の形態による減速装置11とほぼ同様に、ハウジング12、遊星歯車減速機構15,16、出力軸17、上,下の軸受19,20、ナット部材21、オイルシール25、後述の磁性プレート34等により構成されている。しかし、本実施の形態による減速装置31は、上側軸受19の内輪19Bとナット部材21との間で磁性プレート34を挟持する構成とした点で第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0073】
32はナット部材21の上面側にボルト33を用いて固定された回止めプレートで、該回止めプレート32は、例えばナット部材21とほぼ等しい外径寸法を有する円板として形成され、その中心部には出力軸17の雄スプライン17Cに嵌合する雌スプライン32Aが形成されている。そして、回止めプレート32は、雌スプライン32Aを出力軸17の雄スプライン17Cに嵌合した状態で、ボルト33を用いてナット部材21に固定され、ナット部材21を出力軸17に対して回止め(弛止め)するものである。
【0074】
34はナット部材21と上側軸受19との間に配置された磁性プレートで、該磁性プレート34は、第1の実施の形態による磁性プレート27とほぼ同様に、磁性材料を用いてナット部材21よりも大径で下側ハウジング13の内側面よりも僅かに小径なプレートを形成し、このプレートに着磁器を用いた着磁処理を施すことにより、永久磁石として構成されている。
【0075】
ここで、磁性プレート34の中心部には、出力軸17の小径軸部17Aに挿通される軸挿通孔34Aが穿設され、磁性プレート34の外周側には、ハウジング12内の潤滑油が流通する複数の油孔34Bが穿設されている。
【0076】
そして、磁性プレート34は、軸挿通孔34Aを出力軸17の小径軸部17Aに挿通した状態で、出力軸17の小径軸部17Aに嵌合された上側軸受19の内輪19Bと、出力軸17の雄ねじ部17Dに螺着されたナット部材21との間で上,下方向から挟持されることにより、出力軸17に対して固定されるものである。これにより、磁性プレート34は、下側ハウジング13の内側面との間に微小な隙間を保ちつつ出力軸17と一体に回転し、潤滑油中に混入した金属粉Mを吸着して捕捉する構成となっている。
【0077】
本実施の形態による減速装置31は上述の如き構成を有するもので、潤滑油中に混入した金属粉Mを磁性プレート34によって捕捉するという基本的作動については、上述した第1の実施の形態による減速装置11と格別差異はない。
【0078】
然るに、本実施の形態によれば、磁性プレート34を、出力軸17の小径軸部17Aに嵌合された上側軸受19の内輪19Bと、出力軸17の雄ねじ部17Dに螺着されたナット部材21との間で上,下方向から挟持する構成としている。このため、出力軸17の雄ねじ部17Dにナット部材21を螺着して上,下の軸受19,20を与圧するときに、この上側軸受19の内輪19Bとナット部材21との間に磁性プレート34を挟み込むだけで、当該磁性プレート34を容易に出力軸17に対して固定することができ、磁性プレート34の取付作業を簡略化することができる。また、磁性プレート34を取付けるための専用のボルト等の部品を不要とすることができるので、部品点数の増大を抑えることができる。
【0079】
次に、図8および図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、出力軸に取付けられた軸受の内輪とスリーブとの間で磁性プレートを挟持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0080】
図中、41は本実施の形態による減速装置で、該減速装置41は、上述した第1の実施の形態による減速装置11とほぼ同様に、ハウジング12、遊星歯車減速機構15,16、出力軸17、上,下の軸受19,20、後述のスリーブ42、磁性プレート44等により構成されている。しかし、本実施の形態による減速装置41は、下側軸受20の内輪20Bとスリーブ42との間で磁性プレート44を挟持する構成とした点で第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0081】
42はピニオン18と下側軸受20との間に位置し出力軸17の大径軸部17Bに嵌合して固定された円筒状のスリーブで、該スリーブ42は、出力軸17と一体に回転するものである。そして、スリーブ42の外周面は、シール保持部材22を構成する円筒部22Bの内周面と全周に亘って対面し、後述するオイルシール43のリップ部43Cが摺接するシール面42Aとなっている。
【0082】
43はシール保持部材22によってハウジング12の下端側に保持された環状なオイルシールで、該オイルシール43は、略J型の断面形状をもって環状に形成された心金となる金属環43Aと、該金属環43Aに焼付け等の手段によって固着されたゴム材料からなるシール部43Bとにより構成され、該シール部43Bの内周側はリップ部43Cとなっている。
【0083】
そして、オイルシール43は、シール保持部材22の円筒部22Bに金属環43Aを圧入嵌合し、リップ部43Cをスリーブ42のシール面42Aに摺接させることにより、ハウジング12内に潤滑油を封止するものである。
【0084】
44は下側軸受20とスリーブ42との間に配置された磁性プレートで、該磁性プレート44は、磁性材料を用いてシール保持部材22の内側面よりも僅かに小径なプレートを形成し、このプレートに着磁器を用いた着磁処理を施すことにより、永久磁石として構成されている。
【0085】
ここで、磁性プレート44の中心部には、出力軸17の大径軸部17Bに挿通される軸挿通孔44Aが穿設され、磁性プレート44は、軸挿通孔44Aを出力軸17の大径軸部17Bに挿通した状態で、出力軸17の大径軸部17Bに挿嵌された下側軸受20の内輪20Bとスリーブ42との間で上,下方向から挟持されることにより、出力軸17に対して固定されるものである。これにより、磁性プレート44は、シール保持部材22の内側面との間に微小な隙間を保ちつつ出力軸17と一体に回転し、潤滑油中に混入した金属粉Mを吸着して捕捉する構成となっている。
【0086】
この場合、磁性プレート44は、下側軸受20とオイルシール25との間に配置されており、ハウジング12内への潤滑油の給油作業が磁性プレート44によって妨げられることがないため、磁性プレート44には、潤滑油の流通を目的とした油孔は設けられていない。
【0087】
本実施の形態による減速装置41は上述の如き構成を有するもので、潤滑油中に混入した金属粉Mを磁性プレート44によって捕捉するという基本的作動については、上述した第1の実施の形態による減速装置11と格別差異はない。
【0088】
然るに、本実施の形態によれば、磁性プレート44を、出力軸17の大径軸部17Bに挿嵌された下側軸受20の内輪20Bとスリーブ42との間で上,下方向から挟持する構成としたので、当該磁性プレート44を出力軸17に対して容易に固定することができ、磁性プレート44の取付作業を簡略化することができる。
【0089】
次に、図10および図11は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ハウジングの内側面に出力軸を外周側から取囲む環状な取付座を設け、この取付座に磁性プレートを取付ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0090】
図中、51は本実施の形態による減速装置で、該減速装置51は、上述した第1の実施の形態による減速装置11とほぼ同様に、後述のハウジング52、遊星歯車減速機構15,16、出力軸17、上,下の軸受19,20、後述の磁性プレート56等により構成されている。しかし、本実施の形態による減速装置51は、ハウジング52に設けた後述のプレート取付座55に磁性プレート56を固定する構成とした点で第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0091】
52は上,下方向に延びる円筒状のハウジングで、該ハウジング52は、旋回フレーム4Aの上面側に固定された下側ハウジング53と、該下側ハウジング53の上端側に固定された円筒状の上側ハウジング54とにより構成され、上側ハウジング54の上端側には油圧モータ8が取付けられている。
【0092】
ここで、下側ハウジング53の内周側には、上側軸受19が取付けられる上側軸受取付部53Aと、下側軸受20が取付けられる下側軸受取付部53Bとが上,下方向に離間して設けられている。一方、上側ハウジング54の内周側には、遊星歯車減速機構15の遊星歯車15Bが噛合する上側内歯54Aと、遊星歯車減速機構16の遊星歯車16Bが噛合する下側内歯54Bとが、それぞれ全周に亘って形成されている。
【0093】
55は遊星歯車減速機構16よりも下側に位置して下側ハウジング53の内側面に設けられたプレート取付座で、該プレート取付座55は、上側軸受取付部53Aから上方に隆起し、出力軸17を外周側から取囲む環状な段部として形成されている。そして、プレート取付座55には、周方向に均等な間隔をもって複数のボルト孔(雌ねじ孔)55Aが螺設されている。
【0094】
56はプレート取付座55に取付けられた磁性プレートで、該磁性プレート56は、磁性材料を用いてプレート取付座55の外径とほぼ等しい外径寸法を有するプレートを形成し、このプレートに着磁器を用いた着磁処理を施すことにより、永久磁石として構成されている。
【0095】
ここで、磁性プレート56の中心部には、ナット部材21の下端側が僅かな隙間をもって挿通されるナット部材挿通孔56Aが設けられ、磁性プレート56の外周側には、プレート取付座55の各ボルト孔55Aに対応する複数のボルト挿通孔56Bが穿設されている。また、ナット部材挿通孔56Aとボルト挿通孔56Bとの間には、ハウジング52内の潤滑油が流通する複数の油孔56Cが穿設されている。
【0096】
そして、磁性プレート56は、ナット部材挿通孔56Aをナット部材21の下端側に挿通した状態で、ボルト挿通孔56Bに挿通したボルト57をプレート取付座55のボルト孔55Aに螺着することにより、下側ハウジング53に対して固定されるものである。これにより、磁性プレート56は、出力軸17に固定されたナット部材21との間に微小な隙間を保ちつつ、下側ハウジング53に固定された状態で潤滑油中に混入した金属粉Mを吸着して捕捉する構成となっている。
【0097】
本実施の形態による減速装置51は上述の如き構成を有するもので、該減速装置51の作動時に潤滑油中に混入した金属粉Mは、潤滑油と一緒にハウジング52内で攪拌されつつ自重によって遊星歯車減速機構16の下方へと沈降し、磁性プレート56の表面に吸着されて捕捉される。
【0098】
ここで、本実施の形態による減速装置51は、磁性プレート56をプレート取付座55に取付けることにより、下側ハウジング53に対して固定する構成としたので、磁性プレート56が出力軸17と一体に回転することがない。これにより、磁性プレート56に捕捉された金属粉Mが、該磁性プレート56から離脱してしまうことがなく、磁性プレート56によって大量の金属粉Mを確実に捕捉しておくこができる。
【0099】
また、下側ハウジング53の内側面に設けたプレート取付座55に磁性プレート56を取付けることにより、下側ハウジング53の内側面と磁性プレート56との間に隙間が形成されることがない。このため、減速装置51の作動時に潤滑油がハウジング52内で攪拌されることにより、金属粉Mがハウジング52の内側面に沿って潤滑油中を沈降したとしても、この金属粉Mを磁性プレート56によって確実に捕捉することができる。
【0100】
次に、図12および図13は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ハウジングの下部側に設けたシール保持部材とオイルシールとの間で磁性プレート挟持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0101】
図中、61は本実施の形態による減速装置で、該減速装置61は、上述した第1の実施の形態による減速装置11とほぼ同様に、ハウジング12、遊星歯車減速機構15,16、出力軸17、上,下の軸受19,20、後述のシール保持部材62、オイルシール64、磁性プレート65等により構成されている。しかし、本実施の形態による減速装置61は、シール保持部材62とオイルシール64との間で磁性プレート65を挟持する構成とした点で第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0102】
62はハウジング12の下端側に取付けられた段付き円筒状のシール保持部材で、該シール保持部材62は、下側ハウジング13の下端面にボルト63を用いて固定された環状なフランジ部62Aと、フランジ部62Aから上向きに突出し下側ハウジング13の下側軸受取付部13Bに嵌合した環状な鍔部62Bと、フランジ部62Aから下向きに突出する円筒部62Cとにより構成されている。そして、シール保持部材62は、円筒部62Cの内周側に後述のオイルシール64が嵌合することにより、当該オイルシール64をハウジング12の下端側で保持するものである。
【0103】
64はシール保持部材62によってハウジング12の下端側に保持された環状なオイルシールで、該オイルシール64は、略J型の断面形状をもって環状に形成された心金となる金属環64Aと、該金属環64Aに焼付け等の手段によって固着されたゴム材料からなるシール部64Bとにより構成され、該シール部64Bの内周側はリップ部64Cとなっている。
【0104】
そして、オイルシール64は、シール保持部材62の円筒部62Cに金属環64Aを圧入嵌合することにより、該シール保持部材62によってハウジング12の下端側に保持され、リップ部64Cを、出力軸17の大径軸部17Bに嵌合されたスリーブ24のシール面24Aに摺接させることにより、ハウジング12内に潤滑油を封止するものである。
【0105】
65はシール保持部材62とオイルシール64との間に配置された磁性プレートで、該磁性プレート65は、磁性材料を用いてシール保持部材62の円筒部62C内側面よりも僅かに小径なプレートを形成し、このプレートに着磁器を用いた着磁処理を施すことにより、永久磁石として構成されている。
【0106】
ここで、磁性プレート65の中心部には、スリーブ24の上端側に僅かな隙間をもって挿通されるスリーブ挿通孔65Aが穿設されている。そして、磁性プレート65は、スリーブ挿通孔65Aをスリーブ24の上端側に挿通した状態でシール保持部材62の円筒部62C内に配置され、この円筒部62Cにオイルシール64の金属環64Aを圧入嵌合することにより、シール保持部材62の鍔部62Bとオイルシール64の金属環64Aとの間で上,下方向から挟持され、下側ハウジング13に対して固定されるものである。これにより、磁性プレート65は、出力軸17に固定されたスリーブ24との間に微小な隙間を保ちつつ、下側ハウジング13に固定された状態で潤滑油中に混入した金属粉Mを吸着して捕捉する構成となっている。
【0107】
本実施の形態による減速装置61は上述の如き構成を有するもので、該減速装置61の作動時に潤滑油中に混入した金属粉Mは、潤滑油と一緒にハウジング12内で攪拌されつつ自重によって遊星歯車減速機構16の下方へと沈降し、磁性プレート65の表面に吸着されて捕捉される。
【0108】
ここで、本実施の形態による減速装置61は、シール保持部材62の鍔部62Bとオイルシール64の金属環64Aとの間で磁性プレート65を挟持することにより、該磁性プレート65を下側ハウジング13に対して固定する構成としている。これにより、磁性プレート65に捕捉された金属粉Mが磁性プレート65から離脱してしまうことがなく、磁性プレート65によって大量の金属粉Mを確実に捕捉しておくこができる。
【0109】
なお、上述した第1の実施の形態では、磁性プレート27を、磁性材料を用いて形成された環状なプレートに着磁処理を施すことにより、永久磁石として構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図14に示す変形例のようなプレート71を用いてもよい。
【0110】
即ち、例えばアルミニウム、銅、樹脂材料等の非磁性材料を用いて形成され、ナット部材21に固定される環状な固定部71Aと、該固定部71Aの外周側に接着、嵌合等の手段を用いて固定された永久磁石、フェライト磁石、プラスチック磁石、ラバー磁石等の磁石71Bとによって構成されたプレート71を用いてもよい。
【0111】
また、磁性材料や非磁性材料を用いて環状に形成されたプレートの表面に、永久磁石等の磁石を貼付けたプレートを用いてもよい。このことは、第2,第3,第4,第5の実施の形態に用いる磁性プレート34,44,56,65ついても同様である。
【0112】
また、上述した第1の実施の形態では、磁性プレート27を表面が平坦なプレートとして形成した場合を例に挙げている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば表面積を増大させて金属粉を効率良く捕捉するため、多数の細孔が穿設されたプレートとして形成してもよく、表面にディンプル状の凹凸部が設けられたプレートとして形成してもよい。このことは、第2,第3,第4,第5の実施の形態に用いる磁性プレート34,44,56,65ついても同様である。
【0113】
また、上述した各実施の形態では、ハウジング12内に2段の遊星歯車減速機構15,16を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1段の遊星歯車減速機構または3段以上の遊星歯車減速機構を設ける構成としてもよい。
【0114】
さらに、上述した各実施の形態では、油圧ショベル1の旋回装置7に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン等の他の建設機械の旋回装置や、旋回装置以外に用いられる各種の減速装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施の形態による減速装置が適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による減速装置を示す縦断面図である。
【図3】図2中のハウジング、出力軸、ナット部材、磁性プレート等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図4】ハウジング、出力軸、磁性プレート等を図3中の矢示IV−IV方向からみた横断面図である。
【図5】磁性プレートを単体で示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による減速装置を示す縦断面図である。
【図7】図6中の出力軸、ナット部材、上側軸受、磁性プレート等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による減速装置を示す縦断面図である。
【図9】図8中の出力軸、スリーブ、下側軸受、磁性プレート等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による減速装置を示す縦断面図である。
【図11】図10中のハウジング、プレート取付座、磁性プレート等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態による減速装置を示す縦断面図である。
【図13】図12中のハウジング、シール保持部材、オイルシール、磁性プレート等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図14】磁性プレートの変形例を示す図3と同様位置からみた要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0116】
11,31,41,51,61 減速装置
12,52 ハウジング
13,53 下側ハウジング
14,54 上側ハウジング
15,16 遊星歯車減速機構
15A,16A 太陽歯車
15B,16B 遊星歯車
15C,16C キャリア
17 出力軸
17C 雄スプライン
19 上側軸受
19A,20A 外輪
19B,20B 内輪
20 下側軸受
21 ナット部材
22,62 シール保持部材
24,42 スリーブ
25,43,64 オイルシール
27,34,44,56,65 磁性プレート(プレート)
27A 雄スプライン
27C,34B,56C 油孔
28 ボルト
55 プレート取付座
71 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上,下方向に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する減速機構と、前記減速機構よりも上,下方向の下側に位置して前記ハウジング内に回転可能に設けられ前記減速機構により減速された回転を出力する出力軸とを備えてなる減速装置において、
前記減速機構よりも下側には磁性をもったプレートを前記出力軸および前記ハウジングのうち一方に対して固定して設け、該プレートによって前記ハウジング内に充填された潤滑油中の金属粉を捕捉する構成としたことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記プレートは前記出力軸を径方向外側から取囲む環状の板体により形成し、前記プレートには前記ハウジング内の潤滑油が流通する油孔を設ける構成としてなる請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記ハウジングと前記出力軸との間には前記出力軸を回転可能に支持する軸受を設け、
前記出力軸の外周側には前記軸受の上側に位置して該軸受を軸方向に与圧するナット部材を螺着して設け、
前記プレートは前記ナット部材に取付けることにより前記出力軸に対して固定する構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項4】
前記出力軸の外周側には前記減速機構を構成するキャリアがスプライン結合される雄スプラインを設け、
前記プレートは前記雄スプラインの外周側に嵌合した状態で前記ナット部材に取付ける構成としてなる請求項3に記載の減速装置。
【請求項5】
前記ハウジングと前記出力軸との間には前記出力軸を回転可能に支持する軸受を設け、
前記出力軸の外周側には前記軸受の上側に位置して該軸受を軸方向に与圧するナット部材を螺着して設け、
前記プレートは前記軸受の内輪と前記ナット部材との間で挟持することにより前記出力軸に対して固定する構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項6】
前記ハウジングの下側部位と前記出力軸との間には該出力軸を回転可能に支持する軸受を設けると共に、前記ハウジングの下側部位には前記軸受の下側に位置して前記ハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールを設け、
前記出力軸の外周側には前記軸受の下側に位置して前記オイルシールが摺接するスリーブを設け、
前記プレートは前記軸受の内輪と前記スリーブとの間で挟持することにより前記出力軸に対して固定する構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項7】
前記ハウジングの内側面には前記減速機構よりも下側に位置して前記出力軸を外周側から取囲む環状の取付座を設け、
前記プレートは前記取付座に取付けることにより前記ハウジングに対して固定する構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項8】
前記ハウジングの下側部位と前記出力軸との間には該出力軸を回転可能に支持する軸受を設けると共に、前記ハウジングの下側部位には前記軸受の下側に位置してシール保持部材を設け、該シール保持部材には前記ハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールを設け、
前記プレートは前記シール保持部材と前記オイルシールとの間で挟持することにより前記ハウジングに対して固定する構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−22901(P2006−22901A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202149(P2004−202149)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】