説明

減音ドラムヘッド、減音ドラム

【課題】アコースティックドラムと同等の打感が得られる減音ドラム及びスネアドラムを得る。
【解決手段】高分子フィルムに60°千鳥パターンで細孔を形成し、この細孔を形成した孔明き高分子樹脂フィルムにドラムの胴の直径より大きい直径のリングを取付け減音ドラムヘッドを構成する。この減音ドラムヘッドを胴の一方の開口端面に装着し、減音ドラムを構成する。この減音ドラムのドラムヘッドの背面に孔明き高分子樹脂フィルムで形成した細条孔明き高分子樹脂フィルムを複数本近接して配置し、スナッピー付き減音ドラムを構成する。更に、胴の内部に銅を含む金属板に振動ピックアップを実装した共振部材をドラムヘッドを構成する孔明き高分子樹脂フィルムに接触させて配置し、電気ドラムを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は練習用ドラムとして用いられる減音ドラム、或いは拡声装置と併用して電気ドラムとして機能させることができる減音ドラムに適用して好適な減音ドラムヘッド及び減音ドラムヘッドを用いて構成した減音ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は特許文献1で開示するように金網をドラムヘッド部材とした電気スネアドラム及び電気スネアドラム用拡声装置を提案した。
この先に提案した電気スネアドラムは金網をドラムヘッドとして利用しているため、現実にドラムヘッドを叩いても音が出ないため、練習用として好適である。つまり音が出ない代わりに、振動ピックアップを備え、振動ピックアップで拾った電気信号をヘッドホンで聴くことにより周辺に迷惑を掛けることなくドラム音を聴くことができるため練習用として好適である。また、拡声装置で音として放音すればステージ用のドラムとして利用することもできる。
【0003】
電気的なドラム音信号を生成する方法には現在2種類の方法が考えられている。その一つはスティックで打面を叩くと、その叩いた振動を電気ピックアップで検出し、その検出信号をトリガとして別に設けた音源装置からドラム音信号を発生させる形式と、
ドラム自体に振動ピックアップを装着し、ドラムの振動自体を電気信号に変換し、この電気信号をドラム音信号として出力させる形式とが存在する。
前者の方法は如何なる叩き方をしても、出る音は音源装置に用意されているドラム音信号によって決定されてしまう。
【0004】
これに対し、後者は叩いた振動自体をドラム音信号として利用するため、自然なドラム音信号を得ることができる。つまり、叩き方を変化させることにより、その違いを音の変化として表現することができる。この点で後者の形式は優れている。特許文献1で提案した電気スネアドラムは後者の形式の電気ドラムである。
【特許文献1】特開平11−237877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案した電気ドラムはドラムヘッドに金網を用いたため打面を強く叩くと金網が凹んだ状態に変形してしまう欠点が生じた。また、金網は線材が直交する方向に織り込まれているため、線材の軸線方向に対する張力に対しては強い強度を持つが斜め方向に対しては張力強度は低い。このために、打点と振動ピックアップの装着位置の関係で、発生するドラム音信号に強弱或いは音色に変化が発生する欠点もある。
この発明の目的は強く叩かれてもドラムヘッドに変形が発生することがなく、然も打点位置によってドラム音信号に強弱或いは音色に変化が発生することがない減音ドラムヘッドと、この減音ドラムヘッドを用いた減音ドラム及び簡素な構造で限りなくスナッピー音に近い音を発生させたスネアドラム音及びバスドラム、タムタム、バスタム等の各種ドラムの音に限りなく近い音を拡声装置から再生することができる電気信号を生成することが可能な減音ドラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明では開口率が20〜45%程度の密度で細孔を形成した孔明き高分子樹脂フィルムをドラムヘッド部材として用いることを特徴とするものである。
この発明では更に、孔明き高分子樹脂フィルムに形成する細孔の配置を60°千鳥パターンとした点を特徴とする。
更にこの発明では上記ドラムヘッド部材を胴の一方の開口端に張った減音ドラムを提案する。
更に、この発明では上記減音ドラムにおいて、胴に張られた孔明き高分子樹脂フィルムの裏面に近接して所定の張力が与えられて互に平行する姿勢で支持された複数本の細条高分子樹脂フィルムを備えた減音ドラムを提案する。
【0007】
更に、この発明では上記減音ドラムにおいて、細条高分子樹脂フィルムは孔明き高分子樹脂フィルムと同様に開孔率が20〜45%程度の密度で細孔が形成されていることを特徴とする。
更に、この発明では上記減音ドラムにおいて、胴の内側に装着され、一部が孔明き高分子樹脂フィルムに接触して配置された共振部材と、この共振部材の振動を電気信号に変換する振動ピックアップを備えた構造として減音ドラムを提案する。
この発明では更に上記減音ドラムにおいて、上記共振部材はほぼ長方形状の金属板と、この金属板の一端側に装着された錘りとによって構成され、金属板は錘りが装着されない端部側に折曲部分を有し、この折曲部分の遊端が上記ドラムの胴に装着され、折曲部分を上記孔明き高分子樹脂フィルムの裏面に接触させ、上記孔明き高分子樹脂フィルムとの接触点から錘りの装着位置までは孔明き高分子樹脂フィルムの裏面から漸次離れる方向に延長される構造とした減音ドラムを提案する。
【0008】
この発明では更に上記減音ドラムにおいて、共振部材を構成する金属板は長手方向及び短辺方向に切込を有し、この切込によって共振周波数を異にする複数の共振部を設け、各共振部の共振を振動ピックアップで電気信号に変換する構造とした減音ドラムを提案する。
この発明では更に上記減音ドラムにおいて、共振部材はほぼ長方形状の金属板によって構成され、この金属板は一方の短辺が上記孔明き高分子樹脂フィルムと上記胴との接合部分に圧接されて孔明き高分子樹脂フィルムとの接触部とされ、この接触部から所定の距離の位置に形成され、金属板の他端側を胴の内壁に近づけるための第1折曲部と、この第1折曲部から所定の距離の位置に形成され金属板の他端を上記胴の内壁面と平行する取付面とするための第2折曲部とを有し、接触部と第1折曲部との間の部分に振動ピックアップを実装した構造とした。
この発明では更に上記記載の減音ドラムにおいて、共振部材を構成する金属板は銅乃至銅を含む金属板で構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の減音ドラムヘッドによれば、ドラムヘッド部材として高分子樹脂フィルムを用いたから、強く叩いてもへこみのような変形をきたすことはない。然も打感はアーコスティックドラムのそれに限りなく近いため、練習用として好適である。更に高分子樹脂フィルムに開口率が20〜45%程度の密度で細孔を形成したから、胴の開口端に張った状態で叩いても、音の発生はわずかであり、周辺に影響を与えることはない。
然も細孔は60°千鳥構造に配置したから、360°どの方向にも均一な張力強度を持たせることができる。この結果、打点と振動ピックアップの装着位置の関係でドラム音信号の検出感度に差が発生することはなく、また、音色が変化するような現象が発生することはない。
【0010】
ところで孔明きドラムヘッドにおいて、360°どの方向にも均一な張力強度を持たせるためには60°千鳥構造の他に、ドラムヘッドの中心から同心円状に細孔を形成する構造も考えられる。然し乍ら、この構造とした場合、ドラムヘッド部材に同心円状に細孔を形成する工程にコストが掛かる欠点が生じる。つまり、細孔を打ち抜くための刃を同心円状に配置した治具を用意しなければならないため、この治具に要するコストは高価となる。
これに対し、60°千鳥構造の場合は巻軸に巻装された樹脂シートを繰り出しながら、その移動方向と直交する向きに細孔を形成するための刃を配列した治具で細孔を形成し、細孔の形成位置を所定の繰り出し間隔毎に樹脂シートの繰り出し方向と直交する向きに刃の配列ピッチの1/2の間隔で交互にずらしながら打ち抜く処理を行えば済むため、製造コストは安価である。
【0011】
また、この発明による減音ドラムは高分子樹脂フィルムで形成した複数本の細条体を、胴に張られた孔明き高分子樹脂フィルムの裏面に近接して配置したから、ドラムヘッドが叩かれた場合、この細条体がドラムヘッドを構成する孔明き高分子樹脂フィルムの面に接触し、この接触によりスナッピー音を得ることができる。つまり、スネアドラムを得ることができる。細条体は高分子樹脂フィルムを細条に切り出して形成するか、或いは所定の幅の長方形の帯状体を形成し、この帯状体にこの帯状体の長手方向に切込を形成して構成してもよく、何れの方法で製造しても構造が簡素であるため安価に作ることができる。また、細条体を構成する高分子樹脂フィルムはドラムヘッド部材と同様に開口率が20〜45%程度で細孔を形成した細各孔明き高分子樹脂フィルムを用いた場合は限りなくアコースティックなスネアドラム音に近い生の音及びスネアドラムに近い音を拡声装置から再生することができる。
【0012】
また、この発明による減音ドラムでは、胴の内側で一部がドラムヘッド部材に接触した共振部材と、この共振部材にこの共振部材の振動を電気信号に変換する振動ピックアップを備えた構造としたから、振動ピックアップからドラムヘッド部材の振動を忠実に電気信号に変換した信号を得ることができる。つまり、可及的にドラム音に近い音を再現することができるドラム音信号を得ることができる。
この発明によれば更に、共振部材を金属板で構成し、金属板の遊端に錘りを装着したから、金属板の共振周波数を錘りの重量によって自由に選択することができる。この結果、共振部材を構成する金属板の形状が一定であっても、錘りの重量に応じて胴の共鳴音を生成することができることになる。換言すれば、アコースティックドラムでは胴の深い、浅いによって胴鳴りの共振周波数を変化させているが、この発明によれば胴の有無を問わずに共振部材に装着する錘りの重量によりこの胴鳴りの周波数を生成する電気ドラムを作り分けることができる。従って低いコストで各種のドラムを作り分けることができる優れた作用効果を得ることができる。
【0013】
この発明によれば更に、共振部材を構成する金属板に切込を形成し、この切込によって共振周波数が異なる複数の共振部を設け、この複数の共振部の共振をそれぞれ別々に振動ピックアップでそれぞれを電気信号として取り出す構造としたから、含有周波数成分の周波数帯域が広いドラム音信号を得ることができる。つまり、厚みのある音色を持ったドラム音信号、例えばバスドラム、タムタム、或はバスタムタム等の各種のドラム音を得ることができる。
この発明によれば更に、共振部材として銅乃至は銅を含む金属板を用いたから、銅独特の共振波形を得ることができ、音色の良いドラム音信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ポリエチレンテレフタレートのような高分子樹脂フィルムに60°千鳥パターンで開口率が20〜45%程度の密度で細孔を形成し、孔明き高分子樹脂フィルムを得る。これと共にこの孔明き高分子樹脂フィルムをドラムの胴の直径より大き目の直径で円形に切り出し、その周縁にリングを装着し減音ドラムヘッドを構成する。
リングによって支持された減音ドラムヘッドを円筒状の胴の一方の開口端面に張り減音ドラムを構成する。
減音ドラムを構成する減音ドラムヘッドの背面に必要に応じて細条に形成した複数本の細条高分子樹脂フィルムを互に平行して所定の張力を与えた状態で配置する。複数本の細条高分子樹脂フィルムはこの発明で提案する減音ドラムヘッドと同様に60°千鳥パターンで細孔が形成された孔明き高分子樹脂フィルムを用いることが望ましい。減音ドラムヘッドの背面に配置した複数本の細条高分子樹脂フィルムはいわゆるスナッピーとして作用し、スナッピー音を生成し、減音ドラムをスネアドラムとして作用させることができる。
【0015】
減音ドラムの胴の内部には少なくとも一部が孔明き高分子樹脂フィルムに接触した共振部材を設ける。この共振部材は銅又は銅を含む金属板で構成し、この共振部材に振動ピックアップを装着し、共振部材の共振振動を電気信号に変換し、ドラム音信号として出力する。
従って、振動ピックアップを備えた減音ドラムによれば、ヘッドホンで音を聴くことができる他に振動ピックアップが出力するドラム音信号を拡声装置に入力すれば、拡声装置からドラム音を放音させることができる。このドラム音はドラムヘッドを叩く位置の変化、叩く強度等を変えることにより音色、減衰時間等を自在に変化させることができアコースティックドラムと同等の演奏表現を実現できる。
【実施例1】
【0016】
図1及び図2にこの発明で提案する減音ドラムヘッドの実施例を示す。この発明による減音ドラムヘッド10は孔明き高分子樹脂フィルム11と、この孔明き高分子樹脂フィルム11の周縁を支持するリング13とによって構成される。
高分子樹脂フィルムとしては例えば厚みが200μm〜500μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)或いはポリプロピレン等の高分子樹脂フィルムを用いることができる。高分子樹脂フィルムに形成する細孔12としては例えば直径が0.5〜2mm程度とされ、その開口率は20〜45%程度の密度とされる。
細孔12の配列パターンはこの発明では60°千鳥パターンを採用する。60°千鳥パターンとは例えば図3に示すように、各孔の周辺に60°間隔で細孔が存在する配列パターンを意味する。この細孔12の形成方法としては例えば図3に示すX1線上とX2線上の2列に相当する配列で細孔12を形成するための刃を用意し、この刃を帯状の高分子樹脂フィルムの長手方向に順次ずらしながら刃を降ろし、細孔12を形成するか、或いは帯状の高分子樹脂シートを順次一定間隔移動させる毎に刃を降ろすことにより連続して形成することができる。
【0017】
この60°千鳥パターンによれば360°どの方向に対しても均一な張力強度を得ることができる。従って、ドラムを構成する胴の一方の開口面にこの孔明き高分子樹脂フィルム11を張り付けた状態では360°どの方向に対しても均一な張力で張ることができる。この結果、叩感はアコースティックドラムのそれに限りなく近くなる。更に細孔12の直径は0.5〜2.0mmφ程度とすることにより、スティックの先が細孔12に入り込む事故が発生することはない。また、細孔12の開口率を20〜45%程度とすることにより充分な減音効果を得ることができる。
【実施例2】
【0018】
図4に孔明き高分子樹脂フィルム11をドラムヘッド部材として胴に張り付けた減音ドラムの一例を示す。図4に示す20は円筒状の胴、21はこの胴20の外周面に装着したラグ、30は孔明き高分子樹脂フィルム11に張力を与えた状態で胴20の一方の開口面に圧接させるためのリム、31はリム30にその圧接力を与えるためのテンションボルトをそれぞれ示す。
テンションボルト31をラグ21にネジ込むことにより、リム30は下向に押し付けられ、リム30の移動に伴ってリング13も下向に移動するからリング13の移動に伴って孔明き高分子樹脂フィルム11は胴20の一方の開口端面に押し付けられ、開口端面の内側では孔明き高分子樹脂フィルム11は360°全方向に張力が与えられた状態となる。孔明き高分子樹脂フィルム11は均一に外周に向かって張力が与えられる。この状態で細孔12の配列パターンが60°千鳥パターンとすることにより孔明き高分子樹脂フィルム11は全方向にわたって均一な張力で張られる。
【0019】
全方向にわたって均一な張力が得られる細孔12の配列パターンとしては60°千鳥パターンの他に、胴20の軸芯位置を中心にこの中心位置から同心円状に細孔12形成する方法も考えられる。然し乍ら、同心円状に細孔を形成するには、上述したように径の異なる円筒に、この各円筒の端面に細孔12を形成するための刃を配列して形成した治具を用意し、この治具によって、同心円状に細孔12を形成しなければならないため、治具の製造にコストが掛かる欠点がある。このような理由から、この発明では60°千鳥パターンを採用するものである。
図4に示した減音ドラムは胴20の他方の開口端面は開放されており、減音ドラムヘッド10の打面を叩けばアコースティックドラムに限りなく近くて、然もアコースティックドラムの音より20〜30dB程度減音されたドラム音を発生するため周囲に迷惑を掛けることなくドラムの練習を行なうことができる。然もその打感はアコースティックドラムのそれに限りなく近いため、ドラムの練習用としては最適である。
【実施例3】
【0020】
図5及び図6にこの発明の第3の実施例を示す。この第3の実施例では図4に示した減音ドラムにスナッピーを付設し、減音ドラムをスナッピー付のスネアドラムとして作用させる実施例を示す。尚、図5ではこの実施例の説明に必要としないリムなどの部分の構造及びスナッピーをドラムヘッドから引き外し、非接触の状態に切替えるための構造は省略して示している。
図5及び図6に示す40はスナッピーを示す。このスナッピー40は図6Aに示すように、減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11と同等の構造の孔明き高分子樹脂フィルム11を細条に切断した細条孔明き高分子樹脂フィルム11’と、この細条孔明き高分子樹脂フィルム11’を複数本互に平行した姿勢で支持する支持部材41とによって構成することができる。
【0021】
細条孔明き高分子樹脂フィルム11’は必ずしも細条に分離する必要はなく、帯状の孔明き高分子フィルム11の両端に図6に示すように支持部材41を装着し、支持部材41の間において、切目Sを互に平行して形成し、この切目Sによって互に平行した姿勢にある細条孔明き高分子樹脂フィルム11’を形成するようにしてもよい。スナッピー40の幅W1は装着対象となる減音ドラムの径に対応して決定されるが、大凡50〜100mm程度とされる。細条孔明き高分子樹脂フィルム11’の幅W2は2〜4mm程度とされる。
【0022】
スナッピー40は支持部材41を介して張力調整手段50に装着される。この張力調整手段50によってスナッピー40を構成する細条孔明き高分子樹脂フィルム11’が減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11の背面に近接して配置される。
図7に張力調整手段50の一例を示す。ここに示す張力調整手段50は枠状の可動台51と、この可動台51のスナッピー取付部51Aをドラムヘッド10の裏面と平行する向きに揺動自在に支持する支持部材52と、胴20に螺合し、胴20の内壁からの突出量を調整し、この突出量によって可動台51の回動位置を調整する張力調整ネジ53とによって構成した場合を示す。この構成により張力調整ネジ53を回動操作すれば、スナッピー40を構成する各細条孔明き高分子樹脂樹脂フィルム11’に掛かる張力を調整することができる。細条孔明き高分子樹脂フィルム11’に掛かる張力を調整することにより、細条孔明き高分子樹脂フィルム11’の共振周波数を変化させることができ、スナッピー音の音質を調整することができる。
【0023】
図5及び図6に示したスナッピー40によれば減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11と同じ構造の高分子樹脂フィルムを細条に形成した細条孔明き樹脂フィルム11’を用いたから、充分に減音されたスナッピー音を得ることができた。また音質は細条孔明き高分子樹脂フィルム11’で構成したスナッピーによれば、アコースティックドラムにおけるスナッピー音によく似たスナッピー音を得ることができた。
【実施例4】
【0024】
図8及び図9にこの発明の第4の実施例を示す。この実施例では胴20の内側に振動検出手段を設け、減音ドラムの音をヘッドホン或は拡声装置で音として聴くことができる機能を付加した減音ドラムの実施例を示す。
図8及び図9に示す実施例では鋭角に折り曲げた金属板によって共振部材60を構成し、一方の折曲片を胴20の内壁に装着し、他方の折曲片を胴20の内部空間に突出した姿勢で支持する。この場合、折曲片の境界に形成される湾曲部分を減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11の背面に接触させ、孔明き高分子樹脂フィルム11の振動を共振部材60に伝達させる。
【0025】
共振部材60は銅板或いは真鍮のように少なくとも銅を含む厚みが1.0〜2.0mm程度の金属板で構成する。長方形の金属板を長手方向の中間で鋭角に折曲げ、一方の折曲片を胴20への取付部材とし、他方の折曲片を共振部材60として作用させる。共振部材60として作用させる部分には例えば図9に示すように縦溝61、短辺方向に形成した横溝62を形成し、共振部材60を複数の共振部分63A、63B、63C、63Dに区画する。更に縦溝61によって分割した2枚の共振部材の先端に錘り64を装着し、2枚の共振部材の共振周波数を錘り64の重量によって調整する構成とした場合を示す。
【0026】
各共振部分63A、63B、63C、63Dに振動ピックアップ66を貼着し、これらの振動ピックアップ66によって各共振部分63A〜63Dの共振振動を電気信号に変換する。振動ピックアップ66としては例えば圧電式の振動ピックアップを用いることができる。複数の振動ピックアップの検出信号は特に図示しないがミクシング回路でミクシングし、ミクシングされた音信号が胴20の外部に電気信号として出力される。
図8及び図9に示した実施例によれば錘り64の重量によって2枚の共振板の共振周波数を大きく違えることができる。更に各共振部分63A、63B、63C、63Dを構成するための横溝62の形成位置によって各共振部分63A〜63Dの共振周波数を異ならせることができる。この結果、全体として広い帯域に周波数成分が分布するドラム音信号を得ることができ、音色のよいドラム音信号を得ることができる。また、共振部材60として銅乃至は銅を含む金属板とすることにより、アコースティックドラムに近い音色を得ることができた。
【実施例5】
【0027】
図10及び図11は他の振動ピックアップの例を示す。この実施例では長方形の共振部材60の一端を減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11と胴20との接合部分に突き当て、減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11の振動の節に最も近い部分に共振部材60を接触させ、振動の節に最も近い部分から高いエネルギの振動を共振部材60に印加する構成とした場合を示す。
このためには長方形の金属板の一端にテーパを付し、このテーパ部分を減音ドラムヘッド10と胴20の接合部分に差し込むと共に、第1折曲部67Aを形成し、この第1折曲部67Aによって金属板の他端側を胴20の内壁面に近づけ、胴20の内壁面に接合する位置で第2折曲部67Bを形成し、この第2折曲部67Bで折曲た端部を胴20の内壁面と平行する姿勢とし、この平行する面を胴20の内壁面への取付面として作用させる。
【0028】
テーパを付した先端と第1折曲部67Aとの間に図11に示すように複数の振動ピックアップ66を装着し、これら複数の振動ピックアップ66により各部分の振動を電気信号に変換する。
この第4の実施例の構成によれば、高い音の成分を多く含む歯切れのよいドラム音が得られた。
【実施例6】
【0029】
図12は図9に示した共振部材60に折返し部分67を形成し、この折返し部分67を胴20の上縁に形成した溝に挿入し、溝内において、減音ドラムヘッド10と胴20との間で挟み付けて支持する構造とした場合を示す。共振部材60は胴20の上縁に形成した溝内において、本ネジ等で胴20に固着してもよい。何れにしても、共振部材60は減音ドラムヘッド10を構成する孔明き高分子樹脂フィルム11に接触し、孔明き高分子樹脂フィルム11の振動が共振部材60に伝達される。
【実施例7】
【0030】
図13及び図14にこの発明の第7の実施例を示す。この実施例では共振部材60を胴20の内部において、片接梁構造で支持した場合を示す。つまり、胴20の上縁に切欠を形成し、この切欠部分において図14に示すビス孔68Aを備えた補強材68で木ネジ等により共振部材60を胴20の上縁に押さえ付け、共振部材60を片持梁構造で支持した場合を示す。共振部材60の先端には錘64を装着し、共振部材60の共振周波数を調整している。
共振部材60は上述しているように、銅乃至は銅を含む金属板で構成し、長手方向の各異なる位置に振動ピックアップ66を装着し、共振周波数の異なる振動をピックアップし、これらの信号をミックスして出力する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ドラム奏者になることを目的とする者には練習用ドラムとして好適であり、ドラム奏者にとっては電気ドラムとして活用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明によるドラムヘッドの構造を説明するための平面図。
【図2】図1に示すA−A線上の断面図。
【図3】この発明で用いた孔明き高分子樹脂フィルムに形成した細孔の配置パターンを説明するための拡大平面図。
【図4】図1に示したドラムヘッドを用いた減音ドラムの実施例を説明するための断面図。
【図5】図4に示した減音ドラムにスナッピーを付加した構造を説明するための断面図。
【図6】図5に示した実施例に用いたスナッピーの実施例を説明するための平面図。
【図7】図5に示した実施例に用いた張力調整手段を説明するための斜視図。
【図8】図4に示した減音ドラムに振動ピックアップを付加した構造を説明するための断面図。
【図9】図8に示した実施例に用いた共振部材の構造を説明するための斜視図。
【図10】共振部材の他の実施例を説明するための断面図。
【図11】図10に示した実施例を用いた共振部材の構造を説明するための斜視図。
【図12】共振部材の他の実施例を説明するための断面図。
【図13】共振部材の他の実施例を説明するための断面図。
【図14】図13に示した共振部材の構造を説明するための斜視図。
【符号の説明】
【0033】
10 減音ドラムヘッド 50 張力調整手段
11 孔明き高分子樹脂フィルム 60 共振部材
11’ 細条孔明き高分子樹脂フィルム 61 縦溝
12 細孔 62 横溝
13 リング 63A〜63D 共振部分
20 胴 64 錘り
30 リム 66 振動ピックアップ
40 スナッピー
41 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴の一方の開口端面に張られて使用される減音ドラムヘッドであって、この減音ドラムヘッドは開口率が20〜45%程度の密度で細孔が形成された孔明き高分子樹脂フィルムと、この孔明き高分子樹脂フィルムの周縁を支持するリングとによって構成されたことを特徴とする減音ドラムヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の減音ドラムヘッドにおいて、上記細孔は60°千鳥パターンに配置されていることを特徴とする減音ドラムヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載の減音ドラムヘッドが円筒状の胴の一方の開口端に張られて構成された減音ドラム。
【請求項4】
請求項3記載の減音ドラムにおいて、上記胴に張られた減音ドラムヘッドに近接して配置され、所定の張力が与えられて互に平行する姿勢で支持された複数本の細条高分子樹脂フィルムを備えた構造としたことを特徴とする減音ドラム。
【請求項5】
請求項4記載の細条高分子樹脂フィルムは請求項1又は2の何れかに記載の減音ドラムヘッドと同様に開口率が20〜45%程度の密度で細孔が形成されていることを特徴とする減音ドラム。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れかに記載の減音ドラムにおいて、上記胴の内側に装着され、一部が上記減音ドラムヘッドを構成する孔明き高分子樹脂フィルムに接触して配置された共振部材と、この共振部材の振動を電気信号に変換する振動ピックアップとを備えた構造としたことを特徴とする減音ドラム。
【請求項7】
請求項6記載の減音ドラムにおいて、上記共振部材はほぼ長方形状の金属板と、この金属板の一端側に装着された錘りとによって構成され、上記金属板は上記錘りが装着されない端部側に折曲部分を有し、この折曲部分の遊端が上記ドラムの胴に装着され、折曲部分を上記孔明き高分子樹脂フィルムの裏面に接触させ、孔明き高分子樹脂フィルムとの接触点から上記錘りの装着位置までは上記孔明き高分子樹脂フィルムの裏面から漸次離れる方向に延長される構造としたことを特徴とする減音ドラム。
【請求項8】
請求項7記載の減音ドラムにおいて、上記共振部材を構成する金属板は長手方向及び短辺方向に切込を有し、この切込によって共振周波数を異にする複数の共振部を構成し、各共振部の共振を振動ピックアップで電気信号に変換する構造としたことを特徴とする減音ドラム。
【請求項9】
請求項6記載の減音ドラムにおいて、上記共振部はほぼ長方形状の金属板によって構成され、この金属板は一方の短辺が上記孔明き高分子樹脂フィルムと上記胴との接合部分に圧接され、この接触部から所定の距離の位置に形成されて、上記金属板の他端側を上記胴の内壁に近づけるための第1折曲部と、この第1折曲部から所定の距離の位置に形成され上記金属板の他端を上記胴の内壁面と平行する取付面とするための第2折曲部とを有し、上記接触部と上記第1折曲部との間の部分に振動ピックアップを実装した構造としたことを特徴とする減音ドラム。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れかに記載の減音ドラムにおいて、上記共振部材を構成する金属板は銅乃至銅を含む金属板で構成することを特徴とする減音ドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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