説明

温室外に移動可能とした温室における栽培用棚装置

【課題】温室内で栽培され、収穫時期になった栽培物を栽培用棚ごと温室から引き出し、そのまま牽引移動、または押圧移動させるか、あるいは運搬車に乗せて、任意の場所へ移動可能とした温室における栽培用棚装置を提供する。
【解決手段】立方体枠状に形成された機枠1の下底部に、複数個の移動輪2が回転自在に設置されると共に、該機枠1上には、左右両側に栽培用凹部3を複数段に亘って階段状に設けた栽培用棚部材4を被冠固定し、且つ前記機枠1を構成する上部枠体6の上端枠9に、栽培用棚部材4の天板10を一体に固定する一方、前記天板10と上端枠9とを貫通して、クレーンCによって吊り上げるチェーン17を貫挿するフック18を1個、または複数個固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガラスや、ビニールフィルム、あるいはポリエチレンフィルム等で形成された温室内で、イチゴ、サニーレタスや菊等の果実、野菜や花等の栽培物を、移動可能な栽培用棚で栽培し、収穫時期になった栽培物を栽培用棚ごと温室から引き出し、そのまま牽引移動、または押圧移動させるか、あるいは該引き出された栽培用棚をクレーン等で吊り上げて、運搬車に乗せて、高速道路のパーキングエリア、一般道に面した空地等へ移動して降ろし、前記イチゴ等の栽培物をドライバー等の顧客に、新鮮な状態で摘み取る等の方法により収穫させ、収穫後は再び栽培用棚を温室内に戻すことができるようにした温室外に移動可能とした温室における栽培用棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室内で栽培されたイチゴ、サニーレタスや菊等の果実、野菜や花等の栽培物を、栽培業者が顧客に提供する場合は、顧客が温室内まで足を運び、栽培物を摘み取る等の方法により、該栽培物を収穫しており、前記栽培物を栽培用棚に植裁したまま、温室から外へ運び出すことができる栽培用棚は実用に供されていなかった。
【0003】
また、前記温室における栽培用棚を移動自在として、該温室内より引き出して移動するようにした技術思想につき、過去の特許文献を遡及検索しても、先行文献を一件も発見することができなかった。そして、単に、キャスター付き栽培棚につき記載した下記の特許文献を確認した。
【0004】
【特許文献1】特開2005−46025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、従来は、温室内で栽培されたイチゴ、サニーレタスや菊等の果実、野菜や花等の栽培物を栽培用棚ごと、温室の外へ引き出し、任意の場所へ移動させることができないため、顧客が、例えば、温室内で栽培されたイチゴを摘み取る、所謂、「イチゴ狩り」をする場合、顧客はいちいち温室まで出向いて、「イチゴ狩り」を楽しまねばならず、極めて不便であるという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されたものは、「温室内に於ける植物の高設栽培方法及びそのキャスター付き栽培棚」であって、キャスターを介して栽培棚が移動するが、その移動範囲は温室内であり、該各栽培棚をキャスターを介して並列密集状態に並べることによって、栽培面積を広げることができるという効果を奏するが、栽培棚を温室外まで移動させるという技術思想については、全く開示されていないし、またそれを示唆する記載もない。
【0007】
本発明は、前記観点より発明をなしたもので、温室内において移動可能に設置された栽培用棚で、果実、野菜や花等の栽培物を栽培し、収穫時期になった栽培物を、栽培用棚ごと温室から引き出し、そのまま牽引、または押圧移動させるか、あるいはクレーン等で吊り上げて、運搬車に乗せて高速道路のパーキングエリア、一般道に面した空地等まで移動して降ろし、栽培物を顧客に収穫させるようにした温室外に移動可能とした温室における栽培用棚装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、立方体枠状に形成された機枠の下底部に、複数個の移動輪が回転自在に設置されると共に、該機枠上には、左右両側に栽培用凹部を複数段に亘って階段状に設け、且つ前記栽培用凹部を構成する底板に複数個の水抜き孔を穿設して形成された栽培用棚部材を、水平状態に被冠固定し、且つ前記機枠を構成する上部枠体の上端枠に、栽培用棚部材の天板を一体に固定する一方、前記天板と上端枠とを貫通して、クレーンによって吊り上げるチェーンを貫挿するフックを1個、または複数個固定するという手段、または、
立方体枠状に形成された機枠の下底部に、複数個の移動輪が回転自在に設置されると共に、該機枠上には、左右両側に栽培用凹部を複数段に亘って階段状に設け、且つ前記栽培用凹部を構成する底板の長手方向いずれか一方側端部に、1個、または複数個の水抜き孔を穿設し、更に該各水抜き孔に排水口が地面に接地するよう、排水用ホースを取付けて形成された栽培用棚部材を、前記水抜き孔を穿設した方向へ低く傾斜させて被冠固定し、且つ前記機枠を構成する上部枠体の上端枠に、栽培用棚部材の天板を一体に固定する一方、前記天板と上端枠とを貫通して、クレーンによって吊り上げるチェーンを貫挿するフックを1個、または複数個固定するという手段、
を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、温室内で、イチゴ、サニーレタスや菊等の果実、野菜や花等の栽培物を、移動可能な栽培用棚で栽培し、収穫時期になった栽培物を栽培用棚ごと温室から引き出し、そのまま牽引移動、または押圧移動させるか、あるいは該引き出された栽培用棚をクレーンで吊り上げて、運搬車に乗せて、高速道路のパーキングエリア、一般道に面した空地等へ移動して降ろし、前記イチゴ等の栽培物をドライバー等の顧客に、新鮮な状態で摘み取る等の方法により収穫させ、収穫後は再び栽培用棚を温室内に戻すことができるので、従来のように、顧客が、例えば、温室内で栽培されたイチゴを摘み取る、所謂、「イチゴ狩り」をする場合、顧客はいちいち温室まで出向くことなく、「イチゴ狩り」を楽しむことができ、生産者にとっては収益の増加を図ることができる。
請求項2記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明の効果の外に、土内に散水された後、土中に吸水されなかった余分な水が地面上に滴下することがなく、地面上に直接流下するので、顧客は前記水で衣服や靴を汚す虞れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ガラス、ビニールフィルム、あるいはポリエチレンフィルム等で形成された温室内で栽培する栽培物を、移動可能な栽培用棚で栽培し、該栽培用棚を温室内へ引き出し、温室外の任意の場所へ移動可能とした温室における栽培用棚装置である。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明実施例1の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置の一部を切欠いて示す全体の斜視図、図2は、同縦断面図、図3は、同平面図、図4は、本発明栽培用棚装置を構成する機枠全体の平面図、図5は、本発明栽培用棚装置を温室内において並列密集させた状態を示す概略説明図である。
【0012】
本発明温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置Aは、鋼材、または硬質プラスチック製の丸パイプ、または角パイプを用いて立方体枠状に形成された機枠1の下底部に、複数個のタイヤ、あるいはキャスター等の移動輪2が回転自在になるよう設置されると共に、該機枠1上に、左右両側に栽培用凹部3を複数段に亘って階段状に設けた栽培用棚部材4を、水平状態に被冠固定して形成されている。
【0013】
前記機枠1は、その下端に、前記栽培用棚部材4の下底部の巾と長さに合わせたベースとなる下部枠体5が配設されると共に、該下部枠体5上に、該栽培用棚部材4の高さと巾に合わせて逆凹状に形成された上部枠体6が一体に連結固定され、更に、該上部枠体6の両側部に、前記栽培用棚部材4の階段状に設けられた栽培用凹部3部分を載置する載置用枠体7が間隔を有して複数段に亘って階段状に突設されている。なお、前記下部枠体5の両側端部は、最下段の載置用枠体としての役目を果たす。
【0014】
前記下部枠体3および上部枠体6、並びに前記複数段に亘って設けられた載置用枠体7には、それぞれ補強杆8が連結固定されて、その強度性が保持されている。
【0015】
一方、前記栽培用棚部材4は、鋼板、または強化プラスチックにより、前記機枠1に被冠固定できるように、両側がそれぞれ外方へ拡開した逆凹状に形成されている。すなわち、栽培用棚部材4は、前記機枠1を構成する上部枠体6の上端枠9の長さと巾に合わせて形成された天板10の両側端縁に、前記複数段に亘って設けられた各載置用枠体7および下部枠体5の両側端部に載置する、栽培用凹部3を複数段に亘って設けた棚板11を一体に連結固定して形成されている。
【0016】
前記各栽培用凹部3は、図に示すように、底板12の外周側縁に壁板13を立設して形成され、果実等の植栽物14を栽培する土15を、前記底板12と壁板13とより成る栽培用凹部3内に投入すると共に、該栽培された植栽物14が上下方向に重なることがないように、下方へ行くに従い外方向へ拡開するようにして複数段に亘って階段状に連結固定して形成されている。なお、前記底板12には、土15内に散水され、該土15中に吸水されなかった余分な水分を排出するための、複数個の水抜き孔16が穿設されている。
【0017】
また、前記栽培用棚部材4は、機枠1に上方部より水平状態に被冠固定されるが、前記機枠1を構成する上部枠体6の上端枠9に天板10をボルト等(図示せず)によって一体に固定し、更に、該天板10と上端枠9とを貫通して、クレーンC(図1においては、クレーン本体は図示せず、クレーンのフックのみが図示されている)によって吊り上げるためのチェーン17を貫挿するフック18を1個、または複数個固定して形成されている。
【0018】
前記構成より成る本発明実施例1による栽培用棚装置Aの作用について説明する。温室H内に設置された本発明栽培用棚装置Aを構成する栽培用棚部材4の各棚板11の栽培用凹部3内に土15を投入して、該土15内にイチゴ等の植栽物14の種子を蒔く。その後、本発明栽培用棚装置Aは、従来同様植栽物14の収穫時までは、温室H内に留置しておく。
【0019】
そして、イチゴ等の植栽物14が成育して収穫時となったときは、本発明栽培用棚装置Aを移動輪2を介して、温室H外へ押し出し、然る後、チェーン17にクレーンCを掛止して、該クレーンCによって本発明栽培用棚装置Aを吊り上げて、一旦トラック等の運搬車に乗せ、運搬車ごと高速道路のパーキングエリア、一般道に面した空地等まで移動し、再びクレーンCで本発明栽培用棚装置Aを吊り上げて、前記パーキングエリアや空地等に降ろして、ドライバー等の顧客に自由に、イチゴ等の植栽物14を摘み取る等の収穫作業をさせることができる。
【0020】
また、本発明栽培用棚装置AをクレーンCで吊り上げることなく、前記パーキングエリアや空地まで移動させることができる場合は、そのまま移動輪2を介して、牽引移動、または押圧移動させることも可能である。
【0021】
一旦、温室Hから引き出された本発明栽培用棚装置Aは、前記とは逆に、パーキングエリアや空地からクレーンCで吊り上げて、トラック等の運搬車に乗せ温室H外まで移送して、再びクレーンCで吊り上げて降ろし、移動輪2を介して押圧移動させて、温室H内へ押圧移動させる。更に、本発明栽培用棚装置Aは、前記作用の外に、図5に示すように、複数の本発明栽培用棚装置Aを並列密集して集合させることもできるので、狭い温室の有効利用をも図ることができる。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて詳細に説明する。実施例2は、前記実施例1の変形である。すなわち、前記実施例1は、栽培用棚部材4が機枠1上に水平状態に被冠固定され、且つ各栽培用凹部3内の底板12に、土15内に散水され、該土15中に吸水されなかった余分な水分を排出するための水抜き孔16が穿設されているため、例えば、顧客が果実等を収穫するときに、前記地面より上方に位置する水抜き孔16より、水が滴下して、衣服や靴等を汚してしまうという虞れがあるため、本発明の実施例2は、これらの虞れがないようにしたものである。以下、実施例2につき説明する。なお、実施例2において、実施例1と共通する符号はそのまま使用して説明する。
【0023】
本発明の実施例2による栽培用棚装置Bは、栽培用棚部材24が、機枠21に、該機枠21の長手方向いずれか一方側へ傾斜して被冠固定して形成されている。
前記栽培用棚部材24を機枠21上に、長手方向いずれか一方側へ傾斜して被冠固定させる手段としては、特に限定する必要はないが、好ましくは、図6に示すような構成とすることが推奨される。すなわち、本発明の実施例2による栽培用棚装置Bは、図6の正面図に示すように、該機枠21を、その長手方向いずれか一方側(図6においては、左側方向)が低くなるように、傾斜して形成し、且つ該機枠21上に栽培用棚部材24を被冠固定して形成されている。
【0024】
前記構成より成る機枠21上に被冠固定される栽培用棚部材24の各栽培用凹部23内の底板32に、実施例1におけるような複数個の水抜き孔16を、底板32のほぼ全面に亘って穿設することなく、前記機枠21の低くなった側に位置する前記各栽培用凹部23内の各底板32の端縁部側に、1個、または複数個の水抜き孔36をそれぞれ穿設すると共に、該各水抜き孔36に、排水口37が地面上に接地するようにして、排水用ホース38を取付けて形成してある。
【0025】
前記構成より成る栽培用棚部材24を機枠21上に被冠固定すると、該栽培用棚部材24は一方側が低くなって傾斜して配設され、土15内に散水され、該土15中に吸水されなかった余分な水は、底板32へ流下し、然る後、該底板32の傾斜面に沿って低くなった水抜き孔36側へ流れ、排水用ホース38を経て、排水口37から地面上に排水され、実施例1におけるような、地面上に滴下することはない。
【0026】
前記構成より成る実施例2による本発明栽培用棚装置Bの作用について説明する。栽培用棚部材24が、長手方向いずれか一方側へ低くなるように傾斜して形成された機枠21に被冠固定されることにより、前記栽培用棚部材24も傾斜するので、土15内に散水され、該土15中に吸水されなかった余分な水は、必ず底板32の低くなった側に穿設された水抜き孔36側へ流れ、排水用ホース38を経て、排水口37から地面上に排水されるので、顧客の衣服や靴等を汚すことがない。なお、その他の作用、および効果は、実施例1のものと同一であるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明実施例1の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置の一部を切欠いて示す全体の斜視図である。
【図2】同縦断面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】本発明実施例1の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置を構成する機枠全体の平面図である。
【図5】本発明実施例1の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置を、温室内において並列密集させた状態を示す概略説明図である。
【図6】本発明実施例2の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置を構成する機枠全体の正面図である。
【図7】本発明実施例2の温室外へ移動可能とした温室における栽培用棚装置の平面図である。
【図8】同縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
A・B 栽培用棚装置
H 温室
C クレーン
1 機枠
2 移動輪
3 栽培用凹部
4 栽培用棚部材
5 下部枠体
6 上部枠体
9 上端枠
10 天板
17 チェーン
18 フック
21 機枠
23 栽培用凹部
24 栽培用棚部材
32 底板
36 水抜き孔
37 排水口
38 排水用ホース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方体枠状に形成された機枠の下底部に、複数個の移動輪が回転自在に設置されると共に、該機枠上には、左右両側に栽培用凹部を複数段に亘って階段状に設け、且つ前記栽培用凹部を構成する底板に複数個の水抜き孔を穿設して形成された栽培用棚部材を、水平状態に被冠固定し、且つ前記機枠を構成する上部枠体の上端枠に、栽培用棚部材の天板を一体に固定する一方、前記天板と上端枠とを貫通して、クレーンによって吊り上げるチェーンを貫挿するフックを1個、または複数個固定したことを特徴とする温室外に移動可能とした温室における栽培用棚装置。
【請求項2】
立方体枠状に形成された機枠の下底部に、複数個の移動輪が回転自在に設置されると共に、該機枠上には、左右両側に栽培用凹部を複数段に亘って階段状に設け、且つ前記栽培用凹部を構成する底板の長手方向いずれか一方側端部に、1個、または複数個の水抜き孔を穿設し、更に該各水抜き孔に排水口が地面に接地するよう、排水用ホースを取付けて形成された栽培用棚部材を、前記水抜き孔を穿設した方向へ低く傾斜させて被冠固定し、且つ前記機枠を構成する上部枠体の上端枠に、栽培用棚部材の天板を一体に固定する一方、前記天板と上端枠とを貫通して、クレーンによって吊り上げるチェーンを貫挿するフックを1個、または複数個固定したことを特徴とする温室外に移動可能とした温室における栽培用棚装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−153394(P2009−153394A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331804(P2007−331804)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(593030428)
【Fターム(参考)】