説明

温度センサー保護管付熱処理ローラ

【課題】 ローラ本体の周壁内に、ローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる気液二相の熱媒を封入するジャケット室が周方向に複数設けられた熱処理ローラにおいても、表面温度を検出する温度センサーを簡単に装着することができるようにすること。
【解決手段】 ローラ本体1の周壁内に、ローラ本体1の端面で開口し、ジャケット室11に連通する孔1aを明け、前記孔1aに、一端を開口し他端を閉塞する保護管18を、閉塞端18aを先頭に挿入し、前記保護管18の開口端の外周と前記ローラ本体1の開口端1bの内周との間を溶接などで密封固着し、温度検出素子とリード線をコ字状の鋼管内に配置した温度センサー19を、前記保護管18内と回転軸2の中空孔2a内に挿入してローラ本体1に温度センサー19を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度センサー保護管付熱処理ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
回転するローラの表面に被処理物を当接し、その被処理物を所定の温度に加熱したり、加熱された被処理物を所定の温度に奪熱することは一般的に行われている。このような加熱あるいは奪熱などの熱処理するローラでは、ローラの表面を所定の温度に維持するためにローラの表面近くの肉厚内に温度検出素子を配置する場合がある。
【0003】
図2は、このような熱処理をする熱処理ローラの一例を示すもので、1はローラ本体で、これに回転駆動軸2が連結されており、軸受ケース3の軸受4によって回転自在に支持されている。軸受ケース3には固定盤5がねじ6によって固定されており、固定盤5はローラ本体1の開口面にこれを覆うように相対して配置されている。
【0004】
固定盤5には、熱源となるローラ本体1と同軸の誘導コイル7などからなる磁束発生機構8が支持されている。なお、鉄心を使用する場合には誘導コイルを巻装した鉄心を固定盤5に固定すれば良い。このローラでは、誘導コイル7を交流電流で励磁すると、ローラ本体1の周壁に電流が誘起して発熱する。
【0005】
ローラ本体1の周壁10内に、軸心方向と同方向に沿って伸びるジャケット室11が周方向に複数設けられており、その各ジャケット室11の内部に気液二相の熱媒が封入されている。各ジャケット室11の両端部は、ローラ本体1の円周方向に沿って環状に形成された連通孔12と連通している。
【0006】
そして、図3に示すようにローラ本体1の端部には、ローラ本体1の端面から連通孔12の下方を通り、隣り合うジャケット室11の間に到達する傾斜した温度検出素子挿入穴13が形成され、その温度検出素子挿入穴13にリード線17に接続した温度検出素子16が挿入され、リード線17はローラ本体1の端面から導出されている。
【特許文献1】特開2000−36378号公報
【0007】
従来、ローラ本体1の端面から導出したリード線17は、ローラ本体1の端面に適宜固定した後、中空の回転駆動軸2内を挿通し、回転駆動軸2に取り付けた例えば回転変成機の回転側の1次コイルに接続し、回転変成機の固定側の2次コイルから温度検出信号を導出し、この温度検出信号に基づいて誘導コイル7を励磁する電流を調整し、ローラ本体1の表面の温度を所定の温度に維持している。
【0008】
しかし、以上のようにローラ本体1の端面から斜め方向に連通溝12やジャケット室11を突き抜けないように温度検出素子挿入穴13を形成するには、慎重さを要しその穴を形成する作業がきわめて面倒で手間がかかるといった問題があった。また、リード線を回転駆動軸内に挿通する作業もきわめて面倒で手間がかかるといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ローラ本体の周壁内に、ローラの軸心方向と同方向に沿って伸びる気液二相の熱媒を封入するジャケット室が周方向に複数設けられた熱処理ローラにおいても、表面温度を検出する温度検出素子を簡単に任意の位置に装着することができるようにし、斯かる問題を解消する点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱処理ローラのローラ本体の周壁内に、ローラ本体の端面で開口し、ローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる孔を明け、前記孔内に一端を開口し他端を閉塞する保護管を、閉塞端を先頭に挿入し、前記保護管の開口端の外周と前記ローラ本体の開口端の内周との間を密封固着し、前記保護管内に温度センサーを収納してなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
発明では、ローラ本体の周壁内に、一端を開口し他端を閉塞する保護管を挿入し、その保護管の開口端の外周とローラ本体の端面とを封着固定するので、ローラ本体の周壁内に気液二相の熱媒体を封入するジャケット室や環状の連通溝の存在を考慮することなく、温度検出素子を収納する穴を簡単に形成することができ、また、温度検出素子をローラ本体の軸心方向の任意の位置に設置することができる。さらに温度センサを、温度検出素子とこの温度検出素子に接続されたリード線とをコ字状に折り曲げた一本の鋼管内に収納した構成とすれば、その鋼管を保護管内とローラ本体の回転軸内へ一度に挿入することができ、温度検出素子の装着やリード線の引き出しに手間がかからず、簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ローラ本体の周壁内に、ローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる気液二相の熱媒を封入するジャケット室が周方向に複数設けられた熱処理ローラにおいても、表面温度を検出する温度センサーを簡単に装着することができるようにする目的を、ローラ本体の周壁内に、一端を開口し他端を閉塞する保護管を挿入し、その保護管の開口端の外周とローラ本体の端面とを密封固定し、その保護管内に温度センサーを収納することにより実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る温度センサー保護管付熱処理ローラの部分断面図である。図1において、1はローラ本体であり、図2に示すローラ本体と同様に、周壁の内部に複数の気液二相の熱媒体を封入するジャケット室11が周方向に複数設けられており、各ジャケット室11はローラ1の軸心方向に沿って延び、その両端部において連通する環状の連通溝12が周壁の内部に形成されている。ローラ本体1には端面で開口する孔1aが形成され、その孔1aは連通溝12およびジャケット室11と直線状に連通している。
【0014】
18は一端18aを閉塞した直管型の保護管で、閉塞端18aを先頭にローラ本体1の端面で開口する孔1aを通し、ジャケット室11に挿入され、保護管18の開口端の外周とローラ本体1の孔1aの開口端1bの内周との間を溶接又はロー付けなどで密封固着されている。この密封固着のより連通溝12およびジャケット室11内の気液二相の熱媒体が外部へ漏れることは防止される。
【0015】
2はローラ本体1を固定した回転駆動軸で、端面で開口し軸心に沿って伸びる貫通孔2aが形成されている。回転駆動軸2の端部は、図2に示す回転駆動軸2と同様に軸受ケース3の軸受4によって回転自在に支持され、図示しないモータにより回転駆動する。また、その端部には図示しない温度検出信号を固定側へ導出する回転変成機の回転側の1次コイルが固定されている。
【0016】
19は温度センサーであり、温度センサー19はコ字状の鋼管内部に、鋼管に沿って温度検出素子とこの温度検出素子に接続したリード線を収納して構成され、温度検出素子はコ字状の鋼管の一方の先端部内に配置され、リード線は鋼管の他方の端部から導出されている。そして、鋼管のリード線を導出した後端を回転駆動軸2の開口からその内部に挿入するとともに、鋼管の温度検出素子を配置した先端を保護管18の開口から保護管18内へ挿入し、ローラ本体1への温度センサーの取付を終了する。これにより、温度検出素子は所望の位置に配置され、温度検出素子に接続したリード線は、回転駆動軸に取付けたたとえば回転変成機の1次コイルの位置まで簡単に配線することができる。なお、符号21はローラ本体1の端面を覆う蓋であり、符号20は管継ぎ手である。
【0017】
以上の実施例では、保護管18をジャケット室11内に配置しているが、別途ローラ本体の周壁内に、ローラ本体の端面で開口し、ローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる孔を形成し、その孔内に保護管を配置するようにしてもよい。また、実施例では、ローラ本体を片端で支持する、いわゆる片持ち式の誘導発熱ローラであるが、両持ち式の誘導発熱ローラであってもよく、さらに誘導発熱ローラのみならず加熱源をヒータあるいは熱媒流体とする加熱又は奪熱ローラであってもよい。さらに、両持ち式のローラでは、両側の端面で開口する保護管を設けるようにしてもよく、さらにまた、温度センサーは鋼管内に収納したものに限られるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る温度センサー保護管付熱処理ローラの一部断面図である。
【図2】誘導発熱ローラの一例を示す断面図である。
【図3】従来の温度センサーを装着したローラの断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 熱ローラ本体
1a 保護管挿入孔
2 回転駆動軸
11 ジャケット室
12 環状の連通孔
18 保護管
19 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ本体の周壁内に、ローラ本体の端面で開口し、ローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる孔を明け、前記孔内に一端を開口し他端を閉塞する保護管を、閉塞端を先頭に挿入し、前記保護管の開口端の外周と前記ローラ本体の開口端の内周との間を密封固着し、前記保護管内に温度センサーを収納してなることを特徴とする温度センサー保護管付熱処理ローラ。
【請求項2】
ローラ本体を回転駆動する回転軸を端面で開口する中空とされ、温度検出素子と該温度検出素子に接続されたリード線とをコ字状に折り曲げた一本の鋼管内に収納してなる温度センサーを、前記回転軸の中空内とローラ本体の周壁内に設けた保護管内に挿入してなることを特徴とする請求項1に記載の温度センサー保護管熱処理ローラ。
【請求項3】
ローラ本体は、そのローラ本体の周壁内にローラ本体の軸心方向と同方向に沿って伸びる、気液二相の熱媒体を封入するジャケット室を有し、前記ジャケット室内に温度センサーを収納する保護管を挿入してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の温度センサー保護管付熱処理ローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate