説明

温度センサ

【課題】信頼性を確保しつつ、応答性を高めるとともに、従来の取付形状と変更することなく小型化することのできる温度センサを提供する。
【解決手段】温度センサ10は、二つのサーミスタ20A、20Bが、ホルダー30を介して保護管11に保持されている。ホルダー30には平面部が形成され、充填剤60を、保護管11の内周面と平面部、側面部との間の空間を通して保護管11内の全体にわたって行き渡らせる。また、保護管11内のサーミスタ20A、20Bは、素子本体21が並列し、それぞれ保護管11の内周面に近接して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器の湯や、各種の雰囲気等の温度を検出する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の目的に用いられる温度センサの温度検出素子として、サーミスタが用いられているのは周知の通りである。
給湯器の湯や、各種の雰囲気等の温度を検出する温度センサにおいては、有底筒状のケース内にサーミスタを収容し、流体の流路内にはケースのみを露出させる構成が採用されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。センサと流体との絶縁、防水等を図るためである。
【0003】
また、一つの温度センサに、二つのサーミスタを備える構成の温度センサが存在する(例えば、特許文献6参照。)一方のサーミスタが故障等した場合に、他のサーミスタを用いることで温度検出を行ったり、二つのサーミスタでの検出温度を比較することでサーミスタの故障診断を行ったりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−68698号公報
【特許文献2】特開平10−221179号公報
【特許文献3】特開2003−240642号公報
【特許文献4】特開2002−289407号公報
【特許文献5】実用新案登録第3028906号公報
【特許文献6】特開2010−54062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように二つのサーミスタを備えた温度センサにおいては、信頼性を確保しつつ、応答性を高め、応答性を均一化することが常に要求されている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、信頼性を確保しつつ、応答性を高めるとともに、二つのサーミスタの応答を均一化することのできる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度センサは、一端側が閉塞され、他端側が開口した有底筒状の保護管と、保護管内の一端側に配置された二つのサーミスタと、二つのサーミスタのそれぞれの両極に接続された配線と、保護管内で、配線のそれぞれに一端が接続され、他端が保護管外に導出されたリード線と、保護管内で、配線とリード線との接続部を保持する絶縁性材料からなるホルダーと、を備える。このような温度センサにおいては、保護管内で、配線とリード線との接続部を、絶縁性材料からなるホルダーで保持することで、接続部と保護管との絶縁を確実に図ることができる。また、保護管を筒状形状としたことで、保護管を介してサーミスタに伝達される熱を均一化させ、二つのサーミスタの応答性を均一化することができ、また配管等に取り付ける場合に、方向性が発生しない。
ここで、ホルダーは、外周面に平面部を有し、当該ホルダーを保護管内に挿入したときに、保護管の内周面と平面部との間に空隙が形成されるようにする。そして、保護管内には絶縁性を有した硬化性材料からなる充填剤が充填され、充填剤により、保護管内のサーミスタ、配線、リード線、ホルダーが固定される。ホルダーの外周面の平面部により保護管の内周面と平面部との間に空隙が形成されることで、保護管内での充填剤の流路を確保することができ、保護管内の全体に充填剤を行き渡らせることができる。
【0007】
また、二つのサーミスタは、保護管内で、当該保護管の径方向に並列に配置され、それぞれのサーミスタと保護管の内周面とが近接していることを特徴とする。このようにすることで、保護管の外部の熱が、保護管を介してサーミスタに伝達されやすくなり、また、二つのサーミスタの熱応答性能は同等レベルとなる。
【0008】
ホルダーは、二つのサーミスタのそれぞれに対応して設けることができる。この場合、サーミスタのそれぞれに接続された二本の配線と、当該二本の配線に接続される二本のリード線との接続部をホルダーで保持する。
ホルダーには、二本の配線と、当該二本の配線に接続される二本のリード線とを収容する溝が形成され、溝が開口した側の面を、保護管内で他のホルダーに対向させて設けるのが好ましい。これにより、配線およびリード線と保護管との間にはホルダーが介在し、その耐電圧性能を高めることができる。
【0009】
ここで、二つのサーミスタは、いかなる特性を有したものとしても良いが、同じ特性を有したものとすると、そのような温度センサにおいては、一方のサーミスタが壊れた際も、他方のサーミスタを継続して使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護管内で、配線とリード線との接続部を、絶縁性材料からなるホルダーで保持することで、配線とリード線との接続部と保護管との絶縁を確実に図ることができる。
そして、ホルダーの外周面の平面部により保護管の内周面と平面部との間に空隙が形成されることで、保護管内での充填剤の流路を確保し、保護管内の全体に充填剤を行き渡らせて、サーミスタ、配線、リード線と、保護管との絶縁、固定を確実に行うことができる。これにより温度センサの小型化が可能となり、従来の温度センサと取付形状を変更することなく使用することもできる。
また、二つのサーミスタを、保護管内で並列に設けて保護管の内周面と近接させることで、保護管の外部の熱が保護管を介してサーミスタに伝達されやすく、温度センサを応答性に優れるものとすることができる。
このようにして、二つのサーミスタを備える温度センサにおいても、信頼性を確保しつつ、応答性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本実施の形態における温度センサの断面図、(b)は(a)に直交する方向の断面図である。
【図2】温度センサの外観を示す図である。
【図3】(a)はホルダーの平面図、(b)は(a)の立断面図、(c)は(b)の側断面図である。
【図4】保護管内に二つのホルダーを配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における温度センサの構成を説明するための図である。
図1に示すように、温度センサ10は、保護管11内に、二つのサーミスタ20A、20Bが収容された構成を有している。
【0013】
保護管11は、ステンレス等からなる金属製で、先端部11aが閉塞された断面円形の有底筒状とされている。保護管11の外周面の所定位置には、外周に張り出すバルジ部11bが形成され、このバルジ部11bの一面側に押し当てた状態で環状の押さえリング12が圧入されている。これらバルジ部11bおよび押さえリング12は、温度センサ10を、保護管11の先端部11a側を流路内に突出させた状態で配管の外側から取り付けるときに、その突出量の位置決め、Oリングの保持、および図示しないナット等によって配管に固定するためのものである。
【0014】
サーミスタ20A、20Bは、それぞれ、サーミスタチップをガラス中に封入した素子本体21と、素子本体21中のサーミスタチップの両電極に一端が接続された一対のデュメット線(配線)22、22と、を備える。
【0015】
各サーミスタ20A、20Bのデュメット線22、22には、それぞれ、リード線23、23が接続されている。本実施形態においては、デュメット線22、22とリード線23、23とは、超音波溶接により接続されている。ただし、その接続法については何らこれに限定するものではない。
図2に示すように、リード線23、23は、保護管11の開口端側から外部に導出し、温度センサ10のコントローラ(図示無し)に接続するための端子ハウジング13が、リード線23,23の他端に設けられている。ここで、二つのサーミスタ20A、20Bのリード線23、23は、環状の保護チューブ14や束線バンドによって束ねられており、これらリード線23、23が裂けて分離し、保護管11内の素子本体21等に負担が掛かるのを回避するとともに、内部への水分侵入によるセンサ異常の回避や性能低下を防止している。
【0016】
図1に示したように、各サーミスタ20A、20Bのデュメット線22、22とリード線23、23との接続部分は、それぞれ、例えば樹脂等の絶縁性材料からなるホルダー30によって保持されている。このホルダー30は、デュメット線22、22とリード線23、23を保持・固定するとともに、デュメット線22、22およびリード線23、23と、保護管11との絶縁を図る機能を有する。
【0017】
図3に示すように、ホルダー30には、二本一対の溝31、31が形成され、それぞれの溝31に、一本のデュメット線22とリード線23とが保持されている。より詳しくは、各溝31において、ホルダー30の一端側に、二本のデュメット線22の被覆をそれぞれ保持するデュメット線保持部31a、31aが設けられ、ホルダー30の他端側に、リード線23の被覆を保持するリード線保持部31bが設けられている。デュメット線保持部31aは、デュメット線22の外径にほぼ等しい幅を有している。一方、リード線保持部31bは、リード線23の外径にほぼ等しい幅を有している。リード線保持部31bは、収容した二本のリード線23が抜け出るのを防止するため、爪状の係止爪部32を形成するのも好ましい。デュメット線保持部31aと、リード線保持部31bとの間には、各デュメット線22とリード線23との接続部を収容する接続部収容部31cが形成されている。接続部収容部31cは、それぞれのデュメット線保持部31a、31aに連続して形成されており、双方の接続部収容部31c、31c間には、絶縁壁33が形成されている。
【0018】
このようなホルダー30は、溝31、31が開口している側の側面(面)30aが平面とされている。そして、図4に示すように、二つのサーミスタ20A、20Bのデュメット線22、22とリード線23、23をそれぞれ保持する二つのホルダー30、30を、側面30a、30aどうしを対向させた状態で、保護管11内に挿入されている。
【0019】
ホルダー30において、対となる他のホルダー30に対向する側面30a以外は、全体として略半円形をなしている。ただし、ホルダー30において、側面30aと対向する反対側には、側面30aとほぼ平行な平面部30bが形成されている。側面30aと平面部30bとの間隔sは、保護管11の内径rより小さく設定されている。これにより、二つのホルダー30を互い対向させて保護管11内に挿入した状態で、保護管11の内周面と平面部30bとの間には、断面略三日月状の空間40が形成される。
【0020】
また、ホルダー30において、側面30aに隣接する位置には、側面30aにほぼ直交する側面部30c、30cを形成することもできる。この場合も、互いに対向する二つの側面部30c、30cの間隔dは、保護管11の直径2rよりも小さく設定され、これによって、二つのホルダー30を互いに対向させて保護管11内に挿入した状態で、保護管11の内周面と側面部30c、30cとの間には、断面略三日月状の空間50を形成することができる。
【0021】
そして、平面部30bと、その両側の側面部30c、30cとの間には、保護管11の内径rとほぼ等しい曲率半径を有する曲面部30d、30dが形成されている。二つのホルダー30を互いに対向させて保護管11内に挿入した状態で、これら曲面部30d、30dが保護管11の内周面に沿うことで、ホルダー30のガイドとして機能する。
【0022】
このようなホルダー30には、サーミスタ20A、20Bのそれぞれが、二本のデュメット線22とリード線23とを溝31、31に収容して保持される。
【0023】
前述したように、二つのホルダー30、30の側面30a、30aどうしを突き合わせた状態で保護管11内に挿入されたサーミスタ20A、20Bは、素子本体21、21を、保護管11の径方向であって、二つのホルダー30、30を重ね合わせた方向に並列させた状態とされている。このとき、保護管11の内周面に、並列した二つの素子本体21、21、の外周面が近接するようになっている。これにより、素子本体21と保護管11との間の熱伝搬が迅速に行われ、応答性が向上する。
【0024】
また、保護管11内には、エポキシ樹脂等の絶縁性材料からなる充填剤60が充填されており、デュメット線22、22とリード線23、23をそれぞれホルダー30に固定するとともに、サーミスタ20A、20Bやホルダー30、30を、保護管11に対して固定し、さらには、保護管11と、保護管11内の素子本体21、デュメット線22、22、リード線23、23間の絶縁を図る。さらに、充填剤60により、保護管11内の防水も図られる。
【0025】
なお、サーミスタ20A、20Bは、同じ特性の同種類の素子を設けるのが好ましい。これにより、サーミスタ20A、20Bの一方が故障した場合に、もう一方をバックアップとして用いることができる。
【0026】
このような温度センサ10は、給湯器の配管内に、保護管11の先端部11a側を突出した状態で設置される。そして、保護管11を介して配管内を流れる湯の温度がサーミスタ20A、20Bに伝搬され、その電気信号がデュメット線22、22、リード線23、23を介して外部のコントローラに伝送されることによって、コントローラにおいて湯温が検出される。
【0027】
さて、このような温度センサ10を製作する際には、事前に素子本体21のデュメット線22、22とリード線23、23と、ホルダー30に収めて接続しておく。
そして、保護管11内に、エポキシ樹脂等の未硬化状態の充填剤60を所定量入れておく。この状態で、サーミスタ20A、20Bおよびホルダー30を保護管11内に挿入する。すると、未硬化状態の充填剤60が、保護管11の内周面と、サーミスタ20A、20Bおよびホルダー30との間の空間40、50を通ってせり上がってくる。そして、充填剤60が固化することで、サーミスタ20A、20Bおよびホルダー30が保護管11に固定される。
【0028】
なお、保護管11内にサーミスタ20A、20Bおよびホルダー30を挿入するに先立ち、素子本体21の外周面等に、シリコーンワニス等の緩衝材を塗布しておくのが好ましい。この緩衝材は、充填剤60により、素子本体21が損傷するのを防ぐためである。
【0029】
上述したような温度センサ10によれば、二つのサーミスタ20A、20Bが保護管11内に収容され、ホルダー30を介して保護管11に保持されている。このとき、ホルダー30には平面部30b、側面部30cが形成されているため、充填剤60を、保護管11の内周面と平面部30b、側面部30cとの間の空間40、50を通して保護管11内の全体にわたって行き渡らせることができる。したがって、充填剤60により、保護管11内の素子本体21、デュメット線22、22、リード線23、23の絶縁、固定、防水を確実に行うことができ、信頼性の高い温度センサ10を提供することができる。
また、保護管11の内周面と平面部30b、側面部30cとの間の空間40、50を通して充填剤60が保護管11内で流動できるので、サーミスタ20A、20Bを保護管11内に挿入する際に、サーミスタ20A、20Bを保護管11の奧までスムーズに入れることができる。
【0030】
また、二つのサーミスタ20A、20Bに対応した二つのホルダー30、30は、それぞれ、デュメット線22、22、リード線23、23を保持する溝31が開口した側の側面30aどうしを対向させて保護管11内に配置されている。これにより、デュメット線22、22、リード線23、23と保護管11との間に、絶縁性材料からなるホルダー30が介在することになり、耐電圧性能を高くすることができる。
【0031】
また、保護管11内のサーミスタ20A、20Bは、素子本体21が並列し、それぞれ保護管11の内周面に近接して設けられているため、保護管11を介して素子本体21に熱が伝わりやすく、温度センサ10を感度に優れるものとすることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、温度センサ10の各部の構成、材質等について例示をしたが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
10…温度センサ、11…保護管、11a…先端部、11b…バルジ部、12…リング、20A、20B…サーミスタ、21…素子本体、22…デュメット線(配線)、23…リード線、30…ホルダー、30a…側面(面)、30b…平面部、30c…側面部、30d…曲面部、31…溝、40…空間、50…空間、60…充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が閉塞され、他端側が開口した有底筒状の保護管と、
前記保護管内の前記一端側に配置された二つのサーミスタと、
二つの前記サーミスタのそれぞれの両極に接続された配線と、
前記保護管内で、前記配線のそれぞれに一端が接続され、他端が前記保護管外に導出されたリード線と、
前記保護管内で、前記配線と前記リード線との接続部を保持する絶縁性材料からなるホルダーと、を備え、
前記ホルダーは、外周面に平面部を有し、当該ホルダーを前記保護管内に挿入したときに、前記保護管の内周面と前記平面部との間に空隙が形成されることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記保護管内に絶縁性を有した硬化性材料からなる充填剤が充填され、前記充填剤により、前記保護管内の前記サーミスタ、前記配線、前記リード線、前記ホルダーが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
二つの前記サーミスタは、前記保護管内で、当該保護管の径方向に並列に配置され、前記サーミスタと前記保護管の内周面とが近接していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の温度センサ。
【請求項4】
前記ホルダーは、二つの前記サーミスタのそれぞれに対応して設けられ、
前記サーミスタのそれぞれに接続された二本の前記配線と、当該二本の前記配線に接続される二本の前記リード線との接続部を保持するとともに、線間の絶縁を図ることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記ホルダーは、二本の前記配線と、当該二本の前記配線に接続される二本の前記リード線とを収容する溝が形成され、前記溝が開口した側の面を、前記保護管内で他の前記ホルダーに対向させて設けられることを特徴とする請求項4に記載の温度センサ。
【請求項6】
二つの前記サーミスタは、同じ特性を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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