説明

温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラント

【課題】温室栽培などにおいて、植物に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことによって、省エネや地球温暖化防止対策を図ることができ、かつ、経済性、作業性及び使い勝手などに優れた温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントの提供を目的とする。
【解決手段】温度制御用シート1は、重ねられた柔軟性を有するシート本体11と、シート本体11どうしを接合する複数の接合部分12と、隣り合う接合部分12により挟まれたシート本体11によって形成される複数の流路13と、管と流路13とを連結するための連結部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室栽培などにおいて、植物に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことによって、省エネや地球温暖化防止対策を図ることができ、かつ、経済性、作業性及び使い勝手などに優れた温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
トマト、キュウリ、ほうれん草などの生鮮野菜は、消費者のニーズに応じて年間栽培されており、スーパーなどの売り場に供給されている。すなわち、冬場や高冷地などでは、ガラスやビニール製の温室内に暖房装置を設置し、植物の生育に必要な熱を供給することによって、野菜などの周年栽培が行われている。
【0003】
上記暖房装置として、通常、A重油を燃料とする温風型加温機が用いられているが、他に、温水を循環させる管、電気式ヒータ又は発熱ランプなどを用いた装置が使用されている。
また、暖房装置の構成や暖房方法によっては、暖房コスト(たとえば、A重油やLPGなどの燃料費、あるいは、電気代)などを削減することができることから、様々な技術が提案されている。
【0004】
本発明に関連する技術として、たとえば、特許文献1には、イチゴ類のハウス栽培における土耕栽培法、あるいはベンチ栽培法おいて、軟質樹脂管内に挿入水を有する構造であり、栽培土壌上に設置されるイチゴ類栽培補助用長尺ピロー(適宜、長尺ピローと略称する。)の技術が開示されている。この長尺ピローは、耳部を有するシーム管タイプであったり、また、複数の長尺ピローがつないで用いられる場合、各長尺ピローの端部に排水口と注入口に連なる連結管が設けられるといった特徴を有している。
【0005】
また、特許文献2には、温度制御室の構造体や土壌に沿って配置された弾力的な配管を有し、該配管は、管壁を加熱する高温熱媒体を管路内に収容し、該管壁と室内環境との熱交換作用により温度制御室の室内雰囲気温度や土壌温度を制御する熱媒体循環配管を形成することを特徴とする環境制御装置の技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3、及び、特許文献4には、平面状の袋に千鳥状の流路を形成し、該袋の上方から下方に温水を流すことにより、温室を加温する方法などの技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献5には、水を入れ、その水を循環させる機能を持つビニール製の敷物(カーペット)の技術が開示されている。この敷物は、循環させる機能を持たせる為に2枚のビニールシートが重ねられており、蛇の歩みのごとく、誘導の道筋が溶着されることにより製作されているといった特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−300908号公報
【特許文献2】特開平9−266730号公報
【特許文献3】特開昭56−25687号公報
【特許文献4】特開昭56−25688号公報
【特許文献5】特開2004−242658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1の技術は、栽培土壌畝上に、イチゴ株のクラウン部を避けて、複数(たとえば、3本)のフレキシブルな長尺ピローを載置する必要があり、位置精度よく載置することがほぼ不可能であり、また、載置したとしても不安定であり、作業性や使い勝手などを向上させる必要があった。
【0010】
また、特許文献2の技術は、複数の弾力的な配管(管路集合体などを含む。)の構造が複雑であるとともに、材質がゴムや合成樹脂であり、販売価格が高額となるおそれがあった。すなわち、通常のハウスは数a(アール、1a=100m)から数十aの広さがあり、畝長は10aあたり数百mにおよぶ。この広大な温室をまんべんなく加温するには、管路集合体を大量に敷設する必要があり、多大なコストがかかる。例えば、市販の散水ホースでも単価が100円〜200円/mであり、500mの散水ホース代が5〜10万円となる。したがって、同様の材質で管路集合体を製造すると、価格はこの数倍にもなり、経済性などを向上させる必要があった。
さらに、ロールした管路集合体の重量は、一人で持ち運ぶことが困難なものとなる。すなわち、土耕の温室では、数ヶ月〜1年に一度の作替えの際に、耕運機等を使って土壌を耕し直すのが一般的だが、農家がこれだけの重量のものを毎回掘り起こして撤去し、また、敷設しなおすのは現実性に欠ける。したがって、作業性や使い勝手などを向上させる必要があった。
【0011】
また、特許文献1、2の技術は、複数の長尺ピローや弾力的な配管が、培土に対して水平方向に設置され、植物の地際部や根部などを加温する。これらの技術は、イチゴや苗などの小さな植物や葉菜類など、あるいは、草丈の低い植物にとっては有効であるが、トマト、キュウリ及びピーマンなどの地上から1m以上の草丈に生長させる、地這いではなく立ち性で栽培する植物にとっては、熱が植物の必要な個所に届かないために、効果的に植物を加温することができないといった問題があった。
【0012】
すなわち、植物栽培用温度制御方法などにおいては、暖房コストを削減すること(省エネを図ること)ができ、たとえば、原油の高騰にともない、燃料費(たとえば、A重油やLPG)などの高騰が栽培農家の収益を圧迫するといった事態を回避することのできる実用的な技術が要望されている。
また、地球温暖化防止対策を積極的に行うことは、極めて重要であり、二酸化炭素を極力排出しない、エネルギー効率に優れた暖房技術が要望されている。
さらに、夏場の高温期に高温障害を起こす植物栽培においては、安価な冷房技術を提供することも要望されている。
【0013】
また、特許文献3、4、5の技術は、シートなどを重ね合わせて一部を接着や溶着し、水路を形成する点で類似するが、水の入出口が最初からシートに組み込まれており、植栽状況に合わせて(たとえば、畝の幅方向や長さ方向に応じて)大きさを変えることができず、使い勝手などを向上させる必要があった。
さらに、接着された流路によって、水路の流れのパターンも規定されてしまうため、状況にあわせて流路を変え、放熱量や流量を調節することは困難であり、経済性や使い勝手などを向上させる必要があった。
【0014】
本発明は、以上のような問題などを解決するために提案されたものであり、温室栽培などにおいて、植物に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことによって、省エネや地球温暖化防止対策を図ることができ、かつ、経済性、作業性及び使い勝手などに優れた温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の温度制御用シートは、重ねられた柔軟性を有するシート本体と、シート本体の長手方向に沿って、かつ、シート本体の短手方向に所定の間隔をあけて、シート本体の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、シート本体どうしを連続的に接合する複数の接合部分と、隣り合って対向する接合部分により挟まれたシート本体によって形成され、加温用流体又は冷却用流体が流れる複数の流路と、加温用流体又は冷却用流体を供給及び回収する管と流路とを連結するための連結部とを有する構成としてある。
【0016】
また、本発明の植物栽培用温度制御方法は、植物の近傍であって、垂直方向及び/又は水平方向の所定範囲内に、上記の温度制御用シートを設置し、複数の流路に加温用流体又は冷却用流体を流す方法としてある。
【0017】
また、本発明の植物栽培用温度制御装置は、植物の近傍であって、垂直方向及び/又は水平方向の所定範囲内に設置される上記の温度制御用シートと、温度制御用シートに、加温用流体又は冷却用流体を供給する流体供給手段と、温度制御用シートを取り付けるための取付け手段とを備えた構成としてある。
【0018】
また、本発明の植物栽培用ユニットは、一又は二以上の吊り下げ式又は載置式の栽培用ベッドと、上記の植物栽培用温度制御装置とを備えた構成としてある。
【0019】
また、本発明の植物栽培用プラントは、一又は二以上の吊り下げ式又は載置式の栽培用ベッドと、上記の植物栽培用温度制御装置と、栽培用ベッドを収容する建物とを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントによれば、温室栽培などにおいて、植物に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことによって、省エネや地球温暖化防止対策を図ることができ、かつ、経済性、作業性及び使い勝手などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる温度制御用シートの概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)はA−A拡大断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる温度制御用シートの使用状態を説明するための概略拡大斜視図を示している。
【図3a】図3aは、本発明の第一応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
【図3b】図3bは、本発明の第二応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
【図3c】図3cは、本発明の第三応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の要部の概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の、第一応用例を説明するための要部の概略図を示している。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の、第二応用例を説明するための要部の概略図を示している。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの要部の概略斜視図を示している。
【図8】図8は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの、支柱を説明するための要部の概略斜視図であり、(a)は垂直状態の拡大図を示しており、(b)は傾斜状態の拡大図を示している。
【図9】図9は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの、応用例を説明するための要部の概略図を示している。
【図10】図10は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用プラントの要部の概略図を示している。
【図11】図11は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用プラントの、昼間における要部の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[温度制御用シートの実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる温度制御用シートの概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)はA−A拡大断面図を示している。
また、図2は、本発明の一実施形態にかかる温度制御用シートの使用状態を説明するための概略拡大斜視図を示している。
図1、2において、本実施形態の温度制御用シート1は、シート本体11、接合部分12、流路13及び連結部14などを有する構成としてある。この温度制御用シート1は、後述するように植物の近傍に設置され、植物に対する温度制御に用いられる。
なお、本実施形態の温度制御用シート1は、植物に対する温度制御に用いられるが、用途はこれに限定されるものではなく、たとえば、局所的に温度制御を行う様々な用途に用いることができる。
【0023】
(シート本体)
シート本体11は、重ねられた柔軟性を有するシート(表面側のシートと裏面側のシート)であり、後述するようにシート本体11どうしを(表面側のシートと裏面側のシートとを)接合(溶着や接着など)することにより、加温用流体又は冷却用流体を流す複数の流路13が形成される。
【0024】
ここで、好ましくは、シート本体11が、樹脂製の筒状のシートであるとよい。この樹脂製の筒状のシートとして、たとえば、農業用ポリダクトなどが挙げられる。この農業用ポリダクトは、透明なポリエチレン製であり、柔軟性に優れ、軽量かつ薄手(たとえば、厚さは、0.05〜0.3mmであり、好ましくは、0.1〜0.2mmである。)の筒状のシートである。また、農業用ポリダクトは、直径が約300mm〜600mm程度が一般的であり、ロールされた状態で安価に市販されている。
【0025】
このようにすると、ロールから巻き出される筒状のシートが、重ねられたシート(表面側のシートと裏面側のシート)となるので、たとえば、二枚のシートを重ねるより、あるいは、一枚のシートを折り重ねるより、シート本体11を接合する際の作業性などを向上させることができる。また、シート本体11として樹脂製の筒状のシート(たとえば、農業用ポリダクトなど)を用いると、価格が廉価であることから、温度制御用シート1の経済性を大幅に向上させることができる。さらに、樹脂製のシートを無色透明としてあるので、植物に照射される日光を遮るといった不具合を回避することができる。
【0026】
なお、表面側のシートと裏面側のシートは、通常、樹脂製の単層のシートであるが、これに限定されるものではなく、たとえば、一方のシートを気泡シートや、アルミ蒸着層と樹脂層を有する複合シートなどとしてもよい。このようにすると、他方のシート側の領域を温度制御する場合、気泡シートや複合シートの断熱性により、加温用流体や冷却用流体の熱を他方のシート側の領域に効果的に伝達できるので、温度制御用シート1の性能を向上させることができる。
【0027】
(接合部分)
接合部分12は、シート本体11の長手方向に沿って、かつ、シート本体11の短手方向に所定の間隔(W)をあけて、シート本体11の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、シート本体11どうしを連続的に接合している。また、接合部分12は、7箇所において、シート本体11どうしを接合している。すなわち、温度制御用シート1は、重ねられた樹脂製の筒状のシートであるシート本体11に対して、7箇所に接合部分12(幅寸法はWである。)が形成されており、これにより、8つの流路13を有している。
また、樹脂製のシートに対しては、通常、接合として溶着が行われる。すなわち、接着する場合などと比べると、接着剤の費用を削減でき、また、強度・耐久性・作業性も優れているので、廉価な温度制御用シート1を提供することができる。特に、ポリエチレンシートは120℃程度で容易に溶着できることから、シート素材にはポリエチレンを用いることが望ましい。
【0028】
なお、本実施形態では、重ねられたシート本体11の幅寸法Wに対して、W=8W+7Wとしてあり、同じ幅寸法を有する接合部分12を等間隔で配設してあるが、これに限定されるものではない。たとえば、接合部分12の数、各接合部分12の幅寸法、及び、隣り合う接合部分12の間隔などは、使用状況などに応じて、適宜、設定することができる。
【0029】
(流路)
流路13は、隣り合って対向する接合部分12により挟まれたシート本体11によって形成され、加温用流体又は冷却用流体が流れる。また、本実施形態の温度制御用シート1は、8つの流路13を有している。なお、本実施形態では、シート本体11を筒状のシートとしてあるので、短手方向の両端部の流路13においては、シートの折り返し部分が、接合部分12として機能している。このような流路13も、隣り合って対向する接合部分12により挟まれたシート本体11によって形成される流路13に含まれるものとする。
また、流路13の形状は、シート本体11が柔軟性を有することにより、設置の状態や、加温用流体又は冷却用流体の流量などに応じて定まる。たとえば、流量が多いと、ほぼ円形(この円の直径dは、d=2W/π)となる。
【0030】
なお、流路13は、後述するように温度制御用シート用パイプ412やワイヤー(図示せず)などを通すことにより、温度制御用シート1を吊り下げる場合の支持部として機能し、このようにすると、温度制御用シート1を容易に、かつ、安全に吊り下げることができる。
【0031】
(連結部)
連結部14は、加温用流体又は冷却用流体を供給及び回収する管など(図2においては、供給用ホース31)と流路13とを連結するための部位である。本実施形態の連結部14は、接合部分12に切込み121を入れることにより形成され、各流路13に対応するシート本体11、及び、各流路13に対応する接合部分12を有する。すなわち、切込み121は、接合部分12の長手方向の端部から所定の長さ(たとえば、数cm〜十数cm)を有している。これにより、所定の長さを有する連結部14が形成される。この連結部14は、各流路13に対応するシート本体11、及び、各流路13に対応する接合部分12を有し、一本のホースのような形状となるので、たとえば、ジョイント21及びホースバンド211を介して供給用ホース31などと容易に連結される(図2参照)。
【0032】
ここで、温度制御用シート1は、各流路13が連結部14を有することにより、たとえば、流路13どうしを連結ホース20で連結することができ、各流路13の流れのパターンを直列パターンや並列パターンに自在に設定することができる。
これにより、温室内の場所によって、温度制御用シート1に対する流れのパターン(直列パターンや並列パターン等)を使い分け、温室内全体として均一な温度制御を実現することができる。たとえば、冷えやすい温室の壁際付近の温度制御用シート1に対し、各流路13を並列に接続し、各流路13に大量の温水を流し、十分な放熱量を確保し、また、比較的冷えにくい温室の中央側の温度制御用シート1に対し、各流路13を直列に接続し、少量の温水の熱を無駄なく利用する等の組み合わせで、効率的で均一な暖房を行うことができる。また、全ての畝で直列パターンを採用する場合にも、壁際の温度制御用シート1は流路13の数を増やし、中央側の温度制御用シート1は流路13の数を減らす等の調節も容易に行うことができる。すなわち、温室気温が場所によって異なると、一番低い気温の場所にあわせて暖房を調節しなければならず(作物ごとに最低温度が決まっているため)、結果的に過剰暖房の場所も発生してしまい、省エネルギーが実現できないといった不具合を回避でき、温室内の温度ムラの抑制を容易に実現することができる。
【0033】
次に、上記構成の温度制御用シート1の使用方法などについて説明する。
まず、工場から出荷される温度制御用シート1は、通常、ロールに巻き取られた状態である。ここで、温度制御用シート1は、容易に大量生産が可能であり、廉価である。これにより、たとえば、農家の方(適宜、農業者と略称する。)にとっては、容易に購入でき、また、廃棄も容易である。
【0034】
次に、温度制御用シート1を購入した農業者は、作物の植栽状況(畝の長さなど)に応じて、温度制御用シート1を短手方向に切断する。また、加温や冷却する熱量に応じて、温度制御用シート1を長手方向に切断する。これにより、必要な数の流路13を用意することができる。続いて、切断された温度制御用シート1に対して、切込み121を入れ、使用する温度制御用シート1を用意する。ここで、農業者が使用する温度制御用シート1の形状や大きさなどは様々であるが、農業者は、温度制御用シート1を切断することによって、所望する温度制御用シート1を容易に用意することができる。
【0035】
次に、農業者は、用意した温度制御用シート1を植物の近傍に設置する。すなわち、温度制御用シート1は、植物の近傍に、垂直方向(流路13が垂直方向に並ぶ状態で)や水平方向(流路13が水平方向に並ぶ状態で)に設置され、流路13に温水又は冷水を流すことにより、植物の生育に必要な温冷熱を局所的に与えることができる。
また、温度制御用シート1は、軽量であることから、設置、移動、位置調整、撤去などを容易に行うことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の温度制御用シート1によれば、廉価であることにより、経済性を向上させることができ、また、農業者が所望する形状や大きさの温度制御用シート1を容易に用意することができるので、使い勝手や作業性などを向上させることができる。
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
【0037】
<植物栽培用温度制御方法の第一応用例>
図3aは、本発明の第一応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
図3aにおいて、第一応用例の植物栽培用温度制御方法aは、上述した温度制御用シート1と比べると、流路13となるシート本体11の一部に、複数の開口部111が形成された点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、温度制御用シート1とほぼ同様としてある。
したがって、図3aにおいて、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0038】
開口部111は、ほぼ矩形状であり、流路13となるシート本体11の一部に(本応用例では、上から2、4、6、8段目の流路13に対応するシート本体11に)並設されている。このようにすると、温度制御用シート1aは、地面に水平に敷設されると、開口部111から作物が定植され、背丈の低い作物に対して、効果的に局所的な温度制御を行うことができる。また、温度制御用シート1aは、作物間に縦置きされた場合(流路13が垂直方向に並ぶ状態で設置された場合)、散布された消毒液が複数の開口部111を通り抜けるので、温度制御用シート1aの向こう側の作物にも消毒液を吹き付けることができる。
【0039】
このように、本応用例の温度制御用シート1aは、一実施形態の温度制御用シート1とほぼ同様の効果を奏するとともに、地面に水平に敷設された際の作業性などを向上させることができ、また、作物間に縦置きされた際の使い勝手などを向上させることができる。
【0040】
<植物栽培用温度制御方法の第二応用例>
図3bは、本発明の第二応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
図3bにおいて、第二応用例の温度制御用シート1bは、上述した第一応用例と比べると、接合部分12bの一部に、複数の開口部122が形成された点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、第一応用例とほぼ同様としてある。
【0041】
温度制御用シート1bは、4つの接合部分12bと3つの流路13を有しており、上から2段目と3段目の接合部分12bに、ほぼ円形の開口部122が並設されている。また、接合部分12bの両側には、ほぼ矩形状の切込み121bが形成されている。
この温度制御用シート1bは、たとえば、イチゴなどの畝に敷設され、開口部122にイチゴなどが定植される。ここで、イチゴは、根本のクラウンと呼ばれる場所を、集中的に暖めたり、冷やしたりすることで生育を促進することが知られている。この温度制御用シート1bによれば、より簡易にクラウンを局所的に加温や冷却ができ、また、近接する葉、土壌中の根なども暖める局所暖房効果(あるいは、冷やす局所冷却効果)をも得ることができ、温度制御をより効果的に行うことができる。
さらに、温度制御用シート1bは、各流路13が接合部分12bを介してつながっているので、畝に載置する際、容易に、かつ、安定した状態で載置することができ、作業性などを向上させることができる。
【0042】
このように、本応用例の温度制御用シート1bは、第一応用例とほぼ同様の効果を奏するとともに、温度制御をより効果的に行うことができる。また、温度制御用シート1bは、各流路13が接合部分12bによってつながっているので、容易に、かつ、安定した状態で畝に載置することができ、作業性などを向上させることができる。
なお、接合部分12bの幅寸法や開口部122の大きさなどは、栽培される植物に応じて、適宜、設定される。
【0043】
<植物栽培用温度制御方法の第三応用例>
図3cは、本発明の第三応用例にかかる温度制御用シートの概略平面図を示している。
図3cにおいて、第三応用例の温度制御用シート1cは、上述した第二応用例と比べると、接合部分12bに、シート本体11bの長手方向に沿ってミシン目123が形成された点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、第二応用例とほぼ同様としてある。
したがって、図3cにおいて、図3bと同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
ミシン目123は、接合部分12bに形成されており、温度制御用シート1cを長手方向に切断する際、ハサミなどを使用しなくても容易に切り離すことができ、作業性などを向上させることができる。
また、一つの畝に、一又は二以上の列で作物を植える場合、列の数に応じて、農業者が容易に温度制御用シート1cを切断することができるので、使い勝手などを向上させることができる。
【0045】
このように、本応用例の温度制御用シート1cは、第二応用例とほぼ同様の効果を奏するとともに、作物を植える列の数に応じて、容易に温度制御用シート1cを切断することができるので、使い勝手などを向上させることができる。
【0046】
[植物栽培用温度制御装置の実施形態]
図4は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の要部の概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図4において、本実施形態の植物栽培用温度制御装置101は、上述した温度制御用シート1、複数のホース2、流体供給手段3、取付け手段4、及び、制御手段5などを備えた構成としてある。この植物栽培用温度制御装置101は、流体供給手段3から温度制御用シート1やホース2に温水が供給されることによって、トマト201を加温する。
【0047】
(トマト)
トマト201は、たとえば、温室内で水耕栽培されており、ベッド(図示せず)から1m以上の草丈に生長する。このため、トマト201の先端部側は、ベッドとほぼ平行に張られた樹脂製の紐721に掛けられ、トマト201は、紐721に沿って生長する。
また、図4においては、2本の紐721が、垂直方向に所定の間隔をあけて張られているが、トマト201の生長に応じて、さらに、数本の紐721が上方に張られる。
なお、図4においては、複数本のトマト201が、数十cmの間隔をあけて栽培される。また、トマト201の栽培方式(たとえば、水耕栽培方式など)は、特に限定されるものではない。さらに、図示してないが、トマト201は、ほぼ真上方向に生育させてもよい。
【0048】
(温度制御用シート)
温度制御用シート1は、トマト201の近傍であって、垂直方向の所定範囲(図4(b)に示す2本の二点鎖線の間の範囲)内に、各流路13がほぼ垂直方向に並ぶように設置されており、加温用流体としての温水が流れる。なお、温度制御用シート1は、温度制御用シート1の長手方向がほぼ水平となるように設置されている(図4(a)参照)。また、栽培する植物に応じて、温度制御用シート1は、植物の近傍であって、水平方向の所定範囲内に、各流路13がほぼ水平方向に並ぶように設置されたり、あるいは、植物の近傍であって、垂直方向及び水平方向の所定範囲内に、各流路13がほぼ水平方向及び水平方向に並ぶように設置される(図9参照)。
【0049】
ここで、トマト201の近傍とは、根、茎、葉などを含むトマト201全て(なお、養液栽培においては、養液中の根の部分などは、含まない。)の近傍である。また、近傍とは、上方から見て、温度制御用シート1からトマト201までの距離が、約1m以内の領域をいい、通常、数十cm以内の領域である。なお、この領域には、たとえば、温度制御用シート1がトマト201の葉と接触する位置も含まれる。そして、上記の垂直方向の所定範囲とは、上記領域を垂直方向に拡大した三次元的空間である。
また、上記の垂直方向は、ほぼ垂直方向であってもよい。
【0050】
すなわち、本実施形態では、ほぼ水平に延びる温度制御用シート1が、トマト201の近傍に、ほぼ垂直方向に設置されている。
このようにすると、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、トマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、温室栽培においては、温室全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネや地球温暖化防止対策(二酸化炭素の排出量の削減など)を図ることができる。
【0051】
また、植物栽培用温度制御装置101は、燃料を大量に消費して温室全体を暖めるものではなく、植物の生長に必要な温冷熱を必要な箇所にのみ局所的に与えることにより、大幅な省エネを実現し、投入エネルギー量とCO排出量の大幅な削減を実現するものである。局所的に植物が必要とする冷温熱を与えることにより、投入エネルギー量とCO2排出量の大幅な削減が可能となる。なお、熱源としては、従来型のA重油加温機やLPGボイラーのほか、冷温水を作り出すヒートポンプなども使用できる。また、環境性能に優れたヒートポンプを冷温熱源として局所暖房を行なったとき、投入エネルギー量として80%、CO排出量として73%が削減可能(試算値)である。
【0052】
また、好ましくは、上述したトマト201の近傍が、トマト201の特定の部分(花芽202及び/又は成長点203)の近傍(通常、数十cm以内の領域)であるとよい。
一般的に、上記の特定の部分とは、植物の成長や収穫物の数量・品質に影響を及ぼす部分をいい、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン及びシシトウなどにおいては、花芽(花房)及び/又は成長点(茎頂成長点)である。このようにすると、収穫物(果実204)の数量や品質を向上させつつ(あるいは、維持しつつ)、省エネなどを図ることができる。
【0053】
本実施形態では、7つの流路13を有する温度制御用シート1を使用しており、上段の流路13には、温度制御用シート用パイプ412が挿入され、この温度制御用シート用パイプ412は、複数箇所において、結束バンド413によりネット41と連結されている。これにより、温度制御用シート1に温水が供給され、温度制御用シート1が重くなっても、温度制御用シート用パイプ412がほぼ均一に温度制御用シート1の重量を受けるので、温度制御用シート1にダメージを与えることなく、温度制御用シート1を取り付けることができる。
【0054】
また、上から2段目以降の流路13には、直列的に温水が供給される。すなわち、2段目の流路13の一端は、連結部14が、ジョイント21やホースバンド211などを介して供給用ホース31と連結されており、7段目の流路13の一端は、連結部14が、ジョイント21やホースバンド211などを介して回収用ホース32と連結されている。また、2段目の流路13の他端と3段目の流路13の他端は、ジョイント21、連結ホース20、ホースバンド211などを介して連結されている(なお、図4(a)においては、簡略化して示している。)。これと同様にして、3段目から7段目までの流路13は、直列的に連結されている。
【0055】
なお、ジョイント21として、容易に着脱可能なワンタッチ方式のジョイント(クイックジョイントとも呼ばれる。)を用いてもよい。このようにすると、後述するように、トマト201の生長に応じて、温水を流す流路13を自在に選択することができるので、さらに省エネなどを図ることができる。
また、温度制御用シート1は、流路13の直径、間隔や本数などは、特に限定されるものではない。したがって、たとえば、トマト201の状態に応じて、流路13の直径、間隔や本数などを適宜選択することにより、温度制御の能力や温度制御を行う範囲などを容易に変更することができる。
【0056】
(ホース)
ホース2は、トマト201の近傍であって、垂直方向の所定範囲(図4(b)に示す2本の二点鎖線の間の範囲)内に、水平方向に配設されており、加温用流体としての温水が流れる。この2本のホース2(特願2010−138515号参照)は、温度制御用シート1の上方に配設されており、トマト201がさらに成長した際、使用される。すなわち、温度制御用シート1は、ホース2と併用することができ、また、本実施形態において、ホース2の代わりに、さらに、新たな温度制御用シート1を取り付ける構成としてもよい。
なお、2本のホース2は、他端どうしがジョイント21や連結ホース20などを介して連結され、一端には、ジョイント21が接続されている。
【0057】
(取付け手段)
取付け手段4は、温度制御用シート1やホース2を吊るすためのネット41、及び、ネット41を掛けるためのネット用パイプ411などを有しており、温度制御用シート1や複数のホース2を取り付けるためのものである。網目状体としてのネット41は、通常、球技用のネットのように、数cm間隔で編まれた樹脂製の紐からなるネットが用いられる。また、ネット用パイプ411は、通常、金属製のパイプなどが用いられる。このネット用パイプ411は、たとえば、地面に立設された枠に係止されたり、温室のフレームに取り付けられるが、特に限定されるものではない。
このようにすると、温度制御用シート1や複数のホース2を容易に取り付けることができ、また、トマト201の生育に応じて、温度制御用シート1やホース2の高さを容易に変更することができる。さらに、図示してないが、ネット41にS字フックを掛けることによっても、温度制御用シート1やホース2の高さ位置を容易に変更することができる。また、ネット用パイプ411を枠に係止する構成とすることにより、移設などを容易に行うことができる。すなわち、本実施形態のネット41によって、使い勝手などを向上させることができる。
【0058】
なお、ネット41の代わりに、紐状体(図示せず)を用いてもよい。たとえば、紐状体は、一端がネット用パイプ411に結び付けられ、他端が温度制御用シート1やホース2に結び付けられる。このようにしても、温度制御用シート1やホース2を取り付けることができる。なお、この紐状体としては、通常、樹脂製の紐が用いられる。
【0059】
ここで、好ましくは、上述したように、取付け手段4が、温度制御用シート1を吊るすための網目状体(ネット41)を有し、温度制御用シート1が、流路13に挿入された管状体(温度制御用シート用パイプ412)を介して、ネット41に吊るされるとよい。このようにすると、温度制御用シート1に温水が供給され、温度制御用シート1が重くなっても、温度制御用シート用パイプ412がほぼ均一に温度制御用シート1の重量を受けるので、温度制御用シート1にダメージを与えることなく、温度制御用シート1を取り付けることができる。
【0060】
また、好ましくは、温度制御用シート1やホース2の近傍に、虫(図示せず)を採取するための粘着テープ42を設けるとよい。このようにすると、局所的に暖房される温度制御用シート1やホース2の周囲に、温室内の害虫が集まり、集まった害虫を、粘着テープ42によって一網打尽に補殺することができる。
また、本実施形態では、たとえば、ホース2どうしの間において、粘着テープ42がネット41に貼り付けられている。このようにすると、粘着テープ42を容易に取り付けることができ、また、容易に取り外すことができる。
【0061】
(流体供給手段)
流体供給手段3は、通常、自然冷媒ヒートポンプ給湯機などが用いられ、温度制御用シート1や複数のホース2に、加温用流体を供給する。加温用流体は、通常、温水(たとえば、30℃〜95℃)である。ただし、これに限定されるものではなく、たとえば、地熱を利用した蒸気でもよい。
また、夏季においては、温度制御用シート1やホース2に冷却用流体を流してもよい。冷却用流体は、通常、冷水(たとえば、5℃〜20℃)である。この冷水は、地下水や、ヒートポンプにより冷却された水などである。これにより、夏季における生鮮野菜などの安定供給に寄与することができ、国内での食糧自給率の向上にも貢献することができる。
なお、流体供給手段3は、ヒートポンプ給湯機及び温水を蓄える蓄熱槽を有する構成としてもよい。このようにすると、ヒートポンプ給湯機が、日中の暖かい外気から効率よく温水を得ることができ、蓄熱槽がその温水を蓄え、夜間に使用することができる。
【0062】
また、流体供給手段3は、吐出口に供給用ホース31が接続されており、供給用ホース31の先端には、ジョイント21が取り付けられている。この供給用ホース31は、温度制御用シート1の上から2段目の流路13の一端と接続されている。さらに、流体供給手段3は、吸込口に回収用ホース32が接続されており、回収用ホース32の先端には、ジョイント21が取り付けられている。この回収用ホース32は、温度制御用シート1の上から7段目の流路13の一端と接続されている。
このようにすると、トマト201の生長に応じて、上述した花芽202や成長点203を局所的に加温することができ、さらに効果的に省エネなどを図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、温水を上方から下方に流しているが、これに限定されるものではなく、たとえば、温水を下方から上方に流す構成としてもよい。
また、流体供給手段3は、自然冷媒ヒートポンプ給湯機に限定されるものではなく、たとえば、A重油やLPGなどを燃料とする給湯機でもよい。また、温泉、地下水、湧水などを利用できる場合には、これらを直接的に供給してもよい。
【0064】
(制御手段)
植物栽培用温度制御装置101は、温度センサ51及び制御手段5を有しているとよい。
温度センサ51は、ネット41(あるいは、紐721)に取り付けられ、トマト201の近傍の温度を測定し、測定信号を制御手段5に出力する。また、制御手段5は、温度センサ51や流体供給手段3と接続され、温度センサ51からの測定信号にもとづいて、後述するように流体供給手段3を制御する。このようにすると、外気温度の変化に応じて、自動的に温度制御を行うことができる。
なお、流体供給手段3は、後述するように、温水の温度を所定の温度とし、ON(供給)−OFF(停止)制御する構成としてあるが、制御方式はこれに限定されるものではなく、たとえば、温水の温度や流量などを制御してもよい。
【0065】
ここで、好ましくは、温度センサ51が、つや消しの黒色塗装された金属板、この金属板の裏面に取り付けられた温度測定部、及び、この温度測定部を覆うように金属板の裏面に取り付けられた断熱部材を有する温度センサ(黒色板温度センサとも呼ばれる。)であるとよい。本実施形態の黒色板温度センサは、たとえば、黒色銅板として縦×横が200mm×200mm、厚さが0.3mmの正方形状の黒色銅板を用い、温度測定部として測温抵抗体を用い、断熱部材として発泡スチロール製の正方形状の板を用いている。
この黒色温度センサは、トマト201の暖めたい部位とほぼ同じ位置に、温度制御用シート1と対向するように設置され、温度制御用シート1からの輻射熱及び熱対流によるトマト201の暖めたい部位の温度を、精度よく測定することができる。すなわち、黒色温度センサは、温度制御用シート1からの輻射熱による被加熱物の温度上昇を反映することから、後述するように、トマト201が受ける実質的な加熱を精度よく測定することができる。
【0066】
次に、上記構成の植物栽培用温度制御装置101の動作などについて説明する。
まず、トマト201が生長し、花芽202や成長点203が、温度制御用シート1の上から6段目〜7段目の流路13の高さになると、図示してないが、供給用ホース31が6段目の流路13の一端と接続され、回収用ホース32が7段目の流路13の一端と接続される。また、温度センサ51は、6段目と7段目の流路13のほぼ中間の高さに取り付けられる。さらに、制御手段5は、あらかじめ設定温度(たとえば、15℃)が入力されている。
【0067】
植物栽培用温度制御装置101は、温度センサ51が温度を測定しており、制御手段5が入力した測定信号が、たとえば、15℃になると、制御手段5は、ON信号を流体供給手段3に出力する。
ON信号を入力した流体供給手段3は、温水(たとえば、50℃)を供給用ホース31に供給する。この流量は、通常、毎分数百cc(たとえば、200cc)である。6段目の流路13に供給された温水は、流路13内を流れ、連結ホース20を経由して、7段目の流路13内を流れ、回収用ホース32を経由して流体供給手段3に戻る。戻ってきた温水の温度は、熱を輻射することなどによって、低くなっている(たとえば、25℃)。
なお、上記流量は、流路13の長さや直径などに応じて設定され、毎分数百ccに限定されるものではない。
【0068】
6段目及び7段目の流路13は、上述したように、トマト201の近傍に、ほぼ水平に延びた状態で、垂直方向に並設されている。これらの流路13は、輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流によって、トマト201の花芽202や成長点203を局所的に、かつ、効果的に加温することができる。
また、上記加温によって、制御手段5が、温度センサ51から測定信号(たとえば、17℃の測定信号)を入力すると、制御手段5は、OFF信号を流体供給手段3に出力する。そして、流体供給手段3は、温水の供給を停止する。このようなON−OFF制御によって、トマト201は、局所的に、かつ、効果的に加温される。
【0069】
次に、トマト201がさらに生長し、花芽202や成長点203が、温度制御用シート1の上から4段目〜7段目の流路13の高さになると、供給用ホース31が4段目の流路13の一端と接続され、6段目の流路13と5段目の流路13とが、連結ホース20などによって接続される。なお、回収用ホース32は、7段目の流路13と接続されている。また、温度センサ51は、4段目と5段目の流路13のほぼ中間の高さに取り付けられる。なお、制御手段5は、あらかじめ設定温度(たとえば、15℃)が入力されている。
【0070】
植物栽培用温度制御装置101は、温度センサ51が温度を測定しており、制御手段5が入力した測定信号が、たとえば、15℃になると、制御手段5は、ON信号を流体供給手段3に出力する。
ON信号を入力した流体供給手段3は、温水(たとえば、50℃)を供給用ホース31に供給する。この流量は、通常、毎分数百cc(たとえば、400cc)である。4段目の流路13に供給された温水は、流路13内を流れ、連結ホース20を経由して、5段目の流路13内を流れ、同様にして、6段目及び7段目の流路13を流れ、回収用ホース32を経由して流体供給手段3に戻る。戻ってきた温水の温度は、熱を輻射することなどによって、低くなっている(たとえば、25℃)。
【0071】
4段目〜7段目の流路13は、上述したように、トマト201の近傍に、ほぼ水平に延びた状態で、垂直方向に並設されている。これらの流路13は、輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流によって、トマト201の花芽202や成長点203を局所的に、かつ、効果的に加温することができる。
【0072】
また、トマト201がさらに生長し、花芽202や成長点203が、温度制御用シート1の上から2段目〜7段目の流路13の高さになると、供給用ホース31が2段目の流路13の一端と接続され、4段目の流路13と3段目の流路13とが、連結ホース20などによって接続される。なお、回収用ホース32は、7段目の流路13と接続されている。また、温度センサ51は、3段目と4段目の流路13のほぼ中間の高さに取り付けられる。なお、制御手段5は、あらかじめ設定温度(たとえば、15℃)が入力されている。
【0073】
植物栽培用温度制御装置101は、温度センサ51が温度を測定しており、制御手段5が入力した測定信号が、たとえば、15℃になると、制御手段5は、ON信号を流体供給手段3に出力する。
ON信号を入力した流体供給手段3は、温水(たとえば、50℃)を供給用ホース31に供給する。この流量は、通常、毎分数百cc(たとえば、600cc)である。2段目の流路13に供給された温水は、流路13内を流れ、連結ホース20を経由して、3段目の流路13内を流れ、同様にして、4段目、5段目、6段目及び7段目の流路13を流れ、回収用ホース32を経由して流体供給手段3に戻る。戻ってきた温水の温度は、熱を輻射することなどによって、低くなっている(たとえば、25℃)。
【0074】
2段目〜7段目の流路13は、上述したように、トマト201の近傍に、ほぼ水平に延びた状態で、垂直方向に並設されている。これらの流路13は、輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流によって、トマト201の花芽202や成長点203を局所的に、かつ、効果的に加温することができる。
【0075】
このように、植物栽培用温度制御装置101は、トマト201が生長する場合であっても、トマト201の花芽202や成長点203を効果的に加温しているので、果実204温室内全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネなどを図ることができる。また、果実204温室内全体を加温する場合とほぼ同様に、トマト201は、生長し、果実204を収穫することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の植物栽培用温度制御装置101によれば、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、トマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、温室栽培においては、温室全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネや地球温暖化防止対策(二酸化炭素の排出量の削減など)を図ることができる。
また、温度制御用シート1、連結ホース20、ジョイント21、及び、ネット41などを用いることにより、経済性(温度制御用シート1が廉価であることなど)、作業の安全性(温度制御用シート1が柔らかく、手をぶつけても安全であることなど)、作業性、及び、使い勝手などを大幅に向上させることができる。
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
【0077】
<植物栽培用温度制御装置の第一応用例>
図5は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の、第一応用例を説明するための要部の概略図を示している。
図5において、本応用例の植物栽培用温度制御装置101aは、上述した植物栽培用温度制御装置101と比べると、流路を変更するための供給用ホース31や連結ホース20などの代わりに、弁61〜67などを設け、温度制御用シート1の複数の流路13に直列的及び/又は並列的に温水を流せる構成とした点などが相違する。また、弁61〜67は、手動弁としてあるが、遠隔操作可能な電磁弁でもよい。なお、本応用例の他の構成は、植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様としてある。
したがって、図5において、図4と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。なお、図5において、温度制御用シート1は、取り付けに使用される上から1段目の流路13を省略してある。
【0078】
植物栽培用温度制御装置101aは、流体供給手段3の吐出口が、上から2段目、4段目及び6段目の流路13と並列に接続されている。また、吐出口と、上から2段目、4段目及び6段目の流路13との間には、弁65、弁63及び弁61が設けられている。また、流体供給手段3の吸込口が、上から3段目、5段目及び7段目のホース2と並列に接続されている。また、吸込口と、上から3段目及び5段目の流路13との間には、弁64及び弁62が設けられている。さらに、上から3段目と4段目の流路132は、弁67を介して接続されており、上から5段目と6段目の流路13は、弁66を介して接続されている。
【0079】
三つの温度センサ51は、上から2段目と3段目の流路13の間に、4段目と5段目の流路13の間に、及び、6段目と7段目の流路13の間に、ネット41を利用して取り付けられ、トマト201の近傍の温度を測定し、測定信号を制御手段5aに出力する。
また、制御手段5aは、三つの温度センサ51や流体供給手段3と接続され、温度センサ51からの測定信号にもとづいて、後述するように流体供給手段3を制御する。このようにすると、外気温度の変化に応じて、トマト201の近傍の温度が変化しようとしても、自動的に温度制御を行うことができる。
なお、その他の構成は、上述した植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様としてある。
【0080】
次に、上記構成の植物栽培用温度制御装置101aの動作などについて説明する。
植物栽培用温度制御装置101aは、弁61〜67の操作によって、植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様に、各流路13に直列的に温水を流すことができる。さらに、弁61、弁66、弁63及び弁64を閉じ、弁62、弁67及び弁65を開くと、上から2段目〜5段目の流路13に温水を流すことができる。
【0081】
また、たとえば、流路13が数十mの長さを有しているとき、植物栽培用温度制御装置101のように、上から2段目の流路13から7段目の流路13まで、直列的に温水を流すと、下方の流路13を流れる水温が低くなりすぎ、必要な加温ができない場合がある。かかる場合、弁61、弁62、弁63、弁64及び弁65を開き、弁66及び弁67を閉じると、上から2段目と3段目の流路13、4段目と5段目の流路13、及び、6段目と7段目の流路13に並列的に温水を流すことができ、上記の不具合を回避することができる。
【0082】
さらに、上記の並列的に温水を流す場合において、弁61〜67を遠隔操作可能な電磁弁とし、制御手段5aが、三つの温度センサ51からの測定信号にもとづいて、弁61、弁63及び弁65をON−OFF制御する構成としてもよい。このようにすると、温度制御の精度を向上させることができ、大きく生長したトマト201に対しても、ほぼ均一な加温を行うことができる。さらに、制御手段5aの操作パネルに入力するだけで、弁61〜67を遠隔操作することができるので、作業性や使い勝手を向上させることができる。
【0083】
また、粘着テープ42が上から2段目と3段目の流路13の間に設けられている場合、2段目と3段目の流路13にだけ温水を流し、この周囲の温度を虫が好む温度とすることにより、虫をこの近辺に寄せ集めてもよい。このようにすると、粘着テープ42が効率よく虫を捕獲することができ、植物栽培用温度制御装置101aに付加価値を向上させることができる。
【0084】
このように、本応用例の植物栽培用温度制御装置101aは、上述した実施形態の植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様の効果を奏するとともに、温度制御の品質や精度、作業性、使い勝手、及び、付加価値などを向上させることができる。
【0085】
<植物栽培用温度制御装置の第二応用例>
図6は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用温度制御装置の、第二応用例を説明するための要部の概略図を示している。
図6において、本応用例の植物栽培用温度制御装置101bは、上述した植物栽培用温度制御装置101と比べると、取付け手段4が、温度制御用シート1などを昇降させる昇降装置43、及び、温度制御用シート1などを水平移動させる水平移動装置44を有する点などが相違する。さらに、本応用例では、温度センサ51は、トマト201の暖めたい部位とほぼ同じ位置に(たとえば、トマト201を支持する棒に)取り付けられている。また、粘着テープ42は、トマト201の上方に(たとえば、トマト201を支持する棒の上方端部に)取り付けられている。
なお、本応用例の他の構成は、植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様としてある。また、トマト201の左側に温度制御用シート1などを設けているが、これに限定されるものではなく、たとえば、右側、あるいは、左右両側に、温度制御用シート12などを設けてもよい。
したがって、図6において、図4と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0086】
本応用例の昇降装置43は、回転自在に支持されたネット用パイプ411を回転させるモータ、チェーン、スプロケットなどを有しており、ネット用パイプ411に取り付けられたネット41を、温度制御用シート1などとともに、巻き上げる構成としてある。このようにすると、たとえば、果実204を採るときに、温度制御用シート1などを容易に巻き上げることができ、果実204を採る作業性を向上させることができる。
なお、昇降装置43の構成は、上記に限定されるものではない。たとえば、図示してないが、ネット用パイプ411を昇降させる構成としてもよい。また、モータなどの駆動手段を用いず、滑車などを用いて手動にて昇降させる構成としてもよい。
【0087】
本応用例の水平移動装置44は、リニアベアリング、ボールねじ、モータなどを有しており、ネット用パイプ411などを支持する棒状部材の立設された往復移動部材を水平方向に移動させる構成としてある。このようにすると、たとえば、トマト201の生長に応じて、温度制御用シート1などの位置を容易に移動させることができ、トマト201から離れた状態で、かつ、トマト201に接近させることができる。これにより、局所的にトマト201を加温する効果を向上させることができる。また、暖房が不要な日中は、温度制御用シート1を地面付近まで下げることにより、温度制御用シート1による太陽光の減衰を避け、葉面により多くの日光を当てることも可能である。
なお、水平移動装置44の構成は、上記に限定されるものではない。たとえば、ローラを介してレール上を走行する構成としてもよい。また、モータなどの駆動手段を用いず、手動にて移動させる構成としてもよい。
また、水平移動装置44や昇降装置43は、地上に設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、ビニールハウスの天井のフレームに設けられてもよい。
【0088】
このように、本応用例の植物栽培用温度制御装置101bは、上述した実施形態の植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様の効果を奏するとともに、作業性や加温効果などをさらに向上させることができる。
【0089】
[植物栽培用温度制御方法の実施形態]
また、本発明は、植物栽培用温度制御方法の発明としても有効である。
本実施形態の植物栽培用温度制御方法は、上述した植物栽培用温度制御装置101を用いて、トマト201の近傍であって、垂直方向の所定範囲内に、温度制御用シート1を設置し、複数の流路13に温水を流す方法としてある。すなわち、温度制御用シート1は、トマト201の近傍であって、垂直方向の所定範囲(図4(b)に示す2本の二点鎖線の間の範囲)内に、各流路13がほぼ垂直方向に並ぶように設置されており、加温用流体としての温水が流れる。なお、温度制御用シート1は、温度制御用シート1の長手方向がほぼ水平となるように設置されている(図4(a)参照)。
このようにすると、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、トマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、温室栽培においては、温室全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネなどを図ることができる。
【0090】
また、好ましくは、上述したトマト201の近傍が、トマト201の特定の部分(花芽202及び/又は成長点203)の近傍(通常、数十cm以内の領域)であるとよい。
一般的に、上記の特定の部分とは、植物の成長や収穫物の数量・品質に影響を及ぼす部分をいい、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン及びシシトウなどにおいては、花芽(花房)及び/又は成長点(茎頂成長点)である。このようにすると、収穫物(果実204)の数量や品質を向上させつつ(あるいは、維持しつつ)、省エネなどを図ることができる。
なお、本実施形態の植物栽培用温度制御方法は、上述した植物栽培用温度制御装置101、1a、1bなど(後述する植物栽培用プラント103などをも含む。)の構成(たとえば、ネット41や供給用ホース31など)を、植物栽培用温度制御方法の特徴として適用することができる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態の植物栽培用温度制御方法によれば、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、トマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、温室栽培においては、温室全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネや地球温暖化防止対策(二酸化炭素の排出量の削減など)を図ることができる。さらに、温度制御用シート1などを用いることにより、経済性(温度制御用シート1が廉価であることなど)、作業の安全性(温度制御用シート1が柔らかく、手をぶつけても安全であることなど)、作業性、及び、使い勝手などを大幅に向上させることができる。
【0092】
[植物栽培用ユニットの実施形態]
また、本発明は、植物栽培用ユニットの発明としても有効である。
図7は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの要部の概略斜視図を示している。
図7において、本実施形態の植物栽培用ユニット102は、水耕栽培用ベッド71、枠72、支柱73、位置決め手段74、及び、上述した植物栽培用温度制御装置101などを備えている。
したがって、図7において、図4に示す植物栽培用温度制御装置101と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
なお、植物栽培用ユニット102の構成を理解しやすいように、芽を出したばかりのトマト201を図示してある。
また、一つの植物栽培用ユニット102を図示してあるが、これに限定されるものではなく、通常、水耕栽培用ベッド71の長手方向に、複数の水耕栽培用ベッド71が並べて設置される。この場合、図示した温度制御用シート1と、図示していない隣の温度制御用シート1とは、連結ホース20などにより、容易に接続することができる。
【0093】
(水耕栽培用ベッド)
水耕栽培用ベッド71は、細長い矩形箱状であり、内部に養液が入れられており、上部が樹脂製のシートで覆われている。通常、トマト201は、水耕栽培用ベッド71の長手方向に二列に並べて植えられており、植物栽培用温度制御装置101の温度制御用シート1が、並べて植えられたトマト201の間に(上記二列の間のほぼ中央に)設けられている。
このようにすると、複数のトマト201に対して、効率よく温度制御を行うことができる。
【0094】
なお、トマト201は、通常、水耕栽培用ベッド71の長手方向に、二列に並べて植えられており、温度制御用シート1は、二列に並べて植えられたトマト201の間に設けられる。ただし、これに限定されるものではなく、たとえば、トマト201が三列以上に並べて植えられている場合、列状に並べて植えられたトマト201の間に、温度制御用シート1を設けてもよい。
また、本実施形態では、栽培用ベッドとして、載置式の水耕栽培用ベッド71を備えた構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、噴霧耕栽培用ベッド、培地を用いた固形培地耕栽培用ベッド、培地に土を用いた養液土耕栽培用ベッド、土耕栽培用ベッドなどを用いてもよい。さらに、吊り下げ式の栽培用ベッドを用いてもよい。
【0095】
(枠)
枠72(フレームとも呼ばれる。)は、金属製のパイプ、及び、パイプどうしを連結する連結金具などを有している。この枠72は、ほぼ直方体状に組み立てられ、底部に、水耕栽培用ベッド71が取り付けられる。この枠72は、紐721(図4参照)が張られ、多数のトマト201の重量を受けるので、十分な剛性を有している。また、レンガなどを介して地面に設置されるので、枠72が地面に沈み込むといった不具合を防止することができる。
【0096】
また、枠72は、長手方向の両端部に、上パイプ722を有しており、一対の上パイプ722のほぼ中央部に支柱73が取り付けられている。一対の支柱73の上部に、先端が上方に曲がった係止パイプ732が取り付けられており、ネット41が容易に係止される。このように、上述した植物栽培用温度制御装置101の優れた作業性などは、植物栽培用ユニット102においても、十分発揮することができる。
【0097】
ここで、好ましくは、枠72の長手方向の両端部に、温度制御用シート1が水耕栽培用ベッド71の短手方向に移動することを抑制するための、支柱73が設けられているとよい。すなわち、支柱73は、下方に長い形状としてあり、図示してないが、ネット41の両側の中段部や下部を、紐などで支柱73に結び付けることができ、温度制御用シート1の下端の接合部分12が、結束バンド413によりネット41につながれている。このようにすると、複数の水耕栽培用ベッド71が並べて設置されているときであっても(複数の温度制御用シート1が水平方向に接続された場合であっても)、数十mの長さの温度制御用シート1が複数の支柱73と連結されているので、温度制御用シート1が短手方向に移動(振動)して、生長したトマト201にダメージを与えるといった不具合を効果的に防止することができる。
【0098】
ところで、水耕栽培においては、トマト201の根が養液に適度に浸かっていることが重要である。このため、水耕栽培用ベッド71を取り付ける際、水耕栽培用ベッド71の水平度などが慎重に調整され、また、取り付け後にも、上記水平度がくるわないようにする必要がある。すなわち、温水が流れる温度制御用シート1は、重くなるので、その重量によって上記水平度に悪影響を与えない構造が要望されている。
また、トマト201を植え替える際などに、水耕栽培用ベッド71を枠72から容易に取り外すことが可能な構造であることも要望されている。
次に、上記要望に応えるための支柱73などについて、図面を参照して説明する。
【0099】
図8は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの、支柱を説明するための要部の概略斜視図であり、(a)は垂直状態の拡大図を示しており、(b)は傾斜状態の拡大図を示している。
図8において、支柱73は、金属製のパイプであり、上部が、回動式パイプジョイント731によって、上パイプ722に取り付けられている(吊り下げられている)。すなわち、回動式パイプジョイント731は、上部位置決め手段として機能し、位置決めした状態で、支柱73を上パイプ722に吊るすことができる。また、回動式パイプジョイント731によって、支柱73や温水が流れている温度制御用シート1の重量は、十分な剛性などを有する枠72が全て受ける。したがって、上記水耕栽培用ベッド71の水平度がくるうといった不具合を確実に回避することができる。
【0100】
また、支柱73の下部は、位置決め手段74によって、下パイプ723に対して位置決めされている。この下部の位置決め手段74は、固定パイプ741及び連結パイプ742などを有している。
固定パイプ741は、支柱73と同じ外径を有する(たとえば、長さが十数cmの)金属製のパイプである。この固定パイプ741は、支柱73の下部から離れており(支柱73の重量を受けない状態で)、かつ、地面から浮いた状態で、下パイプ723のほぼ中央部に、垂直に固定されている。また、連結パイプ742は、支柱73の下部及び固定パイプ741の上部が挿入される(たとえば、長さが十数cmの)金属製のパイプである。すなわち、図8(a)に示すように、位置決め手段74によって、垂直状態の支柱73の下部が、該支柱73などの自重を受けることなく位置決めされる。
【0101】
さらに、支柱73は、図8(b)に示すように、連結パイプ742を上方に移動させることにより、固定パイプ741との係止が解除されるので、回動式パイプジョイント731を支点に回動させることができる。これにより、水耕栽培用ベッド71を容易に取り出すことができる。
なお、位置決め手段74は、上記構成に限定されるものではなく、たとえば、下パイプ723及び固定パイプ741の代わりに、図示してないが、地面に載置される円板状の底板、及び、この底板に突設された固定パイプ741を有する構成としてもよい。
【0102】
以上説明したように、本実施形態の植物栽培用ユニット102によれば、上述した植物栽培用温度制御装置101とほぼ同様に、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、水耕栽培されるトマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、温室栽培においては、温室全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネを図ることができる。また、温度制御用シート1、連結ホース20、ジョイント21、及び、ネット41などを用いることにより、経済性、作業の安全性、作業性、及び、使い勝手などを大幅に向上させることができる。
さらに、支柱73や位置決め手段74を備えることにより、支柱73や温水が流れる温度制御用シート1の重量によって地面の傾斜が変化し、これにより、水耕栽培用ベッド71に悪影響を与えるといった不具合を確実に防止することができる。
【0103】
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。すなわち、植物栽培用ユニット102は、水耕栽培用ベッド71が細長い矩形箱状であり、トマト201が、水耕栽培用ベッド71の長手方向に並べて植えられており、温度制御用シート1が、並べて植えられたトマト201の側面方向の位置に、流路13が垂直方向に並ぶ状態で、設けられている。この植物栽培用ユニット102は、トマト201の他に、キュウリ、高級メロン、インゲン、サヤエンドウ等のように、垂直方向に生育・誘引される植物にも適用することができる。ただし、温度制御用シート1が設けられる位置や状態は、これに限定されるものではなく、たとえば、栽培される植物に応じて、適宜、設定される。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
【0104】
<植物栽培用ユニットの応用例>
図9は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用ユニットの、応用例を説明するための要部の概略図を示している。
図9において、本応用例の植物栽培用ユニットは、栽培される植物に応じて、温度制御用シート1、1bが設けられる位置や状態が設定されている。
すなわち、図9(a)は、ニラ、ホウレンソウ等のように、草丈の低い植物が面状に定植される場合を示しており、ベッド(あるいは、畝)と平行に延びる(流路13が水平方向に並ぶ状態で)温度制御用シート1が、植物の上方の位置に、植物を覆うように設けられている。このようにすると、ニラ、ホウレンソウ等に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
なお、上記の温度制御用シート1は、たとえば、ベッドなどに固定された枠など(図示せず)に取り付けられる。
【0105】
また、図9(b)は、キャベツ等の場合を示しており、図9(a)の場合と同様に、ベッド(あるいは、畝)と平行に延びる(流路13が水平方向に並ぶ状態で)温度制御用シート1が、植物の上方の位置に、植物を覆うように設けられている。このようにすると、キャベツ等に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
【0106】
また、図9(c)、9(d)は、ベッド(あるいは、畝)に定植されるイチゴの場合を示しており、ベッド(あるいは、畝)と平行に延びる(流路13が水平方向に並ぶ状態で)温度制御用シート1bが、植物の下方の位置に設けられている。このようにすると、イチゴ等に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
また、温度制御用シート1bは、開口部122にイチゴが定植されており、根本のクラウンを局所的に加温や冷却ができ、また、近接する葉なども暖める局所暖房効果をも得ることができ、温度制御をより効果的に行うことができる。
さらに、温度制御用シート1bは、各流路13が接合部分12bを介してつながっているので、ベッド(あるいは、畝)に載置する際、容易に、かつ、安定した状態で載置することができ、作業性などを向上させることができる。
また、一つの畝に、一又は二以上の列で作物を植える場合、列の数に応じて、農業者が容易に温度制御用シート1bを切断することができるので、使い勝手などを向上させることができる。
【0107】
また、図9(e)は、ナス、ピーマン、シシトウ等のように、生育過程でYの字・二股に分かれる植物の場合を示している。ベッド(あるいは、畝)と平行に延びる(流路13が水平方向に並ぶ状態で)温度制御用シート1は、植物の上方の位置に、植物を覆うように設けられており、また、温度制御用シート1は、並べて植えられたナスなどの両側面方向の位置に、流路13が垂直方向に並ぶ状態で設けられている。このようにすると、ナス、ピーマン、シシトウ等に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
【0108】
また、図9(f)は、キクなどの花卉類の場合を示しており、図9(e)の場合と同様に、ベッド(あるいは、畝)と平行に延びる(流路13が水平方向に並ぶ状態で)温度制御用シート1は、植物の上方の位置に、植物を覆うように設けられており、また、温度制御用シート1は、並べて植えられたナスなどの両側面方向の位置に、流路13が垂直方向に並ぶ状態で設けられている。このようにすると、キクなどの花卉類に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
また、図9(e)、9(f)に示す場合、複数の流路13は、接合部分12を介してつながっているので、設置などを容易に行うことができ、作業性などを向上させることができる。
【0109】
以上説明したように、温度制御用シート1、1bが設けられる位置や状態は、栽培される植物に応じて、適宜、設定され、このようにすると、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。
なお、図9(c)、9(d)に示す場合、温度制御用シート1bが、植物の下方の位置に、流路13が水平方向に並ぶ状態で設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、温度制御用シート1bが、さらに、植物の上方の位置に、流路13が水平方向に並ぶ状態で設けられもよく、より効果的に温度制御を行うことができる。
【0110】
[植物栽培用プラントの実施形態]
また、本発明は、植物栽培用プラントの発明としても有効である。
図10は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用プラントの要部の概略図を示している。
図10において、本実施形態の植物栽培用プラント103は、トマト201が栽培される複数の栽培用ベッド82、植物栽培用温度制御装置101b´、及び、建物81などを備えている。また、植物栽培用温度制御装置101b´は、上述した植物栽培用温度制御装置101bと比べると、レールやローラなどを有する水平移動装置44´などを備えている点が相違する。
したがって、図10において、図6に示す植物栽培用温度制御装置101bと同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0111】
(建物)
建物81は、通常、太陽光を透過するガラスや樹脂などからなる建築資材が、壁や天井などに使用されており、たとえば、トマト201に対して、ビニールハウスのような環境を提供することができる。この建物81は、複数(通常、数十〜数百)の栽培用ベッド82を収容する。
なお、建物81は、植物の栽培に適した構造であればよく、特に限定されるものではない。
また、建物81は、太陽光の照射量を調整(抑制)するために、半透明の建築資材などを必要に応じて使用することが可能な構造としてもよい。さらに、太陽光の照射量を調整(補填)するために、照光手段(高輝度LEDなど)を備える構造としてもよい。
【0112】
(植物栽培用温度制御装置)
植物栽培用温度制御装置101b´は、上述したように、植物栽培用温度制御装置101bと比べると、レールやローラなどを有する水平移動装置44´を備えている点などが相違する。この水平移動装置44´は、建物81内に敷設されたレール、走行用のローラ、モータなどを有しており、ネット用パイプ411などを支持する棒状部材の立設された往復移動部材を水平方向に移動させる構成としてある。
なお、水平移動装置44´や昇降装置43は、建物81内の床に設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、建物81の天井のフレームなどに設けられてもよい。
【0113】
(栽培用ベッド)
栽培用ベッド82は、たとえば、細長い矩形箱状としてあり、養液土耕栽培用ベッドや土耕栽培用ベッドである。本実施形態では、トマト201は、栽培用ベッド82の長手方向に一列に並べて植えられている。また、栽培用ベッド82は、通常、両端に棒状部材が立設されており、これらの棒状部材には、トマト201を這わすために、紐などが張られている。
なお、トマト201の栽培方式(たとえば、養液土耕栽培方式など)は、特に限定されるものではない。また、栽培用ベッド82は、載置式としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、吊り下げ式としてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、栽培用ベッド82を水平方向に移動させる移動手段83を備えている。この移動手段83は、建物81内に敷設されたレール、走行用のローラ、モータなどを有しており、通常、栽培用ベッド82の端部が、移動手段83に載置された状態で、移動手段83に取り付けられる。
なお、移動手段83は、建物81内の床に設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、建物81の天井のフレームなどに設けられてもよい。
【0115】
次に、上記構成の植物栽培用プラント103の動作などについて、図面を参照して説明する。
まず、植物栽培用プラント103は、夜間においては、図10に示すように、移動手段83が作動し、列状に栽培されているトマト201どうしを接近させる。また、昇降装置43及び水平移動装置44´が作動し、トマト201と接近した位置(トマト201どうしの間の位置を含む。)に、温度制御用シート1が吊り下げられる。このようにすると、トマト201と温度制御用シート1が密集した状態となるので、加温効果を向上させることができ、省エネ効果を向上させることができる。
【0116】
ここで、好ましくは、密集させたトマト201をビニールカーテンなどで囲ったり覆ってもよい。すなわち、植物栽培用プラント103は、移動手段83により密集させたトマト201、及び、植物栽培用温度制御装置101b´を、ほぼ密閉した状態で収容する一又は二以上の温度制御室(図示せず)を有する構成とするとよい。この温度制御室には、通常、ガラスや樹脂などの建築資材(たとえば、断熱性を有する資材)が用いられる。
このようにすると、さらに、省エネ効果を向上させることができる。
また、上記の温度制御室は、ヒートポンプなどの温風(あるいは、冷風)によっても加温(あるいは、冷却)される構成としてもよい。このようにすると、温度制御の性能や信頼性などを向上させることができる。
【0117】
さらに、上記の温度制御室は、生物農薬などの農薬を散布する農薬散布手段を有する構成としてもよい。この農薬散布手段は、噴出機、ファン及びダクトなどを有している。なお、農薬散布手段は、ダクトだけでもよい。
上記の農薬散布手段によって、通常、生物農薬としてバチルス菌が、温度制御室内に気中散布される。生物農薬としては、出光興産製:ボトキラー(登録商標)水和剤などがあり、灰色カビ病やうどんこ病の防除に有効であり、生育初期から栽培後期・収穫期までいつでも使用・散布が可能である。
このようにすると、密集されたトマト201に、効率よく生物農薬を散布することができる。
【0118】
次に、植物栽培用プラント103の昼間の状態について説明する。
図11は、本発明の一実施形態にかかる植物栽培用プラントの、昼間における要部の概略図を示している。
植物栽培用プラント103は、昼間においては、図11に示すように、移動手段83が作動し、列状に栽培されているトマト201どうしが離れるようにする。このようにすると、トマト201が十分日光を受けることができる。
ここで、上記トマト201どうしの距離は、十分日光を受けることができる距離に限定されるものではなく、たとえば、さらに離れて、果実204の採取などの作業を容易に行える距離であってもよい。
【0119】
また、植物栽培用プラント103は、昇降装置43などが作動し、温度制御用シート1が吊り上げられる。このようにすると、果実204の採取などの作業を容易に行うことができる。
さらに、昼間においても、トマト201を局所的に加温したい場合、図示してないが、昇降装置43や水平移動装置44´が作動し、トマト201と接近した位置に、温度制御用シート1を吊り下げることができる。このようにすると、トマト201は、十分日光を受けることができ、かつ、局所的に加温される。
【0120】
以上説明したように、本実施形態の植物栽培用プラント103によれば、上述した植物栽培用温度制御装置101bとほぼ同様に、温度制御用シート1からの輻射熱、及び、トマト201の近傍における熱対流により、水耕栽培されるトマト201に対して、局所的に、かつ、効果的に温度制御を行うことができる。これにより、たとえば、工場栽培においては、建物81全体を加温する場合と比べると、大幅な省エネを図ることができる。
また、トマト201が十分日光を受けることができる状態、果実204の採取などの作業を容易に行うことができる状態、及び、トマト201が十分日光を受けることができ、かつ、局所的に加温される状態などを容易に実現することができ、植物栽培用プラント103としての性能や付加価値などを大幅に向上させることができる。
【0121】
以上、本発明の温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントについて、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る温度制御用シート、植物栽培用温度制御方法、植物栽培用温度制御装置、植物栽培用ユニット、及び、植物栽培用プラントは、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、図示してないが、植物栽培用ユニット102などは、枠72をビニールシートで覆う構成としてもよく、このようにすると、温度制御用シート1からの熱をさらに有効に利用することができる。
さらに、植物栽培用温度制御装置101などは、ネット41に様々な用途のホース(たとえば、養液を噴霧(供給)するためのホースや、打ち水の原理を利用して、散水するためのホース)を取り付ける構成としてもよい。このようにすると、植物栽培用温度制御装置101、植物栽培用ユニット102及び植物栽培用プラント103などの付加価値を向上させることができる。
【符号の説明】
【0122】
1、1a、1b、1c 温度制御用シート
101、101a、101b、101b´ 植物栽培用温度制御装置
102 植物栽培用ユニット
103 植物栽培用プラント
2 ホース
3 流体供給手段
4 取付け手段
5、5a 制御手段
11、11b シート本体
12、12b 接合部分
13 流路
14 連結部
111 開口部
121、121b 切込み
122 開口部
123 ミシン目
20 連結ホース
21 ジョイント
22 バルブ
31 供給用ホース
32 回収用ホース
41 ネット
42 粘着テープ
43 昇降装置
44、44´ 水平移動装置
51 温度センサ
61、62、63、64、65、66、67 弁
71 水耕栽培用ベッド
72 枠
73 支柱
74 位置決め手段
81 建物
82 栽培用ベッド
83 移動手段
201 トマト
202 花芽
203 成長点
204 果実
211 ホースバンド
411 ネット用パイプ
412 温度制御用シート用パイプ
413 結束バンド
721 紐
722 上パイプ
723 下パイプ
731 回動式パイプジョイント
741 固定パイプ
742 連結パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねられた柔軟性を有するシート本体と、
前記シート本体の長手方向に沿って、かつ、前記シート本体の短手方向に所定の間隔をあけて、前記シート本体の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、前記シート本体どうしを連続的に接合する複数の接合部分と、
隣り合って対向する前記接合部分により挟まれた前記シート本体によって形成され、加温用流体又は冷却用流体が流れる複数の流路と、
前記加温用流体又は冷却用流体を供給及び回収する管と前記流路とを連結するための連結部と
を有することを特徴とする温度制御用シート。
【請求項2】
前記連結部が、前記接合部分に切込みを入れることにより形成され、前記流路に対応する前記シート本体、及び、前記流路に対応する前記接合部分を有することを特徴とする請求項1に記載の温度制御用シート。
【請求項3】
前記シート本体が、樹脂製の筒状のシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御用シート。
【請求項4】
前記シート本体及び前記接合部分の少なくとも一つに、複数の開口部が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度制御用シート。
【請求項5】
前記接合部分に、前記シート本体の長手方向に沿ってミシン目が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度制御用シート。
【請求項6】
前記温度制御用シートが、植物の近傍に設置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度制御用シート。
【請求項7】
植物の近傍であって、垂直方向及び/又は水平方向の所定範囲内に、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度制御用シートを設置し、前記複数の流路に加温用流体又は冷却用流体を流すことを特徴とする植物栽培用温度制御方法。
【請求項8】
前記植物の近傍が、前記植物の特定の部分の近傍であることを特徴とする請求項7に記載の植物栽培用温度制御方法。
【請求項9】
植物の近傍であって、垂直方向及び/又は水平方向の所定範囲内に設置される上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度制御用シートと、
前記温度制御用シートに、前記加温用流体又は冷却用流体を供給する流体供給手段と、
前記温度制御用シートを取り付けるための取付け手段と
を備えたことを特徴とする植物栽培用温度制御装置。
【請求項10】
前記植物の近傍が、前記植物の特定の部分の近傍であることを特徴とする請求項9に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項11】
前記取付け手段が、前記温度制御用シートを吊るすための紐状体、又は、網目状体を有し、前記温度制御用シートが、該温度制御用シートの流路に挿入された管状体、又は、棒状体を介して、前記紐状体、又は、前記網目状体に吊るされることを特徴とする請求項9又は10に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項12】
前記取付け手段が、前記温度制御用シートを昇降させる昇降装置、及び/又は、前記温度制御用シートを水平移動させる水平移動装置を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項13】
前記植物の近傍の温度を測定する温度センサと、この温度センサからの測定信号にもとづいて、前記流体供給手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項14】
前記温度センサが、黒色塗装された金属板、この金属板の裏面に取り付けられた温度測定部、及び、この温度測定部を覆うように前記金属板の裏面に取り付けられた断熱部材を有することを特徴とする請求項13に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項15】
前記複数の流路に、前記加温用流体又は冷却用流体を、直列的及び/又は並列的に流すための弁を備えたことを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の植物栽培用温度制御装置。
【請求項16】
一又は二以上の吊り下げ式又は載置式の栽培用ベッドと、
上記請求項9〜15のいずれか一項に記載の植物栽培用温度制御装置と
を備えたことを特徴とする植物栽培用ユニット。
【請求項17】
前記栽培用ベッドが細長い矩形箱状であり、前記植物が、前記栽培用ベッドの長手方向に並べて複数列に植えられており、前記温度制御用シートが、前記並べて植えられた植物の複数列の間に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の植物栽培用ユニット。
【請求項18】
前記栽培用ベッドが細長い矩形箱状であり、前記複数の流路が前記栽培用ベッドの短手方向に移動することを抑制するための、支柱が設けられていることを特徴とする請求項16又は17に記載の植物栽培用ユニット。
【請求項19】
前記支柱は、該支柱の上部が、上部位置決め手段により位置決めされた状態で、前記栽培用ベッドのフレームに吊るされ、かつ、前記支柱の下部が、下部位置決め手段により該支柱の自重を受けることなく位置決めされていることを特徴とする請求項18に記載の植物栽培用ユニット。
【請求項20】
前記栽培用ベッドが細長い矩形箱状であり、前記植物が、前記栽培用ベッドの長手方向に並べて植えられており、前記温度制御用シートが、前記並べて植えられた植物の上方向、下方向及び側面方向の少なくとも一つの方向に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の植物栽培用ユニット。
【請求項21】
一又は二以上の吊り下げ式又は載置式の栽培用ベッドと、
上記請求項9〜15のいずれか一項に記載の植物栽培用温度制御装置と、
前記栽培用ベッドを収容する建物と
を備えたことを特徴とする植物栽培用プラント。
【請求項22】
前記栽培用ベッドを水平方向に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項21に記載の植物栽培用プラント。
【請求項23】
前記移動手段により密集させた植物を収容する一又は二以上の温度制御室を備えたことを特徴とする請求項22に記載の植物栽培用プラント。
【請求項24】
前記温度制御室が、農薬を散布する農薬散布手段を有することを特徴とする請求項23に記載の植物栽培用プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−170349(P2012−170349A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32964(P2011−32964)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】