説明

温度応動弁

【課題】 弁ケーシング内の流体が外部に噴出しても火傷することを防止できるようにする。
【解決手段】 入口1と出口2を有する本体3に蓋4をねじ結合して内部に弁室5を有する弁ケーシングを形成する。弁室5と出口2の間に弁室5と出口2を連通する弁口8を設ける。蓋4にねじ結合した調節棒17に弁軸嵌合孔18を設ける。一端側に弁口8を開閉する弁体13を設けた弁軸12の他端側を弁軸嵌合孔18に変位自在に嵌合して配置する。弁軸12の周りに感温部材としてのバイメタル積層体26を配置する。調節棒17の気密を保つシール部材としてのOリング16と調節棒17の進退操作部としての切割19との間にOリング16よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材19を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被制御流体で加熱冷却され、その温度に応じて変形する感温部材により弁口を開閉する温度応動弁に関する。本発明の温度応動弁は所定温度以上あるいは以下の流体を系外に排出したり、複数の流体を混合して所定温度の流体にしたりする場合に用いられ、特に所定温度以下の復水を自動的に排出する温調トラップとして用いる場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温度応動弁は、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁室と出口を連通する弁口を設け、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングにねじ結合し、一端側に弁口を開閉する弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて弁体で弁口を開閉し、調節棒を外部から進退操作せしめて排出すべき流体の温度を変更するものである。
【0003】
上記従来の温度応動弁は、調節棒の気密を保つシール部材が劣化してくると、調節棒を外部から進退操作せしめたときに、弁ケーシング内の流体が外部に噴出して火傷する危険があった。
【特許文献1】特許第2709533号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、弁ケーシング内の流体が外部に噴出しても火傷することを防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁室と出口を連通する弁口を設け、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングにねじ結合し、一端側に弁口を開閉する弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて弁体で弁口を開閉し、調節棒を外部から進退操作せしめて排出すべき流体の温度を変更するものにおいて、調節棒の気密を保つシール部材と調節棒の進退操作部との間にシール部材よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、調節棒を外部から進退操作せしめたときに、調節棒の気密を保つシール部材の部位から弁ケーシング内の流体が外部に噴出しても、流体遮蔽部材により噴出流体が調節棒の進退操作部に達するのを防ぐことができるので、火傷することを防止できるという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の温度応動弁は、調節棒を外部から進退操作せしめて排出すべき流体の温度を変更するものにおいて、調節棒の気密を保つシール部材と調節棒の進退操作部との間にシール部材よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材を配置したものである。そのため、調節棒の進退操作部を操作して調節棒を外部から進退操作せしめたときに、調節棒の気密を保つシール部材の部位から弁ケーシング内の流体が外部に噴出しても、シール部材よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材により噴出流体が調節棒の進退操作部に達するのを防ぐことができる。そのため、火傷することを防止できる。
【実施例1】
【0008】
上記の技術的手段の具体例を示す実施例を説明する(図1参照)。入口1と出口2を有する本体3に蓋4をねじ結合して内部に弁室5を有する弁ケーシングを形成する。弁室5には入口1が通孔6を通して連通し、出口2が弁体嵌合孔7と弁口8と通孔9を通して連通する。弁体嵌合孔7と弁口8は本体3にねじ結合した弁座部材10に形成する。弁口8は弁体嵌合孔7よりも小径に形成する。弁室5内に入口1から流入する流体の流れ方向を規制し、流体中の異物を捕捉するスクリーン11を配置する。弁口8に対向して弁軸12を配置する。弁軸12の下端には弁口8を開閉する円錐状の弁体13を一体に設ける。弁軸12の弁体13の上方に弁体嵌合孔7に変位自在に嵌合する二面幅から成る刃物15を一体に設ける。二面幅から成る刃物15は弁室5内の流体を弁口8側に通過させ、その下端で弁口8が開口する弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を削除する。
【0009】
弁軸12の上端側は蓋4に外部から進退操作可能にねじ結合した調節棒17の弁軸嵌合孔18に変位自在に嵌合する。弁体嵌合孔7と弁口8と弁軸嵌合孔18は同一軸上に形成する。蓋4と調節棒17の間に調節棒17の気密を保つシール部材としてのOリング16を配置する。調節棒17の上部は蓋4から突出し、その上端面にドライバー等の工具の先端が嵌り回転操作せしめられる進退操作部としての切割19を設ける。Oリング16と切割19との間の調節棒17の外周にOリング16よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材20をスナップリング21で固定する。調節棒17は上下方向の切割22を有し、弁軸12の上部に貫通して固定した連結棒23が切割22に嵌合する。これにより、弁軸12が調節棒17の回転に伴って回転する。切割22と連結棒23を用いずに調節棒17の回転に伴って弁軸12を回転させるために、弁軸嵌合孔18の周壁断面を多角形や楕円形等の非真円形に形成し、弁軸12の弁軸嵌合孔18に嵌合する部位の断面を多角形や楕円形等の非真円形に形成してもよい。弁軸12の中央部にばね受け24を固定し、断面ほぼU字状で中央孔と上端の外側に鍔部を設けた中間部材25を、中央孔を弁軸12に変位自在にばね受け24の下端面に当接させて嵌合する。弁軸12の周りで、調節棒17の下端面と中間部材25の鍔部の間に感温部材としてのバイメタル積層体26と平座金27を配置する。バイメタル積層体26はバイメタルディスクを湾曲方向を変えて組み合わせた2枚で一対とし、それを複数対重ねたものである。ばね受け24の上端面と平座金27の下端面の間にばね受け24を弁口8方向に付勢する弁体付勢ばね28を配置する。中間部材25の鍔部と弁室5の底壁の間に復帰ばね29を配置する。
【0010】
流体は入口1から通孔6とスクリーン11を通って弁室5に入り、バイメタル積層体26の周りを流れ、弁体嵌合孔7と弁口8から通孔9を通って出口2に流出する。バイメタル積層体26は周囲の流体の温度が上昇して高温に加熱されると、各バイメタルディスクが湾曲してその度合が大きくなり、平座金27と中間部材25を介して復帰ばね29を圧縮しながら積層方向に伸張する。これに伴い、中間部材25と弁軸12が弁口8方向に変位し、次第に弁口8の開度が小さくなり、終わりには弁体13が弁口8を閉じる。弁体13が弁口8を閉じた後、更に高温の流体が弁室5に流入すると、バイメタル積層体26は復帰ばね29と弁体付勢ばね28を圧縮しながら更に伸張する。このとき、中間部材25は弁口8方向に変位するが、弁軸12は変位しない。弁室5の流体の温度が低下すれば、バイメタル積層体26は湾曲力が小さくなり、復帰ばね29で中間部材25を介して押し戻される。これに伴い、中間部材25と弁軸12が弁口8から離れる方向に変位し、弁口8が開けられて弁室5の流体が出口2に排出される。
【0011】
排出すべき流体の温度を変更する場合、調節棒17の切割19にドライバー等の工具の先端を差し込んで調節棒17を回転させる。調節棒17をねじ込めば排出すべき流体の温度が低くなり、調節棒17をねじ上げれば排出すべき流体の温度が高くなる。また、調節棒17をねじ込んで弁軸12を回転させることにより、弁軸12に設けた刃物15の下端で弁口8が開口する弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を削除する。この調節棒17を回転させたとき、Oリング16から流体が外部に噴出しても、流体遮蔽部材20により流体が切割19部分に達するのを防ぐことができ、火傷することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の温度応動弁の断面図。
【符号の説明】
【0013】
1 入口
2 出口
3 本体
4 蓋
5 弁室
8 弁口
10 弁座部材
12 弁軸
13 弁体
16 Oリング
17 調節棒
18 弁軸嵌合孔
19 切割
20 流体遮蔽部材
26 バイメタル積層体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁室と出口を連通する弁口を設け、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングにねじ結合し、一端側に弁口を開閉する弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて弁体で弁口を開閉し、調節棒を外部から進退操作せしめて排出すべき流体の温度を変更するものにおいて、調節棒の気密を保つシール部材と調節棒の進退操作部との間にシール部材よりも大きな外径に形成した流体遮蔽部材を配置したことを特徴とする温度応動弁。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−187255(P2007−187255A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6225(P2006−6225)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】