説明

温度検知体

【課題】異常な高温などの目的とする温度に一部分でも晒されることにより導通し、温度検知をすることができるとともに、薄型で可撓性に優れることから様々な形状の検知対象にも装着することができ、更に、優れた動作信頼性を有した温度検知体を提供する。
【解決手段】バネ性を有し長尺な第一の電極1と、上記第一の電極に対して隣接・配置されたバネ性を有し長尺な第二の電極2と、絶縁材料からなり一方向に付勢された上記第一の電極と第二の電極とを絶縁するように配置されるスペーサ3と、を具備し、上記第一の電極及び上記第二の電極はともに撚り線構造をなしていており、所定の温度に晒されることにより上記スペーサによる上記第一の電極と第二電極の絶縁が解除され、それによって、上記第一の電極と上記第二の電極とが接触・導通することにより所定の温度を検知するようにしたことを特徴とする温度検知体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常な高温等の目的とする温度に一部分でも晒されることにより導通して所定の温度を検知することができる温度検知体に係り、特に、薄型で可撓性に優れることから様々な形状の検知対象にも装着することができ、更に、優れた動作信頼性を有しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱機器やリチウム二次電池等における異常温度の検知をするために、安全装置として素子状の温度ヒューズやサーミスタが用いられている。又、異常温度になる可能性のある場所が広範囲で存在する場合には、安全性向上のために複数個の温度ヒューズやサーミスタが連結されて用いられていた。しかしながら、このような構成では、異常温度を検知する部分が点であり局部的に発生する異常温度に対し、確実に作用するか定かではないという問題がある。又、温度ヒューズやサーミスタの使用量が増大するため、部品コストが上昇するばかりか、その連結工程にも多大な工数がかかるため、作業コストが非常に高くなるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するものとして、従来種々の面状の温度ヒューズが知られている。例えば、特許文献1のように、フィルムシート状の平面電極と、凹凸状又は複数の穴の形成されたフィルム状の熱検知電極との間に熱可塑性樹脂フィルムを介在させ、これらをポリエチレンテレフタレートフィルムで被覆したものが挙げられる。この特許文献1は、異常高温が発生すると、熱可塑性樹脂フィルムが溶融し熱検知電極の表面に形成されている凹凸の凹部又は複数の穴の中に流れ込み、熱検知電極と平面電極が接触して導通することで、異常温度を検知するという技術に係るものである。
【0004】
又、特許文献2のように、板状電極板を2枚向かい合わせ、その間の全域にわたって所定値以上の温度で溶融する電気的絶縁性物質を圧接狭持する構成のものが挙げられる。この特許文献2は、過熱によって電気的絶縁性物質が溶融して両電極板が接触し、電気的に導通して異常を検知するという技術に係るものである。
【0005】
又、本件出願とは直接関係しないが、発熱線の分野においては、例えば、特許文献3のように、PTC発熱体層の外表面に一対のスパイラル電極線を形成し、この電極線及びPTC発熱体層に接するように熱溶融性高分子層を形成し、熱溶融性高分子層の外表面にさらに導体線を形成したものが知られている。この特許文献3は、異常な過熱に対して、溶融性高分子層が溶融し、スパイラル電極線と最外部の導体線とが接触し、過熱を阻止するという技術に係るものである。
【0006】
尚、本件出願に関連した技術として、本件特許出願人より特許文献4が出願されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−229839号公報
【特許文献2】特開平9−145164号公報
【特許文献3】特開昭59−207586号公報
【特許文献4】特願2006−81339明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記特許文献1に開示された面状温度ヒューズの場合、熱検知電極の凹部又は穴部に十分な深さを設けないと、熱検知電極と平面電極の間に熱可塑性樹脂フィルムの一部が残存してしまい、熱検知電極と平面電極とを確実に接触させることができない。しかしながら、熱検知電極の凹部又は穴部を十分な深さとすると、熱検知電極の厚さが増大してしまい、面状温度ヒューズとしての可撓性が得られなくなってしまう。
【0009】
又、特許文献2に開示された面状温度ヒューズは、溶融した電気的絶縁性物質
が移動する空間がないため、溶融した状態で両電極板間に残存してしまい、両電極板の接触が図れないことが考えられる。又、この特許文献2には、電気的絶縁性物質として、フラックスに半田の粒を混入したものを使用することが開示されている。これにより、異常温度時には、フラックスが溶融して無くなり、半田の粒が重なって、又は、融合して両電極板間を橋渡しするという作用を呈している。しかしながら、この場合、フラックスの効果によって検知時には溶融した半田が小さな球状になって分離してしまい、両電極板間が導通し得ないことが考えられる。又、高温環境下で長期間使用すると、フラックスが熱劣化で消散してしまうことが考えられ、この場合は、異常温度に達していなくても両電極板間が導通してしまい、誤動作することになる。
【0010】
又、特許文献3記載の発熱線においては、スパイラル電極線はPTC発熱体層に単に巻き付けられたのみであり、最外部の導体線は熱溶融性高分子層に単に巻き付けられたのみの構成である。そのため、局部的に異常な過熱が生じて熱溶融性高分子層が溶融したとしても、スパイラル電極線と導体線との距離を変動させる力は働かないことから、スパイラル電極線と導体線とが接触に至らないことが考えられる。
【0011】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、異常な高温等の目的とする温度に一部分でも晒されることにより導通し、温度検知をすることができるとともに、薄型で可撓性に優れることから様々な形状の検知対象にも装着することができ、更に、優れた動作信頼性を有した温度検知体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による温度検知体は、バネ性を有し長尺な第一の電極と、上記第一の電極に対して隣接・配置されたバネ性を有し長尺な第二の電極と、絶縁材料からなり一方向に付勢された上記第一の電極と第二の電極とを絶縁するように配置されるスペーサと、を具備し、上記第一の電極及び上記第二の電極はともに撚り線構造をなしていており、所定の温度に晒されることにより上記スペーサによる上記第一の電極と第二電極の絶縁が解除され、それによって、上記第一の電極と上記第二の電極とが接触・導通することにより所定の温度を検知するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による温度検知体は、上記第一の電極及び上記第二の電極について、その撚り方向が逆向きになっていることを特徴とするものである。
又、請求項3による温度検知体は、上記第一の電極及び上記第二の電極の内の少なくとも一方は上記スペーサによって被覆されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による温度検知体は、上記第一の電極及び上記第二の電極は互いに絡み合った状態で設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による温度検知体は、上記第一の電極、第二の電極、スペーサの外周には空間保持部材が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6による温度検知体は、上記空間保持部材は導電性材料から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項7による温度検知体は、上記第一の電極、第二の電極、スペーサの外周にはさらに別のスペーサが被覆されていることを特徴とするものである。
又、請求項8による温度検知体は、上記スペーサが所定の温度で溶融するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1による温度検知体によれば、バネ性を有し長尺な第一の電極と、上記第一の電極に対して隣接・配置されたバネ性を有し長尺な第二の電極と、絶縁材料からなり一方向に付勢された上記第一の電極と第二の電極とを絶縁するように配置されるスペーサと、を具備し、上記第一の電極及び上記第二の電極はともに撚り線構造をなしており、所定の温度に晒されることにより上記スペーサによる上記第一の電極と第二電極の絶縁が解除され、それによって、上記第一の電極と上記第二の電極とが接触・導通することにより所定の温度を検知するように構成されているので、スペーサによる第一の電極と第二の電極との間の絶縁が解除されることで、第一の電極が積極的に第二の電極へ接触しにいき、第二の電極側からも積極的に第一の電極へ接触しにいく構成であるため、第一の電極と第二の電極とが確実に接触して導通し、局所的に発生する異常温度等の目的とする温度に対して確実に検知することが可能であり、安全性を向上させることができる。又、電極の厚さを増大させることもないため、温度検知体として薄型で可撓性に優れたものとすることができ、様々な形状の検知対象にも装着することができる。又、スペーサによる絶縁が解除された際には、撚り線構造に撚り戻しが起こり、第一の電極及び第二の電極の径が広がる方向へ応力が作用するため、温度検知時における第一の電極と第二の電極との接触をより確実且つ迅速なものとすることができる。
【0014】
又、請求項2による温度検知体は、請求項1記載の温度検知体において、上記第一の電極及び上記第二の電極はともに撚り線構造をなしていて、その撚り方向が逆向きになっている構成になっているので、温度検知時における第一の電極と第二の電極との接触をさらに確実且つ迅速なものとすることができる。
又、請求項3による温度検知体は、請求項1又は2記載の温度検知体において、上記第一の電極及び上記第二の電極の内の少なくとも一方は上記スペーサによって被覆されている構成になっているので、比較的簡単な構成でスペーサによって一方向に付勢された第一の電極と第二の電極との間の絶縁を確実に保持した構造を得ることができる。
【0015】
又、請求項4による温度検知体は、請求項1〜3記載の温度検知体において、上記第一の電極及び上記第二の電極は互いに絡み合った状態で設置されている構成になっているので、第一の電極は充分に付勢された状態になるとともに、絡み合い交差した部分全てにおいて温度検知が可能となり、検知精度が向上することになる。
【0016】
又、請求項5による温度検知体は、請求項3記載の温度検知体において、上記第1の電極、第2の電極、スペーサの外周には空間保持部材が設けられている構成になっているので、スペーサによる絶縁解除動作がより円滑に行われることになる。
【0017】
又、請求項6による温度検知体は、請求項5記載の温度検知体において、上記空間保持部材は導電性材料から構成されているので、空間保持部材に対しても第二の電極としての機能を発揮させることができる。
【0018】
又、請求項7による温度検知体は、請求項2記載の温度検知体において、上記第1の電極、第2の電極、スペーサの外周にはさらに別のスペーサが被覆されている構成になっているので、第1の電極、第2の電極の保持がより確実なものとなる。
【0019】
又、請求項8による温度検知体は、請求項1〜7の何れかに記載の温度検知体において、上記スペーサが所定の温度で溶融する構成になっているので、検知温度がスペーサの溶融温度と同一になるため、検知温度の設定が容易となる。又、種々の融点を有するスペーサを適宜選択することで、検知温度を自由に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。尚、本実施の形態による面状温度検知体は、85℃近傍の温度を検知するべく構成されるものである。
【0021】
図1に示すように、SUS304ステンレス鋼線を7本撚り合せてなる第一の電極1の外周には、ホットメルト接着剤(融点85℃)と固形ワックス(融点85℃)の混合物からなるスペーサ3が押出被覆されている。また、SUS304ステンレス鋼線を7本撚り合せてなるなる第二の電極2の外周には、ホットメルト接着剤(融点85℃)と固形ワックス(融点85℃)の混合物からなるスペーサ3が押出被覆されている。この第一の電極1と、第二の電極2とを撚り合わせたものがPETの不織布からなる基材4の上に配置されている。上記第一の電極1及び第二の電極2の上には、電極の保護のため、片面に粘着剤が塗布されたPETからなるフィルム5が貼付されている。このようにして、本実施の形態による温度検知体10が構成される。
そして、上記構成をなす温度検知体10を、例えば、図3に示すように、任意の熱機器11の外周の所定位置に設置する。それによって、熱機器11における異常温度の検知を行うものである。
【0022】
又、上記温度検知体10の回路構成は図2に示すようなものとなっている。図中符号6は電源であり、符号7は電流計である。図2に示す回路図において、スペーサ3が溶融していない場合には回路が遮断されている。これに対して、所定の温度によりスペーサ3が溶融した場合には、第一の電極1と第二の電極2が接触する。それによって、回路に電流が流れることになり、所定の温度に達したことを検知するものである。
【0023】
このようにして得られた温度検知体10を図示しない加熱槽の中に設置し、1℃/分で昇温させていく。そして、図2に示す回路図において、スペーサ3が溶融して第一の電極1と第2の電極2が接触・通電した時の温度を検知温度として測定した。尚、サンプル数は5とした。その結果、何れのサンプルも85〜90℃で検知しており、目的とする温度に対して確実に検知することが可能であることが確認された。
【0024】
上記実施の形態によれば、目的とする温度に達する前は、第一の電極1及び第二の電極2には撚り戻しの力が加わって付勢された状態となっているとともに、第一の電極1及び第二の電極2に被覆されたスペーサ3により、第一の電極1と第二の電極2とが距離を隔てた状態に設置され、即ち、上記第一の電極及び第二の電極2が付勢された状態で上記スペーサによって固定保持された状態となっている。温度検知体の一部でも目的とする温度となった際には、スペーサ3が溶融することで付勢された状態での固定保持が解放され、積極的に第一の電極1は第二の電極2に接触しに行き、第二の電極2は第一の電極1に接触しに行くことになるため、第一の電極1と第二の電極2とが確実に導通して、温度検知をすることができる。又、第一の電極1、第二の電極2、スペーサ3、基材4、フィルム5の何れも厚さを有するものではなく、可撓性に優れるものであるため、温度検知体10全体としても、薄型で可撓性に優れたものとすることができる。
【0025】
又、第一の電極1及び第二の電極2の外周にスペーサ3を押出被覆したことから、第一の電極1とスペーサ3、及び、第二の電極2とスペーサ3を一本の線状体として扱うことができるため、製造時の取扱や基材への配置が容易となり、生産性を向上させることができる。更に、スペーサ3が第一の電極1及び第二の電極2を完全に覆う形態となるため、目的とする温度に達していない状態での導通、即ち、誤動作を確実に防止することができる。
【0026】
尚、本発明による温度検知体10は、上記の実施の形態に限定されるものではない。第一の電極1としては、バネ性を有する導電体であれば良く、材質としては、例えば、硬鋼線、ピアノ線、オイルテンパ線、ステンレス鋼線等、限定はない。他には、例えば、バネ性を有する絶縁材料に導電線を横巻きしたもの等も考えられる。又、形状としては、付勢された状態での固定保持が解放された際に、積極的に第二の電極に接触しにいくことを妨げるものでなければ、特に限定はないが、本願発明では、撚線のものが使用される。上記実施の形態では、同じ太さのSUS304ステンレス鋼線を使用したが、例えば、中央に配置した線のみをわずかに太いものとすることで、スペーサ3を形成する際や、基材4に配置する際などに、中央に配置した線が撚りから飛び出てしまうことを防止することができる。この第一の電極1を蛇行形状や直線状等の種々の形状にて基材4上に配置することが考えられる。この際、第一の電極1は一本の導電体で構成するのではなく、複数本の導電体で構成しても良く、例えば、複数本の線状の導電体を網状に形成し、第一の電極1としても良い。第二の電極2についても、第一の電極と同様にして構成すれば良い。
【0027】
図4に上記実施の形態の詳細を示す。第一の電極1及び第二の電極2を撚線構造としているので、温度検知時において、スペーサ3が溶融した場合に、第一の電極1及び第二の電極2全体の撚り戻しと撚り線の撚り戻しの両方の作用が働くことになるので、第一の電極1と第二の電極2が相互に接近し易くなっており、それによって、より確実且つ迅速な検知が可能になる。また、このような撚線構造とする場合、ステンレス鋼線と軟銅線を適宜撚り合せて構成してもよい。こうすることで、第一の電極1及び第二の電極2の配置や端末への端子取付加工が容易になるように、バネ性と可撓性の調整を図ることもできる。特にステンレス鋼線と軟銅線を撚り合せて構成する場合は、中心をステンレス鋼線とし、その外周に軟銅線を配置する構成とすれば、撚りが潰れ難くなるとともに、端末での端子との接触抵抗や、第一の電極1と第二の電極2が導通する際の接触抵抗が低くなるため好ましい。
【0028】
次に、スペーサ3としては、目的とする温度に達する前は、第一の電極1を付勢された状態で固定保持することができ、目的とする温度となったときにこの固定保持を解除できるものであれば特に限定はない。例えば、所定の温度で溶融するもの、気化するもの、収縮するもの、粘度が低下するもの等、第一の電極1や第二の電極2の形状や配置、或いは、スペーサ3自身の形状や配置に応じて適宜選定すれば良い。これらの中でも所定の温度で溶融するものは最も簡便に使用でき、検知温度の設定も容易であるため好ましい。所定の温度で溶融するものの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂、オレフィン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、有機塩、植物系、動物系、鉱石系などの天然系ワックス、パラフィン、マイクロワックス、ペトラタムワックス等の石油系ワックス、ワックス生成物、レジン生成物、アスファルト生成物などの合成ワックス、脂肪酸、脂肪酸塩などやこれらを混合したものが挙げられ、これらの中から目的とする温度に合わせた融点のものを適宜に選択すれば良い。上記した中でも、エチレン系の材料を使用した場合、メタロセン触媒により重合したものを使用すれば、ポリマー組織が均一に近く溶融温度のバラつきが少ないため好ましい。
【0029】
上記図1においては、第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせたものが、蛇行形状に配置されたものとなっているが、このような形状に配置されたものに限定されることはない。熱機器11等の形状や種々使用条件に応じて適宜設計した形状に配置されれば良く、例えば、第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせたものが直線に配置されたものとしても良い。
【0030】
但し、図1のように蛇行形状に配置されたものであれば、熱機器11の表面が曲面や入り組んだ形状であっても、その形状に追随し易く密着させることができる。すなわち、蛇行形状に配置した場合には、曲面や入り組んだ形状に対して斜めに配置されることになるために電極自身の曲げ半径が大きくなり、その結果、密着性が向上するものである。又、配置する際に温度検知体10に引張りや屈曲等の外力が加わっても、第一の電極1や第二の電極2には無理な力が加わり難く、第一の電極1と第二の電極2の断線を防止することができるため好ましい。
また、第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせたものにも限定されないが、第一の電極1と第二の電極2とが絡み合ったものであることが好ましい。尚、ここでいう「絡み合った状態」とは、上記のような撚り合わせの形態のみならず、例えば、第二の電極2の外周に第一の電極1を横巻きした形態等も含まれる。このようなものであれば、スペーサ3による絶縁が解除された後、第一の電極1と第二の電極2とが接触し易いためである。
【0031】
次に、図5を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態における第一の電極1と第二の電極2をともに撚線構造とし、且つ、第一の電極1と第二の電極2の両方をスペーサ3、3によって夫々被覆したものである。又、この場合には、第一の電極1と第二の電極2の撚線の撚り方向が逆向きになっている。尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0032】
この場合にも前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるものである。又、第一の電極1と第二の電極2の撚線の撚り方向が逆向きになっているので、温度検知時において、スペーサ3、3が溶融した場合に、第一の電極1全体の撚り戻しと撚り線の撚り戻しの両方の作用が働くことになるとともに撚り線同士の戻りの方向が相互に近接する方向になるので、第一の電極1と第二の電極2が相互に接近し易くなっており、それによって、より確実且つ迅速な検知が可能になる。
【0033】
次に、図6を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。前記第1〜第3の実施の形態で示した基材4は特に設ける必要はないが、スペーサ3を所定の温度で溶融するものとした際の好ましい形態としては、溶融したスペーサ3が移動してくることができるような、即ち、流れ込めるような形状や構成となっていればよい。例えば、凹凸や穴部が設けられたシートや各種線状材からなる網なども考えられるが、特に、溶融したスペーサ3を吸収できるものであることが好ましい。これは、溶融したスペーサ3を効果的に吸収することにより、第一の電極1と第二の電極2との接触をより迅速に行うことができるからである。このような溶融したスペーサ3を吸収できる基材4としては、例えば、上記実施の形態に記載した不織布のみでなく、メッシュクロス、スポンジ、織布、紙等も考えられる。尚、基材4を構成する材質については特に限定はない。勿論、フィルム5と同様にPETフィルム等を使用しても差し支えない。又、形状もシート状に限られるものではなく、例えば、図6のように、第一の電極1、第二の電極2、及び、スペーサ3を被覆し、この被覆材を基材4としても良い。
【0034】
次に、図7を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。前記第1〜第4の実施の形態で示したフィルム5も基材4と同様、必要に応じて設ければ良く、特に必要がなければ設けなくても良い。スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせた形態の場合、図7に示すように、スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせた外周に、各種繊維材料や金属細線等からなる編組21を施しても良い。これにより、スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2の周囲に空間を持たせることができるため、溶融したスペーサ3が基材4へと移動し易くなる。又、編組21を金属細線等の導電性材料とすれば、この編組21を第二の電極2と同様に機能させることもできる。
【0035】
次に、図8を参照して本発明の第5の実施の形態を説明する。スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせた形態の場合、図8に示すように、スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせた外周に、各種繊維材料や金属細線等からなる横巻22を施しても良い。これにより、スペーサ3が被覆された第一の電極1と第二の電極2の周囲に空間を持たせることができるため、溶融したスペーサ3が基材4へと移動し易くなる。又、横巻22を金属細線等の導電性材料とすれば、この横巻22を第二の電極2と同様に機能させることもできる。
【0036】
次に、図9を参照して本発明の第6の実施の形態を説明する。この第6の実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態の構成において、スペーサ3を被覆した第一の電極1と第二の電極2とを撚り合わせ、基材4とフィルム5をなくすともに、全体を別のスペーサ3´によって被覆したものである。尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。この場合にも前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるとともに、基材4とフィルム5をなくすことにより構成の簡略化を図ることができる。尚、この実施の形態の場合には、温度検知時には、スペーサ3、スペーサ3´の両方が溶融し、それによって、第一の電極1と第二の電極2が接触することになる。
【0037】
尚、本発明は前記第1〜第6の実施の形態に限定されるものではない。例えば、第一の電極1又は第二の電極2は、ヒータ機能を有するものであっても良い。これにより、加熱機能と温度検知機能を兼ね備えるものとすることができる。具体的な態様としては、例えば、第一の電極1又は第二の電極2の何れかをヒータ線とすることが考えられる。この際、もう一方の電極を上記したセンサ線とすれば、通常時はセンサ線で温度管理をしながらヒータ線で加熱を行うことができ、異常時にはヒータ線とセンサ線とが接触して導通するため、大きく変化する電位差を検知して通電を遮断することができる。ヒータ線としては、ニクロム線、カンタル線等の抵抗線や、これらをケブラー芯等の抗張力体の外周に巻回したもの等が挙げられる。センサ線としては、例えば、ケブラー芯等抗張力体の外周に、Ni線等の温度検知線を巻回したもの等が考えられる。第一の電極をヒータ線やセンサ線をする場合は、抗張力体としてバネ性を有する材料を使用すれば良い。但し、抗張力体に導電性の材料を使用する場合は、その外周に絶縁被覆を施す必要がある。又、別の態様としては、上記したセンサ線とヒータ線を複合したものも考えられ、例えば、センサ線の外周に絶縁体を被覆し、その外周に抵抗線を巻回したもの、ヒータ線の外周に絶縁体を被覆し、その外周に温度検知線を巻回したもの、抗張力体の外周に抵抗線と温度検知線とを互いに接触しないように巻回したもの、等が挙げられる。
【0038】
又、第一の電極1や第二の電極2とは別に、ヒータ線を備えていても良い。例えば、第一の電極1及び第二の電極2と目的とする温度以下の温度で絶縁されている状態であれば、第一の電極1と第二の電極2との間にヒータ線を配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上詳述したように、本発明は、異常な高温等の目的とする温度に一部分でも晒されることにより導通し、温度検知をすることができる温度検知体に係り、薄型で可撓性に優れることから様々な形状の検知対象にも装着することができ、更に、優れた動作信頼性を有している温度検知体を得ることができるものである。又、その用途としては、例えば、二次電池,給湯器,冷蔵庫、エアコン室内外機,衣服乾燥機、ジャー炊飯器、ホットプレート、コーヒーメーカ、温水器、セラミックヒータ、石油ヒータ、自動販売機、温熱布団、床暖房パネルヒータ、複写機、ファクシミリ、食器乾燥機、フライヤ等への使用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、温度検知体の一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、温度検知体の回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、温度検知体を熱機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、温度検知体の要部を拡大した一部切欠斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、温度検知体の要部を拡大した一部切欠斜視図である。
【図6】本発明の第3の形態を示す図で、温度検知体の一部切欠斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す図で、温度検知体の要部を拡大した一部切欠斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態を示す図で、温度検知体の要部を拡大した一部切欠斜視図である。
【図9】本発明の第6の形態を示す図で、温度検知体の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 第一の電極
2 第二の電極
3 スペーサ
4 基材
5 フィルム
10 温度検知体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ性を有し長尺な第一の電極と、上記第一の電極に対して隣接・配置されたバネ性を有し長尺な第二の電極と、絶縁材料からなり一方向に付勢された上記第一の電極と第二の電極とを絶縁するように配置されるスペーサと、を具備し、上記第一の電極及び上記第二の電極はともに撚り線構造をなしていており、
所定の温度に晒されることにより上記スペーサによる上記第一の電極と第二電極の絶縁が解除され、それによって、上記第一の電極と上記第二の電極とが接触・導通することにより所定の温度を検知するようにしたことを特徴とする温度検知体。
【請求項2】
請求項1記載の温度検知体において、
上記第一の電極及び上記第二の電極について、その撚り方向が逆向きになっていることを特徴とする温度検知体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の温度検知体において、
上記第一の電極及び上記第二の電極の内の少なくとも一方は上記スペーサによって被覆されていることを特徴とする温度検知体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3記載の温度検知体において、
上記第一の電極及び上記第二の電極は互いに絡み合った状態で設置されていることを特徴とする温度検知体。
【請求項5】
請求項3記載の温度検知体において、
上記第一の電極、第二の電極、スペーサの外周には空間保持部材が設けられていることを特徴とする温度検知体。
【請求項6】
請求項5記載の温度検知体において、
上記空間保持部材は導電性材料から構成されていることを特徴とする温度検知体。
【請求項7】
請求項4記載の温度検知体において、
上記第一の電極、第二の電極、スペーサの外周にはさらに別のスペーサが被覆されていることを特徴とする温度検知体。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の温度検知体において、
上記スペーサが所定の温度で溶融するものであることを特徴とする温度検知体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−231010(P2009−231010A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74161(P2008−74161)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】