説明

温度補償された合焦時間を有する液体レンズ

液体レンズが印加された制御電圧に応答するための、又は事前に計算されてテーブルに保存される待ち時間で温度補償された液体レンズを開示する。温度センサが液体レンズと共に用いられ、温度データを制御回路に与える。液体レンズが応答するための待ち時間は、液体レンズが制御電圧に応答して所定レベルの品質に結像するために十分な要求される最短時間より長くならないように最小化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オートフォーカス撮像装置に関し、特に、近い被写界から遠い被写界まで広い距離範囲に亘って効率的に読み取ることができる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、復号化されるシンボルの画像を取り込むために使用しても、あるいはどのようなタイプの画像でも取り込む一般的な撮像装置として使用してもよい。データシンボル(情報符号)を読み取って復号化するために使用される場合、より一般的なレーザスキャナのような「スキャナ」ではないとしても、これらの装置はコードスキャナと呼ぶことができる。
【0003】
液体レンズを使用した撮像装置は近年導入された。そのような液体レンズ装置は、液体に印加される電圧を使用し、その電圧は液体の表面の形状を変えて、特性が変化するレンズを作り出す。その印加電圧を正確に変えることにより、レンズの光学特性をどのような特殊な用途にも要求されるように設定できる。
【発明の開示】
【0004】
この発明の一態様によると、コードスキャナは、走査されるコードを遠くから照射し、そのコードの反射像をイメージセンサ上に結像させる液体レンズを有する。そのスキャナは走査コードまでの距離を測定する、好ましくはレーザによる距離検知器(range detector)を備え、液体レンズは検出された距離に合焦するように制御される。距離検知器の存在はそれ自体任意であり、この発明に重要ではない。
【0005】
進んだ実施例によると、その装置は液体レンズの直近に設けられた温度センサを有する。その温度センサは、そのレンズが印加電圧に正確に応答する時間の長さ、すなわち応答特性を変えること、を示す予め得られたデータを有する記憶装置と共に動作可能である。これらの特性は温度によって変わるので、その装置に対して予め得られたデータを使用して、液体レンズに適切な電圧を印加した後、所望の画像を取り込むまでの待ち時間を最小限にすることができる。
【0006】
上述の簡単な説明、及びこの発明の他の目的、特徴並びに利点は、以下に詳述するこの発明の好ましい実施形態の記載を添付図面と共に参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明を実施するコードスキャナを示す概要図である。
【図2】液体レンズの直近に設けた温度センサを有する撮像装置の斜視図である。
【図3】異なる温度における印加電圧に対する液体レンズの反応時間を比較して示すグラフである。
【図4】液体レンズの応答時間が温度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面の詳細を参照すると、図1はこの発明を実施するコードスキャナ10を示す概略図である。スキャナ10は、バーコードのような光学コード14を距離を置いて照射する光源12を有する。バーコード14から反射された光Lは、イメージセンサ16上に画像を形成し、それはバーコード14を復号するために処理される。
【0009】
液体レンズ18は、バーコード14とイメージセンサ16との間の光路L中に挿入配置される。その液体レンズ18は、2つの透明層の間の光学的界面を有する電子光学タイプの装置であることは、当業者には分かるであろう。印加電圧の調整によって、その界面の形状が変化し、レンズの焦点距離が変わる。
【0010】
レンズ18とイメージセンサ16との間の距離は固定されたままであるが、レンズの焦点が合うまでレンズ18の左側の距離は、印加電圧によって変化する。従って、コントローラ20がレンズ18に印加する電圧を変えるだけで、イメージセンサ16の距離範囲にバーコード14を合焦させることができる。レンズの機械的動作は不要である。しかしながら、レンズ18に印加される制御電圧は、レンズ18及びイメージセンサ16から、バーコード14までの実際の距離に関連していなければならないことが分かるであろう。
【0011】
レンズ18の適切な制御を確実にするために、好ましくはレーザ装置とレーザ検出器24からなる測距装置(ranging apparatus)を設ける。二種類のレーザ測距技術が従来からよく知られている。パルス技術は、レーザパルスの開始とその反射による戻りの間の遅延時間を測定する。視差技術は、対象物上にスポットを形成する光線を投射し、その後、その対象物上で検出されたスポットの位置を測定する。対象物の距離は、検出されたスポットの位置から決定できる。
【0012】
レーザ装置22と検出器24は、視差測距サブシステムを構成するのが好ましい。レーザ22は、光線をバーコード14に投射し、検出器24はその結果として生じた点の位置を検知して、バーコード14の距離を決定する。その後その距離を表わす信号を生成し、それがコントローラ20に印加される。それに応じて、コントローラ20はその後、それに適切に焦点を合わせるためにレンズ18に電圧を印加することができる。
【0013】
検出器24の出力信号は光源12にも印加され、それによってその光強度が制御される。最も簡単なものは光源12が発光ダイオードのアレイであって、その光強度をアレイ上の点灯するダイオードの数によって(より単純には光学出力を変えることによって)制御し得る。
【0014】
光源12の光強度はまた、光源投射角度を変えることによっても制御され得る。当業者であれば、それを透過率制御装置又は同様なものの角度を制御することによって機械的に実現することができ、あるいはコンデンサレンズで光学的にも実現し得ることが、分かるであろう。複数のコンデンサレンズを設けてそれらを選択するか、あるいはズームレンズ、場合によっては液体レンズさえ設けることが可能である。
【0015】
いずれにしても、コントローラを介して焦点距離と光源の照度がバーコードの距離に関連して、理想に近づく被写界深度効率を実現することが可能である。
【0016】
液体レンズ18は、バリオプティック(Varioptic)社製のARCTIC−414又はARCTIC−416が好ましい。しかしながら、他の液体レンズも同様に使用し得る。
【0017】
好ましい配置において、レーザは、カメラモジュールの側部や底部ではなく頂部に搭載される。さらに、レーザは光軸から6〜15mm程度ずらす必要がある。また、LEDを照明に使用する場合、反射の影響を最小限にするために、それはモジュールのレーザとは反対側に搭載する必要がある。
【0018】
前述したように、この発明は、より早くコード画像の焦点を合わせることができ、可動部品の使用を避けて、関連する信頼性の問題を排除し、実質的により大きな焦点範囲があり、且つ既存の走査装置をに容易に改造できるという点において、従来技術より利点がある。
【0019】
図2は、液体レンズ201とその液体レンズに近接して設置された温度センサ204とを備えた二次元撮像装置の実施例を示す。レーザ測距装置207は、図示のように液体レンズの真上に取り付けられている。温度センサ204は、液体レンズに適切な電圧を印加した後、装置が画像を取り込む前にどのくらい待つ必要があるか決定する際に温度を考慮する制御回路(図示せず)に接続される。
【0020】
図3は、3つの異なる温度での典型的な液体レンズの応答時間を示す一組のグラフ301〜303である。特に、液体レンズが規定の画像の鮮明度のレベルに合焦するための、例えば60℃での待ち時間は、25℃での待ち時間よりかなり少ないことが示される。所定の液体レンズ又は液体レンズのタイプに対して、種々の液体レンズが異なる反応をするかもしれないが、経験的データが待ち時間の適切な値を引き出すために使用できる。レンズの応答時間は、単に適切な待ち時間のテーブルを作るためにテストされる。
【0021】
図4は、温度センサ204によって測定される温度の関数として適切な待ち時間の単一のグラフを示す。最小限の待ち時間後に画像が取り込まれるように画像取込装置の制御回路をプログラムすることにより、その装置は、正確に復号するために少なくとも規定された閾値と同等な鮮明な画像を提供するのに十分な時間だけ待つが、低速及び小容量という結果になるほど長く待つことはない。
【0022】
温度が異なると待ち時間が異なるので、温度の値は装置が作動する時に更新されるとよい。好ましい実施例では、コントローラは、定期的に温度の更新を要求するようにプログラムされる。あるいは、その更新は、温度センサが所定量以上の温度の変化を検出したときはいつでも行うようにしてもよい。
【0023】
この発明の好ましい実施形態を上述したが、種々の他の変更及び追加が当業者にとって明らかであろう。そのような変更又は追加は、添付の特許請求の範囲に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと制御装置とからなり、該制御装置が焦点合わせ信号を与えるとともに、測定される温度に依存する規定された応答時間後に画像を取り込ませる撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像装置において、さらにレーザ測距装置と前記液体レンズに近接して配設された温度センサとを有し、該温度センサのデータが前記制御装置によって定期的に読み込まれ、前記制御システムが前記温度センサのデータに基づいて待ち時間を更新する撮像装置。
【請求項3】
液体レンズに電圧を印加し、該液体レンズが前記電圧に応答するための所定時間だけ待って画像を取り込む画像取込方法であって、
前記所定時間が、前記画像を取り込む画像取込装置に搭載された温度センサからの情報に少なくとも一部は基づいて予め決定される画像取込方法。
【請求項4】
前記所定時間が、温度の関数として略直線的に変化する請求項3に記載の画像取込方法。
【請求項5】
前記所定時間が、高い方の所定温度の全ての温度のための第1の傾きと前記所定温度より低い全ての温度のための第2の傾きとを有する直線的な温度の関数として変化する請求項4に記載の画像取込方法。
【請求項6】
レンズと温度センサと記憶装置とを有する撮像装置であって、
前記記憶装置は、前記レンズに焦点を合わせるための制御信号を印加してから画像を取り込むまでに与えるべき時間の量を示す値を設定し、前記時間の量は少なくとも一部は測定される温度に依存する撮像装置。
【請求項7】
温度センサの情報が定期的にコントローラに送られることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
液体レンズに電圧を印加し、前記レンズがその光学的性質を変えることにより前記電圧に応答するための所定時間だけ待ち、環境の変化を感知するセンサに応答して自動的に前記待ち時間を変えることからなる方法。
【請求項9】
前記センサが温度センサである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記センサが、温度情報を更新するために定期的にモニタされる請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530722(P2011−530722A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522949(P2011−522949)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/072876
【国際公開番号】WO2010/019136
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【出願人】(592252968)オプチコン インコーポレイテッド (31)
【住所又は居所原語表記】2220 Lind Avenue SW, Suite 100, Renton, Washington 98057 USA
【Fターム(参考)】