説明

温度調整部材

【課題】蓄熱材内部の熱分布不均一性による熱放出効率の低下と緩衝能低下を回避する。
【解決手段】蓄熱材82内部に、蓄熱材82と実質的に反応しない攪拌具83を1個又は複数個、あらかじめ蓄熱材82の内部に沈設し、輸送中、蓄熱材82内部で攪拌具83が相対的位置を変化させることで生じる攪拌流を用いることにより、蓄熱材82内部の熱不均一性を解消する。なお、蓄熱材82として、液体から固体へ一定温度で相転移を生じるパラフィンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞などを所定温度に実質的に維持する蓄熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞などの生体試料であるサンプルは、温度条件により細胞への負荷に変化が生じる。そのため、細胞などのサンプルの輸送では温度の制御が必要となる場合が多い。例えば、屋外の通常の外気より温度の高く、体温に近い約36℃程度で細胞を輸送する需要がある。一方、細胞の入っている培養容器には複数の種類があり、培養容器の形状に応じた輸送方法が必要である。一般に、付着細胞は培養容器底面に細胞が接着しており、培養容器の形状はディッシュ状やプレート状である。浮遊細胞の場合、細胞は培養液の中に懸濁状態で浮遊しており、輸送時にはチューブ状の培養容器が用いられる。これは鉛直方向に長い構造を有する。輸送時に横向きの状態であった場合、培養容器の蓋へ培地が付着し生物学的汚染の発生する一因となりうる。輸送時は形状に応じて培養容器の位置が適切に保たれることが必要であり、チューブ状の培養容器の場合は立てられた状態を維持することが必要である。
【0003】
約36℃で液体から固体へと相転移を起こす炭化水素(パラフィンなど)が内部に封入された蓄熱材の報告がある(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、液相物質の温度を管理する従来法として、液体が収められた容器に磁気により回転させられる攪拌具を配置する方法がある(例えば特許文献2)。これは液相物質の入れられた容器の中に攪拌具を沈設し、磁気により攪拌具を回転させて攪拌流を生じさせ、均質な培地を供給する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−232331
【特許文献2】特開平11−113560
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の蓄熱材を用いて細胞などの入った培養容器を覆って輸送する場合、蓄熱材は熱源であると同時に、液状であることによる緩衝能を有する。この蓄熱材を断熱材で囲み、これらを外部容器に納めると(以下、この構成を輸送容器と呼ぶ)、長時間にわたりサンプルの環境温度を約36℃一定に維持することができる。
【0007】
約36℃で液体から固体へと相転移を起こす炭化水素(パラフィンなど)が内部に封入された蓄熱材で細胞などの入った培養容器を覆って輸送する場合、蓄熱材は、内部よりも温度の低い外気に接する外周部から熱が放出される。このため、蓄熱材は外周部より液体から次第に固化する。このとき、蓄熱材は熱の放出と共に外周部から固化する。熱の放出効率は外気と蓄熱材の外周部の温度差に比例するため、蓄熱材の外周部が冷却されて外気との温度差が小さくなるにつれ、熱放出効率は低下し、蓄熱材内部に熱が取り残される。結果として輸送容器内の内部温度を維持する時間は減少する。また、蓄熱材の外周部が早くに固化するため、緩衝能も失われる。
【0008】
さらに、浮遊細胞が入れられることの多いチューブ状の培養容器を輸送する場合、生物学的汚染を回避するため、輸送中、チューブ状の培養容器は立てられた状態を維持する必要がある。ここで、チューブ状の培養容器は鉛直方向に長いため、培養容器の外周部を覆うのに要する蓄熱材も、培養容器同様に、鉛直方向に長い構造を有することが必要となる。
【0009】
蓄熱材の内部で攪拌流を起こす場合、外周部で熱を失った蓄熱材はすぐさま蓄熱材の内部に取り込まれる。結果として、蓄熱材の内部の熱分布は一様となり、外周部に位置していた分子だけが固化することはない。よって、攪拌流が生じている限り、外周部のみが冷却されて固化することを回避できる。また、緩衝能も維持することができる。
【0010】
特許文献2に例示される方法を用いる場合、あらかじめ沈設した攪拌具が磁気により回転し、蓄熱材内部で攪拌流を起こすことが可能である。しかしチューブ状の培養容器を輸送する場合、培養容器を覆う蓄熱材は鉛直方向に長い構造を有する。この場合、攪拌具は蓄熱材の底面上に存在しているので、攪拌流は底面から発生し、蓄熱材の上方では十分な攪拌流が発生しない。つまり上方にある蓄熱材は攪拌されないため、外気に冷やされて固化していく。また、一方で下方は十分な攪拌は維持される。結果として、蓄熱材の上部と下部とで温度差が広がり、チューブ状の培養容器の内部の温度分布にも偏りが生じる。
【0011】
そもそも攪拌具を回転させるためには駆動力として回転磁場を発生させる磁気攪拌器、その駆動装置が必要である。仮に細胞の輸送に用いる輸送容器の内部にこの駆動装置を備えようとしても、設置体積の確保のために輸送容器は大きくなり、温度調整は困難となる。また、電気的な駆動装置は、蓄電池が切れた場合や電気回路が故障した場合は作動しなくなるため、長時間輸送の場合、輸送中に確実な作動を保証することは難しい。以上より、鉛直方向に長いチューブ状の培養容器においても、輸送中の温度が維持され、小型、軽量、安価な手段による蓄熱材の熱放出効率と緩衝能の維持を向上させること必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、以下の手段を提案する。
【0013】
蓄熱材の内部に、蓄熱材と実質的に反応しない攪拌具を設置する。具体的には、ある程度の大きさと質量を持つ攪拌具を1つ又は複数個、あらかじめ蓄熱材の内部に沈設しする。この攪拌具は輸送中に蓄熱材内部での相対的な位置を容易に変えることのできる形状(であってもよい。攪拌具の素材は、蓄熱材内部に封入されている炭化水素と実質的に反応せず、相互反応なしに円滑に動くものであってもよい。この攪拌具は、輸送容器が輸送される間、輸送容器へ必然的に与えられる傾き、振動、揺れ等により、蓄熱材内部における相対的な位置を容易に変えることができてもよい。攪拌具が位置を変えることによって封入されている液体状の炭化水素に攪拌流が生じ、熱の一様分布を実現する。なお、蓄熱材としては、例えばCnH2n+2の一般式をもつ飽和鎖式炭化水素であるパラフィンを用いる。特には、例えば、C20H42の化学式で表され、融点が36.4℃であるn-Eicosaneを使用する。
【発明の効果】
【0014】
蓄熱材内部の上方部分にも、下方と同様に攪拌流が発生するため、鉛直方向のどの位置でも一様な熱分布が実現される。蓄熱材の内部温度が一様になることで、上方から早期に冷却され固化することを回避できる。また、外周部が液体である状態を長く保つので緩衝能は長時間保たれる。さらに、鉛直方向に長いチューブ状の培養容器を輸送する場合にも、輸送中に蓄熱材内部に攪拌流を効率的に生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。 図1において蓄熱材及び攪拌具の構成について説明する。図1は蓄熱材と、その内部に配置された攪拌具と、それらを収める容器とからなる温度調整部材の全体図である。熱源として固形の炭化水素(n-Eicosane)10を封入するための容器11と、その内部に球状の攪拌具12が沈設されている。容器の形状は、例として、直方体の形状を図示している。攪拌具は炭化水素と接するように配置されている。攪拌具は、蓄熱材と化学的反応性がない性質の表面を有するものとする。素材としては、ガラス、鉄などとすることができる。
【0016】
図2は、蓄熱材と、その内部に配置された複数の攪拌具(本実施例では3個)と、それらを収める容器とからなる温度調整部材の全体図である。図1における蓄熱材の構成において、攪拌具22・23・24と3個沈設したものである。攪拌具の個数は複数個とするが、その一例として3個の場合を図示した。
【0017】
図3は、蓄熱材の入った容器のうち、細胞を収める培養容器と接する部分を熱伝導性の高い素材からなる熱伝導部材30とし、残りの部分を断熱材31とし、熱放出効率を向上させたものである。図1における蓄熱材の構成において、容器11を熱伝導性の高い素材である高熱伝導性膜30と断熱性の高い素材31を組み合わせた容器に換えたものである。容器の構成は熱伝導性の高い素材である高熱伝導性膜30と、断熱壁31とより成る。高熱伝導性膜30は、輸送時、上部に細胞を収める培養容器が接触した状態となり、高熱伝導性膜30を通じて熱が伝導し、培養容器の温度は約36℃に維持される。それ以外の場所からは、断熱壁31の断熱作用により熱の放出を抑制する。よって熱放出の無駄を省くことができる。容器内部には攪拌具32が沈設されている。本図では攪拌具は1個としているが、図2で示した場合と同様、攪拌具の個数を複数(例えば3個)入れてもよい。
【0018】
図4に、攪拌具と蓄熱材の高さの比を振ったときについて、時間の経過と共に蓄熱材の持つ熱が発散され温度が低下していく変化の例を示す。本例では、攪拌具を直径約1.6cmの球体として1個沈設した。攪拌具の素材はガラスとした。蓄熱材として容器に封入された炭化水素にはC20H42の化学式で表され、融点が36.4℃であるn-Eicosaneを用いた。攪拌具と蓄熱材は相互反応を生じず、攪拌具は円滑に動くことが可能である。蓄熱材を入れる容器は底面が直径約4.5cmの円形であるものを用い、容器に入れる蓄熱材の高さを1、2、3、4、5、6、7cmと振った。蓄熱材の高さを7cmとし攪拌具を入れないものもコントロールとして併せて用意した。この構成のもと、あらかじめ45℃の恒温機において蓄熱材を熱し炭化水素を融解させて液体状にし、その後、32℃の外気温下で緩やかな傾斜と回転運動を与えた状態に置いた。緩やかな傾斜と回転運動とは、輸送時の動きをモデル的に実現したものである。その間、蓄熱材の上部の温度変化を温度センサーにより計測し、蓄熱材が固化する様子と上部の温度の経時的変化について評価を行った。
【0019】
全ての条件において、あらかじめ45℃の恒温機で加熱された蓄熱材は、32℃の外気温下にさらされると速やかに温度を下げ、封入されている炭化水素の融点である約36℃で一定の状態となる。攪拌具無しの場合、蓄熱材は外周部から次第に固化する。一方、攪拌具ありの場合は、攪拌具なしの場合よりも長時間にわたり攪拌具が内部で動き続けて、外周部のみが固化することはない。なお、蓄熱材が融点の温度近辺を持続する時間を評価するにあたり、蓄熱材の温度が36.4℃まで低下した時刻と、その後温度が約36℃で一定となる時間帯を経て35.5℃まで低下する時刻の、差を持続時間として定義した。その数値を用いて各条件について評価を行った。
【0020】
図5に、攪拌具と蓄熱材の高さの比に対する、蓄熱材が温度を融点近辺に維持する時間を示す。鉛直方向の攪拌具の最大径Aと容器の最大径Bとの比A/B(鉛直方向の攪拌具最大径/蓄熱材最大径)について評価する。攪拌具が入れられていない場合の持続時間の値を1とし、それぞれの条件に対する比(持続時間比)を算出する。鉛直方向の攪拌具の最大径Aと容器の最大径Bとの比A/Bが大きくなると、容器の中に封入された蓄熱材の量は少なくなり持続時間は短くなる。鉛直方向の攪拌具の最大径Aと容器の最大径Bとの比A/Bが0.75以下であれば、攪拌具による持続時間が顕著に増加し、攪拌具がない場合より持続時間を維持することができる。また、攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dを用いて評価をすると、比C/Dが6.7×10−2以下であれば、攪拌具がない場合より持続時間を維持することができる。
【0021】
図6に、攪拌具と蓄熱材の高さの比に対する、単位量あたりの蓄熱材が温度を融点近辺に維持する持続時間を示す。鉛直方向の攪拌具の最大径Aと容器の最大径Bとの比A/B(鉛直方向の攪拌具最大径/蓄熱材最大径)について評価する。単位量あたりの蓄熱材の持続時間を求め、蓄熱材に攪拌具が入れられていない場合の持続時間の値を1としてそれぞれの条件に対する比(蓄熱材単位量あたり持続時間比)を算出する。鉛直方向の攪拌具の最大径Aと容器の最大径Bとの比A/Bが大きくなるにつれ、蓄熱材を攪拌する効率が上がり温度の一様性は改善される。結果として、単位量あたりの蓄熱材が温度を維持する時間が上昇できる。比A/Bが0.3以上であれば、持続時間は50%以上増加する。また、攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dを用いて評価をすると、比C/Dが3.4×10−2以上であれば、持続時間は50%以上増加する。
【0022】
図5・6の結果より、攪拌具と蓄熱材の高さの比を特に調整する場合には、蓄熱材が温度を融点近辺に維持する持続時間を確実に増加することが示される。鉛直方向の前記攪拌具の最大径Aと前記容器の最大径Bとの比A/Bが0.3以上0.75以下であれば、蓄熱材の持続時間は50%以上増加する。比A/B=0.53のときには、最大の170.6%増加となる。また、攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dが3.4×10−2以上6.7×10−2以下であれば、蓄熱材の持続時間は同じく50%以上増加する。比C/D=4.5×10−2のときには、最大の170.6%増加となる。
【0023】
図7に、攪拌具の個数を変えた場合の蓄熱材が温度を融点近辺に維持する持続時間の変化を示す。図4同様、攪拌具を直径約1.6cmの球体で素材はガラスとした。個数は0、1、2、3、4、5個とした。蓄熱材として容器に封入された炭化水素にはC20H42の化学式で表され、融点が36.4℃であるn-Eicosaneを用いた。蓄熱材を入れる容器は、底面が直径4.5cmの円形で、容器に入れる蓄熱材の高さを6cmとした。あらかじめ45℃の恒温機で蓄熱材を加熱して炭化水素を融解させて液体状にし、その後、32℃の外気温下で緩やかな傾斜と回転運動を与えた状態に置いた。その間、蓄熱材の上部の温度変化を温度センサーにより計測し、蓄熱材が固化する様子と上部の温度の経時的変化について評価を行った。図4同様に持続時間を定義し算出する。そして攪拌具が入れられていない場合の持続時間の値を1とし、それぞれの条件に対する比(持続時間比)を算出する。
【0024】
図に示される通り、攪拌具の数は多いほど容器内部に生じる攪拌流は大きくなる。これに伴い、攪拌具の個数の増加につれて持続時間が増加する。一方、攪拌具の数が多くなりすぎると、容器の底面積は有限であるため、攪拌具の移動できる自由度が低下する。本例の場合、個数が4個まで増えると攪拌具の動きはかなり小さくなり、持続時間は逆に減少する。攪拌具の個数が2個又は3個の時、1個時よりも持続時間比はそれぞれ3.8%、3.0%増加した。
【0025】
図8は、攪拌具の入った温度調整部材を鉛直方向に重ねた構成例を示す。一例として4個の温度調整部材を重ねている。また、攪拌具と容器に関して、鉛直方向の前記攪拌具の最大径Aと前記容器の最大径Bとの比A/Bが0.3以上0.75以下か、攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dが3.4×10−2以上6.7×10−2以下を満たせば、上記と同様の効果を得ることができる。
【0026】
それぞれの容器の構成は高熱伝導性膜80と、断熱壁81とより成る。中には蓄熱材82と、攪拌具83が沈設されている。高熱伝導性膜80は、輸送時、細胞を収める培養容器が接触した状態となり、高熱伝導性膜80を通じて熱が伝導し、培養容器の温度が約36℃に維持される。それ以外の場所からは、断熱壁81の断熱作用により熱の放出が抑制される。よって熱放出の無駄を省くことができる。容器内部には攪拌具83が沈設されている。本図では1個の容器あたりに攪拌具を1個としているが、図2で示した場合と同様、攪拌具の個数を複数入れてもよい。
【0027】
図9は攪拌具の形状を例示したものである。攪拌具は、蓄熱材内部における相対的な位置を用意に変えることのできる形状であり、球状攪拌具90、円柱状攪拌具91、円錐状攪拌具92、これらを組み合わせた立体形の例として、円錐と球を組み合わせた攪拌具93である。蓄熱材の内部において相対的な位置を最も容易に位置を変えうるものは、球状攪拌具90である。
【0028】
図10は、温度調整部材と断熱部からなる輸送容器(搬送容器)の中にチューブ状の培養容器が収められる構成例を表す。ここでは、蓄熱材と攪拌具から構成される温度調整部材(容器)を、鉛直方向に複数個重ねる。重ねられた複数の蓄熱材、すなわち複数の温度調整部材の合計の高さは、チューブ状の培養容器の高さ程度とする。それぞれの蓄熱材の中に、1つ又は複数個の攪拌具を配置する。重ねられた全ての温度調整部材(容器)の内部で、蓄熱材の中の攪拌具が移動することにより攪拌流が発生し、内部の熱的不均一性を解消するできる。結果として、重ねられた蓄熱材全体として、上方と下方とに関わらず、内部の熱的不均一性を解消することができる。
【0029】
輸送容器は外部容器100と蓋101とからなる。その内側には断熱部102が配置され、外部への熱の漏出を防ぐ役割を果たす。103は蓄熱材であり、外部は断熱壁104と伸縮性を有し熱伝導性の高い高熱伝導性膜105に囲まれている。106は攪拌具である。高熱伝導性膜105は蓄熱材と攪拌具を収納する容器の役割も有する。蓄熱材と攪拌具の入った容器は4段に重ねられた状態で収納されており、鉛直方向の前記攪拌具の最大径Aと前記容器の最大径Bとの比A/Bが0.3以上0.75以下か、攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dが3.4×10−2以上6.7×10−2以下を満たせば、上記と同様の効果を得ることができる。蓄熱材の入った容器に、細胞等が内部に入れられているチューブ状の培養容器107が収納されている。培養容器は高熱伝導性膜105を介して接しているため、蓄熱材により温度が維持されると共に、液体状である蓄熱材は緩衝材としての役割も持つ。培養容器は、長軸方向の側面、望ましくは当該側面の実質的な全面で容器の高熱伝導性膜105を介して蓄熱材に接すると、温度維持及び緩衝材としての効果をより高めることができる。
【0030】
ここで、蓄熱材を封入する温度調整部材(容器)については、チューブ状培養容器に接する部分は収縮性を有し、培養容器の位置を固定できる膜状であってもよい。さらに培養容器に接する部分と蓄熱材同士が接する部分は熱伝導性の高い素材とし、それ以外の部分については断熱材を使用してもよい。この場合、細胞への熱伝達効率を調整することができる。攪拌具の素材としては、ガラス、鉄等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1個の攪拌具と蓄熱材の全体構成図。
【図2】3個の攪拌具と蓄熱材の全体構成図。
【図3】攪拌具と熱伝導性を向上させた蓄熱材の全体構成図。
【図4】攪拌具と蓄熱材の高さの比を振った場合の経時的温度変化を評価した図。
【図5】攪拌具と蓄熱材の高さの比に対する、蓄熱材が温度を融点近辺に維持する持続時間の例図。
【図6】単位量あたりの蓄熱材が攪拌具と蓄熱材の高さの比に対する、蓄熱材が温度を融点近辺に維持する持続時間の例図。
【図7】攪拌具の個数を振った場合の持続時間の変化について評価した図。
【図8】攪拌具の入った温度調整部材を鉛直方向に重ねた全体構成図。
【図9】攪拌具の形状を例示した図。
【図10】輸送容器の構成を例示した図。
【符号の説明】
【0032】
10・・・炭化水素、11・・・容器、12・・・攪拌具、20・・・炭化水素、21
・・容器、22・・・攪拌具、23・・・攪拌具、24・・・攪拌具、30・・・断熱壁、31・・・高熱伝導性膜、32・・・攪拌具、80・・・高熱伝導性膜、81・・・断熱壁、82・・・蓄熱材、83・・・攪拌具、90・・・球状攪拌具、91・・・円柱状攪拌具、92・・・円錐状攪拌具、93・・・球と円錐を組み合わせた立体形の攪拌具、100・・・外部容器、101・・・蓋、102・・・断熱部、103・・・蓄熱材、104・・・断熱壁、105・・・高熱伝導性膜、106・・・攪拌具、107・・・培養容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体から固体へ一定温度で相転移を生じるパラフィンと、
前記パラフィンに接して配置され、前記パラフィンを攪拌する攪拌具と、
前記パラフィンと前記攪拌具とを収める容器とを有し、
鉛直方向の前記攪拌具の最大径Aと前記容器の最大径Bとの比A/Bが
0.3以上0.75以下であることを特徴とする温度調整部材。
【請求項2】
液体から固体へ一定温度で相転移を生じるパラフィンと、
前記パラフィンに接して配置され、前記パラフィンを攪拌する攪拌具と、
前記パラフィンと前記攪拌具とを収める容器とを有し、
前記攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dが
3.4×10−2以上6.7×10−2以下であることを特徴とする温度調整部材。
【請求項3】
前記パラフィンは蓄熱材であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項4】
前記パラフィンはn-Eicosaneであることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項5】
前記攪拌具はガラス、鉄のいずれかからなることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項6】
前記攪拌具はパラフィンと実質的に化学的反応性がない性質の表面を有することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項7】
前記攪拌具として複数の攪拌具を具備することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項8】
前記容器は、断熱材部分と熱伝導部材部分とからなることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項9】
前記容器を複数有することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温度調整部材。
【請求項10】
前記容器を囲うように配置される断熱部と、前記容器と前記断熱部とを収める外部容器とをさらに有することを特徴とする請求項9に記載の温度調整部材。
【請求項11】
前記容器は、鉛直方向に複数個重ねられていることを特徴とする請求項9に記載の温度調整部材。
【請求項12】
液体から固体へ一定温度で相転移を生じる蓄熱材と、
前記パラフィンに接して配置され、前記パラフィンを攪拌する攪拌具と、
前記パラフィンと前記攪拌具とを収める、複数の容器と、
前記容器を囲うように配置される断熱部と、
前記容器と前記断熱部とを収める外部容器と、
細胞培養容器とを有し、
前記攪拌具の体積Cと前記容器の内容積Dとの比C/Dが3.4×10−2以上6.7×10−2以下であることを特徴とする搬送容器。
【請求項13】
前記細胞培養容器は、長軸方向の側面で、前記容器を介して前記蓄熱材に接することを特徴とする請求項12に記載の搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−73513(P2009−73513A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243219(P2007−243219)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】