説明

温水暖房システム及びその運転方法

【課題】本発明は、温水暖房システムにおいて、熱交換器の耐久性を損なうことなく、従来と比較してより低温度の循環温水を供給することが可能な技術を提供する。
【解決手段】低温端末3から40℃温水供給の要求(TL0=40℃)があると(ステップS101)、安全性確保のため流量制御弁V1が全開となる(ステップS102)。次に、低温回路側目標温度(TLe)が40℃に設定される(ステップS103)。これに伴い、流量制御弁V1、V2の開度及び循環ポンプ5の吐出圧調整の組み合わせによる流量比調整により、低温サーミスタ12の検知温度ThLを40℃とするような制御がが行われる(ステップS104)。図3の太線部は、この状態における温水の循環経路である。この状態で低温サーミスタ12の検出温度(ThL)が40℃、かつ、高温サーミスタ11の検出温度(ThH)が55℃が維持されているかが判定される(ステップS105、S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水配管を介して端末器に暖房温水を供給する温水暖房システムに係り、特に、低温端末単独運転時の低負荷運転に好適な温水暖房システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二温度式温水暖房システムにおいて、低温端末の暖房能力向上のため、熱交換器出口側と低温回路往き側を結ぶバイパス管及びその経路中に開閉弁を設けたシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図6は、このような温水暖房システム100の例を示したものである。ここに、配管L2及び弁V2がバイパス管及び開閉弁である。このようなシステムにおいて、低温端末単独運転時(高温端末の開閉弁V4閉)には、開閉弁V1を閉、開閉弁V2を開として温水を循環供給する。
【特許文献1】特開2002−22193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温端末単独運転時は、低温端末3への温水供給温度が熱交換器8出口温度と常に等しくなるため、低負荷時において要求温度が低い場合には、熱交換器出口付近温度が露点以下になり得る。この場合、熱交換器のフィン、水管の周りに結露が発生するおそれがあり、熱交換器の耐久性の観点から問題となる。このため、低負荷運転時に最適な温水温度(40℃〜50℃)を供給することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、熱交換器の耐久性を損なうことなく、従来と比較して、より低温度の循環温水を供給することを可能とする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、
(1)温水を加熱する熱交換器と、熱交換器出側と高温端末入側とを結ぶ高温往き配管と、高温端末出側と熱交換器入側とを結ぶ高温戻り配管と、高温戻り配管の途中に配設される循環ポンプと、高温往き配管と高温戻り配管とを直接結ぶ第一バイパス配管と、を備えた高温側回路と、高温戻り配管の循環ポンプ出側から分岐して低温端末入側に接続する低温往き配管と、低温端末出側から出て高温戻り配管に合流する低温戻り配管と、高温往き配管のバイパス配管上流から分岐して低温往き配管に合流する第二バイパス配管と、低温往き配管の第二バイパス配管上流側に第一流量調整弁と、第二バイパス配管経路中に第二流量調整弁と、を備えた低温側回路と、を備えた温水暖房システムにおいて、低温端末単独運転時に、低温端末要求温度もしくは熱交換器出口温度のいずれか一方、又は両方の温度に基づいて、第一流量調整弁もしくは第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することによる熱交換器の結露回避手段を備えて成ることを特徴とする。
【0007】
(2)また、本発明は、循環ポンプの吐出圧を変化させて、第一流量調整弁及び第二流量調整弁を通過する温水流量を調整する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明は、(1)又は(2)に記載の温水暖房システムにおいて、高温戻り配管経路中に、さらに、排気潜熱回収のための二次熱交換器を備えて成ることを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明は、(1)1乃至(3)に記載の温水暖房システムにおいて、低温端末単独運転時に、第一流量調整弁もしくは第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することにより、熱交換器出口温度(ThH)を結露回避可能な第一の設定温度(TH1)以上に維持することを特徴とする。
【0010】
(5)また、本発明は、(4)に記載の温水暖房システムにおいて、低温端末要求温度(TL0)が第一の設定温度(TH1)を超えるときは、第一流量調整弁を閉弁のままとし、低温側回路温水供給温度(ThL)が第一の設定温度(TH1)以下のときは、低温側温水供給温度(TLe)が低温端末要求温度(TL0)となり、かつ、熱交換器出口温度(ThH)が第一の設定温度(TH1)以上である第二の設定温度(TH2)となるように、第一流量調整弁もしくは第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することを特徴とする。
【0011】
後述の図1において、配管L1(高温往き配管)の流量q1、温水温度THとし、配管L3(低温往き配管)の流量q2、温水温度TB及び配管L4の流量をq3=q1+q2、温水温度をTLとすると、配管L6による影響を無視した場合、
(q1+q2)・TL=q1・TH+q2・TB
ここで、流量比s=q2/q1とすると、
s=(TH−TL)/(TL−TB)・・・・・式(1)
となる。ここに、TBは低温端末の負荷による成り行きとなるため、第一流量調整弁及び/又は第二流量調整弁を、その時のTBに基づいて、配管L1、L3における流量比sを、
s=(TH2−TL0)/(TL0−TB)を確保するように開度調整することにより、本発明の目的が達成されることになる。
【0012】
(6)また、本発明は、さらに、循環ポンプの吐出圧を変化させることにより、前記第一流量調整弁と前記第二流量調整弁を通過する温水の流量比を調整することを特徴とする。
【0013】
上述のように、所定の流量比sを確保するため各流量調整弁の開度を設定するが、この場合、循環ポンプ吐出圧を変化させることにより調整可能な流量比率が拡がる。図4、5は、このことを示す図である。図4において、R1、R2は第一流量調整弁V1、第二流量調整弁V2のある開度におけるP-Q 線図であり、H1はポンプ吐出圧P1のときのポンプ揚程である。また、R1’は第一流量調整弁V1の開度を絞った(圧損を大きくした)ときのP-Q
線図である。同図から明らかなとおり、線図R1のときの各流量調整弁通過流量はQ1、Q2、流量比s=Q1/Q2である。これに対して線図R1’のときは流量比s’=Q1’/Q2である。このように、流量調整弁V1又はV2の開度を変化させることにより流量比を変化させることができる。
さらに、流量調整弁の開度調整に加え、循環ポンプ吐出圧(揚程)を変化させることにより流量比選択の自由度がさらに拡がる。図5において、H2はポンプ吐出圧P2(P1<P2)のときのポンプ揚程である。ポンプ揚程H1のときの流量比sは、上述のようにs=Q1/Q2であるのに対して、ポンプ揚程H2のときは、各流量調整弁通過流量はQ1”、Q2”、流量比s”=Q1”/Q2”となる。このように、各流量調整弁の開度調整に加えポンプ揚程を変化させることにより、流量比選択の自由度がさらに拡がり、また、流量調整弁の開度調整による圧力損失増加により生じる流量不足を相殺することも可能となる。
(7)また、本発明は、第一の設定温度が、40℃≦TH1<50℃であることを特徴とする。
【0014】
(8)また、本発明は、第二の設定温度が、40℃≦TH2<60℃であることを特徴とする。
(7)、(8)の温度条件により、低温端末(床暖房)の性能維持と効率を向上を両立させることができる。
(9)また、本発明は、第一の設定温度が、40℃≦TH1<50℃であり、かつ、第二の設定温度が、40℃≦TH2<60℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、低温端末側から要求される温水温度に合わせて最適な循環温水を供給することが可能となった。
また、定格運転時(低温回路温水温度60℃〜80℃程度を要求される運転モード)における低温暖房能力を維持するとともに、定常運転時(負荷安定時)には熱交換器出口近傍の結露発生を抑制しつつ最適な低温水温度(40℃〜50℃)を供給することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る温水暖房システムの実施形態について、図1乃至3を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る温水暖房システム1の全体構成を示すものである。同図において、温水暖房システム1は、温水式暖房機(熱源機)2、低温端末3、高温端末4を備えている。
【0018】
熱源機2は、本体内部に開放型シスターン6、暖房用バーナ7、熱交換器8、暖房回路用循環ポンプ5、及びこれらを接続する配管L1〜L8、流量制御弁V1〜V3により構成されている。さらに、図示はしないが、熱源機2内には温水暖房システム1の運転制御を司る制御部を備えている。
【0019】
温水暖房システム1の温水循環回路は、高温側回路と低温側回路の2つの暖房回路により構成されている。高温側回路は、熱交換器8を出て配管L1→L11を経由して高温端末4に至る高温往き回路11と、高温端末4を出て配管L9→L10→L5を経由して開放式シスターン6に至り、さらに配管L7、配管L8を経由して熱交換器8に戻る高温戻り回路13により構成されている。配管L1の熱交換器8出側近傍には、高温側回路の温度検知のための高温サーミスタ11が配設されている。高温端末4の入り側には開閉弁V4が付設されている。さらに、高温側回路には、機内循環量調整のための高温往き回路12と高温戻り回路13を直接結ぶ第一バイパス管L6が設けられている。
【0020】
一方、低温側回路は、循環ポンプ5下流側の分岐点P1から分岐して配管L3、L4を経由して低温端末3に至る低温往き回路14と、低温端末3から配管L12により高温戻り回路13の合流点P6に至る低温戻り側回路15により構成されている。低温往き回路14経路中かつ合流点P6より下流側には、低温側回路の温度検知のための低温サーミスタ12さらにその下流に低温端末3の運転制御を行う熱動弁V3が設けられている。さらに、低温側回路には、高温往き回路12と低温往き回路14を結ぶ第二バイパス管L2が設けられている。
【0021】
熱源機2の燃焼部は、ガス配管G1、ガス比例弁V5、燃焼室(図示せず)、熱交換器8、バーナ7等を主要構成とする。ガス配管G1を介して供給される都市ガスは、バーナ7で燃焼して燃焼ガスとなり、熱交換器8において循環温水に熱を与えて燃焼排ガスとなって外部に排出される。バーナ7の燃焼量はガス比例弁V5により制御される。
【0022】
温水暖房システム1は以上のように構成されており、次に図2を参照して、低温端末3単独運転時における温水暖房システム1の温水供給温度制御フローについて説明する。運転初期状態においては、流量制御弁V1→閉、V2→開、V3→開、V4→閉に設定されている。また。低温端末3から40℃温水供給の要求が発信された想定とする。なお、以下の制御は、熱源機2の制御部からの各部への指令に基づいて行われる。
【0023】
低温端末3から40℃温水供給の要求(TL0=40℃)があると(ステップS101)、安全性確保のため流量制御弁V1が全開となる(ステップS102)。次に、低温回路側目標温度(TLe)が40℃に設定される(ステップS103)。これに伴い、流量制御弁V1、V2の開度及び循環ポンプ5の吐出圧調整の組み合わせによる流量比調整により、低温サーミスタ12の検知温度ThLを40℃とするような制御が行われる(ステップS104)。このとき、流量調整弁の開度調整による圧力損失増加が招く流量不足をポンプの揚程を上げることで相殺する。図3の太線部は、この状態における温水の循環経路である。この状態で低温サーミスタ12の検出温度(ThL)が40℃、かつ、高温サーミスタ11の検出温度(ThH)が55℃以上に維持されているかが判定される(ステップS105、S106)。この温度条件は、実際には一定の幅を持って管理される。
【0024】
いずれか一方の条件が満たされていないときは(S105、S106のいずれか一方、又は両方がNO)、条件を満たすまで開度調整、吐出圧調整が繰り返し行われる。両方の条件が満たされているときは、(S105、S106のいずれもYES)、その開度条件で運転が継続される。
【0025】
なお、運転中に運転終了要求があったときは、随時、熱源機2の運転が停止される
また、本実施形態における温度条件は例示であって、一次熱交換器出口近傍の結露を回避することができる適当な温度を選択することができる。
【0026】
また、本実施形態では高温系統、低温系統とも端末器一台のみの例を示しているが、これに限らずそれぞれ複数台設置とすることもできる。なお、高温系統の設置がない場合であってもよい。
また、本実施形態では一次熱交換器のみを備えた熱源機の例を示したが、これに限らず配管L5のバイパス管L6より下流側に二次熱交換器を備えた熱源機を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、二温度式温水暖房システムに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る温水暖房システム1を示す図である。
【図2】温水暖房システム1の温水温度制御フローを示す図である。
【図3】流量比調整状態における温水の循環経路を示す図である。
【図4】流量調整弁開度の変化に伴い、2つの流量調整弁を通過する流量の比が変化することを示す図である。
【図5】循環ポンプ吐出圧を変化させることにより、流量比を可変とすることを示す図である。
【図6】従来の温水暖房システム100を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 温水暖房システム
2 熱源機
3 低温端末
4 高温端末
5 循環ポンプ
6 開放型シスターン
7 バーナ
8 熱交換器
11 高温サーミスタ
12 低温サーミスタ
L1〜L12 暖房用配管
V1〜V4 流量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を加熱する熱交換器と、熱交換器出側と高温端末入側とを結ぶ高温往き配管と、高温端末出側と熱交換器入側とを結ぶ高温戻り配管と、高温戻り配管の途中に配設される循環ポンプと、高温往き配管と高温戻り配管とを直接結ぶ第一バイパス配管と、を備えた高温側回路と、
高温戻り配管の循環ポンプ出側から分岐して低温端末入側に接続する低温往き配管と、低温端末出側から出て高温戻り配管に合流する低温戻り配管と、高温往き配管のバイパス配管上流から分岐して低温往き配管に合流する第二バイパス配管と、低温往き配管の第二バイパス配管上流側に第一流量調整弁と、第二バイパス配管経路中に第二流量調整弁と、を備えた低温側回路と、
を備えた温水暖房システムにおいて、
低温端末単独運転時に、低温端末要求温度もしくは熱交換器出口温度のいずれか一方、又は両方の温度に基づいて、第一流量調整弁もしくは第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することによる熱交換器の結露回避手段を備えて成ることを特徴とする温水暖房システム。
【請求項2】
前記循環ポンプの吐出圧を変化させて、前記第一流量調整弁及び前記第二流量調整弁を通過する温水流量を調整する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の温水暖房システム。
【請求項3】
前記高温戻り配管経路中に、さらに、排気潜熱回収のための二次熱交換器を備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の温水暖房システム。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の温水暖房システムにおいて、
低温端末単独運転時に、前記第一流量調整弁もしくは前記第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することにより、熱交換器出口温度(ThH)を結露回避可能な第一の設定温度(TH1)以上に維持することを特徴とする温水暖房システムの運転方法。
【請求項5】
低温端末要求温度(TL0)が前記第一の設定温度(TH1)を超えるときは、前記第一流量調整弁を閉弁のままとし、
低温側回路温水供給温度(ThL)が前記第一の設定温度(TH1)以下のときは、低温側温水供給温度(TLe)が低温端末要求温度(TL0)となり、かつ、熱交換器出口温度(ThH)が前記第一の設定温度(TH1)以上である第二の設定温度(TH2)となるように、前記第一流量調整弁もしくは前記第二流量調整弁のいずれか一方、又は両方の開度を調整することを特徴とする請求項4に記載の温水暖房システムの運転方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、さらに、前記循環ポンプの吐出圧を変化させることにより、前記第一流量調整弁と前記第二流量調整弁を通過する温水の流量比を調整することを特徴とする温水暖房システムの運転方法。
【請求項7】
前記第一の設定温度が、40℃≦TH1<50℃であることを特徴とする請求項4乃至6に記載の温水暖房システムの運転方法。
【請求項8】
前記第二の設定温度が、40℃≦TH2<60℃であることを特徴とする請求項4乃至6に記載の温水暖房システムの運転方法。
【請求項9】
前記第一の設定温度が、40℃≦TH1<50℃であり、かつ、前記第二の設定温度が、40℃≦TH2<60℃であることを特徴とする請求項4乃至6に記載の温水暖房システムの運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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