説明

温水暖房装置の制御装置

【課題】 放熱器に安定して湯温を供給できる温水暖房装器の制御装置に関する。
【解決手段】
缶体1側壁に備えた湯温センサ9の温度データに基づいてバーナ2の運転を制御して缶体1の温水を設定温度TSに維持する。缶体1に往き管7aと戻り管7bを介して放熱器6を接続し、循環ポンプ8によって缶体1と放熱器6との間で温水を循環させる。戻り管7bに備えた温度センサ11が放熱器6から缶体1に戻される温水の温度を検出し、温度センサ11の検出温度が所定温度T1以下のときにタイマ手段12が作動し、タイマ手段12が所定時間t1カウントすると循環ポンプ8が停止して燃焼停止温度TSbを変更する。温度センサ9が変更前の燃焼停止温度TSbを検出時に循環ポンプ8が運転再開し、変更後の燃焼停止温度TShを検出するまでバーナ2が燃焼を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は温水の循環回路を備えた給湯機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温水器の缶体内部には熱源となるバーナと、バーナで発生した燃焼ガスが送られる熱交換器を備えており、熱交換器はバーナが取り付けられる燃焼室の壁面と、燃焼室に接続した燃焼ガス流路を熱交換部としている。バーナが燃焼すると発生する燃焼炎と燃焼ガスが燃焼室に送られ、高温の燃焼ガスは燃焼ガス流路を経て排出され、このとき熱交換器に蓄えられた水が加熱される。
【0003】
缶体には往き管と戻り管を介して放熱器を連結し、往き管に循環ポンプを取り付けており、循環ポンプが運転すると缶体から吐出される温水が往き管から放熱器に送られ、放熱器で放熱して温度を低下した水が戻り管から缶体に戻り、再び缶体内で加熱されて温水となって放熱器に送られる循環回路を構成している。このとき湯温センサによって缶体内の湯温を監視しており、缶体内の湯温が低下して湯温センサが燃焼開始温度を検出するとバーナの燃焼を開始し、缶体内の湯温が上昇して湯温センサが燃焼停止温度を検出するとバーナの燃焼を停止して缶体内の温水が設定温度となるように維持している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−213422号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貯湯タイプの温水器は運転開始から缶体の湯温を設定温度まで沸き上げるまでに時間がかかるため、運転開始と同時に放熱器から運転要求があると、低温度のお湯もしくは水が放熱器に送られるものであり、缶体内の湯温が低いときに放熱器に温水を循環しながら沸き上げると湯温が上昇する時間が長くなるものである。温水器に接続する放熱器には温風暖房機や温水パネルなどがあり、放熱器が温風暖房機の場合には缶体内の温水温度が上昇するまでの間は低温度の風が吹き出し続けて不快感を与え、長時間室内が暖まらず使用者の暖房要求に応えることができず使い勝手が悪いという課題があった。
【0006】
また、温水器に温水パネルを接続して屋外の融雪装置として使用するときは、温風暖房機で使用するときに比べて缶体の設定温度を低く設定しているため、熱交換器や燃焼ガス流路内の排気ガスの温度が低下しやすい状態となっている。そして、降雪量が多いときや気温が極端に低いときには温水器の能力以上の負荷がかかることがあり、この場合は、缶体の湯温が上昇できなくなり、温水の温度が低下したままの状態で運転を続けるため、熱交換器や燃焼ガス流路内の排気ガス温度も低下して排気ガス中に含まれる水分が結露しやすくなり、この結露水が熱交換器や燃焼ガス流路の腐食の原因となるものであった。
【0007】
また、温水暖房装置は温水器に接続した循環パイプを途中で分岐して、放熱器を複数台接続することができるが、放熱器を複数台同時に運転するときは、缶体に戻される温水の温度にばらつきが生じやすく、缶体の温度変化が大きくなってバーナが頻繁に燃焼と停止を繰り返すことがあり、騒音や臭気の発生が増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の課題を解決するもので、温水器の缶体1内に熱源となるバーナ2と、バーナ2で発生した燃焼ガスが送られる燃焼室3と、燃焼室3壁もしくは燃焼室3に続く燃焼ガス流路4壁を熱交換部とする熱交換器5とを設け、前記缶体1と放熱器6とを往き管7aと戻り管7bを介して連結すると共に、該往き管7aに循環ポンプ8を取り付けて温水の循環回路Aを構成し、前記缶体1の側壁に取り付けた湯温センサ9と、該湯温センサ9の検出データに基づいて前記バーナ2の運転を制御する制御手段10とを設け、該制御手段10は湯温センサ9が燃焼開始温度TSaを検出時にバーナ2に燃焼開始信号を出力し、湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出時にバーナ2に燃焼停止信号を出力して、缶体1内の湯温を設定温度TSに維持すると共に、前記循環ポンプ8が駆動して缶体1と放熱器6との間で温水を循環させる温水暖房装置において、前記戻り管7bに取り付けて前記放熱器6から前記缶体1に戻される循環水の温度を検出する温度センサ11と、前記温度センサ11の検出温度に基づいて作動するタイマ手段12とを設け、前記制御手段10は前記温度センサ11の検出温度が所定温度T1以下のときに前記タイマ手段12を作動し、前記タイマ手段12が所定時間t1カウントしたときは前記循環ポンプ8を停止すると共に、前記バーナ2の前記燃焼停止温度TSbを高く変更し、前記湯温センサ9が変更前の前記燃焼停止温度TSbを検出時に前記循環ポンプ8の運転を再開し、前記湯温センサ9が変更後の燃焼停止温度TShを検出するまで前記バーナ2の燃焼を継続することを特徴とする。
【0009】
また、前記湯温センサ9の検出温度が前記燃焼開始温度TSaより高く、前記バーナ2が停止したまま前記循環ポンプ8が駆動するときは、前記温度センサ11の検出温度が前記所定温度T1以下でも前記タイマ手段12を作動しない構成としたものであり、温度センサ11が所定温度T1以下を検出していても放熱器6には設定温度TS付近のお湯を送ることができる。
【0010】
また、前記湯温センサ9の検出温度が前記燃焼開始温度TSaより高く、前記バーナ2が停止したまま前記循環ポンプ8が駆動するときは、前記温度センサ11の検出温度が前記所定温度T1以下のときは前記タイマ手段12を作動し、前記湯温センサ9が前記燃焼開始温度TSa以下を検出する前に前記タイマ手段12が所定時間t1カウントしたときは、前記循環ポンプ8を駆動したまま前記バーナ2の燃焼を開始することによって缶体1内の湯温を大きく低下させることなく、設定温度TSを維持できるものとなった。
【0011】
また、前記制御手段10にはバーナ2の前記燃焼開始温度TSaより高く、前記燃焼停止温度TSbより低く設定した前記循環ポンプ8の循環開始温度TCを備え、温水暖房装置の運転開始時において前記湯温センサ9の検出温度が前記燃焼開始温度TSa以下のときは、前記循環ポンプ8を停止したまま前記バーナ2の燃焼を開始し、前記湯温センサ9が前記循環開始温度TCを検出したときに前記循環ポンプ8を駆動することによって、缶体1内の温水を短時間で設定温度TS付近まで沸き上げてから、放熱器6へ送ることができる。
【0012】
また、前記湯温センサ9の検出温度に基づいて作動する第2タイマ手段13を備え、前記制御手段10は湯温センサ9の検出温度が前記燃焼停止温度TSb以上のときに前記第2タイマ手段13を作動すると共に、前記第2タイマ手段13が作動中はバーナ2の燃焼を継続し、前記第2タイマ手段13が所定時間t2カウントしたときに前記バーナ2の燃焼を停止することによって、缶体1の湯温が一時的に変化してもバーナ2は燃焼を継続するので、バーナ2が頻繁に燃焼と停止を繰り返すことがない。
【0013】
また、前記第2タイマ手段13にはカウンタ手段14を備え、前記第2タイマ手段13が所定時間t2カウントする前に停止したときは前記カウンタ手段14がカウント加算し、
前記カウンタ手段14が指定回数に達したときに前記燃焼停止温度TSbを高く変更することで、缶体1の湯温が一時的に変化するときでも湯温センサ9が燃焼停止温度TSaを検出する回数が減るので誤作動を起こしにくくなり、缶体1内の温水が高温に維持されて湯温を安定させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、戻り管7bに取り付けた温度センサ11によって放熱器6から缶体1に戻される循環水の温度を検出し、温度センサ11が所定温度T1以下を検出しているときにタイマ手段12を作動し、温度センサ11が所定温度T1以下を検出したままタイマ手段12が所定時間t1カウントしたときは、循環ポンプ8を停止するとともにバーナ2の燃焼停止温度TSbを高く変更するものである。バーナ2が燃焼しても温度センサ11が所定温度T1以下を検出し続けるときは缶体1内の湯温が低いときであるが、循環ポンプ8が停止することによって短時間で缶体1内の湯温を上昇させることができるものとなった。また、湯温センサ9が変更前の燃焼停止温度TSbを検出したときはバーナ2が燃焼したまま循環ポンプ8の運転を再開し、湯温センサ9が変更後の燃焼停止温度TShを検出するまではバーナ2が燃焼を続けるので、循環水が放熱器6に送られたときに缶体1の湯温を大きく低下させることはなく、放熱器6には確実に設定温度TSまで上昇した温水を送ることができるものとなった。
このため、放熱器6が温風暖房機のときは長時間冷風を吹き出して使用者に不快感を与えることがなくなり、快適な暖房が可能となった。また、放熱器6が融雪用の温水パネルのときは湯温が低下したまま運転を続けることがなくなり、熱交換器5内の結露の発生を防ぐことができるものとなった。
【0015】
また、放熱器6の運転開始時に湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより高いときは、バーナ2が停止したまま循環ポンプ8が駆動し、湯温センサ9が燃焼開始温度TSa以下を検出したときにバーナ2が燃焼を開始する。循環ポンプ8が駆動すると往き管7aや放熱器6の循環水が戻り管7bから缶体1に戻されるため、戻り管7bの温度センサ11が所定温度T1以下を検出することがあるが、放熱器6には缶体1内の設定温度TS付近の温水が送られて高温度を維持できるから、循環ポンプ8を停止する必要はない。
このため、温度センサ11が所定温度T1以下を検出しているときでもタイマ手段12が作動しない構成として、循環ポンプ8が運転を続けて温水の供給が停止しないようにしたから、放熱器6からの暖房要求にすぐ応えることができ、使い勝手が向上できたものである。
【0016】
また、他の実施例では、湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより高く、バーナ2が停止したまま循環ポンプ8が運転するときにおいて、温度センサ11が所定温度T1以下を検出しているときはタイマ手段12が作動し、タイマ手段12が所定時間t1カウントしたときは循環ポンプ8が駆動したままバーナ2の燃焼を開始する構成としている。この構成では、缶体1内の湯温が燃焼開始温度TSaに低下する前にバーナ2が燃焼を開始するので、缶体1内の温水の温度を大きく低下させることなく設定温度TSを維持できるものとなり、放熱器6に送られる温水の温度を低下させることがなく、放熱器6の暖房能力を安定して維持できるものとなった。
【0017】
また、制御手段10にはバーナ2の燃焼開始温度TSaより高く、燃焼停止温度TSbより低く設定した循環開始温度TCを備え、放熱器6からの暖房要求があったときに、湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより低いときは循環ポンプ8を停止したままバーナ2の燃焼を開始し、湯温センサ9が循環開始温度TCを検出してから循環ポンプ8を駆動する構成としている。このため、缶体1内の湯温が低いときは、缶体1内の温水を設定温度TS付近まで上昇させてから循環ポンプ8を駆動するので、放熱器6に低温度の温水が送られることなく、缶体1内のお湯を短時間で沸き上げることができ、使い勝手が向上できる。
【0018】
また、湯温センサ9が燃焼停止温度TSb以上を検出しているときに作動する第2タイマ手段13を設け、バーナ2の燃焼中に湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出したときは第2タイマ手段13が作動し、第2タイマ手段13が所定時間t2カウントする前に湯温センサ9の検出温度が燃焼停止温度TSb以下となったときはカウントを停止してバーナ2の燃焼を継続し、一方、湯温センサ9の検出温度が燃焼停止温度TSb以上のまま第2タイマ手段13が所定時間t2カウントしたときはバーナ2の燃焼を停止する。放熱器6を複数台接続して使用するときなどに、放熱器6から缶体1に戻される循環水の温度にばらつきが生じやすくなり、湯温センサ9の検出温度が大きく変化することがあるが、この構成では一時的に湯温が上昇してもバーナ2は燃焼を継続するので、バーナ2が頻繁に燃焼と停止を繰り返すことがなくなる。このため、缶体1内の温度を安定させることができ、また、点火・消火に伴う騒音の発生回数も抑えることができるものとなった。
【0019】
また、第2タイマ手段13にはカウンタ手段14を設けており、カウンタ手段14は第2タイマ手段13が所定時間t2カウントする前に停止したときの回数をカウントしており、カウンタ手段14が指定回数になったときはバーナ2の燃焼停止温度TSbを高く変更する構成としている。
バーナ2の燃焼停止温度TSb付近で温水の温度が変化すると誤作動を起こしやすくなるが、燃焼停止温度TSbを高く変更することで湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出する回数を減らすことができ、湯温が燃焼停止温度TSb付近で一時的に変化するときでも誤作動を起こすことがなくなると共に、放熱器6に送られる温水の温度が高くなることで放熱器6から戻される温水の温度も安定しやすくなるから、バーナ2が頻繁に燃焼と停止を繰り返すことがなくなり、安定した暖房能力を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の温水器の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例を示す放熱器を温風暖房装置で構成した説明図である。
【図3】この発明の実施例を示す放熱器を融雪装置で構成した説明図である。
【図4】この発明の実施例の制御手段の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の他の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施例の燃焼停止動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、2は温水器の熱源となるバーナ、5は該バーナ2の燃焼熱で水の加熱を行う熱交換器、1は熱交換器5を構成する筒状の缶体、3は缶体1の下部内側に配置したバーナ2の燃焼ガスが送られる燃焼室、15は缶体1の上部に配置した排気ガス室、4は燃焼室3と排気ガス室15の間に取り付けた燃焼ガス流路、16は排気ガス室15に接続する排気筒であり、バーナ2を運転すると燃焼炎と燃焼ガスが燃焼室3に送られ、燃焼ガスは燃焼ガス流路4を経て排気ガス室15に送られ、排気筒16から排出される。
【0022】
17は燃焼室3壁および燃焼ガス流路4壁を熱交換部とする熱交換器5を構成する水室、9は缶体1の側壁に設けた湯温センサ、10はバーナ2に燃焼の開始や停止の指令を出す制御手段、18は出湯温度を設定する温度設定手段であり、温度設定手段18の設定温度TSに基づいてバーナ2の燃焼開始温度TSaと燃焼停止温度TSbが決定しており、湯温センサ9が燃焼開始温度TSa以下を検出すると制御手段10が燃焼開始信号を出力してバーナ2が燃焼を開始し、湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出すると制御手段10が燃焼停止信号を出力してバーナ2が燃焼を停止し、水室17の水が温度設定手段18で設定された湯温となるように沸き上げる。
【0023】
7aは缶体1の上部側壁に接続した往き管、7bは缶体1の下部側壁に接続した戻り管、7は往き管7aと戻り管7bとで構成する循環パイプ、6は往き管7aと戻り管7bを介して熱交換器5と連結する放熱器である。8は往き管7aの途中に取り付けた循環ポンプであり、循環ポンプ8が駆動すると水室17の温水が往き管7aから放熱器6に送られ、放熱器6で熱量を放出して温度を低下した水が戻り管7bから水室17に戻され、湯温センサ9が湯温の低下を検出すると、制御手段10が燃焼開始信号を出力してバーナ2が燃焼し、温度設定手段18で設定された温度を維持できるものであり、水室17に戻された水は再び温水となって放熱器6に送られて循環する温水循環回路を構成している。
【0024】
温水器に接続する放熱器6には温水と熱交換して温風を吹き出す温風暖房機や、床暖房用や屋外の融雪用の温水パネルなどがある。また、循環パイプ7を途中で分岐して1台の温水器に対して複数台の放熱器6を接続することができ、1台だけ、もしくは複数台同時に温水を送ることができる。
【0025】
図2は放熱器6を温風暖房機で構成した実施例であり、19は室内に設置する温風暖房機の枠体、20は枠体19内に配置した対流ファン、21は枠体1内に配置した暖房用熱交換器、22は枠体1の前面に配置した吹出口であり、温風暖房機の運転を開始すると制御手段10は循環ポンプ8を運転して缶体1の温水が往き管7aを介して暖房用熱交換器21に送られ、対流ファン20の空気流が暖房用熱交換器21を通過するときに、暖房用熱交換器21から放出される温水の熱量によって加熱されて温風となって吹出口22から室内に吹き出している。
【0026】
ところで、貯湯タイプの温水器は運転開始直後は缶体1内は冷水であり、缶体1内の水を設定温度に沸き上げるまでに時間がかかるため、温水器の運転開始直後に放熱器6である温風暖房機からの暖房の要求があると、低温度の水が放熱器6へ送られるため、吹出口22から冷風が吹出してしまい、缶体1内の温水の温度が上昇するまでの間は冷風が吹出し続けるため、使用者に不快感を与えるものであった。
【0027】
図3は放熱器6を融雪用温水器として使用した実施例であり、23は道路等の路面に埋設して配置された温水パネル、24は降雪を検知する降雪センサーであり、降雪センサー24から降雪の検知信号が出力されると、制御手段10は循環ポンプ8を駆動して缶体1の温水が温水パネル23に送られ、温水パネル23によって温水の熱量を放熱することで路面の雪や氷を解かしており、降雪センサー24から降雪の検知信号の出力がなくなると、循環ポンプ8の運転を停止するものである。
【0028】
融雪装置として使用するときは一般的に温風暖房機として使用するときよりも缶体1の設定温度を低くするため、缶体1内の温度が低く、燃焼室3から排気ガス室15に向かう燃焼ガスの温度が低下しやすくなって燃焼ガス中に含まれる水分が結露しやすくなる。特に外気温が極端に低く温水器の能力以上の負荷がかかるときは水室17の温度が上昇できなくなり、水室17の湯温が低下して水室17の湯温が設定温度よりも低くなると、燃焼ガス流路4壁や排気ガス室15壁で発生する結露が多くなり、この燃焼ガス流路4壁や排気ガス室15壁に結露して付着した水は燃焼ガス流路4や排気ガス室15の腐食の原因となるため、結露への防止対策が必要である。
【0029】
この発明は上記の課題を解決するもので、11は戻り管7bに取り付けた温度センサ、12は制御手段10に備えたタイマ手段であり、温度センサ11は放熱器6から缶体1に戻される戻り管7bの温水の温度を検出し、タイマ手段12は温度センサ11の検出温度が所定温度T1以下のときに作動する。この所定温度T1は温度設定手段18で設定された温度によって変更するものであり、設定温度TSを上げると所定温度T1も高くなり、設定温度TSを下げると所定温度T1は低くなる。
【0030】
図4のフローチャートは温水暖房装置の制御動作の実施例であり、制御手段10は温度センサ11が所定温度T1以下を検出するとタイマ手段12のカウントを開始し、タイマ手段12のカウント中に温度センサ11の検出温度が所定温度T1より高くなるとタイマ手段12のカウントを停止する。一方、温度センサ11が所定温度T1以下を検出したままタイマ手段12が所定時間t1カウントしたときは、温度設定手段18で設定された設定温度TSの燃焼停止温度TSbよりも高い燃焼停止温度TShに変更すると共に、循環ポンプ8の運転を停止する。
【0031】
循環ポンプ8が停止した後もバーナ2は燃焼を続けており、湯温センサ9が変更前の燃焼停止温度TSbを検出すると循環ポンプ8の運転を再開し、制御手段10は湯温センサ9が変更後の燃焼停止温度TShを検出するまでバーナ2の燃焼を継続するものであり、バーナ2が燃焼したまま循環ポンプ8の運転を停止することで、缶体1内の温水を短時間で設定温度TSまで沸き上げることができる。
【0032】
循環ポンプ8は缶体1の湯温が上昇してから運転するようにしたので、温水器の運転開始直後に温風暖房機の運転を開始しても、吹出口22から長時間冷風が吹出すことがなくなって使用者に不快感を与えることがなくなった。また、缶体1内の湯温が設定温度TSの燃焼停止温度TSbまで上昇したときは、バーナ2が燃焼したまま循環ポンプ8の運転を再開するから、缶体1の温水が放熱器6に送られて、放熱器6や循環パイプ7の低温度の循環水が缶体1に戻されても、缶体1の湯温の低下を抑えて設定温度TSを維持することができ、放熱器6である温風暖房機は確実に温風を吹出すことができる。
【0033】
一方、融雪用温水器として使用している場合には、外気温の低下などで缶体1内の湯温が上昇できなくなったときに循環ポンプ8の運転を停止するので、缶体1内の温度を設定温度TSまで上昇させることができ、湯温が低下したまま運転を続けることがなくなり、燃焼ガスの温度低下による結露の発生を防ぐことができるものとなった。また、燃焼停止温度TSbを高く変更することで缶体1内の温水の温度が高くなり、放熱器6には設定温度TSよりも高い温度への温水が送られるので、湯温の低下を抑えることができる。
【0034】
また、予め温水器が運転しているときは缶体1内の湯温が設定温度TSに維持されており、湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより高いときに放熱器6の運転を開始すると、バーナ2が停止したまま循環ポンプ8が運転を開始する。循環ポンプ8の運転開始直後は循環パイプ7や放熱器6の低温度の循環水が戻されるため温度センサ11の検出温度が所定温度T1以下になることがあるが、放熱器6には設定温度TSに維持された缶体1内の高温の温水が送られて放熱器6を高温に維持することができるので、循環ポンプ8を停止する必要がない。
【0035】
このため、缶体1内の湯温が設定温度TSに維持されているときは、温度センサ11が所定温度T1以下を検出してもタイマ手段12が作動しない構成としたものであり、放熱器6からの運転要求によって循環ポンプ8が運転すると缶体1内の温水が放熱器6に送られ、循環パイプ7や放熱器6の循環水が缶体1に戻されて缶体1内の湯温が低下すれば、湯温センサ9が燃焼開始温度TSa以下を検出してバーナ2の燃焼を開始するので、缶体1内の湯温が上昇するものであり、放熱器6に送られる温水の温度が低下することはなく、放熱器6は運転開始後から高温度を維持できるものとなった。このため、放熱器6を温風暖房機で構成しているときは運転開始後すぐに温風を吹出すことができ、循環ポンプ8が途中で停止しないから温風が連続して吹出すものとなり、使い勝手が向上できるものとなった。
【0036】
また、図5のフローチャートに示すこの発明の他の実施例では、湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより高いときに放熱器6の運転を開始して、バーナ2が停止したまま循環ポンプ8が運転を開始するときにおいて、制御手段10は温度センサ11の検出温度を確認し、温度センサ11の検出温度が所定温度T1以下のときはタイマ手段12を作動し、タイマ手段12が所定時間t1カウントしたときには湯温センサ9の検出温度に関係なくバーナ2の燃焼を開始する構成としたものである。低温度の循環水が続けて缶体1に戻されるときは缶体1内の湯温が低下しやすくなる可能性があるが、この構成では缶体1内の湯温が燃焼開始温度TSa以下に低下する前にバーナ2が燃焼を開始するので、缶体1内の湯温を大きく低下させることはなく、放熱器6には設定温度TSを維持した温水を供給することができるものである。
【0037】
また、制御手段10にはバーナ2の燃焼開始温度TSaより高く、燃焼停止温度TSbより低く設定した循環開始温度TCを備えており、放熱器6の運転を開始したときに湯温センサ9の検出温度が燃焼開始温度TSaより低いときは循環ポンプ8を停止したままバーナ2の燃焼を開始し、湯温センサ9が循環開始温度TCを検出すると循環ポンプ8を駆動する構成としている。
この構成によって、缶体1内の湯温が燃焼開始温度TSaより低いときには、缶体1内の湯温を短時間で上昇させることができ、湯温センサ9が循環開始温度TCを検出して循環ポンプ8が運転を開始するときには缶体1内の湯温は燃焼開始温度TSaよりも高くなっているから、缶体1内の湯温が大きく低下することはなく高温度を維持できるものとなり、温水パネル23が暖まるまでの時間や温風暖房機から吹出す風が温風となるまでの時間が短くなり、使い勝手が向上できた。
【0038】
ところで、温水器に放熱器6を複数台接続しているときにおいて、複数台の放熱器6を同時に運転するときは、放熱器6の放熱量がそれぞれ異なっているため、缶体1に戻される温水の温度にばらつきが生じやすくなる。また、放熱器6の運転台数が変更されたときには放熱量が急に変化することがあり、缶体1に戻される温水の温度が大きく変化することがある。このような湯温の変化を湯温センサ9が検出すると、短時間の間にバーナ2の燃焼と停止が繰り返されることがあり、バーナ2の点火と消火による騒音や臭気の発生が多くなる問題が起こる。
【0039】
図6は湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出したときの動作を示すもので、13は湯温センサ9の検出温度が燃焼停止温度TSbより高いときに作動する第2タイマ手段であり、制御手段10は湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを検出してもすぐに燃焼停止信号は出力せず、第2タイマ手段13がカウント開始する。第2タイマ手段13のカウント中に湯温センサ9が燃焼停止温度TSb以下を検出すると第2タイマ手段13のカウントを停止し、一方、湯温センサ9の検出温度が燃焼停止温度TSbより高いまま第2タイマ手段13が所定時間t2カウントしたときは、制御手段10が燃焼停止信号を出力してバーナ2の燃焼が停止する。
【0040】
上記の構成であれば、缶体1内の湯温が大きく変動して湯温センサ9の検出温度が一時的に燃焼停止温度TSbより高くなっても、第2タイマ手段13のカウント時間が所定時間t2経過するまではバーナ2の燃焼を続けるので、缶体1内の湯温が安定しないときでもバーナ2が頻繁に燃焼と停止を繰り返すことがなく、点火・消火の回数が少なくなるから、缶体1内の湯温を安定させると共に騒音や臭気の発生を抑えることができる。
【0041】
また、14は第2タイマ手段13に備えたカウンタ手段、25は温度設定手段18の設定温度を補正する補正手段であり、カウンタ手段14は第2タイマ手段13が所定時間t2カウントする前に停止したときの回数をカウントする。実施例ではカウンタ手段14のカウント数の上限値を3回に設定してあり、カウンタ手段14のカウント数が上限値の3回になったときは補正手段25によって燃焼停止温度TSbが所定温度高くなるように設定温度TSを変更し、制御手段10は変更された燃焼停止温度TSb基づいてバーナ2の燃焼制御を行う。
【0042】
湯温センサ9が燃焼停止温度TSbを繰り返し検出するときは、燃焼停止温度TSb付近で温度が変化しているため誤作動や放熱器6側の温度も安定しない可能性があるが、燃焼停止温度TSbを高く変更することで、変更後の燃焼停止温度TSbを検出する回数が少なくなり、一時的な缶体1の温度変化による誤作動を確実に防ぐことができ、缶体1や放熱器6の温水の温度を安定させることができるものとなった。
【符号の説明】
【0043】
TSa 燃焼開始温度
TSb 燃焼停止温度
TSh 変更後の燃焼停止温度
TS 設定温度
T1 所定温度
TC 循環開始温度
t1 所定時間
t2 所定時間
1 缶体
2 バーナ
3 燃焼室
4 燃焼ガス流路
5 熱交換器
6 放熱器
7a 往き管
7b 戻り管
8 循環ポンプ
9 湯温センサ
10 制御手段
11 温度センサ
12 タイマ手段
13 第2タイマ手段
14 カウンタ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水器の缶体(1)内に熱源となるバーナ(2)と、バーナ(2)で発生した燃焼ガスが送られる燃焼室(3)と、燃焼室(3)壁もしくは燃焼室(3)に続く燃焼ガス流路(4)壁を熱交換部とする熱交換器(5)とを設け、
前記缶体(1)と放熱器(6)とを往き管(7a)と戻り管(7b)を介して連結すると共に、該往き管(7a)に循環ポンプ(8)を取り付けて温水の循環回路(A)を構成し、
前記缶体(1)の側壁に取り付けた湯温センサ(9)と、該湯温センサ(9)の検出データに基づいて前記バーナ(2)の運転を制御する制御手段(10)とを設け、
該制御手段(10)は湯温センサ(9)が燃焼開始温度(TSa)を検出時にバーナ(2)に燃焼開始信号を出力し、湯温センサ(9)が燃焼停止温度(TSb)を検出時にバーナ(2)に燃焼停止信号を出力して、缶体(1)内の湯温を設定温度(TS)に維持すると共に、
前記循環ポンプ(8)が駆動して缶体(1)と放熱器(6)との間で温水を循環させる温水暖房装置において、
前記戻り管(7b)に取り付けて前記放熱器(6)から前記缶体(1)に戻される循環水の温度を検出する温度センサ(11)と、前記温度センサ(11)の検出温度に基づいて作動するタイマ手段(12)とを設け、
前記制御手段(10)は前記温度センサ(11)の検出温度が所定温度(T1)以下のときに前記タイマ手段(12)を作動し、前記タイマ手段(12)が所定時間(t1)カウントしたときは前記循環ポンプ(8)を停止すると共に、前記バーナ(2)の前記燃焼停止温度(TSb)を高く変更し、
前記湯温センサ(9)が変更前の前記燃焼停止温度(TSb)を検出時に前記循環ポンプ(8)の運転を再開し、前記湯温センサ(9)が変更後の燃焼停止温度(TSh)を検出するまで前記バーナ(2)の燃焼を継続することを特徴とする温水暖房装置の制御装置。
【請求項2】
前記湯温センサ(9)の検出温度が前記燃焼開始温度(TSa)より高く、前記バーナ(2)が停止したまま前記循環ポンプ(8)が駆動するときは、
前記温度センサ(11)の検出温度が前記所定温度(T1)以下でも前記タイマ手段(12)を作動しないことを特徴とする請求項1に記載した温水暖房装置の制御装置。
【請求項3】
前記湯温センサ(9)の検出温度が前記燃焼開始温度(TSa)より高く、前記バーナ(2)が停止したまま前記循環ポンプ(8)が駆動するときは、
前記温度センサ(11)の検出温度が前記所定温度(T1)以下のときは前記タイマ手段(12)を作動し、
前記湯温センサ(9)が前記燃焼開始温度(TSa)以下を検出する前に前記タイマ手段(12)が所定時間(t1)カウントしたときは、前記循環ポンプ(8)を駆動したまま前記バーナ(2)の燃焼を開始することを特徴とする請求項1に記載した温水暖房装置の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段(10)にはバーナ(2)の前記燃焼開始温度(TSa)より高く、前記燃焼停止温度(TSb)より低く設定した前記循環ポンプ(8)の循環開始温度(TC)を備え、
温水暖房装置の運転開始時において前記湯温センサ(9)の検出温度が前記燃焼開始温度(TSa)以下のときは、前記循環ポンプ(8)を停止したまま前記バーナ(2)の燃焼を開始し、
前記湯温センサ(9)が前記循環開始温度(TC)を検出したときに前記循環ポンプ(8)を駆動することを特徴とする請求項2または3に記載した温水暖房装置の制御装置。
【請求項5】
前記湯温センサ(9)の検出温度に基づいて作動する第2タイマ手段(13)を備え、前記制御手段(10)は湯温センサ(9)の検出温度が前記燃焼停止温度(TSb)以上のときに前記第2タイマ手段(13)を作動すると共に、前記第2タイマ手段(13)が作動中はバーナ(2)の燃焼を継続し、前記第2タイマ手段(13)が所定時間(t2)カウントしたときに前記バーナ(2)の燃焼を停止することを特徴とする請求項1から4に記載した温水暖房装置の制御装置。
【請求項6】
前記第2タイマ手段(13)にはカウンタ手段(14)を備え、前記第2タイマ手段(13)が所定時間(t2)カウントする前に停止したときは前記カウンタ手段(14)がカウント加算し、
前記カウンタ手段(14)が指定回数に達したときに前記燃焼停止温度(TSb)を高く変更することを特徴とする請求項5に記載した温水暖房装置の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate