説明

温水浣腸器

【課題】便座に座って排便ができない場合、グリセリン浣腸に勝るとも劣らない排便促進作用を有し、何の副作用もなく、且つ便座に座りながらでも容易に使用できる温水浣腸器を提供する。
【解決手段】液体出入り口5を有するとともに加減圧によって液体を押し出し及び吸入可能な容器2と、液体出入り口5に接続された長さ20〜50cmの柔軟な管3と、管3の先端に接続されたノズル4とを備え、41±1℃の水を使用することを促す文字、記号又はこれらの組み合わせが容器2に表示されていることを特徴とし、前記文字、記号又はこれらの組み合わせの表示が、温度に応じて色が変わるコレステリック液晶又はサーモクロミック塗料を用いることによってなされていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温水浣腸器に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘の際に排便を促す手段として、従来よりグリセリン浣腸が良く用いられているが、慢性の便秘を患う者にとって、便秘の度にグリセリン浣腸器を買うことは経済的に負担となるし、常用すると効果が弱まり、使用量を増やさなければならない。しかも、かゆみ、発疹などのアレルギー症状を伴うおそれもある。
そこで近年、グリセリン等の薬剤ではなく、水又はぬるま湯をノズルの付いた弾性変形可能な容器を備えた浣腸器に吸入し、ノズルを肛門に挿入した状態で容器を手で圧縮して水又はぬるま湯を肛門内に注入することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3136473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記水又はぬるま湯を使用する提案は、単に便をふやかすだけを目的としており、排便促進の効果に乏しい。しかも浣腸器全体を手で掴んで肛門の下に回さなければならず、特に高齢者等の足腰の弱い者や被介護者に適用することは困難である。
それ故、この発明の課題は、便座に座って排便ができない場合、グリセリン浣腸に勝るとも劣らない排便促進作用を有し、何の副作用もなく、且つ便座に座りながらでも容易に使用できる温水浣腸器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明の温水浣腸器は、
液体出入り口を有するとともに加減圧によって液体を押し出し及び吸入可能な容器と、前記液体出入り口に接続された長さ20〜50cmの柔軟な管と、管の先端に接続されたノズルとを備え、41±1℃の水を使用することを促す文字、記号又はこれらの組み合わせが前記容器に表示されていることを特徴とする。
【0006】
この発明の温水浣腸器を使用するときは、容器の表示に従って容器内の水温が「41±1℃」に保たれるような、熱くはないが、少し高めの温水を吸引し、ノズルを肛門に挿入した後、水を肛門内に押し出す。水温が体温よりも高いので、便がふやけやすい上に、直腸の蠕動が反射的に高められる。水温が41±1℃に満たないとこの作用に乏しく、44℃を超えると腸粘膜を傷つける可能性があるので、水温の管理は重要である。管が30〜50cmの長さを有し、柔軟であるから、ノズルの肛門への挿入は、一方の手(通常は利き手でない方の手)で容器を持ち、便座に座った状態で他方の手(利き手)で管とノズルだけを股間から肛門に回して行うことができる。管の全長が20cmに満たないと管とノズルだけを股間から肛門に回すのが困難となるし、全長が50cmを超えると容器から出た水の温度が低下してしまう。好ましい全長は、30〜40cmである。
【0007】
前記容器は、蛇腹状、柔軟性袋状などであってもよいが、好ましいのはシリンジである。定量性及び耐久性に優れるからである。前記文字、記号又はこれらの組み合わせの表示は、好ましくは温度に応じて色が変わるコレステリック液晶又はサーモクロミック塗料を用いることによってなされる。水温を管理しやすいからである。
【0008】
前記管は、好ましくは前記液体出入り口側から順に、第一の柔軟なチューブ、L型ジョイント及び第二の柔軟なチューブを含む。第一の柔軟なチューブは、長さ的に管の全長の大部分を占め、管とノズルだけを股間から肛門に回すために必要十分な長さと柔軟性を有する。第二の柔軟なチューブは、2〜6cm程度で足りる。L型ジョイントは、指先の力では高い剛性を有する。前記管がこの構成を備えることにより、L型ジョイントの角部を指の腹で支持しながらノズルを肛門に挿入することができ、挿入が容易となる。また、第二のチューブが柔軟であるうえに、前記の長さを有するので、直腸の内壁に倣って第二のチューブが弾性変形し、ノズルが直腸を傷つけることなく、滞った宿便付近に近づくことができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の浣腸器を使用すれば、便がふやけやすい上に、肛門から直腸の内壁が刺激されるため、排便が著しく促進される。風呂の湯程度の温水であるから、何の副作用もない。また、便座に座った状態で管とノズルだけを股間から肛門に回して浣腸することができるので、高齢者や被介護者にも適用しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1の温水浣腸器を示す正面図である。
【図2】同温水浣腸器の一構成要素であるシリンジを示す一部破断正面図である。
【図3】実施形態2の温水浣腸器の一構成要素であるシリンジを示し、(a)がその平面図、(b)が正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−実施形態1−
第一の実施形態の温水浣腸器1は、図1に示すようにシリンジ2、管3及びノズル4を備える。シリンジ2は、図2に示すように先端に細く突き出した液体出入り口5を有し、後端が開口したバレル6及びピストンロッド7からなる。シリンジ2の最大用量は110mLである。ピストンロッド7は、バレル6の後端より入れられてピストン部外周面がバレル6内面と液密性を保って往復しうる。バレル6の外周面には、充填される液体の量を計る10mL毎の目盛りとともに「41±1℃」及び「温水」の文字が表示されている。
【0012】
管3は、塩化ビニル樹脂製の柔軟なチューブ8(長さ:30cm)、ポリエチレン製のL型ジョイント9(一辺の長さ:1cm)及び塩化ビニル樹脂製の柔軟なチューブ10(長さ:4cm)からなる。
【0013】
温水浣腸器1を使用するときは、ピストンロッド7を後退させながらバレル6の外周面の表示に従って40℃前後の水をバレル6内に吸入し、一方の手でシリンジ2を持ち、便座に座った状態で他方の手でL型ジョイント9を掴みノズル4を股間から肛門に回す。そして、L型ジョイント9の角部を指の腹で支持しながらノズル4を肛門に挿入する。チューブ10が柔軟であるうえに、前記の長さを有するので、直腸の内壁に倣ってチューブ10が弾性変形し、ノズル4が直腸を傷つけることなく、滞った便の先端に近づく。
【0014】
その後、水温が低下しないうちにピストンロッド7を前進させることにより水を肛門内に押し出す。水温が体温よりも高いので、便がふやけやすい上に、蠕動が反射的に高められる結果、滞っていた便が動いて速やかに排出される。使用する温水の量は、成人の場合で通常50mLである。それでも便が動かない場合は増量すればよい。
【0015】
−実施形態2−
第二の実施形態の温水浣腸器には、第一の実施形態の温水浣腸器1のシリンジ2と異なるシリンジ12が適用される。シリンジ12は、「41±1℃」の文字の表示に代えて、図3に示すようにサーモクロミック塗料にて印刷された温度指示マーク20をバレル16の先端内側面に有する。指示マーク20は、常温では青色を呈しており、43℃を超えるとピンク色を呈する。温水浣腸器の取り扱い説明書には「ピンク色の場合には温度が高すぎるので、青色に変わって指先で触れて熱くなくなるまで待つ。」旨、記載しておく。従って、この温水浣腸器を使用する時は、「41±1℃」の温水をバレル16内に吸入した状態で指示マーク20が青色になっていることを確認してから、バレル16内の水を肛門内に注入する。その結果、第一の実施形態のときと同様に排便が促進されるだけでなく、直腸粘膜の熱傷を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0016】
1 温水浣腸器
2,12 シリンジ
3 管
4 ノズル
5 液体出入り口
6 バレル
7 ピストンロッド
8 第一のチューブ
9 L型ジョイント
10 第二のチューブ
20 温度指示マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体出入り口を有するとともに加減圧によって液体を押し出し及び吸入可能な容器と、前記液体出入り口に接続された長さ20〜50cmの柔軟な管と、管の先端に接続されたノズルとを備え、41±1℃の水を使用することを促す文字、記号又はこれらの組み合わせが前記容器に表示されていることを特徴とする温水浣腸器。
【請求項2】
前記文字、記号又はこれらの組み合わせの表示が、温度に応じて色が変わるコレステリック液晶又はサーモクロミック塗料を用いることによってなされている請求項1に記載の温水浣腸器。
【請求項3】
前記管が、前記液体出入り口側から順に、相対的に長い第一の柔軟なチューブ、L型ジョイント及び相対的に短い第二の柔軟なチューブを含む請求項1に記載の温水浣腸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−94521(P2013−94521A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241981(P2011−241981)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(511020634)
【Fターム(参考)】