説明

温水装置

【課題】 ドレン水排水管を二重管方式により浴槽配管内に配設する場合に、中和剤の炭酸カルシウム由来のカルシウム成分がドレン水排水管内で析出することに起因するドレン水排水管の詰まり発生を確実に防止し得る温水装置を提供する。
【解決手段】 開閉切換弁62を開切換して排水ポンプ14を作動させて、入水路33からの水道水を導出管15、排水接続管16を経て、戻り管30a内のドレン水排水管17に流し、析出の可能性のある中和済みドレン水の残留水をすすぎ洗浄する。薬液混入部63から薬液を水道水に混入してドレン水排水管17内のカルシウム成分の既析出物を溶解し、次いですすぎ洗浄する。洗浄後も排水ポンプ14の継続作動により大気連通管523から空気を取り込んでドレン水排水管17内をパージしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱回収式の熱交換器と、この熱交換器で発生するドレン水を排水するためのドレン水排水管とを備え、ドレン水排水管の内部を洗浄水により洗浄し得るようにした温水装置に関し、特に浴槽との間に接続された浴槽用配管を利用してドレン水排水管を浴槽用配管の内部に二重管式に挿入配置させるようにした場合の洗浄技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱回収式熱交換器を搭載していないタイプの既設の熱源機を、新しく潜熱回収式熱交換器が搭載された新しい熱源機と交換する場合に、潜熱回収式熱交換器で発生したドレン水を排水させるためにドレン水排水管を新たに配管する必要が生じる。そこで、既設の配管をそのまま利用してドレン水排水管の配管を行うことが提案されている。すなわち、既設の熱源機と浴槽との間には追焚循環や浴槽へ湯水を供給するための浴槽配管が既に配管されているため、浴槽配管の内部にドレン水排水管を挿入して二重管方式にし、ドレン水排水管の配管のための新たな設置スペースを不要にすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、ドレン水に含まれるホルムアルデヒドを除去するために、二酸化マンガン触媒を用いた分解反応を利用することの提案(例えば特許文献2参照)や、中和剤として一般に用いられる炭酸カルシウムによる中和処理後のドレン水を貯留槽に貯留した上で浴槽等に排出させる際に、貯留槽内のドレン水をヒータ加熱処理することで菌繁殖を抑制することの提案(例えば特許文献3参照)も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−133600号公報
【特許文献2】特開2009−222367号公報
【特許文献3】特開2008−298412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の二重管方式でドレン水排水管を配設する場合、元々配管されている浴槽配管の内部に挿入させる必要上、ドレン水排水管の内径は必然的に狭くなり(例えば管径5mm程度)、詰まりに対しては弱くなるという不都合を内在している。一方、熱源機の側でドレン水の中和処理を行い、中和処理後のドレン水をドレン水排水管を通して排水させることになるため、仮にドレン水排水管内でドレン水の滞留や付着が生じて乾燥が生じると、中和処理用の中和剤(炭酸カルシウム)に由来するカルシウム成分が析出してドレン水排水管の内表面に付着するおそれがあり、詰まり発生の要因にもなり易くなるという不都合が考えられる。かかるカルシウム成分の析出は、これを長期間放置してドレン水排水管内に堆積が進行した場合には、これに起因してドレン水排水管の詰まりを引き起こす要因ともなり得る。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドレン水排水管を二重管方式により浴槽配管内に配設する場合に、中和剤成分である炭酸カルシウムの析出を防止したり既析出物を溶解させたりすることで、析出の発生に起因するドレン水排水管の詰まり発生を確実に防止し得る温水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、燃焼排ガスから潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器と、この潜熱回収用熱交換器において発生するドレン水を受け入れて中和剤との接触により中和処理する中和器と、この中和器から排出される中和済みのドレン水が排水ポンプの作動により排水されるドレン水排水管と、浴槽との間に配管される浴槽配管とを備え、上記ドレン水排水管が上記浴槽配管内に二重管方式により内挿されることになる温水装置を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記ドレン水排水管内における上記中和剤由来成分の析出を防止させるための洗浄水又は上記ドレン水排水管の内表面に対し上記中和剤由来成分が析出した既析出物を溶解させるための洗浄水を、上記ドレン水排水管に対し所定タイミングで所定期間供給することにより、ドレン水排水管内を洗浄する洗浄手段を備えることとした(請求項1)
【0008】
本発明の場合、中和剤由来成分の析出を防止させるための洗浄水の供給によって、析出のおそれのある付着ドレン水又は滞留ドレン水等の残留ドレン水がドレン水排水管内から除去され、事前の析出防止を図るすすぎ洗浄によるドレン水排水管の詰まり防止が図られる。又、中和剤由来成分が析出した既析出物を溶解させるための洗浄水の供給によって、既析出物が溶解・排除され、既析出物の除去によるドレン水排水管の詰まり防止が図られることになる。これにより、ドレン水排水管が二重管方式で浴槽配管内に配置され、内径が極めて細径になっていたとしても、洗浄手段により上記の洗浄水供給によって、中和剤由来成分の析出防止又は既析出物の溶解促進を図ることが可能となり、中和剤由来成分の析出に起因してドレン水排水管が詰まってしまうという事態の発生を確実に回避することが可能となる。
【0009】
本発明における洗浄手段として、上記洗浄水に対し上記中和剤由来成分の既析出物を溶解させるための薬液を混入させる薬液混入部を備えるようにすることができる(請求項2)。このようにすることにより、薬液混入部からの薬液を混入させた洗浄水によって中和剤由来成分の既析出物が溶解・排除され、析出に起因する詰まり発生の防止をより確実に実現させ得ることになる。この場合、上記中和剤が炭酸カルシウムであり、上記薬液がクエン酸,酢又はスルファミン酸を含む薬液、あるいは、これらから選択した2以上の混合薬液とすることで(請求項3)、より具体的かつ確実に詰まり発生の防止を実現させる得ることになる。
【0010】
又、本発明において、上記洗浄手段による洗浄の終了後に上記排水ポンプを継続して作動させることにより、上記中和器の大気連通管から空気を引き込んで上記ドレン水排水管内の残留水をパージして空気置換させる洗浄制御部を備えるようにすることができる(請求項4)。このようにドレン水排水管内の残留水をパージすることにより、残存するドレン水を完全に排除することが可能となり、僅かでも残存していたかも知れないカルシウム成分による析出の可能性を消し去ることが可能となる。
【0011】
本発明において、上記洗浄手段により洗浄を実行するとき、上記排水ポンプを通常のドレン水排水のときの設定回転数よりも高く設定した高設定回転数で作動させる洗浄制御部を備えるようにすることができる(請求項5)。このように高設定回転数で作動させることで、洗浄水の供給流量を増大させてドレン水排水管内への供給内圧を高めることが可能となり、ドレン水排水管内の析出物、残留したドレン水又はゴミ等をより確実に流し去ることが可能となる上に、僅かに残存しているかも知れないカルシウム成分が析出する可能性をより低減させることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明における洗浄手段として、洗浄水に対しマイクロバブルを混入させるマイクロバブル混入部を備えるものとすることができる(請求項6)。このようにすることで、マイクロバブルを含んだ状態の洗浄水でドレン水排水管の内表面をすすぎ洗浄又は溶解洗浄させることが可能になる。これにより、マイクロバブルの衝突力を物理的に作用させて、ドレン水排水管の内表面に析出しているかもしれない既析出物をより確実に除去することが可能となる。
【0013】
加えて、上記中和器にドレン水を中和処理のために導入する導入管と上記中和器から中和済みのドレン水を排出する導出管とを直接に連通させて上記中和器をバイパスするショートカット管と、このショートカット管を開閉切換する開閉切換弁と、この開閉切換弁を所定タイミングで開閉切換制御することにより中和処理前のドレン水をドレン水排水管に対し既析出物を溶解させるための洗浄水として供給する洗浄制御部とを備えるようにすることができる(請求項7)。このように開閉切換弁を所定期間だけ開状態に切換えることにより、ショートカット管を通して中和処理前のドレン水が中和器を経ずしてドレン水排水管に流され、この中和処理前の強酸性のドレン水によって、ドレン水排水管の内表面に析出しているかも知れないカルシウム成分を溶解させ得ることになる。なお、この溶解処理の後に引き続いて、中和剤由来成分の析出を防止させるための洗浄水として水道水をドレン水排水管に流すことにより、溶解されたカルシウム成分を洗い流すというすすぎ洗浄を実行するように洗浄手段や洗浄制御部を構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の温水装置によれば、中和剤由来成分の析出を防止させるための洗浄水の供給によって、析出のおそれのある付着ドレン水又は滞留ドレン水等の残留ドレン水をドレン水排水管内から除去することができ、事前の析出防止を図ることができるようになる。又、中和剤由来成分が析出した既析出物を溶解させるための洗浄水の供給によって、既析出物を溶解・排除することができ、既析出物の除去によるドレン水排水管の詰まり防止を図ることができるようになる。これにより、ドレン水排水管が二重管方式で浴槽配管内に配置され、内径が極めて細径になっていたとしても、洗浄手段による上記の洗浄水供給によって、中和剤由来成分の析出防止又は既析出物の溶解促進を図ることができ、中和剤由来成分の析出に起因してドレン水排水管が詰まってしまうという事態の発生を確実に回避することができるようになる。
【0015】
特に請求項2によれば、薬液混入部からの薬液を混入させた洗浄水によって中和剤由来成分の既析出物を効果的に溶解・排除することができ、析出に起因する詰まり発生の防止をより確実に実現させることができるようになる。この場合、請求項3によれば、中和剤が炭酸カルシウムである場合の薬液としてクエン酸,酢又はスルファミン酸を含む薬液、あるいは、これらから選択した2以上の混合薬液とすることで、より具体的かつ確実に詰まり発生の防止を実現させることができるようになる。
【0016】
又、請求項4によれば、ドレン水排水管内の残留水をパージすることにより、残存するドレン水を完全に排除することができ、僅かでも残存していたかも知れないカルシウム成分による析出の可能性を消し去ることができるようになる。
【0017】
請求項5によれば、洗浄のときには排水ポンプを高設定回転数で作動させることで、洗浄水の供給流量を増大させることができ、ドレン水排水管内への供給内圧を高めることができる。これにより、ドレン水排水管内の析出物、残留したドレン水又はゴミ等をより確実に流し去ることができる上に、僅かに残存しているかも知れないカルシウム成分が析出する可能性をより低減させることができるようになる。
【0018】
さらに、請求項6によれば、マイクロバブルを含んだ状態の洗浄水でドレン水排水管の内表面をすすぎ洗浄又は溶解洗浄させることができ、これにより、マイクロバブルの衝突力を物理的に作用させて、ドレン水排水管の内表面に析出しているかもしれない既析出物をより確実に除去することができるようになる。
【0019】
加えて、請求項7によれば、開閉切換弁を所定期間だけ開状態に切換制御することで、ショートカット管を通して中和処理前のドレン水を中和器を経ずしてドレン水排水管に流すことができ、この中和処理前の強酸性のドレン水によって、ドレン水排水管の内表面に析出しているかも知れないカルシウム成分を溶解させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態が適用される具体的な熱源機の模式図である。
【図2】図1の要部としてドレン水排水管の洗浄に係る構成部分を拡大して示す説明図である。
【図3】二重管の例を斜視図により示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る温水装置を適用した具体的なシステムの例を示す。この図1に例示する温水装置は、給湯機能に加えて、温水循環式暖房機能、風呂追焚機能、風呂湯張り機能の各機能を併有する複合熱源機型に構成されたものであり、燃焼加熱部において顕熱に加え燃焼排ガスから潜熱をも回収することにより高効率化を図る潜熱回収型のものである。なお、本発明を実施する上では、少なくとも燃焼加熱部に対し潜熱回収用の二次熱交換器1を併設したものであれば適用することができ、又、風呂追焚機能を有して浴槽配管としての追焚循環路3が設置されたものであれば、ドレン水排水管の配設により、浴槽2等が設置された浴室排水設備を用いたドレン水の排出が可能となる。
【0023】
同図において、符号21は給湯機能を実現するための給湯回路、22は温水循環式暖房機能を実現するための暖房回路、23は風呂側循環回路として風呂追焚機能を実現するための追焚回路、24は風呂湯張り機能を実現するための注湯回路であり、又、符号25は潜熱回収用の二次熱交換器1で発生するドレン水の中和処理を行うドレン水処理回路、26は中和処理後のドレン水を排出するための導出管15に対し洗浄水を供給するための洗浄手段としての洗浄水供給回路、27はこれらの各回路の作動制御等を行う制御手段としてのコントローラである。なお、この給湯装置における風呂追焚は、暖房回路22の高温水を熱源として、追焚回路23の浴槽水をバスヒータ41で液−液熱交換加熱することにより昇温させて追焚加熱を行うタイプのものであるが、これに限らず、追焚加熱のための燃焼加熱部(燃焼バーナ及びこの燃焼バーナの燃焼熱により熱交換加熱される熱交換器)を備えたもので追焚を行う構成にしてもよい。
【0024】
上記給湯回路21は、給湯用燃焼バーナ31と、この燃焼バーナ31の燃焼熱により入水を熱交換加熱する給湯用の一次熱交換器32とを燃焼加熱部として備え、入水路33から水道水等が上記給湯用一次熱交換器32において主として加熱され、加熱された後の湯が出湯路34に出湯されるようになっている。この際、上記入水路33からの入水は、一次熱交換器32に入水される前に、上記二次熱交換器1を構成する給湯用熱交換部1aに通されるようになっており、この熱交換部1aにおいて燃焼排ガスからの潜熱回収により予熱された状態で一次熱交換器32に入水されて主加熱されるようになっている。そして、所定温度まで加熱されて上記出湯路34に出湯された湯が、台所や浴室等の給湯栓35や上記注湯回路24などの所定の給湯箇所に給湯されるようになっている。上記入水路33には給水を受けた入水の流量を検出する流量センサ33aや入水温度を検出する入水温度センサ33bが介装され、これらの検出値がコントローラ27に出力されるようになっている。なお、図例では給湯栓35として1つのみ図示しているが、通常は台所、洗面台、浴室等にそれぞれ配設されて複数ある。上記の一次熱交換器32や後述の暖房用の一次熱交換器37が顕熱回収用熱交換器を構成し、上記給湯用熱交換部1aや後述の暖房用熱交換部1bで構成される二次熱交換器1が潜熱回収用熱交換器を構成する。
【0025】
上記暖房回路22は、暖房用燃焼バーナ36と、この燃焼バーナ36の燃焼熱により循環温水を熱交換加熱する暖房用一次熱交換器37とを燃焼加熱部として備え、この暖房用一次熱交換器37に暖房用温水循環路38が通されている。
【0026】
上記温水循環路38は、膨張タンク39に戻されて貯留される低温水を暖房用循環ポンプ40の作動により上記暖房用一次熱交換器37の入口に送り、ここで燃焼バーナ36により加熱された高温水を高温往き路38aから液−液熱交換器であるバスヒータ41に熱源として供給したり、高温往きヘッダー42を介して例えば浴室乾燥機等の高温用暖房端末43に供給したりされるようになっている。又、上記の循環ポンプ40の作動により、膨張タンク39内の低温水を低温往きヘッダー44を介して例えば床暖房機等の低温用暖房端末45に供給し、全ての暖房端末43,45から放熱により低温になった低温水を戻りヘッダー46を介して潜熱回収用の二次熱交換器1の暖房用熱交換部1bに通した上で膨張タンク39に戻すというように、循環させるようになっている。上記の二次熱交換器1の暖房用熱交換部1bにおいては、暖房用燃焼バーナ36の燃焼排ガスからの潜熱回収により低温水が予熱され、予熱された低温水が膨張タンク39に戻されるようになっている。
【0027】
追焚回路23は、液−液熱交換式の加熱部としてのバスヒータ41が、戻り路3a及び往き路3bからなる追焚循環路3に介装され、追焚用循環ポンプ47の作動により浴槽2から戻り管30a及び戻り路3aを通して取り出された浴槽水がバスヒータ41に送られ、このバスヒータ41において暖房回路22側の高温水を熱源とする液−液熱交換により追焚加熱され、追焚加熱後の浴槽湯水が往き路3b及び往き管30bを通して浴槽2に送られるようになっている。上記の追焚循環路3と、温水装置の接続部において追焚循環路3と接続されて機外に設置された外部配管である戻り管30a及び往き管30bとによって、浴槽2との間で浴槽水を追焚のために循環させる追焚循環回路が構成されている。そして、温水装置と浴槽2との間に配管された外部配管である往き管30b又は戻り管30aが浴槽配管を構成することになる。
【0028】
注湯回路24は、給湯回路21から上流端が分岐して下流端が追焚循環路3に合流された注湯路48と、開閉切換により注湯の実行と遮断とを切換える注湯電磁弁49とを備えている。この注湯電磁弁49がコントローラ27により開閉制御され、注湯の実行により、出湯路34の湯が注湯路48,追焚循環路3を経て浴槽2に注湯されて所定量の湯張りが行われるようになっている。
【0029】
ドレン水処理回路25は、二次熱交換器1(給湯用熱交換部1a及び暖房用熱交換部1b)において燃焼排ガスが潜熱回収のための熱交換により冷やされて凝縮することにより生じたドレン水の貯留や中和処理を行うために設置された回路である。すなわち、ドレン水処理回路25は、二次熱交換器1の下側位置に配設されたドレンパンにより集水・回収された強酸性のドレン水を、導入管13を通して中和器5に供給し、中和器5において中和処理された後の中和済みドレン水が排水ポンプ14の作動により後述の貯留槽52の出口から導出管15を通して排出され、排水接続管16と、上記戻り管30a内に二重管方式により挿入されたドレン水排水管17とを通して浴室排水口20に排水させるようになっている。
【0030】
上記中和器5は、図2に詳細を示すように、中和剤(炭酸カルシウム)Wが充填された中和処理槽51と、貯留槽52とを備え、導入管13により供給されるドレン水を受けて中和処理槽51において中和剤Wと接触させることで中和処理が行われ、中和処理済みのドレン水が貯留槽52において一時貯留されるようになっている。貯留槽52にはドレン水の貯留水位検出のために高水位電極521及び低水位電極522が設けられており、所定の高水位まで水位上昇したこと、あるいは、所定の低水位まで水位低下したことの信号がコントローラ27に出力されるようになっている。又、貯留槽52はその頂部が大気連通管523を通して大気に連通されており、排水ポンプ14の作動により貯留槽52内をパージして空気と置換し得るようになっている。さらに、上記の導入管13と導出管15との間には両者を直接に連通させて中和器5をバイパスするショートカット管13aが配設されている。このショートカット管13aは途中に介装された常時閉設定の開閉切換弁13bをコントローラ27により開切換制御することで、導入管13内のドレン水が中和器5を経由することなく、つまり中和処理を経ること無しに導出管15に供給可能となり、この中和処理前のドレン水が排水ポンプ14の作動でドレン水排水管17に供給されるようになっている。
【0031】
洗浄水供給回路26(図2参照)は、入水路33から水道水を洗浄水又は洗浄水の一部として導入する導入路61と、この導入路61を通して水道水を導入するか否かを切換える開閉切換弁62と、開閉切換弁62の下流位置の導入路61に介装された薬液混入部63とを備えている。上記導入路61はその上流端が入水路33の流量センサ33aよりも下流側位置から分岐し、下流端が導出管15に対し排水ポンプ14の上流側位置に合流するように接続されている。開閉切換弁62はコントローラ27の洗浄制御部からの指令を受けて開閉切換制御されるようになっており、開切換されることで入水路33からの水道水が取り込まれて導出管15に流されるようになっている。
【0032】
薬液混入部63は、薬液タンク631と、この薬液タンク631内の薬液を導入路61に対し供給切換するための開閉切換弁632とを備えたものである。薬液タンク631には、カルシウムの析出物を溶解させるための薬液、つまりカルシウム溶解能を有する薬液として、例えばクエン酸、酢、又はスルファミン酸を含んだ薬液、あるいは、これらの混合物が貯留されている。なお、クエン酸等に代えて、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸等の酸味料ともなる薬液をカルシウム溶解用の薬液として薬液タンク631に貯留させておいてもよい。開閉切換弁632を開切換することで薬液タンク631内の薬液が重力作用により導入路61に対し供給されて混入し得るようにしてもよいし、導入路61に例えばベンチュリ管を介装し、このベンチュリ管を水道水が通過する際の負圧吸引により薬液が混入されるようにしてもよい。
【0033】
又、洗浄水供給回路26に対しマイクロバブル混入部64をさらに備えるようにしてもよい。マイクロバブル混入部64としては、例えば導入路62の流路を狭窄させた狭窄部と、空気又はガスを注入する注入路とを内部に形成し、狭窄部を流速を高めて通過することで負圧を生じさせた洗浄水に対し、空気又はガスを混入させるようにすればよい。あるいは、積極的に加圧することにより空気又はガスを混入させるように構成してもよい。又、上記のマイクロバブル混入部64を、例えば導出管15内のドレン水に対しマイクロバブルが混入されるように、導出管15に介装させるようにしてもよい。
【0034】
上記の導出管15の下流端151は温水装置と外部配管との接続部を構成し、この下流端151に対し排水接続管16の上流端が接続される。この排水接続管16の下流端は、追焚循環路3との接続部の近傍位置において戻り管30a内のドレン水排水管17の上流端に接続されて、中和済みのドレン水をドレン水排水管17に流入させ得るようになっている。すなわち、上記戻り管30aには図3(b)に示すようにドレン水排水管17が二重管方式で挿入されている。そして、戻り管30aの上記接続部の近傍位置に介装された流入継手18(図2参照)によりドレン水排水管17の上流端に対し排水接続管16の下流端が連通接続され、戻り管30aの浴槽2の近傍位置に介装された終端継手19によりドレン水排水管17の下流端が戻り管30aから外部に引き出されて浴室排水口20に排水可能となっている。なお、図3(b)中の符号30cは戻り管30a及び往き管30bを束ねる外装被覆である。又、図面では戻り管30aにドレン水排水管17が内挿された例を示したが、これに限らず、往き管30bに対しドレン水排水管17を二重管方式で内挿させるようにしてもよい。
【0035】
次に、洗浄水供給回路26を用いたコントローラ27の洗浄制御部による洗浄制御について説明する。洗浄制御は以下の各種の洗浄制御1〜6から選択された1又は2以上を組み合わせて実行させるようにすればよい。なお、制御の基本は、開閉切換弁62を開変換して排水ポンプ14を作動させることで洗浄を開始させ、洗浄水をドレン水排水管17内に流して浴室排水口20に排水させるものである。
【0036】
(洗浄制御1)
洗浄制御1は、ドレン水の発生量とは関係なく所定のインターバル設定値で定期的に一定時間だけ開閉切換弁62を開変換して洗浄水を導出管15に供給し、この洗浄水によってドレン水排水管17の内表面を洗浄するようにするものである。流す洗浄水としては、入水路33から導入した水道水そのものを用いればよい。つまり、この洗浄制御は、既に析出したカルシウム成分の析出物を溶解させるための洗浄ではなくて、析出のおそれのある付着ドレン水又は滞留ドレン水等の残留ドレン水をドレン水排水管17内から除去させることで析出防止を図るためのすすぎ洗浄を実行するものである。この場合は、コントローラ27に内蔵の電子タイマにより所定のインターバル設定値が経過する毎に所定量又は所定時間の洗浄水供給を行う。流す洗浄水の量としてはドレン水排水管17の延長距離に応じてドレン水排水管17の内容量と同等以上の量を設定するようにすればよい。
【0037】
(洗浄制御2)
洗浄制御2は、上記のすすぎ洗浄のために水道水そのものからなる洗浄水供給を実行する前段階において、中和処理前の強酸性のドレン水をドレン水排水管17に対し少量だけ流すことにより既析出物を溶解させた上で、上記のすすぎ洗浄を実行して洗い流すようにするものである。この洗浄制御2のためにショートカット管13aを用いる。すなわち、洗浄開始により、まず、開閉切換弁13bを開切換制御した上で排水ポンプ14の作動を開始させ、所定の短時間が経過する間だけドレン水排水管17に対し中和処理前のドレン水を流すことで、ドレン水排水管17の内表面に析出しているかも知れないカルシウム成分を溶解させる。この次に、上記の開閉切換弁13bを元の閉状態に戻す一方、導入路61の開閉切換弁62を開切換して入水路33からの水道水を洗浄水としてドレン水排水管17に流す。この洗浄水によるすすぎ洗浄によって、中和処理前の強酸性のドレン水により溶解されたカルシウム成分を洗い流すことができる。
【0038】
(洗浄制御3)
洗浄制御3は、薬液混入部63から薬液を混入した洗浄水で既析出物を溶解させた上で、薬液の混入を停止させた水道水のみからなる洗浄水ですすぎ洗浄を行うようにするものである。すなわち、洗浄開始により開閉切換弁62及び632を開切換して排水ポンプ14を作動させる。これにより、入水路33から導入路61に導入される水道水に対し薬液タンク631内の薬液が混入されて薬液混入の洗浄水がドレン水排水管17に対し流される。これにより、ドレン水排水管17の内表面に既に析出しているかもしれないカルシウム成分の析出物が溶解されることになる。所定の設定時間又は流量センサ33aの出力値の積算に基づく所定の設定量だけ薬液混入の洗浄水を流した後は、薬液混入部63の上記の開閉切換弁632を閉状態に戻し、水道水だけの洗浄水の供給を設定時間又は設定量だけ続ける。これにより、上記の溶解された析出物を流し去るすすぎ洗浄が実行される。
【0039】
(洗浄制御4)
洗浄制御4は、洗浄水の供給を行ってドレン水排水管17内の洗浄を実施する場合には、中和器5の貯留槽52内の中和済みのドレン水を排出させるための設定回転数よりも高く設定した高設定回転数で排水ポンプ14を作動させるようにするものである。これにより、洗浄水の供給流量を増大させてドレン水排水管17内への供給内圧を高めることができ、ドレン水排水管17内に析出物、残留したドレン水やゴミ等を流し去ることができる上に、僅かに残存しているかも知れないカルシウム成分が析出する可能性をより低減させることができる。
【0040】
(洗浄制御5)
洗浄制御5は、洗浄水の供給を終了させた後も、所定の設定時間だけ排水ポンプを継続作動させることで、貯留槽52内に加え、導出管15、排水接続管16及びドレン水排水管17の内部を空気置換によりパージさせるようにするものである。この場合には、開閉切換弁62を閉切換した後も排水ポンプ14を作動継続させると、貯留槽52内の中和済みのドレン水が全て排出され、次に、大気連通管523を通して大気が吸引され、この大気により貯留槽52内のみならず、最下流側のドレン水排水管17内までもがパージされて空気と置換されることになる。これにより、ドレン水排水管17に残存するドレン水を完全に排除することができ、僅かでも残存していたかも知れないカルシウム成分による析出の可能性を消し去ることができる。
【0041】
(洗浄制御6)
洗浄制御6は、以上の各洗浄制御において、洗浄水に対しマイクロバブルを混入させ、マイクロバブルを含んだ洗浄水でドレン水排水管17の内表面を洗浄させるものである。すなわち、導入路61に流される洗浄水に対しマイクロバブル混入部64においてマイクロバブルを混入させ、マイクロバブルを含んだ状態の洗浄水でドレン水排水管17の内表面をすすぎ洗浄又は溶解洗浄させるのである。これにより、マイクロバブルの衝突力を物理的に作用させて、ドレン水排水管17の内表面に析出しているかもしれない既析出物をより確実に除去することができるようになる。
【0042】
以上の実施形態の場合、ドレン水排水管17が戻り管30aに対し二重管方式で配置され、内径が極めて細径になっていたとしても、洗浄水供給回路26からの洗浄水供給等によって、中和剤W由来のカルシウム成分の析出防止又は既析出物の溶解促進を図ることができ、カルシウム成分の析出に起因してドレン水排水管17が詰まってしまうという事態の発生を確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 潜熱回収式熱交換器
2 浴槽
3 追焚循環路
5 中和器
13a ショートカット管
13b 開閉切換弁
14 排水ポンプ
26 洗浄水供給回路(洗浄手段)
30a 戻り管(浴槽配管)
61 導入路
62 開閉切換弁
63 薬液混入部
64 マイクロバブル混入部
523 大気連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスから潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器と、この潜熱回収用熱交換器において発生するドレン水を受け入れて中和剤との接触により中和処理する中和器と、この中和器から排出される中和済みのドレン水が排水ポンプの作動により排水されるドレン水排水管と、浴槽との間に配管される浴槽配管とを備え、上記ドレン水排水管が上記浴槽配管内に二重管方式により内挿されることになる温水装置であって、
上記ドレン水排水管内における上記中和剤由来成分の析出を防止させるための洗浄水又は上記ドレン水排水管の内表面に対し上記中和剤由来成分が析出した既析出物を溶解させるための洗浄水を、上記ドレン水排水管に対し所定タイミングで所定期間供給することにより、ドレン水排水管内を洗浄する洗浄手段を備えている、
ことを特徴とする温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
上記洗浄手段は、上記洗浄水に対し上記中和剤由来成分の既析出物を溶解させるための薬液を混入させる薬液混入部を備えている、温水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温水装置であって、
上記中和剤が炭酸カルシウムであり、上記薬液がクエン酸,酢又はスルファミン酸を含む薬液、あるいは、これらから選択した2以上の混合薬液である、温水装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の温水装置であって、
上記洗浄手段による洗浄の終了後に上記排水ポンプを継続して作動させることにより、上記中和器の大気連通管から空気を引き込んで上記ドレン水排水管内の残留水をパージして空気置換させる洗浄制御部を備えている、温水装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の温水装置であって、
上記洗浄手段により洗浄を実行するとき、上記排水ポンプを通常のドレン水排水のときの設定回転数よりも高く設定した高設定回転数で作動させる洗浄制御部を備えている、温水装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の温水装置であって、
上記洗浄手段は、洗浄水に対しマイクロバブルを混入させるマイクロバブル混入部を備えている、温水装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の温水装置であって、
上記中和器にドレン水を中和処理のために導入する導入管と上記中和器から中和済みのドレン水を排出する導出管とを直接に連通させて上記中和器をバイパスするショートカット管と、このショートカット管を開閉切換する開閉切換弁と、この開閉切換弁を所定タイミングで開閉切換制御することにより中和処理前のドレン水をドレン水排水管に対し既析出物を溶解させるための洗浄水として供給する洗浄制御部とを備えている、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252628(P2011−252628A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125202(P2010−125202)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】