説明

温水装置

【課題】熱交換器の薄型化を好適に図るとともに、バーナを部分燃焼させる場合の熱損失を少なくすることが可能な温水装置を提供する。
【解決手段】部分燃焼が可能なバーナ5と、燃焼用空気供給用のファン51と、複数の直状管体部11aがバーナ5の燃焼可能領域A1の幅方向に並んで連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成された伝熱管T1を有する熱交換器H1と、を備えている、温水装置WHであって、熱交換器HE1は、蛇行状の伝熱管T1がバーナ5と対面する方向に単段に設けられ、バーナ5の部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が、燃焼可能領域A1の非燃焼領域よりも小面積であるときには、部分燃焼の領域は、燃焼可能領域A1の幅方向中心CLよりも出湯側管体部11a"寄りの配置となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナを利用して発生させた燃焼ガスから伝熱管を有する熱交換器を利用して熱回収を行なうことにより湯水を加熱するタイプの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温水装置においては、バーナとして、部分燃焼が可能なバーナが用いられる場合がある(たとえば、特許文献1の図1を参照)。このようなバーナは、燃料を燃焼させる面状の燃焼可能領域が、複数の領域に区分されている。これら複数の領域は、個々に独立して駆動させることが可能であり、これらのいずれを駆動させるかによって、バーナの燃焼火力を容易かつ的確に制御することが可能である。
【0003】
一方、バーナにより発生させた燃焼ガスから熱回収を行なうための熱交換器としては、伝熱管を備えた熱交換器が多用されている。このような熱交換器においては、熱回収量を多くするための手段として、伝熱管を構成する複数の直状管体部を適当な間隔を隔てて水平方向に並べ、かつこのような直状管体部の列を上下複数段に設ける手段がよく採用される。
ただし、伝熱管の列を上下複数段に設けると、熱交換器全体の上下高さ寸法が大きくなる。これを解消する手段としては、伝熱管をたとえば蛇行状に形成し、この蛇行状の伝熱管を上下方向において単段(1段)に設けることが考えられる。このような構成によれば、熱交換器全体の薄型化を図り、製造コストも低減することが可能である。
【0004】
しかしながら、前記したように伝熱管の単段化を図る場合には、次に述べるような不具合を生じる虞がある。
【0005】
すなわち、伝熱管の単段化を図る場合において、この伝熱管を蛇行状に形成し、その一端を入水口とし、かつ他端を出湯口として、伝熱管に通水を行なわせると、その通水方向は一方向となる。このような通水条件下において、たとえば伝熱管の下方に配置されたバーナを部分燃焼させると、伝熱管内を流通する湯水は、バーナの部分燃焼領域の上方を通過する際に一度だけ加熱されるに過ぎない。一方、バーナにはファンから燃焼用空気が供給されており、燃焼に利用されない燃焼用空気は、伝熱管を冷却させる媒体として作用する。このため、伝熱管の通水方向上流側において、バーナの部分燃焼によって湯水加熱がなされた場合、この湯水はその後下流側に流通して出湯口またはその近傍に到達するまでは燃焼用空気によって冷却され続ける。バーナによって加熱されて高温となった湯水に燃焼用空気が作用する場合、これら2つの流体の温度差は大きいために、湯水から燃焼用空気への放熱量(熱損失)は多くなる。したがって、熱交換効率を高める上で改善すべき余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−241864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、熱交換器の薄型化を好適に図るとともに、バーナを部分燃焼させる場合の熱損失を少なくすることが可能な温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される温水装置は、燃料を燃焼させることが可能な面状の燃焼可能領域を有し、かつこの燃焼可能領域において部分燃焼が可能とされたバーナと、このバーナに燃焼用空気を供給するファンと、前記燃焼可能領域に対向する伝熱管を有し、かつこの伝熱管は、複数の直状管体部が前記燃焼可能領域の幅方向に並ぶとともに連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されている熱交換器と、を備えている、温水装置であって、前記熱交換器は、前記蛇行状の伝熱管が前記バーナと対面する方向に単段に設けられているとともに、前記伝熱管の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされて、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされる構成とされ、前記バーナの部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が、前記燃焼可能領域の非燃焼領域よりも小面積であるときには、前記部分燃焼の領域は、前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記出湯側管体部寄りの配置となるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、熱交換器の蛇行状の伝熱管がバーナと対向する方向に単段に設けられているために、伝熱管を前記方向において複数段に設けた構成と比較して、熱交換器全体の薄型化が図られ、製造コストを低減することができる。加えて、次のような効果も得られる。
すなわち、本発明によれば、バーナの部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が非燃焼領域よりも小面積であるときには、伝熱管内の湯水は、湯水流通方向の下流側において加熱され、加熱された湯水はその後迅速に伝熱管の外部に出湯することとなる。したがって、バーナによって高温に加熱された湯水が、その後にバーナの燃焼駆動に利用されていない燃焼用空気によって比較的長時間にわたって冷却されないようにすることができる。一方、伝熱管内を流通する湯水が部分燃焼によって加熱される前には、燃焼用空気の作用を受ける虞があるが、加熱前の湯水であれば、この湯水と燃焼用空気との温度差は少ないために、湯水からの放熱量を少なくすることが可能である。このようなことから、本発明によれば、熱損失を少なくし、熱交換効率を高くするのに有利となる。
なお、部分燃焼の領域が非燃焼領域よりも大きい面積の場合には、バーナの燃焼駆動に利用されない燃焼用空気の量が少なくなるとともに、その温度はバーナの火力の影響により比較的高くなる。したがって、部分燃焼の領域が非燃焼領域よりも面積が大きい場合には、必ずしもその部分燃焼の領域を、出湯側管体部寄りに設定する必要はない。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記バーナの燃焼可能領域は、面積が相違する複数の領域に区分されて部分燃焼可能な構成とされており、前記複数に区分された領域のうち、少なくとも面積が最小の領域は、前記燃焼可能領域の1/2未満の面積とされ、かつ前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記出湯側管体部寄りに設けられている。
【0012】
このような構成によれば、バーナに小面積の部分燃焼を行なわせる場合には、燃焼可能領域の複数に区分された領域のうち、面積が最小の領域を燃焼駆動の対象とすればよい。このようにすれば、前記部分燃焼の領域は、必然的に、燃焼可能領域の幅方向中心よりも出湯側管体部寄りとなる。したがって、本発明が意図する作用を容易に生じさせることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記バーナの部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が、前記燃焼可能領域の非燃焼領域よりも大面積であるときには、前記部分燃焼の領域は、前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記入水側管体部寄り領域の全域を占めるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、バーナの部分燃焼の領域が大きい場合には、燃焼可能領域の幅方向中心よりも入水側管体部寄り領域が燃焼駆動に利用される。したがって、燃焼可能領域のうち、出湯側管体部寄り領域のみが集中的に利用されることを回避することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記熱交換器は、前記伝熱管として、プレート状のフィンが装着され、かつ前記燃焼可能領域の幅方向に並ぶようにして1つの缶体内に収容され、仕切部材を介して仕切られた第1および第2の伝熱管を備え、これら第1および第2の伝熱管に装着されたフィンのうち、前記仕切部材寄りの端部とは反対側の端部は、前記缶体の側壁に接合されており、前記バーナは、前記第1の伝熱管に対応する第1の燃焼可能領域と、前記第2の伝熱管に対応する第2の燃焼可能領域とを有し、かつこれら第1および第2の燃焼可能領域のうち、少なくとも一方は、部分燃焼が可能であり、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれは、前記缶体の前記側壁に最接近している直状管体部が入水側管体部とされ、かつ前記仕切部材に最接近している直状管体部が出湯側管体部とされている。
【0016】
このような構成によれば、熱交換器がいわゆる1缶2回路方式とされ、またバーナもそれに対応した構成とされているために、温水装置全体の小型化を図りつつ、互いに独立した2系統の給湯動作を適切に行なわせることができる。また、第1および第2の伝熱管に対する入水は、第1および第2の伝熱管のフィンと缶体の側壁との接合箇所の近傍において行なわれることとなる。このため、前記接合箇所やその近傍部分の温度上昇を抑制し、これらの部分に大きな熱応力が発生することを防止する上で好ましいものとなる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された温水装置の一例を示す概略正面断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す温水装置に具備された1次熱交換器の平面断面図である。
【図5】図1に示す温水装置に具備された2次熱交換器の平面断面図である。
【図6】図1に示す温水装置の動作状態の一例を示す要部概略正面断面図である。
【図7】図1に示す温水装置の動作状態の一例を示す要部概略正面断面図である。
【図8】図1に示す温水装置の動作状態の一例を示す要部概略正面断面図である。
【図9】図1に示す温水装置との対比例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜図5は、本発明が適用された温水装置、およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1によく表われているように、本実施形態の温水装置WHは、バーナ5、ファン51,1次熱交換器HE1、2次熱交換器HE2、および制御部Cを備えている。この温水装置WHは、一般給湯と、風呂給湯または暖房用給湯との2系統の給湯動作を独立して行なうことが可能であり、1次熱交換器HE1、および2次熱交換器HE2は、ともに1缶2回路方式である。
【0021】
バーナ5は、たとえばガスバーナであり、ファン51からバーナケース50内に上向きに送られてくる燃焼用空気を利用して燃料ガスを燃焼させる。このバーナ5の上面部は、
そのような燃焼動作が可能な第1および第2の燃焼可能領域A1,A2とされ、少なくともこれら両領域A1,A2の上方領域は、仕切部材52を介して仕切られている。第1の燃焼可能領域A1は、複数の領域Aa〜Acに区分され、部分燃焼が可能とされているが、その詳細については後述する。
【0022】
1次熱交換器HE1は、燃焼ガスから顕熱を回収するためのものであり、バーナケース50上に載設された銅製の缶体6内に、第1および第2の伝熱管T1,T2が収容された構成を有している。これら第1および第2の伝熱管T1,T2は、複数のフィン2A,2Bに貫通してこれらフィン2A,2Bに接合されたフィン付きチューブであり、缶体6と同様に銅製である。缶体6は、上下方向に起立した側壁60a〜60dを有する平面視略矩形の枠状または筒状である。
【0023】
図4に示すように、第1の伝熱管T1は、複数の直状管体部11aが略U字状の連結用管体部12aを介して一連に繋がった平面視蛇行状である。より具体的には、複数の直状管体部11aは、水平な姿勢とされ、かつ略平行に並んで缶体6の幅方向(同図の左右方向であって、第1および第2の燃焼可能領域A1,A2の幅方向と同方向である)に列をなしている。複数の直状管体部11aの両端部は、缶体6の側壁60a,60bを貫通し、かつこれら側壁60a,60bにロウ付などの手段を用いて接合されている。互いに隣り合う直状管体部11aの端部どうしは、連結用管体部12aを介して交互に接続されている。第2の伝熱管T2は、複数の直状管体部11bと連結用管体部12bとを有しており、第1の伝熱管T1と同様に、それらは平面視蛇行状に繋がり、かつ側壁60a,60bに支持されている。第1および第2の伝熱管T1,T2は、缶体6の幅方向において互いに隣接しており、かつ上下高さ方向において単段(1段)に設けられている。
【0024】
フィン2A,2Bは、缶体6の幅方向に延びた薄手のプレート状であり、これらフィン2A,2Bの横幅方向の一端部は、缶体6の側壁60c,60dにロウ付けなどの手段を用いて接合されている。一方、フィン2A,2Bの他端部どうしの間には、隙間68が形成され、この隙間68には、フィン2A,2B間を仕切る仕切部材3が挿入して装着されている。好ましくは、この仕切部材3は、フィン2A,2Bが温度変化に伴って膨張または収縮したときに容易に変形し、厚みが変化し得るバネ性をもったものとされている。
【0025】
図1および図4に示すように、第1および第2の伝熱管T1,T2の入水口15a,15bは、缶体6の側壁60c,60dに最も接近した位置の直状管体部11a,11b(入水側管体部11a',11b')に、継手用管体12a',12b'を連結して設けられている。なお、継手用管体12a',12b'またはこれに相当する部材を用いることなく、入水側管体部11a',11b'の一端開口部をそのまま入水口とすることもできる。この点は、次の出湯口16a,16bも同様である。出湯口16a,16bは、仕切部材3に最も接近した位置にある直状管体部11a,11b(出湯側管体部11a",11b")の一端開口部である。このような構成により、入水口15a,15bに供給された湯水は、第1および第2の伝熱管T1,T2に沿って蛇行するものの、矢印N1,N2に示すように、缶体6の側壁60c,60dに接近した位置から仕切部材3側に向けて流れ、出湯口16a,16bに到達する。なお、前記湯水の流通方向は、前記方向とは反対の方向としてもかまわない。
【0026】
2次熱交換器HE2は、1次熱交換器HE1を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するためのものであり、1次熱交換器HE1上に載設されたケース7内に、複数の第3および第4の伝熱管T3,T4が収容され、かつそれらの間が仕切板74を介して仕切られた構成である。第3および第4の伝熱管T3,T4、ならびにケース7は、潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレインに対する耐食性を有すべくその材質はたとえばステンレスである。図5に示すように、複数の第3の伝熱管T3は、サイズが相違する螺旋状管体として形
成されて、重ね巻き状に配列されており、それらの上下両端部は、ケース7の外部に引き出されて通水用のヘッダ75a,75bと連結されている。複数の第4の伝熱管T4も、その基本的な形態は第3の伝熱管T3と同様であり、重ね巻き状に配列された螺旋状管体として形成され、かつその上下両端部には、通水用のヘッダ75c,75dが連結されている。
【0027】
2次熱交換器HE2のケース7は、底壁部70aに給気口71a,71bを有し、かつ前壁部70bに排気口72を有している。図2に示すように、1次熱交換器HE1の第1の伝熱管T1に作用した後の燃焼ガスは、給気口71aからケース7内に進行し、第3の伝熱管T3どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。また、図3に示すように、1次熱交換器HE1の第2の伝熱管T2に作用した後の燃焼ガスは、給気口71bからケース7内に進行し、第4の伝熱管T4どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。このような過程において、燃焼ガスから第3および第4の伝熱管T3,T4により潜熱回収がなされる。
【0028】
図1に示すように、外装ケース90の底部または側部には、給水管80a,80bが接続される外部入水口90a,90b、および出湯管81a,81bが接続される外部出湯口92a,92bが設けられている。外部入水口90aに供給された湯水は、配管部92aを介してヘッダ75bに供給されることにより、2次熱交換器HE2の第3の伝熱管T3内を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75aおよび配管部93aを介して1次熱交換器HE1の入水口15aに送られ、第1の伝熱管T1内を通過する。第1の伝熱管T1を通過して出湯口16aに到達した湯水は、その後に配管部94aを介して外部出湯口92aに到達する。外部出湯口92aに到達した湯水は、たとえば台所や洗面所などに供給される。
【0029】
一方、外部入水口90bに供給された湯水は、配管部92bを介してヘッダ75dに供給されることにより、2次熱交換器HE2の第4の伝熱管T4内を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75cおよび配管部93bを介して1次熱交換器HE1の入水口15bに送られ、第2の伝熱管T2内を通過する。第2の伝熱管T2を通過して出湯口16bに到達した湯水は、その後に配管部94bを介して外部出湯口91bに到達する。この湯水は、たとえば風呂給湯または暖房給湯に利用される。
【0030】
バーナ5の第1および第2の燃焼可能領域A1,A2の全体は、複数の領域Aa〜Adに区分されている。ただし、第2の燃焼可能領域A2は、領域Adのみによって構成され、部分燃焼は実行できないものとなっている。バーナ5に対する燃料ガス供給は、元栓として機能する開閉弁V0および調圧弁V10が設けられたガス管53に送られてきた燃焼ガスが、開閉弁V1〜V4を有する複数の分岐管を介して領域Aa〜Adに個別に行なわれるようになっている。したがって、バーナ5の燃焼駆動は、領域Aa〜Adのそれぞれにおいて個別に行なわせることが可能であり、第1の燃焼可能領域A1においては、領域Aa〜Acを個別に駆動させた部分燃焼が可能である。
【0031】
領域Aa〜Acを構成するバーナノズルの数は相違しており、領域Aa〜Acの面積は互いに相違している。バーナノズルの本数または本数の比率は、たとえば全体を「10」とした場合に、領域Aaは「5」、領域Abは「2」、領域Acは「3」である。このため、第1の燃焼可能領域A1では、全面燃焼時の火力レベルを「10」とした場合に、たとえば火力レベル「2」,「3」,「5」,「7」の部分燃焼が可能である。第1の燃焼可能領域A1の幅方向中心CLを挟み、入水側管体部11a'寄りには、面積が最大の領域Aaが配され、出湯側管体部11a"寄りには、面積が小さい2つの領域Ab,Acが配されている。なお、前記バーナノズルは、直状管体部11a,11bと同方向に延びた平面視細長矩形状の燃料ガス噴出口を有している。
【0032】
制御部Cは、開閉弁V0〜V4の開閉制御などを通じてバーナ5の燃焼駆動を制御するように構成されている。バーナ5の燃焼駆動に際し、第1の燃焼可能領域A1において面積が小さい部分燃焼が行なわれる場合には、後述するように、部分燃焼の領域は、第1の燃焼可能領域A1の幅方向中心CLよりも出湯側管体部11a"寄りの位置となるように構成されている。
【0033】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0034】
まず、1次熱交換器HE1は、平面視蛇行状に形成された第1および第2の伝熱管T1,T2が、上下高さ方向に単段(1段)に設けられた構成である。このため、伝熱管を上下複数段に設けた場合と比較して、1次熱交換器HE1を薄型化し、温水装置WH全体の小型化、ならびに製造コストの低減を図ることができる。
【0035】
次いで、バーナ5を駆動させる場合について説明すると、このバーナ5では、たとえば図6に示すように、第1の燃焼可能領域A1において、領域Acのみを利用した部分燃焼が可能である。このような部分燃焼によれば、第1の伝熱管T1内を流通する湯水は、出湯側管体部11a"およびその近傍部分において加熱され、この加熱後には直ちに出湯口16aに到達し、第1の伝熱管T1の外部に流出する。したがって、加熱後の湯水がファン51から吐出される燃焼用空気によって冷却されることを防止することができる。一方、第1の伝熱管T1内の湯水が領域Acの上方に到達する前には、この湯水が燃焼用空気によって冷却される可能性はあるものの、加熱前の湯水は、加熱後の湯水と比較すると低温であり、この湯水と燃焼用空気との温度差は小さいために、湯水はさほど冷却されない。
【0036】
図9は、本実施形態との対比例を示している。この対比例における領域Aa'〜Ac'の配置は、本実施形態における領域Aa〜Acの配置とは左右反対となっている。図9に示すように、入水側管体部11a'寄りの領域Ac'のみを利用した部分燃焼を行なわせた場合には、この加熱後の湯水がその後出湯口16aに到達するまでの期間中、燃焼に利用されていない燃焼用空気によって冷却され、放熱ロスを生じる。燃焼用空気と加熱後の湯水との温度差は大きいために、その放熱ロスは多くなる。また、部分燃焼の面積(領域Ac'の面積)が小さい場合には、燃焼に利用されていない燃焼用空気が多く発生するために、前記した放熱ロスはより顕著となる。これに対し、図6に示した態様によれば、そのような不利を適切に解消することが可能であり、熱交換効率を高める上で好ましい。
【0037】
図7は、第1の燃焼可能領域A1において、領域Abのみを利用した部分燃焼がなされている状態を示している。この部分燃焼においては、先の図6に示した場合よりも湯水加熱位置が湯水流通方向上流側となり、領域Abの部分燃焼によって加熱された湯水が、領域Acの上方を通過する際に燃焼用空気によって冷却される虞がある。ただし、領域Abを利用した部分燃焼は、第1の燃焼可能領域A1の幅方向中心CLよりも出湯側管体部11a'寄りの位置において行なわれており、燃焼用空気によって冷却される時間を相当に短くし、放熱量を少なくする作用が得られる。したがって、このような態様での部分燃焼も、熱交換効率を高める上で有効である。
【0038】
図6および図7に示した場合とは異なり、第1の燃焼可能領域A1の1/2の面積を超える部分燃焼を行なわせる場合には、領域Aaを利用した部分燃焼が行なわれる。たとえば、図8には領域Aa,Abを利用して部分燃焼が行なわれる状態が示されているが、この部分燃焼によれば、湯水加熱が第1の伝熱管T1の湯水流通方向上流側において行なわれ、その後領域Acの上方を通過する際に燃焼用空気の影響を受けることとなる。しかしながら、領域Aa,Abを利用した部分燃焼は、第1の燃焼可能領域A1の1/2を超える大きな面積での燃焼であるために、燃料の燃焼に利用されていない燃焼用空気の量は少
なくなり、また領域Acの上方を通過する燃焼用空気の温度も高くなる。したがって、加熱後の湯水が領域Acの上方を通過する際の放熱量は少ないものとなり、この放熱に基づいて熱交換効率が大きく低下するといった不具合は殆どない。また、本実施形態によれば、部分燃焼領域の面積を第1の燃焼可能領域A1の1/2よりも大きくする場合には、必ず領域Aaが利用されることとなるため、領域Aa〜Acのそれぞれを満遍なく利用し得ることとなる。なお、第1の燃焼可能領域A1では、前記した態様以外として、燃焼火力レベル「5」の部分燃焼が可能であるが、これは領域Aaのみを利用する場合と、領域Ab,Acの双方を利用する場合とのいずれであってもよい。
【0039】
1次熱交換器HE1においては、既述したように、第1および第2の伝熱管T1,T2への入水は、缶体6の側壁60c,60dの近傍部分側から行なわれる。このため、側壁60c,60dとフィン2A,2Bの一端部との接合箇所およびその近傍部分の温度上昇を抑制し、これらの箇所に大きな熱応力が発生しないようにする効果も得られる。フィン2A,2Bが温度変化に伴って膨張や収縮する場合、仕切部材3はこれに対応して弾性変形し、その厚み寸法が変化する。このため、応力緩和機能が得られ、仕切部材3の破損を防止し得るとともに、フィン2A,2Bに大きな応力が生じることをより適切に防止することが可能である。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0041】
バーナは、ガスバーナに限らず、たとえばオイルバーナとすることも可能であり、要は、面状の燃焼可能領域を有し、かつ部分燃焼が可能であればよい。この部分燃焼は、複数の態様で実行可能である必要はなく、少なくとも1つの態様の部分燃焼が実行可能であればよい。燃焼可能領域を複数の領域に区分する場合、各領域を構成するバーナノズルの具体的な数も問わない。
【0042】
熱交換器の伝熱管は、複数の直状管体部がバーナの燃焼可能領域の幅方向に並ぶとともに連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状とされて、バーナと対面する方向における段数が、単段(1段)されていればよい。直状管体部の具体的な本数や配列ピッチなどは、限定されない。
【0043】
上述した実施形態の温水装置は、いわゆる潜熱回収型とされているが、これに代えて、たとえば顕熱のみを回収するタイプのものとすることもできる。もちろん、熱交換器については、1缶2回路方式に代えて、1缶1回路方式のものとすることができる。また、上述した温水装置は、バーナの上方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが熱交換器の下方から上方に向けて進行するいわゆる正燃方式とされているが、これとは反対に、バーナの下方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが上方から下方に向けて進行する逆燃方式とすることも可能である。本発明でいう温水装置とは、湯を生成する機能を備えた装置の意であり、一般給湯用、風呂給湯用、暖房用、あるいは融雪用などの各種の給湯装置、および給湯以外に用いられる湯を生成する装置を広く含む。
【符号の説明】
【0044】
WH 温水装置
HE1 1次熱交換器(熱交換器)
A1 第1の燃焼可能領域(燃焼可能領域)
A2 第2の燃焼可能領域
Aa〜Ac 領域(第1の燃焼可能領域の)
T1 第1の伝熱管
T2 第2の伝熱管
3 仕切部材
5 バーナ
6 缶体
11a,11b 直状管体部
11a', 11b' 入水側管体部(直状管体部)
11a", 11b" 入水側管体部(直状管体部)
12a,12b 連結用管体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させることが可能な面状の燃焼可能領域を有し、かつこの燃焼可能領域において部分燃焼が可能とされたバーナと、
このバーナに燃焼用空気を供給するファンと、
前記燃焼可能領域に対向する伝熱管を有し、かつこの伝熱管は、複数の直状管体部が前記燃焼可能領域の幅方向に並ぶとともに連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されている熱交換器と、
を備えている、温水装置であって、
前記熱交換器は、前記蛇行状の伝熱管が前記バーナと対面する方向に単段に設けられているとともに、
前記伝熱管の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされて、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされる構成とされ、
前記バーナの部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が、前記燃焼可能領域の非燃焼領域よりも小面積であるときには、前記部分燃焼の領域は、前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記出湯側管体部寄りの配置となるように構成されていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
前記バーナの燃焼可能領域は、面積が相違する複数の領域に区分されて部分燃焼可能な構成とされており、
前記複数に区分された領域のうち、少なくとも面積が最小の領域は、前記燃焼可能領域の1/2未満の面積とされ、かつ前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記出湯側管体部寄りに設けられている、温水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水装置であって、
前記バーナの部分燃焼時において、この部分燃焼の領域が、前記燃焼可能領域の非燃焼領域よりも大面積であるときには、前記部分燃焼の領域は、前記燃焼可能領域の幅方向中心よりも前記入水側管体部寄りの領域の全域を占めるように構成されている、温水装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の温水装置であって、
前記熱交換器は、前記伝熱管として、プレート状のフィンが装着され、かつ前記燃焼可能領域の幅方向に並ぶようにして1つの缶体内に収容され、仕切部材を介して仕切られた第1および第2の伝熱管を備え、
これら第1および第2の伝熱管に装着されたフィンのうち、前記仕切部材寄りの端部とは反対側の端部は、前記缶体の側壁に接合されており、
前記バーナは、前記第1の伝熱管に対応する第1の燃焼可能領域と、前記第2の伝熱管に対応する第2の燃焼可能領域とを有し、かつこれら第1および第2の燃焼可能領域のうち、少なくとも一方は、部分燃焼が可能であり、
前記第1および第2の伝熱管のそれぞれは、前記缶体の前記側壁に最接近している直状管体部が入水側管体部とされ、かつ前記仕切部材に最接近している直状管体部が出湯側管体部とされている、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29256(P2013−29256A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166069(P2011−166069)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】