説明

温熱マスク

【課題】長時間にわたり温熱効果を得ることができて、かつ軽量の温熱マスクを提供すること。
【解決手段】包装体及び蓄熱材を含む温熱マスクであって、前記蓄熱材は38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料である温熱マスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容等に用いる温熱マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、皮膚を温めることで、発汗を促し、血行や新陳代謝が活発になる。皮膚を暖める手段としては、例えば加熱手段を備えたフェイスマスクが製品化されている。最近では、加熱手段として内部に蓄熱材が封入されたフェイスマスク状の顔面用保温具が利用されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、蓄熱材が封入されたマスクにおいても、比較的短時間で温度が低下するため、一定の美容効果を得ることが困難であった。
【0003】
温熱効果を長時間にわたり連続的に保持するために、電流を流すことにより発熱する発熱体をマスクに内装した美顔用マスクが提供されるようになってきている(例えば、特許文献2)。しかしながら、電源コードが付随したマスクは、マスクの使用の際にわずらわしく、また、電池を電源として発熱するマスクは、マスク自体が重くなってしまうという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平16−000375号公報
【特許文献2】特開平09−122166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マスク本体に電源コードを設けることなく、長時間にわたり温熱効果を得ることができて、かつ軽量の温熱マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
包装体及び蓄熱材を含む温熱マスクであって、前記蓄熱材は38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料である温熱マスクが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0008】
マスク本体に電源コードを設けることなく、長時間にわたり温熱効果を得ることができて、かつ軽量の温熱マスクが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、蓄熱材の特性を示す図である。
【図2】図2は、蓄熱材としてミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックスを用いたときの蓄熱材と皮膚間の経時的な温度変化を示す図である。
【図3】図3は、本発明における実施形態の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明における実施形態の他の例を示す図である。
【図5】図5は、本発明における実施形態の他の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の温熱マスクの使用形態の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の温熱マスクの使用形態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について詳述する。
【0011】
本発明の温熱マスクは蓄熱材が内接された蓄熱材層及び、前記蓄熱材を包装するための包装体を含む。
【0012】
(蓄熱材)
次に、温熱マスクに使用している蓄熱材層について説明する。蓄熱材層は、後述する加熱手段による予熱が終了した後も、温熱マスクの温度を使用者に対して温熱効果を奏しうる温度に維持するために設けられている。
【0013】
温熱マスクを用いて肌の温熱処理を行う場合、最適な温熱効果を奏しうるマスク温度は38℃〜42℃(以下、最適温熱温度という)である。また、温熱処理を効果的なものとするには、前記最適温熱温度を10分間程度維持させる必要がある。
【0014】
蓄熱材の材料としては、38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料であれば特に制限なく使用することができ、例えば、高級脂肪酸と一価または二価の高級アルコールとのエステル、非環状炭化水素を単独で、もしくは2種類以上を混合した混合物で、38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料を使用することができる。さらに、38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する範囲で、上記材料にワセリンを混合することもできる。
【0015】
具体的には、ミリスチン酸ミリスチル、パラフィンワックス115(商品名、日本精蝋株式会社製)、EMW−003(商品名、日本精蝋株式会社製)及び、上記化合物の混合物が使用できる。また、パラフィンワックス115にワセリン(エイコサンやテトラコンタンなどの直鎖炭化水素の混合物)を混合して使用することができる。
【0016】
本実施形態では、蓄熱材としてミリスチン酸ミリスチル(クローダジャパン株式会社製)及び、パラフィンワックス115(日本精蝋株式会社製)を用いた。ミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックス115は、38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料である。また、このミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックス115は、いずれも安全性の高い材料であり、化粧品の原料としても用いられるものである。
【0017】
本実施形態のように、温熱効果を実現しうる温度範囲内で相変化を行う材料を蓄熱材として使用することにより、温熱マスク1の温度低下を防止できる理由について、図1を用いて説明する。
【0018】
図1は、温熱効果を実現しうる温度範囲内で相変化を行う材料と、相変化を行わない材料との間における蓄熱量の違いを示すための図である。図1では、横軸に熱量を取り、縦軸に温度を取り、また温熱効果を実現しうる温度範囲を使用範囲と示している。また、図中矢印Aで示す蓄熱材(蓄熱材Aという)は、ミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックス115のように使用範囲内で固相から液相に相変化を行うものである。これに対し、図中矢印Bで示す材料(比較材料Bという)は、使用範囲内で相変化を起こさないものである。
【0019】
図1に示すように、比較材料Bでは、印加される熱量の変化に伴い温度は常に一定の割合で上昇し、よってその軌跡は略直線状となる。よって、使用範囲内において比較材料Bに蓄熱される蓄熱量は図中Eとなる。
【0020】
これに対して使用範囲内で相変化を行う蓄熱材Aでは、相変化を行う際には熱エネルギー(潜熱)が必要となる。このため、蓄熱材Aでは使用範囲内で大きな蓄熱量Eが蓄熱される(E<E)。よって、蓄熱された熱量が放出される場合、比較材料Bに比べて蓄熱材Aの方が長時間にわたり高い温度を維持することができる。
【0021】
上記の理由に基づき本実施形態では、蓄熱材層に含有させる蓄熱材としては、使用者の肌に対して温熱効果を実現しうる温度範囲(使用範囲)内で相変化を行う特性を有するミリスチン酸ミリスチル又はパラフィンワックス115を用いた。本発明による蓄熱材の使用量としては、蓄熱材層に含まれるミリスチン酸ミリスチルの使用量を15g/35cmとした。また、蓄熱材としてパラフィンワックス115を用いた場合には、蓄熱材層に含まれるパラフィンワックス115の使用量を15g/50cmとした。
【0022】
図2は、ミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックス115を上記のように含有させた蓄熱材層の経時的な温度変化を示す図である。同図では、横軸に時間を取り、縦軸に蓄熱材層と使用者の皮膚との間の温度を示している。
【0023】
また、図中矢印Aで示すのはパラフィンワックス115を含有した蓄熱材層の特性であり、図中矢印Bで示すのはミリスチン酸ミリスチルを含有した蓄熱材層の特性である。また、同図に示す実験結果では、夫々の蓄熱層を50℃の恒温槽に一晩静置し、その後の肌負荷後の温度推移を測定した。
【0024】
図2に示すように、ミリスチン酸ミリスチル及びパラフィンワックス115のいずれを用いた場合であっても、10分以上にわたり38℃〜42℃の温度(温熱効果を実現しうる温度範囲)に蓄熱材層の温度を保つことができた。温熱マスクを用いた通常の温熱処理時間は、5分程度である。よって、本実施形態に係る蓄熱材層を用いることにより、温熱マスク1は、使用者に対して十分な時間の温熱処理を行うことができる。
【0025】
なお、蓄熱材層に含有させる蓄熱材は上記したミリスチン酸ミリスチル,パラフィンワックス115に限定されるものではなく、上記した温熱効果を実現しうる温度範囲(使用範囲)内で相変化を行う特性を有する材料であれば、他の材料を用いることも可能である。この際、蓄熱材層は使用者の肌に触れる部位となるため、安全性の高い材料であることが必要である。
【0026】
(包装体)
以下に、本発明の実施形態について、図を用いて説明するとともに、包装体の説明を示す。図3に、本発明における実施形態の一例を示す。
【0027】
本発明の温熱マスク1は前記蓄熱材2及び、包装体を含み、前記包装体は樹脂フィルム3を含んでいることが好ましい。前記蓄熱材2が前記樹脂フィルム3で包装されていることにより、該樹脂フィルム3が蓄熱材2を防水することができるため、湯煎により蓄熱材を予熱することができる点で好ましい。
【0028】
前記樹脂フィルム3としては、前記蓄熱材2を封入できるものであれば、特に制限はなく、公知のものを選択して用いることができる。本実施の形態では、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、熱可塑性エラストマーを使用したが、他にも、塩化ビニル系合成樹脂やオレフィン系合成樹脂やポリアミド系樹脂などの樹脂シートなどを使用することが可能である。
【0029】
また、図4及び、図5に本発明における実施形態の他の例を示す。
【0030】
本発明における前記包装体の少なくとも1面の外面は、不織布4であることが好ましい。
【0031】
前記包装体の少なくとも1面の外面が不織布4であることにより、本発明の温熱マスク1を使用する際に、不織布4の適度な伸びで肌にフィットするため、やさしい装着感を得ることが可能となる。
【0032】
前記不織布4の材料としては、本実施の形態においては、PETを80%含有し、コットンを20%含有する不織布を使用したが、他にも適宜公知のものを使用することができる。具体的には、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及び、前記繊維を2種類以上組み合わせたものを使用してもよい。
【0033】
また、前記不織布4は、公知の化粧料を含有した状態で使用することで、より美容効果を高めることも可能である。
【0034】
さらに、本発明の包装体はその他の包装材料5などを含んでよい。具体的には発泡ポリエチレンシートなどの緩衝材を含むことで、衝撃防止、遮音、熱の保存などの効果を得ることが可能となる。
【0035】
(使用形態)
図6に本発明の温熱マスクの使用形態の一例の概略図を示す。本発明の温熱マスクを使用する場合は、後述する方法により予めマスクを十分に予熱しておき、図6(a)〜(d)のように顔面上に直接戴置することで使用できる。また、前記不織布に切り込みを入れることで、耳にかけて固定する方法も使用できる。
【0036】
さらに、図7(a)や図7(b)のように、本発明の温熱マスク1に、固定用のヘッドワイヤー6を有していても良い。その際、前記ヘッドワイヤー6は取り外し可能であっても良い。
【0037】
前記ヘッドワイヤーの材料としては、前記マスクを顔に固定できるものであれば、特に制限がなく、必要に応じて公知のものを使用することができ、例えば、ゴム紐などを使用することができる。
(予熱手段)
予熱するための手段は、使用温度(38℃〜48℃)程度に加熱できるものであれば特に制限はなく、公知の手段で加熱することができる。
【0038】
本発明の実施の形態においては、50℃に保持したお湯中に一晩静置(湯煎)したが、蓄熱材が融解するまで予熱すれば良く、加熱温度や加熱時間を適宜選択することができる。例えば、本発明の温熱マスクを入浴時に使用し、浴槽内のお湯で温めることで、湯船につかっている間に顔に戴置して使用することも可能である。
【0039】
他にも、専用のヒーターあるいは家庭用ドライヤーなどで前記使用温度(38℃〜48℃)に加熱することで、使用することも可能である。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0041】
1、1−a、1−b、1−c 温熱マスク
2 蓄熱材
3 樹脂フィルム
4 不織布
5 包装材料
6 ヘッドワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体及び蓄熱材を含む温熱マスクであって、前記蓄熱材は38℃以上48℃以下の温度領域で固相−液相間の相転移する材料である温熱マスク。
【請求項2】
前記包装体が樹脂フィルムを含む請求項1に記載の温熱マスク。
【請求項3】
前記包装体の少なくとも1面の外面が不織布である請求項1または請求項2に記載の温熱マスク。
【請求項4】
前記蓄熱材は、高級脂肪酸と一価または二価の高級アルコールとのエステル又は非環状炭化水素の少なくとも一方を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の温熱マスク。
【請求項5】
前記蓄熱材にワセリンを加える請求項4に記載の温熱マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−100836(P2012−100836A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251338(P2010−251338)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】