説明

温熱環境制御システム

【課題】広域エリアにおける多数の制御対象を、時間遅れを考慮しつつ動的に制御することでヒートアイランドを緩和することができる、温熱環境制御システムを提供すること。
【解決手段】対象街区1の温熱環境を制御するための温熱環境制御システムであって、対象街区1の温熱環境情報を取得するセンサ10と、対象街区1の温熱環境を調整するための温熱環境調整機器11と、対象街区に設置された排熱機器12を制御するBEMS20と、センサ10にて取得された温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整機器11及びBEMS20を制御することにより、対象街区1の温熱環境を制御する温熱環境制御装置30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象街区の温熱環境を制御するための温熱環境制御システムであって、特に、ヒートアイランドを緩和するための温熱環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の気温がその周辺部の気温よりも上昇するヒートアイランドの顕在化が問題視されており、この現象の緩和に寄与し得る様々な対策が提案されている。
【0003】
例えば、熱環境を評価するための技術として、屋外熱環境を3D−CADによってシミュレーションするツールと、建物熱負荷をシミュレーションするツールとを連動させることで、建物内外の熱環境を予測する方法が提案されていた(例えば特許文献1参照)。あるいは、建築物に起因するヒートアイランドの緩和策を評価するために、熱環境の形成要因を重み付けして、環境全体への影響度を評価するCASBEE−HI(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency on Heat Island Relaxation)が提案されていた(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
また、屋外を冷却する技術として、構造物壁面に形成した光触媒膜に水を供給し、その蒸発潜熱により周辺空気及び構造物を冷却する方法が提案されていた(例えば特許文献2参照)。あるいは、路面を保水性舗装体にて形成し、この保水性舗装体に対する水の供給を舗装路面温度に応じて制御することで、路面及び周辺空気を冷却する方法が提案されていた(例えば特許文献3参照)。さらには、屋外に噴霧手段を設け、この噴霧手段からのミストの噴霧を相対湿度に応じて制御することで、効率よく冷却を行う方法が提案されていた(例えば特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−301487号公報
【特許文献2】特開2002−201727号公報
【特許文献3】特開2006−200178号公報
【特許文献4】特開2006−177577号公報
【非特許文献1】日本サステナブル・ビルディング・コンソーシアム(JSBC),「建築物総合環境性能評価システム CASBEE−HI(ヒートアイランド) 評価マニュアル (2005年版)」,初版,財団法人 建築環境・省エネルギー機構,平成17年7月11日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された評価技術は、熱環境を評価するものに過ぎず、評価結果に基づいて多数の制御対象を個別に制御するものではないため、広域現象であるヒートアイランドを具体的に緩和することに直ちに寄与するものとは言えなかった。また、非特許文献1に記載された評価技術は、多様な要因の影響を静的に評価するものに過ぎず、例えば都市計画においては有効に機能し得るものの、刻々と変化する気象条件や排熱状況に伴って動的に変化するヒートアイランドの評価に直ちに適用できるものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載された冷却技術は、当該冷却技術が適用された構造物及びその近傍空間という極めて限定されたエリアにおいて冷却効果を得るものであり、ヒートアイランドという広域現象に対する効果は極めて限定的であった。特に、都市や街区という広域エリアでは、一部の地域の環境が他の地域に伝播するまでに時間を要するが、上記従来の冷却技術ではこのような時間遅れ(時定数)が一切考慮されていなかったので、広域エリア全体の温熱環境を効率よく制御することは困難であった。
【0008】
この発明は、このような従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、都市や街区という広域エリアにおける多数の制御対象を、時間遅れを考慮しつつ動的に制御することで、ヒートアイランドを緩和することができる、温熱環境制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、対象街区の温熱環境を制御するための温熱環境制御システムであって、前記対象街区の温熱環境情報を取得する情報取得手段と、前記対象街区の温熱環境を調整するための温熱環境調整手段と、前記対象街区に設置された排熱機器を制御する排熱機器制御手段と、前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段を制御することにより、前記対象街区の温熱環境を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記制御手段は、前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の温冷感指標を算出し、当該温冷感指標に基づいて、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段を制御すること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の本発明において、前記制御手段は、前記温冷感指標を、前記温熱環境情報に基づいて計算流体力学にて算出すること、を特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の本発明において、前記排熱機器制御手段は、前記排熱機器を建物単位で集中管理するためのビル・エネルギー・マネジメントシステムであり、前記制御手段は、前記ビル・エネルギー・マネジメントシステムを介して前記排熱機器を制御すること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の本発明において、前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器を個別に制御するための個別制御情報を出力し、前記排熱機器制御手段は、前記制御手段から出力された前記個別制御情報に基づいて、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器を個別に制御すること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の本発明は、請求項4に記載の本発明において、前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の消費エネルギー量の合計の許容上限値を出力し、前記排熱機器制御手段は、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の消費エネルギー量の合計が、前記制御手段から出力された許容上限値以下になるように、当該排熱機器を制御すること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の本発明は、請求項4に記載の本発明において、前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の種別と各種別毎の消費エネルギー量の合計の許容上限値とを出力し、前記排熱機器制御手段は、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器のうち、前記制御手段から出力された種別に合致する前記排熱機器のみを、当該排熱機器の消費エネルギー量の合計が前記制御手段から出力された許容上限値以下になるように制御すること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の本発明は、請求項4に記載の本発明において、前記制御手段は、前記排熱機器を制御するための複数の制御パターンのそれぞれについて、当該制御パターンによる制御時に、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段にて消費される前記対象街区単位でのエネルギー量の合計値と散水量の合計値とを算定し、前記エネルギー量の合計値及び前記散水量の合計値が最小になる制御パターンを選択して制御を行うこと、を特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の本発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の本発明において、前記温熱環境調整手段の配置位置を特定するための位置情報を格納する位置情報格納手段を備え、前記制御手段は、前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の風向を特定し、前記特定された風向に基づいて前記位置情報格納手段を参照することにより、風上側の領域への降温効果を有する前記温熱環境調整手段を特定し、当該特定された温熱環境調整手段を他の温熱環境調整手段より優先的に用いること、を特徴とする。
【0018】
また、請求項10に記載の本発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の本発明において、前記温熱環境調整手段の配置位置を特定するための位置情報を格納する位置情報格納手段を備え、前記制御手段は、前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の高温領域を特定し、前記特定された高温領域に基づいて前記位置情報格納手段を参照することにより、前記高温領域への降温効果を有する前記温熱環境調整手段を特定し、当該特定された温熱環境調整手段を他の温熱環境調整手段より優先的に用いること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の本発明によれば、対象街区の温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整手段及び排熱機器制御手段を制御するので、対象街区という広域エリアにおける温熱環境を動的に評価及び制御でき、ヒートアイランドの緩和が可能になる。
【0020】
また、請求項2に記載の本発明によれば、温冷感指標に基づいて温熱環境調整手段及び排熱機器制御手段を制御するので、対象街区に滞在等する人体の温冷感覚を基準として温熱環境を制御でき、人間にとって快適な温熱状態を形成及び維持することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の本発明によれば、温冷感指標を計算流体力学にて算出するので、対象街区という広域エリアにおける温熱環境を定量的に解析することができ、ヒートアイランドの緩和を確実に行うことが可能になる。
【0022】
また、請求項4に記載の本発明によれば、ビル・エネルギー・マネジメントシステムを介して排熱機器を制御するので、各建物に導入されている既存のマネジメントシステムの管理機能を活用でき、制御手段の制御負荷を軽減しつつ、排熱機器を最適運転することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の本発明によれば、制御手段が個別制御情報に基づいて排熱機器を個別に制御するので、各排熱機器からの排熱量を低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、ビル・エネルギー・マネジメントシステムの制御負荷を軽減できる。
【0024】
また、請求項6に記載の本発明によれば、排熱機器の消費エネルギー量の合計が許容上限値以下になるように、排熱機器制御手段が排熱機器を制御するので、各建物における消費エネルギー量を一定値以下に低減することができ、排熱機器からの排熱量を低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、制御手段の制御負荷を軽減できる。
【0025】
また、請求項7に記載の本発明によれば、排熱機器の種別毎の消費エネルギー量の合計が許容上限値以下になるように、排熱機器制御手段が種別毎の排熱機器を制御するので、排熱機器からの排熱量を種別毎に低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、制御手段の制御負荷を軽減できる。
【0026】
また、請求項8に記載の本発明によれば、エネルギー量の合計値及び散水量の合計値が最小になる制御パターンを選択して制御を行うので、ヒートアイランドの緩和を、最も省エネルギーかつ省資源で行うことが可能になる。
【0027】
また、請求項9に記載の本発明によれば、風上側の領域への降温効果を有する温熱環境調整手段を優先的に用いるので、降温効果を風上位置から風下位置に自動的に伝播でき、広域エリアの降温を効率よく行うことができる。
【0028】
また、請求項10に記載の本発明によれば、高温領域への降温効果を有する温熱環境調整手段を優先的に用いるので、高温領域を優先的に降温させることができ、広域エリアの降温を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る温熱環境制御システムを実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
〔概要〕
まず、本実施の形態に係る温熱環境制御システム(以下「本システム」)について概説する。本システムは、対象街区の温熱環境を制御するための温熱環境制御システムである。本システムでは、まず、屋外の温熱環境情報を取得する情報取得手段として、対象街区の温度や風速等を計測する各種のセンサを設置する。また、屋外の温度を調整するための温熱環境調整手段として散水装置等を設けると共に、対象街区に設置された空調機器等の排熱機器を制御する排熱機器制御手段としてBEMS(ビル・エネルギー・マネジメントシステム)を設ける。さらに、情報取得手段にて取得された温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整手段及び排熱機器制御手段を制御することにより、対象街区の温熱環境を制御する制御手段とを備える。
【0031】
このシステムでは、情報取得手段にて取得された温熱環境情報に基づいて、対象街区の温熱環境を動的に解析し、この解析結果に基づいて、時間的遅れを考慮しつつ、街区全体で使用する水やエネルギーを最小化しながら、温熱環境調整手段及び排熱機器制御手段を制御することで、対象街区のヒートアイランドを緩和することができる。
【0032】
〔定義〕
次に、以下で使用される語彙について定義する。「対象街区」とは、本システムで制御対象としているエリアである。ここで「街区」とは、都市空間のうち、風環境(風の経路など)を共通化できる大きさを持つ空間であり、例えば、大手町地区、日本橋地区、大阪駅前地区、中之島地区のように表現される規模の空間である。「温熱環境」とは、人体の温熱感覚に影響を及ぼし得る環境であり、気温、湿度、気流、及び、熱放射の状態を含む。
【0033】
〔システム構成〕
次に、本システムの構成について説明する。図1は本システムの構成を機能概念的に示す側面図、図2は図1の平面図である。これら図1、2に示すように、対象街区1は、複数の道路2及び複数の建物敷地3を備えており、各建物敷地3には建物4が構築されている。各道路2及び各建物敷地3には複数のセンサ10と複数の温熱環境調整機器11とが設置されると共に、建物4には複数の排熱機器(発熱機器)12及び1台のBEMS20が設置されている。また、対象街区1の内部又は外部のいずれか任意の位置には、温熱環境制御装置(EEMS:Enterprise Energy Management System)30が設置されている。
【0034】
これらセンサ10、温熱環境調整機器11、及び、BEMS20は温熱環境制御装置30に接続(有線又は無線による電気的接続を意味する。以下同じ)にされており、排熱機器12はBEMS20に接続されていて、これら相互間で信号の入出力が可能である。
【0035】
また、温熱環境制御装置30は所定の外部情報源に接続されており、この外部情報源からの情報を取得可能である。ここでは、外部情報源として、対象街区1及びその周囲の気象情報を出力する図示しない気象情報サーバが接続されているものとする。
【0036】
〔システム構成−センサ10〕
センサ10は、対象街区の温熱環境に関する情報(以下「温熱環境情報」)を取得するもので、特許請求の範囲における情報取得手段に対応する。このセンサ10としては、所望の温熱環境情報を取得するのに適した公知のセンサ10を用いることができるが、例えば、温度を計測する温度計、湿度を計測する湿度計、風速を計測する風速計、風向を計測する風向計、日射量を計測する日射計、あるいは、これらの一部を相互に一体化したセンサ10(例えば風向風速センサ)を用いる。
【0037】
例えば、センサ10は、対象街区1における温熱環境評価上の主要箇所(道路2の主要箇所、主要な建物4からの排熱位置、公共空間等)に配置される。ただし、図示におけるセンサ10の設置位置は例示であり、図示の位置に必ずしもセンサ10を配置しなくてもよく、あるいは、図示以外の位置にセンサ10を配置してもよい(この点は、以下の温熱環境調整機器11、排熱機器12、及び、温熱環境制御装置30についても同様)。また、センサ10は、建物2の外部や内部の他、対象街区1の外部領域に配置されてもよく、当該外部領域の温熱環境情報に基づいて対象街区1の温熱環境を制御するようにしてもよい。この他、道路2を走行する自動車からの排気ガスを排熱として温熱環境評価に含めて考慮することもでき、この場合には、当該排気ガス量を計測するための排気ガス計測器や自動車の渋滞データを公知の情報源から取得するようにしてもよい。なお、以下の説明では、センサ10にて実測された値を用いて制御パターンの算定等を行うものとするが、実測値ではなく、実測値や実測値の履歴に基づいて公知方法で算定した予測値を用いてもよい。
【0038】
〔システム構成−温熱環境調整機器11〕
温熱環境調整機器11は、対象街区1の温熱環境を調整するためのもので、特許請求の範囲における温熱環境調整手段に対応する。この温熱環境調整機器11としては、所望の調整内容に応じた公知の温熱環境調整機器11を用いることができ、例えば、水をミスト状に噴霧する散水装置、道路2の路面に保水性を持たせた保水性舗装体、あるいは、建物4の外壁を構成する光触媒膜を用いる。また、温熱環境調整機器11は、建物4の外部に配置されるものに限定されず、建物4の内部に配置される機器、例えば、室内用の散水装置を含む。さらに、温熱環境調整機器11は、冷熱や温熱を放出する装置に限定されず、気流の方向を変えるようなダンパや、日射を遮蔽するための可動式の日除け(オーニング)、あるいは、建物4に設けたボイド(エアコート)の下部の開口パターンを切り換える切り換え機構(例えば排煙開口や駐車場開口の開閉等)を含めてもよい。
【0039】
〔システム構成−排熱機器12〕
排熱機器12は、熱を排出する機器であって、例えば空調機器や照明機器が該当する。しかしながら、必ずしもこれら空調機器や照明機器に限定されず、例えば、OA機器、調理器具、道路2を走行する自動車のように、排熱を行い得る全ての機器又は装置が含まれる得る。また、排熱機器12は、建物4の内部に配置されるものに限定されず、建物4の外部に配置される機器、例えば、建物4の屋上に設置された冷却塔や屋外照明灯を含む。
【0040】
〔システム構成−BEMS20〕
BEMS20は、排熱機器12の運転制御を行うもので、特許請求の範囲における排熱機器制御手段に対応する。このBEMS20は、例えば、排熱機器12の駆動源に接続されたインバータと、このインバータを制御するコンピュータ装置及びプログラムを含んで構成されている。図3は、このBEMS20の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図3に示すように、BEMS20は、機能概念的に、排熱機器情報DB21、エネルギーデマンド情報DB22、及び、BEMS制御部23を含んで構成されている。
【0041】
排熱機器情報DB21は、当該BEMS20が制御対象としている排熱機器12に関する情報(以下「排熱機器情報」)を格納する排熱機器情報格納手段である。この排熱機器情報は、各排熱機器12を一意に特定するための排熱機器IDと、各排熱機器12の種別と、各排熱機器12の3次元座標と、各排熱機器12の最大消費エネルギー量と、各排熱機器12の性能と消費エネルギーとの対応関係を特定するための性能情報(例えば性能曲線)とを、相互に関連付けて構成されている。
【0042】
エネルギーデマンド情報DB22は、当該BEMS20の制御範囲である建物4(当該BEMS20が設置されている建物4)におけるエネルギーの需要に関する情報(以下「エネルギーデマンド情報」)を格納するエネルギーデマンド情報格納手段である。このエネルギーデマンド情報は、当該BEMS20の制御範囲である建物4に設置された各排熱機器12の季節及び時間帯毎の消費エネルギーのデータを含んで構成されている。
【0043】
BEMS制御部23は、BEMS20の各部を制御するためのBEMS制御手段であり、具体的には、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラム、及び、所要プログラムや所要データを格納するための内部メモリを備えて構成される。このBEMS制御部23の具体的制御内容については後述する。
【0044】
〔システム構成−温熱環境制御装置30〕
再び図1、2において、温熱環境制御装置30は、センサ10にて取得された温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整機器11及び排熱機器12を制御することにより、対象街区1における屋外の温熱環境を制御するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図4は、この温熱環境制御装置30の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図4に示すように、温熱環境制御装置30は、機能概念的に、街区地理情報DB31、センサ情報DB32、温冷感情報DB33、温熱機器情報DB34、BEMS情報DB35、エネルギーデマンド情報DB36、及び、温熱環境制御部37を備えて構成されている。
【0045】
街区地理情報DB31は、対象街区1の地理に関する情報(以下「街区地理情報」)を格納する街区地理情報格納手段である。この街区地理情報は、対象街区1の地図情報(各建物4の位置及び立体図を含む3次元情報)を含み、この地図情報の座標は、上述した排熱機器情報DB21や後述するセンサ情報DB32〜BEMS情報DB35に格納されている座標と同一座標系の座標である。
【0046】
センサ情報DB32は、センサ10に関する情報(以下「センサ情報」)を格納するセンサ情報格納手段である。このセンサ情報は、各センサ10を一意に特定するためのセンサIDと、各センサ10の対象街区1における位置を特定する3次元座標と、各センサから取得された温熱情報(温度、湿度、風速、風向、日射量等)と、各センサからの取得日時とを、相互に関連付けて格納されている。
【0047】
温冷感情報DB33は、温冷感指標(人体温熱感覚指標)に関する情報(以下「温冷感指標情報」)を格納する温冷感指標情報格納手段である。この温冷感指標情報は、対象街区1における位置を特定する3次元座標と、各位置における温冷感指標と、各温冷感指標が算出された日時とを、相互に関連付けて格納されている。
【0048】
温熱機器情報DB34は、温熱環境調整機器11に関する情報(以下「温熱機器情報」)を格納する温熱機器情報格納手段である。この温熱機器情報は、各温熱環境調整機器11を一意に特定するための温熱環境調整機器IDと、各温熱環境調整手段の配置位置を特定するための3次元座標と、各温熱環境調整機器11の性能と消費エネルギーとの対応関係を特定するための性能情報(例えば性能曲線)とを、相互に関連付けて構成されている。なお、3次元座標は特許請求の範囲における位置情報に対応し、従って、温熱機器情報DB34は特許請求の範囲における位置情報格納手段に対応する。
【0049】
BEMS情報DB35は、BEMS情報を格納するBEMS情報格納手段である。このBEMS情報は、各BEMS20を一意に特定するためのBEMSIDと、各BEMS20にて制御される各排熱機器12を一意に特定するための排熱機器IDと、各排熱機器12の種別と、各排熱機器12の3次元座標と、各排熱機器12の最大消費エネルギー量と、各排熱機器12の性能と消費エネルギーとの対応関係を特定するための性能情報とを、相互に関連付けて構成されている。ただし、このBEMS情報は、各BEMS20が保有する排熱機器情報DB21の排熱機器情報と一部重複するため、必要に応じて各BEMS20から取得するものとして、当該重複する情報はBEMS情報DB35から省略してもよい。
【0050】
エネルギーデマンド情報DB36は、エネルギーデマンド情報を格納するエネルギーデマンド情報格納手段である。このエネルギーデマンド情報は、各建物4を一意に特定するための建物ID、各建物4の排熱機器12において必要とされるエネルギーの季節及び時間帯毎のデータとを、相互に関連付けて構成されている。ただし、このエネルギーデマンド情報は、各BEMS20が保有するエネルギーデマンド情報DB22のエネルギーデマンド情報と一部重複するため、必要に応じて各BEMS20から取得するものとして、当該重複する情報はエネルギーデマンド情報DB36から省略してもよい。
【0051】
温熱環境制御部37は、温熱環境制御装置30の各部を制御するための温熱環境制御手段であり、具体的には、OSなどの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラム、及び、所要プログラムや所要データを格納するための内部メモリを備えて構成される。この温熱環境制御部37は、機能概念的に、温熱環境情報を取得する情報取得部37a、対象街区1の外気温をCFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)にて3次元解析等することで温熱環境調整機器11や排熱機器12の制御パターンを決定する制御パターン決定部37b、温熱環境調整機器11及び排熱機器12を制御する機器制御部37c、及び、学習処理を行なう学習処理部37dを備える。これら各部の具体的制御内容については後述する。
【0052】
〔システム構成−気象情報サーバ〕
図示しない気象情報サーバは、上述したように外部情報源である。この気象情報サーバから取得可能な気象情報としては、例えば、対象街区1又はその周辺地域における、温度、湿度、降水量、日射量(又は雲量)、風向、風速に関する、実測値又は予測値を挙げることができる。この気象情報サーバからは、例えば、過去所定時間以内の情報(一例として、過去24時間以内において3時間毎に取得された情報)が温熱環境制御装置30に出力される。
【0053】
〔処理内容〕
次に、このように構成された温熱環境制御システムを用いて実行される処理の内容について説明する。図5は、全体処理のフローチャートである。図示のように、温熱環境制御システムによる処理は、温熱環境情報取得処理(ステップSA−1)、制御パターン決定処理(ステップSA−2)、調整手段制御処理(ステップSA−3)、及び、学習処理(ステップSA−4)に大別される。
【0054】
温熱環境情報取得処理は、概略的には、センサから温熱環境情報を取得するための処理である。この温熱環境情報取得処理の起動タイミングは任意であり、例えば、所定間隔毎(一例として、30分毎)や所定時刻到来時(一例として、平日の午後0時と午後6時)に自動起動される。
【0055】
制御パターン決定処理は、概略的には、温熱環境情報取得処理にて取得された温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整機器11及び排熱機器12の制御パターンを決定するための処理である。この制御パターン決定処理は、例えば、温熱環境情報取得処理にて温熱環境情報が取得される毎に自動起動される。または、温熱環境情報取得処理にて取得された温熱環境情報をセンサ情報DB32に一旦格納しておき、この取得タイミングと切り離された任意のタイミング(一例として、温熱環境情報取得処理と同様に、所定間隔毎や所定時刻到来時)で自動起動される。
【0056】
調整手段制御処理は、概略的には、制御パターン決定処理にて算出された温冷感指標と、気象情報サーバから取得された気象情報とに基づいて、対象街区1の温熱環境調整機器11及び排熱機器12を制御するための処理である。この調整手段制御処理は、例えば、制御パターン決定処理にて温冷感指標が算出される毎に自動起動され、又は、制御パターン決定処理にて取得された温冷感指標を温冷感情報DB33に一旦格納しておき、この取得タイミングと切り離された任意のタイミング(一例として、温熱環境情報取得処理と同様に、所定間隔毎や所定時刻到来時)で自動起動される。あるいは、温冷感指標に対する閾値を予め設定しておき、制御パターン決定処理にて算出された温冷感指標が当該閾値を超えた場合に、調整手段制御処理を自動起動するようにしてもよい。
【0057】
学習処理は、概略的には、調整手段制御処理にて実行された制御結果と、制御パターン決定処理にて目標とした外気温及び温冷感指標との差分を解析することで、制御結果の精度を高めるための所定処理を行なう。この学習処理は、例えば、調整手段制御処理にて温熱環境調整機器11及び排熱機器12の制御が実行される毎に自動起動され、あるいは、当該制御の実行後、定期的(一例として、1時間毎)に自動起動される。
【0058】
〔処理内容−温熱環境情報取得処理〕
最初に、温熱環境情報取得処理について詳細に説明する。この温熱環境情報取得処理のフローチャートを図6に例示する。温熱環境制御装置30の情報取得部37aは、所定時刻の到来を監視し、所定時刻が到来した場合には、各センサ10からの出力信号を取り込み(ステップSB−1)、当該出力信号に応じた温熱情報と、当該温熱情報の取得日時とを、各センサ10のセンサIDに関連付けてセンサ情報としてセンサ情報DB32に格納する(ステップSB−2)。この際、各センサ10のセンサIDの特定は、例えば、温熱環境制御装置30の各入力端子と当該各入力端子に接続された各センサ10との対応関係を予め設定しておくことで行ってもよい。あるいは、温熱環境情報を取得したいセンサ10のセンサIDを含んだ制御信号を、情報取得部37aから各センサ10に出力し、各センサ10は、当該制御信号に含まれるセンサIDが、自己に予め設定されたセンサIDに合致した場合にのみ、出力信号を送信するようにしてもよい。これにて温熱環境情報取得処理が終了する。
【0059】
〔処理内容−制御パターン決定処理〕
次に、制御パターン決定処理について詳細に説明する。この制御パターン決定処理のフローチャートを図7に例示する。最初に、温熱環境制御装置30の制御パターン決定部37bは、計算流体力学によるシミュレーション解析を行うことで、対象街区1における風向を推定すると共に(ステップSC−1)、局所的な高温領域を推定する(ステップSC−2)。
【0060】
風向の推定方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、制御パターン決定部37bは、過去所定時間以内に取得されたセンサ情報(一例として、過去24時間以内において1時間毎に取得された情報)をセンサ情報DB32から読み出し、このセンサ情報に含まれる風向と、気象情報サーバから出力された過去所定時間以内の気象情報に含まれる風向データとに基づいて、風向を推定する。ここで、風向を推定する際の時間レンジに関しては、例えば、「季節」、「日」、「時間」の3つを挙げることができる。すなわち、「季節」を時間レンジとして「季節卓越風」の風向を推定することができ、「日」を時間レンジとして「日卓越風」の風向を推定することができ、「時」を時間レンジとして「時卓越風」の風向を推定することができる。季節卓越風の風向は、比較的安定しているため、「夏季の日中は南から北が風向になる」等のデータを予め温熱環境制御装置30に格納しておき、このデータを用いることができる。日卓越風の風向としては、気象情報サーバから取得した風向データを用いることができる。時卓越風の風向としては、センサ情報DB32から読み出した過去所定時間以内のセンサ情報に含まれる風向を用いることができる。そして、最終的には、これら異なる時間レンジのいずれか任意の一種類の風向を用いてもよく、あるいは、状況に適した一種類の風向を適宜選択して用いてもよい(例えばセンサ情報による風向が安定しない場合には、季節卓越風の風向や時卓越風の風向を用いる等)。
【0061】
局所的な高温領域の推定方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、制御パターン決定部37bは、街区地理情報DB31から対象街区1の地図情報を取得し、この地図情報をメッシュ分割することによって対象街区1を所定サイズの計算用の小区画(以下「計算区画」)に分割し、各計算区画のうちの屋外領域に該当する各計算区画を特定する。また、制御パターン決定部37bは、過去所定時間以内に取得されたセンサ情報をセンサ情報DB32から読み出し、当該センサ情報に含まれる各センサの3次元座標位置を参照することで、先に特定した屋外領域の各計算区画又はその近傍位置における温度、湿度、及び、日射量を特定する。また、制御パターン決定部37bは、BEMS情報DB35からBEMS情報を読み出し、当該BEMS情報に含まれる各排熱機器12の3次元座標位置を参照することで、先に特定した屋外領域の各小計算区画又はその近傍位置における排熱機器12の最大消費エネルギー量を特定する。そして、制御パターン決定部37bは、このように特定した温度、湿度、日射量、及び、最大消費エネルギー量と、気象情報サーバから出力された気象情報に含まれる太陽高度とに基づいて、屋外領域に該当する各計算区画の外気温を算出する。次いで、制御パターン決定部37bは、各計算区画の外気温に基づいて、対象街区1における局所的な高温領域を算定する。ここで「局所的」であるか否かは、例えば、同一気温の領域が所定数以下の小区画に渡るものであることに基づいて判断する。また、高温位置とは、例えば、所定温度以上(一例として、30℃以上)である場合が該当する。
【0062】
次に、制御パターン決定部37bは、推定した風向及び局所的な高温領域と、気象情報サーバから出力された過去所定時間以内の気象情報(例えば風向データ)と、エネルギーデマンド情報DB36から取得した各建物4におけるエネルギーデマンド情報とに基づいて温熱シミュレーションを行い、温熱環境調整機器11及び排熱機器12を制御するための複数の制御パターンを作成する(ステップSC−3)。この制御パターンには、例えば、制御すべき温熱環境調整機器11に関する温熱環境調整機器ID及び制御パラメータ(散水時間、散水量等)と、制御すべき排熱機器12に関する排熱機器ID及び制御パラメータ(運転のON/OFFや運転条件等。ただし、後述するオンデマンド制御においては、制御を行うBEMS20のBEMSIDと、当該BEMS20にて制御される各排熱機器12の消費エネルギー量の合計の許容上限値、あるいは、種別毎の消費エネルギー量の合計の許容上限値)とを含んで構成されている。
【0063】
例えば、制御パターン決定部37bは、温熱機器情報DB34に格納されている各温熱環境調整機器11の性能情報を参照して、当該各温熱環境調整機器11を運転させた場合の冷却効果を算定する。さらに、制御パターン決定部37bは、温熱機器情報DB34に格納されている各温熱環境調整機器11の3次元座標位置を参照して、当該算定した冷却効果が、上記推定した風向において対象街区1の各計算区画に与える温度降下量を算出することで、各温熱環境調整機器11の運転時における各計算区画の温度を算定する。あるいは、制御パターン決定部37bは、BEMS情報DB35に格納されている各排熱機器12の最大消費エネルギー量を参照して、当該排熱機器12の運転を抑制した場合の排熱低下量を算定し、BEMS情報DB35に格納されている各排熱機器12の位置座標を参照して、当該算定した排熱低下量が、上記推定した風向において各計算区画に与える温度降下量を算出することで、各排熱機器12の運転抑制時における各計算区画の温度を算定する。
【0064】
この際、制御パターン決定部37bは、温熱環境調整機器11及び排熱機器12の「必須運転条件」に基づいて、制御パターンを作成する。すなわち、制御パターン決定部37bは、所定の必須運転条件に合致した温熱環境調整機器11及び排熱機器12を必ず運転するように、制御パターンを作成する。例えば、気温が所定閾値(例えば居住高さ(=地上1.5m)において35℃)を越える位置がある場合、当該位置に最も近接する位置の散水装置からは必ず散水を行うものとする。
【0065】
さらに、制御パターン決定部37bは、温熱環境調整機器11及び排熱機器12の「優先運転条件」を考慮する。すなわち、制御パターン決定部37bは、所定の優先運転条件に合致した温熱環境調整機器11及び排熱機器12を、他の温熱環境調整機器11及び排熱機器12よりも優先的に運転するように、制御パターンを作成する。この優先運転条件としては、種々のものが挙げられるが、例えば、現実的に許容される制御対象(温熱環境調整機器11及び排熱機器12)の変化量を考慮した場合に、後述する温冷感指標への影響が大きく、かつ、制御に必要なエネルギーの量が極力小さいもの程、優先順位を高めることで、ヒートアイランドの抑制に要するエネルギー効率を高める。このような優先順位の具体例としては、熱拡散の促進(対象街区1を通り抜ける風によるもの。優先順位1)、蒸発冷却(日射により長時間加熱された壁面や道路2へのミスト散水によるもの。優先順位2)、蒸発冷却(建物4からの排熱にミスト散水を行うもの。優先順位3)、及び、排熱削減(建物4における熱負荷を低減することによるもの。優先順位4)があり、これら優先順位4から優先順位1に至るにつれ、優先順位を高くする。
【0066】
より具体的には、熱拡散の促進(優先順位1)の観点からは、風向を考慮して、熱拡散の促進に寄与し得る温熱環境調整機器11を優先的に使用する。すなわち、制御パターン決定部37bは、先に推定した風向と、温熱機器情報DB34に格納されている各温熱環境調整機器11の座標位置とを参照して、風上位置又はその近傍に位置する温熱環境調整機器11(すなわち、風上側の領域への降温効果(影響量ないし応答係数)の優れた温熱環境調整機器11)を特定して、当該風上位置に位置する温熱環境調整機器11を優先的に使用するように、制御パターンを作成する。この結果、風上位置やその近傍に位置するエネルギー排熱源や日射受熱面に対する散水等が優先的に行われる。また、例えば、風上位置でのプラント排熱を縮小し、風下位置でのプラント排熱を増大させることで補う制御ロジックとする。また、この際、風向や風速による制御パターンを取り入れることもできる。例えば、風向きによって変形するガイドやフィンを利用して、空気の流れを建物4の内部や散水位置に適切に導くことによって、通風による温熱の拡散や、後述する散水による蒸発冷却を促進することができる。あるいは、排熱機器12の排気経路を排気ダンパにて変え、排気を風下位置に向けて行うことで、排熱の拡散を促進することができる。
【0067】
あるいは、蒸発冷却(優先順位2、3)の観点からは、例えば、局所的な高温領域を考慮して、蒸発冷却に寄与し得る温熱環境調整機器11を優先的に使用する。すなわち、制御パターン決定部37bは、先に推定した局所的な高温領域と、温熱機器情報DB34に格納されている各温熱環境調整機器11の座標位置とを参照して、局所的な高温領域又はその近傍に位置する温熱環境調整機器11(局所的な高温領域への降温効果(影響量ないし応答係数)の優れた温熱環境調整機器11)を特定して、当該局所的な高温領域又はその近傍に位置する温熱環境調整機器11を優先的に使用するように、制御パターンを作成する。この結果、エネルギー排熱源や日射受熱面に対する散水等を優先的に行い、高温位置の熱を重点的に除去できる。
【0068】
さらに、排熱削減(優先順位4)の観点からは、各建物4のデマンドコントロールを取り入れることもできる。例えば、各建物4の内部において、空冷装置を水冷装置に切り換えたり、ガス熱源を電気熱源に切り換えたり、デマンドコントロールによる省エネルギー化を図ったり、風上位置の排熱機器12からの排熱量を小さくすると共に、風下位置の排熱機器12からの排熱量を大きくすることが考えられる。この他、温熱環境調整機器11から放出されるミストや冷気を、発熱機器の近傍や気流の澱み領域に導くように、制流機構を制御するようにしてもよい。
【0069】
この他にも制御パターンの決定に考慮すべき種々の条件を設定することができ、例えば、エネルギー資源の有効活用を条件とすることもできる。この場合、各建物4での雨水や湧水、あるいは、ドレン水のオーバーブロー分を回収して、当該回収された水を道路2や公園に散水装置にて散水する。このことにより、湧水や地下水を対象街区1で有効活用できる。
【0070】
また、制御パターン決定部37bは、制御パターンの決定に際して、対象街区1における一部の地域の環境が他の地域に伝播するまでに要する時間(時間遅れ、時定数)を考慮して、制御パターンを決定する。例えば、現時点ではなく将来の所定時点(以下「対象時点」。一例として、一時間後)の建物4からの排熱量を想定し、対象時点のヒートアイランドを最も効率よく緩和できるように、現時点の温熱環境調整機器11や排熱機器12の制御内容を決定する。このように時間遅れを考慮する方法としては、例えば、過去から現時点に至るまでのセンサ情報及び気象情報に基づいて、現時点から対象時点に至るまでの各計算区画の温度変化や対象街区1の風向変化等をシミュレーションにて推定し、当該推定した変化の下において、温熱環境調整機器11や排熱機器12の制御が与える影響を推定する。
【0071】
次いで、制御パターン決定部37bは、このように作成した複数の制御パターンのうち、目標とする外気温と温冷感指標との両方を満足する制御パターンを選定する(ステップSC−4)。外気温に関しては、例えば、街区の全ての計算区画の気温、全ての計算区画の気温の平均値、あるいは、特定の計算区画の気温が、所定の閾値以下になることを目標とする。このため、制御パターン決定部37bは、作成した複数の制御パターンによってそれぞれ制御を行った際における各計算区画の気温を算出し、この気温に基づいて、目標とする外気温を満足するか否かを判定する。また、温冷感指標に関しては、例えば、街区の全ての計算区画の温冷感指標、全ての計算区画の温冷感指標の平均値、あるいは、特定の計算区画の温冷感指標が、所定の閾値以下になることを目標とする。
【0072】
ここで、温冷感指標としては、例えば、SET*(STANDARD EFFECTIVE TEMPERATURE)やPMV(PREDICTED MEAN VOTE)による温冷感指標を用いることができる。このため、制御パターン決定部37bは、作成した複数の制御パターンによってそれぞれ制御を行った際における各計算区画の温冷感指標を算出し、この気温に基づいて、目標とする温冷感指標を満足するか否かを判定する。この温冷感指標の算出において、制御パターン決定部37bは、必要に応じて、センサ情報DB32から温熱情報(温度、湿度、風速、風向、日射量等)を取得し、この温熱情報を用いて温冷感指標の算定を行う。あるいは着衣量や活動量のように温熱情報に含まれていない情報が必要な場合には、予め設定されたデフォルト値を用いたり、本システムの管理者によって公知の手段を介して入力された値を用いることができる。また、温冷感指標は、主に歩行者が滞在し得る空間を対象として算定してもよい。例えば、対象街区1のうち、歩道上の所定高さの領域のみを対象領域として予め設定しておき、この対象領域のみについて温冷感指標を算定してもよい。
【0073】
その後、制御パターン決定部37bは、目標とする外気温と温冷感指標との両方を満足する制御パターンのうち、エネルギー量と散水量の対象街区単位での合計値が最も少ない制御パターンを一つのみ選択する(ステップSC−5)。ここで、エネルギー量とは、例えば、温熱環境調整機器11の運転に要するエネルギー量(一例として、散水装置を駆動するための電力量)と、各排熱機器12の運転に要するエネルギー量(一例として、空調機器を運転するための電力量)との合算値である。また、散水量とは、散水装置を含む温熱環境調整機器11によって対象街区1に放出される水の量である。なお、温熱環境調整機器11と各排熱機器12とのエネルギー単位が異なる場合には、二酸化炭素換算値やコスト換算値にて同一単位に一元化することで、最もエネルギー量の少ない制御パターンを決定してもよい。これにて制御パターン決定処理を終了する。
【0074】
〔処理内容−調整手段制御処理〕
次に、調整手段制御処理について詳細に説明する。この調整手段制御処理のフローチャートを図8に例示する。温熱環境制御装置30の機器制御部37cは、制御パターン決定処理にて最終的に選択された制御パターンに基づいて、対象街区1の温熱環境調整機器11及び排熱機器12を制御する。
【0075】
温熱環境調整機器11の制御に関して、機器制御部37cは、例えば、上記の制御パターンに基づいて、対象街区1の温熱環境調整機器11のうち、一部の散水装置に制御信号を出力して当該散水装置にミストを発生させ、あるいは、一部の保水性舗装体に制御信号を出力して当該保水性舗装体に路面保水を行わせる(ステップSD−1)。この時の温熱環境調整機器11の運転量(散水量)や運転時間(散水時間)は、制御パターンの作成時に最適な運転量や運転時間を特定してもよい。あるいは、1時間毎に予測される日射量や排熱量が蒸発潜熱に等しくなる量を撒き、時間当たりの散水量が所定の閾値以下(例えば、1箇所につき10リットル/時間)となった場合に、当該温熱環境調整機器11の運転を停止させる。
【0076】
また、排熱機器12の制御に関して、機器制御部37cは、BEMS20を介した排熱機器12の個別制御と、BEMS20を介したオンデマンド制御とのうち、全ての排熱機器12に対して所定のいずれか一方のみを実行し、あるいは、各BEMS20の仕様や能力に適した方法を各BEMS20毎に適用する。
【0077】
個別制御を行う場合、機器制御部37cは、例えば、上記の制御パターンに基づいて、各BEMS20の制御対象である排熱機器12の各々の運転パラメータ(空調機器の設定温度、照明器具のON/OFF等)を決定し、この運転パラメータに基づく制御を行わせるための制御信号を各BEMS20に出力する(ステップSD−2)。各BEMS20は、自己に出力された運転パラメータに基づいて各排熱機器12を制御する。すなわち、運転パラメータに応じた運転状態になるように、排熱機器12のON/OFFを切り替えたり、インバータ制御を行うことで駆動源の回転数を制御する。この結果、各建物4の排熱機器12からの排熱量が調整され(例えば、空調機器の設定温度が高められ)、ヒートアイランドの緩和が促進される。
【0078】
一方、オンデマンド制御を行う場合、機器制御部37cは、例えば、上記の制御パターンに基づいて、各BEMS20に対して、当該各BEMS20にて制御される各排熱機器12の消費エネルギー量の合計の許容上限値を決定し、この許容上限値に基づく制御を行わせるための制御信号を各BEMS20に出力する(ステップSD−2)。そして、各BEMS20は、自己に出力された許容上限値に基づいて各排熱機器12を制御する。すなわち、各BEMS20のBEMS制御部23は、排熱機器情報DB21の性能情報を参照し、各排熱機器12の消費エネルギー量の合計が、自己に出力された許容上限値以下になるように、各排熱機器12の運転パラメータを決定し、この運転パラメータに応じた運転状態になるように、排熱機器12を制御する。この時、当該BEMS20が制御可能な排熱機器12のうち、実際に制御する排熱機器12の優先順位を予め決めておくことができる。
【0079】
あるいは、オンデマンド制御を行う場合、機器制御部37cは、例えば、上記の制御パターンに基づいて、各BEMS20に対して、当該各BEMS20にて制御される各排熱機器12の種別(例えば、空調機器や照明機器)と、各種別毎の消費エネルギー量の合計の許容上限値を出力するようにしてもよい。この場合、各BEMS20は、自己に出力された各種別毎の許容上限値に基づいて、当該種別に合致する各排熱機器12を制御する。すなわち、各BEMS20のBEMS制御部23は、排熱機器情報DB21の種別情報及び性能情報を参照し、各種別毎の排熱機器12の消費エネルギー量の合計が、自己に出力された当該各種別毎の許容上限値以下になるように、各排熱機器12の運転パラメータを決定し、この運転パラメータに応じた運転状態になるように、排熱機器12を制御する。この時、同一の種別に属する排熱機器12のうち、制御する排熱機器12の優先順位を予め決めておくことができる。また、機器制御部37cから許容上限値が指示されていない種別の排熱機器12については、制御対象外であるとして、特段の制御を行わない。このような制御によれば、例えば、ガス機器のみを制御対象にすると共に、電気機器は制御対象から除外する等、種別毎に排熱機器12を制御できる。これにて調整手段制御処理を終了する。
【0080】
〔処理内容−学習処理〕
最後に、学習処理について詳細に説明する。この学習処理のフローチャートを図9に例示する。温熱環境制御装置30の学習処理部37dは、その時点における対象街区1の外気温と温冷感指標とを算定する。この算定は、温熱環境情報取得処理及び制御パターン決定処理で行ったのと同様に行うことができ、先の制御パターン決定処理において目標として用いた外気温及び温冷感指標と同一の位置に対して行う。そして、このように算定した外気温と温冷感指標(以下「実温度」及び「実指標」)と、先の制御パターン決定処理において目標として用いた外気温及び温冷感指標(以下「目標温度」及び「目標指標」)との差分を算定する。そして、この差分を極小(望ましくはゼロ)とするための所定処理を行なう。
【0081】
このような処理としては、例えば、制御パターン決定処理において「実温度」及び「実指標」を算定する際の補正値を設定又は更新する。すなわち、最初の学習処理では、上記算定した差分を補正値として、温熱環境制御装置30の内部に格納しておく。そして、次回の制御パターン決定処理において「実温度」及び「実指標」を算定する際に、当該格納した補正値を加算又は減算にて補正することで、最終的な外気温及び温冷感指標を算定する。また、2回目以降の学習処理では、先に格納した補正値を、当該2回目以降の学習処理で算定した新たな補正値で上書きすることで、補正値を更新する。これにて学習処理が終了する。
【0082】
〔実施の形態の効果〕
このように本実施の形態によれば、センサ10から得られた対象街区1の温熱環境情報に基づいて、温熱環境調整機器11や排熱機器12を制御するので、対象街区1という広域エリアの温熱環境を動的に制御でき、ヒートアイランドの動的な緩和が可能になる。
また、本実施の形態によれば、温冷感指標に基づいて温熱環境調整機器11や排熱機器12を制御するので、対象街区に滞在等する人体の温冷感覚を基準として温熱環境を制御でき、人間にとって快適な温熱状態を形成及び維持することができる。
また、本実施の形態によれば、温冷感指標をCFDにて算出するので、対象街区1という広域エリアにおける温熱環境を定量的に解析することができ、ヒートアイランドの緩和を一層確実に行うことが可能になる。
また、本実施の形態によれば、BEMS20を介して排熱機器12を制御するので、各建物4に導入されている既存のBEMS20の管理機能を活用して排熱機器12を最適運転することができる。
また、本実施の形態によれば、温熱環境制御装置30が個別制御情報に基づいて排熱機器12を個別に制御するので、各排熱機器12からの排熱量を低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、BEMS20の制御負荷を軽減できる。
また、本実施の形態によれば、排熱機器12の消費エネルギー量の合計が許容上限値以下になるように、BEMS20が排熱機器12を制御するので、各建物4における消費エネルギー量を一定値以下に低減することができ、排熱機器12からの排熱量を低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、温熱環境制御装置30の制御負荷を軽減できる。
また、本実施の形態によれば、排熱機器12の種別毎の消費エネルギー量の合計が許容上限値以下になるように、BEMS20が種別毎の排熱機器12を制御するので、排熱機器12からの排熱量を種別毎に低減してヒートアイランドの緩和を行うことが可能になると共に、温熱環境制御装置30の制御負荷を軽減できる。
また、本実施の形態によれば、エネルギー量の合計値及び散水量の合計値が最小になる制御パターンを選択して制御を行うので、ヒートアイランドの緩和を、最も省エネルギーかつ省資源で行うことが可能になる。
また、本実施の形態によれば、風上側の領域への降温効果を有する温熱環境調整機器11を優先的に用いるので、当該温熱環境調整機器11を調整することによる降温効果を風上位置から風下位置に自動的に伝播でき、広域エリアの降温を効率よく行うことができる。
また、本実施の形態によれば、高温領域への降温効果を有する温熱環境調整機器11を優先的に用いるので、高温領域を優先的に降温させることができ、広域エリアの降温を効率よく行うことができる。
また、本実施の形態によれば、学習処理によって補正値の設定や更新を行うことで、目標温度や目標指標に対する実温度や実指標のずれを自動的に学習して解消することができ、ヒートアイランドの緩和を一層確実かつ高効率で行うことが可能になる。
【0083】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び方法は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良できる。以下、このような変形例について説明する。
【0084】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0085】
(構成及び制御について)
また、上記実施の形態で自動的に行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を手動で行っても良く、逆に、手動で行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を公知技術または上述した思想に基づいて自動化しても良い。また、上記実施の形態において示した各構成要素の各機能ブロックは、ハードワイヤードロジックにて構成しても良い。また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、温熱環境制御装置30を、制御パターン決定処理を行なう制御パターン決定装置と、温熱環境調整機器11及びBEMS20の制御を行う機器制御装置とに分割してもよい。あるいは、BEMS20の機能の全部又は一部を、温熱環境制御装置30に持たせてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態においては、BEMS20を介して排熱機器12を制御しているが、温熱環境制御装置30によって全部又は一部の排熱機器12を直接的に制御するようにしてもよく、この場合には、全部又は一部のBEMS20やBEMS情報DB35を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、広域エリアにおける温度や湿度等の温熱環境を制御することに適用され、ヒートアイランドを緩和することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態に係る温熱環境制御システムの構成を機能概念的に示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】BEMSの電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図4】温熱環境制御装置の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】全体処理のフローチャートである。
【図6】温熱環境情報取得処理のフローチャートである。
【図7】制御パターン決定処理のフローチャートである。
【図8】調整手段制御処理のフローチャートである。
【図9】学習処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
1 対象街区
2 道路
3 建物敷地
4 建物
10 センサ
11 温熱環境調整機器
12 排熱機器
20 BEMS
21 排熱機器情報DB
22 エネルギーデマンド情報DB
23 BEMS制御部
30 温熱環境制御装置
31 街区地理情報DB
32 センサ情報DB
33 温冷感情報DB
34 温熱機器情報DB
35 BEMS情報DB
36 エネルギーデマンド情報DB
37 温熱環境制御部
37a 情報取得部
37b 制御パターン決定部
37c 機器制御部
37d 学習処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象街区の温熱環境を制御するための温熱環境制御システムであって、
前記対象街区の温熱環境情報を取得する情報取得手段と、
前記対象街区の温熱環境を調整するための温熱環境調整手段と、
前記対象街区に設置された排熱機器を制御する排熱機器制御手段と、
前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段を制御することにより、前記対象街区の温熱環境を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする温熱環境制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の温冷感指標を算出し、当該温冷感指標に基づいて、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の温熱環境制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記温冷感指標を、前記温熱環境情報に基づいて計算流体力学にて算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の温熱環境制御システム。
【請求項4】
前記排熱機器制御手段は、前記排熱機器を建物単位で集中管理するためのビル・エネルギー・マネジメントシステムであり、
前記制御手段は、前記ビル・エネルギー・マネジメントシステムを介して前記排熱機器を制御すること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の温熱環境制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器を個別に制御するための個別制御情報を出力し、
前記排熱機器制御手段は、前記制御手段から出力された前記個別制御情報に基づいて、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器を個別に制御すること、
を特徴とする請求項4に記載の温熱環境制御システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の消費エネルギー量の合計の許容上限値を出力し、
前記排熱機器制御手段は、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の消費エネルギー量の合計が、前記制御手段から出力された許容上限値以下になるように、当該排熱機器を制御すること、
を特徴とする請求項4に記載の温熱環境制御システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記排熱機器制御手段に対して、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器の種別と各種別毎の消費エネルギー量の合計の許容上限値とを出力し、
前記排熱機器制御手段は、当該排熱機器制御手段が管理する建物の前記排熱機器のうち、前記制御手段から出力された種別に合致する前記排熱機器のみを、当該排熱機器の消費エネルギー量の合計が前記制御手段から出力された許容上限値以下になるように制御すること、
を特徴とする請求項4に記載の温熱環境制御システム。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記排熱機器を制御するための複数の制御パターンのそれぞれについて、当該制御パターンによる制御時に、前記温熱環境調整手段及び前記排熱機器制御手段にて消費される前記対象街区単位でのエネルギー量の合計値と散水量の合計値とを算定し、
前記エネルギー量の合計値及び前記散水量の合計値が最小になる制御パターンを選択して制御を行うこと、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の温熱環境制御システム。
【請求項9】
前記温熱環境調整手段の配置位置を特定するための位置情報を格納する位置情報格納手段を備え、
前記制御手段は、
前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の風向を特定し、
前記特定された風向に基づいて前記位置情報格納手段を参照することにより、風上側の領域への降温効果を有する前記温熱環境調整手段を特定し、当該特定された温熱環境調整手段を他の温熱環境調整手段より優先的に用いること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の温熱環境制御システム。
【請求項10】
前記温熱環境調整手段の配置位置を特定するための位置情報を格納する位置情報格納手段を備え、
前記制御手段は、
前記情報取得手段にて取得された前記温熱環境情報に基づいて、前記対象街区の高温領域を特定し、
前記特定された高温領域に基づいて前記位置情報格納手段を参照することにより、前記高温領域への降温効果を有する前記温熱環境調整手段を特定し、当該特定された温熱環境調整手段を他の温熱環境調整手段より優先的に用いること、
を特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の温熱環境制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−198036(P2008−198036A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34230(P2007−34230)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】