測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相を精度良く特定することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相CS1において、測位端末20において生成したレプリカ測位基礎符号と測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、最大の相関値に対応するサンプリング位相CS1である第1測位位相CP1を特定する第1測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する第1測位位相CP1に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、を有する。
【解決手段】発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相CS1において、測位端末20において生成したレプリカ測位基礎符号と測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、最大の相関値に対応するサンプリング位相CS1である第1測位位相CP1を特定する第1測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する第1測位位相CP1に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信源からの電波を利用する測位装置、測位装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
このGPS受信機は、GPS衛星の軌道等を示す航法メッセージ(概略衛星軌道情報:アルマナック、精密衛星軌道情報:エフェメリス等を含む)に基づいて、GPS衛星からの電波(以後、衛星電波と呼ぶ)に乗せられている擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つであるC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードを受信する。C/Aコードは、測位の基礎となる符号である。
GPS受信機は、そのC/AコードがどのGPS衛星から発信されたものであるかを特定したうえで、例えば、そのC/Aコードの発信時刻と受信時刻に基づいて、GPS衛星とGPS受信機の距離(擬似距離)を算出する。そして、GPS受信機は、3個以上のGPS衛星についての擬似距離と、各GPS衛星の衛星軌道上の位置に基づいて、GPS受信機の位置を測位するようになっている(特開平10−339772号公報等参照)。
GPS衛星からの信号を受信するためには、受信したC/AコードとGPS受信機内部で発生するレプリカC/Aコードの位相を合致させる必要がある。
また、受信しているC/Aコードの位相を特定することで、擬似距離を算出することも行われている。すなわち、C/Aコードは、1.023Mbpsのビット率で、コードの長さは1023チップである。したがってC/Aコードは、1ミリ秒(ms)間に電波が進む距離である約300キロメートル(km)ごとに、並んで走っていると考えることができる。このため、衛星軌道上のGPS衛星の位置と、GPS受信機の概略位置から、GPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつあるかを算出し、C/Aコードの位相を特定すれば、擬似距離を算出することができる。
そして、受信したC/AコードとGPS受信機内部で生成したレプリカC/Aコードの位相を合致させるために、レプリカC/Aコードの位相をずらせながら相関処理が行われている。なお、受信周波数もずらせながら相関処理を行うのであるが、本明細書においては、説明を省略する。
そして、位相を横軸、相関値を縦軸とする座標において、相関値を示すグラフ(以下、「相関値グラフ」という)は理論上、相関値の最大値を頂点とする二等辺三角形を描く。この性質を利用して、中心と考えられる位相(PUNCTUAL)に対して、一定量進んだ位相(EARLY)と遅れた位相(LATE)のレプリカC/Aコードを生成し、EARLY、LATEそれぞれと受信したC/Aコードとの相関をとり、両者の相関値が等しくなるように、レプリカC/Aコードの位相を制御する方法が使用されている。そして、EARLYとLATEの相関値が等しくなるときの、EARLYとLATEの中間の位相が、受信したC/Aコードの位相であると推定される。
ところが、GPS衛星からの信号が、直接波としてだけではなくて、建物等に反射して入射する間接波(以下、「マルチパス」という)としてGPS受信機に到達する場合がある。このとき、相関値の最大値を頂点とする二等辺三角形は崩れ、上述の方法では受信したC/Aコードの位相を正確に推定することができなくなる。
これに対して、EARLYとLATEの位相差を狭めて相関処理を行う技術(ナローコリレータと呼ばれる技術)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−312163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、信号強度が極めて微弱な状態においては、例えば、図12に示すように、相関値を示すグラフは、EARLYとLATEの相関値が等しい位置が複数存在する場合がある。例えば、EARLYを位相Qe1、LATEを位相Qe2とするとそれらの相関値は等しく、それらの中間の位相は位相Qe3である。ところが、位相Qe3は、真の位相Qrとは乖離している。
このように、信号強度が極めて微弱な弱電界下においては、上述のナローコリーレータによっては、受信したC/Aコードの位相を正確に推定することができない場合があるという問題がある。なお、本明細書においては、「信号強度」は「電波強度」と同義で使用する。
【0004】
そこで、本発明は、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相を精度良く特定することができる測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記第1相関値算出手段を有するから、前記基礎単位ごとに、少なくとも3つの前記第1サンプリング位相において、相関値を算出することができる。
そして、前記測位装置は、第1測位位相算出手段を有するから、前記第1測位位相を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記測位位置算出手段を有するから、前記測位位置を算出することができる。
上述のように、弱電界下においては、EARLYとLATEの相関値が等しくなる位相が複数存在する場合があるが、最大の相関値に対応する前記第1測位位相は1つだけである。
これにより、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位
相を精度良く特定することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記測位基礎符号を乗せた電波の電波強度が、予め規定した受信強度範囲内か否かを判断する受信強度範囲内外判断手段と、前記受信強度範囲内外判断手段の判断結果に基づいて、前記基礎単位によって規定される位相範囲を前記第1分割位相幅よりも狭い第2分割位相幅で等分した第2分割位相幅ごとの位相である第2サンプリング位相ごとに、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第2相関値算出手段と、最大の前記相関値に対応する前記レプリカ測位基礎符号の位相である第2測位位相を特定する第2測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する前記第2測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第2測位位置算出手段と、を有することを特徴とする測位装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記第2相関値算出手段を有するから、前記第2サンプリング位相ごとに、前記レプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記第2測位位相特定手段を有するから、前記第2測位位相を特定することができる。
このため、前記第2測位位相は、前記第1測位位相よりも、一層真の位相に近い。
これにより、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相をより精度良く特定することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記発信源は測位衛星であって、前記測位基礎符号はC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードであって、前記基礎単位は前記C/Aコードを構成するチップ(chip)であることを特徴とする測位装置である。
【0010】
前記目的は、第4の発明の構成によれば、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0011】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0012】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dから、電波S1,S2,S3及びS4を受信することができる。GPS衛星12a等は、発信源の一例でもある。
電波S1等には各種のコード(符号)が乗せられている。そのうちの一つがC/AコードScaである。このC/AコードScaは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/AコードScaは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、現在位置を測位する測位装置の一例であり、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。このC/AコードScaは、測位基礎符号の一例である。チップは、基礎単位の一例である。
【0015】
また、電波S1等に乗せられる情報として、アルマナックSal及びエフェメリスSehがある。アルマナックSalはすべてのGPS衛星12a等の概略の衛星軌道を示ス情報であり、エフェメリスSehは各GPS衛星12a等の精密な衛星軌道を示す情報である。アルマナックSal及びエフェメリスSehを総称して航法メッセージと呼ぶ。
【0016】
端末20は、例えば、3個以上の異なるGPS衛星12a等からのC/Aコードを受信して、現在位置を測位することができるようになっている。
端末20は、まず、受信したC/AコードがどのGPS衛星に対応するものかを特定する。次に、C/Aコードの位相を特定することによって、各GPS衛星12a等と端末20との距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を算出する。続いて、現在時刻における各GPS衛星12a等の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離に基づいて、現在位置の測位演算を行うことができるように構成されている。
端末20は、上述のC/Aコードの位相を特定するために、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理を行う。
なお、本実施の形態とは異なり、端末20は、例えば、携帯電話の通信基地局からの電波を使用して測位を行うようにしてもよい。また、本実施の形態とは異なり、端末20は、LAN(Local Area Network)から電波を受信して、測位を行うようにしてもよい。
【0017】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は、端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、コンピュータを有し、コンピュータは、バス22を有する。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。記憶装置26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
また、バス22には、入力装置28、電源装置30、GPS装置32、表示装置34、通信装置36及び時計38が接続されている。
【0018】
(GPS装置32の構成について)
図3は、GPS装置32の構成を示す概略図である。
図3に示すように、GPS装置32は、RF部32aとベースバンド部32bで構成される。
RF部32aは、アンテナ33aで電波S1等を受信する。そして、増幅器であるLNA33bが、電波S1に乗せられているC/Aコード等の信号を増幅する。そして、ミキサー33cが、信号の周波数をダウンコンバートする。そして、直交(IQ)検波器33dが信号をIQ分離する。続いて、A/Dコンバータ33e1及び33e2が、IQ分離された信号をそれぞれデジタル信号に変換するように構成されている。
ベースバンド部32bは、RF部32aからデジタル信号に変換された信号を受信し、信号の各チップ(図示せず)をサンプリングして積算し、ベースバンド部32bが保持しているC/Aコードとの相関をとるように構成されている。ベースバンド部32bは、例えば、128個の相関器(図示せず)及び積算器(図示せず)を有し、同時に128の位相において、相関処理を行うことができるようになっている。相関器は後述のコヒーレント処理を行うための構成である。積算器は後述のインコヒーレント処理を行うための構成である。
【0019】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図4は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図4に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図2のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有している。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0020】
図4に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを含む。
端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、測位のために使用する。
【0021】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム112を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、初期位置情報156に示される初期位置Q0を基準として、観測可能なGPS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。初期位置Q0は、例えば、前回の測位位置である。
制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等を示す観測可能衛星情報154を第2記憶部150に格納する。
【0022】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、推定周波数算出プログラム114を格納している。推定周波数算出プログラム114は、制御部100が、GPS衛星12a等からの電波S1等の受信周波数を推定するためのプログラムである。
【0023】
図5は、推定周波数算出プログラム114の説明図である。
図5に示すように、制御部100は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移H2を加えて、推定周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数Hは既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移H2は、各GPS衛星12a等と端末20との相対移動によって生じる。制御部100は、エフェメリス152bによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、ドップラー偏移H2を算出する。
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、推定周波数Aを算出する。
なお、推定周波数Aには、端末20のクロック(基準発振器:図示せず)のドリフト分の誤差を含む。ドリフトとは、温度変化による発振周波数の変化である。
このため、制御部100は、推定周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において電波S1等をサーチする。例えば、(A−100)Hzの周波数から(A+100)Hzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数で電波S1等をサーチする。
【0024】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、多分割サーチプログラム116を格納している。多分割サーチプログラム116は、制御部100が、チップによって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅において、GPS衛星12a等から受信したC/Aコードと端末20が生成したレプリカC/Aコードとの相関処理を行って、相関値を算出するためのプログラムである。多分割サーチプログラム116と制御部100は、第1相関値算出手段の一例である。レプリカC/Aコードは、レプリカ測位基礎符号の一例である。
【0025】
図6は、多分割サーチプログラム116の説明図である。
図6(a)に示すように、制御部100はベースバンド部32bによって、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(第1位相幅W1)間隔で相関処理を行う。第1位相幅W1は、第1分割位相幅の一例である。そして、制御部100が相関処理を行うときの第1位相幅W1間隔の位相を第1サンプリング位相SC1と呼ぶ。第1サンプリング位相SC1は、第1サンプリング位相の一例である。
第1位相幅W1は、信号強度が−155dBm以上である場合に、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。32分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm以上であれば弱電界であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
図6(b)に示すように、ベースバンド部32bからは、2チップ分の位相C1乃至C64に対応する相関値Pが出力される。各位相C1乃至C64が、第1サンプリング位相SC1である。
制御部100は多分割サーチプログラム116に基づいて、例えば、C/Aコードの第1チップから第1023チップまでをサーチする。
【0026】
相関処理は、コヒーレントと、インコヒーレントから構成される。
コヒーレントは、ベースバンド部32bが、受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。
例えば、コヒーレント時間が20msecであれば、20msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、インコヒーレント値を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力された位相と、インコヒーレント値が出力される。相関値Pはインコヒーレント値である。
制御部100は、相関処理を行った位相C1乃至C64及び相関値Pを示す相関情報160を第2記憶部150に格納する。
【0027】
端末20は、第1記憶部110に、第1測位位相特定プログラム118を格納している。第1測位位相特定プログラム118は、制御部100が、最大の相関値Pmaxに対応する位相である第1測位位相CP1を特定するためのプログラムである。第1位相CP1は第1測位位相の一例である。第1測位位相特定プログラム118と制御部100は、第1測位位相特定手段の一例である。
【0028】
図7は、第1測位位相特定プログラム118の一例である。
相関情報160は、図7に示すグラフ(以下、「相関値グラフ」と呼ぶ。)で表現することができる。
図7に示すように、制御部100は、相関情報160を参照して、相関値Pmaxに対応する第1測位位相CP1を特定する。
制御部100は、第1測位位相CP1を示す第1測位位相情報162を第2記憶部150に格納する。
【0029】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、信号強度評価プログラム120を格納している。信号強度評価プログラム120は、制御部100が、C/Aコードを乗せた電波S1等の信号強度(電波強度)が、−155dBm以上か否かを判断するためのプログラムである。−155dBm以上の範囲は、予め規定した受信強度範囲内の一例である。信号強度評価プログラム120と制御部100は、受信強度範囲内外判断手段の一例である。
具体的には、制御部100は、相関最大値Pmaxからアンテナ33a(図3参照)に入力する信号強度を算出する。相関最大値Pmaxと信号強度の関係は、既知であるから、制御部100は、相関最大値Pmaxからアンテナ33aに入力する信号強度を算出できる。
【0030】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1トラッキングプログラム122を格納している。第1トラッキングプログラム122は、制御部100が上述の信号強度評価プログラム120によって、電波強度が−155dBm以上であると判断した場合に、継続的に第1測位位相CP1を算出するためのプログラムである。
【0031】
図8は、第1トラッキングプログラム124の説明図である。
図8(a)に示すように、制御部100は第1トラッキングプログラム122に基づいて、サーチ開始の位相を除いて、上述の多分割サーチプログラム116に基づく制御と同様の制御を行う。ただし、第1トラッキングプログラム122による基づく制御をする場合には、既に第1測位位相CP1は算出されているから、初めから、その第1測位位相CP1を中心に、サーチを行う。
続いて、図8(b)に示すように、制御部100は第1トラッキングプログラム122に基づいて、上述の第1測位位相特定プログラム118に基づく制御と同様に第1測位位相CP1を特定する。
制御部100は、既に算出している第1測位位相CP1を中心に、±256チップの範囲をサーチする。
また、周波数については、推定周波数Aを中心に、±1.0kHzの範囲を100Hz単位でサーチする。
第1トラッキングプログラム124によるトラッキングの条件を、第1トラッキング条件と呼ぶ。
【0032】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1測位プログラム124を格納している。第1測位プログラム124は、制御部100が、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP1に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q1を算出するためのプログラムである。第1測位プログラム124と制御部100は、第1測位位置算出手段の一例である。
【0033】
図9は、C/Aコード等を示す概念図である。
図9に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、n個のC/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さの整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、この擬似距離を使用して測位を行う。
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリス152bを使用して算出可能である。そして、GPS衛星12aの軌道上の位置と初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。
そして、図9に示すように、レプリカC/Aコードの位相を例えば、矢印X1方向に移動させながら、相関処理を行を行う。
相関値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。そして、このコード端数C/Aaが、第1測位位相CP3である。
【0034】
制御部100は、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP3に基づいて、各GPS衛星12a等と端末20との擬似距離を算出する。そして、各GPS衛星12a等の軌道上の位置はエフェリス152bによって算出する。そして、3個以上のGPS衛星12a等の軌道上の位置と、擬似距離に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q1を算出する。
制御部100は、測位位置Q1を示す第1測位位置情報164を第2記憶部150に格納する。
【0035】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム126を格納している。測位位置出力プログラム126は、制御部100が、第1測位位置Q1又は後述の第2測位位置Q2を表示装置34に表示するためのプログラムである。
【0036】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2トラッキングプログラム128を格納している。第2トラッキングプログラム128は、制御部100が上述の信号強度評価プログラム120によって、電波強度が−155dBm以上ではないと判断した場合に、継続的に第2測位位相CP2を算出するためのプログラムである。
第2トラッキングプログラム128に基づく端末20の動作は、サーチする位相の幅を除いて、上述の第1トラッキングプログラム122に基づく端末20の動作と同様である。
【0037】
図10は、第2トラッキングプログラム128の説明図である。
図10(a)に示すように、ベースバンド部32b(図3参照)は、2チップの位相範囲を128に等分した位相幅(第2位相幅W2)ごとの位相(第2サンプリング位相SC2)で相関処理を行う。これは、1チップを64に等分していることを意味する。この第2位相幅W2は、上述の第1位相幅W1よりも狭い。第2位相幅W2は第2分割位幅の一例である。そして、第2サンプリング位相SC2は、第2サンプリング位相の一例である。
第2位相幅W2は、信号強度が−155dBm未満であっても、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。64分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm未満であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
制御部100は、既に算出している第1位相CP3を中心に、±128チップの範囲をサーチする。このコードフェーズのサーチ幅は、上述の第1トラッキング条件よりも狭い。これにより、より精度よく後述の第2測位位相CP2を特定することができる。
また、周波数については、前回測位時の受信周波数を中心に、±0.5kHzの範囲を50Hz単位でサーチする。この周波数のサーチ幅は、上述の第1トラッキング条件よりも狭い。これによっても、より精度よく後述の第2測位位相CP2を算出することができる。
第2トラッキングプログラム128によるトラッキングの条件を、第2トラッキング条件と呼ぶ。
制御部100は、第2測位位相CP1を示す第2測位位相情報166を第2記憶部150に格納する。
【0038】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2測位プログラム130を格納している。第2測位プログラム130は、制御部100が、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第2測位位相CP2に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q2を算出するためのプログラムである。第2測位プログラム130と制御部100は、第2測位位置算出手段の一例である。
【0039】
制御部100は、第2測位位相CP2に基づいて、各GPS衛星12a等と端末20との擬似距離を算出する。そして、各GPS衛星12a等の軌道上の位置はエフェメリス152bによって算出する。そして、3個以上のGPS衛星12a等の軌道上の位置と、擬似距離に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q2を算出する。
制御部100は、測位位置Q2を示す第2測位位置情報168を第2記憶部150に格納する。
【0040】
測位位置Q2は、制御部100が上述の測位位置出力プログラム126によって、表示装置34(図2参照)に出力される。
【0041】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、各チップごとに、少なくとも3つの第1サンプリング位相CS1において、相関値を算出することができる。
そして、端末20は、第1測位位相CP1を特定することができる。
そして、端末20は、信号強度が−155dBm以上である場合には、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP1を使用して、測位位置Q1を算出することができる。
上述のように、弱電界下においては、EARLYとLATEの相関値が等しくなる位相が複数存在する場合があるが、最大の相関値に対応する第1測位位相CP1は1つだけである。
これにより、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相を精度良く特定することができる。
【0042】
さらに、端末20は、信号強度が−155dBm未満である場合には、第2サンプリング位相CS2ごとに、レプリカC/Aコードと受信したC/Aコードとの相関処理を行って相関値Pを算出することができる。
そして、端末20は、第2測位位相CP2を算出することができる。
このため、第2測位位相CP2は、第1測位位相CP1よりも、一層真の位相に近い。
これにより、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信したC/Aコードの位相の位相を一層精度良く特定することができる。
【0043】
以上が本実施の形態に係る端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図11を使用して説明する。
図11は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0044】
まず、端末20は、エフェメリス152bと初期位置Q0(図4参照)から、各GPS衛星12a等の推定周波数A(図4参照)を算出する(図11のステップST1)。
続いて、端末20は、多分割サーチを行う(ステップST2)。このステップST2は、第1相関値算出ステップの一例である。
【0045】
続いて、端末20は、相関最大値Pmaxに対応する第1測位位相CP1(図4参照)を特定する(ステップST3)。このステップST3は、第1測位位相特定ステップの一例である。
【0046】
続いて、端末20は、信号強度が−155dBm以上か否かを判断する(ステップST4)。
端末20は、ステップST4において、信号強度が−155dBm以上であると判断した場合には、第1トラッキング条件でトラッキングを行い、第1測位位相CP1を算出する(ステップST5)。
続いて、端末20は、第1測位位相CP1を使用して現在位置を測位し、測位位置Q1を算出する(ステップST6)。このステップST6は、測位位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位位置Q1を出力する(ステップST7)。
【0047】
上述のステップST4において、端末20が、信号強度が−155dBm以上ではないと判断した場合には、第2トラッキング条件でトラッキングを行い、第2測位位相CP2を算出する(ステップST5A)。
続いて、端末20は、第2測位位相CP2を使用して現在位置を測位し、測位位置Q2を算出する(ステップST6A)。
続いて、端末20は、測位位置Q2を出力する(ステップST7A)。
【0048】
上述のステップによって、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信したC/Aコードの位相を精度良く特定することができる。
【0049】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】GPS装置の構成を示す概略図である。
【図4】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図5】推定周波数算出プログラムの説明図である。
【図6】多分割サーチプログラムの説明図である。
【図7】第1測位位相特定プログラムの説明図である。
【図8】第1トラッキングプログラムの説明図である。
【図9】C/Aコード等を示す概念図である。
【図10】第2トラッキングプログラムの説明図である。
【図11】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図12】従来例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、32・・・GPS装置、112・・・観測可能衛星算出プログラム、114・・・推定周波数算出プログラム、116・・・多分割サーチプログラム、118・・・第1測位位相特定プログラム、120・・・信号強度評価プログラム、122・・・第1トラッキングプログラム、124・・・第1測位プログラム、126・・・測位位置出力プログラム、128・・・第2トラッキングプログラム、130・・・第2測位プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信源からの電波を利用する測位装置、測位装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
このGPS受信機は、GPS衛星の軌道等を示す航法メッセージ(概略衛星軌道情報:アルマナック、精密衛星軌道情報:エフェメリス等を含む)に基づいて、GPS衛星からの電波(以後、衛星電波と呼ぶ)に乗せられている擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つであるC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードを受信する。C/Aコードは、測位の基礎となる符号である。
GPS受信機は、そのC/AコードがどのGPS衛星から発信されたものであるかを特定したうえで、例えば、そのC/Aコードの発信時刻と受信時刻に基づいて、GPS衛星とGPS受信機の距離(擬似距離)を算出する。そして、GPS受信機は、3個以上のGPS衛星についての擬似距離と、各GPS衛星の衛星軌道上の位置に基づいて、GPS受信機の位置を測位するようになっている(特開平10−339772号公報等参照)。
GPS衛星からの信号を受信するためには、受信したC/AコードとGPS受信機内部で発生するレプリカC/Aコードの位相を合致させる必要がある。
また、受信しているC/Aコードの位相を特定することで、擬似距離を算出することも行われている。すなわち、C/Aコードは、1.023Mbpsのビット率で、コードの長さは1023チップである。したがってC/Aコードは、1ミリ秒(ms)間に電波が進む距離である約300キロメートル(km)ごとに、並んで走っていると考えることができる。このため、衛星軌道上のGPS衛星の位置と、GPS受信機の概略位置から、GPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつあるかを算出し、C/Aコードの位相を特定すれば、擬似距離を算出することができる。
そして、受信したC/AコードとGPS受信機内部で生成したレプリカC/Aコードの位相を合致させるために、レプリカC/Aコードの位相をずらせながら相関処理が行われている。なお、受信周波数もずらせながら相関処理を行うのであるが、本明細書においては、説明を省略する。
そして、位相を横軸、相関値を縦軸とする座標において、相関値を示すグラフ(以下、「相関値グラフ」という)は理論上、相関値の最大値を頂点とする二等辺三角形を描く。この性質を利用して、中心と考えられる位相(PUNCTUAL)に対して、一定量進んだ位相(EARLY)と遅れた位相(LATE)のレプリカC/Aコードを生成し、EARLY、LATEそれぞれと受信したC/Aコードとの相関をとり、両者の相関値が等しくなるように、レプリカC/Aコードの位相を制御する方法が使用されている。そして、EARLYとLATEの相関値が等しくなるときの、EARLYとLATEの中間の位相が、受信したC/Aコードの位相であると推定される。
ところが、GPS衛星からの信号が、直接波としてだけではなくて、建物等に反射して入射する間接波(以下、「マルチパス」という)としてGPS受信機に到達する場合がある。このとき、相関値の最大値を頂点とする二等辺三角形は崩れ、上述の方法では受信したC/Aコードの位相を正確に推定することができなくなる。
これに対して、EARLYとLATEの位相差を狭めて相関処理を行う技術(ナローコリレータと呼ばれる技術)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−312163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、信号強度が極めて微弱な状態においては、例えば、図12に示すように、相関値を示すグラフは、EARLYとLATEの相関値が等しい位置が複数存在する場合がある。例えば、EARLYを位相Qe1、LATEを位相Qe2とするとそれらの相関値は等しく、それらの中間の位相は位相Qe3である。ところが、位相Qe3は、真の位相Qrとは乖離している。
このように、信号強度が極めて微弱な弱電界下においては、上述のナローコリーレータによっては、受信したC/Aコードの位相を正確に推定することができない場合があるという問題がある。なお、本明細書においては、「信号強度」は「電波強度」と同義で使用する。
【0004】
そこで、本発明は、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相を精度良く特定することができる測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記第1相関値算出手段を有するから、前記基礎単位ごとに、少なくとも3つの前記第1サンプリング位相において、相関値を算出することができる。
そして、前記測位装置は、第1測位位相算出手段を有するから、前記第1測位位相を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記測位位置算出手段を有するから、前記測位位置を算出することができる。
上述のように、弱電界下においては、EARLYとLATEの相関値が等しくなる位相が複数存在する場合があるが、最大の相関値に対応する前記第1測位位相は1つだけである。
これにより、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位
相を精度良く特定することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記測位基礎符号を乗せた電波の電波強度が、予め規定した受信強度範囲内か否かを判断する受信強度範囲内外判断手段と、前記受信強度範囲内外判断手段の判断結果に基づいて、前記基礎単位によって規定される位相範囲を前記第1分割位相幅よりも狭い第2分割位相幅で等分した第2分割位相幅ごとの位相である第2サンプリング位相ごとに、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第2相関値算出手段と、最大の前記相関値に対応する前記レプリカ測位基礎符号の位相である第2測位位相を特定する第2測位位相特定手段と、3個以上の前記発信源に対応する前記第2測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第2測位位置算出手段と、を有することを特徴とする測位装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記第2相関値算出手段を有するから、前記第2サンプリング位相ごとに、前記レプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記第2測位位相特定手段を有するから、前記第2測位位相を特定することができる。
このため、前記第2測位位相は、前記第1測位位相よりも、一層真の位相に近い。
これにより、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相をより精度良く特定することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記発信源は測位衛星であって、前記測位基礎符号はC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードであって、前記基礎単位は前記C/Aコードを構成するチップ(chip)であることを特徴とする測位装置である。
【0010】
前記目的は、第4の発明の構成によれば、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0011】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0012】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dから、電波S1,S2,S3及びS4を受信することができる。GPS衛星12a等は、発信源の一例でもある。
電波S1等には各種のコード(符号)が乗せられている。そのうちの一つがC/AコードScaである。このC/AコードScaは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/AコードScaは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、現在位置を測位する測位装置の一例であり、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。このC/AコードScaは、測位基礎符号の一例である。チップは、基礎単位の一例である。
【0015】
また、電波S1等に乗せられる情報として、アルマナックSal及びエフェメリスSehがある。アルマナックSalはすべてのGPS衛星12a等の概略の衛星軌道を示ス情報であり、エフェメリスSehは各GPS衛星12a等の精密な衛星軌道を示す情報である。アルマナックSal及びエフェメリスSehを総称して航法メッセージと呼ぶ。
【0016】
端末20は、例えば、3個以上の異なるGPS衛星12a等からのC/Aコードを受信して、現在位置を測位することができるようになっている。
端末20は、まず、受信したC/AコードがどのGPS衛星に対応するものかを特定する。次に、C/Aコードの位相を特定することによって、各GPS衛星12a等と端末20との距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を算出する。続いて、現在時刻における各GPS衛星12a等の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離に基づいて、現在位置の測位演算を行うことができるように構成されている。
端末20は、上述のC/Aコードの位相を特定するために、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理を行う。
なお、本実施の形態とは異なり、端末20は、例えば、携帯電話の通信基地局からの電波を使用して測位を行うようにしてもよい。また、本実施の形態とは異なり、端末20は、LAN(Local Area Network)から電波を受信して、測位を行うようにしてもよい。
【0017】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は、端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、コンピュータを有し、コンピュータは、バス22を有する。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。記憶装置26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
また、バス22には、入力装置28、電源装置30、GPS装置32、表示装置34、通信装置36及び時計38が接続されている。
【0018】
(GPS装置32の構成について)
図3は、GPS装置32の構成を示す概略図である。
図3に示すように、GPS装置32は、RF部32aとベースバンド部32bで構成される。
RF部32aは、アンテナ33aで電波S1等を受信する。そして、増幅器であるLNA33bが、電波S1に乗せられているC/Aコード等の信号を増幅する。そして、ミキサー33cが、信号の周波数をダウンコンバートする。そして、直交(IQ)検波器33dが信号をIQ分離する。続いて、A/Dコンバータ33e1及び33e2が、IQ分離された信号をそれぞれデジタル信号に変換するように構成されている。
ベースバンド部32bは、RF部32aからデジタル信号に変換された信号を受信し、信号の各チップ(図示せず)をサンプリングして積算し、ベースバンド部32bが保持しているC/Aコードとの相関をとるように構成されている。ベースバンド部32bは、例えば、128個の相関器(図示せず)及び積算器(図示せず)を有し、同時に128の位相において、相関処理を行うことができるようになっている。相関器は後述のコヒーレント処理を行うための構成である。積算器は後述のインコヒーレント処理を行うための構成である。
【0019】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図4は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図4に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図2のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有している。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0020】
図4に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを含む。
端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、測位のために使用する。
【0021】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム112を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、初期位置情報156に示される初期位置Q0を基準として、観測可能なGPS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。初期位置Q0は、例えば、前回の測位位置である。
制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等を示す観測可能衛星情報154を第2記憶部150に格納する。
【0022】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、推定周波数算出プログラム114を格納している。推定周波数算出プログラム114は、制御部100が、GPS衛星12a等からの電波S1等の受信周波数を推定するためのプログラムである。
【0023】
図5は、推定周波数算出プログラム114の説明図である。
図5に示すように、制御部100は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移H2を加えて、推定周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数Hは既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移H2は、各GPS衛星12a等と端末20との相対移動によって生じる。制御部100は、エフェメリス152bによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、ドップラー偏移H2を算出する。
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、推定周波数Aを算出する。
なお、推定周波数Aには、端末20のクロック(基準発振器:図示せず)のドリフト分の誤差を含む。ドリフトとは、温度変化による発振周波数の変化である。
このため、制御部100は、推定周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において電波S1等をサーチする。例えば、(A−100)Hzの周波数から(A+100)Hzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数で電波S1等をサーチする。
【0024】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、多分割サーチプログラム116を格納している。多分割サーチプログラム116は、制御部100が、チップによって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅において、GPS衛星12a等から受信したC/Aコードと端末20が生成したレプリカC/Aコードとの相関処理を行って、相関値を算出するためのプログラムである。多分割サーチプログラム116と制御部100は、第1相関値算出手段の一例である。レプリカC/Aコードは、レプリカ測位基礎符号の一例である。
【0025】
図6は、多分割サーチプログラム116の説明図である。
図6(a)に示すように、制御部100はベースバンド部32bによって、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(第1位相幅W1)間隔で相関処理を行う。第1位相幅W1は、第1分割位相幅の一例である。そして、制御部100が相関処理を行うときの第1位相幅W1間隔の位相を第1サンプリング位相SC1と呼ぶ。第1サンプリング位相SC1は、第1サンプリング位相の一例である。
第1位相幅W1は、信号強度が−155dBm以上である場合に、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。32分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm以上であれば弱電界であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
図6(b)に示すように、ベースバンド部32bからは、2チップ分の位相C1乃至C64に対応する相関値Pが出力される。各位相C1乃至C64が、第1サンプリング位相SC1である。
制御部100は多分割サーチプログラム116に基づいて、例えば、C/Aコードの第1チップから第1023チップまでをサーチする。
【0026】
相関処理は、コヒーレントと、インコヒーレントから構成される。
コヒーレントは、ベースバンド部32bが、受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。
例えば、コヒーレント時間が20msecであれば、20msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、インコヒーレント値を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力された位相と、インコヒーレント値が出力される。相関値Pはインコヒーレント値である。
制御部100は、相関処理を行った位相C1乃至C64及び相関値Pを示す相関情報160を第2記憶部150に格納する。
【0027】
端末20は、第1記憶部110に、第1測位位相特定プログラム118を格納している。第1測位位相特定プログラム118は、制御部100が、最大の相関値Pmaxに対応する位相である第1測位位相CP1を特定するためのプログラムである。第1位相CP1は第1測位位相の一例である。第1測位位相特定プログラム118と制御部100は、第1測位位相特定手段の一例である。
【0028】
図7は、第1測位位相特定プログラム118の一例である。
相関情報160は、図7に示すグラフ(以下、「相関値グラフ」と呼ぶ。)で表現することができる。
図7に示すように、制御部100は、相関情報160を参照して、相関値Pmaxに対応する第1測位位相CP1を特定する。
制御部100は、第1測位位相CP1を示す第1測位位相情報162を第2記憶部150に格納する。
【0029】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、信号強度評価プログラム120を格納している。信号強度評価プログラム120は、制御部100が、C/Aコードを乗せた電波S1等の信号強度(電波強度)が、−155dBm以上か否かを判断するためのプログラムである。−155dBm以上の範囲は、予め規定した受信強度範囲内の一例である。信号強度評価プログラム120と制御部100は、受信強度範囲内外判断手段の一例である。
具体的には、制御部100は、相関最大値Pmaxからアンテナ33a(図3参照)に入力する信号強度を算出する。相関最大値Pmaxと信号強度の関係は、既知であるから、制御部100は、相関最大値Pmaxからアンテナ33aに入力する信号強度を算出できる。
【0030】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1トラッキングプログラム122を格納している。第1トラッキングプログラム122は、制御部100が上述の信号強度評価プログラム120によって、電波強度が−155dBm以上であると判断した場合に、継続的に第1測位位相CP1を算出するためのプログラムである。
【0031】
図8は、第1トラッキングプログラム124の説明図である。
図8(a)に示すように、制御部100は第1トラッキングプログラム122に基づいて、サーチ開始の位相を除いて、上述の多分割サーチプログラム116に基づく制御と同様の制御を行う。ただし、第1トラッキングプログラム122による基づく制御をする場合には、既に第1測位位相CP1は算出されているから、初めから、その第1測位位相CP1を中心に、サーチを行う。
続いて、図8(b)に示すように、制御部100は第1トラッキングプログラム122に基づいて、上述の第1測位位相特定プログラム118に基づく制御と同様に第1測位位相CP1を特定する。
制御部100は、既に算出している第1測位位相CP1を中心に、±256チップの範囲をサーチする。
また、周波数については、推定周波数Aを中心に、±1.0kHzの範囲を100Hz単位でサーチする。
第1トラッキングプログラム124によるトラッキングの条件を、第1トラッキング条件と呼ぶ。
【0032】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1測位プログラム124を格納している。第1測位プログラム124は、制御部100が、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP1に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q1を算出するためのプログラムである。第1測位プログラム124と制御部100は、第1測位位置算出手段の一例である。
【0033】
図9は、C/Aコード等を示す概念図である。
図9に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、n個のC/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さの整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、この擬似距離を使用して測位を行う。
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリス152bを使用して算出可能である。そして、GPS衛星12aの軌道上の位置と初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。
そして、図9に示すように、レプリカC/Aコードの位相を例えば、矢印X1方向に移動させながら、相関処理を行を行う。
相関値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。そして、このコード端数C/Aaが、第1測位位相CP3である。
【0034】
制御部100は、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP3に基づいて、各GPS衛星12a等と端末20との擬似距離を算出する。そして、各GPS衛星12a等の軌道上の位置はエフェリス152bによって算出する。そして、3個以上のGPS衛星12a等の軌道上の位置と、擬似距離に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q1を算出する。
制御部100は、測位位置Q1を示す第1測位位置情報164を第2記憶部150に格納する。
【0035】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム126を格納している。測位位置出力プログラム126は、制御部100が、第1測位位置Q1又は後述の第2測位位置Q2を表示装置34に表示するためのプログラムである。
【0036】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2トラッキングプログラム128を格納している。第2トラッキングプログラム128は、制御部100が上述の信号強度評価プログラム120によって、電波強度が−155dBm以上ではないと判断した場合に、継続的に第2測位位相CP2を算出するためのプログラムである。
第2トラッキングプログラム128に基づく端末20の動作は、サーチする位相の幅を除いて、上述の第1トラッキングプログラム122に基づく端末20の動作と同様である。
【0037】
図10は、第2トラッキングプログラム128の説明図である。
図10(a)に示すように、ベースバンド部32b(図3参照)は、2チップの位相範囲を128に等分した位相幅(第2位相幅W2)ごとの位相(第2サンプリング位相SC2)で相関処理を行う。これは、1チップを64に等分していることを意味する。この第2位相幅W2は、上述の第1位相幅W1よりも狭い。第2位相幅W2は第2分割位幅の一例である。そして、第2サンプリング位相SC2は、第2サンプリング位相の一例である。
第2位相幅W2は、信号強度が−155dBm未満であっても、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。64分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm未満であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
制御部100は、既に算出している第1位相CP3を中心に、±128チップの範囲をサーチする。このコードフェーズのサーチ幅は、上述の第1トラッキング条件よりも狭い。これにより、より精度よく後述の第2測位位相CP2を特定することができる。
また、周波数については、前回測位時の受信周波数を中心に、±0.5kHzの範囲を50Hz単位でサーチする。この周波数のサーチ幅は、上述の第1トラッキング条件よりも狭い。これによっても、より精度よく後述の第2測位位相CP2を算出することができる。
第2トラッキングプログラム128によるトラッキングの条件を、第2トラッキング条件と呼ぶ。
制御部100は、第2測位位相CP1を示す第2測位位相情報166を第2記憶部150に格納する。
【0038】
図4に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2測位プログラム130を格納している。第2測位プログラム130は、制御部100が、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第2測位位相CP2に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q2を算出するためのプログラムである。第2測位プログラム130と制御部100は、第2測位位置算出手段の一例である。
【0039】
制御部100は、第2測位位相CP2に基づいて、各GPS衛星12a等と端末20との擬似距離を算出する。そして、各GPS衛星12a等の軌道上の位置はエフェメリス152bによって算出する。そして、3個以上のGPS衛星12a等の軌道上の位置と、擬似距離に基づいて、現在位置を測位して測位位置Q2を算出する。
制御部100は、測位位置Q2を示す第2測位位置情報168を第2記憶部150に格納する。
【0040】
測位位置Q2は、制御部100が上述の測位位置出力プログラム126によって、表示装置34(図2参照)に出力される。
【0041】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、各チップごとに、少なくとも3つの第1サンプリング位相CS1において、相関値を算出することができる。
そして、端末20は、第1測位位相CP1を特定することができる。
そして、端末20は、信号強度が−155dBm以上である場合には、3個以上のGPS衛星12a等に対応する第1測位位相CP1を使用して、測位位置Q1を算出することができる。
上述のように、弱電界下においては、EARLYとLATEの相関値が等しくなる位相が複数存在する場合があるが、最大の相関値に対応する第1測位位相CP1は1つだけである。
これにより、信号強度が極めて微弱な弱電界下においても、受信した測位基礎符号の位相を精度良く特定することができる。
【0042】
さらに、端末20は、信号強度が−155dBm未満である場合には、第2サンプリング位相CS2ごとに、レプリカC/Aコードと受信したC/Aコードとの相関処理を行って相関値Pを算出することができる。
そして、端末20は、第2測位位相CP2を算出することができる。
このため、第2測位位相CP2は、第1測位位相CP1よりも、一層真の位相に近い。
これにより、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信したC/Aコードの位相の位相を一層精度良く特定することができる。
【0043】
以上が本実施の形態に係る端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図11を使用して説明する。
図11は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0044】
まず、端末20は、エフェメリス152bと初期位置Q0(図4参照)から、各GPS衛星12a等の推定周波数A(図4参照)を算出する(図11のステップST1)。
続いて、端末20は、多分割サーチを行う(ステップST2)。このステップST2は、第1相関値算出ステップの一例である。
【0045】
続いて、端末20は、相関最大値Pmaxに対応する第1測位位相CP1(図4参照)を特定する(ステップST3)。このステップST3は、第1測位位相特定ステップの一例である。
【0046】
続いて、端末20は、信号強度が−155dBm以上か否かを判断する(ステップST4)。
端末20は、ステップST4において、信号強度が−155dBm以上であると判断した場合には、第1トラッキング条件でトラッキングを行い、第1測位位相CP1を算出する(ステップST5)。
続いて、端末20は、第1測位位相CP1を使用して現在位置を測位し、測位位置Q1を算出する(ステップST6)。このステップST6は、測位位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位位置Q1を出力する(ステップST7)。
【0047】
上述のステップST4において、端末20が、信号強度が−155dBm以上ではないと判断した場合には、第2トラッキング条件でトラッキングを行い、第2測位位相CP2を算出する(ステップST5A)。
続いて、端末20は、第2測位位相CP2を使用して現在位置を測位し、測位位置Q2を算出する(ステップST6A)。
続いて、端末20は、測位位置Q2を出力する(ステップST7A)。
【0048】
上述のステップによって、信号強度がさらに極めて微弱な弱電界下においても、受信したC/Aコードの位相を精度良く特定することができる。
【0049】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】GPS装置の構成を示す概略図である。
【図4】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図5】推定周波数算出プログラムの説明図である。
【図6】多分割サーチプログラムの説明図である。
【図7】第1測位位相特定プログラムの説明図である。
【図8】第1トラッキングプログラムの説明図である。
【図9】C/Aコード等を示す概念図である。
【図10】第2トラッキングプログラムの説明図である。
【図11】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図12】従来例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、32・・・GPS装置、112・・・観測可能衛星算出プログラム、114・・・推定周波数算出プログラム、116・・・多分割サーチプログラム、118・・・第1測位位相特定プログラム、120・・・信号強度評価プログラム、122・・・第1トラッキングプログラム、124・・・第1測位プログラム、126・・・測位位置出力プログラム、128・・・第2トラッキングプログラム、130・・・第2測位プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、
前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、
最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定手段と、
3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記測位基礎符号を乗せた電波の電波強度が、予め規定した受信強度範囲内か否かを判断する受信強度範囲内外判断手段と、
前記受信強度範囲内外判断手段の判断結果に基づいて、前記基礎単位によって規定される位相範囲を前記第1分割位相幅よりも狭い第2分割位相幅で等分した第2分割位相幅ごとの位相である第2サンプリング位相ごとに、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第2相関値算出手段と、
最大の前記相関値に対応する前記レプリカ測位基礎符号の位相である第2測位位相を特定する第2測位位相特定手段と、
3個以上の前記発信源に対応する前記第2測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第2測位位置算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記発信源は測位衛星であって、
前記測位基礎符号はC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードであって、
前記基礎単位は前記C/Aコードを構成するチップ(chip)であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置であって、
前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出手段と、
最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定手段と、
3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記測位基礎符号を乗せた電波の電波強度が、予め規定した受信強度範囲内か否かを判断する受信強度範囲内外判断手段と、
前記受信強度範囲内外判断手段の判断結果に基づいて、前記基礎単位によって規定される位相範囲を前記第1分割位相幅よりも狭い第2分割位相幅で等分した第2分割位相幅ごとの位相である第2サンプリング位相ごとに、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第2相関値算出手段と、
最大の前記相関値に対応する前記レプリカ測位基礎符号の位相である第2測位位相を特定する第2測位位相特定手段と、
3個以上の前記発信源に対応する前記第2測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第2測位位置算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記発信源は測位衛星であって、
前記測位基礎符号はC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードであって、
前記基礎単位は前記C/Aコードを構成するチップ(chip)であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
発信源から複数の基礎単位で構成される測位基礎符号を受信して、現在位置を測位する測位装置が、前記基礎単位によって規定される位相範囲を等間隔において少なくとも3つに分割した位相幅である第1分割位相幅ごとの位相である第1サンプリング位相において、前記測位端末において生成したレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って相関値を算出する第1相関値算出ステップと、
前記測位装置が、最大の前記相関値に対応する前記サンプリング位相である第1測位位相を特定する第1測位位相特定ステップと、
前記測位装置が、3個以上の前記発信源に対応する前記第1測位位相に基づいて、現在位置を測位して測位位置を算出する第1測位位置算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−256112(P2007−256112A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81534(P2006−81534)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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