測位装置、測位装置の制御方法及びプログラム
【課題】電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】各発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において測位装置20が発生するレプリカ測位基礎符号と測位基礎符号との相関処理を行って測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、現在の位相と予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、各発信源ごとに位相差が最小の位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、選択位相が属する周波数系列における前記位相が、連続して位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段等を有する。
【解決手段】各発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において測位装置20が発生するレプリカ測位基礎符号と測位基礎符号との相関処理を行って測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、現在の位相と予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、各発信源ごとに位相差が最小の位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、選択位相が属する周波数系列における前記位相が、連続して位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段等を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信源からの電波を利用する測位装置、測位装置の制御方法、その制御プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
このGPS受信機は、GPS衛星の軌道等を示す航法メッセージ(概略衛星軌道情報:アルマナック、精密衛星軌道情報:エフェメリス等を含む)に基づいて、GPS衛星からの電波(以後、衛星電波と呼ぶ)に乗せられている擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つであるC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードを受信する。C/Aコードは、測位の基礎となる符号である。
GPS受信機は、そのC/AコードがどのGPS衛星から発信されたものであるかを特定したうえで、例えば、そのC/Aコードの位相(コードフェーズ)に基づいて、GPS衛星とGPS受信機の距離(擬似距離)を算出する。そして、GPS受信機は、3個以上のGPS衛星についての擬似距離と、各GPS衛星の衛星軌道上の位置に基づいて、GPS受信機の位置を測位するようになっている。例えば、C/Aコードは、1.023Mbpsのビット率で、コードの長さは1,023チップである。したがってC/Aコードは、1ミリ秒(ms)間に電波が進む距離である約300キロメートル(km)ごとに、並んで走っていると考えることができる。このため、衛星軌道上のGPS衛星の位置と、GPS受信機の概略位置からGPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつあるかを算出することで、擬似距離を算出することができる。より詳細には、C/Aコードの1周期(1,023チップ)分(C/Aコードの整数部分)を算出し、さらに、C/Aコードの位相(C/Aコードの端数部分)を特定すれば、擬似距離を算出することができる。ここで、C/Aコードの整数部分は、GPS受信機の概略位置が一定の精度である例えば、150km以内であれば推定可能である。このため、GPS受信機は、C/Aコードの位相を特定することにより、擬似距離を算出することができる。
GPS受信機は、例えば、受信したC/AコードとGPS受信機内部で生成したレプリカC/Aコードの相関をとって積算し、相関積算値が一定のレベルに達した場合に、C/Aコードの位相を特定する。このとき、GPS受信機は、レプリカC/Aコードの位相及び周波数をずらしながら相関処理を行っている。
ところが、C/Aコードを乗せた衛星電波の電波強度が弱い場合には、十分な信号強度を得られず、C/Aコードの位相を特定することが困難になる。
これに対して、受信信号のセグメントを処理した結果を、スレショルド信号雑音比(SNR)が達成されるまで、コヒーレントに(同期的に)連続して組み合わせる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2004−501352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、GPS衛星とGPS受信機は相対的に移動するから、GPS受信機に到達する衛星電波の到達周波数はドップラー偏移によって変化する。
ここで、信号強度が弱い場合には、GPS受信機側の同期用周波数を継続的に変化する到達周波数に同期することが困難な場合がある。
そして、GPS受信機側の同期用周波数が到達周波数と乖離している場合には、相関積算値が一定のレベルに達したとしても、そのときのC/Aコードの位相の精度は劣化する。このため、その位相を使用して測位すると、測位位置の精度が劣化する場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる測位装置、測位装置の制御方法、その御プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置であって、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段と、前記選択位相第1評価手段による判断結果及び/又は前記選択位相第2評価手段による判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記位相差評価手段を有するから、前記位相差が前記位相差許容範囲内か否かを判断することができる。すなわち、前記測位装置は、前記位相の精度を検証することができる。
また、前記測位装置は、前記位相選択手段を有するから、各前記発信源ごとに前記選択位相を算出することができる。前記選択位相は、前記位相差が最小の前記位相であるから、他の周波数系列の前記位相よりも精度が高い。
前記測位装置は、さらに、前記選択位相第1評価手段を有するから、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断することができる。前記選択位相の信号強度が最大であれば、前記選択位相は、他の前記位相に比べて精度が高いことが保証されたと考えることができる。そして、前記測位装置は前記測位手段を有するから、前記選択位相第1評価手段による判断結果が肯定的である場合には、前記選択位相を使用して、現在位置を測位することができる。
これにより、前記測位装置は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
ここで、特に弱電界化においては、前記位相差が最小の前記位相の信号強度が最大であるとは限らない。すなわち、前記選択位相の精度が他の前記位相に比べて高いにもかかわらず、その信号強度は最大ではない場合がある。このため、信号強度が最大ではない場合であっても、前記選択位相の精度を確認することができる限り、前記選択位相を測位に使用することが望ましい。
この点、前記測位装置は前記選択位相第2評価手段を有するから、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が前記規定回数範囲内である場合には、前記選択位相を使用して、現在位置を測位することができる。
これにより、前記測位装置は、前記選択位相第1評価手段による判断結果が否定的である場合であっても、精度が高い前記位相を使用して測位をすることができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっていることを特徴とする測位装置である。
【0008】
前記相関処理の過程において、前記相関処理の開始時よりも完了時の方が、例えば、SNR(信号対雑音比)が向上し、前記測位基礎符号を雑音から明確に区別することができるから、前記位相の精度が高い。
この点、第2の発明の構成によれば、前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっているから、精度の高い前記予測位相を算出することができる。
すなわち、前記測位装置は、精度よく測位するための基礎となる精度の高い前記予測位相を算出することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記測位基礎符号を乗せた電波を受信したときの受信周波数を特定する受信周波数特定手段と、前回測位時の前記受信周波数と現在の前記受信周波数との周波数差が予め規定した周波数差許容範囲内か否かを判断する周波数差評価手段と、前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除する位相排除手段と、を有することを特徴とする測位装置である。
【0010】
第3の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記位相排除手段を有するから、前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除することができる。
これは、前記測位装置が、前記位相を算出したときの前記受信周波数の精度も検証することができることを意味する。そして、前記受信周波数の精度が高いほど、前記位相の精度も高い。
これにより、前記測位装置は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を前記受信周波数によって検証したうえで、一層精度良く測位することができる。
【0011】
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの構成において、複数の前記周波数系列は、互いに予め規定した周波数間隔だけ乖離しており、前記周波数差許容範囲は、前記周波数間隔未満の閾値によって規定されることを特徴とする測位装置である。
【0012】
第4の発明の構成によれば、前記信号強度が最も大きい前記周波数系列が切り替わった場合には、そのときの前記位相を測位から排除することができる。これは、前記信号強度が最も大きい前記周波数系列が連続していることを前記位相を測位に使用するための条件とすることを意味する。
これにより、前記測位装置に到達する電波の周波数のドップラー偏移に最も良く追従している前記周波数系列において算出された前記位相を測位に使用することができるから、電波強度が微弱な弱電界下において、なお一層精度良く測位することができる。
【0013】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの構成において、前記発信源は、SPS(Satellite Positioning System)衛星であることを特徴とする測位装置である。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、 前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0015】
前記目的は、第7の発明によれば、コンピュータに、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0016】
前記目的は、第8の発明によれば、コンピュータに、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g及び12hから、電波S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7及びS8を受信することができる。GPS衛星12a等は、発信源の一例でもある。なお、測位衛星は、GPS衛星に限らず、広くSPS(Satellite Positioing System)において使用される衛星であってもよい。
電波S1等には各種のコード(符号)が乗せられている。そのうちの一つがC/AコードScaである。このC/AコードScaは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/AコードScaは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、現在位置を測位する測位装置の一例であり、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。このC/AコードScaは、測位基礎符号の一例である。
【0019】
また、電波S1等に乗せられる情報として、アルマナックSal及びエフェメリスSehがある。アルマナックSalはすべてのGPS衛星12a等の概略の衛星軌道を示す情報であり、エフェメリスSehは各GPS衛星12a等の精密な衛星軌道を示す情報である。アルマナックSal及びエフェメリスSehを総称して航法メッセージと呼ぶ。
【0020】
端末20は、例えば、3個以上の異なるGPS衛星12a等からのC/Aコードのコードフェーズ(位相)を特定して、現在位置を測位することができるようになっている。
【0021】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズ(位相)と呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0022】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスSehを使用して算出可能である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0023】
そして、図2に示すように、レプリカC/Aコードの位相を例えば、矢印X1方向に移動させながら、相関処理を行う。このとき、端末20は、同期用周波数も変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
なお、本実施の形態とは異なり、端末20は、例えば、携帯電話の通信基地局からの電波を使用して測位を行うようにしてもよい。また、本実施の形態とは異なり、端末20は、LAN(Local Area Network)から電波を受信して、測位を行うようにしてもよい。
【0024】
図3は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。レプリカC/Aコードは、レプリカ測位基礎符号の一例である。
例えば、図3に示すように、コヒーレント時間が10msecであれば、10msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとったときのコードフェーズと、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
【0025】
図4は、相関積算値とコードフェーズの関係の一例を示す図である。
図4の相関積算値の最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、C/Aコードのコードフェーズ(レプリカC/Aコードのコードフェーズと等しい)である。
そして、端末20は、例えば、コードフェーズCP1から2分の1チップ離れたコードフェーズのうち、相関積算値が小さい方の相関積算値をノイズの相関積算値Pnoiseとする。
端末20は、PmaxとPnoiseとの差分をPmaxで除した値を信号強度XPRとして規定する。信号強度XPRは、信号強度の一例である。
そして、端末20は、XPRが例えば、0.2以上である場合に、コードフェーズCP1を測位に使用するコードフェーズの候補とする。以下、このコードフェーズを、「候補コードフェーズ」とも呼ぶ。候補コードフェーズは測位に使用する候補であり、端末20が実際に測位に使用するとは限らない。
【0026】
図5及び図6は、候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
図5は、例えば、GPS衛星12aが端末20に近づいている状態を示している。
例えば、GPS衛星12aが端末20に近づくと、GPS衛星12aと端末20との距離が短くなるから、候補コードフェーズC1は時間経過とともに、0に近づく。
また、周波数系列F1に属する周波数は、時間経過とともに、高くなるように設定されている。これは、GPS衛星12aが端末20に近づいているために生じるドップラー偏移によって、電波S1が端末20に到達するときの到達周波数が高くなることに対応するためである。
【0027】
端末20は、変動する到達周波数に効率的に同期するために、図6に示すように、例えば、3つの周波数系列F1,F2及びF3を使用する。周波数系列F1等は周波数系列の一例である。周波数系列F1とF2は例えば、50ヘルツ(Hz)の周波数幅だけ乖離している。また、周波数系列F1とF3もまた、50ヘルツ(Hz)の周波数幅だけ乖離している。50ヘルツ(Hz)の周波数間隔は予め規定されている。すなわち、50ヘルツ(Hz)の周波数間隔は、周波数間隔の一例である。この周波数間隔は、端末20が実施する相関処理における周波数サーチのステップ間隔未満において規定されている。例えば、周波数サーチのステップ間隔が100ヘルツ(Hz)であれば(図11(b)参照)、100ヘルツ(Hz)未満において規定される。
なお、周波数系列F1等は少なくとも1つであればよく、本実施の形態とは異なり、例えば、1つでもよいし、4つ以上でもよい。
図6に示すように、各周波数系列F1等は、到達周波数のドップラー偏移を予想して時間経過とともに変化するように設定される。
そして、各周波数系列F1等のいずれかが、到達周波数のドップラー偏移に最も精度良く追随しているはずである。
【0028】
周波数系列F1においてはコードフェーズC1が算出される。そして、周波数系列F2においてはコードフェーズC2が算出される。そして、周波数系列F3においてはコードフェーズC3が算出される。
このように、3つのコードフェーズC1等が並行して算出されるのであるが、信号強度XPRが最も高い状態で算出されたコードフェーズが最も信頼度が高いのが一般的である。
ところが、XPRが最も高い周波数系列F1等が維持されるとは限らない。例えば、図6に示すように、例えば、時刻t1とt2との間においては周波数系列F1で算出したコードフェーズC1のXPRが最も高く、時刻t2とt3との間においては周波数系列F2で算出したコードフェーズC2のXPRが最も高い。
各周波数系列F1等の周波数は、予想されるドップラー偏移という共通の要素に基づいて変更されているのであるから、いずれか1つの周波数系列で算出したコードフェーズが精度が高いものであれば、継続的に、他の周波数系列で算出したコードフェーズよりも精度が高いはずである。
ここで、「精度が高い」とは、算出したコードフェーズと真のコードフェーズとの乖離が小さいことを意味する。
例えば、周波数系列F1の精度が他の周波数系列F2及びF3よりも精度が高い場合には、周波数系列F1が他の周波数系列F2及びF3に比べて、実際の到達周波数に最も精度良く追随し続けているはずである。このため、周波数系列F1において、他の周波数系列F2及びF3よりも信号強度XPRが低い時間帯があったとしても、周波数系列F1において算出された候補コードフェーズが、精度が最も高いはずである。
この点、端末20は、以下のハードウエア構成及びソフトウエア構成によって、弱電界下において、候補コードフェーズの精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
【0029】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図7は、端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図7に示すように、端末20は、コンピュータを有し、コンピュータは、バス22を有する。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。記憶装置26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
また、バス22には、入力装置28、電源装置30、GPS装置32、表示装置34、通信装置36及び時計38が接続されている。
【0030】
(GPS装置32の構成について)
図8は、GPS装置32の構成を示す概略図である。
図8に示すように、GPS装置32は、RF部32aとベースバンド部32bで構成される。
RF部32aは、アンテナ33aで電波S1等を受信する。そして、増幅器であるLNA33bが、電波S1に乗せられているC/Aコード等の信号を増幅する。そして、ミキサ33cが、信号の周波数をダウンコンバートする。そして、直交(IQ)検波器33dが信号をIQ分離する。続いて、A/Dコンバータ33e1及び33e2が、IQ分離された信号をそれぞれデジタル信号に変換するように構成されている。
【0031】
ベースバンド部32bは、RF部32aからデジタル信号に変換された信号を受信し、信号をサンプリングして積算し、ベースバンド部32bが保持しているC/Aコードとの相関をとるように構成されている。ベースバンド部32bは、例えば、128個の相関器(図示せず)及び積算器(図示せず)を有し、同時に128の位相において、相関処理を行うことができるようになっている。相関器は前述のコヒーレント処理を行うための構成である。積算器は前述のインコヒーレント処理を行うための構成である。
【0032】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図9は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図9に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図7のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有している。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0033】
図9に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを含む。
端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、測位のために使用する。
【0034】
図9に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置Q0は、例えば、前回の測位位置である。
【0035】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム112を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、初期位置情報154に示される初期位置Q0を基準として、観測可能なGPS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等(以下、「観測可能衛星」と呼ぶ)を示す観測可能衛星情報156を第2記憶部150に格納する。本実施の形態においては、観測可能衛星は、GPS衛星12a乃至12hである(図1及び図9参照)。
【0036】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、推定周波数算出プログラム114を格納している。推定周波数算出プログラム114は、制御部100が、GPS衛星12a等からの電波S1等の到達受信周波数を推定するためのプログラムである。
この到達周波数は、電波S1が端末20に到達するときの周波数である。より詳細には、この到達周波数は、電波S1が端末20に到達し、さらに端末20においてダウンコンバートされたときの中間(IF)周波数である。
【0037】
図10は、推定周波数算出プログラム114の説明図である。
図10に示すように、制御部100は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移H2を加えて、推定周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移H2は、各GPS衛星12a等と端末20との相対移動によって生じる。制御部100は、エフェメリス152bと初期位置Q0によって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、ドップラー偏移H2を算出する。
制御部100は、観測可能衛星であるGPS衛星12a等ごとに、推定周波数Aを算出する。
なお、推定周波数Aには、端末20のクロック(基準発振器:図示せず)のドリフト分の誤差を含む。ドリフトとは、温度変化による発振周波数の変化である。
このため、制御部100は、推定周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において電波S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数で電波S1等をサーチする。
なお、本実施の形態とは異なり、ドリフトを予め推定することができる場合には、推定周波数A及び推定したドリフトに基づいて、サーチを開始する中心周波数を算出することにしてもよい。
【0038】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、メジャメント算出プログラム116を格納している。メジャメント算出プログラム116は、制御部100が、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において、GPS衛星12a等から受信したC/Aコードと端末20が発生するレプリカC/Aコードとの相関処理を行って、相関積算値の最大値Pmax、ノイズの相関積算値Pnoise、候補コードフェーズ及び受信周波数を含むメジャメントを算出するためのプログラムである。メジャメント算出プログラム116と制御部100は、位相算出手段の一例であり、受信周波数特定手段の一例でもある。
【0039】
図11は、メジャメント算出プログラム116の説明図である。
図11(a)に示すように、制御部100はベースバンド部32bによって、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(第1位相幅W1)間隔で相関処理を行う。そして、制御部100が相関処理を行うときの第1位相幅W1間隔の位相を第1サンプリング位相SC1と呼ぶ。
第1位相幅W1は、電波S1等が端末20に到達するときの信号強度が−155dBm以上である場合に、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。32分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm以上であれば弱電界であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
【0040】
図11(b)に示すように、制御部100は、推定周波数Aを中心として、±100kHzの周波数範囲を第1位相幅w1ずつずらしながら相関処理を行う。このとき、周波数を100Hzずつずらしながら、相関処理を行う。
図11(c)に示すように、ベースバンド部32bからは、2チップ分の位相C1乃至C64に対応する相関値積算Pが出力される。各位相C1乃至C64が、第1サンプリング位相SC1である。
【0041】
制御部100はメジャメント算出プログラム116に基づいて、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
【0042】
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において、コードフェーズCP1、受信周波数f1、Pmax1及びPnoise1を算出し、現在メジャメント情報160とする。コードフェーズCP1、受信周波数f1、Pmax1及びPnoise1を総称して、メジャメントと呼ぶ。
なお、コードフェーズCP1は、距離に換算されている。上述のように、C/Aコードのコード長は、例えば、300キロメートル(km)であるから、C/Aコードの端数部分であるコードフェーズを距離に換算することができる。
【0043】
図12は、現在メジャメント情報160の一例を示す図である。
図12に示すように、現在メジャメント情報160は、例えば、GPS衛星12aについて周波数系列F1における周波数f11a、コードフェーズCP11a、Pmax11a、Pnoise11aを示している。
また、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12aについての周波数系列F2における周波数f12a、コードフェーズCP12a、Pmax12a、Pnoise12aを示している。
また、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12aについての周波数系列F3における周波数f13a、コードフェーズCP13a、Pmax13a、Pnoise13aを示している。
周波数f11a乃至13aは、GPS衛星12aからの電波S1を受信したときの受信周波数である。
【0044】
同様に、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12b乃至12fについての周波数系列F1乃至周波数系列F3等における周波数f11b等(図示せず)を示す。
【0045】
なお、同一のGPS衛星12a等についての同一の周波数系列F1等におけるメジャメントを、対応するメジャメントと呼ぶ。例えば、GPS衛星12aについての周波数系列F1におけるコードフェーズCP11aと周波数f11aは対応するメジャメントである。
なお、本実施の形態とは異なり、相関処理の方法としては、ナローコリレータ(例えば、特開2000−312163号公報参照)を採用してもよい。
【0046】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、メジャメント保存プログラム118を格納している。メジャメント保存プログラム118は、制御部100が、メジャメントを第2記憶部150に保存するためのプログラムである。
制御部100は、新たなメジャメントを現在メジャメント情報160として第2記憶部150に格納するとともに、既存の現在メジャメント情報160を前回メジャメント情報162として第2記憶部150に格納する。前回メジャメント情報162は、前回測位時のコードフェーズCP0、周波数f0、Pmax0及びPnoise0を含む。
【0047】
図13は、前回メジャメント情報162を示す図である。
図13に示すように、前回メジャメント情報162は、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において算出された周波数F01a等を示している。なお、図13においては、GPS衛星12aについてのメジャメントのみを図示し、他のGPS衛星12b等のメジャメントについては図示を省略している。
【0048】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、周波数評価プログラム120を格納している。周波数評価プログラム120は、制御部100が、前回測位時の受信周波数f0と現在測位時の受信周波数f1との周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断するためのプログラムである。周波数閾値α以下の範囲は、周波数系列F1,F2及びF3の周波数間隔未満の閾値によって、予め規定されている。上述のように、周波数間隔が50ヘルツ(Hz)であれば、周波数閾値αは、例えば、30ヘルツ(Hz)である。
上述の周波数評価プログラム120及び制御部100は、周波数差評価手段の一例である。そして、周波数閾値α以下の範囲は、予め規定した周波数差許容範囲内の一例である。
制御部100は、現在メジャメント情報160に示されるすべてのコードフェーズCP11a等(図12参照)について、上述の判断を行う。例えば、GPS衛星12aについての現在の周波数f11aと前回の周波数f01aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断する。同様に、周波数f12aと周波数f02aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断し、周波数f13aと周波数f03aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断する。同様に、GPS衛星12b乃至12fについても、同様に周波数についての判断を行う。
端末20は、周波数差が周波数閾値α以下ではない場合には、対応するコードフェーズCP11a等を測位に使用しない。すなわち、周波数評価プログラム120と制御部100は、位相排除手段の一例である。
【0049】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予測コードフェーズ算出プログラム122を格納している。予測コードフェーズ算出プログラム122は、制御部100が、前回測位時のコードフェーズCP0と、電波S1等のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間dtに基づいて、現在の位相を予測して予測コードフェーズCPeを算出するためのプログラムである。予測コードフェーズCPeは、予測位相の一例である。予測コードフェーズ算出プログラム122と制御部100は、予測位相算出手段の一例である。制御部100は、各GPS衛星12a等についての各周波数系列F1乃至F3について、それぞれ予測コードフェーズCPeを算出する。
なお、予測コードフェーズCPeは、距離に換算されている。
【0050】
図14は、予測コードフェーズ算出プログラム122の説明図である。
図14に示すように、制御部100は、例えば、式1によって、予測コードフェーズCPeを算出する。
制御部100は、式1に示すように、前回測位時のコードフェ−ズCP0から、例えば、GPS衛星12aと端末20の相対移動速度に前回測位時からの経過時間dtを乗じた値を減じることによって、予測コードフェーズCPeを算出する。
なお、式1において、予測コードフェーズCPe、前回コードフェーズCP0は、距離に換算されている。
【0051】
ここで、電波S1等は、光速で伝播する。このため、光速を電波S1等の発信周波数H1で除することによって、ドップラー偏移1ヘルツ(Hz)に対応する概略の速度を算出することができる。すなわち、ドップラー偏移がプラス(+)1ヘルツ(Hz)であるということは、GPS衛星12aが秒速0.19メートル(m/s)で端末20に近づいているということである。このため、予測コードフェーズCPeは、前回測位時のコードフェーズCP0よりも短くなる。ここで、ドップラー偏移は、例えば、前回測位時の周波数f0と発信周波数H1との差分である。
【0052】
これに対して、ドップラー偏移がマイナス(−)1ヘルツ(Hz)であるということは、GPS衛星12aが秒速0.19メートル(m/s)で端末20から遠ざかっているということである。このため、予測コードフェーズCPeは、前回測位時のコードフェーズCP0よりも長くなる。
なお、式1は、前回測位時からの経過時間が短時間であるという条件において成立するものである。言い換えると、式1は、コードフェーズと経過時間との関係をグラフ上で直線として示せる限りにおいて成立する。
また、本実施の形態とは異なり、前回測位時の周波数f0と発信周波数H1との差分と、現在測位時の周波数f1と発信周波数H1との差分との平均値を、ドップラー偏移としてもよい。これにより、予測コードフェーズCPeを一層正確に算出することができる。
また、本実施の形態とは異なり、制御部100は、前回測位時のコードフェーズCP0であって、さらに、相関処理の完了時におけるコードフェーズCP0を使用して、予測コードフェーズCPeを算出するようにしてもよい。相関処理の完了時のコードフェーズCP0は、積算によってノイズが相殺されているため、相関処理の開始時や相関処理の過程におけるコードフェーズよりも精度が高いから、予測コードフェーズCPeの精度も高くなる。
【0053】
制御部100は、算出した予測コードフェーズCPeを示す予測コードフェーズ情報164を第2記憶部150に格納する。
【0054】
図15は、予測コードフェーズ情報164の一例を示す図である。
図15に示すように、予測コードフェーズ情報164は、例えば、GPS衛星12aについての周波数系列F1における予測コードフェーズCPe1a、周波数系列F2における予測コードフェーズCPe2a、周波数系列F3における予測コードフェーズCPe3aを示す。同様に、予測コードフェーズ情報164は、GPS衛星12b乃至12fについて各周波数系列F1乃至F3における予測コードフェーズCPe1b等(図示せず)を示す。
【0055】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、コードフェーズ評価プログラム124を格納している。コードフェーズ評価プログラム124は、制御部100が、現在のコードフェーズCP1と予測コードフェーズCPeとのコードフェーズ差がコードフェーズ閾値β(以下、「閾値β」と呼ぶ)以下か否かを判断するためのプログラムである。閾値β以下の範囲は、位相差許容範囲内の一例である。コードフェーズ評価プログラム124と制御部100は、位相差評価手段の一例である。
制御部100は、上述の周波数評価プログラム120によって閾値α以下であると判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1を、コードフェーズ評価プログラム124に基づく判断の対象とする。
【0056】
制御部100は、また、コードフェーズ評価プログラム124に基づいて、各GPS衛星12a等の各周波数系列F1乃至F3ごとに、コードフェーズ差が閾値β以下である場合には、コードフェーズ差評価パス回数(以下、「パス回数」と呼ぶ)を1づつ加算する。そして、制御部100は、各GPS衛星12a等の各周波数系列F1乃至F3ごとに、コードフェーズ差が閾値βより大きい場合には、パス回数を0にする。
制御部100は、パス回数を示すコードフェーズ評価パス情報166を第2記憶部150に格納する。
【0057】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、コードフェーズ選択プログラム126を格納している。コードフェーズ選択プログラム126は、制御部100が、上述の閾値β以下のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1のうち、各GPS衛星12a等ごとに、コードフェーズ差が最小のコードフェーズCP1を選択して選択コードフェーズCP1sとするためのプログラムである。選択コードフェーズCP1sは、選択位相の一例である。コードフェーズ選択プログラム126と制御部100は、位相選択手段の一例である。
【0058】
図16は、コードフェーズ選択プログラム126の説明図である。
図16に示すように、制御部100は、例えば、GPS衛星12aについて、周波数系列F1におけるコードフェーズCP11aとCPe1aとの差分の絶対値dCP11aを算出する。また、制御部100は、周波数系列F2におけるコードフェーズCP12aとCPe2aとの差分の絶対値dCP12a、周波数系列F3におけるコードフェーズCP13aとCPe3aとの差分の絶対値dCP13aを算出する。
そして、例えば、図16に示すように、絶対値dCP11a乃至絶対値dCP13aの中で、絶対値dCP11aが最小である場合には、コードフェーズCP11aを選択する。
そして、制御部100は、コードフェーズCP11aを選択コードフェーズCP1saとする。
制御部100は、各GPS衛星12a等について、それぞれ上述の選択を行う。
制御部100は、選択した選択コードフェーズCP1sを第2格納部150に格納する。
【0059】
図17は、選択コードフェーズ情報168の一例を示す図である。
選択コードフェーズ情報168は、各GPS衛星12a等ごとに周波数系列F1乃至F3のうちいずれかにおいて算出されたコードフェーズを示す。
【0060】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、選択コードフェーズ第1評価プログラム128を格納している。選択コードフェーズ第1評価プログラム128は、制御部100が、選択コードフェーズCP1sa等の信号強度XPRが最大か否かを判断するためのプログラムである。選択コードフェーズ第1評価プログラム128と制御部100
は、選択位相第1評価手段の一例である。
具体的には、制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、選択コードフェーズCP1saのXPRが、コードフェーズCP1等のなかで最大か否かを判断する。
【0061】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、選択コードフェーズ第2評価プログラム130を格納している。選択コードフェーズ第2評価プログラム130は、制御部100が、上述のパス回数が、γ回以上であるか否かを判断するためのプログラムである。γ回は例えば、3回であり、予め規定されている。γ回以上の範囲は、規定回数範囲内の一例である。選択コードフェーズ第2評価プログラム130と制御部100は、選択位相第2評価手段の一例である。
なお、パス回数は、コードフェーズ差が閾値β以下であることが連続しない限り、0にされるから、パス回数がγ回以上であるということは、連続してコードフェーズが閾値β以下であることが連続してγ回以上であることを意味する。
また、選択コードフェーズ第2評価プログラム130は、制御部100が、積算時間中におけるXPRの低下回数が、予め規定した例えば、10回以上か否かを判断するためのプログラムでもある。
具体的には、制御部100は、上述の選択コードフェーズ第1評価プログラム128によって、選択コードフェーズCP1sa等の信号強度XPRが最大ではないと判断した場合に、選択コードフェーズ第2評価プログラム130による判断を行う。
【0062】
図18は、選択コードフェーズ第2評価プログラム130の説明図である。
図18(a)に示すように、例えば、積算時間を16秒(s)とすれば、16秒(s)経過時(積算完了時)におけるXPRが最大である。これは、ノイズは互いに相殺されるのに対して、C/Aコードは積算されるからである。この積算完了時におけるコードフェーズは信頼性が高い。
そして、XPRは、理論には、積算開始時から積算完了時にかけて、大きくなっていく。
ところが、実際には、図18(b)におけるように、積算開始直後においてはXPRは低減する場合がある。このため、コードフェーズを正確に算出することができない。
そして、端末20が受信している信号がノイズ(偽信号)である場合には、図18(c)に示すように、積算完了時に至っても、XPRは大きくならない。このため、コードフェーズを算出することは困難である。
このように、受信している電波がC/Aコードを乗せた電波であってもノイズであっても、積算開始直後においてはXPRが小さく、かつ、XPRが低下する場合がある。そして、受信している電波がC/Aコードを乗せた電波である場合には、積算時間の経過に伴って、XPRが大きくなる。
このため、積算開始から相当程度の時間が経過した後に、コードフェーズ差が閾値β以下であるという状態が継続した場合には、受信している信号が、ノイズではないと考えることができる。
また、XPRの低下が積算時間開始から相当程度の時間が継続しても発生する場合には、受信している信号がノイズであると考えることができる。言い替えると、XPRの低下が積算時間開始から相当程度の時間が継続した後に発生しない場合には、受信している信号がノイズではないと考えることができることを意味する。
そこで、端末20においては、コードフェーズ差が閾値β以下であるという状態が継続したか否かと、XPRの低下が連続したか否かを、受信している信号がノイズか否かを判断するための基準としている
【0063】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム132を格納している。測位プログラム132は、制御部100が、選択コードフェーズ第1評価プログラム128又は選択コードフェーズ第2評価プログラム130による判断結果が肯定的である場合に、選択コードフェーズCP1sを測位使用コードフェーズCP1fとして、現在位置を測位するためのプログラムである。すなわち、測位プログラム132と制御部100は、測位手段の一例である。
【0064】
制御部100は、例えば、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大である場合には、その選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faとする。
制御部100は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大ではない場合であっても、コードフェーズ評価パス回数がγ回以上であって、かつ、XPRの低減が10回未満である場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faとする。
これに対して、制御部100は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大ではない場合において、コードフェーズ評価パス回数がγ回未満であるか、又は、XPRの低減が10回以上である場合には、選択コードフェーズCP1sa(コードフェーズCP11a)以外のコードフェーズCP12a及びCP13aのうち、XPRが大きい方を測位使用コードフェーズCP1faとする。
制御部100は、決定した測位使用コードフェーズCP1fを示す測位使用コードフェーズ情報170を第2記憶部150に格納する。
【0065】
図19は、測位使用コードフェーズ情報170の一例を示す図である。
図19に示すように、測位使用コードフェーズ情報170は、例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dにそれぞれ対応する測位使用コードフェーズCP1fa,CP1fb,CP1fc及びCP1fdを示す情報である。
【0066】
制御部100は、測位使用コードフェーズ情報170に示される測位使用コードフェーズCP1fa,CP1fb,CP1fc及びCP1fdを使用して、現在位置Q1を算出する。
制御部100は、算出した測位位置Q1を示す測位位置情報172を第2記憶部150に格納する。
【0067】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム134を格納している。測位位置出力プログラム134は、制御部100が、測位位置Q1を表示装置34(図7参照)に表示するためのプログラムである。
【0068】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、コードフェーズ差が閾値β以下か否かを判断することができる。すなわち、端末20は、コードフェーズCP1の精度を検証することができる。
また、端末20は、コードフェーズ差が閾値β以下のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1のうち、各GPS衛星12a等ごとにコードフェーズ差が最小のコードフェーズCP1を選択し、選択コードフェーズCP1sとすることができる。選択コードフェーズCP1sは、コードフェーズ差が最小のコードフェーズであるから、他の周波数系列のコードフェーズCP1よりも精度が高い。
さらに、端末20は、選択コードフェーズCP1sの信号強度XPRが最大か否かを判断することができる。選択コードフェーズCP1sのXPRが最大であれば、選択コードフェーズCP1sは、他のコードフェーズCP1よりも精度が高いことが保証されたと考えることができる。
そして、端末20は、選択コードフェーズ第1評価プログラム128による判断結果が肯定的である場合には、選択コードフェーズCP1sを測位使用コードフェーズCP1fとして、現在位置を測位することができる。
これにより、端末20は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
また、端末20は選択コードフェーズ第2評価プログラム130を有するから、選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1乃至F3におけるコードフェーズが、連続して閾値β以下であった回数が3回以上である場合には、選択コードフェーズCP1sを使用して、現在位置を測位することができる。
選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1等におけるコードフェーズが、連続して閾値β以下であった回数が3回以上であるということは、選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1等におけるコードフェーズは、他の周波数系列におけるコードフェーズよりも精度が高いことを意味する。
これにより、端末20は、選択コードフェーズ第1評価プログラム128による判断結果が否定的である場合であっても、精度が高いコードフェーズを使用して測位をすることができる。
【0069】
また、端末20は、周波数閾値α以内の範囲外の周波数f1に対応するコードフェーズCP1を測位から排除することができる。
これは、端末20が、C/AコードのコードフェーズCP1の精度を検証するのみならず、コードフェーズCP1を算出したときの受信周波数f1の精度も検証することができることを意味する。
これにより、端末20は、信号強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号のコードフェーズの精度を検証したうえで、一層精度良く測位することができる
【0070】
以上が本実施の形態に係る端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図20を使用して説明する。
図20は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0071】
まず、端末20は、電波S1等を受信し、メジャメントを算出する(図20のステップST1)。このステップST1は、位相算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、メジャメントを保存する(ステップST2)。
続いて、端末20は、現在周波数f1と前回周波数f0との周波数差分の絶対値が、周波数閾値α以下か否かを判断する(ステップST3)。
【0072】
端末20は、ステップST3において、周波数閾値α以下ではないと判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1を測位に使用しない(ステップST11)。
【0073】
これに対して、ステップST3において、周波数閾値α以下であると判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1については、対応する予測コードフェーズCPeを算出する(ステップST4)。このステップST4は、予測位相算出ステップの一例である。
【0074】
続いて、端末20は、コードフェーズCP1と予測コードフェーズCPeとのコードフェーズ差の絶対値が閾値β以下か否かを判断する(ステップST5)。このステップST5は、位相評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST5において、閾値β以下ではないと判断したコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1を測位に使用しない(ステップST11)。
【0075】
これに対して、端末20は、ステップST5において、閾値β以下ではないと判断したコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1について、各GPS衛星12a等ごとに、最小のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1を選択し、選択コードフェーズCP1sとする(ステップST6)。このステップST6は、位相選択ステップの一例である。
【0076】
続いて、端末20は、測位使用コードフェーズCP1fを決定する(ステップST7)。
ここで、図21を使用して、GPS衛星12aの測位系列F1における選択コードフェーズCP1saを測位に使用するか否かを決定する場合を例にして、ステップST7の詳細を説明する。
【0077】
図21は、ステップST7の詳細を示すフローチャートである。
まず、端末20は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大か否かを判断する(図21のステップST101)。このステップST101は、選択位相第1評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST101における判断が肯定的であった場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST104)。
【0078】
これに対して、端末20は、ステップST101における評価が否定的であった場合には、周波数系列F1におけるコードフェーズ評価のパス回数が3回以上か否かを判断する(ステップST102)。このステップST102は、選択位相第2評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST102における判断が肯定的であった場合には、周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満か否かを判断する(ステップST103)。
端末20は、ステップST103において、周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満であると判断した場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST104)。
【0079】
これに対して、端末20は、ステップST102における評価が否定的であった場合、又は、ステップST103において周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満ではないと判断した場合には、CP12a又はCP13aのうち、XPRが最大のものを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST105)。
端末20は、各GPS衛星12a等ごとに、上述の各ステップST101乃至ステップST105を実施する。
【0080】
続いて、端末20は、測位使用コードフェーズCP1fが3個以上あるか否かを判断する(ステップST8)。
ステップST8において、端末20が、測位使用コードフェーズCP1fが3個未満であると判断した場合には、測位不能であるから、測位することなく終了する。
【0081】
これに対して、ステップST6において、端末20が、測位使用コードフェーズCP1fが3個以上であると判断した場合には、測位使用コードフェーズCP1fを使用して測位する(ステップST9)。このステップST9は、測位ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位位置Q1(図9参照)を出力する(ステップST10)。
【0082】
以上のステップによって、端末20は、信号強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
【0083】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関積算値とコードフェーズの関係の一例を示す図である。
【図5】候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
【図6】候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
【図7】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図8】GPS装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図10】推定周波数算出プログラムの説明図である。
【図11】メジャメント算出プログラムの説明図である。
【図12】現在メジャメント情報の一例を示す図である。
【図13】前回メジャメント情報の一例を示す図である。
【図14】予測コードフェーズ算出プログラムの説明図である。
【図15】予測コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図16】コードフェーズ選択プログラムの説明図である。
【図17】選択コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図18】選択コードフェーズ第2評価プログラムの説明図である。
【図19】測位使用コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図20】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図21】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、32・・・GPS装置、112・・・観測可能衛星算出プログラム、114・・・推定周波数算出プログラム、116・・・メジャメント算出プログラム、118・・・メジャメント保存プログラム、120・・・周波数評価プログラム、122・・・予測コードフェーズ算出プログラム、124・・・コードフェーズ評価プログラム、126・・・コードフェーズ選択プログラム、128・・・選択コードフェーズ第1評価プログラム、130・・・選択コードフェーズ第2評価プログラム、132・・・測位プログラム、134・・・測位位置出力プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信源からの電波を利用する測位装置、測位装置の制御方法、その制御プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
このGPS受信機は、GPS衛星の軌道等を示す航法メッセージ(概略衛星軌道情報:アルマナック、精密衛星軌道情報:エフェメリス等を含む)に基づいて、GPS衛星からの電波(以後、衛星電波と呼ぶ)に乗せられている擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つであるC/A(Clear and AcquisionまたはCoarse and Access)コードを受信する。C/Aコードは、測位の基礎となる符号である。
GPS受信機は、そのC/AコードがどのGPS衛星から発信されたものであるかを特定したうえで、例えば、そのC/Aコードの位相(コードフェーズ)に基づいて、GPS衛星とGPS受信機の距離(擬似距離)を算出する。そして、GPS受信機は、3個以上のGPS衛星についての擬似距離と、各GPS衛星の衛星軌道上の位置に基づいて、GPS受信機の位置を測位するようになっている。例えば、C/Aコードは、1.023Mbpsのビット率で、コードの長さは1,023チップである。したがってC/Aコードは、1ミリ秒(ms)間に電波が進む距離である約300キロメートル(km)ごとに、並んで走っていると考えることができる。このため、衛星軌道上のGPS衛星の位置と、GPS受信機の概略位置からGPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつあるかを算出することで、擬似距離を算出することができる。より詳細には、C/Aコードの1周期(1,023チップ)分(C/Aコードの整数部分)を算出し、さらに、C/Aコードの位相(C/Aコードの端数部分)を特定すれば、擬似距離を算出することができる。ここで、C/Aコードの整数部分は、GPS受信機の概略位置が一定の精度である例えば、150km以内であれば推定可能である。このため、GPS受信機は、C/Aコードの位相を特定することにより、擬似距離を算出することができる。
GPS受信機は、例えば、受信したC/AコードとGPS受信機内部で生成したレプリカC/Aコードの相関をとって積算し、相関積算値が一定のレベルに達した場合に、C/Aコードの位相を特定する。このとき、GPS受信機は、レプリカC/Aコードの位相及び周波数をずらしながら相関処理を行っている。
ところが、C/Aコードを乗せた衛星電波の電波強度が弱い場合には、十分な信号強度を得られず、C/Aコードの位相を特定することが困難になる。
これに対して、受信信号のセグメントを処理した結果を、スレショルド信号雑音比(SNR)が達成されるまで、コヒーレントに(同期的に)連続して組み合わせる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2004−501352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、GPS衛星とGPS受信機は相対的に移動するから、GPS受信機に到達する衛星電波の到達周波数はドップラー偏移によって変化する。
ここで、信号強度が弱い場合には、GPS受信機側の同期用周波数を継続的に変化する到達周波数に同期することが困難な場合がある。
そして、GPS受信機側の同期用周波数が到達周波数と乖離している場合には、相関積算値が一定のレベルに達したとしても、そのときのC/Aコードの位相の精度は劣化する。このため、その位相を使用して測位すると、測位位置の精度が劣化する場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる測位装置、測位装置の制御方法、その御プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置であって、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段と、前記選択位相第1評価手段による判断結果及び/又は前記選択位相第2評価手段による判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記位相差評価手段を有するから、前記位相差が前記位相差許容範囲内か否かを判断することができる。すなわち、前記測位装置は、前記位相の精度を検証することができる。
また、前記測位装置は、前記位相選択手段を有するから、各前記発信源ごとに前記選択位相を算出することができる。前記選択位相は、前記位相差が最小の前記位相であるから、他の周波数系列の前記位相よりも精度が高い。
前記測位装置は、さらに、前記選択位相第1評価手段を有するから、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断することができる。前記選択位相の信号強度が最大であれば、前記選択位相は、他の前記位相に比べて精度が高いことが保証されたと考えることができる。そして、前記測位装置は前記測位手段を有するから、前記選択位相第1評価手段による判断結果が肯定的である場合には、前記選択位相を使用して、現在位置を測位することができる。
これにより、前記測位装置は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
ここで、特に弱電界化においては、前記位相差が最小の前記位相の信号強度が最大であるとは限らない。すなわち、前記選択位相の精度が他の前記位相に比べて高いにもかかわらず、その信号強度は最大ではない場合がある。このため、信号強度が最大ではない場合であっても、前記選択位相の精度を確認することができる限り、前記選択位相を測位に使用することが望ましい。
この点、前記測位装置は前記選択位相第2評価手段を有するから、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が前記規定回数範囲内である場合には、前記選択位相を使用して、現在位置を測位することができる。
これにより、前記測位装置は、前記選択位相第1評価手段による判断結果が否定的である場合であっても、精度が高い前記位相を使用して測位をすることができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっていることを特徴とする測位装置である。
【0008】
前記相関処理の過程において、前記相関処理の開始時よりも完了時の方が、例えば、SNR(信号対雑音比)が向上し、前記測位基礎符号を雑音から明確に区別することができるから、前記位相の精度が高い。
この点、第2の発明の構成によれば、前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっているから、精度の高い前記予測位相を算出することができる。
すなわち、前記測位装置は、精度よく測位するための基礎となる精度の高い前記予測位相を算出することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記測位基礎符号を乗せた電波を受信したときの受信周波数を特定する受信周波数特定手段と、前回測位時の前記受信周波数と現在の前記受信周波数との周波数差が予め規定した周波数差許容範囲内か否かを判断する周波数差評価手段と、前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除する位相排除手段と、を有することを特徴とする測位装置である。
【0010】
第3の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記位相排除手段を有するから、前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除することができる。
これは、前記測位装置が、前記位相を算出したときの前記受信周波数の精度も検証することができることを意味する。そして、前記受信周波数の精度が高いほど、前記位相の精度も高い。
これにより、前記測位装置は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を前記受信周波数によって検証したうえで、一層精度良く測位することができる。
【0011】
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの構成において、複数の前記周波数系列は、互いに予め規定した周波数間隔だけ乖離しており、前記周波数差許容範囲は、前記周波数間隔未満の閾値によって規定されることを特徴とする測位装置である。
【0012】
第4の発明の構成によれば、前記信号強度が最も大きい前記周波数系列が切り替わった場合には、そのときの前記位相を測位から排除することができる。これは、前記信号強度が最も大きい前記周波数系列が連続していることを前記位相を測位に使用するための条件とすることを意味する。
これにより、前記測位装置に到達する電波の周波数のドップラー偏移に最も良く追従している前記周波数系列において算出された前記位相を測位に使用することができるから、電波強度が微弱な弱電界下において、なお一層精度良く測位することができる。
【0013】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの構成において、前記発信源は、SPS(Satellite Positioning System)衛星であることを特徴とする測位装置である。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、 前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0015】
前記目的は、第7の発明によれば、コンピュータに、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0016】
前記目的は、第8の発明によれば、コンピュータに、発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g及び12hから、電波S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7及びS8を受信することができる。GPS衛星12a等は、発信源の一例でもある。なお、測位衛星は、GPS衛星に限らず、広くSPS(Satellite Positioing System)において使用される衛星であってもよい。
電波S1等には各種のコード(符号)が乗せられている。そのうちの一つがC/AコードScaである。このC/AコードScaは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/AコードScaは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、現在位置を測位する測位装置の一例であり、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。このC/AコードScaは、測位基礎符号の一例である。
【0019】
また、電波S1等に乗せられる情報として、アルマナックSal及びエフェメリスSehがある。アルマナックSalはすべてのGPS衛星12a等の概略の衛星軌道を示す情報であり、エフェメリスSehは各GPS衛星12a等の精密な衛星軌道を示す情報である。アルマナックSal及びエフェメリスSehを総称して航法メッセージと呼ぶ。
【0020】
端末20は、例えば、3個以上の異なるGPS衛星12a等からのC/Aコードのコードフェーズ(位相)を特定して、現在位置を測位することができるようになっている。
【0021】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズ(位相)と呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0022】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスSehを使用して算出可能である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0023】
そして、図2に示すように、レプリカC/Aコードの位相を例えば、矢印X1方向に移動させながら、相関処理を行う。このとき、端末20は、同期用周波数も変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
なお、本実施の形態とは異なり、端末20は、例えば、携帯電話の通信基地局からの電波を使用して測位を行うようにしてもよい。また、本実施の形態とは異なり、端末20は、LAN(Local Area Network)から電波を受信して、測位を行うようにしてもよい。
【0024】
図3は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。レプリカC/Aコードは、レプリカ測位基礎符号の一例である。
例えば、図3に示すように、コヒーレント時間が10msecであれば、10msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとったときのコードフェーズと、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
【0025】
図4は、相関積算値とコードフェーズの関係の一例を示す図である。
図4の相関積算値の最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、C/Aコードのコードフェーズ(レプリカC/Aコードのコードフェーズと等しい)である。
そして、端末20は、例えば、コードフェーズCP1から2分の1チップ離れたコードフェーズのうち、相関積算値が小さい方の相関積算値をノイズの相関積算値Pnoiseとする。
端末20は、PmaxとPnoiseとの差分をPmaxで除した値を信号強度XPRとして規定する。信号強度XPRは、信号強度の一例である。
そして、端末20は、XPRが例えば、0.2以上である場合に、コードフェーズCP1を測位に使用するコードフェーズの候補とする。以下、このコードフェーズを、「候補コードフェーズ」とも呼ぶ。候補コードフェーズは測位に使用する候補であり、端末20が実際に測位に使用するとは限らない。
【0026】
図5及び図6は、候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
図5は、例えば、GPS衛星12aが端末20に近づいている状態を示している。
例えば、GPS衛星12aが端末20に近づくと、GPS衛星12aと端末20との距離が短くなるから、候補コードフェーズC1は時間経過とともに、0に近づく。
また、周波数系列F1に属する周波数は、時間経過とともに、高くなるように設定されている。これは、GPS衛星12aが端末20に近づいているために生じるドップラー偏移によって、電波S1が端末20に到達するときの到達周波数が高くなることに対応するためである。
【0027】
端末20は、変動する到達周波数に効率的に同期するために、図6に示すように、例えば、3つの周波数系列F1,F2及びF3を使用する。周波数系列F1等は周波数系列の一例である。周波数系列F1とF2は例えば、50ヘルツ(Hz)の周波数幅だけ乖離している。また、周波数系列F1とF3もまた、50ヘルツ(Hz)の周波数幅だけ乖離している。50ヘルツ(Hz)の周波数間隔は予め規定されている。すなわち、50ヘルツ(Hz)の周波数間隔は、周波数間隔の一例である。この周波数間隔は、端末20が実施する相関処理における周波数サーチのステップ間隔未満において規定されている。例えば、周波数サーチのステップ間隔が100ヘルツ(Hz)であれば(図11(b)参照)、100ヘルツ(Hz)未満において規定される。
なお、周波数系列F1等は少なくとも1つであればよく、本実施の形態とは異なり、例えば、1つでもよいし、4つ以上でもよい。
図6に示すように、各周波数系列F1等は、到達周波数のドップラー偏移を予想して時間経過とともに変化するように設定される。
そして、各周波数系列F1等のいずれかが、到達周波数のドップラー偏移に最も精度良く追随しているはずである。
【0028】
周波数系列F1においてはコードフェーズC1が算出される。そして、周波数系列F2においてはコードフェーズC2が算出される。そして、周波数系列F3においてはコードフェーズC3が算出される。
このように、3つのコードフェーズC1等が並行して算出されるのであるが、信号強度XPRが最も高い状態で算出されたコードフェーズが最も信頼度が高いのが一般的である。
ところが、XPRが最も高い周波数系列F1等が維持されるとは限らない。例えば、図6に示すように、例えば、時刻t1とt2との間においては周波数系列F1で算出したコードフェーズC1のXPRが最も高く、時刻t2とt3との間においては周波数系列F2で算出したコードフェーズC2のXPRが最も高い。
各周波数系列F1等の周波数は、予想されるドップラー偏移という共通の要素に基づいて変更されているのであるから、いずれか1つの周波数系列で算出したコードフェーズが精度が高いものであれば、継続的に、他の周波数系列で算出したコードフェーズよりも精度が高いはずである。
ここで、「精度が高い」とは、算出したコードフェーズと真のコードフェーズとの乖離が小さいことを意味する。
例えば、周波数系列F1の精度が他の周波数系列F2及びF3よりも精度が高い場合には、周波数系列F1が他の周波数系列F2及びF3に比べて、実際の到達周波数に最も精度良く追随し続けているはずである。このため、周波数系列F1において、他の周波数系列F2及びF3よりも信号強度XPRが低い時間帯があったとしても、周波数系列F1において算出された候補コードフェーズが、精度が最も高いはずである。
この点、端末20は、以下のハードウエア構成及びソフトウエア構成によって、弱電界下において、候補コードフェーズの精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
【0029】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図7は、端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図7に示すように、端末20は、コンピュータを有し、コンピュータは、バス22を有する。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。記憶装置26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
また、バス22には、入力装置28、電源装置30、GPS装置32、表示装置34、通信装置36及び時計38が接続されている。
【0030】
(GPS装置32の構成について)
図8は、GPS装置32の構成を示す概略図である。
図8に示すように、GPS装置32は、RF部32aとベースバンド部32bで構成される。
RF部32aは、アンテナ33aで電波S1等を受信する。そして、増幅器であるLNA33bが、電波S1に乗せられているC/Aコード等の信号を増幅する。そして、ミキサ33cが、信号の周波数をダウンコンバートする。そして、直交(IQ)検波器33dが信号をIQ分離する。続いて、A/Dコンバータ33e1及び33e2が、IQ分離された信号をそれぞれデジタル信号に変換するように構成されている。
【0031】
ベースバンド部32bは、RF部32aからデジタル信号に変換された信号を受信し、信号をサンプリングして積算し、ベースバンド部32bが保持しているC/Aコードとの相関をとるように構成されている。ベースバンド部32bは、例えば、128個の相関器(図示せず)及び積算器(図示せず)を有し、同時に128の位相において、相関処理を行うことができるようになっている。相関器は前述のコヒーレント処理を行うための構成である。積算器は前述のインコヒーレント処理を行うための構成である。
【0032】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図9は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図9に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図7のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有している。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0033】
図9に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを含む。
端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、測位のために使用する。
【0034】
図9に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置Q0は、例えば、前回の測位位置である。
【0035】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム112を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、初期位置情報154に示される初期位置Q0を基準として、観測可能なGPS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等(以下、「観測可能衛星」と呼ぶ)を示す観測可能衛星情報156を第2記憶部150に格納する。本実施の形態においては、観測可能衛星は、GPS衛星12a乃至12hである(図1及び図9参照)。
【0036】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、推定周波数算出プログラム114を格納している。推定周波数算出プログラム114は、制御部100が、GPS衛星12a等からの電波S1等の到達受信周波数を推定するためのプログラムである。
この到達周波数は、電波S1が端末20に到達するときの周波数である。より詳細には、この到達周波数は、電波S1が端末20に到達し、さらに端末20においてダウンコンバートされたときの中間(IF)周波数である。
【0037】
図10は、推定周波数算出プログラム114の説明図である。
図10に示すように、制御部100は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移H2を加えて、推定周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移H2は、各GPS衛星12a等と端末20との相対移動によって生じる。制御部100は、エフェメリス152bと初期位置Q0によって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、ドップラー偏移H2を算出する。
制御部100は、観測可能衛星であるGPS衛星12a等ごとに、推定周波数Aを算出する。
なお、推定周波数Aには、端末20のクロック(基準発振器:図示せず)のドリフト分の誤差を含む。ドリフトとは、温度変化による発振周波数の変化である。
このため、制御部100は、推定周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において電波S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数で電波S1等をサーチする。
なお、本実施の形態とは異なり、ドリフトを予め推定することができる場合には、推定周波数A及び推定したドリフトに基づいて、サーチを開始する中心周波数を算出することにしてもよい。
【0038】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、メジャメント算出プログラム116を格納している。メジャメント算出プログラム116は、制御部100が、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において、GPS衛星12a等から受信したC/Aコードと端末20が発生するレプリカC/Aコードとの相関処理を行って、相関積算値の最大値Pmax、ノイズの相関積算値Pnoise、候補コードフェーズ及び受信周波数を含むメジャメントを算出するためのプログラムである。メジャメント算出プログラム116と制御部100は、位相算出手段の一例であり、受信周波数特定手段の一例でもある。
【0039】
図11は、メジャメント算出プログラム116の説明図である。
図11(a)に示すように、制御部100はベースバンド部32bによって、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(第1位相幅W1)間隔で相関処理を行う。そして、制御部100が相関処理を行うときの第1位相幅W1間隔の位相を第1サンプリング位相SC1と呼ぶ。
第1位相幅W1は、電波S1等が端末20に到達するときの信号強度が−155dBm以上である場合に、相関最大値Pmaxを検出することができる位相幅として規定されている。32分の1チップの位相幅であれば、信号強度が−155dBm以上であれば弱電界であっても、相関最大値Pmaxを検出することができることがシミュレーションによって明らかになっている。
【0040】
図11(b)に示すように、制御部100は、推定周波数Aを中心として、±100kHzの周波数範囲を第1位相幅w1ずつずらしながら相関処理を行う。このとき、周波数を100Hzずつずらしながら、相関処理を行う。
図11(c)に示すように、ベースバンド部32bからは、2チップ分の位相C1乃至C64に対応する相関値積算Pが出力される。各位相C1乃至C64が、第1サンプリング位相SC1である。
【0041】
制御部100はメジャメント算出プログラム116に基づいて、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
【0042】
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において、コードフェーズCP1、受信周波数f1、Pmax1及びPnoise1を算出し、現在メジャメント情報160とする。コードフェーズCP1、受信周波数f1、Pmax1及びPnoise1を総称して、メジャメントと呼ぶ。
なお、コードフェーズCP1は、距離に換算されている。上述のように、C/Aコードのコード長は、例えば、300キロメートル(km)であるから、C/Aコードの端数部分であるコードフェーズを距離に換算することができる。
【0043】
図12は、現在メジャメント情報160の一例を示す図である。
図12に示すように、現在メジャメント情報160は、例えば、GPS衛星12aについて周波数系列F1における周波数f11a、コードフェーズCP11a、Pmax11a、Pnoise11aを示している。
また、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12aについての周波数系列F2における周波数f12a、コードフェーズCP12a、Pmax12a、Pnoise12aを示している。
また、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12aについての周波数系列F3における周波数f13a、コードフェーズCP13a、Pmax13a、Pnoise13aを示している。
周波数f11a乃至13aは、GPS衛星12aからの電波S1を受信したときの受信周波数である。
【0044】
同様に、現在メジャメント情報160は、GPS衛星12b乃至12fについての周波数系列F1乃至周波数系列F3等における周波数f11b等(図示せず)を示す。
【0045】
なお、同一のGPS衛星12a等についての同一の周波数系列F1等におけるメジャメントを、対応するメジャメントと呼ぶ。例えば、GPS衛星12aについての周波数系列F1におけるコードフェーズCP11aと周波数f11aは対応するメジャメントである。
なお、本実施の形態とは異なり、相関処理の方法としては、ナローコリレータ(例えば、特開2000−312163号公報参照)を採用してもよい。
【0046】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、メジャメント保存プログラム118を格納している。メジャメント保存プログラム118は、制御部100が、メジャメントを第2記憶部150に保存するためのプログラムである。
制御部100は、新たなメジャメントを現在メジャメント情報160として第2記憶部150に格納するとともに、既存の現在メジャメント情報160を前回メジャメント情報162として第2記憶部150に格納する。前回メジャメント情報162は、前回測位時のコードフェーズCP0、周波数f0、Pmax0及びPnoise0を含む。
【0047】
図13は、前回メジャメント情報162を示す図である。
図13に示すように、前回メジャメント情報162は、各GPS衛星12a等ごとに各周波数系列F1乃至F3において算出された周波数F01a等を示している。なお、図13においては、GPS衛星12aについてのメジャメントのみを図示し、他のGPS衛星12b等のメジャメントについては図示を省略している。
【0048】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、周波数評価プログラム120を格納している。周波数評価プログラム120は、制御部100が、前回測位時の受信周波数f0と現在測位時の受信周波数f1との周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断するためのプログラムである。周波数閾値α以下の範囲は、周波数系列F1,F2及びF3の周波数間隔未満の閾値によって、予め規定されている。上述のように、周波数間隔が50ヘルツ(Hz)であれば、周波数閾値αは、例えば、30ヘルツ(Hz)である。
上述の周波数評価プログラム120及び制御部100は、周波数差評価手段の一例である。そして、周波数閾値α以下の範囲は、予め規定した周波数差許容範囲内の一例である。
制御部100は、現在メジャメント情報160に示されるすべてのコードフェーズCP11a等(図12参照)について、上述の判断を行う。例えば、GPS衛星12aについての現在の周波数f11aと前回の周波数f01aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断する。同様に、周波数f12aと周波数f02aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断し、周波数f13aと周波数f03aとの周波数差が周波数閾値α以下であるか否かを判断する。同様に、GPS衛星12b乃至12fについても、同様に周波数についての判断を行う。
端末20は、周波数差が周波数閾値α以下ではない場合には、対応するコードフェーズCP11a等を測位に使用しない。すなわち、周波数評価プログラム120と制御部100は、位相排除手段の一例である。
【0049】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予測コードフェーズ算出プログラム122を格納している。予測コードフェーズ算出プログラム122は、制御部100が、前回測位時のコードフェーズCP0と、電波S1等のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間dtに基づいて、現在の位相を予測して予測コードフェーズCPeを算出するためのプログラムである。予測コードフェーズCPeは、予測位相の一例である。予測コードフェーズ算出プログラム122と制御部100は、予測位相算出手段の一例である。制御部100は、各GPS衛星12a等についての各周波数系列F1乃至F3について、それぞれ予測コードフェーズCPeを算出する。
なお、予測コードフェーズCPeは、距離に換算されている。
【0050】
図14は、予測コードフェーズ算出プログラム122の説明図である。
図14に示すように、制御部100は、例えば、式1によって、予測コードフェーズCPeを算出する。
制御部100は、式1に示すように、前回測位時のコードフェ−ズCP0から、例えば、GPS衛星12aと端末20の相対移動速度に前回測位時からの経過時間dtを乗じた値を減じることによって、予測コードフェーズCPeを算出する。
なお、式1において、予測コードフェーズCPe、前回コードフェーズCP0は、距離に換算されている。
【0051】
ここで、電波S1等は、光速で伝播する。このため、光速を電波S1等の発信周波数H1で除することによって、ドップラー偏移1ヘルツ(Hz)に対応する概略の速度を算出することができる。すなわち、ドップラー偏移がプラス(+)1ヘルツ(Hz)であるということは、GPS衛星12aが秒速0.19メートル(m/s)で端末20に近づいているということである。このため、予測コードフェーズCPeは、前回測位時のコードフェーズCP0よりも短くなる。ここで、ドップラー偏移は、例えば、前回測位時の周波数f0と発信周波数H1との差分である。
【0052】
これに対して、ドップラー偏移がマイナス(−)1ヘルツ(Hz)であるということは、GPS衛星12aが秒速0.19メートル(m/s)で端末20から遠ざかっているということである。このため、予測コードフェーズCPeは、前回測位時のコードフェーズCP0よりも長くなる。
なお、式1は、前回測位時からの経過時間が短時間であるという条件において成立するものである。言い換えると、式1は、コードフェーズと経過時間との関係をグラフ上で直線として示せる限りにおいて成立する。
また、本実施の形態とは異なり、前回測位時の周波数f0と発信周波数H1との差分と、現在測位時の周波数f1と発信周波数H1との差分との平均値を、ドップラー偏移としてもよい。これにより、予測コードフェーズCPeを一層正確に算出することができる。
また、本実施の形態とは異なり、制御部100は、前回測位時のコードフェーズCP0であって、さらに、相関処理の完了時におけるコードフェーズCP0を使用して、予測コードフェーズCPeを算出するようにしてもよい。相関処理の完了時のコードフェーズCP0は、積算によってノイズが相殺されているため、相関処理の開始時や相関処理の過程におけるコードフェーズよりも精度が高いから、予測コードフェーズCPeの精度も高くなる。
【0053】
制御部100は、算出した予測コードフェーズCPeを示す予測コードフェーズ情報164を第2記憶部150に格納する。
【0054】
図15は、予測コードフェーズ情報164の一例を示す図である。
図15に示すように、予測コードフェーズ情報164は、例えば、GPS衛星12aについての周波数系列F1における予測コードフェーズCPe1a、周波数系列F2における予測コードフェーズCPe2a、周波数系列F3における予測コードフェーズCPe3aを示す。同様に、予測コードフェーズ情報164は、GPS衛星12b乃至12fについて各周波数系列F1乃至F3における予測コードフェーズCPe1b等(図示せず)を示す。
【0055】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、コードフェーズ評価プログラム124を格納している。コードフェーズ評価プログラム124は、制御部100が、現在のコードフェーズCP1と予測コードフェーズCPeとのコードフェーズ差がコードフェーズ閾値β(以下、「閾値β」と呼ぶ)以下か否かを判断するためのプログラムである。閾値β以下の範囲は、位相差許容範囲内の一例である。コードフェーズ評価プログラム124と制御部100は、位相差評価手段の一例である。
制御部100は、上述の周波数評価プログラム120によって閾値α以下であると判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1を、コードフェーズ評価プログラム124に基づく判断の対象とする。
【0056】
制御部100は、また、コードフェーズ評価プログラム124に基づいて、各GPS衛星12a等の各周波数系列F1乃至F3ごとに、コードフェーズ差が閾値β以下である場合には、コードフェーズ差評価パス回数(以下、「パス回数」と呼ぶ)を1づつ加算する。そして、制御部100は、各GPS衛星12a等の各周波数系列F1乃至F3ごとに、コードフェーズ差が閾値βより大きい場合には、パス回数を0にする。
制御部100は、パス回数を示すコードフェーズ評価パス情報166を第2記憶部150に格納する。
【0057】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、コードフェーズ選択プログラム126を格納している。コードフェーズ選択プログラム126は、制御部100が、上述の閾値β以下のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1のうち、各GPS衛星12a等ごとに、コードフェーズ差が最小のコードフェーズCP1を選択して選択コードフェーズCP1sとするためのプログラムである。選択コードフェーズCP1sは、選択位相の一例である。コードフェーズ選択プログラム126と制御部100は、位相選択手段の一例である。
【0058】
図16は、コードフェーズ選択プログラム126の説明図である。
図16に示すように、制御部100は、例えば、GPS衛星12aについて、周波数系列F1におけるコードフェーズCP11aとCPe1aとの差分の絶対値dCP11aを算出する。また、制御部100は、周波数系列F2におけるコードフェーズCP12aとCPe2aとの差分の絶対値dCP12a、周波数系列F3におけるコードフェーズCP13aとCPe3aとの差分の絶対値dCP13aを算出する。
そして、例えば、図16に示すように、絶対値dCP11a乃至絶対値dCP13aの中で、絶対値dCP11aが最小である場合には、コードフェーズCP11aを選択する。
そして、制御部100は、コードフェーズCP11aを選択コードフェーズCP1saとする。
制御部100は、各GPS衛星12a等について、それぞれ上述の選択を行う。
制御部100は、選択した選択コードフェーズCP1sを第2格納部150に格納する。
【0059】
図17は、選択コードフェーズ情報168の一例を示す図である。
選択コードフェーズ情報168は、各GPS衛星12a等ごとに周波数系列F1乃至F3のうちいずれかにおいて算出されたコードフェーズを示す。
【0060】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、選択コードフェーズ第1評価プログラム128を格納している。選択コードフェーズ第1評価プログラム128は、制御部100が、選択コードフェーズCP1sa等の信号強度XPRが最大か否かを判断するためのプログラムである。選択コードフェーズ第1評価プログラム128と制御部100
は、選択位相第1評価手段の一例である。
具体的には、制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、選択コードフェーズCP1saのXPRが、コードフェーズCP1等のなかで最大か否かを判断する。
【0061】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、選択コードフェーズ第2評価プログラム130を格納している。選択コードフェーズ第2評価プログラム130は、制御部100が、上述のパス回数が、γ回以上であるか否かを判断するためのプログラムである。γ回は例えば、3回であり、予め規定されている。γ回以上の範囲は、規定回数範囲内の一例である。選択コードフェーズ第2評価プログラム130と制御部100は、選択位相第2評価手段の一例である。
なお、パス回数は、コードフェーズ差が閾値β以下であることが連続しない限り、0にされるから、パス回数がγ回以上であるということは、連続してコードフェーズが閾値β以下であることが連続してγ回以上であることを意味する。
また、選択コードフェーズ第2評価プログラム130は、制御部100が、積算時間中におけるXPRの低下回数が、予め規定した例えば、10回以上か否かを判断するためのプログラムでもある。
具体的には、制御部100は、上述の選択コードフェーズ第1評価プログラム128によって、選択コードフェーズCP1sa等の信号強度XPRが最大ではないと判断した場合に、選択コードフェーズ第2評価プログラム130による判断を行う。
【0062】
図18は、選択コードフェーズ第2評価プログラム130の説明図である。
図18(a)に示すように、例えば、積算時間を16秒(s)とすれば、16秒(s)経過時(積算完了時)におけるXPRが最大である。これは、ノイズは互いに相殺されるのに対して、C/Aコードは積算されるからである。この積算完了時におけるコードフェーズは信頼性が高い。
そして、XPRは、理論には、積算開始時から積算完了時にかけて、大きくなっていく。
ところが、実際には、図18(b)におけるように、積算開始直後においてはXPRは低減する場合がある。このため、コードフェーズを正確に算出することができない。
そして、端末20が受信している信号がノイズ(偽信号)である場合には、図18(c)に示すように、積算完了時に至っても、XPRは大きくならない。このため、コードフェーズを算出することは困難である。
このように、受信している電波がC/Aコードを乗せた電波であってもノイズであっても、積算開始直後においてはXPRが小さく、かつ、XPRが低下する場合がある。そして、受信している電波がC/Aコードを乗せた電波である場合には、積算時間の経過に伴って、XPRが大きくなる。
このため、積算開始から相当程度の時間が経過した後に、コードフェーズ差が閾値β以下であるという状態が継続した場合には、受信している信号が、ノイズではないと考えることができる。
また、XPRの低下が積算時間開始から相当程度の時間が継続しても発生する場合には、受信している信号がノイズであると考えることができる。言い替えると、XPRの低下が積算時間開始から相当程度の時間が継続した後に発生しない場合には、受信している信号がノイズではないと考えることができることを意味する。
そこで、端末20においては、コードフェーズ差が閾値β以下であるという状態が継続したか否かと、XPRの低下が連続したか否かを、受信している信号がノイズか否かを判断するための基準としている
【0063】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム132を格納している。測位プログラム132は、制御部100が、選択コードフェーズ第1評価プログラム128又は選択コードフェーズ第2評価プログラム130による判断結果が肯定的である場合に、選択コードフェーズCP1sを測位使用コードフェーズCP1fとして、現在位置を測位するためのプログラムである。すなわち、測位プログラム132と制御部100は、測位手段の一例である。
【0064】
制御部100は、例えば、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大である場合には、その選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faとする。
制御部100は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大ではない場合であっても、コードフェーズ評価パス回数がγ回以上であって、かつ、XPRの低減が10回未満である場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faとする。
これに対して、制御部100は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大ではない場合において、コードフェーズ評価パス回数がγ回未満であるか、又は、XPRの低減が10回以上である場合には、選択コードフェーズCP1sa(コードフェーズCP11a)以外のコードフェーズCP12a及びCP13aのうち、XPRが大きい方を測位使用コードフェーズCP1faとする。
制御部100は、決定した測位使用コードフェーズCP1fを示す測位使用コードフェーズ情報170を第2記憶部150に格納する。
【0065】
図19は、測位使用コードフェーズ情報170の一例を示す図である。
図19に示すように、測位使用コードフェーズ情報170は、例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dにそれぞれ対応する測位使用コードフェーズCP1fa,CP1fb,CP1fc及びCP1fdを示す情報である。
【0066】
制御部100は、測位使用コードフェーズ情報170に示される測位使用コードフェーズCP1fa,CP1fb,CP1fc及びCP1fdを使用して、現在位置Q1を算出する。
制御部100は、算出した測位位置Q1を示す測位位置情報172を第2記憶部150に格納する。
【0067】
図9に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム134を格納している。測位位置出力プログラム134は、制御部100が、測位位置Q1を表示装置34(図7参照)に表示するためのプログラムである。
【0068】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、コードフェーズ差が閾値β以下か否かを判断することができる。すなわち、端末20は、コードフェーズCP1の精度を検証することができる。
また、端末20は、コードフェーズ差が閾値β以下のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1のうち、各GPS衛星12a等ごとにコードフェーズ差が最小のコードフェーズCP1を選択し、選択コードフェーズCP1sとすることができる。選択コードフェーズCP1sは、コードフェーズ差が最小のコードフェーズであるから、他の周波数系列のコードフェーズCP1よりも精度が高い。
さらに、端末20は、選択コードフェーズCP1sの信号強度XPRが最大か否かを判断することができる。選択コードフェーズCP1sのXPRが最大であれば、選択コードフェーズCP1sは、他のコードフェーズCP1よりも精度が高いことが保証されたと考えることができる。
そして、端末20は、選択コードフェーズ第1評価プログラム128による判断結果が肯定的である場合には、選択コードフェーズCP1sを測位使用コードフェーズCP1fとして、現在位置を測位することができる。
これにより、端末20は、電波強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
また、端末20は選択コードフェーズ第2評価プログラム130を有するから、選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1乃至F3におけるコードフェーズが、連続して閾値β以下であった回数が3回以上である場合には、選択コードフェーズCP1sを使用して、現在位置を測位することができる。
選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1等におけるコードフェーズが、連続して閾値β以下であった回数が3回以上であるということは、選択コードフェーズCP1sが属する周波数系列F1等におけるコードフェーズは、他の周波数系列におけるコードフェーズよりも精度が高いことを意味する。
これにより、端末20は、選択コードフェーズ第1評価プログラム128による判断結果が否定的である場合であっても、精度が高いコードフェーズを使用して測位をすることができる。
【0069】
また、端末20は、周波数閾値α以内の範囲外の周波数f1に対応するコードフェーズCP1を測位から排除することができる。
これは、端末20が、C/AコードのコードフェーズCP1の精度を検証するのみならず、コードフェーズCP1を算出したときの受信周波数f1の精度も検証することができることを意味する。
これにより、端末20は、信号強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号のコードフェーズの精度を検証したうえで、一層精度良く測位することができる
【0070】
以上が本実施の形態に係る端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図20を使用して説明する。
図20は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0071】
まず、端末20は、電波S1等を受信し、メジャメントを算出する(図20のステップST1)。このステップST1は、位相算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、メジャメントを保存する(ステップST2)。
続いて、端末20は、現在周波数f1と前回周波数f0との周波数差分の絶対値が、周波数閾値α以下か否かを判断する(ステップST3)。
【0072】
端末20は、ステップST3において、周波数閾値α以下ではないと判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1を測位に使用しない(ステップST11)。
【0073】
これに対して、ステップST3において、周波数閾値α以下であると判断した周波数差分に対応するコードフェーズCP1については、対応する予測コードフェーズCPeを算出する(ステップST4)。このステップST4は、予測位相算出ステップの一例である。
【0074】
続いて、端末20は、コードフェーズCP1と予測コードフェーズCPeとのコードフェーズ差の絶対値が閾値β以下か否かを判断する(ステップST5)。このステップST5は、位相評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST5において、閾値β以下ではないと判断したコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1を測位に使用しない(ステップST11)。
【0075】
これに対して、端末20は、ステップST5において、閾値β以下ではないと判断したコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1について、各GPS衛星12a等ごとに、最小のコードフェーズ差に対応するコードフェーズCP1を選択し、選択コードフェーズCP1sとする(ステップST6)。このステップST6は、位相選択ステップの一例である。
【0076】
続いて、端末20は、測位使用コードフェーズCP1fを決定する(ステップST7)。
ここで、図21を使用して、GPS衛星12aの測位系列F1における選択コードフェーズCP1saを測位に使用するか否かを決定する場合を例にして、ステップST7の詳細を説明する。
【0077】
図21は、ステップST7の詳細を示すフローチャートである。
まず、端末20は、選択コードフェーズCP1saのXPRが最大か否かを判断する(図21のステップST101)。このステップST101は、選択位相第1評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST101における判断が肯定的であった場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST104)。
【0078】
これに対して、端末20は、ステップST101における評価が否定的であった場合には、周波数系列F1におけるコードフェーズ評価のパス回数が3回以上か否かを判断する(ステップST102)。このステップST102は、選択位相第2評価ステップの一例である。
端末20は、ステップST102における判断が肯定的であった場合には、周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満か否かを判断する(ステップST103)。
端末20は、ステップST103において、周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満であると判断した場合には、選択コードフェーズCP1saを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST104)。
【0079】
これに対して、端末20は、ステップST102における評価が否定的であった場合、又は、ステップST103において周波数系列F1のXPR低下回数が10回未満ではないと判断した場合には、CP12a又はCP13aのうち、XPRが最大のものを測位使用コードフェーズCP1faに決定する(ステップST105)。
端末20は、各GPS衛星12a等ごとに、上述の各ステップST101乃至ステップST105を実施する。
【0080】
続いて、端末20は、測位使用コードフェーズCP1fが3個以上あるか否かを判断する(ステップST8)。
ステップST8において、端末20が、測位使用コードフェーズCP1fが3個未満であると判断した場合には、測位不能であるから、測位することなく終了する。
【0081】
これに対して、ステップST6において、端末20が、測位使用コードフェーズCP1fが3個以上であると判断した場合には、測位使用コードフェーズCP1fを使用して測位する(ステップST9)。このステップST9は、測位ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位位置Q1(図9参照)を出力する(ステップST10)。
【0082】
以上のステップによって、端末20は、信号強度が微弱な弱電界下において、測位基礎符号の位相の精度を検証したうえで、精度良く測位することができる。
【0083】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関積算値とコードフェーズの関係の一例を示す図である。
【図5】候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
【図6】候補コードフェーズと時間経過等との関係の一例を示す図である。
【図7】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図8】GPS装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図10】推定周波数算出プログラムの説明図である。
【図11】メジャメント算出プログラムの説明図である。
【図12】現在メジャメント情報の一例を示す図である。
【図13】前回メジャメント情報の一例を示す図である。
【図14】予測コードフェーズ算出プログラムの説明図である。
【図15】予測コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図16】コードフェーズ選択プログラムの説明図である。
【図17】選択コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図18】選択コードフェーズ第2評価プログラムの説明図である。
【図19】測位使用コードフェーズ情報の一例を示す図である。
【図20】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図21】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、32・・・GPS装置、112・・・観測可能衛星算出プログラム、114・・・推定周波数算出プログラム、116・・・メジャメント算出プログラム、118・・・メジャメント保存プログラム、120・・・周波数評価プログラム、122・・・予測コードフェーズ算出プログラム、124・・・コードフェーズ評価プログラム、126・・・コードフェーズ選択プログラム、128・・・選択コードフェーズ第1評価プログラム、130・・・選択コードフェーズ第2評価プログラム、132・・・測位プログラム、134・・・測位位置出力プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置であって、
各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、
前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、
現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、
前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、
前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、
前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段と、
前記選択位相第1評価手段による判断結果及び/又は前記選択位相第2評価手段による判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記測位基礎符号を乗せた電波を受信したときの受信周波数を特定する受信周波数特定手段と、
前回測位時の前記受信周波数と現在の前記受信周波数との周波数差が予め規定した周波数差許容範囲内か否かを判断する周波数差評価手段と、
前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除する位相排除手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
複数の前記周波数系列は、
互いに予め規定した周波数間隔だけ乖離しており、
前記周波数差許容範囲は、前記周波数間隔未満の閾値によって規定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
前記発信源は、SPS(Satellite Positioning System)衛星であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の測位装置。
【請求項6】
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置であって、
各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出手段と、
前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出手段と、
現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価手段と、
前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択手段と、
前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価手段と、
前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価手段と、
前記選択位相第1評価手段による判断結果及び/又は前記選択位相第2評価手段による判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記予測位相算出手段は、前回測位時の前記位相であって、さらに、前記相関処理の完了時における前記位相を使用して、前記予測位相を算出する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記測位基礎符号を乗せた電波を受信したときの受信周波数を特定する受信周波数特定手段と、
前回測位時の前記受信周波数と現在の前記受信周波数との周波数差が予め規定した周波数差許容範囲内か否かを判断する周波数差評価手段と、
前記周波数差許容範囲外の前記周波数差に対応する前記位相を測位から排除する位相排除手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
複数の前記周波数系列は、
互いに予め規定した周波数間隔だけ乖離しており、
前記周波数差許容範囲は、前記周波数間隔未満の閾値によって規定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
前記発信源は、SPS(Satellite Positioning System)衛星であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の測位装置。
【請求項6】
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
発信源からの測位基礎符号に基づいて現在位置を測位する測位装置が、各前記発信源ごとに少なくとも1つの周波数系列において前記測位装置が発生するレプリカ測位基礎符号と前記測位基礎符号との相関処理を行って前記測位基礎符号の位相を算出する位相算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の前記位相と、前記測位基礎符号を乗せた電波の周波数のドップラー偏移と、前回測位時からの経過時間に基づいて、現在の前記位相を予測して予測位相を算出する予測位相算出ステップと、
前記測位装置が、現在の前記位相と前記予測位相との位相差が予め規定した位相差許容範囲内か否かを判断する位相差評価ステップと、
前記測位装置が、前記位相差許容範囲内の前記位相差に対応する前記位相のうち、各前記発信源ごとに前記位相差が最小の前記位相を選択して選択位相とする位相選択ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相の信号強度が最大か否かを判断する選択位相第1評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相が属する前記周波数系列における前記位相が、連続して前記位相差許容範囲内であった回数が予め規定した規定回数範囲内であるか否かを判断する選択位相第2評価ステップと、
前記測位装置が、前記選択位相第1評価ステップにおける判断結果及び/又は前記選択位相第2評価ステップにおける判断結果が肯定的である場合に、前記選択位相を使用して、現在位置を測位する測位ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−309730(P2007−309730A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137618(P2006−137618)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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