測定器及び処理用槽の形成方法
【課題】深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化することが可能な測定器等を提供する。
【解決手段】センサモジュールの検出部が、連続した水質測定を行っている(S101)。操作・制御部は、前回の洗浄・校正から所定時間が経過したか否かを判断する(S102)。所定時間が経過したと判断したときには、操作・制御部は、検出部の洗浄を行い(S103)、洗浄が終了したら、操作・制御部は、測定部の本体部内に校正槽を形成するように制御する(S104)。校正槽が形成されると、校正用標準液が校正槽に注入され、検出部の校正が行われる(S105)。校正が完了したら、検出部の洗浄が行われる(S106)。そして、検出部による水質測定が再開される。
【解決手段】センサモジュールの検出部が、連続した水質測定を行っている(S101)。操作・制御部は、前回の洗浄・校正から所定時間が経過したか否かを判断する(S102)。所定時間が経過したと判断したときには、操作・制御部は、検出部の洗浄を行い(S103)、洗浄が終了したら、操作・制御部は、測定部の本体部内に校正槽を形成するように制御する(S104)。校正槽が形成されると、校正用標準液が校正槽に注入され、検出部の校正が行われる(S105)。校正が完了したら、検出部の洗浄が行われる(S106)。そして、検出部による水質測定が再開される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体の測定に用いられる測定器等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用水、下水、河川水、湖沼水又は海洋水などの水質は、水質測定装置を用いて連続的に測定することで監視していく必要がある。このような連続的な測定を行う場合には、定期的な洗浄を行うことにより、水質測定装置の検出部に汚れが付着して測定精度の悪化を招くことを防止している。また、一般に検出部の感度は経時的に変化するため、定期的に標準液等を用いた校正を行っている。
【0003】
検出部の洗浄や校正を行うことができる水質測定装置としては、種々の構造が従来から提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。特許文献1には、試料液から引き上げて空中に保持した検出部をバスケット内に収容して洗浄及び校正を行う装置が開示されている。また、特許文献2には、試料液から引き上げて空中に保持した検出部のホルダの下端を底蓋で塞ぎ、ホルダ内で洗浄及び校正を行う装置が開示されている。また、特許文献3には、検出部を校正用空間に引き込み、試料液との間に蓋をして洗浄及び校正を行う装置が開示されている。特許文献4には、試料液中で収納筐で検出部を囲い、標準液をオーバーフローさせながら校正を行う装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−269311号公報
【特許文献2】特開平6−235718号公報
【特許文献3】特開平3−137554号公報
【特許文献4】特開昭63−180854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、湖沼や海洋について水質測定を行う際には、水面下の深い地点で水質の測定を行う必要もある。この場合に、特許文献1又は特許文献2に開示されたような検出部を引き上げて空中に保持する方式を採用するとすれば、大がかりな引き上げ用の駆動シリンダが必要となる。また、引き上げに要する時間が長くなることから欠測時間が長くなってしまうという問題がある。
また、特許文献3に開示された方式では、上記問題点は解消されるものの、洗浄・校正用空間が大きいために浮力が問題となる。
【0006】
また、特許文献4に開示された方式では、校正用の空間である収納筐内は密閉空間とならないため、試料液と標準液とのコンタミネーションにより正確な校正を行うことができないという問題があった。この点について更に説明すると、特許文献3に開示された方式では、洗浄・校正用の密閉空間が形成されているが、電極カバーの先端部の大口径部とパイプに設けられたパッキンとが接触することにより空間を密閉しようとしているため、水圧によりシールが保てなくなるというおそれがあった。
【0007】
さらに、河川の水質を測定する場合に、橋げたから検出部を吊り下げて連続測定を行う場合がある。河川では、天候の状況による水位の変動が大きいため、洗浄・校正機構を常に水面付近の空中に位置するように保持しておくことや検出部を常に水面下の比較的浅い位置に保持することは困難である。したがって、この場合にも同様の問題が発生することになる。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化することが可能な測定器等を提供することにある。
別の目的は、深い地点を測定する場合でも簡易な構成で校正処理を可能ならしめることにある。
また別の目的は、校正用の空間を容易かつ簡易な構成で形成することを可能ならしめることにある。
更に別の目的は、校正用の密閉空間を水中に容易かつ簡易な構成で形成することを可能ならしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明が適用される測定器は、被測定液体に浸漬される筒状部材と、筒状部材の筒内に挿入される挿入部材と、筒状部材の筒内で被測定液体を測定するセンサ部と、筒状部材の筒内において加圧流体が供給されると膨張して筒状部材と挿入部材との間を部分的に塞いで筒内の空間を仕切り、かつ、加圧流体の供給が中止されると収縮し、仕切られた空間同士を連通させる複数の膨張収縮部材と、を含み、複数の膨張収縮部材は、筒状部材が延びる方向に互いに離間して配設されることを特徴とするものである。
【0010】
複数の膨張収縮部材の各々に対する加圧流体の供給及び供給中止が独立して行われることを特徴とすることができる。
また、筒状部材の筒内にエアを供給するエア供給部を更に含み、エア供給部は、複数の膨張収縮部材のうち最上位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とすることができる。この場合には、複数の膨張収縮部材により仕切られた空間のうちの下側の空間においてエア供給部により供給されたエアと被測定液体との境界面の位置を検出する検出手段を更に含むことを特徴とすることができる。
【0011】
複数の膨張収縮部材により画成された空間に対して流体を供給する流体供給手段を更に含むことを特徴とすることができる。
また、筒状部材の筒内に位置するセンサ部の周囲からセンサ部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射してセンサ部を洗浄する洗浄部を更に含むことを特徴とすることができる。この場合には、洗浄部は、複数の膨張収縮部材のうち最下位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とすることができる。
また、挿入部材を上下方向に移動する移動手段を更に含み、センサ部が挿入部材に配置され、複数の膨張収縮部材が筒状部材の内周面に配置されていることを特徴とすることができる。
【0012】
他の観点から捉えると、本発明が適用される処理用槽の形成方法は、被測定水を測定するセンサ部について所定の処理を行うための処理用槽を形成する方法である。すなわち、処理用槽の形成方法は、センサ部を有する挿入部材を筒状部材の筒内に挿入した状態で浸漬し、筒状部材の筒内に配設された第1の膨張収縮部材と第1の膨張収縮部材よりも下側の第2の膨張収縮部材との間にセンサ部を位置させ、第1の膨張収縮部材に加圧流体を供給して第1の膨張収縮部材を膨張させ、これによって筒状部材の筒内において筒状部材と挿入部材との間を全周にわたって塞いで筒内の空間を仕切り、膨張している第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して第1の膨張収縮部材の下側にエアを溜め、第2の膨張収縮部材に加圧流体を供給して第2の膨張収縮部材を膨張させ、これによって第1の膨張収縮部材と第2の膨張収縮部材との間に被測定水から隔離された空間を処理用槽として形成することを特徴とするものである。
【0013】
被測定水から隔離された処理用槽としての空間を大気に連通した状態で空間に処理液を注入することを特徴とすることができる。この場合には、第1の膨張収縮部材への加圧流体の供給をしている状態で第2の膨張収縮部材への加圧流体の供給を中止して第2の膨張収縮部材を収縮させ、空間に注入された処理液を第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して排出することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、校正用の空間を容易かつ簡易な構成で形成することが可能になり、また、深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1〜図3は、本実施の形態に係る水質測定装置1を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
図1に示すように、水質測定装置1は、操作・制御部2、センサモジュール(挿入部材)3及び測定部(筒状部材)4を備えている。そして、水質測定装置1は、河川・湖沼に隣接して設置された構造部材に取り付けられている。ここにいう構造部材としては、河川・湖沼の護岸に起立状態で固定されたポール81と、水平面内で回動自在なようにポール81に取り付けられた支持部材82と、ポール81に固定して取り付けられた固定部材83と、河川・湖沼の水面下まで延びるように起立して固定部材83に固着されたガイド筒84と、が相当する。なお、支持部材82の先端には、定滑車82aが取り付けられている。
【0016】
操作・制御部2は、ワイヤ(移動手段)11を巻き上げるための巻き上げ装置(移動手段)12に電気的に接続されている。すなわち、巻き上げ装置12は、操作・制御部2の指示に従って作動する。なお、巻き上げ装置12は、ポール81に取り付けられている。
【0017】
巻き上げ装置12により巻き上げられるワイヤ11は、センサモジュール3の上端に取り付けられている。また、ワイヤ11は、支持部材82に取り付けられた定滑車82aに巻き掛けられている。このようにしてセンサモジュール3は、ワイヤ11により吊り下げられている。そして、巻き上げ装置12がワイヤ11を巻き取るように作動すると、センサモジュール3は上方に移動する。また、巻き上げ装置12が、ワイヤ11が繰り出されるように作動すると、センサモジュール3はその自重によって下方に移動する。このように操作・制御部2が巻き上げ装置12を制御することによって、センサモジュール3の上下方向の位置を変えることができる。
【0018】
また、操作・制御部2は、リード線13によりセンサモジュール3と接続されている。このリード線13は、電気信号を伝達するためのものである。すなわち、操作・制御部2とセンサモジュール3との間は、リード線13により相互に電気的に接続されている。そして、操作・制御部2は、リード線13を介してセンサモジュール3へ測定指示を出力したり測定結果等が入力されたりする。
また、リード線13は、中間部に動滑車13aを有する。この動滑車13aは、図1及び図2に示すように、センサモジュール3の上下移動に伴って生じる弛みを防止するためのものである。更に説明すると、動滑車13aは、センサモジュール3が上方に移動することにより中間部に弛みが生じないようにすると共に、センサモジュール3が下方に移動する際にリード線13がその移動を妨げないようにするために設けられている。
【0019】
センサモジュール3は、ガイド筒84の中に挿入可能な外形形状であり、その詳細は後述する。測定部4は、ガイド筒84の下端に配設されている。この測定部4の詳細についても後述する。
【0020】
図1及び図2に示すように、センサモジュール3は、ガイド筒84の上端84aからガイド筒84の中に差し入れたり取り出したりすることが可能である。すなわち、図1に示すように、ガイド筒84の中に挿入されているセンサモジュール3が測定部4にて測定が可能な測定位置にいる場合に、巻き上げ装置12がワイヤ11を巻き上げると、センサモジュール3は上方に移動する。そして、図2に示すように、センサモジュール3は、ガイド筒84の上端から抜き出される。
付言すると、図2に示す位置にあるセンサモジュール3は、巻き上げ装置12がワイヤを繰り出して、センサモジュール3をガイド筒84内で下方に移動させることにより、図1に示す位置にすることができる。
【0021】
このように、センサモジュール3は、ガイド筒84の中を昇降可能である。また、河川・湖沼に漬かっているガイド筒84の下側部分において、センサモジュール3を任意の位置で水中への浸漬状態で保持可能である。なお、センサモジュール3の上昇動作に伴って生じるリード線13の弛みは、上述したように、動滑車13aの作用により防止される。
【0022】
また、図3に示すように、支持部材82がポール81を中心に水平面内を旋回すると、センサモジュール3は、河川・湖沼から護岸に移される。このため、ユーザは、センサモジュール3のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、このような支持部材82の旋回動作に伴い、リード線13の損傷を防止するために、固定部材83には、リード線保持部83aが配設されている。
【0023】
図4は、センサモジュール3及び測定部4の各々の構成を説明するための縦断面図である。なお、同図は、図1に示すガイド筒84の下端部分を断面でもって図示したものである。すなわち、同図は、センサモジュール3がガイド筒84の中に位置している状態を図示したものである。更に説明すると、同図では、センサモジュール3の下端部分が、ガイド筒84の下端に配設されている測定部4に位置する状態を示している。
【0024】
図4に示すように、センサモジュール3は、電極ボディーないしは本体部31と、本体部31から下方に延びる支持部材32と、支持部材32に保持され、センサモジュール3の下端に位置する仕切り部材33と、本体部31に取り付けられ、本体部31と仕切り部材33との間に位置する水質計電極ないしは検出部(センサ部)34と、を備えている。
なお、検出部34は、5項目を検出するための各種のセンサ及び内蔵アンプで構成されている。各種のセンサについての詳細は後述する。
【0025】
測定部4は、センサモジュール3の検出部34が試料水(被測定液体、被測定水)を測定するための部分である。そして、測定部4は、河川・湖沼の水中で検出部34を保護する機能と、検出部34を洗浄するための機能と、検出部34が備える各種のセンサ類を校正するための機能と、を有する。
【0026】
測定部4について具体的に説明すると、測定部4は、略円筒状に形成され、内周面を有する本体部41と、本体部41の下部に形成され、検出部34を保護するための保護筒42と、保護筒42の上方に形成され、校正液が導かれる校正槽(処理用槽)43と、を備えている。また、測定部4は、保護筒42と校正槽43との間に配設された下部チューブ(膨張収縮部材、チューブ状部材)44と、校正槽43の上方に位置する上部チューブ(膨張収縮部材、チューブ状部材)45と、を備えている。また、測定部4は、センサモジュール3を洗浄するための洗浄部46を備えている。また、測定部4は、校正槽43に相当する領域に配設され、レベルセンサとして用いられる電極(検出手段)47,48,49を備えている。
【0027】
測定部4の保護筒42は、円周方向に沿って配設された複数の切欠き42aを円周面に有する。この切欠き42aは、所定の間隔で上下方向に離間して形成されている。また、保護筒42の下端面は開放されている。このような構成により、試料液としての河川・湖沼の水が保護筒42の中に入り込むと共に水の置き換わりが促されるので、保護筒42に入り込んだ水の入れ替えが円滑に行われる。
【0028】
測定部4の校正槽43は、下部チューブ44及び上部チューブ45により仕切られる空間で形成される。そして、校正槽43に校正液を注入するため等の2つの配管系が設けられている。すなわち、第1の配管系としては、校正槽43に相当する領域の内周面に形成された供給口(エア供給部、流体供給手段)431と、供給口431に連通して配設され、校正槽43に供給する流体を搬送するための配管432と、で構成されている。そして、第2の配管系として、校正槽43に相当する領域の内周面における供給口431よりも上方に形成された排出口(大気開放部)433と、排出口433に連通して配設され、大気に連通する配管434と、で構成されている。
【0029】
まず、校正槽43についての第1の配管系について説明する。第1の配管系の一部を構成する配管432には、更に2つの供給系が接続されている。具体的に説明すると、この2つの供給系のうちの一方は、校正用標準液が収容された図示しないタンクからの試薬を配管432に供給するための配管432aと、この配管432aの途中に配設された電磁弁432bと、で構成されている。また、2つの供給系のうちの他方は、図示しないエア源からのエア(加圧流体)を配管432に供給するための配管432cと、この配管432cの途中に配設された電磁弁432dと、で構成されている。なお、電磁弁432b及び電磁弁432dの代わりに、図示しない一つの多方弁を用いることも考えられる。
【0030】
これら電磁弁432b,432dは、操作・制御部2によりその作動が制御されている。その作動について具体的に説明すると、電磁弁432b及び電磁弁432dが閉状態の場合には、供給口431を通じた流体の供給が行われない。そして、電磁弁432bが開状態で電磁弁432dが閉状態の場合には、試薬が供給口431を通じて校正槽43に供給される。その逆の場合、すなわち、電磁弁432bが閉状態で電磁弁432dが開状態の場合には、エアが供給口431を通じて校正槽43に供給される。なお、電磁弁432b及び電磁弁432dのいずれも開状態となる制御は行われない。
【0031】
校正槽43についての第2の配管系について補足的な説明をすると、大気に連通する配管434の途中には、電磁弁434aが配設されている。この電磁弁434aは、操作・制御部2によりその作動が制御されている。
【0032】
測定部4の下部チューブ44及び上部チューブ45は、本体部41の内周面側に配設されている。また、下部チューブ44及び上部チューブ45は、上下方向に互いに離間して配置されている。
【0033】
下部チューブ44及び上部チューブ45は、エアの供給を制御することにより膨張及び収縮が可能な空気封入式チューブである。具体的に説明すると、下部チューブ44及び上部チューブ45は、両端が開放状態になっている略円筒形状(略ドーナツ形状)のゴム材からなる。下部チューブ44の外面は、外周面441および内周面442を有し、上部チューブ45の外面は、外周面451および内周面452を有する。そして、図4に示すセンサモジュール3は、下部チューブ44の内周面442に囲まれた空間及び上部チューブ45の内周面452に囲まれた空間を貫通するように配置されている。このため、下部チューブ44と上部チューブ45のいずれにもエアを供給して膨張させると、垂直方向の空間が仕切られ、密閉された校正槽43を形成することができる。また、エアの供給を中止すると、垂直方向に仕切られた空間は、他の空間と連通することになる。このように、エアの供給を制御することで、校正槽43を形成したり無くしたりすることができる。このため、検出部34を水中から引き上げなくても校正を行うことができる。
【0034】
このような下部チューブ44及び上部チューブ45による作用を実現するための具体的な構成について説明する。すなわち、下部チューブ44にエアを供給可能にするためのエア供給系統が配設されている。具体的に説明すると、このエア供給系統は、図示しないエア源からの所定圧(例えば、0.04MPa)のエアを下部チューブ44の内部に供給するための配管44aと、この配管44aの途中に配設された電磁弁44bと、で構成されている。
【0035】
また、上部チューブ45にエアを供給可能にするためのエア供給系統が配設されている。すなわち、図示しないエア源からの所定圧(例えば、0.04MPa)のエアを上部チューブ45の内部に供給するための配管45aと、この配管45aの途中に配設された電磁弁45bと、で構成されたエア供給系統が配設されている。付言すると、下部チューブ44のためのエア供給系統及び上部チューブ45のためのエア供給系統は、互いに別個独立となるように構成されている。
【0036】
電磁弁44b,45bは、操作・制御部2によりその作動が個別的に制御されている。すなわち、電磁弁44bが開状態の場合には、図示しないエア源から配管44aを通じてエアが下部チューブ44に供給される。更に説明すると、図示しないエア源からエアが下部チューブ44に供給されると、それまで収縮していた下部チューブ44は、膨張する。この場合、下部チューブ44の内周面442側が膨らむように下部チューブ44は膨張する。そして、所定圧のエアの供給を中止すると、下部チューブ44は萎んで下部チューブ44の内周面442は元に戻る。このように、下部チューブ44は、所定圧のエアの注入の有無に応じて下部チューブ44の内周面442の形状が変わるように構成されている。
なお、図4では、収縮した状態の下部チューブ44を実線で図示し、膨張した状態の下部チューブ44を破線で図示している。
【0037】
また、電磁弁45bが開状態の場合には、図示しないエア源から配管45aを通じてエアが上部チューブ45に供給される。この上部チューブ45の膨張と収縮の作用については、上述した下部チューブ44の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
測定部4の洗浄部46は、本体部41の内周面に形成された複数のノズル461と、ノズル461に連通して配設され、図示しない洗浄液タンクの洗浄液をノズル461に供給するための配管462と、で構成されている。また、配管462の途中には、操作・制御部2により制御される電磁弁462aが配設されている。ノズル461は、下部チューブ44の下側(直下)に位置しており、円周方向に延びるスリット状に形成されている。なお、ノズル461から洗浄液を勢いよく吐出させるために、図示しないアスピレータが接続されている。
【0039】
ここで、図5は、図4の線V−Vによる断面図である。同図に示すように、ノズル461は、本体部41の内周面の全周にわたって形成されており、本体部41内に洗浄空間Aが形成される。このため、洗浄空間Aに位置するセンサモジュール3の部分を、外周面の全周にわたって洗浄することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、センサモジュール3について薬液洗浄を行う場合を説明するために上述したような構成が採用されているが、薬液洗浄ではなく、エア洗浄を行う場合は、ノズル461は、配管462及び電磁弁462aを介してエア源に接続されることになる。また、必要に応じて、洗浄液タンクの他に洗浄水(水道水又は純水)タンクに連通させ、洗浄液を洗い流すことができるような構成を採用することも可能である。さらに、ノズル461は、配管462及び図示しない多方弁を介して、洗浄液タンク、洗浄水タンク及びエア源に連通させることも可能である。この場合には、配管462を分岐させた後に各々電磁弁を取り付けてもよい。
【0041】
図4に戻って説明を続ける。
測定部4の電極47,48,49は、操作・制御部2に電気的に接続されている。このため、電極47,48,49による測定結果は、操作・制御部2に出力される。操作・制御部2は、この測定結果に基づいて校正槽43が液相空間になっているか気相空間になっているかを判定することができる。このように、電極47,48,49は、校正槽43におけるレベルセンサとして用いられている。
【0042】
電極47,48,49について更に説明する。電極47,48,49は、校正槽43に相当する領域の内周面に配設されている。具体的には、電極47は上側に位置し、電極48,49は、下側に位置している。そして、電極48,49は、互いに離間して配置されているものの、同じ高さ位置に配設されている。
【0043】
電極47と電極48との間または電極47と電極49との間に所定の電圧が加えられた場合を考えると、校正槽43内が気相空間であれば、抵抗が無限大となり、導電率が測定不能(オープン状態)となる。その一方で、校正槽43内が液相空間であれば、電流が流れ、校正槽43内の液体の溶液抵抗に応じた導電率を検知することができる。
また、電極48と電極49との間に所定の電圧が加えられた場合を考えると、校正槽43内に液体が残っていれば、校正槽43内の液体の溶液抵抗に応じた導電率が検知される。その一方で、液体が残っていなければ、校正槽43内は気相状態であり、抵抗が無限大となり、導電率が測定不能になる。
このように、校正槽43におけるレベルセンサとして電極47,48,49を用いることで、装置の構成部品を簡易にすることができると共に、低コスト化を実現することができる。
【0044】
図6は、図4に示すセンサモジュール3の検出部34の概略構成を示す斜視図である。図6の(a)および(b)において、支持部材32および仕切り部材33の図示を省略している。また、図6の(b)については、温度センサ部71と電気伝導率セル部73と濁度セル部74とを図示するために、検出部34の一部の図示を省略して表している。
同図に示すように、センサモジュール3の検出部34は、5項目を検出するための複数のセンサ類が本体部31に一体化されて構成されている。具体的には、検出部34は、検水の水温を検出する温度センサ部71と、検水のpHを検出するpH電極部72と、検水の導電率を検出する電気伝導率セル部73と、検水の濁度を検出する濁度セル部74と、検水の溶存酸素を検出するDO電極部75と、を備えている。
【0045】
検出部34を構成するセンサ類について簡単に説明する。pH電極部72は、ガラス電極法によりpHを検出するものである。そして、pH電極部72は、先端に設けられたガラス電極チップ72aと、保護カバー72bと、交換式の液絡部72cと、比較電極72dと、補充口栓72eとを有する。
また、DO電極部75は、隔膜形ガルバニ電極法により溶存酸素を検出するものである。そして、DO電極部75は、先端に設けられた隔膜セット75aと、隔膜セット75aに隣接して設けられた外筒75bとを有する。
【0046】
次に、センサモジュール3の検出部34を測定部4において校正する手順について説明する。
図7は、検出部34の校正手順を示すフローチャートである。図8〜図14は、図7の校正手順を説明するための概略構成図である。すなわち、図8〜図14は、図7の校正手順に沿ってセンサモジュール3及び測定部4を順に図示したものである。なお、図8〜図14における各種の電磁弁は、操作・制御部2により開閉が制御されているが、閉じている状態を黒塗りのバルブで図示し、開いている状態を白抜きのバルブで図示している。
【0047】
図7に示すように、センサモジュール3の検出部34(図8参照)が、連続した水質測定を行っている(ステップ101)。上述したように、連続的な測定により生じる検出部34の汚れや経時的な感度低下に対応するために、所定時間(例えば1時間)ごとに検出部34の洗浄及び校正を行う必要がある。このため、前回の洗浄・校正から所定時間(例えば1時間)が経過したか否かが、操作・制御部2(図8参照)により判断される(ステップ102)。
【0048】
ここで、ステップ101の場合のセンサモジュール3及び測定部4について説明する。図8に示す通常の測定状態の場合には、センサモジュール3は、測定部4において河川・湖沼の水質を測定している。具体的に説明すると、測定部4は、ガイド筒84(図1参照)の下端に配設されており、河川・湖沼に浸漬されている。すなわち、測定部4は、河川・湖沼の水中に位置している。このため、測定部4の本体部41の内周面に囲まれた空間Bは、河川・湖沼の水で満たされている。また、センサモジュール3の検出部34は、空間B内に位置している。そして、センサモジュール3の検出部34は、測定部4の空間Bを満たす水について水質の測定を行っている。検出部34による測定結果は、リード線13(図1参照)を通じて操作・制御部2に送信される。
【0049】
更に説明すると、図8に示す状態では、操作・制御部2によって電磁弁44bが開かれている。このため、図示しないエア源からのエアが配管44aを介して下部チューブ44に供給される。そして、下部チューブ44にエアが注入されると、それまで収縮していた下部チューブ44は、膨張する。具体的には、下部チューブ44の内周面442が膨張する。膨張した下部チューブ44の内周面442は、センサモジュール3の本体部31の外周面に当接するので、センサモジュール3が測定部4に対して固定保持されることになる。このため、センサモジュール3が、河川・湖沼の水流等により空間B内で移動することを防止することができる。このようにして、検出部34のガタツキを抑えることでノイズを抑制している。付言すると、測定部4は、本体部41の下部に形成された保護筒42を有するため、水中を漂う小石等によりセンサモジュール3が損傷等を受けてしまうことが防止される。
【0050】
図7において、前回の洗浄・校正から所定時間(例えば1時間)が経過したとの判断が行われたときには(ステップ102)、操作・制御部2は、検出部34の洗浄が行われるように制御する(ステップ103)。
【0051】
検出部34の洗浄について具体的に説明すると、図9に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bを閉じて下部チューブ44へのエア供給を中止して減圧する。これにより、それまで膨張していた下部チューブ44の内周面442は、収縮する。
【0052】
そして、操作・制御部2は、電磁弁462aに対して開弁するように指示する。電磁弁462aの開弁により、図示しない洗浄液タンクの洗浄液が配管462を介して洗浄部46に供給される。そして、洗浄部46では、複数のノズル461から洗浄液が洗浄空間A(図4又は図5参照)に吐出される。また、操作・制御部2は、巻き上げ装置12(図1参照)に対してワイヤ11の巻き上げを指示する。これにより、ワイヤ11に吊り下げられているセンサモジュール3は、上昇していく。このため、洗浄空間A(図4又は図5参照)内を通過したセンサモジュール3の部分が、全周にわたって洗浄されていく。なお、センサモジュール3を上昇のみならず、上昇と下降が繰り返し行われるように、操作・制御部2が巻き上げ装置12(図1参照)を制御することにより、洗浄効果を高めることができる。
【0053】
図7において、検出部34の洗浄(ステップ103)が終了したときには、操作・制御部2(図10参照)は、電磁弁462aに対して閉弁するように指示した後に、測定部4の本体部41内に校正槽43を形成するように制御する(ステップ104)。
【0054】
具体的に説明すると、図10に示すように、センサモジュール3の仕切り部材33が下部チューブ44と略同じ位置まで上昇したことを、図示しないセンサにより検知したときには、操作・制御部2は、巻き上げ装置12(図1参照)に巻き上げの停止を指示する。なお、ここにいう図示しないセンサとしては、例えば近接センサを用いることができ、操作・制御部2は、近接センサの信号検出により検知することができる。その他には、巻き上げ装置12(図1参照)の巻き上げ量の検出により検知する手段等の公知の技術を用いて検知することができる。
【0055】
そして、操作・制御部2は、電磁弁45bに対して開弁するように指示する。この電磁弁45bの開弁により、図示しないエア源からのエアが配管45aを介して上部チューブ45に供給される。そして、上部チューブ45にエアが注入されて加圧状態になると、上部チューブ45の内周面452が膨張し、センサモジュール3の本体部31の外周面に当接する。したがって、測定部4の本体部41の内周面に囲まれた空間B(図8参照)は、上部チューブ45により仕切られ、上部チューブ45の上側の空間と下側の空間Cとに分離される。なお、この空間Cは、洗浄液を含む河川・湖沼の水で満たされている。
【0056】
また、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して開弁するように指示する。この電磁弁432dの開弁により、図示しないエア源のエアは、配管432c及び配管432を介して供給口431から空間Cに供給される。供給されたエアが空間Cに溜まっていくと、洗浄液を含む水は、空間Cから強制的に排除されていく。すなわち、エアの供給によって、エアと水との境界面が次第に下がっていく。そして、この境界面が下部チューブ44よりも下方に位置するまで、エアの供給が継続される。言い換えると、下部チューブ44の内周面442が位置する所から、洗浄液を含む水が排除されるまでエアの供給が行われる。また別の言い方をすると、下部チューブ44の内周面442が位置する所までエアで充填されるまで、エアの供給が行われる。このように、水質測定装置1(図1参照)が設置されている河川・湖沼に水の流れがあまりない場合でも、洗浄液を空間Cから強制的に排除することができる。
【0057】
ここで、エアと水との境界面の位置を検出するための手段として、上述した電極47,48,49のうちの電極48,49が用いられる。すなわち、電極48と電極49との間に電圧を加えて、その導電率を測定することでエアと水との境界面の位置を検出することができる。説明が重複するので簡単に説明すると、境界面の位置が電極48,49よりも上方であれば、その水の溶液抵抗に応じた導電率を測定することができる。その逆に、境界面の位置が電極48,49よりも下方であれば、抵抗が無限大となって導電率が測定不能となる。このように、電極48,49をレベルセンサとして利用することで、エアと水との境界面の位置を検出することができる。
なお、本実施の形態では、電極47,48,49を用いているが、経過時間を測定するように構成することも考えられる。すなわち、エアの供給開始からどのぐらいの時間が経過すると、境界面の位置が十分に下方であるかを予め測定し、その時間を設定しておくことが考えられる。
【0058】
上部チューブ45から下部チューブ44までの領域が、供給口431から供給されたエアにより充填されたと判断したときには、図11に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bに対して開弁するように指示する。この電磁弁44bの開弁により、図示しないエア源のエアが配管44aを介して下部チューブ44に供給される。すなわち、下部チューブ44の内周面442が膨張してセンサモジュール3の仕切り部材33に当接する。したがって、上部チューブ45の下側の空間Cは、下部チューブ44により更に仕切られる。このようにして、河川・湖沼の水から隔離された空間としての校正槽43が形成される。この校正槽43は、水中に形成されることからして、気密状態の空間と言うことができる。
【0059】
付言すると、この校正槽43は、下部チューブ44及び上部チューブ45を膨張させることにより形成されるものである。すなわち、校正槽43は、センサモジュール3の仕切り部材33と、仕切り部材33に当接する膨張状態の下部チューブ44の内周面442と、センサモジュール3の本体部31と、本体部31に当接する膨張状態の上部チューブ45の内周面452と、測定部4の本体部41の内周面と、により形成されている。そして、校正槽43は、下部チューブ44及び/又は上部チューブ45の収縮によって消失する。
【0060】
このように、下部チューブ44及び上部チューブ45へのエアの供給を制御すると共に、校正槽43が形成される領域へのエアを供給することにより、水中に容易に校正槽43を形成することができる。言い換えると、校正槽43の形成が必要に応じて行うことができ、検出部34を水中から引き上げなくても校正を行うことができる。
【0061】
図7において、測定部4の本体部41内に校正槽43の形成(ステップ104)が行われた後には、検出部34の校正が行われる(ステップ105)。ここで、図12に示すように、センサモジュール3において本体部31と仕切り部材33との間に位置している検出部34は、測定部4において下部チューブ44と上部チューブ45との間、すなわち校正槽43内に位置している。このため、校正槽43内に必要な量の標準液が注入されると、校正が行われることになる。ところが、校正槽43は、気密状態であることから、校正槽43を大気に連通して大気開放しないと、校正槽43内に標準液を注入することができない。
【0062】
したがって、操作・制御部2は、次のように制御する。まず、操作・制御部2は、電磁弁434aに対して開弁するように指示する。この電磁弁434aの開弁により、校正槽43は、排出口433及び配管434を介して大気に連通することになる。そして、操作・制御部2は、電磁弁432bに対して開弁するように指示する。この電磁弁432bの開弁により、図示しないタンクの標準液が、配管432a及び配管432を介して供給口431から校正槽43に供給される。必要な量の標準液が校正槽43に溜まったことを検出したら、操作・制御部2は、電磁弁432bに対して閉弁するように指示し、これにより、校正槽43への標準液の供給が停止される。また、操作・制御部2は、電磁弁434aに対して閉弁するように指示し、これにより、校正槽43は、大気と連通しなくなり、気密状態になる。
【0063】
ここで、校正槽43内に必要な量の標準液が溜まったことを検出するための手段として、上述した電極47,48又は電極49が用いられる。すなわち、電極47と電極48又は電極49との間に電圧を加えて、その導電率を測定することで、必要な量の標準液が溜まったか否かを検出することができる。説明が重複するが、簡単に説明すると、必要な量の標準液が溜まると、電極47と電極48又は電極49との間が液相空間になって電流が流れ、標準液の溶液抵抗に応じた導電率を検出することができる。その逆に、必要な量が未だ溜まっていないと、電極47と電極48又は電極49との間に気相空間が存在するので、抵抗が無限大になって導電率が測定不能となる。このように、電極47,48,49をレベルセンサとして利用することで、校正槽43内に必要な量の標準液が溜まったか否かを検出することができる。なお、図12においては、校正槽43内に溜まった標準液を黒色で塗りつぶして図示している。また、校正は、公知の技術を適宜応用して行うことができる。
【0064】
図7において、検出部34の校正が完了した後には、検出部34の洗浄が行われる(ステップ106)。具体的に説明すると、図13に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bに対して閉弁するように指示する。電磁弁44bの閉弁により、下部チューブ44へのエア供給が中止されて減圧される。このため、それまで膨張していた下部チューブ44は、収縮する。このように、下部チューブ44の収縮により、校正槽43の下側が開放されて河川・湖沼の水に連通することになる。ところが、そのままの状態では、校正槽43内に溜められていた標準液が空間Cから速やかに排除されない。このため、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して開弁するように指示する。この電磁弁432dの開弁により、図示しないエア源のエアが配管432c及び配管432を介して供給口431から校正槽43内に供給されていく。供給されたエアが空間Cに溜まっていくと、標準液は、空間Cから強制的に下方に排出されていく。標準液が空間Cから排出されたか否かは、電極48,49をレベルセンサとして用いることにより、操作・制御部2が検知できる。
なお、図13に示すように、上部チューブ45は、膨張状態のまま維持される。このため、センサモジュール3は、上部チューブ45により保持される。
【0065】
標準液の強制的な排除が完了すると、図14に示すように、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して閉弁するように指示する。これにより、図示しないエア源のエアが空間Cに供給されなくなる。そして、操作・制御部2は、電磁弁462aに対して開弁するように指示する。この電磁弁462aの開弁により、図示しない洗浄液タンクの洗浄液が、配管462を介して洗浄部46に供給される。洗浄部46に供給された洗浄液は、ノズル461から空間A(図4又は図5参照)に吐出される。
【0066】
その一方で、操作・制御部2は、電磁弁45bに対して閉弁するように指示する。この電磁弁45bの閉弁により、それまで膨張していた上部チューブ45は、収縮する。これにより、センサモジュール3は、ワイヤ11により吊り下げられることになる。そして、操作・電磁弁2は、巻き上げ装置12(図1参照)に対してワイヤ11の繰り出しを指示する。これにより、ワイヤ11により吊り下げられたセンサモジュール3は降下していき、その降下動作に伴って、センサモジュール3の外周面に付着している標準液が、ノズル461から吐出している洗浄液によって洗い流される。
【0067】
操作・制御部2は、センサモジュール3の検出部34が所定の位置まで降下したことを検出すると、電磁弁462aに対して閉弁するように指示する。これにより、洗浄部46のノズル461への洗浄液の供給が停止される。その後、操作・制御部2は、図8に示すように、電磁弁44bに対して開弁するように指示し、これにより、下部チューブ44が膨張し、その内周面442がセンサモジュール3の本体部31に当接してセンサモジュール3を保持する。
【0068】
このような下部チューブ44によるセンサモジュール3の保持が完了すると、一連の動作が終了し、センサモジュール3の検出部34によって水質測定が再開される。すなわち、通常の測定状態(ステップ101)に移行する。
【0069】
なお、本実施の形態における測定部4は、保護筒としての機能を有さず洗浄及び校正槽としての機能だけとしてもよい。また、保護筒、洗浄の両機能を有さず校正槽としての機能のみを有するものとしてもよい。また、河川・湖沼に設置した本実施の形態のほか、工業用水、下水、上水等の水質を測定する場合にもむろん使用でき、また多項目の測定に限られず、たとえばpHの測定に限定したセンサを対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図2】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図3】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図4】センサモジュール及び測定部の各々の構成を説明するための縦断面図である。
【図5】図4の線V−Vによる断面図である。
【図6】図4に示すセンサモジュールの検出部の概略構成を示す斜視図である。
【図7】検出部の校正手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す校正手順を説明するための概略構成図である。
【図9】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図10】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図11】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図12】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図13】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図14】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0071】
1…水質測定装置、11…ワイヤ、12…巻き上げ装置、2…操作・制御部、3…センサモジュール、31…本体部、33…仕切り部材、34…検出部、4…測定部、41…本体部、42…保護筒、43…校正槽、431…供給口、432,432a,432c,434,44a,45a,462…配管、432b,432d,434a,44b,45b,462a…電磁弁、433…排出口、44…下部チューブ、441,451…外周面、442,452…内周面、45…上部チューブ、46…洗浄部、461…ノズル、47,48,49…電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体の測定に用いられる測定器等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用水、下水、河川水、湖沼水又は海洋水などの水質は、水質測定装置を用いて連続的に測定することで監視していく必要がある。このような連続的な測定を行う場合には、定期的な洗浄を行うことにより、水質測定装置の検出部に汚れが付着して測定精度の悪化を招くことを防止している。また、一般に検出部の感度は経時的に変化するため、定期的に標準液等を用いた校正を行っている。
【0003】
検出部の洗浄や校正を行うことができる水質測定装置としては、種々の構造が従来から提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。特許文献1には、試料液から引き上げて空中に保持した検出部をバスケット内に収容して洗浄及び校正を行う装置が開示されている。また、特許文献2には、試料液から引き上げて空中に保持した検出部のホルダの下端を底蓋で塞ぎ、ホルダ内で洗浄及び校正を行う装置が開示されている。また、特許文献3には、検出部を校正用空間に引き込み、試料液との間に蓋をして洗浄及び校正を行う装置が開示されている。特許文献4には、試料液中で収納筐で検出部を囲い、標準液をオーバーフローさせながら校正を行う装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−269311号公報
【特許文献2】特開平6−235718号公報
【特許文献3】特開平3−137554号公報
【特許文献4】特開昭63−180854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、湖沼や海洋について水質測定を行う際には、水面下の深い地点で水質の測定を行う必要もある。この場合に、特許文献1又は特許文献2に開示されたような検出部を引き上げて空中に保持する方式を採用するとすれば、大がかりな引き上げ用の駆動シリンダが必要となる。また、引き上げに要する時間が長くなることから欠測時間が長くなってしまうという問題がある。
また、特許文献3に開示された方式では、上記問題点は解消されるものの、洗浄・校正用空間が大きいために浮力が問題となる。
【0006】
また、特許文献4に開示された方式では、校正用の空間である収納筐内は密閉空間とならないため、試料液と標準液とのコンタミネーションにより正確な校正を行うことができないという問題があった。この点について更に説明すると、特許文献3に開示された方式では、洗浄・校正用の密閉空間が形成されているが、電極カバーの先端部の大口径部とパイプに設けられたパッキンとが接触することにより空間を密閉しようとしているため、水圧によりシールが保てなくなるというおそれがあった。
【0007】
さらに、河川の水質を測定する場合に、橋げたから検出部を吊り下げて連続測定を行う場合がある。河川では、天候の状況による水位の変動が大きいため、洗浄・校正機構を常に水面付近の空中に位置するように保持しておくことや検出部を常に水面下の比較的浅い位置に保持することは困難である。したがって、この場合にも同様の問題が発生することになる。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化することが可能な測定器等を提供することにある。
別の目的は、深い地点を測定する場合でも簡易な構成で校正処理を可能ならしめることにある。
また別の目的は、校正用の空間を容易かつ簡易な構成で形成することを可能ならしめることにある。
更に別の目的は、校正用の密閉空間を水中に容易かつ簡易な構成で形成することを可能ならしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明が適用される測定器は、被測定液体に浸漬される筒状部材と、筒状部材の筒内に挿入される挿入部材と、筒状部材の筒内で被測定液体を測定するセンサ部と、筒状部材の筒内において加圧流体が供給されると膨張して筒状部材と挿入部材との間を部分的に塞いで筒内の空間を仕切り、かつ、加圧流体の供給が中止されると収縮し、仕切られた空間同士を連通させる複数の膨張収縮部材と、を含み、複数の膨張収縮部材は、筒状部材が延びる方向に互いに離間して配設されることを特徴とするものである。
【0010】
複数の膨張収縮部材の各々に対する加圧流体の供給及び供給中止が独立して行われることを特徴とすることができる。
また、筒状部材の筒内にエアを供給するエア供給部を更に含み、エア供給部は、複数の膨張収縮部材のうち最上位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とすることができる。この場合には、複数の膨張収縮部材により仕切られた空間のうちの下側の空間においてエア供給部により供給されたエアと被測定液体との境界面の位置を検出する検出手段を更に含むことを特徴とすることができる。
【0011】
複数の膨張収縮部材により画成された空間に対して流体を供給する流体供給手段を更に含むことを特徴とすることができる。
また、筒状部材の筒内に位置するセンサ部の周囲からセンサ部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射してセンサ部を洗浄する洗浄部を更に含むことを特徴とすることができる。この場合には、洗浄部は、複数の膨張収縮部材のうち最下位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とすることができる。
また、挿入部材を上下方向に移動する移動手段を更に含み、センサ部が挿入部材に配置され、複数の膨張収縮部材が筒状部材の内周面に配置されていることを特徴とすることができる。
【0012】
他の観点から捉えると、本発明が適用される処理用槽の形成方法は、被測定水を測定するセンサ部について所定の処理を行うための処理用槽を形成する方法である。すなわち、処理用槽の形成方法は、センサ部を有する挿入部材を筒状部材の筒内に挿入した状態で浸漬し、筒状部材の筒内に配設された第1の膨張収縮部材と第1の膨張収縮部材よりも下側の第2の膨張収縮部材との間にセンサ部を位置させ、第1の膨張収縮部材に加圧流体を供給して第1の膨張収縮部材を膨張させ、これによって筒状部材の筒内において筒状部材と挿入部材との間を全周にわたって塞いで筒内の空間を仕切り、膨張している第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して第1の膨張収縮部材の下側にエアを溜め、第2の膨張収縮部材に加圧流体を供給して第2の膨張収縮部材を膨張させ、これによって第1の膨張収縮部材と第2の膨張収縮部材との間に被測定水から隔離された空間を処理用槽として形成することを特徴とするものである。
【0013】
被測定水から隔離された処理用槽としての空間を大気に連通した状態で空間に処理液を注入することを特徴とすることができる。この場合には、第1の膨張収縮部材への加圧流体の供給をしている状態で第2の膨張収縮部材への加圧流体の供給を中止して第2の膨張収縮部材を収縮させ、空間に注入された処理液を第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して排出することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、校正用の空間を容易かつ簡易な構成で形成することが可能になり、また、深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1〜図3は、本実施の形態に係る水質測定装置1を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
図1に示すように、水質測定装置1は、操作・制御部2、センサモジュール(挿入部材)3及び測定部(筒状部材)4を備えている。そして、水質測定装置1は、河川・湖沼に隣接して設置された構造部材に取り付けられている。ここにいう構造部材としては、河川・湖沼の護岸に起立状態で固定されたポール81と、水平面内で回動自在なようにポール81に取り付けられた支持部材82と、ポール81に固定して取り付けられた固定部材83と、河川・湖沼の水面下まで延びるように起立して固定部材83に固着されたガイド筒84と、が相当する。なお、支持部材82の先端には、定滑車82aが取り付けられている。
【0016】
操作・制御部2は、ワイヤ(移動手段)11を巻き上げるための巻き上げ装置(移動手段)12に電気的に接続されている。すなわち、巻き上げ装置12は、操作・制御部2の指示に従って作動する。なお、巻き上げ装置12は、ポール81に取り付けられている。
【0017】
巻き上げ装置12により巻き上げられるワイヤ11は、センサモジュール3の上端に取り付けられている。また、ワイヤ11は、支持部材82に取り付けられた定滑車82aに巻き掛けられている。このようにしてセンサモジュール3は、ワイヤ11により吊り下げられている。そして、巻き上げ装置12がワイヤ11を巻き取るように作動すると、センサモジュール3は上方に移動する。また、巻き上げ装置12が、ワイヤ11が繰り出されるように作動すると、センサモジュール3はその自重によって下方に移動する。このように操作・制御部2が巻き上げ装置12を制御することによって、センサモジュール3の上下方向の位置を変えることができる。
【0018】
また、操作・制御部2は、リード線13によりセンサモジュール3と接続されている。このリード線13は、電気信号を伝達するためのものである。すなわち、操作・制御部2とセンサモジュール3との間は、リード線13により相互に電気的に接続されている。そして、操作・制御部2は、リード線13を介してセンサモジュール3へ測定指示を出力したり測定結果等が入力されたりする。
また、リード線13は、中間部に動滑車13aを有する。この動滑車13aは、図1及び図2に示すように、センサモジュール3の上下移動に伴って生じる弛みを防止するためのものである。更に説明すると、動滑車13aは、センサモジュール3が上方に移動することにより中間部に弛みが生じないようにすると共に、センサモジュール3が下方に移動する際にリード線13がその移動を妨げないようにするために設けられている。
【0019】
センサモジュール3は、ガイド筒84の中に挿入可能な外形形状であり、その詳細は後述する。測定部4は、ガイド筒84の下端に配設されている。この測定部4の詳細についても後述する。
【0020】
図1及び図2に示すように、センサモジュール3は、ガイド筒84の上端84aからガイド筒84の中に差し入れたり取り出したりすることが可能である。すなわち、図1に示すように、ガイド筒84の中に挿入されているセンサモジュール3が測定部4にて測定が可能な測定位置にいる場合に、巻き上げ装置12がワイヤ11を巻き上げると、センサモジュール3は上方に移動する。そして、図2に示すように、センサモジュール3は、ガイド筒84の上端から抜き出される。
付言すると、図2に示す位置にあるセンサモジュール3は、巻き上げ装置12がワイヤを繰り出して、センサモジュール3をガイド筒84内で下方に移動させることにより、図1に示す位置にすることができる。
【0021】
このように、センサモジュール3は、ガイド筒84の中を昇降可能である。また、河川・湖沼に漬かっているガイド筒84の下側部分において、センサモジュール3を任意の位置で水中への浸漬状態で保持可能である。なお、センサモジュール3の上昇動作に伴って生じるリード線13の弛みは、上述したように、動滑車13aの作用により防止される。
【0022】
また、図3に示すように、支持部材82がポール81を中心に水平面内を旋回すると、センサモジュール3は、河川・湖沼から護岸に移される。このため、ユーザは、センサモジュール3のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、このような支持部材82の旋回動作に伴い、リード線13の損傷を防止するために、固定部材83には、リード線保持部83aが配設されている。
【0023】
図4は、センサモジュール3及び測定部4の各々の構成を説明するための縦断面図である。なお、同図は、図1に示すガイド筒84の下端部分を断面でもって図示したものである。すなわち、同図は、センサモジュール3がガイド筒84の中に位置している状態を図示したものである。更に説明すると、同図では、センサモジュール3の下端部分が、ガイド筒84の下端に配設されている測定部4に位置する状態を示している。
【0024】
図4に示すように、センサモジュール3は、電極ボディーないしは本体部31と、本体部31から下方に延びる支持部材32と、支持部材32に保持され、センサモジュール3の下端に位置する仕切り部材33と、本体部31に取り付けられ、本体部31と仕切り部材33との間に位置する水質計電極ないしは検出部(センサ部)34と、を備えている。
なお、検出部34は、5項目を検出するための各種のセンサ及び内蔵アンプで構成されている。各種のセンサについての詳細は後述する。
【0025】
測定部4は、センサモジュール3の検出部34が試料水(被測定液体、被測定水)を測定するための部分である。そして、測定部4は、河川・湖沼の水中で検出部34を保護する機能と、検出部34を洗浄するための機能と、検出部34が備える各種のセンサ類を校正するための機能と、を有する。
【0026】
測定部4について具体的に説明すると、測定部4は、略円筒状に形成され、内周面を有する本体部41と、本体部41の下部に形成され、検出部34を保護するための保護筒42と、保護筒42の上方に形成され、校正液が導かれる校正槽(処理用槽)43と、を備えている。また、測定部4は、保護筒42と校正槽43との間に配設された下部チューブ(膨張収縮部材、チューブ状部材)44と、校正槽43の上方に位置する上部チューブ(膨張収縮部材、チューブ状部材)45と、を備えている。また、測定部4は、センサモジュール3を洗浄するための洗浄部46を備えている。また、測定部4は、校正槽43に相当する領域に配設され、レベルセンサとして用いられる電極(検出手段)47,48,49を備えている。
【0027】
測定部4の保護筒42は、円周方向に沿って配設された複数の切欠き42aを円周面に有する。この切欠き42aは、所定の間隔で上下方向に離間して形成されている。また、保護筒42の下端面は開放されている。このような構成により、試料液としての河川・湖沼の水が保護筒42の中に入り込むと共に水の置き換わりが促されるので、保護筒42に入り込んだ水の入れ替えが円滑に行われる。
【0028】
測定部4の校正槽43は、下部チューブ44及び上部チューブ45により仕切られる空間で形成される。そして、校正槽43に校正液を注入するため等の2つの配管系が設けられている。すなわち、第1の配管系としては、校正槽43に相当する領域の内周面に形成された供給口(エア供給部、流体供給手段)431と、供給口431に連通して配設され、校正槽43に供給する流体を搬送するための配管432と、で構成されている。そして、第2の配管系として、校正槽43に相当する領域の内周面における供給口431よりも上方に形成された排出口(大気開放部)433と、排出口433に連通して配設され、大気に連通する配管434と、で構成されている。
【0029】
まず、校正槽43についての第1の配管系について説明する。第1の配管系の一部を構成する配管432には、更に2つの供給系が接続されている。具体的に説明すると、この2つの供給系のうちの一方は、校正用標準液が収容された図示しないタンクからの試薬を配管432に供給するための配管432aと、この配管432aの途中に配設された電磁弁432bと、で構成されている。また、2つの供給系のうちの他方は、図示しないエア源からのエア(加圧流体)を配管432に供給するための配管432cと、この配管432cの途中に配設された電磁弁432dと、で構成されている。なお、電磁弁432b及び電磁弁432dの代わりに、図示しない一つの多方弁を用いることも考えられる。
【0030】
これら電磁弁432b,432dは、操作・制御部2によりその作動が制御されている。その作動について具体的に説明すると、電磁弁432b及び電磁弁432dが閉状態の場合には、供給口431を通じた流体の供給が行われない。そして、電磁弁432bが開状態で電磁弁432dが閉状態の場合には、試薬が供給口431を通じて校正槽43に供給される。その逆の場合、すなわち、電磁弁432bが閉状態で電磁弁432dが開状態の場合には、エアが供給口431を通じて校正槽43に供給される。なお、電磁弁432b及び電磁弁432dのいずれも開状態となる制御は行われない。
【0031】
校正槽43についての第2の配管系について補足的な説明をすると、大気に連通する配管434の途中には、電磁弁434aが配設されている。この電磁弁434aは、操作・制御部2によりその作動が制御されている。
【0032】
測定部4の下部チューブ44及び上部チューブ45は、本体部41の内周面側に配設されている。また、下部チューブ44及び上部チューブ45は、上下方向に互いに離間して配置されている。
【0033】
下部チューブ44及び上部チューブ45は、エアの供給を制御することにより膨張及び収縮が可能な空気封入式チューブである。具体的に説明すると、下部チューブ44及び上部チューブ45は、両端が開放状態になっている略円筒形状(略ドーナツ形状)のゴム材からなる。下部チューブ44の外面は、外周面441および内周面442を有し、上部チューブ45の外面は、外周面451および内周面452を有する。そして、図4に示すセンサモジュール3は、下部チューブ44の内周面442に囲まれた空間及び上部チューブ45の内周面452に囲まれた空間を貫通するように配置されている。このため、下部チューブ44と上部チューブ45のいずれにもエアを供給して膨張させると、垂直方向の空間が仕切られ、密閉された校正槽43を形成することができる。また、エアの供給を中止すると、垂直方向に仕切られた空間は、他の空間と連通することになる。このように、エアの供給を制御することで、校正槽43を形成したり無くしたりすることができる。このため、検出部34を水中から引き上げなくても校正を行うことができる。
【0034】
このような下部チューブ44及び上部チューブ45による作用を実現するための具体的な構成について説明する。すなわち、下部チューブ44にエアを供給可能にするためのエア供給系統が配設されている。具体的に説明すると、このエア供給系統は、図示しないエア源からの所定圧(例えば、0.04MPa)のエアを下部チューブ44の内部に供給するための配管44aと、この配管44aの途中に配設された電磁弁44bと、で構成されている。
【0035】
また、上部チューブ45にエアを供給可能にするためのエア供給系統が配設されている。すなわち、図示しないエア源からの所定圧(例えば、0.04MPa)のエアを上部チューブ45の内部に供給するための配管45aと、この配管45aの途中に配設された電磁弁45bと、で構成されたエア供給系統が配設されている。付言すると、下部チューブ44のためのエア供給系統及び上部チューブ45のためのエア供給系統は、互いに別個独立となるように構成されている。
【0036】
電磁弁44b,45bは、操作・制御部2によりその作動が個別的に制御されている。すなわち、電磁弁44bが開状態の場合には、図示しないエア源から配管44aを通じてエアが下部チューブ44に供給される。更に説明すると、図示しないエア源からエアが下部チューブ44に供給されると、それまで収縮していた下部チューブ44は、膨張する。この場合、下部チューブ44の内周面442側が膨らむように下部チューブ44は膨張する。そして、所定圧のエアの供給を中止すると、下部チューブ44は萎んで下部チューブ44の内周面442は元に戻る。このように、下部チューブ44は、所定圧のエアの注入の有無に応じて下部チューブ44の内周面442の形状が変わるように構成されている。
なお、図4では、収縮した状態の下部チューブ44を実線で図示し、膨張した状態の下部チューブ44を破線で図示している。
【0037】
また、電磁弁45bが開状態の場合には、図示しないエア源から配管45aを通じてエアが上部チューブ45に供給される。この上部チューブ45の膨張と収縮の作用については、上述した下部チューブ44の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
測定部4の洗浄部46は、本体部41の内周面に形成された複数のノズル461と、ノズル461に連通して配設され、図示しない洗浄液タンクの洗浄液をノズル461に供給するための配管462と、で構成されている。また、配管462の途中には、操作・制御部2により制御される電磁弁462aが配設されている。ノズル461は、下部チューブ44の下側(直下)に位置しており、円周方向に延びるスリット状に形成されている。なお、ノズル461から洗浄液を勢いよく吐出させるために、図示しないアスピレータが接続されている。
【0039】
ここで、図5は、図4の線V−Vによる断面図である。同図に示すように、ノズル461は、本体部41の内周面の全周にわたって形成されており、本体部41内に洗浄空間Aが形成される。このため、洗浄空間Aに位置するセンサモジュール3の部分を、外周面の全周にわたって洗浄することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、センサモジュール3について薬液洗浄を行う場合を説明するために上述したような構成が採用されているが、薬液洗浄ではなく、エア洗浄を行う場合は、ノズル461は、配管462及び電磁弁462aを介してエア源に接続されることになる。また、必要に応じて、洗浄液タンクの他に洗浄水(水道水又は純水)タンクに連通させ、洗浄液を洗い流すことができるような構成を採用することも可能である。さらに、ノズル461は、配管462及び図示しない多方弁を介して、洗浄液タンク、洗浄水タンク及びエア源に連通させることも可能である。この場合には、配管462を分岐させた後に各々電磁弁を取り付けてもよい。
【0041】
図4に戻って説明を続ける。
測定部4の電極47,48,49は、操作・制御部2に電気的に接続されている。このため、電極47,48,49による測定結果は、操作・制御部2に出力される。操作・制御部2は、この測定結果に基づいて校正槽43が液相空間になっているか気相空間になっているかを判定することができる。このように、電極47,48,49は、校正槽43におけるレベルセンサとして用いられている。
【0042】
電極47,48,49について更に説明する。電極47,48,49は、校正槽43に相当する領域の内周面に配設されている。具体的には、電極47は上側に位置し、電極48,49は、下側に位置している。そして、電極48,49は、互いに離間して配置されているものの、同じ高さ位置に配設されている。
【0043】
電極47と電極48との間または電極47と電極49との間に所定の電圧が加えられた場合を考えると、校正槽43内が気相空間であれば、抵抗が無限大となり、導電率が測定不能(オープン状態)となる。その一方で、校正槽43内が液相空間であれば、電流が流れ、校正槽43内の液体の溶液抵抗に応じた導電率を検知することができる。
また、電極48と電極49との間に所定の電圧が加えられた場合を考えると、校正槽43内に液体が残っていれば、校正槽43内の液体の溶液抵抗に応じた導電率が検知される。その一方で、液体が残っていなければ、校正槽43内は気相状態であり、抵抗が無限大となり、導電率が測定不能になる。
このように、校正槽43におけるレベルセンサとして電極47,48,49を用いることで、装置の構成部品を簡易にすることができると共に、低コスト化を実現することができる。
【0044】
図6は、図4に示すセンサモジュール3の検出部34の概略構成を示す斜視図である。図6の(a)および(b)において、支持部材32および仕切り部材33の図示を省略している。また、図6の(b)については、温度センサ部71と電気伝導率セル部73と濁度セル部74とを図示するために、検出部34の一部の図示を省略して表している。
同図に示すように、センサモジュール3の検出部34は、5項目を検出するための複数のセンサ類が本体部31に一体化されて構成されている。具体的には、検出部34は、検水の水温を検出する温度センサ部71と、検水のpHを検出するpH電極部72と、検水の導電率を検出する電気伝導率セル部73と、検水の濁度を検出する濁度セル部74と、検水の溶存酸素を検出するDO電極部75と、を備えている。
【0045】
検出部34を構成するセンサ類について簡単に説明する。pH電極部72は、ガラス電極法によりpHを検出するものである。そして、pH電極部72は、先端に設けられたガラス電極チップ72aと、保護カバー72bと、交換式の液絡部72cと、比較電極72dと、補充口栓72eとを有する。
また、DO電極部75は、隔膜形ガルバニ電極法により溶存酸素を検出するものである。そして、DO電極部75は、先端に設けられた隔膜セット75aと、隔膜セット75aに隣接して設けられた外筒75bとを有する。
【0046】
次に、センサモジュール3の検出部34を測定部4において校正する手順について説明する。
図7は、検出部34の校正手順を示すフローチャートである。図8〜図14は、図7の校正手順を説明するための概略構成図である。すなわち、図8〜図14は、図7の校正手順に沿ってセンサモジュール3及び測定部4を順に図示したものである。なお、図8〜図14における各種の電磁弁は、操作・制御部2により開閉が制御されているが、閉じている状態を黒塗りのバルブで図示し、開いている状態を白抜きのバルブで図示している。
【0047】
図7に示すように、センサモジュール3の検出部34(図8参照)が、連続した水質測定を行っている(ステップ101)。上述したように、連続的な測定により生じる検出部34の汚れや経時的な感度低下に対応するために、所定時間(例えば1時間)ごとに検出部34の洗浄及び校正を行う必要がある。このため、前回の洗浄・校正から所定時間(例えば1時間)が経過したか否かが、操作・制御部2(図8参照)により判断される(ステップ102)。
【0048】
ここで、ステップ101の場合のセンサモジュール3及び測定部4について説明する。図8に示す通常の測定状態の場合には、センサモジュール3は、測定部4において河川・湖沼の水質を測定している。具体的に説明すると、測定部4は、ガイド筒84(図1参照)の下端に配設されており、河川・湖沼に浸漬されている。すなわち、測定部4は、河川・湖沼の水中に位置している。このため、測定部4の本体部41の内周面に囲まれた空間Bは、河川・湖沼の水で満たされている。また、センサモジュール3の検出部34は、空間B内に位置している。そして、センサモジュール3の検出部34は、測定部4の空間Bを満たす水について水質の測定を行っている。検出部34による測定結果は、リード線13(図1参照)を通じて操作・制御部2に送信される。
【0049】
更に説明すると、図8に示す状態では、操作・制御部2によって電磁弁44bが開かれている。このため、図示しないエア源からのエアが配管44aを介して下部チューブ44に供給される。そして、下部チューブ44にエアが注入されると、それまで収縮していた下部チューブ44は、膨張する。具体的には、下部チューブ44の内周面442が膨張する。膨張した下部チューブ44の内周面442は、センサモジュール3の本体部31の外周面に当接するので、センサモジュール3が測定部4に対して固定保持されることになる。このため、センサモジュール3が、河川・湖沼の水流等により空間B内で移動することを防止することができる。このようにして、検出部34のガタツキを抑えることでノイズを抑制している。付言すると、測定部4は、本体部41の下部に形成された保護筒42を有するため、水中を漂う小石等によりセンサモジュール3が損傷等を受けてしまうことが防止される。
【0050】
図7において、前回の洗浄・校正から所定時間(例えば1時間)が経過したとの判断が行われたときには(ステップ102)、操作・制御部2は、検出部34の洗浄が行われるように制御する(ステップ103)。
【0051】
検出部34の洗浄について具体的に説明すると、図9に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bを閉じて下部チューブ44へのエア供給を中止して減圧する。これにより、それまで膨張していた下部チューブ44の内周面442は、収縮する。
【0052】
そして、操作・制御部2は、電磁弁462aに対して開弁するように指示する。電磁弁462aの開弁により、図示しない洗浄液タンクの洗浄液が配管462を介して洗浄部46に供給される。そして、洗浄部46では、複数のノズル461から洗浄液が洗浄空間A(図4又は図5参照)に吐出される。また、操作・制御部2は、巻き上げ装置12(図1参照)に対してワイヤ11の巻き上げを指示する。これにより、ワイヤ11に吊り下げられているセンサモジュール3は、上昇していく。このため、洗浄空間A(図4又は図5参照)内を通過したセンサモジュール3の部分が、全周にわたって洗浄されていく。なお、センサモジュール3を上昇のみならず、上昇と下降が繰り返し行われるように、操作・制御部2が巻き上げ装置12(図1参照)を制御することにより、洗浄効果を高めることができる。
【0053】
図7において、検出部34の洗浄(ステップ103)が終了したときには、操作・制御部2(図10参照)は、電磁弁462aに対して閉弁するように指示した後に、測定部4の本体部41内に校正槽43を形成するように制御する(ステップ104)。
【0054】
具体的に説明すると、図10に示すように、センサモジュール3の仕切り部材33が下部チューブ44と略同じ位置まで上昇したことを、図示しないセンサにより検知したときには、操作・制御部2は、巻き上げ装置12(図1参照)に巻き上げの停止を指示する。なお、ここにいう図示しないセンサとしては、例えば近接センサを用いることができ、操作・制御部2は、近接センサの信号検出により検知することができる。その他には、巻き上げ装置12(図1参照)の巻き上げ量の検出により検知する手段等の公知の技術を用いて検知することができる。
【0055】
そして、操作・制御部2は、電磁弁45bに対して開弁するように指示する。この電磁弁45bの開弁により、図示しないエア源からのエアが配管45aを介して上部チューブ45に供給される。そして、上部チューブ45にエアが注入されて加圧状態になると、上部チューブ45の内周面452が膨張し、センサモジュール3の本体部31の外周面に当接する。したがって、測定部4の本体部41の内周面に囲まれた空間B(図8参照)は、上部チューブ45により仕切られ、上部チューブ45の上側の空間と下側の空間Cとに分離される。なお、この空間Cは、洗浄液を含む河川・湖沼の水で満たされている。
【0056】
また、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して開弁するように指示する。この電磁弁432dの開弁により、図示しないエア源のエアは、配管432c及び配管432を介して供給口431から空間Cに供給される。供給されたエアが空間Cに溜まっていくと、洗浄液を含む水は、空間Cから強制的に排除されていく。すなわち、エアの供給によって、エアと水との境界面が次第に下がっていく。そして、この境界面が下部チューブ44よりも下方に位置するまで、エアの供給が継続される。言い換えると、下部チューブ44の内周面442が位置する所から、洗浄液を含む水が排除されるまでエアの供給が行われる。また別の言い方をすると、下部チューブ44の内周面442が位置する所までエアで充填されるまで、エアの供給が行われる。このように、水質測定装置1(図1参照)が設置されている河川・湖沼に水の流れがあまりない場合でも、洗浄液を空間Cから強制的に排除することができる。
【0057】
ここで、エアと水との境界面の位置を検出するための手段として、上述した電極47,48,49のうちの電極48,49が用いられる。すなわち、電極48と電極49との間に電圧を加えて、その導電率を測定することでエアと水との境界面の位置を検出することができる。説明が重複するので簡単に説明すると、境界面の位置が電極48,49よりも上方であれば、その水の溶液抵抗に応じた導電率を測定することができる。その逆に、境界面の位置が電極48,49よりも下方であれば、抵抗が無限大となって導電率が測定不能となる。このように、電極48,49をレベルセンサとして利用することで、エアと水との境界面の位置を検出することができる。
なお、本実施の形態では、電極47,48,49を用いているが、経過時間を測定するように構成することも考えられる。すなわち、エアの供給開始からどのぐらいの時間が経過すると、境界面の位置が十分に下方であるかを予め測定し、その時間を設定しておくことが考えられる。
【0058】
上部チューブ45から下部チューブ44までの領域が、供給口431から供給されたエアにより充填されたと判断したときには、図11に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bに対して開弁するように指示する。この電磁弁44bの開弁により、図示しないエア源のエアが配管44aを介して下部チューブ44に供給される。すなわち、下部チューブ44の内周面442が膨張してセンサモジュール3の仕切り部材33に当接する。したがって、上部チューブ45の下側の空間Cは、下部チューブ44により更に仕切られる。このようにして、河川・湖沼の水から隔離された空間としての校正槽43が形成される。この校正槽43は、水中に形成されることからして、気密状態の空間と言うことができる。
【0059】
付言すると、この校正槽43は、下部チューブ44及び上部チューブ45を膨張させることにより形成されるものである。すなわち、校正槽43は、センサモジュール3の仕切り部材33と、仕切り部材33に当接する膨張状態の下部チューブ44の内周面442と、センサモジュール3の本体部31と、本体部31に当接する膨張状態の上部チューブ45の内周面452と、測定部4の本体部41の内周面と、により形成されている。そして、校正槽43は、下部チューブ44及び/又は上部チューブ45の収縮によって消失する。
【0060】
このように、下部チューブ44及び上部チューブ45へのエアの供給を制御すると共に、校正槽43が形成される領域へのエアを供給することにより、水中に容易に校正槽43を形成することができる。言い換えると、校正槽43の形成が必要に応じて行うことができ、検出部34を水中から引き上げなくても校正を行うことができる。
【0061】
図7において、測定部4の本体部41内に校正槽43の形成(ステップ104)が行われた後には、検出部34の校正が行われる(ステップ105)。ここで、図12に示すように、センサモジュール3において本体部31と仕切り部材33との間に位置している検出部34は、測定部4において下部チューブ44と上部チューブ45との間、すなわち校正槽43内に位置している。このため、校正槽43内に必要な量の標準液が注入されると、校正が行われることになる。ところが、校正槽43は、気密状態であることから、校正槽43を大気に連通して大気開放しないと、校正槽43内に標準液を注入することができない。
【0062】
したがって、操作・制御部2は、次のように制御する。まず、操作・制御部2は、電磁弁434aに対して開弁するように指示する。この電磁弁434aの開弁により、校正槽43は、排出口433及び配管434を介して大気に連通することになる。そして、操作・制御部2は、電磁弁432bに対して開弁するように指示する。この電磁弁432bの開弁により、図示しないタンクの標準液が、配管432a及び配管432を介して供給口431から校正槽43に供給される。必要な量の標準液が校正槽43に溜まったことを検出したら、操作・制御部2は、電磁弁432bに対して閉弁するように指示し、これにより、校正槽43への標準液の供給が停止される。また、操作・制御部2は、電磁弁434aに対して閉弁するように指示し、これにより、校正槽43は、大気と連通しなくなり、気密状態になる。
【0063】
ここで、校正槽43内に必要な量の標準液が溜まったことを検出するための手段として、上述した電極47,48又は電極49が用いられる。すなわち、電極47と電極48又は電極49との間に電圧を加えて、その導電率を測定することで、必要な量の標準液が溜まったか否かを検出することができる。説明が重複するが、簡単に説明すると、必要な量の標準液が溜まると、電極47と電極48又は電極49との間が液相空間になって電流が流れ、標準液の溶液抵抗に応じた導電率を検出することができる。その逆に、必要な量が未だ溜まっていないと、電極47と電極48又は電極49との間に気相空間が存在するので、抵抗が無限大になって導電率が測定不能となる。このように、電極47,48,49をレベルセンサとして利用することで、校正槽43内に必要な量の標準液が溜まったか否かを検出することができる。なお、図12においては、校正槽43内に溜まった標準液を黒色で塗りつぶして図示している。また、校正は、公知の技術を適宜応用して行うことができる。
【0064】
図7において、検出部34の校正が完了した後には、検出部34の洗浄が行われる(ステップ106)。具体的に説明すると、図13に示すように、操作・制御部2は、電磁弁44bに対して閉弁するように指示する。電磁弁44bの閉弁により、下部チューブ44へのエア供給が中止されて減圧される。このため、それまで膨張していた下部チューブ44は、収縮する。このように、下部チューブ44の収縮により、校正槽43の下側が開放されて河川・湖沼の水に連通することになる。ところが、そのままの状態では、校正槽43内に溜められていた標準液が空間Cから速やかに排除されない。このため、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して開弁するように指示する。この電磁弁432dの開弁により、図示しないエア源のエアが配管432c及び配管432を介して供給口431から校正槽43内に供給されていく。供給されたエアが空間Cに溜まっていくと、標準液は、空間Cから強制的に下方に排出されていく。標準液が空間Cから排出されたか否かは、電極48,49をレベルセンサとして用いることにより、操作・制御部2が検知できる。
なお、図13に示すように、上部チューブ45は、膨張状態のまま維持される。このため、センサモジュール3は、上部チューブ45により保持される。
【0065】
標準液の強制的な排除が完了すると、図14に示すように、操作・制御部2は、電磁弁432dに対して閉弁するように指示する。これにより、図示しないエア源のエアが空間Cに供給されなくなる。そして、操作・制御部2は、電磁弁462aに対して開弁するように指示する。この電磁弁462aの開弁により、図示しない洗浄液タンクの洗浄液が、配管462を介して洗浄部46に供給される。洗浄部46に供給された洗浄液は、ノズル461から空間A(図4又は図5参照)に吐出される。
【0066】
その一方で、操作・制御部2は、電磁弁45bに対して閉弁するように指示する。この電磁弁45bの閉弁により、それまで膨張していた上部チューブ45は、収縮する。これにより、センサモジュール3は、ワイヤ11により吊り下げられることになる。そして、操作・電磁弁2は、巻き上げ装置12(図1参照)に対してワイヤ11の繰り出しを指示する。これにより、ワイヤ11により吊り下げられたセンサモジュール3は降下していき、その降下動作に伴って、センサモジュール3の外周面に付着している標準液が、ノズル461から吐出している洗浄液によって洗い流される。
【0067】
操作・制御部2は、センサモジュール3の検出部34が所定の位置まで降下したことを検出すると、電磁弁462aに対して閉弁するように指示する。これにより、洗浄部46のノズル461への洗浄液の供給が停止される。その後、操作・制御部2は、図8に示すように、電磁弁44bに対して開弁するように指示し、これにより、下部チューブ44が膨張し、その内周面442がセンサモジュール3の本体部31に当接してセンサモジュール3を保持する。
【0068】
このような下部チューブ44によるセンサモジュール3の保持が完了すると、一連の動作が終了し、センサモジュール3の検出部34によって水質測定が再開される。すなわち、通常の測定状態(ステップ101)に移行する。
【0069】
なお、本実施の形態における測定部4は、保護筒としての機能を有さず洗浄及び校正槽としての機能だけとしてもよい。また、保護筒、洗浄の両機能を有さず校正槽としての機能のみを有するものとしてもよい。また、河川・湖沼に設置した本実施の形態のほか、工業用水、下水、上水等の水質を測定する場合にもむろん使用でき、また多項目の測定に限られず、たとえばpHの測定に限定したセンサを対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図2】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図3】本実施の形態に係る水質測定装置を河川・湖沼に設置した場合の構成を説明するための概略図である。
【図4】センサモジュール及び測定部の各々の構成を説明するための縦断面図である。
【図5】図4の線V−Vによる断面図である。
【図6】図4に示すセンサモジュールの検出部の概略構成を示す斜視図である。
【図7】検出部の校正手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す校正手順を説明するための概略構成図である。
【図9】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図10】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図11】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図12】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図13】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【図14】図7の校正手順を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0071】
1…水質測定装置、11…ワイヤ、12…巻き上げ装置、2…操作・制御部、3…センサモジュール、31…本体部、33…仕切り部材、34…検出部、4…測定部、41…本体部、42…保護筒、43…校正槽、431…供給口、432,432a,432c,434,44a,45a,462…配管、432b,432d,434a,44b,45b,462a…電磁弁、433…排出口、44…下部チューブ、441,451…外周面、442,452…内周面、45…上部チューブ、46…洗浄部、461…ノズル、47,48,49…電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液体に浸漬される筒状部材と、
前記筒状部材の筒内に挿入される挿入部材と、
前記筒状部材の筒内で被測定液体を測定するセンサ部と、
前記筒状部材の筒内において加圧流体が供給されると膨張して当該筒状部材と前記挿入部材との間を部分的に塞いで当該筒内の空間を仕切り、かつ、加圧流体の供給が中止されると収縮し、仕切られた空間同士を連通させる複数の膨張収縮部材と、
を含み、前記複数の膨張収縮部材は、前記筒状部材が延びる方向に互いに離間して配設されることを特徴とする測定器。
【請求項2】
前記複数の膨張収縮部材の各々に対する加圧流体の供給及び供給中止が独立して行われることを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記筒状部材の筒内にエアを供給するエア供給部を更に含み、当該エア供給部は、前記複数の膨張収縮部材のうち最上位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
前記複数の膨張収縮部材により仕切られた空間のうちの下側の空間において前記エア供給部により供給されたエアと被測定液体との境界面の位置を検出する検出手段を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の測定器。
【請求項5】
前記複数の膨張収縮部材により画成された空間に対して流体を供給する流体供給手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項6】
前記筒状部材の筒内に位置する前記センサ部の周囲から当該センサ部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して当該センサ部を洗浄する洗浄部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項7】
前記洗浄部は、前記複数の膨張収縮部材のうち最下位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とする請求項6に記載の測定器。
【請求項8】
前記挿入部材を上下方向に移動する移動手段を更に含み、
前記センサ部が前記挿入部材に配置され、前記複数の膨張収縮部材が前記筒状部材の内周面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項9】
被測定水を測定するセンサ部について所定の処理を行うための処理用槽を形成する処理用槽の形成方法であって、
前記センサ部を有する挿入部材を筒状部材の筒内に挿入した状態で浸漬し、
前記筒状部材の筒内に配設された第1の膨張収縮部材と当該第1の膨張収縮部材よりも下側の第2の膨張収縮部材との間に前記センサ部を位置させ、
前記第1の膨張収縮部材に加圧流体を供給して当該第1の膨張収縮部材を膨張させ、これによって前記筒状部材の筒内において当該筒状部材と前記挿入部材との間を全周にわたって塞いで筒内の空間を仕切り、
膨張している前記第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して当該第1の膨張収縮部材の下側にエアを溜め、
前記第2の膨張収縮部材に加圧流体を供給して当該第2の膨張収縮部材を膨張させ、これによって前記第1の膨張収縮部材と当該第2の膨張収縮部材との間に被測定水から隔離された空間を処理用槽として形成することを特徴とする処理用槽の形成方法。
【請求項10】
被測定水から隔離された処理用槽としての前記空間を大気に連通した状態で当該空間に処理液を注入することを特徴とする請求項9に記載の処理用槽の形成方法。
【請求項11】
前記第1の膨張収縮部材への加圧流体の供給をしている状態で前記第2の膨張収縮部材への加圧流体の供給を中止して当該第2の膨張収縮部材を収縮させ、
前記空間に注入された処理液を前記第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して排出することを特徴とする請求項10に記載の処理用槽の形成方法。
【請求項1】
被測定液体に浸漬される筒状部材と、
前記筒状部材の筒内に挿入される挿入部材と、
前記筒状部材の筒内で被測定液体を測定するセンサ部と、
前記筒状部材の筒内において加圧流体が供給されると膨張して当該筒状部材と前記挿入部材との間を部分的に塞いで当該筒内の空間を仕切り、かつ、加圧流体の供給が中止されると収縮し、仕切られた空間同士を連通させる複数の膨張収縮部材と、
を含み、前記複数の膨張収縮部材は、前記筒状部材が延びる方向に互いに離間して配設されることを特徴とする測定器。
【請求項2】
前記複数の膨張収縮部材の各々に対する加圧流体の供給及び供給中止が独立して行われることを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記筒状部材の筒内にエアを供給するエア供給部を更に含み、当該エア供給部は、前記複数の膨張収縮部材のうち最上位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
前記複数の膨張収縮部材により仕切られた空間のうちの下側の空間において前記エア供給部により供給されたエアと被測定液体との境界面の位置を検出する検出手段を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の測定器。
【請求項5】
前記複数の膨張収縮部材により画成された空間に対して流体を供給する流体供給手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項6】
前記筒状部材の筒内に位置する前記センサ部の周囲から当該センサ部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して当該センサ部を洗浄する洗浄部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項7】
前記洗浄部は、前記複数の膨張収縮部材のうち最下位の膨張収縮部材よりも下方に位置することを特徴とする請求項6に記載の測定器。
【請求項8】
前記挿入部材を上下方向に移動する移動手段を更に含み、
前記センサ部が前記挿入部材に配置され、前記複数の膨張収縮部材が前記筒状部材の内周面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項9】
被測定水を測定するセンサ部について所定の処理を行うための処理用槽を形成する処理用槽の形成方法であって、
前記センサ部を有する挿入部材を筒状部材の筒内に挿入した状態で浸漬し、
前記筒状部材の筒内に配設された第1の膨張収縮部材と当該第1の膨張収縮部材よりも下側の第2の膨張収縮部材との間に前記センサ部を位置させ、
前記第1の膨張収縮部材に加圧流体を供給して当該第1の膨張収縮部材を膨張させ、これによって前記筒状部材の筒内において当該筒状部材と前記挿入部材との間を全周にわたって塞いで筒内の空間を仕切り、
膨張している前記第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して当該第1の膨張収縮部材の下側にエアを溜め、
前記第2の膨張収縮部材に加圧流体を供給して当該第2の膨張収縮部材を膨張させ、これによって前記第1の膨張収縮部材と当該第2の膨張収縮部材との間に被測定水から隔離された空間を処理用槽として形成することを特徴とする処理用槽の形成方法。
【請求項10】
被測定水から隔離された処理用槽としての前記空間を大気に連通した状態で当該空間に処理液を注入することを特徴とする請求項9に記載の処理用槽の形成方法。
【請求項11】
前記第1の膨張収縮部材への加圧流体の供給をしている状態で前記第2の膨張収縮部材への加圧流体の供給を中止して当該第2の膨張収縮部材を収縮させ、
前記空間に注入された処理液を前記第1の膨張収縮部材の下方からエアを供給して排出することを特徴とする請求項10に記載の処理用槽の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−178394(P2007−178394A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380232(P2005−380232)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
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