説明

測定方法及び測定装置

【課題】所要の測定範囲内の多数の測定点を簡便に、而も自動、高速で測定可能な測定方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部8と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部7と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部16と、測距光軸の測角を行う測角部9と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部14と、制御演算部21とを具備し、該制御演算部は前記デジタル画像上から測定点の角度を検出し、検出した角度に基づき前記測距光軸偏向部を制御して前記測距光軸を順次測定点に向け、該測定点の測距を行う様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の測定範囲の画像を取得すると共に測定範囲内の多数の測定点について簡便に測定可能な測定方法及び測定装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の3次元データを取得する場合、レーザスキャナ或はトータルステーションを用いて測定を行っている。レーザスキャナは、高速で多数の測定点を測定可能であるが、高価である。又、トータルステーションによる測定は、測定作業者が測定点を一点一点確認しつつ、実行されており、測定には測定作業者を必要とすると共に時間が掛るという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−268004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は斯かる実情に鑑み、所要の測定範囲内の多数の測定点を簡便に、而も自動、高速で測定可能な測定方法及び測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部とを具備する測定装置に於いて、測定範囲のデジタル画像を取得し、取得したデジタル画像を画像処理して測定点を抽出すると共に画像上から各測定点の測角を行い、測角の結果に基づき測距光軸を順次測定点に向け、測定点の測距を行う測定方法に係るものである。
【0006】
又本発明は、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸は前記基準光軸に対して偏向され、前記基準光軸を固定した状態で、前記測定範囲の測定点の測定を行う測定方法に係るものである。
【0007】
又本発明は、測定点を中心に前記測距光軸を微小スキャンしつつ測距を行う測定方法に係るものである。
【0008】
又本発明は、測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、測距光軸の測角を行う測角部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部と、制御演算部とを具備し、該制御演算部は前記デジタル画像上から測定点の角度を検出し、検出した角度に基づき前記測距光軸偏向部を制御して前記測距光軸を順次測定点に向け、該測定点の測距を行う様構成した測定装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸偏向部は前記測距光軸を前記基準光軸に対して偏向する測定装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記測距光軸偏向部は、前記測距光軸上に相対向して設けられた一対のMEMSミラーであり、一対のMEMSミラーは傾斜の傾斜方向が90°ずれている測定装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記測角部は、測距光軸上に設けられた光束分割手段と、分割された光束を受光する2次元位置検出素子とを具備し、該2次元位置検出素子は前記測距光軸に対応する点を原点とする座標系を有し、該座標系に於ける前記分割された光束の位置を検出することで、前記測距光軸の偏向角、偏向の方向を検出する測定装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、表示部を更に有し、該表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に抽出された測定点が重ねて表示され、未測定測定点と測定完了済測定点とが識別表示される測定装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、表示部を更に有し、前記測距光は可視光であり、前記表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に測定点を照射する測距光が表示される測定装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記測距部は測距光軸を有し、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸と前記基準光軸は固定的な関係で設けられ、前記測距光軸と前記基準光軸は一体的に偏向されて前記測距光軸が測定点に向けられる測定装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記撮像部の光軸は測距光軸を共有しており、共有光軸部分に偏向ミラーが設けられ、該偏向ミラーが水平回転、鉛直回転されることで、前記測距光軸が偏向される測定装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部とを具備する測定装置に於いて、測定範囲のデジタル画像を取得し、取得したデジタル画像を画像処理して測定点を抽出すると共に画像上から各測定点の測角を行い、測角の結果に基づき測距光軸を順次測定点に向け、測定点の測距を行うので、測定点の設定、測定点の視準、測定を自動で行うことができ、測定時間の短縮、作業性向上、効率の向上が図れる。
【0017】
又本発明によれば、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸は前記基準光軸に対して偏向され、前記基準光軸を固定した状態で、前記測定範囲の測定点の測定を行うので、測定装置の向きを変更し、又測定装置を移動する必要がなく、多点の測定を簡便に行うことができる。
【0018】
又本発明によれば、測定点を中心に前記測距光軸を微小スキャンしつつ測距を行うので、測定点が稜線、頂点に位置した場合でも稜線、頂点を高精度で測定できると共に測定対象物の形状を正確に測定できる。
【0019】
又本発明によれば、測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、測距光軸の測角を行う測角部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部と、制御演算部とを具備し、該制御演算部は前記デジタル画像上から測定点の角度を検出し、検出した角度に基づき前記測距光軸偏向部を制御して前記測距光軸を順次測定点に向け、該測定点の測距を行う様構成したので、測定点の設定、測定点の視準、測定を自動で行うことができ、測定時間の短縮、作業性向上、効率の向上が図れる。
【0020】
又本発明によれば、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸偏向部は前記測距光軸を前記基準光軸に対して偏向するので、測定装置の向きを変更し、又測定装置を移動することなく、多点の測定を簡便に行うことができる。
【0021】
又本発明によれば、前記測距光軸偏向部は、前記測距光軸上に相対向して設けられた一対のMEMSミラーであり、一対のMEMSミラーは傾斜の傾斜方向が90°ずれているので、測距光軸を任意の方向に偏向でき、又高速で偏向可能である。
【0022】
又本発明によれば、前記測角部は、測距光軸上に設けられた光束分割手段と、分割された光束を受光する2次元位置検出素子とを具備し、該2次元位置検出素子は前記測距光軸に対応する点を原点とする座標系を有し、該座標系に於ける前記分割された光束の位置を検出することで、前記測距光軸の偏向角、偏向の方向を検出するので、2次元の測角を同時に行え、而も小型化が可能である。
【0023】
又本発明によれば、表示部を更に有し、該表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に抽出された測定点が重ねて表示され、未測定測定点と測定完了済測定点とが識別表示されるので、測定の進捗状態を視覚的に判断できる。
【0024】
又本発明によれば、表示部を更に有し、前記測距光は可視光であり、前記表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に測定点を照射する測距光が表示されるので、測定位置、測定の進捗状態を視覚的に判断できる等の優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る測定装置の外観図である。
【図2】該測定装置の概略構成図である。
【図3】該測定装置に用いられる光学系の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施例に於ける作動を示すフローチャートである。
【図5】(A)(B)は、撮像画像から測定点を抽出する場合の説明図である。
【図6】測距光が稜線によって分割される場合の説明図である。
【図7】(A)は、測定点が稜線に存在する場合の稜線検出を行う場合の測定方法の一例を示す説明図、(B)は、測定点が頂点に存在する場合の頂点検出を行う場合の測定方法の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る測定装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0027】
先ず、図1に於いて、本発明が実施される測定装置について説明する。
【0028】
測定装置1は、三脚2等の支持装置を介して既知点Pに設置される。又、前記測定装置1は、測定装置本体3、整準部4、回動部5を有し、前記整準部4は前記測定装置本体3を水平状態に整準し、前記回動部5は前記測定装置本体3を鉛直軸心を中心に360゜全周回転させることが可能である。
【0029】
図2を参照して、前記測定装置本体3の概略構成を説明する。
【0030】
図2中、7は測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部、8は測定範囲内で設定された測定点を測定する測距部、9は前記測定点の方向を検出する測角部、10は測定装置本体3の傾斜を検出する傾斜センサ、11は測定装置本体3の方位を検出する方位センサ、12は前記測定装置本体3の地上座標系の位置を測定するGPS装置を示す。又、図2中、14は前記撮像部7で取得した画像を処理して、測定点を抽出する画像処理部、16は測距光の光軸を前記測定点に向ける測距光軸偏向部、17は測定範囲の画像、測定点が抽出された状態、或は測距結果、測定の進行状態等を表示する表示部、18は、測定範囲の設定、測定条件の設定、検出結果の表示操作等を行う操作部を示す。尚、前記表示部17はタッチパネルとして、表示部と操作部とを兼用させてもよい。
【0031】
更に、図2中、19は記憶部、21は制御演算部を示し、前記記憶部19はプログラム格納領域、データ格納領域を有し、前記プログラム格納領域には、前記測定装置本体3に一連の測定作動を実行させる為のシーケンスプログラム、前記撮像部7で撮像したデジタル画像を、画像処理し、測定点としての特徴点を抽出し、抽出した特徴点について順位付けを行う画像処理プログラム、更に画像上の任意の点の画角(水平角、鉛直角)を測定する測角プログラム等のプログラムが格納されている。
【0032】
又、前記データ格納領域には、前記撮像部7で取得したデジタル画像が記憶され、更に、測定点についての3次元データ(測距、測角)が対応する特徴点に関連付けられて記憶されている。
【0033】
前記制御演算部21は、前記シーケンスプログラム、前記画像処理プログラム、測角プログラム等のプログラムに基づき、前記撮像部7を制御して撮像を実行し、前記測距部8、前記測角部9を制御して、測距、測角を実行し、前記画像処理部14を制御して画像処理を行い、前記測距光軸偏向部16を制御して測距光軸(後述)を所定の方向に向け、更に各測定点について得られた測距、測角に基づき3次元データを作製し、更に画像との関連付けを行う。
【0034】
図3は、前記測定装置本体3に設けられる光学系23の概略構成を示している。該光学系23は、更に視準光学系24、投光光学系25、受光光学系26、内部参照光学系27を有している。
【0035】
図3中、28は前記光学系23の基準光軸を示している。該基準光軸28は、前記測定装置1が整準された状態では水平となっている。
【0036】
以下、視準光学系24について説明する。
【0037】
前記基準光軸28上に対物レンズ29、偏向ミラー30、反射プリズム31が配設されている。該反射プリズム31は、前記基準光軸28に垂直な第1反射面31a、前記基準光軸28に傾斜した第2反射面31bを有している。前記第1反射面31aは波長選択膜となっており、後述する反射測距光37′を分離して反射する様になっている。又、前記第2反射面31bは、前記基準光軸28から反射光軸27aを分離し、該反射光軸27a上には画像センサ32が配設されている。
【0038】
尚、測距光37として可視光を使用した場合は、前記第1反射面31aをハーフミラーとして、反射測距光37′の一部を反射する様にしてもよい。
【0039】
前記画像センサ32は、例えば画素の集合体であるCCD或はCMOS等であり、受光する画素の受光面(撮像面)上での位置が特定できる様になっており、更に画像センサ32の中心が前記反射光軸27aと合致している。前記画像センサ32上での画素の位置に基づき、前記反射光軸27aとの偏差と偏差の方向を求めることで、画素の画角即ち、前記反射光軸27aに対する水平角、鉛直角が求められる様になっている。
【0040】
前記対物レンズ29、前記反射プリズム31、前記画像センサ32は、前記視準光学系24を構成すると共に前記撮像部7を構成する。該撮像部7の画角は、例えば±20°である。
【0041】
前記投光光学系25について説明する。
【0042】
該投光光学系25に於いて、34は発光源であり、該発光源34は可視光、又は不可視光、好ましくは不可視光のレーザ光線を測距光として発する。
【0043】
前記発光源34から発せられたレーザ光線は、ハーフミラー35、ミラー36によって測距光軸37aを有する測距光37と、内部参照光軸38aを有する内部参照光38(後述)とに2分割され、前記測距光37の光路と前記内部参照光38の光路とに掛渡って光路切替え器39が設けられている。
【0044】
該光路切替え器39は、回転可能な光路選択円板41を有し、該光路選択円板41は円周方向にレーザ光線透過孔(図示せず)が所定のピッチで穿設され、測距光37及び内部参照光38の一方が前記レーザ光線透過孔を通過する時は、測距光37及び内部参照光38の他方は前記光路選択円板41によって遮断される様になっており、前記光路選択円板41を回転することで、前記測距光37及び内部参照光38が択一的に選択される様になっている。
【0045】
前記測距光軸37a上に1次元偏向ミラー42、2次元偏向ミラー43が対向する様に配置される。前記1次元偏向ミラー42は、前記測距光軸37aに対して所定の一方向に傾斜し、その傾斜角を制御可能であり、前記2次元偏向ミラー43は前記測距光軸37aに対して前記1次元偏向ミラー42とは直角な方向に傾斜し、即ち90°位相の異なる方向に傾斜し、その傾斜角を制御可能となっている。従って、前記1次元偏向ミラー42と前記2次元偏向ミラー43の傾斜を制御することで、測距光37の射出方向を、前記視準光学系24の画角の範囲内で、前記測距光軸37aに対し2次元の方向に自在且つ所望の傾斜角となる様に制御可能となっている。
【0046】
尚、前記1次元偏向ミラー42、前記2次元偏向ミラー43は、測距光軸偏向部16を構成し、前記1次元偏向ミラー42、前記2次元偏向ミラー43としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーが用いられる。MEMSミラーは、高周波電圧を印加することで、高速度で振動し、反射面が微小角度で往復回転するものである。
【0047】
尚、前記1次元偏向ミラー42、前記2次元偏向ミラー43を傾斜させる手段としては、モータにより回転させてもよい。
【0048】
前記測距光軸37a上には、光束分割手段としてのハーフミラー44、測距系偏向ミラー45が設けられ、該測距系偏向ミラー45によって前記偏向ミラー30に向け測距光37が反射され、前記偏向ミラー30によって更に反射された測距光37の測距光軸37aは前記基準光軸28に合致する様になっている。
【0049】
前記ハーフミラー44によって分割された分割測距光の光軸上には集光レンズ46及び2次元位置検出素子47が配設され、前記集光レンズ46は前記分割測距光を前記2次元位置検出素子47上に集光する様に配置されている。
【0050】
前記2次元位置検出素子47は、前記分割測距光光軸を検出するものであり、前記2次元位置検出素子47の中心、即ち該2次元位置検出素子47上に形成される2次元座標軸の原点は、前記1次元偏向ミラー42、前記2次元偏向ミラー43が基準位置、即ち前記測距光軸37aを偏向していない状態で、前記分割測距光の光軸と合致する様になっている。
【0051】
前記2次元位置検出素子47は、例えば画素の集合体であるCCD或はCMOS等であり、受光する画素の受光面(撮像面)上での位置が特定できる様になっており、受光位置で前記分割測距光の光軸の位置、即ち前記分割測距光の光軸の水平角、鉛直角が求められる様になっている。更に、前記ハーフミラー44で反射された前記分割測距光の光軸の変位は、前記測距光軸37aの変位と一対一に対応するので、前記2次元位置検出素子47により前記分割測距光の光軸の水平角、鉛直角を検出することで、前記測距光軸37aの水平角、鉛直角を検出できる様になっている。
【0052】
前記2次元位置検出素子47は、前記測角部9として機能する。
【0053】
前記受光光学系26について説明する。
【0054】
前記測距光37は前記偏向ミラー30によって、前記基準光軸28上に射出され、前記対物レンズ29を介して測定対象物(図示せず)に照射される。該測定対象物で反射された測距光37は、反射測距光37′として前記対物レンズ29に入射し、前記第1反射面31aによって一部が反射され、反射された反射測距光37′は前記偏向ミラー30によって反射され、前記受光光学系26に入射する。
【0055】
該受光光学系26は、前記偏向ミラー30に対向して設けられた、受光系偏向ミラー48を有し、該受光系偏向ミラー48の反射光軸上にハーフミラー49、集光レンズ50、光ファイバ51の入射端面がそれぞれ配置されている。該光ファイバ51は入射端面から入射した反射測距光37′を受光素子52に導く。
【0056】
前記受光系偏向ミラー48と前記ハーフミラー49との間には光量調整器54が配設されている。該光量調整器54は、前記光ファイバ51へ入射する前記反射測距光37′の光量を調整するものである。前記光量調整器54として、例えば円板状の光量調整フィルタ55をモータにより回転させるものがある。前記光量調整フィルタ55は、前記反射測距光37′を横切って設けられ、該反射測距光37′が透過する部分が、円周方向に光の透過率が連続的に或は段階的に増加、又は減少する様に作られており、前記光量調整フィルタ55を回転させることで前記光ファイバ51に入射する反射測距光37′の光量が一定、或は略一定となる様に、具体的には前記内部参照光38の光量と同一、或は略同一となる様に調整される。
【0057】
前記内部参照光学系27について説明する。
【0058】
該内部参照光学系27は、前記ハーフミラー35、前記ミラー36、内部参照光用光ファイバ56、前記ハーフミラー49、前記光ファイバ51、前記受光素子52等によって構成され、前記内部参照光学系27の光路長は既知となっている。
【0059】
前記ハーフミラー35で分割された前記内部参照光38は、前記ミラー36で反射され、前記内部参照光用光ファイバ56に入射され、該内部参照光用光ファイバ56を介して前記ハーフミラー49に入射され、更に前記光ファイバ51を経て前記受光素子52に受光される。
【0060】
前記投光光学系25、前記内部参照光学系27等は、前記測距部8を構成する。
【0061】
上記光学系に於ける測距の作用について説明する。
【0062】
変調されたレーザ光線が前記発光源34から射出され、前記ハーフミラー35を透過したレーザ光線は、前記光路選択円板41を経て測距光37として射出される。該測距光37は、前記測距光軸偏向部16、前記測距系偏向ミラー45、前記偏向ミラー30、前記対物レンズ29を経て測定対象物(測定点)に照射され、更に該測定対象物で反射された反射測距光37′が前記対物レンズ29を経て入射し、前記第1反射面31aで一部が反射され、前記偏向ミラー30を経て前記受光光学系26に入射し、前記光量調整器54で光量調整されて前記受光素子52に受光される。
【0063】
前記光路切替え器39により前記内部参照光38が選択されると、該内部参照光38は前記内部参照光用光ファイバ56を介して前記ハーフミラー49に導かれ、更に前記光ファイバ51を経て前記受光素子52に受光される。
【0064】
該受光素子52で受光した前記反射測距光37′及び前記内部参照光38との位相差を検出し、位相差に基づき測定点迄の距離が測定される。
【0065】
本実施例では、異なる測定点を測定する場合、前記基準光軸28は固定して行う。前記測距光軸偏向部16により前記測距光軸37aを任意の方向に偏向することができるので、前記測距光軸37aが所望の測定点に向く様に前記測距光軸偏向部16により偏向する。尚、前記測距光軸37aが所望の方向となったかどうか、又測距光軸37aの方向は、前記2次元位置検出素子47によって検出される。
【0066】
而して、前記光学系23を具備する測定装置1では、一旦前記測定装置1を設置することで、該測定装置1を移動若しくは視準方向を変更することなく、前記視準光学系24が画角の範囲内の任意な位置の測定点を測定することができる。
【0067】
次に、図4、図5を参照して、本実施例の作動について説明する。
【0068】
STEP:01 前記測定装置1を設置し、既知点のデータ、例えば3次元座標を前記GPS装置12より取得する。尚、前記測定装置1を座標値が分っている既知点に設置する場合、或は他の測量機により設置位置を測定する場合等では、得られた位置データを前記操作部18より設定入力する。尚、この場合は、前記GPS装置12を省略することができる。
【0069】
STEP:02,STEP:03 前記基準光軸28を測定方向に向け、前記画像センサ32で取得した測定範囲の画像を前記表示部17に表示させ、測定範囲が適切かどうかを確認し、測定範囲が不適切であれば、視準方向を変更して適切な測定範囲を設定する。
【0070】
測定範囲が設定されると自動測定が開始される。
【0071】
STEP:04 視準方向の画像(測定範囲の画像)が前記画像センサ32より取得される(図5(A))。
【0072】
STEP:05 取得された画像は、該画像センサ32からデジタル画像信号として出力され、前記画像処理部14に於いて、エッチング処理等の画像処理がなされ、特徴点A1 ,A2 ,A3 …が抽出される(図5(B))。
【0073】
STEP:06 抽出された特徴点は、測定範囲の画像上に重ねて表示され、測定点の抽出状態が確認され、必要以上に多い場合、少ない場合等は、エッチング処理時のコントラストの調整等処理条件を変更し、抽出状態を調整する。
【0074】
STEP:07,STEP:08 特徴点の抽出が確定すると、抽出された特徴点は測定点として順位付けされる。更に、測定点は、前記画像センサ32の画素の位置から画像に基づき水平角、鉛直角が測定(測角)される。測角結果は、各測定点と関連付けられて、前記記憶部19に格納される。
【0075】
STEP:09 付けられた順位に従って測定点が順次測距される。測定点に関連付けられて格納された水平角、鉛直角が呼込まれ、該水平角、鉛直角と前記測距光軸37aが合致する様に、前記測距光軸偏向部16により前記測距光軸37aが偏向される。偏向の状態、即ち前記測距光軸37aの水平角、鉛直角は前記2次元位置検出素子47によって検出され、該2次元位置検出素子47によって検出された前記測距光軸37aの水平角、鉛直角が、前記記憶部19から呼込まれた水平角、鉛直角と合致した点で測距が実行される。測定点が測距されることで、前記測定装置1の設置点を基準とした3次元データが取得できる。更に、前記方位センサ11からの基準光軸28の方位角を取得し、更に設置点の3次元データに基づき前記測定点の絶対座標での3次元データが取得できる。得られた3次元データは、測定点に関連付けられて前記記憶部19に格納される。
【0076】
尚、測定が完了した測定点については、測定範囲の画像中に重ねて表示し、測定の進行状態が分る様にしてもよい。或は、全ての測定点を測定範囲の画像中に表示し、測定済の測定点については色分け、或は明度を変える等し、識別表示して測定の進行状態が分る様にしてもよい。又、測距光を可視光とすれば、測定中の測定点に照射されている測距光が測定範囲の画像に現れるので、やはり測定状態の状況、進行状態を確認することができる。
【0077】
STEP:10 測定点の測距が完了すると、次の順位の測定点が同様に測距され、全ての測定点の測定が完了すると、測定が完了する。而して、測定点の設定から、全ての測定点の測定迄、全自動で測定することができる。
【0078】
更に、広範囲の測定を実行する場合は、前記回動部5により前記測定装置1を水平方向に回転し、上記した測定作動を行わせることで、全周の測定が自動で実行できる。尚、前記光学系23が有する画角の範囲内での測定でよい場合は、前記回動部5は省略できる。更に、屋内での測定等の場合で、絶対座標が必要ない場合は、前記方位センサ11、前記GPS装置12は省略できる。
【0079】
エッジ処理等の画像処理で得られる測定点は、稜線、或は頂点である場合が多い。測定点が稜線上にある場合は、図6に示される様に測距光37が稜線58によって分割され、距離の異なる面で反射された反射測距光37′が前記測定装置1に入射することになり、測定結果に誤差を生じる。従って、測定点59を始点として往復の微小スキャンをしつつ測定を実行する(図7(A))。尚、スキャンの振幅は、少なくとも前記測距光37が稜線から完全に外れる値、例えばビーム径Dの2倍とする。
【0080】
又、測定点59が頂点であった場合、該測定点59を始点として螺旋状にスキャンを実行して、所定間隔で測定を実行する(図7(B))。螺旋状にスキャンすることで、前記測定点59を頂点とする3面のデータが取得でき、測定点59近傍の詳細な形状の測定ができる。従って、微小スキャンを実行して測距を実行することで、正確に稜線、頂点の測定が可能となる。
【0081】
上記実施例では、基準光軸28に対して測距光軸37aが傾斜する測定装置1について説明したが、前記基準光軸28と前記測距光軸37aが同一、或は平行等所定の関係にあり、基準光軸28を傾斜させる機能を有する測定装置についても実施可能である。
【0082】
例えば、トータルステーションは、視準望遠鏡と該視準望遠鏡とは別に広角望遠鏡を有し、前記視準望遠鏡は測距光軸を有し、前記広角望遠鏡は基準光軸を有し、該基準光軸と前記測距光軸とは所定の固定的な関係(例えば平行の関係)となっている。
【0083】
トータルステーションでは、追尾機能を有し、前記視準望遠鏡と広角望遠鏡を一体に水平方向、鉛直方向に回転させ、前記視準望遠鏡を測定点に向けることができる。前記広角望遠鏡に撮像部7(図2参照)を設け、更に画像処理部14(図2参照)等を設け、撮像部7により測定範囲を撮像し、画像から測定点を抽出し、測定点の測角を行う様にすれば、測定範囲を設定するだけで自動で多数の測定点について自動で測定を実行することができる。
【0084】
図8は本発明が他の測定装置1に実施された他の実施例を示している。尚、図8中、図1〜図3中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
発光源34から発せられた測距光37は反射プリズム31で鉛直方向に偏向され、更に偏向ミラー66により、水平方向に偏向され、射出される。測定点で反射された反射測距光37′は、前記偏向ミラー66によって鉛直方向に反射され、前記反射プリズム31によって反射され、更に孔明き反射ミラー67によって反射され、受光素子52によって受光され、受光した反射測距光37′によって測距が行われる。尚、図中、測距部8中の内部参照光学系27は省略している。
【0086】
又、測定範囲の画像は、前記偏向ミラー66で反射され、前記反射プリズム31を通過した可視光によって画像センサ32によって撮像される。
【0087】
前記偏向ミラー66は鉛直軸心を中心に回転可能なミラーホルダ61に設けられ、更に前記鉛直軸心と直交する水平軸62を中心に回転可能となっている。尚、図8中、63は前記ミラーホルダ61を水平方向に回転するモータであり、前記水平軸62を介して前記偏向ミラー66を鉛直方向に回転するモータ(図示せず)が設けられている。
【0088】
又、64は、前記ミラーホルダ61の水平回転角を検出するエンコーダである。尚、前記偏向ミラー66の鉛直方向の回転角を検出するエンコーダも同様に設けられている。
【0089】
上記他の実施例に於いて、測定範囲の画像は前記偏向ミラー66を介して前記画像センサ32によって取得され、測距光37は前記偏向ミラー66を介して照射され、又反射測距光37′は前記偏向ミラー66を介して入射する。該他の実施例は、基準光軸28と測距光軸37aとが同一である。
【0090】
又、該他の実施例に於いて、前記偏向ミラー66、モータ63が、測距光軸偏向部16を構成し、前記エンコーダ64及び前記水平軸62の回転角を検出するエンコーダが測角部9を構成する。
【0091】
制御演算部21は、前記偏向ミラー66の水平回転、鉛直回転を制御し、前記基準光軸28を測定点に向けることができる。又、前記制御演算部21は前記画像センサ32が取得した画像から測定点を抽出する画像処理部14を具備している。
【0092】
尚、上記他の実施例では、前記偏向ミラー66を全周回転可能であり、予め所定回転角度(撮像部7の画角より小さい角度)ピッチで画像を取得し、取得した画像を合成して全周画像を作成し、該全周画像から測定点を抽出し、抽出した測定点について順次測定を実行すれば、全周範囲について全自動で測定が実行できる。
【符号の説明】
【0093】
1 測定装置
2 三脚
3 測定装置本体
5 回動部
7 撮像部
8 測距部
9 測角部
14 画像処理部
16 測距光軸偏向部
17 表示部
18 操作部
19 記憶部
21 制御演算部
23 光学系
25 投光光学系
26 受光光学系
27 内部参照光学系
28 基準光軸
31 反射プリズム
32 画像センサ
34 発光源
37 測距光
37a 測距光軸
39 光路切替え器
42 1次元偏向ミラー
43 2次元偏向ミラー
47 2次元位置検出素子
52 受光素子
63 モータ
64 エンコーダ
66 偏向ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部とを具備する測定装置に於いて、測定範囲のデジタル画像を取得し、取得したデジタル画像を画像処理して測定点を抽出すると共に画像上から各測定点の測角を行い、測角の結果に基づき測距光軸を順次測定点に向け、測定点の測距を行うことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸は前記基準光軸に対して偏向され、前記基準光軸を固定した状態で、前記測定範囲の測定点の測定を行う請求項1の測定方法。
【請求項3】
測定点を中心に前記測距光軸を微小スキャンしつつ測距を行う請求項1又は請求項2の測定方法。
【請求項4】
測距光を照射し、測定点からの反射測距光を受光して測定点の測距を行う測距部と、測定範囲のデジタル画像を取得する撮像部と、測距光の測距光軸を偏向する測距光軸偏向部と、測距光軸の測角を行う測角部と、前記デジタル画像を画像処理して測定点を抽出する画像処理部と、制御演算部とを具備し、該制御演算部は前記デジタル画像上から測定点の角度を検出し、検出した角度に基づき前記測距光軸偏向部を制御して前記測距光軸を順次測定点に向け、該測定点の測距を行う様構成したことを特徴とする測定装置。
【請求項5】
前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸偏向部は前記測距光軸を前記基準光軸に対して偏向する請求項4の測定装置。
【請求項6】
前記測距光軸偏向部は、前記測距光軸上に相対向して設けられた一対のMEMSミラーであり、一対のMEMSミラーは傾斜の傾斜方向が90°ずれている請求項5の測定装置。
【請求項7】
前記測角部は、測距光軸上に設けられた光束分割手段と、分割された光束を受光する2次元位置検出素子とを具備し、該2次元位置検出素子は前記測距光軸に対応する点を原点とする座標系を有し、該座標系に於ける前記分割された光束の位置を検出することで、前記測距光軸の偏向角、偏向の方向を検出する請求項4の測定装置。
【請求項8】
表示部を更に有し、該表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に抽出された測定点が重ねて表示され、未測定測定点と測定完了済測定点とが識別表示される請求項4の測定装置。
【請求項9】
表示部を更に有し、前記測距光は可視光であり、前記表示部に前記測定範囲のデジタル画像が表示されると共に該デジタル画像上に測定点を照射する測距光が表示される請求項4の測定装置。
【請求項10】
前記測距部は測距光軸を有し、前記撮像部は基準光軸を有し、前記測距光軸と前記基準光軸は固定的な関係で設けられ、前記測距光軸と前記基準光軸は一体的に偏向されて前記測距光軸が測定点に向けられる請求項4の測定装置。
【請求項11】
前記撮像部の光軸は測距光軸を共有しており、共有光軸部分に偏向ミラーが設けられ、該偏向ミラーが水平回転、鉛直回転されることで、前記測距光軸が偏向される請求項4の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52946(P2012−52946A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196485(P2010−196485)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】