測定方法
【課題】校正による測定精度の向上を図りつつ、工程の増加を抑える技術を提供する。
【解決手段】第一の試料を測定部に供給し、前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する。
【解決手段】第一の試料を測定部に供給し、前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の試料の物性を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の測定用試料について、物理的、化学的、工業的、農業的等の様々な目的で、当該測定用試料の物性を測定する場合、一般に、当該測定用試料に対して電気的、光学的、化学的等の作用を与え、その作用の程度によって測定結果を得る。
例えば、糖尿病の診断のための被測定者の血液中の血漿グルコース濃度の測定においては、血液から調整される測定用試料に対して、一般に、グルコースオキシターゼ(GOD)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)等の酵素を利用した電極間での電流推移に基づいた測定が行われる(例えば特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−37991号公報
【特許文献2】特開平9−33533号公報
【特許文献3】特開平9−318634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載の技術は、従来のグルコース濃度の測定法により得られた数値を加工、演算する点で簡便である一方、環境変化や経時変化等の要因が測定結果に与える誤差を十分に排除できない可能性が考えられる。
このため例えば、先ず所定のグルコース濃度に調整した校正用試料を測定して校正し、その後、測定用試料を測定すれば、上記誤差を排除でき、測定精度の向上が期待できる。
しかし、この校正のためには、校正用試料を測定する工程のほか、次の測定用試料の測定を行う前に校正用試料を排出し、測定装置内を洗浄する工程が必要になってしまい、測定の長時間化やランニングコストの増加を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、校正による測定精度の向上を図りつつ、工程の増加を抑える技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。即ち、本発明の測定装置は、
試料に含まれる所定物質を測定する測定部と、
前記測定部に試料を供給する供給部と、
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させ、前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させ、前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させ、前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させる制御部と、を備える。
また、本発明の測定方法は、
第一の試料を測定部に供給し、
前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、
前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する。
また、本発明は、上記測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって
も良い。更に、このプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録しても良い。コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、校正による測定精度の向上を図りつつ、工程の増加を抑える技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る測定システムの概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る測定方法の説明図である。
【図3】実施例1における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図4】実施例2に係る測定方法の説明図である。
【図5】実施例3に係る測定システムの概略構成を示す図である。
【図6】実施例3に係る測定方法の説明図である。
【図7】実施例3における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図8】実施例4に係る測定方法の説明図である。
【図9】実施例4における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図10】実施例1に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図11】実施例2に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図12】実施例3に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図13】実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図14】変形例における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態のグルコース測定方法は、以下の各ステップを含んでよい。
まず、試料調製ステップで、検体中のグルコースを測定するために検体を測定部に応じた状態に調整する。
試料調製ステップは、検体を希釈することを含んでも良い。例えば血液を検体とする場合、希釈液は、通常血液の分析に用いられるものであればよく、緩衝能を有する。希釈倍率は通常の範囲で任意に設定すればよい。希釈液は、後述するグルコース測定装置が備える試料調製槽、ノズル、供給経路等を洗浄する洗浄液を兼ねることができる。なお、本実施形態において、単に「血液」と言う場合は、採血した状態の血液を意味する。
また、血液を検体とする場合、試料調製ステップは、血球を溶血させることを含んでも良い。血球を溶血させる方法としては、溶血剤を用いる方法、超音波を用いる方法などが挙げられる。
【0010】
このうち、溶血剤を用いる方法が簡便性の観点から好ましい。この場合は、血液の希釈に用いる希釈液と溶血剤を予め混合しておき、溶血剤を含む希釈液と血液を混合し撹拌する方法、希釈液と溶血剤と血液を一括して混合し撹拌する方法などが好ましい。
【0011】
これらの方法によれば、血液の希釈と血球の溶血を一括して行うことができると同時に、血球の溶血を促進することができるので、測定用試料の調製のスピードを上げることができる。
【0012】
溶血剤としては、公知のものを用いることができ、サポニンなどの配糖体、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、高級脂肪族アルコール、スルフォネート化合物またはサルフェート化合物のポリオキシエチレンエーテル、ソルビット脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加体等の界面活性剤が挙げられる。
【0013】
このように血液を検体とする場合、測定時間を短縮するため、血液を溶血させて測定用試料とするのが望ましいが、遠心分離により、血液を血漿成分と血球成分とに分けて血漿成分を測定用試料としても良い。
【0014】
本実施形態のグルコース測定方法は、測定部に第一の試料を供給する第一供給ステップと、その後測定部の洗浄を実施せずに第一の試料に加えて第二の試料を更に供給する第二の供給ステップとを備える。
【0015】
第一の試料と第二の試料としては、例えば一方を校正用の試料(標準液)とし、他方を測定用試料(検体)とする、或いは両方を検体(測定用試料)とすることもできる。校正用の試料は、例えば、校正のため所定のグルコース濃度に調整されたものである。
【0016】
第二の試料の供給後は、測定部を洗浄し、第一の試料の供給及び第二の試料の供給を繰り返して測定を行ってもよいし、また、第二の試料の供給後、測定部を洗浄せずに、第一の試料或いは第二の試料を供給し、測定を行うなど、先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する構成としても良い。例えば、校正用試料及び測定用試料の測定を行った後、前記測定部の洗浄を実施せずに校正用試料及び測定用試料の測定を繰り返す。また、校正用試料及び測定用試料の測定を行った後、前記測定部の洗浄を実施せずに測定用試料の測定を繰り返す。これは、既に供給済みの試料を第一の試料とし、測定部の洗浄を実施せずに第二の試料を供給する構成とみなすこともできる。
【0017】
測定ステップでは、先ず前記第一の試料のグルコース濃度Q1を測定し、次いで第一の試料に第二の試料を加えてグルコース濃度Q2を測定する。このグルコース濃度は、例えば、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる生成物の酸化還元電流を電極により検出する、いわゆる酵素電極法により測定することができる。
酵素電極法においては、グルコース酸化還元酵素として、グルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いる。
【0018】
酵素電極法により測定用試料のグルコース濃度を反映する電流値が得られた場合、予め既知の濃度の標準グルコース液(標準液)を用いて作成された検量線(マップ)に従って、グルコース濃度を求める。例えば、この検量線を電流値とグルコース濃度の対応関係を示す関係式として定義しておき、測定用試料を測定した際の電流値(測定値)を当該関係式に代入してグルコース濃度を算出する。
【0019】
例えば、第一の試料が校正用液であり、第二の試料が検体である場合、下記要素を用いて、試料としての検体のグルコース濃度を求めることができる。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
ここで、第一の試料の測定値をQ1とし、第一の試料に加えて前記第二の試料の供給を受けた際の前記測定部の測定値をGAとすると、Q2は、例えば、GAの値とQ1の値の差、またはGAの値とQ1の値の差に所定の係数を加減、積算または割算した値と一致する。
【0020】
以下に、本実施形態のグルコース測定装置の各構成について説明する。
本実施形態のグルコース測定装置は、第一の試料或いは第二の試料の試料調製機構を備える。この試料の調整機構は、検体を測定部での測定に適した状態に調整するものであり、例えば、検体を希釈する構成や、検体としての血液を溶血させる構成を備えることができる。
【0021】
試料調製機構は、例えば、血液(検体)を採血管から試料調製槽(実施例において、「希釈・反応槽」ともいう。)内に分注するためのノズルやポンプ、測定用試料の調製に必要な希釈液、溶血剤などの試薬を試薬槽から試料調製槽内に供給するためのノズル、供給経路及びポンプなどの構成を有している。
【0022】
さらに、試料調製機構は、好ましくは試料調製槽の内容物を撹拌するための撹拌機構を有している。例えば、試料調製機構内にスターラを設けることができる。
【0023】
本実施形態のグルコース測定装置は、前記試料調製機構により調製された測定用試料を用いてグルコース濃度を測定するグルコース測定部を備える。
【0024】
グルコース測定部は、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる酵素反応生成物の酸化還元電流を電極により検出し、検出結果をグルコース濃度に換算する装置や、グルコースの酵素反応生成物を特定の試薬と反応させることにより生じる色素量を検出し、検出結果をグルコース濃度に換算する装置であっても良い。
【0025】
例えばグルコース測定部が、前者の装置である場合、グルコース測定部は、センサ部、電源部、電流値測定部、グルコース濃度演算部などを有している。
【0026】
前記センサ部は、測定用試料におけるグルコースとの電子授受量に応じた電気的物理量(電流値)を出力する。センサ部は、グルコース酸化還元酵素を固定した酵素固定化層と、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる生成物の酸化還元電流を検出する電極とを含む。
【0027】
電源部は、電流値測定部やグルコース濃度演算部等へ電力を供給する。電流値測定部は、電極間に発生した電流を測定し、測定値を出力する。
【0028】
そして、グルコース濃度演算部は、測定用試料のグルコース濃度に相関する値、即ち電流値測定部で測定した電流値を、所定の換算式(マップ)に従ってグルコース濃度を算出する。
【0029】
酵素固定化層は、ヘモグロビンは透過しないがグルコースは透過するグルコース透過膜を積層して、該グルコース透過膜側が測定用試料に晒されるように配置されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態のグルコース測定装置は、測定制御部を備える。測定制御部は、試料調製機構を制御し、第一の試料を試料調製槽に供給させ、グルコース測定部を制御して当該第一の試料の測定が行わせた後、この第一の試料に加えて第二の試料を試料調製槽に供給する。例えば、校正用試料(標準液)を試料調製槽に供給させ、グルコース測定部によって当該校正用試料の測定が行われた後、この校正用試料に加えて測定用試料を試料調製槽に供給し、これら校正用試料と測定用試料とを混合した状態で測定を行わせる。
【0031】
上述した、試料調製機構、グルコース測定部、測定制御部は、それぞれ個別に設けても良いし、類似の機構を集約して設けても良い。例えば、これらの機構、部分における演算を行う機能は、一つの演算部に集約することができる。演算部としては、例えばプロセッサ(CPU)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置等を含む所謂コンピュータ(情報処
理装置)が用いられる。前記演算機能は、該コンピュータが、測定プログラムに従って演
算処理を行うことにより実現される。
演算部は、前記センサ部と電気的に接続されており、センサ部から測定データを取得し、予めプログラムされた測定プログラムに基づいて所定の演算を行う。
また、演算部は、装置内のポンプ、弁などの駆動系を制御する測定制御部と統合することができ、この場合、該測定制御部は、前記駆動系と電気的に接続され、予めプログラムされた測定プログラムに基づいて、これらの駆動系を制御する制御信号を出力する。
【0032】
このように本実施形態の測定プログラムは、コンピュータに測定方法の各ステップを実行させ、グルコース測定装置が備える各機構の制御や測定結果の演算を行わせるためのものである。
また、本実施形態はこのようなプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録したものをも提供する。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上記試料搬送制御による搬送の適否判断が可能となる。
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。このコンピュータに固定された記録媒体は、当該コンピュータの補助記憶装置であっても良い。
【0033】
本実施形態の測定システムは、本実施形態のグルコース測定装置から取得された測定値に基づいて、糖尿病の可能性の判定を行う、糖尿病判定装置を備えても良い。当該糖尿病判定装置は、例えば、前記グルコース濃度の測定値について、予め記憶させておいた所定の基準値(例えば、正常と診断できる境界値)を超えるか否かを判定し、その結果を出力する。
【0034】
本実施形態の測定システムは、必要に応じてその他疾病の診断に必要な装置などをさらに備え、他の疾患の診断に必要な分析をさらに行うものであってもよい。
【0035】
以下に、図面を参照して本実施形態を実施するための実施例に係る測定システムについて説明する。なお、以下の実施例の構成は例示であり、本実施形態はこの実施例の構成に限定されるものではない。また、この測定システムの各機能を複数の装置に持たせ、必要に応じてネットワーク化することや、ネットワークを介して他の装置と連携することもできる。
【実施例1】
【0036】
<測定システムの概略構成>
図1は、本発明に係る測定システム10の外観を示す模式図である。測定システム10は、被測定者の糖尿病診断等に関するグルコース濃度の測定を自動的に行う装置である。
【0037】
測定システム10は、その内部に血液分析に必要な所定の構成が配置されており、例えば測定ユニット1、サンプリングユニット2、ボトルユニット3、入出力ユニット4を備えている。
【0038】
ボトルユニット3は、グルコース濃度測定等の各種測定に使用される測定用液体を各々収容したボトルを備えている。具体的には、例えば、分析対象の血液を希釈する希釈液を収容する希釈液ボトル、グルコース濃度を測定するセンサを校正する為の校正用試料を収容する標準液ボトル等を備える。
【0039】
入出力ユニット4は、入力手段として操作パネルを有している。操作パネル、複数の操
作ボタンが設けられたものであり、オペレータが操作ボタンを操作すると、これに応じた各種の動作(分析動作や印字動作など)を行わせるための信号あるいは各種の設定情報(分析条件の設定や被験者のID入力など)を測定ユニット1に入力できる。また、入力手段としてメモリカードやCD−ROM等の記憶媒体から情報を読み出すリーダや、他の装置から情報を受信する通信部(受信機)を備えてもよい。
【0040】
そして入出力ユニット4は、出力手段として表示パネルやプリンタを有している。表示パネルは、測定結果やエラーである旨を表示するとともに、設定時における操作手順や操作状況、糖尿病診断に関する各種の情報等を表示するためのものである。また、入出力ユニット4は、出力手段として警告音や音声メッセージ等を出力するブザーやスピーカ、他の装置へ情報を送信する通信部(送信機)を有しても良い。
【0041】
サンプリングユニット2は、検体を保持するラックや、ノズルを有し、検体を測定ユニット1に導入する。なお、本実施例1では、検体として血液を用い、被験者から採取した血液を採血管に入れてサンプリングユニット2にセットする。なお、検体は遠心分離等の調整がされたものであっても良い。
【0042】
ラックは、複数の採血管を保持し、後述の制御部に制御されて採血管を順次サンプリング位置に移動させる。
【0043】
ノズルは、採血管の血液(検体)をはじめ、調整液、校正用試料、洗浄液等、各種の液体の吸引・吐出を行うものであり、このため制御部によって上下方向および水平方向への移動や液体の吸引及び吐出が制御される。
【0044】
測定ユニット1は、サンプリングユニット2によって検体が導入され、当該検体の成分を測定する。本実施例1では、検体としての血液のグルコース濃度やグリコヘモグロビン濃度を測定する。
【0045】
これらの構成を備えた測定システム10は、ユーザからの分析指示を受けて、採血管から血液を採取し、当該採取された血液に対して希釈液、溶血標準液等を加えることで測定用試料を調製する。そして、調製された測定用試料が、グルコース濃度測定に供されることになる。
【0046】
測定ユニット1は、分析用液体供給機構、試料調製機構、グルコース測定機構80、およびドレイン系統を有している。なお、このような測定ユニット1の構成の分類は説明の便宜のためであり、本発明に係る測定システム10の具体的な態様を限定する意図はない。ここで、分析対象である血液を元に試料調製機構で調製された試料は、グルコース測定機構80に送られてそこで血液中のグルコース濃度が測定される。このような血液の分析が行われるにあたり、分析に必要な液体が分析用液体供給機構45によって、測定ユニット1内の必要な場所へ供給される。
【0047】
また、これらの分析用液体供給機構、試料調製機構、およびグルコース測定機構80は、測定システム10に備えられている測定制御部90と電気的に接続されており、当該測定制御部への各種データの送信、および当該測定制御部からの動作指示に従った所定の動作、処理を実行する。この測定制御部90はコンピュータに相当し、不図示のCPUや、メインメモリ、補助記憶装置(ハードディスク)等を備える。コンピュータである測定制御部90は、コンピュータプログラム(測定プログラム)を実行することにより、測定システム10でのグルコース濃度の測定に係る制御命令を出力する処理や、測定値の演算処理を実行する。なお、本実施形態では、測定制御部90がグルコース濃度の算出も行い、グルコース濃度演算部も兼ねる。更に、測定制御部90は、算出したグルコース濃度が糖
尿病の基準値を超えているか否かを判定する処理も行い、糖尿病判定部も兼ねる。また、上述した操作パネルおよび表示パネルも、この測定制御部90に接続され、そこでユーザからの操作指示およびユーザへの表示に関するプログラム処理が実行される。以下、測定システム10の詳細な構成を説明する。
【0048】
分析用液体供給機構45は、希釈液を供給する部位、校正用試料を供給する部位を有している。希釈液を供給する部位は、ボトルユニット3内の希釈液ボトルから送られた希釈液を試料調整機構へ供給する。また、校正用試料を供給する部位は、標準液ボトル内に収容されている校正用試料をポンプの圧送作用により、バッファや供給経路(不図示)を経て、後述する試料調製機構内の調整槽51へと供給する。
【0049】
試料調製機構は、調整槽51を有し、当該調整槽51に設けられた弁の開閉や攪拌機(スターラ)による攪拌が測定制御部90に制御され、調整槽51に供給された希釈液に測定用試料である血液を加えて均一に攪拌するといった試料の調製を行う。なお、本実施例の調整槽1は、反応槽を兼ねており、測定部の一部を構成している。
【0050】
この調整槽51で調製された測定用試料は、グルコース測定機構80での各分析処理に供される。グルコース測定機構80は、センサ部81、電源部(不図示)、電流値測定部(不図示)を有する。センサ部81は、測定用試料におけるグルコースとの電子授受量に応じた電気的物理量(電流値)を出力するものであり、グルコースの酸化還元酵素が固定化された酵素固定化層と、酵素固定化層での酵素反応生成物と電子の授受を行う電極を有する。なお、この酵素固定化層に含まれる酸化還元酵素としては、グルコースオキシターゼ(GOD)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が採用でき、当該酵素としてGODが採用される場合には、それに対応する電極として過酸化水素電極が採用されることになる。以下の本実施例では、当該酵素としてGODの採用を前提に説明を行うが、これには、採用し得る酵素をGODに限定する意図はない。
【0051】
センサ部81が測定用試料に晒された状態で、電源部により電圧が印加されると、センサ部81内の電極間に電流が流れる。電流値測定部はこの電極間電流を測定し、その測定値を測定制御部90に送る。
【0052】
<測定方法>
ここで、測定システム10における糖尿病診断のためのグルコース濃度の測定制御について、図2に基づいて説明する。図2に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0053】
先ず、S100では、測定制御部90が試料調製機構を制御し、調整槽51に規定量の希釈液を供給し、S101では、調整槽51に第一の試料としての校正用試料を供給する。規定量の希釈液および第一の試料の供給を行った後、測定制御部90は、S102へ移行する。
【0054】
S102では、スターラによる撹拌を開始し、調整槽51内に供給された希釈液及び第一の試料を均一に混合する。S102の攪拌の開始後、測定制御部90は、S103へ移行する。
【0055】
S103では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、校正用試料のグルコース濃度
に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0056】
S103の測定後、測定制御部90はステップS104へ移行し、第二の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が調整槽51に加えられ調製される。具体的には、サンプリングユニット2のノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、希釈液、第一の試料及び第二の試料が調整槽51内で混合される。
【0057】
S105では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、校正用試料と測定用試料とが混合された状態のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0058】
ここで、図3に基づいて、S101からS105までの試料の状態と電流値の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、校正用試料を加えた際(S101)、図3(A)のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS103の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ測定用試料を加える(S104)、即ち、既に調整槽51へ供給済みの校正用試料に加えて測定用試料が供給されると、この測定用試料の分、グルコース濃度が高まる。なお、調整槽51に供給された校正用試料は、希釈液によって所定の希釈率に希釈され、この希釈した際の総量が校正用試料や測定用試料の量と比べて充分に多くの量に設定されており、測定用試料を加えても総量はあまり変わらないので、図3(A)に示すように、測定用試料を加えた際のグルコース濃度が、ほぼ倍となる。このように、測定用試料を加えた際、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhAから再度急峻に立ち上がり、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS105の処理では、この電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q2を測定する。
【0059】
本実施例1では、図3(B)に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、校正用試料の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhBに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0060】
ここで、図2に戻る。S106では、S103で取得された電極間電流値Q1に基づいてS105で取得された電極間電流値Q2を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度Dgを算出する。このグルコース濃度の算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0061】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2から求めた第二の試料の測定値
GA:G2を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0062】
そして、検量線としての関係式に測定結果GAを代入してグルコース濃度Dgを算出する。
【0063】
このように第一の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q1によって測定値G2を校正し、第二の試料(測定用試料)の測定結果GAを精度良く求める。これにより、精度良くグルコース濃度Dgを算出することができる。
【0064】
この一つの検体に対する一連の測定制御(S101〜S106)を完了すると、S107において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内の試料を洗い流す。即ち、試料に晒されているセンサ部81等も洗浄する。そして、次の検体の有無を判定し(S108)、検体が有れば(S108が肯定判定の場合)、S101に戻って次の検体の測定制御(S101〜S108)を繰り返し、次の検体が無ければ(S108が否定判定の場合)、測定結果を出力して測定制御を終了する(S109)。
【0065】
本実施例1に係る測定制御によれば、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
また、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、場合により、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0066】
〈変形例〉
図10は、実施例1に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例1では、第一の試料(校正用試料)及び第二の試料(測定用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0067】
先ず、前述の実施例1と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S100〜S106)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S108)。ここで、次の検体が無ければ(S108,No)、洗浄工程(S107)を行った後、測定結果の出力(S109)を行って終了する。
【0068】
また、次の検体がある場合(S108,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S110)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S110,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS101に戻る。この場合、図14に示すように、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhBから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhCで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS103の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q3を測定する。更に、測定用試料を調整槽51に供給すると、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhCから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhDで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS105の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q4を測定する。
【0069】
本変形例では、図14に示すように、高さhCに相当する電流値が、校正用試料の測定値、即ち電流値Q3から電流値Q2を減じた値が測定用試料の測定値であり、高さhDに相当する電流値、即ち電流値Q4から電流値Q3を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を
検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhCに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0070】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS110で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S112)、洗浄工程を実施して(S113)、ステップS100に戻る。
【0071】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0072】
なお、図10の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S110,Yes)、ステップS101に戻って繰り返したが、ステップS104に戻って第二の試料の供給及び測定を繰り返す構成としても良い。この場合、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhCや高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【実施例2】
【0073】
上記実施例1では、第一の試料として校正用試料を測定し、これに第二の試料としての測定用試料を加えて測定したが、本実施例2では、第一の試料として測定用試料を測定し、これに第二の試料として校正用試料を加えて測定する構成である。なお、その他の構成は、上記実施例1とほぼ同じであるので、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0074】
本実施例2の測定システム10におけるグルコース濃度の測定制御について、図4に基づいて説明する。図4に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0075】
先ず、S201では、調整槽51に希釈液が供給される。規定量の希釈液を供給させた後、測定制御部90は、S202へ移行する。
【0076】
S202では、第一の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が希釈層(調整槽)51に加えられ調製される。具体的には、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させる。
【0077】
S202の処理の後、測定制御部90は、S203へ移行し、スターラ56による撹拌を開始させ、S204へ進む。
【0078】
S204では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、希釈した測定用試料のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0079】
S204の測定後、ステップS205へ移行し、第二の試料としての校正用試料が希釈層51に加えられる。具体的には、校正用試料を供給する部位を制御し、標準液ボトル内に収容されている校正用試料をポンプの圧送作用により、バッファ及び供給経路を経て、校正作業槽(不図示)へと供給し、校正作業槽に供給された校正標準液をサンプリングユ
ニット2のノズルで採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、調整槽51内では、希釈液、第一の試料及び第二の試料が混合される。S205の処理の後、測定制御部90は、S206へ移行する。
【0080】
S206では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、測定用試料に校正用試料が加えられた混合液のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0081】
S207では、S206で取得された電極間電流値Q2に基づいてS204で取得された電極間電流値Q1を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度Dgを算出する。このグルコース濃度Dgの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0082】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2から求めた第二の試料の測定値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0083】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0084】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果GBを精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度Dgを算出する。
【0085】
この一つの検体に対する一連の測定制御(S201〜S207)を完了すると、S208において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内の試料を洗い流す。即ち、試料に晒されているセンサ部81等も洗浄する。そして、次の検体の有無を判定し(S209)、次の検体が有れば(S209が肯定判定の場合)、S201に戻って次の検体の測定制御(S201〜S209)を繰り返し、次の検体が無ければ(S209が否定判定の場合)、測定結果を出力して測定制御を終了する(S210)。
【0086】
ここで、図3に基づいて、S202からS206までの試料の状態と電流値の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、測定用試料を加えた際(S202)、図3(A)のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS204の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ校正用試料を加える(S205)、即ち、既に調整槽51へ供給済みの測定用試料に加えて校正用試料が供給されるので、この校正用試料の分、グルコース濃度が高まる。なお、調整槽51に供給済みの測定用試料は、希釈液によって所定の希釈率に希釈され、この希釈した際の総量が校正用試料や測定用試料の量と比べて充分に多くの量に設定されており、校正用試料を加えても総量があまり変わらないので、図3(A)に示すように、校正用試料を加えた際のグルコース濃度が、ほぼ倍となる。このように、校正用試料を加えた際、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhAから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS
206の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q2を測定する。
【0087】
本実施例2では、図3(B)に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、測定用試料の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が校正用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhBに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhAに相当する電流値Q1に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0088】
このように本実施例2に係る測定制御では、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0089】
〈変形例〉
図11は、実施例2に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(測定用試料)及び第二の試料(校正用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0090】
先ず、前述の実施例2と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S201〜S207)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S209)。ここで、次の検体が無ければ(S209,No)、洗浄工程(S208)を行った後、測定結果の出力(S210)を行って終了する。
【0091】
また、次の検体がある場合(S209,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S211)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S211,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし(S212)、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS202に戻る。この場合、図14に示すように、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhBから再度急峻に立ち上がり、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhCで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS204の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q3を測定する。更に、校正用試料を調整槽51に供給すると、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhCから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhDで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS206の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q4を測定する。
【0092】
本変形例では、図14に示すように、高さhCに相当する電流値が、校正用試料の測定値、即ち電流値Q3から電流値Q2を減じた値が測定用試料の測定値であり、高さhDに相当する電流値、即ち電流値Q4から電流値Q3を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhCに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0093】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS211で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S213)、洗浄工程を実施して(S214)、ステップS201に戻る。
【0094】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0095】
なお、図11の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S211,Yes)、ステップS202に戻って第一の試料及び第二の試料の測定を繰り返したが、繰り返し時にステップS205,206を省略(スキップ)し、第一の試料のみ測定を繰り返す構成としても良い。この場合、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhCや高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【実施例3】
【0096】
上記実施例1,2では、血液を遠心分離して血球成分を除去したものを測定用試料としたが、これに限らず、本実施例3では、採血した血液の血球を溶血させて測定用試料とした。このため本実施例3は、血球を溶血させる構成や、血球成分比率を導出する構成を備えている。
【0097】
図5は、本実施例3の測定ユニット1内の概略構成を示す図である。
本実施例3の測定システム10は、実施例1の標準液ボトルに代えて、溶血剤と校正用試料を混合した溶血標準液を収容する溶血標準液ボトルを備えている。
【0098】
溶血標準液ボトル内の溶血標準液に含まれる溶血剤は、血液における血球の細胞膜を破壊するためのものである。溶血剤としては、たとえばポリオキシ(10)エチレンオクチルフェニルエーテル(TritonX-10)、高級脂肪酸アルコール、アルキルアリールポリエーテルアルコール、スルフォネートのポリオキシエチレングリコール、サルフェートのポリオキシエチレンエーテルおよび無水ソルビット脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体などの界面活性剤の他、塩化アンモニウムなどの公知の溶血剤が採用できる。
【0099】
また、本実施例3の測定システム10は、検体の血球成分比率を求めるため、調整槽51で調整された液体(調整された試料)の吸光度を測定する吸光度計85を備える。吸光度計85は、分析領域にセットされた試料にオキシヘモグロビンの吸収波長を照射し、その吸光度を測定する。吸光度計85は、照射用レーザーダイオード、及び受光用のフォトダイオードを有する。照射用レーザーダイオードは、分析領域にセットされた試料にレーザ光を照射し、当該試料を透過したレーザ光を受光用のフォトダイオードで受光する。そして吸光度計85は、受光用フォトダイオードで受光したレーザ光に基づき吸光度を求める。
【0100】
本実施例3において、上記溶血標準液及び吸光度計85以外のハードウェア構成は、実施例1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素に同符号を付するなどして、再度の説明を省略する。
【0101】
上記構成の測定システム10により、溶血した測定用試料を用いて糖尿病診断等のためにグルコース濃度を求める測定制御について図6に基づいて以下に説明する。
【0102】
図6に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで実現されるグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0103】
先ず、S300では、測定制御部90が試料調製機構を制御して調整槽51に規定量の
希釈液を供給し、S301にて、測定制御部90は、調整槽51に第一の試料としての溶血標準液(校正用試料)を供給させる。規定量の希釈液及び溶血標準液の供給を行った後、スターラ56による撹拌を開始させ、S302へ進む。なお、本実施形態では、溶血剤と校正用標準液を混合して供給したが、これに限定されるものではなく、校正用標準液と溶血剤とを別に供給しても良い。例えばS301で校正用標準液を供給し、溶血剤を第二の試料(測定用試料)と共に後述のステップS303で供給してもよい。
【0104】
S302では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、第一の試料としての溶血標準液のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0105】
S302の測定後、ステップS303へ移行し、第二の試料である血液(全血)が加えられ、測定用試料が調製される。具体的にはサンプリングユニット2のノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、希釈液、第一の試料及び第二の試料が調整槽51内で混合される。S303の処理の後、測定制御部90は、S304へ移行する。
【0106】
S304にて、測定制御部90は、第二の試料としての血液を投入してからの経過時間Tが所定の閾値Tx以上か否かを判定する。この閾値Txは、第二の試料である血液の溶血にかかる時間(溶血時間)に応じて予め設定しておく。S304で肯定判定されるとS305へ進み、否定判定されると再びS304の処理が繰り返される。
【0107】
S305では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、経過時間Tが閾値Txに至った時点において、当該電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0108】
ここで、図7に基づいて、S301からS305における、センサ部81の電極間を流れる電流値と時間の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、溶血標準液(校正用試料)を加えた際(S101)、図7のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS302の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ測定用試料を加えると溶血を開始する(S303)。このタイミングでは電流値の立ち上がりは比較的急峻であるが、時間の経過とともにその傾きは緩やかになり、経過時間Tが閾値Txに至ったタイミングでは、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きは概ね水平となる。そこで、上記S305の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになったタイミング(T≧Tx)での過酸化水素電極間の電流値の取得が行われることになる。
【0109】
本実施例1では、図7に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、溶血標準液の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhBに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0110】
ここで、図6に戻る。上記S305の処理の後、測定制御部90は、S306へ移行す
る。S306では、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。
【0111】
S307では、吸光度計85によって、前記第一の試料及び第二の試料を混合した試料(以下、混合試料とも称す)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定させ、その測定値が測定制御部90に渡される。測定制御部90では、その測定値に基づいて、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義し、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S307の処理の後、測定制御部90は、S308へ移行する。
【0112】
S308では、S307で算出されたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義しておき、S307で求めたヘモグロビン濃度を当該関数式に代入して血球成分比率を算出する。S308の処理が終了すると、S309へ進む。
【0113】
S309では、S302で取得された電極間電流値Q1に基づいてS305で取得された電極間電流値Q2を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0114】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料の測定値
GA:G2を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0115】
そして、検量線としての関係式に測定結果GAを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0116】
このように第一の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q1によって測定値G2を校正し、第二の試料(測定用試料)の測定結果GAを精度良く求める。これにより、精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
そして、S310では、S309で取得された全血グルコース濃度GFとS308で算出された血球成分比率とに基づいて、分析対象である血漿グルコース濃度Dgの算出が行われる。
【0117】
ここで、S309で算出された全血グルコース濃度GFは、血球に含まれる液体成分と血漿に含まれる液体成分とが足し合わされた測定用試料でのグルコース濃度である。したがって、当該グルコース濃度GFを、糖尿病診断に必要な血漿グルコース濃度Dgに換算するために、本実施例では、前記血球成分比率に基づいて上記全血のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。これにより、実際の血漿グルコース値Dgにきわめて近いグルコース値(測定結果Dg)を算出することができる。
【0118】
また、溶血時間の経過に伴う基準電流と測定電流とのずれを考慮して、血漿グルコース
濃度Dgの補正を行ってもよい。上述のように、経過時間Tが閾値Txに至る前においては、完全に血球の溶血が完了していない未溶血試料についての電流値が検出されている場合がある。すなわち、電極への電圧印加開始後の比較的初期の、測定用試料の酵素反応速度に対する未溶血試料の酵素反応速度の相対的な遅さが、所定の検出ポイントでの電流を僅かに小さくする方向に影響している。
【0119】
このような前記試料調製ステップにおける全血球の溶血の終了前の未溶血試料の酵素反応速度が、測定用試料の酵素反応速度に与える影響が上記両電流のずれとして現れている。そしてこのずれは、結果としてS309で算出されるグルコース濃度GFの値やS308で算出される血球成分比率の値に何らかの影響を与えるものと考えられる。そこで、本実施例で、このずれの影響を抑制すべく、さらなる補正係数を加味してもよい。
【0120】
このような補正係数は、事前の実験により得られた、溶血開始からの経過時間Tが閾値Txに至った時点での測定電流と、溶血開始からの経過時間Tを長くとり、溶血が完全に行われた時点での測定電流とのずれを踏まえて設定できる。このような補正は、例えば、予め設定した補正係数を測定制御部90のメモリ等の記憶部に記憶させておき、測定制御部90がS309で求めた全血グルコース濃度GA或いはS310による補正後の測定結果GA1に対して前記補正係数を乗ずることにより行うことができる。
【0121】
S310の処理の後、測定制御部90は、S311へ移行する。このように一つの検体に対する一連の測定制御(S301〜S310)を完了すると、S311において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内や吸光度計85のセル内の試料を洗い流す。そして、次の検体の有無を判定し(S312)、検体が有れば(S312が肯定判定の場合)、S301に戻って次の検体の測定制御(S301〜S312)を繰り返し、次の検体が無ければ(S312が否定判定の場合)、測定結果GA1を出力して測定制御を終了する(S313)。
【0122】
このように本実施例3に係る測定制御では、吸光度計85によって検出される吸光度を起点として、分析対象の血液の血球成分比率が算出される。この吸光度は、測定用試料に対して直接測定操作、すなわち吸光度測定のための光の出射および透過光の受光を行うため、実際の測定用試料における血液の成分状態を反映するものである。したがって、当該吸光度から算出される血球成分比率は、実際の測定用試料における血球成分比率を良好に反映していると考えられ、以て従来技術の溶血試料を用いたグルコース濃度の測定技術よりも精度の高い測定を可能とする。
【0123】
更に、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0124】
また、本実施形態では、溶血剤と校正用試料を予め混合し、溶血標準液として一度に供給する構成としたことにより、溶血試料を用いて高精度に測定を行うにあたり、測定時間の短縮化及び供給機構の簡略化が可能である。
更に、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0125】
〈変形例〉
図12は、実施例3に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(校正用試料)及び第二の試料(測定用試料)を測定後、洗浄して終了したが、
この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0126】
先ず、前述の実施例3と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S300〜S310)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S312)。ここで、次の検体が無ければ(S312,No)、洗浄工程(S311)を行った後、測定結果の出力(S313)を行って終了する。
【0127】
また、次の検体がある場合(S312,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S314)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S314,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS301に戻る。なお、繰り返して第一の試料及び第二の試料を測定する場合の各試料と過酸化水素電極間の電流値との関係は、図14を用いて説明した前記実施例1の変形例とほぼ同じであるため省略する。
【0128】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS314で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S316)、洗浄工程を実施して(S317)、ステップS300に戻る。
【0129】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0130】
なお、図12の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S314,Yes)、ステップS301に戻って繰り返したが、ステップS303に戻って第二の試料の供給及び測定を繰り返す構成としても良い。
【実施例4】
【0131】
上記実施例3では、先ず第一の試料として溶血標準液を測定し、これに第二の試料としての測定用試料を加えて測定したが、本実施例4では、先ず第一の試料として測定用試料を測定し、これに第二の試料として溶血標準液を加えて測定する構成である。なお、その他の構成は、上記実施例3とほぼ同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0132】
ここで、測定システム10における糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定制御について、図8に基づいて説明する。図8に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0133】
先ず、S401では、調整槽51に希釈液および溶血剤が供給される。なお、本実施例4では、溶血剤と希釈液を予め混合し、供給時間の短縮や供給機構の簡素化を図ったが、これに限らず、溶血剤と希釈液とを別個に供給する構成としても良い。例えば、S401では、希釈液のみを供給し、溶血剤は次のステップS402で供給しても良い。
【0134】
S401の処理の後、測定制御部90は、S402に移行し、希釈液および溶血剤が供給された調整槽51に対して、第一の試料(測定用試料)としての血液(全血)を加えさせ、調製する。具体的には、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させ、スターラ56によって撹拌し、溶血を開始させる。この撹拌により溶血が促進されることになる。S402の処理の後、測定制御部9
0は、S403へ移行する。
【0135】
S403にて、測定制御部90は、溶血開始からの経過時間Tが閾値Tx以上か否かを判定する。この閾値Txとしては、溶血の進行状態と血液分析装置の処理能力との均衡が取れる時間を、予め設定する。S403で肯定判定されるとS404へ進み、否定判定されると再びS403の処理が繰り返される。
【0136】
S404では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値Q1の取得が行われる。具体的には、測定用試料の溶血が開始されて、経過時間Tが閾値Txに至った時点において、センサ部81の電極間を流れる電流値Q1が電流値測定部によって測定され、その測定値が測定制御部90に渡される。
【0137】
ここで、図9に基づいて、S402からS404におけるセンサ部81の電極間を流れる電流値と時間の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、溶血開始(S402)のタイミングでは電流値の立ち上がりは比較的急峻であるが、時間の経過とともにその傾きは緩やかになり、経過時間Tが閾値Txに至ったタイミングでは、電流値の傾きは概ね水平となる。そこで、上記S404の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになったタイミング(T≧Tx)での過酸化水素電極間の電流値を取得する。
【0138】
S404の測定後、ステップS405へ移行し、第二の試料である校正用試料が加えられる。具体的には、校正用試料を供給する部位を制御し、標準液ボトル9内に収容されている標準液(校正用試料)をポンプの圧送作用により、バッファ及び供給経路を経て、校正作業槽へと供給する。そして、校正作業槽に供給された標準液をサンプリングユニット2のノズルで採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、調整槽51内では、希釈液、第一の試料及び第二の試料が混合される。S405の処理の後、測定制御部90は、S406へ移行する。
【0139】
S406では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値Q2の取得が行われる。即ち、第一の試料と第二の試料とを混合した状態のグルコース濃度に応じて電極間を流れる電流値Q2が電流値測定部によって測定され、その測定値が測定制御部90に渡される。
【0140】
上記S406の処理の後、測定制御部90は、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。吸光度計85は、前記第一の試料と第二の試料とを混合した試料(混合試料)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定し、その測定値を測定制御部90に渡す(S407)。
【0141】
測定制御部90は、当該吸光度計85の測定値に基づき、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める(S408)。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S408の処理の後、測定制御部90は、S409へ移行する。
【0142】
S409では、S408で求めたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、S408で求めたヘモグロビン濃度を当該関数
式に代入して血球成分比率を算出する。S409の処理が終了すると、S410へ進む。
【0143】
S410では、S404で取得された電極間電流値Q1をS406で取得された電極間電流値Q2に基づいて校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0144】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料のグルコース濃度の演算値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0145】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0146】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GBを精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
【0147】
そして、S411では、S410で取得された全血グルコース濃度GFとS409で算出された血球成分比率とに基づいて、上記全血のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。
【0148】
このように一つの検体に対する一連の測定制御(S401〜S411)を完了すると、S412において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内や吸光度計85のセル内の試料を洗い流す。そして、次の検体の有無を判定し(S413)、検体が有れば(S413が肯定判定の場合)、S401に戻って次の検体の測定制御(S401〜S413)を繰り返し、次の検体が無ければ(S413が否定判定の場合)、測定結果Dgを出力して測定制御を終了する(S414)。
【0149】
このように本実施例4に係る測定制御では、吸光度から算出される血球成分比率が、実際の測定用試料における血球成分比率を良好に反映していると考えられ、以て従来技術の溶血試料を用いたグルコース濃度の測定技術よりも精度の高い測定を可能とする。
更に、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0150】
〈変形例〉
図11は、実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料を測定用試料(検体)とし、第二の試料を校正用試料として測定を行ったが、本変形例では、更に第三の試料として測定用試料(検体)を供給して測定を行う構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0151】
先ず、前述の実施例4と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定を行うまでの処理(S401〜S407)を行い、次に、第三の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が調整槽51に供給され調製される。具体的には
、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させる(S415)。
【0152】
S415の処理の後、測定制御部90は、S416へ移行し、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、希釈した測定用試料のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0153】
上記S416の処理の後、測定制御部90は、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。吸光度計85は、前記第一の試料と第二の試料と第三の試料とを混合した試料(混合試料)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定し、その測定値を測定制御部90に渡す(S417)。
【0154】
測定制御部90は、S407及びS417の該吸光度計85による測定値に基づき、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める(S418)。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S418の処理の後、測定制御部90は、S419へ移行する。
【0155】
S419では、S418で求めたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、S418で求めたヘモグロビン濃度を当該関数式に代入して血球成分比率を算出する。S419の処理が終了すると、S420へ進む。
【0156】
S420では、第一の試料及び第三の試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0157】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
Q3:第一の試料及び第二の試料に第三の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
f2:第二の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料のグルコース濃度の演算値
G3:Q2とQ3によって求めた第三の試料のグルコース濃度の演算値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
GB3:Q3を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0158】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0159】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GBを精度良く求める。同様に第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q3を校正し、第三の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GB3を精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
【0160】
そして、S421では、S420で取得された全血グルコース濃度GFとS419で算出された血球成分比率とに基づいて、第一の試料及び第三の試料のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。
なお、S412以降の処理は、実施例4と同じである。
本変形例によれば、実施例4と同様に精度良く測定を行う場合であっても、二つの検体毎に一度の洗浄で済み、更に効率良く測定を行うことができる。
更に、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0161】
〈変形例〉
図13は、実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(測定用試料)及び第二の試料(校正用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0162】
先ず、前述の実施例4と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S401〜S411)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S413)。ここで、次の検体が無ければ(S413,No)、洗浄工程(S412)を行った後、測定結果の出力(S414)を行って終了する。
【0163】
また、次の検体がある場合(S413,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S415)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S415,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし(S416)、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS402に戻る。なお、繰り返して第一の試料及び第二の試料を測定する場合の各試料と過酸化水素電極間の電流値との関係は、図14を用いて説明した前記実施例2の変形例とほぼ同じであるため省略する。
【0164】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS415で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S417)、洗浄工程を実施して(S412)、ステップS401に戻る。
【0165】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0166】
なお、図13の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S415,Yes)、ステップS402に戻って第一の試料及び第二の試料の測定を繰り返したが、繰り返し時にステップS405,406を省略(スキップ)し、第一の試料のみ測定を繰り返す構成としても良い。
【符号の説明】
【0167】
1・・・・測定ユニット
2・・・・サンプリングユニット
3・・・・ボトルユニット
4・・・・入出力ユニット
51・・・・調整槽
70・・・・グリコヘモグロビン測定機構
80・・・・グルコース測定機構
81・・・・センサ部
85・・・・吸光度計
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の試料の物性を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の測定用試料について、物理的、化学的、工業的、農業的等の様々な目的で、当該測定用試料の物性を測定する場合、一般に、当該測定用試料に対して電気的、光学的、化学的等の作用を与え、その作用の程度によって測定結果を得る。
例えば、糖尿病の診断のための被測定者の血液中の血漿グルコース濃度の測定においては、血液から調整される測定用試料に対して、一般に、グルコースオキシターゼ(GOD)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)等の酵素を利用した電極間での電流推移に基づいた測定が行われる(例えば特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−37991号公報
【特許文献2】特開平9−33533号公報
【特許文献3】特開平9−318634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載の技術は、従来のグルコース濃度の測定法により得られた数値を加工、演算する点で簡便である一方、環境変化や経時変化等の要因が測定結果に与える誤差を十分に排除できない可能性が考えられる。
このため例えば、先ず所定のグルコース濃度に調整した校正用試料を測定して校正し、その後、測定用試料を測定すれば、上記誤差を排除でき、測定精度の向上が期待できる。
しかし、この校正のためには、校正用試料を測定する工程のほか、次の測定用試料の測定を行う前に校正用試料を排出し、測定装置内を洗浄する工程が必要になってしまい、測定の長時間化やランニングコストの増加を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、校正による測定精度の向上を図りつつ、工程の増加を抑える技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。即ち、本発明の測定装置は、
試料に含まれる所定物質を測定する測定部と、
前記測定部に試料を供給する供給部と、
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させ、前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させ、前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させ、前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させる制御部と、を備える。
また、本発明の測定方法は、
第一の試料を測定部に供給し、
前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、
前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する。
また、本発明は、上記測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって
も良い。更に、このプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録しても良い。コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、校正による測定精度の向上を図りつつ、工程の増加を抑える技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る測定システムの概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る測定方法の説明図である。
【図3】実施例1における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図4】実施例2に係る測定方法の説明図である。
【図5】実施例3に係る測定システムの概略構成を示す図である。
【図6】実施例3に係る測定方法の説明図である。
【図7】実施例3における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図8】実施例4に係る測定方法の説明図である。
【図9】実施例4における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【図10】実施例1に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図11】実施例2に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図12】実施例3に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図13】実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。
【図14】変形例における試料の測定値(電流値)と時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態のグルコース測定方法は、以下の各ステップを含んでよい。
まず、試料調製ステップで、検体中のグルコースを測定するために検体を測定部に応じた状態に調整する。
試料調製ステップは、検体を希釈することを含んでも良い。例えば血液を検体とする場合、希釈液は、通常血液の分析に用いられるものであればよく、緩衝能を有する。希釈倍率は通常の範囲で任意に設定すればよい。希釈液は、後述するグルコース測定装置が備える試料調製槽、ノズル、供給経路等を洗浄する洗浄液を兼ねることができる。なお、本実施形態において、単に「血液」と言う場合は、採血した状態の血液を意味する。
また、血液を検体とする場合、試料調製ステップは、血球を溶血させることを含んでも良い。血球を溶血させる方法としては、溶血剤を用いる方法、超音波を用いる方法などが挙げられる。
【0010】
このうち、溶血剤を用いる方法が簡便性の観点から好ましい。この場合は、血液の希釈に用いる希釈液と溶血剤を予め混合しておき、溶血剤を含む希釈液と血液を混合し撹拌する方法、希釈液と溶血剤と血液を一括して混合し撹拌する方法などが好ましい。
【0011】
これらの方法によれば、血液の希釈と血球の溶血を一括して行うことができると同時に、血球の溶血を促進することができるので、測定用試料の調製のスピードを上げることができる。
【0012】
溶血剤としては、公知のものを用いることができ、サポニンなどの配糖体、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、高級脂肪族アルコール、スルフォネート化合物またはサルフェート化合物のポリオキシエチレンエーテル、ソルビット脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加体等の界面活性剤が挙げられる。
【0013】
このように血液を検体とする場合、測定時間を短縮するため、血液を溶血させて測定用試料とするのが望ましいが、遠心分離により、血液を血漿成分と血球成分とに分けて血漿成分を測定用試料としても良い。
【0014】
本実施形態のグルコース測定方法は、測定部に第一の試料を供給する第一供給ステップと、その後測定部の洗浄を実施せずに第一の試料に加えて第二の試料を更に供給する第二の供給ステップとを備える。
【0015】
第一の試料と第二の試料としては、例えば一方を校正用の試料(標準液)とし、他方を測定用試料(検体)とする、或いは両方を検体(測定用試料)とすることもできる。校正用の試料は、例えば、校正のため所定のグルコース濃度に調整されたものである。
【0016】
第二の試料の供給後は、測定部を洗浄し、第一の試料の供給及び第二の試料の供給を繰り返して測定を行ってもよいし、また、第二の試料の供給後、測定部を洗浄せずに、第一の試料或いは第二の試料を供給し、測定を行うなど、先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する構成としても良い。例えば、校正用試料及び測定用試料の測定を行った後、前記測定部の洗浄を実施せずに校正用試料及び測定用試料の測定を繰り返す。また、校正用試料及び測定用試料の測定を行った後、前記測定部の洗浄を実施せずに測定用試料の測定を繰り返す。これは、既に供給済みの試料を第一の試料とし、測定部の洗浄を実施せずに第二の試料を供給する構成とみなすこともできる。
【0017】
測定ステップでは、先ず前記第一の試料のグルコース濃度Q1を測定し、次いで第一の試料に第二の試料を加えてグルコース濃度Q2を測定する。このグルコース濃度は、例えば、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる生成物の酸化還元電流を電極により検出する、いわゆる酵素電極法により測定することができる。
酵素電極法においては、グルコース酸化還元酵素として、グルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いる。
【0018】
酵素電極法により測定用試料のグルコース濃度を反映する電流値が得られた場合、予め既知の濃度の標準グルコース液(標準液)を用いて作成された検量線(マップ)に従って、グルコース濃度を求める。例えば、この検量線を電流値とグルコース濃度の対応関係を示す関係式として定義しておき、測定用試料を測定した際の電流値(測定値)を当該関係式に代入してグルコース濃度を算出する。
【0019】
例えば、第一の試料が校正用液であり、第二の試料が検体である場合、下記要素を用いて、試料としての検体のグルコース濃度を求めることができる。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
ここで、第一の試料の測定値をQ1とし、第一の試料に加えて前記第二の試料の供給を受けた際の前記測定部の測定値をGAとすると、Q2は、例えば、GAの値とQ1の値の差、またはGAの値とQ1の値の差に所定の係数を加減、積算または割算した値と一致する。
【0020】
以下に、本実施形態のグルコース測定装置の各構成について説明する。
本実施形態のグルコース測定装置は、第一の試料或いは第二の試料の試料調製機構を備える。この試料の調整機構は、検体を測定部での測定に適した状態に調整するものであり、例えば、検体を希釈する構成や、検体としての血液を溶血させる構成を備えることができる。
【0021】
試料調製機構は、例えば、血液(検体)を採血管から試料調製槽(実施例において、「希釈・反応槽」ともいう。)内に分注するためのノズルやポンプ、測定用試料の調製に必要な希釈液、溶血剤などの試薬を試薬槽から試料調製槽内に供給するためのノズル、供給経路及びポンプなどの構成を有している。
【0022】
さらに、試料調製機構は、好ましくは試料調製槽の内容物を撹拌するための撹拌機構を有している。例えば、試料調製機構内にスターラを設けることができる。
【0023】
本実施形態のグルコース測定装置は、前記試料調製機構により調製された測定用試料を用いてグルコース濃度を測定するグルコース測定部を備える。
【0024】
グルコース測定部は、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる酵素反応生成物の酸化還元電流を電極により検出し、検出結果をグルコース濃度に換算する装置や、グルコースの酵素反応生成物を特定の試薬と反応させることにより生じる色素量を検出し、検出結果をグルコース濃度に換算する装置であっても良い。
【0025】
例えばグルコース測定部が、前者の装置である場合、グルコース測定部は、センサ部、電源部、電流値測定部、グルコース濃度演算部などを有している。
【0026】
前記センサ部は、測定用試料におけるグルコースとの電子授受量に応じた電気的物理量(電流値)を出力する。センサ部は、グルコース酸化還元酵素を固定した酵素固定化層と、グルコースとグルコース酸化還元酵素との酵素反応により生じる生成物の酸化還元電流を検出する電極とを含む。
【0027】
電源部は、電流値測定部やグルコース濃度演算部等へ電力を供給する。電流値測定部は、電極間に発生した電流を測定し、測定値を出力する。
【0028】
そして、グルコース濃度演算部は、測定用試料のグルコース濃度に相関する値、即ち電流値測定部で測定した電流値を、所定の換算式(マップ)に従ってグルコース濃度を算出する。
【0029】
酵素固定化層は、ヘモグロビンは透過しないがグルコースは透過するグルコース透過膜を積層して、該グルコース透過膜側が測定用試料に晒されるように配置されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態のグルコース測定装置は、測定制御部を備える。測定制御部は、試料調製機構を制御し、第一の試料を試料調製槽に供給させ、グルコース測定部を制御して当該第一の試料の測定が行わせた後、この第一の試料に加えて第二の試料を試料調製槽に供給する。例えば、校正用試料(標準液)を試料調製槽に供給させ、グルコース測定部によって当該校正用試料の測定が行われた後、この校正用試料に加えて測定用試料を試料調製槽に供給し、これら校正用試料と測定用試料とを混合した状態で測定を行わせる。
【0031】
上述した、試料調製機構、グルコース測定部、測定制御部は、それぞれ個別に設けても良いし、類似の機構を集約して設けても良い。例えば、これらの機構、部分における演算を行う機能は、一つの演算部に集約することができる。演算部としては、例えばプロセッサ(CPU)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置等を含む所謂コンピュータ(情報処
理装置)が用いられる。前記演算機能は、該コンピュータが、測定プログラムに従って演
算処理を行うことにより実現される。
演算部は、前記センサ部と電気的に接続されており、センサ部から測定データを取得し、予めプログラムされた測定プログラムに基づいて所定の演算を行う。
また、演算部は、装置内のポンプ、弁などの駆動系を制御する測定制御部と統合することができ、この場合、該測定制御部は、前記駆動系と電気的に接続され、予めプログラムされた測定プログラムに基づいて、これらの駆動系を制御する制御信号を出力する。
【0032】
このように本実施形態の測定プログラムは、コンピュータに測定方法の各ステップを実行させ、グルコース測定装置が備える各機構の制御や測定結果の演算を行わせるためのものである。
また、本実施形態はこのようなプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録したものをも提供する。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上記試料搬送制御による搬送の適否判断が可能となる。
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。このコンピュータに固定された記録媒体は、当該コンピュータの補助記憶装置であっても良い。
【0033】
本実施形態の測定システムは、本実施形態のグルコース測定装置から取得された測定値に基づいて、糖尿病の可能性の判定を行う、糖尿病判定装置を備えても良い。当該糖尿病判定装置は、例えば、前記グルコース濃度の測定値について、予め記憶させておいた所定の基準値(例えば、正常と診断できる境界値)を超えるか否かを判定し、その結果を出力する。
【0034】
本実施形態の測定システムは、必要に応じてその他疾病の診断に必要な装置などをさらに備え、他の疾患の診断に必要な分析をさらに行うものであってもよい。
【0035】
以下に、図面を参照して本実施形態を実施するための実施例に係る測定システムについて説明する。なお、以下の実施例の構成は例示であり、本実施形態はこの実施例の構成に限定されるものではない。また、この測定システムの各機能を複数の装置に持たせ、必要に応じてネットワーク化することや、ネットワークを介して他の装置と連携することもできる。
【実施例1】
【0036】
<測定システムの概略構成>
図1は、本発明に係る測定システム10の外観を示す模式図である。測定システム10は、被測定者の糖尿病診断等に関するグルコース濃度の測定を自動的に行う装置である。
【0037】
測定システム10は、その内部に血液分析に必要な所定の構成が配置されており、例えば測定ユニット1、サンプリングユニット2、ボトルユニット3、入出力ユニット4を備えている。
【0038】
ボトルユニット3は、グルコース濃度測定等の各種測定に使用される測定用液体を各々収容したボトルを備えている。具体的には、例えば、分析対象の血液を希釈する希釈液を収容する希釈液ボトル、グルコース濃度を測定するセンサを校正する為の校正用試料を収容する標準液ボトル等を備える。
【0039】
入出力ユニット4は、入力手段として操作パネルを有している。操作パネル、複数の操
作ボタンが設けられたものであり、オペレータが操作ボタンを操作すると、これに応じた各種の動作(分析動作や印字動作など)を行わせるための信号あるいは各種の設定情報(分析条件の設定や被験者のID入力など)を測定ユニット1に入力できる。また、入力手段としてメモリカードやCD−ROM等の記憶媒体から情報を読み出すリーダや、他の装置から情報を受信する通信部(受信機)を備えてもよい。
【0040】
そして入出力ユニット4は、出力手段として表示パネルやプリンタを有している。表示パネルは、測定結果やエラーである旨を表示するとともに、設定時における操作手順や操作状況、糖尿病診断に関する各種の情報等を表示するためのものである。また、入出力ユニット4は、出力手段として警告音や音声メッセージ等を出力するブザーやスピーカ、他の装置へ情報を送信する通信部(送信機)を有しても良い。
【0041】
サンプリングユニット2は、検体を保持するラックや、ノズルを有し、検体を測定ユニット1に導入する。なお、本実施例1では、検体として血液を用い、被験者から採取した血液を採血管に入れてサンプリングユニット2にセットする。なお、検体は遠心分離等の調整がされたものであっても良い。
【0042】
ラックは、複数の採血管を保持し、後述の制御部に制御されて採血管を順次サンプリング位置に移動させる。
【0043】
ノズルは、採血管の血液(検体)をはじめ、調整液、校正用試料、洗浄液等、各種の液体の吸引・吐出を行うものであり、このため制御部によって上下方向および水平方向への移動や液体の吸引及び吐出が制御される。
【0044】
測定ユニット1は、サンプリングユニット2によって検体が導入され、当該検体の成分を測定する。本実施例1では、検体としての血液のグルコース濃度やグリコヘモグロビン濃度を測定する。
【0045】
これらの構成を備えた測定システム10は、ユーザからの分析指示を受けて、採血管から血液を採取し、当該採取された血液に対して希釈液、溶血標準液等を加えることで測定用試料を調製する。そして、調製された測定用試料が、グルコース濃度測定に供されることになる。
【0046】
測定ユニット1は、分析用液体供給機構、試料調製機構、グルコース測定機構80、およびドレイン系統を有している。なお、このような測定ユニット1の構成の分類は説明の便宜のためであり、本発明に係る測定システム10の具体的な態様を限定する意図はない。ここで、分析対象である血液を元に試料調製機構で調製された試料は、グルコース測定機構80に送られてそこで血液中のグルコース濃度が測定される。このような血液の分析が行われるにあたり、分析に必要な液体が分析用液体供給機構45によって、測定ユニット1内の必要な場所へ供給される。
【0047】
また、これらの分析用液体供給機構、試料調製機構、およびグルコース測定機構80は、測定システム10に備えられている測定制御部90と電気的に接続されており、当該測定制御部への各種データの送信、および当該測定制御部からの動作指示に従った所定の動作、処理を実行する。この測定制御部90はコンピュータに相当し、不図示のCPUや、メインメモリ、補助記憶装置(ハードディスク)等を備える。コンピュータである測定制御部90は、コンピュータプログラム(測定プログラム)を実行することにより、測定システム10でのグルコース濃度の測定に係る制御命令を出力する処理や、測定値の演算処理を実行する。なお、本実施形態では、測定制御部90がグルコース濃度の算出も行い、グルコース濃度演算部も兼ねる。更に、測定制御部90は、算出したグルコース濃度が糖
尿病の基準値を超えているか否かを判定する処理も行い、糖尿病判定部も兼ねる。また、上述した操作パネルおよび表示パネルも、この測定制御部90に接続され、そこでユーザからの操作指示およびユーザへの表示に関するプログラム処理が実行される。以下、測定システム10の詳細な構成を説明する。
【0048】
分析用液体供給機構45は、希釈液を供給する部位、校正用試料を供給する部位を有している。希釈液を供給する部位は、ボトルユニット3内の希釈液ボトルから送られた希釈液を試料調整機構へ供給する。また、校正用試料を供給する部位は、標準液ボトル内に収容されている校正用試料をポンプの圧送作用により、バッファや供給経路(不図示)を経て、後述する試料調製機構内の調整槽51へと供給する。
【0049】
試料調製機構は、調整槽51を有し、当該調整槽51に設けられた弁の開閉や攪拌機(スターラ)による攪拌が測定制御部90に制御され、調整槽51に供給された希釈液に測定用試料である血液を加えて均一に攪拌するといった試料の調製を行う。なお、本実施例の調整槽1は、反応槽を兼ねており、測定部の一部を構成している。
【0050】
この調整槽51で調製された測定用試料は、グルコース測定機構80での各分析処理に供される。グルコース測定機構80は、センサ部81、電源部(不図示)、電流値測定部(不図示)を有する。センサ部81は、測定用試料におけるグルコースとの電子授受量に応じた電気的物理量(電流値)を出力するものであり、グルコースの酸化還元酵素が固定化された酵素固定化層と、酵素固定化層での酵素反応生成物と電子の授受を行う電極を有する。なお、この酵素固定化層に含まれる酸化還元酵素としては、グルコースオキシターゼ(GOD)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が採用でき、当該酵素としてGODが採用される場合には、それに対応する電極として過酸化水素電極が採用されることになる。以下の本実施例では、当該酵素としてGODの採用を前提に説明を行うが、これには、採用し得る酵素をGODに限定する意図はない。
【0051】
センサ部81が測定用試料に晒された状態で、電源部により電圧が印加されると、センサ部81内の電極間に電流が流れる。電流値測定部はこの電極間電流を測定し、その測定値を測定制御部90に送る。
【0052】
<測定方法>
ここで、測定システム10における糖尿病診断のためのグルコース濃度の測定制御について、図2に基づいて説明する。図2に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0053】
先ず、S100では、測定制御部90が試料調製機構を制御し、調整槽51に規定量の希釈液を供給し、S101では、調整槽51に第一の試料としての校正用試料を供給する。規定量の希釈液および第一の試料の供給を行った後、測定制御部90は、S102へ移行する。
【0054】
S102では、スターラによる撹拌を開始し、調整槽51内に供給された希釈液及び第一の試料を均一に混合する。S102の攪拌の開始後、測定制御部90は、S103へ移行する。
【0055】
S103では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、校正用試料のグルコース濃度
に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0056】
S103の測定後、測定制御部90はステップS104へ移行し、第二の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が調整槽51に加えられ調製される。具体的には、サンプリングユニット2のノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、希釈液、第一の試料及び第二の試料が調整槽51内で混合される。
【0057】
S105では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、校正用試料と測定用試料とが混合された状態のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0058】
ここで、図3に基づいて、S101からS105までの試料の状態と電流値の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、校正用試料を加えた際(S101)、図3(A)のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS103の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ測定用試料を加える(S104)、即ち、既に調整槽51へ供給済みの校正用試料に加えて測定用試料が供給されると、この測定用試料の分、グルコース濃度が高まる。なお、調整槽51に供給された校正用試料は、希釈液によって所定の希釈率に希釈され、この希釈した際の総量が校正用試料や測定用試料の量と比べて充分に多くの量に設定されており、測定用試料を加えても総量はあまり変わらないので、図3(A)に示すように、測定用試料を加えた際のグルコース濃度が、ほぼ倍となる。このように、測定用試料を加えた際、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhAから再度急峻に立ち上がり、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS105の処理では、この電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q2を測定する。
【0059】
本実施例1では、図3(B)に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、校正用試料の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhBに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0060】
ここで、図2に戻る。S106では、S103で取得された電極間電流値Q1に基づいてS105で取得された電極間電流値Q2を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度Dgを算出する。このグルコース濃度の算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0061】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2から求めた第二の試料の測定値
GA:G2を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0062】
そして、検量線としての関係式に測定結果GAを代入してグルコース濃度Dgを算出する。
【0063】
このように第一の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q1によって測定値G2を校正し、第二の試料(測定用試料)の測定結果GAを精度良く求める。これにより、精度良くグルコース濃度Dgを算出することができる。
【0064】
この一つの検体に対する一連の測定制御(S101〜S106)を完了すると、S107において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内の試料を洗い流す。即ち、試料に晒されているセンサ部81等も洗浄する。そして、次の検体の有無を判定し(S108)、検体が有れば(S108が肯定判定の場合)、S101に戻って次の検体の測定制御(S101〜S108)を繰り返し、次の検体が無ければ(S108が否定判定の場合)、測定結果を出力して測定制御を終了する(S109)。
【0065】
本実施例1に係る測定制御によれば、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
また、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、場合により、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0066】
〈変形例〉
図10は、実施例1に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例1では、第一の試料(校正用試料)及び第二の試料(測定用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0067】
先ず、前述の実施例1と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S100〜S106)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S108)。ここで、次の検体が無ければ(S108,No)、洗浄工程(S107)を行った後、測定結果の出力(S109)を行って終了する。
【0068】
また、次の検体がある場合(S108,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S110)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S110,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS101に戻る。この場合、図14に示すように、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhBから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhCで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS103の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q3を測定する。更に、測定用試料を調整槽51に供給すると、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhCから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhDで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS105の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q4を測定する。
【0069】
本変形例では、図14に示すように、高さhCに相当する電流値が、校正用試料の測定値、即ち電流値Q3から電流値Q2を減じた値が測定用試料の測定値であり、高さhDに相当する電流値、即ち電流値Q4から電流値Q3を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を
検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhCに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0070】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS110で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S112)、洗浄工程を実施して(S113)、ステップS100に戻る。
【0071】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0072】
なお、図10の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S110,Yes)、ステップS101に戻って繰り返したが、ステップS104に戻って第二の試料の供給及び測定を繰り返す構成としても良い。この場合、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhCや高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【実施例2】
【0073】
上記実施例1では、第一の試料として校正用試料を測定し、これに第二の試料としての測定用試料を加えて測定したが、本実施例2では、第一の試料として測定用試料を測定し、これに第二の試料として校正用試料を加えて測定する構成である。なお、その他の構成は、上記実施例1とほぼ同じであるので、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0074】
本実施例2の測定システム10におけるグルコース濃度の測定制御について、図4に基づいて説明する。図4に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0075】
先ず、S201では、調整槽51に希釈液が供給される。規定量の希釈液を供給させた後、測定制御部90は、S202へ移行する。
【0076】
S202では、第一の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が希釈層(調整槽)51に加えられ調製される。具体的には、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させる。
【0077】
S202の処理の後、測定制御部90は、S203へ移行し、スターラ56による撹拌を開始させ、S204へ進む。
【0078】
S204では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、希釈した測定用試料のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0079】
S204の測定後、ステップS205へ移行し、第二の試料としての校正用試料が希釈層51に加えられる。具体的には、校正用試料を供給する部位を制御し、標準液ボトル内に収容されている校正用試料をポンプの圧送作用により、バッファ及び供給経路を経て、校正作業槽(不図示)へと供給し、校正作業槽に供給された校正標準液をサンプリングユ
ニット2のノズルで採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、調整槽51内では、希釈液、第一の試料及び第二の試料が混合される。S205の処理の後、測定制御部90は、S206へ移行する。
【0080】
S206では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、測定用試料に校正用試料が加えられた混合液のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0081】
S207では、S206で取得された電極間電流値Q2に基づいてS204で取得された電極間電流値Q1を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度Dgを算出する。このグルコース濃度Dgの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0082】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2から求めた第二の試料の測定値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0083】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0084】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果GBを精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度Dgを算出する。
【0085】
この一つの検体に対する一連の測定制御(S201〜S207)を完了すると、S208において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内の試料を洗い流す。即ち、試料に晒されているセンサ部81等も洗浄する。そして、次の検体の有無を判定し(S209)、次の検体が有れば(S209が肯定判定の場合)、S201に戻って次の検体の測定制御(S201〜S209)を繰り返し、次の検体が無ければ(S209が否定判定の場合)、測定結果を出力して測定制御を終了する(S210)。
【0086】
ここで、図3に基づいて、S202からS206までの試料の状態と電流値の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、測定用試料を加えた際(S202)、図3(A)のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS204の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ校正用試料を加える(S205)、即ち、既に調整槽51へ供給済みの測定用試料に加えて校正用試料が供給されるので、この校正用試料の分、グルコース濃度が高まる。なお、調整槽51に供給済みの測定用試料は、希釈液によって所定の希釈率に希釈され、この希釈した際の総量が校正用試料や測定用試料の量と比べて充分に多くの量に設定されており、校正用試料を加えても総量があまり変わらないので、図3(A)に示すように、校正用試料を加えた際のグルコース濃度が、ほぼ倍となる。このように、校正用試料を加えた際、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhAから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS
206の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q2を測定する。
【0087】
本実施例2では、図3(B)に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、測定用試料の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が校正用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhBに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhAに相当する電流値Q1に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0088】
このように本実施例2に係る測定制御では、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0089】
〈変形例〉
図11は、実施例2に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(測定用試料)及び第二の試料(校正用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0090】
先ず、前述の実施例2と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S201〜S207)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S209)。ここで、次の検体が無ければ(S209,No)、洗浄工程(S208)を行った後、測定結果の出力(S210)を行って終了する。
【0091】
また、次の検体がある場合(S209,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S211)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S211,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし(S212)、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS202に戻る。この場合、図14に示すように、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhBから再度急峻に立ち上がり、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhCで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS204の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q3を測定する。更に、校正用試料を調整槽51に供給すると、上記過酸化水素電極間の電流値は、高さhCから再度急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhDで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS206の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q4を測定する。
【0092】
本変形例では、図14に示すように、高さhCに相当する電流値が、校正用試料の測定値、即ち電流値Q3から電流値Q2を減じた値が測定用試料の測定値であり、高さhDに相当する電流値、即ち電流値Q4から電流値Q3を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhCに相当する電流値と基準値G0との比率を求め、高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0093】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS211で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S213)、洗浄工程を実施して(S214)、ステップS201に戻る。
【0094】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0095】
なお、図11の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S211,Yes)、ステップS202に戻って第一の試料及び第二の試料の測定を繰り返したが、繰り返し時にステップS205,206を省略(スキップ)し、第一の試料のみ測定を繰り返す構成としても良い。この場合、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhCや高さhDに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【実施例3】
【0096】
上記実施例1,2では、血液を遠心分離して血球成分を除去したものを測定用試料としたが、これに限らず、本実施例3では、採血した血液の血球を溶血させて測定用試料とした。このため本実施例3は、血球を溶血させる構成や、血球成分比率を導出する構成を備えている。
【0097】
図5は、本実施例3の測定ユニット1内の概略構成を示す図である。
本実施例3の測定システム10は、実施例1の標準液ボトルに代えて、溶血剤と校正用試料を混合した溶血標準液を収容する溶血標準液ボトルを備えている。
【0098】
溶血標準液ボトル内の溶血標準液に含まれる溶血剤は、血液における血球の細胞膜を破壊するためのものである。溶血剤としては、たとえばポリオキシ(10)エチレンオクチルフェニルエーテル(TritonX-10)、高級脂肪酸アルコール、アルキルアリールポリエーテルアルコール、スルフォネートのポリオキシエチレングリコール、サルフェートのポリオキシエチレンエーテルおよび無水ソルビット脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体などの界面活性剤の他、塩化アンモニウムなどの公知の溶血剤が採用できる。
【0099】
また、本実施例3の測定システム10は、検体の血球成分比率を求めるため、調整槽51で調整された液体(調整された試料)の吸光度を測定する吸光度計85を備える。吸光度計85は、分析領域にセットされた試料にオキシヘモグロビンの吸収波長を照射し、その吸光度を測定する。吸光度計85は、照射用レーザーダイオード、及び受光用のフォトダイオードを有する。照射用レーザーダイオードは、分析領域にセットされた試料にレーザ光を照射し、当該試料を透過したレーザ光を受光用のフォトダイオードで受光する。そして吸光度計85は、受光用フォトダイオードで受光したレーザ光に基づき吸光度を求める。
【0100】
本実施例3において、上記溶血標準液及び吸光度計85以外のハードウェア構成は、実施例1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素に同符号を付するなどして、再度の説明を省略する。
【0101】
上記構成の測定システム10により、溶血した測定用試料を用いて糖尿病診断等のためにグルコース濃度を求める測定制御について図6に基づいて以下に説明する。
【0102】
図6に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで実現されるグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0103】
先ず、S300では、測定制御部90が試料調製機構を制御して調整槽51に規定量の
希釈液を供給し、S301にて、測定制御部90は、調整槽51に第一の試料としての溶血標準液(校正用試料)を供給させる。規定量の希釈液及び溶血標準液の供給を行った後、スターラ56による撹拌を開始させ、S302へ進む。なお、本実施形態では、溶血剤と校正用標準液を混合して供給したが、これに限定されるものではなく、校正用標準液と溶血剤とを別に供給しても良い。例えばS301で校正用標準液を供給し、溶血剤を第二の試料(測定用試料)と共に後述のステップS303で供給してもよい。
【0104】
S302では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、第一の試料としての溶血標準液のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0105】
S302の測定後、ステップS303へ移行し、第二の試料である血液(全血)が加えられ、測定用試料が調製される。具体的にはサンプリングユニット2のノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、希釈液、第一の試料及び第二の試料が調整槽51内で混合される。S303の処理の後、測定制御部90は、S304へ移行する。
【0106】
S304にて、測定制御部90は、第二の試料としての血液を投入してからの経過時間Tが所定の閾値Tx以上か否かを判定する。この閾値Txは、第二の試料である血液の溶血にかかる時間(溶血時間)に応じて予め設定しておく。S304で肯定判定されるとS305へ進み、否定判定されると再びS304の処理が繰り返される。
【0107】
S305では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、経過時間Tが閾値Txに至った時点において、当該電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q2が測定制御部90に渡される。
【0108】
ここで、図7に基づいて、S301からS305における、センサ部81の電極間を流れる電流値と時間の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、溶血標準液(校正用試料)を加えた際(S101)、図7のグラフに示すように、急峻に立ち上がり、校正用試料のグルコース濃度に応じた高さhAで電流値の傾きが概ね水平となる。そこでS302の処理では、このように電流値の変化が極めて緩やかになるタイミングで過酸化水素電極間の電流値Q1を測定する。次に、調整槽51へ測定用試料を加えると溶血を開始する(S303)。このタイミングでは電流値の立ち上がりは比較的急峻であるが、時間の経過とともにその傾きは緩やかになり、経過時間Tが閾値Txに至ったタイミングでは、測定用試料のグルコース濃度に応じた高さhBで電流値の傾きは概ね水平となる。そこで、上記S305の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになったタイミング(T≧Tx)での過酸化水素電極間の電流値の取得が行われることになる。
【0109】
本実施例1では、図7に示すように、高さhAに相当する電流値Q1が、溶血標準液の測定値であり、高さhBに相当する電流値、即ち電流値Q2から電流値Q1を減じた値が測定用試料の測定値である。ここで、校正用試料のグルコース濃度は既知であるので、この既知のグルコース濃度を検量線としての関係式に代入し、このグルコース濃度の場合に過酸化水素電極間に流れる電流値を算出し、基準値G0とする。そして、高さhAに相当する電流値Q1と基準値G0との比率を求め、高さhBに相当する電流値に乗ずることで、測定用試料の測定値を校正する。
【0110】
ここで、図6に戻る。上記S305の処理の後、測定制御部90は、S306へ移行す
る。S306では、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。
【0111】
S307では、吸光度計85によって、前記第一の試料及び第二の試料を混合した試料(以下、混合試料とも称す)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定させ、その測定値が測定制御部90に渡される。測定制御部90では、その測定値に基づいて、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義し、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S307の処理の後、測定制御部90は、S308へ移行する。
【0112】
S308では、S307で算出されたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義しておき、S307で求めたヘモグロビン濃度を当該関数式に代入して血球成分比率を算出する。S308の処理が終了すると、S309へ進む。
【0113】
S309では、S302で取得された電極間電流値Q1に基づいてS305で取得された電極間電流値Q2を校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0114】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料の測定値
GA:G2を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0115】
そして、検量線としての関係式に測定結果GAを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0116】
このように第一の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q1によって測定値G2を校正し、第二の試料(測定用試料)の測定結果GAを精度良く求める。これにより、精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
そして、S310では、S309で取得された全血グルコース濃度GFとS308で算出された血球成分比率とに基づいて、分析対象である血漿グルコース濃度Dgの算出が行われる。
【0117】
ここで、S309で算出された全血グルコース濃度GFは、血球に含まれる液体成分と血漿に含まれる液体成分とが足し合わされた測定用試料でのグルコース濃度である。したがって、当該グルコース濃度GFを、糖尿病診断に必要な血漿グルコース濃度Dgに換算するために、本実施例では、前記血球成分比率に基づいて上記全血のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。これにより、実際の血漿グルコース値Dgにきわめて近いグルコース値(測定結果Dg)を算出することができる。
【0118】
また、溶血時間の経過に伴う基準電流と測定電流とのずれを考慮して、血漿グルコース
濃度Dgの補正を行ってもよい。上述のように、経過時間Tが閾値Txに至る前においては、完全に血球の溶血が完了していない未溶血試料についての電流値が検出されている場合がある。すなわち、電極への電圧印加開始後の比較的初期の、測定用試料の酵素反応速度に対する未溶血試料の酵素反応速度の相対的な遅さが、所定の検出ポイントでの電流を僅かに小さくする方向に影響している。
【0119】
このような前記試料調製ステップにおける全血球の溶血の終了前の未溶血試料の酵素反応速度が、測定用試料の酵素反応速度に与える影響が上記両電流のずれとして現れている。そしてこのずれは、結果としてS309で算出されるグルコース濃度GFの値やS308で算出される血球成分比率の値に何らかの影響を与えるものと考えられる。そこで、本実施例で、このずれの影響を抑制すべく、さらなる補正係数を加味してもよい。
【0120】
このような補正係数は、事前の実験により得られた、溶血開始からの経過時間Tが閾値Txに至った時点での測定電流と、溶血開始からの経過時間Tを長くとり、溶血が完全に行われた時点での測定電流とのずれを踏まえて設定できる。このような補正は、例えば、予め設定した補正係数を測定制御部90のメモリ等の記憶部に記憶させておき、測定制御部90がS309で求めた全血グルコース濃度GA或いはS310による補正後の測定結果GA1に対して前記補正係数を乗ずることにより行うことができる。
【0121】
S310の処理の後、測定制御部90は、S311へ移行する。このように一つの検体に対する一連の測定制御(S301〜S310)を完了すると、S311において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内や吸光度計85のセル内の試料を洗い流す。そして、次の検体の有無を判定し(S312)、検体が有れば(S312が肯定判定の場合)、S301に戻って次の検体の測定制御(S301〜S312)を繰り返し、次の検体が無ければ(S312が否定判定の場合)、測定結果GA1を出力して測定制御を終了する(S313)。
【0122】
このように本実施例3に係る測定制御では、吸光度計85によって検出される吸光度を起点として、分析対象の血液の血球成分比率が算出される。この吸光度は、測定用試料に対して直接測定操作、すなわち吸光度測定のための光の出射および透過光の受光を行うため、実際の測定用試料における血液の成分状態を反映するものである。したがって、当該吸光度から算出される血球成分比率は、実際の測定用試料における血球成分比率を良好に反映していると考えられ、以て従来技術の溶血試料を用いたグルコース濃度の測定技術よりも精度の高い測定を可能とする。
【0123】
更に、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0124】
また、本実施形態では、溶血剤と校正用試料を予め混合し、溶血標準液として一度に供給する構成としたことにより、溶血試料を用いて高精度に測定を行うにあたり、測定時間の短縮化及び供給機構の簡略化が可能である。
更に、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0125】
〈変形例〉
図12は、実施例3に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(校正用試料)及び第二の試料(測定用試料)を測定後、洗浄して終了したが、
この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0126】
先ず、前述の実施例3と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S300〜S310)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S312)。ここで、次の検体が無ければ(S312,No)、洗浄工程(S311)を行った後、測定結果の出力(S313)を行って終了する。
【0127】
また、次の検体がある場合(S312,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S314)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S314,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS301に戻る。なお、繰り返して第一の試料及び第二の試料を測定する場合の各試料と過酸化水素電極間の電流値との関係は、図14を用いて説明した前記実施例1の変形例とほぼ同じであるため省略する。
【0128】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS314で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S316)、洗浄工程を実施して(S317)、ステップS300に戻る。
【0129】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0130】
なお、図12の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S314,Yes)、ステップS301に戻って繰り返したが、ステップS303に戻って第二の試料の供給及び測定を繰り返す構成としても良い。
【実施例4】
【0131】
上記実施例3では、先ず第一の試料として溶血標準液を測定し、これに第二の試料としての測定用試料を加えて測定したが、本実施例4では、先ず第一の試料として測定用試料を測定し、これに第二の試料として溶血標準液を加えて測定する構成である。なお、その他の構成は、上記実施例3とほぼ同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0132】
ここで、測定システム10における糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定制御について、図8に基づいて説明する。図8に示す測定制御は、コンピュータでもある測定制御部90が、メモリに記録されている測定プログラムを実行することで、実現される糖尿病診断等のためのグルコース濃度の測定処理である。具体的には、当該測定制御は、ユーザが測定システム10の操作パネルを操作し、測定開始の指示を与えることで、実行される。
【0133】
先ず、S401では、調整槽51に希釈液および溶血剤が供給される。なお、本実施例4では、溶血剤と希釈液を予め混合し、供給時間の短縮や供給機構の簡素化を図ったが、これに限らず、溶血剤と希釈液とを別個に供給する構成としても良い。例えば、S401では、希釈液のみを供給し、溶血剤は次のステップS402で供給しても良い。
【0134】
S401の処理の後、測定制御部90は、S402に移行し、希釈液および溶血剤が供給された調整槽51に対して、第一の試料(測定用試料)としての血液(全血)を加えさせ、調製する。具体的には、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させ、スターラ56によって撹拌し、溶血を開始させる。この撹拌により溶血が促進されることになる。S402の処理の後、測定制御部9
0は、S403へ移行する。
【0135】
S403にて、測定制御部90は、溶血開始からの経過時間Tが閾値Tx以上か否かを判定する。この閾値Txとしては、溶血の進行状態と血液分析装置の処理能力との均衡が取れる時間を、予め設定する。S403で肯定判定されるとS404へ進み、否定判定されると再びS403の処理が繰り返される。
【0136】
S404では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値Q1の取得が行われる。具体的には、測定用試料の溶血が開始されて、経過時間Tが閾値Txに至った時点において、センサ部81の電極間を流れる電流値Q1が電流値測定部によって測定され、その測定値が測定制御部90に渡される。
【0137】
ここで、図9に基づいて、S402からS404におけるセンサ部81の電極間を流れる電流値と時間の関係について説明する。
上記過酸化水素電極間の電流値は、溶血開始(S402)のタイミングでは電流値の立ち上がりは比較的急峻であるが、時間の経過とともにその傾きは緩やかになり、経過時間Tが閾値Txに至ったタイミングでは、電流値の傾きは概ね水平となる。そこで、上記S404の処理では、電流値の変化が極めて緩やかになったタイミング(T≧Tx)での過酸化水素電極間の電流値を取得する。
【0138】
S404の測定後、ステップS405へ移行し、第二の試料である校正用試料が加えられる。具体的には、校正用試料を供給する部位を制御し、標準液ボトル9内に収容されている標準液(校正用試料)をポンプの圧送作用により、バッファ及び供給経路を経て、校正作業槽へと供給する。そして、校正作業槽に供給された標準液をサンプリングユニット2のノズルで採取し、調整槽51内に吐出する。即ち、調整槽51内では、希釈液、第一の試料及び第二の試料が混合される。S405の処理の後、測定制御部90は、S406へ移行する。
【0139】
S406では、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値Q2の取得が行われる。即ち、第一の試料と第二の試料とを混合した状態のグルコース濃度に応じて電極間を流れる電流値Q2が電流値測定部によって測定され、その測定値が測定制御部90に渡される。
【0140】
上記S406の処理の後、測定制御部90は、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。吸光度計85は、前記第一の試料と第二の試料とを混合した試料(混合試料)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定し、その測定値を測定制御部90に渡す(S407)。
【0141】
測定制御部90は、当該吸光度計85の測定値に基づき、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める(S408)。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S408の処理の後、測定制御部90は、S409へ移行する。
【0142】
S409では、S408で求めたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、S408で求めたヘモグロビン濃度を当該関数
式に代入して血球成分比率を算出する。S409の処理が終了すると、S410へ進む。
【0143】
S410では、S404で取得された電極間電流値Q1をS406で取得された電極間電流値Q2に基づいて校正し、測定用試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0144】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料のグルコース濃度の演算値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0145】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0146】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GBを精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
【0147】
そして、S411では、S410で取得された全血グルコース濃度GFとS409で算出された血球成分比率とに基づいて、上記全血のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。
【0148】
このように一つの検体に対する一連の測定制御(S401〜S411)を完了すると、S412において測定制御部90は、洗浄工程を実施する。例えば、調整槽51内の試料を排出すると共に調整槽51へボトルユニット3から洗浄液(希釈液と兼用でも良い)を供給し、調整槽51内や吸光度計85のセル内の試料を洗い流す。そして、次の検体の有無を判定し(S413)、検体が有れば(S413が肯定判定の場合)、S401に戻って次の検体の測定制御(S401〜S413)を繰り返し、次の検体が無ければ(S413が否定判定の場合)、測定結果Dgを出力して測定制御を終了する(S414)。
【0149】
このように本実施例4に係る測定制御では、吸光度から算出される血球成分比率が、実際の測定用試料における血球成分比率を良好に反映していると考えられ、以て従来技術の溶血試料を用いたグルコース濃度の測定技術よりも精度の高い測定を可能とする。
更に、一つの測定用試料を測定する度に校正用試料を測定して校正を行う構成でありながら、第一の試料を測定してから第二の試料を測定するまでの間の洗浄工程を省略でき、短時間で精度の高い測定を可能とする。
【0150】
〈変形例〉
図11は、実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料を測定用試料(検体)とし、第二の試料を校正用試料として測定を行ったが、本変形例では、更に第三の試料として測定用試料(検体)を供給して測定を行う構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0151】
先ず、前述の実施例4と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定を行うまでの処理(S401〜S407)を行い、次に、第三の試料(測定用試料)としての検体(血球成分が除去された血液)が調整槽51に供給され調製される。具体的には
、サンプリングユニット2を制御し、ノズルによって採血管から血液を採取し、調整槽51内に吐出させる(S415)。
【0152】
S415の処理の後、測定制御部90は、S416へ移行し、グルコース測定機構80のセンサ部81による検出値、すなわち過酸化水素電極間を流れる電流値の取得が行われる。具体的には、希釈した測定用試料のグルコース濃度に応じてセンサ部81の電極間を流れる電流値が電流値測定部によって測定され、その測定値Q1が測定制御部90に渡される。
【0153】
上記S416の処理の後、測定制御部90は、調整槽51内の試料の少なくとも一部を吸光度計85の測定領域に供給させる。吸光度計85は、前記第一の試料と第二の試料と第三の試料とを混合した試料(混合試料)におけるヘモグロビンの吸収波長の吸光度を測定し、その測定値を測定制御部90に渡す(S417)。
【0154】
測定制御部90は、S407及びS417の該吸光度計85による測定値に基づき、混合試料におけるヘモグロビン濃度を求める(S418)。例えば、混合試料の吸光度とヘモグロビン濃度との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、測定した吸光度を当該関数式に代入してヘモグロビン濃度を算出する。S418の処理の後、測定制御部90は、S419へ移行する。
【0155】
S419では、S418で求めたヘモグロビン濃度に基づいて、混合試料中の血球成分比率が算出される。この血球成分比率は、混合試料に占める血球成分の割合であり、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との間に相関があることに基づき、測定制御部90は、吸光度計85によって取得されたヘモグロビン濃度に基づいて、血球成分比率の導出を行う。例えば、ヘモグロビン濃度と血球成分比率との対応関係を関数式で定義して、測定制御部90のメモリ等の記憶部に格納しておき、S418で求めたヘモグロビン濃度を当該関数式に代入して血球成分比率を算出する。S419の処理が終了すると、S420へ進む。
【0156】
S420では、第一の試料及び第三の試料の校正したグルコース濃度GFを算出する。このグルコース濃度GFの算出は、例えば下記要素を用いて行われる。
【0157】
Q1:第一の試料の測定値
Q2:第一の試料に第二の試料を加えた際の測定値
Q3:第一の試料及び第二の試料に第三の試料を加えた際の測定値
f1:第一の試料による測定値の変化係数
f2:第二の試料による測定値の変化係数
G0:校正用試料の初期の測定値(基準値)
G2:Q1とQ2によって求めた第二の試料のグルコース濃度の演算値
G3:Q2とQ3によって求めた第三の試料のグルコース濃度の演算値
GB:Q1を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
GB3:Q3を上記要素によって補正した測定結果(電流値)
【0158】
そして、検量線としての関係式に測定結果GBを代入してグルコース濃度GFを算出する。
【0159】
このように第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q1を校正し、第一の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GBを精度良く求める。同様に第二の試料(校正用試料)の基準値G0と測定値Q2によって測定値Q3を校正し、第三の試料(測定用試料)の測定結果(電流値)GB3を精度良く求める。これにより精度良くグルコース濃度GFを求めることができる。
【0160】
そして、S421では、S420で取得された全血グルコース濃度GFとS419で算出された血球成分比率とに基づいて、第一の試料及び第三の試料のグルコース濃度(全血グルコース濃度値)GFのうちの血球成分に由来するグルコースの濃度(血球由来グルコース濃度)を求め、全血グルコース濃度GFから血球由来グルコース濃度を減じて測定結果Dgを求める。
なお、S412以降の処理は、実施例4と同じである。
本変形例によれば、実施例4と同様に精度良く測定を行う場合であっても、二つの検体毎に一度の洗浄で済み、更に効率良く測定を行うことができる。
更に、第一の試料を希釈液で所定の希釈率に調整して測定したのち、第二の試料を加えて測定する構成としたことにより、第二の試料を希釈するために新たに希釈液を供給する時間や希釈液を省略できる。従って、コストの削減に寄与する。
【0161】
〈変形例〉
図13は、実施例4に係る測定方法の変形例を示す図である。上述の実施例2では、第一の試料(測定用試料)及び第二の試料(校正用試料)を測定後、洗浄して終了したが、この測定の後、更に所定回数測定を繰り返す構成とした。なお、この他の構成は、同じであるので、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0162】
先ず、前述の実施例4と同じく、第一の試料を供給してから第二の試料を供給して測定し、グルコース濃度を算出するまでの処理(S401〜S411)を行い、次の検体があるか否かを判定する(S413)。ここで、次の検体が無ければ(S413,No)、洗浄工程(S412)を行った後、測定結果の出力(S414)を行って終了する。
【0163】
また、次の検体がある場合(S413,Yes)、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達したか否かを判定し(S415)、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満であれば(S415,Yes)、繰り返し回数Niをカウントアップし(S416)、洗浄工程を実施せずに第一の試料を供給するステップS402に戻る。なお、繰り返して第一の試料及び第二の試料を測定する場合の各試料と過酸化水素電極間の電流値との関係は、図14を用いて説明した前記実施例2の変形例とほぼ同じであるため省略する。
【0164】
そして、繰り返し回数Niが、所定回数Prに達するまで、同様に繰り返し、ステップS415で繰り返し回数Niが、所定回数Prに達した場合には、繰り返し回数Niを初期化し(S417)、洗浄工程を実施して(S412)、ステップS401に戻る。
【0165】
このように、洗浄工程を実施せずに測定を複数回繰り返すことにより、更に効率良くグルコース濃度の測定を行うことができる。
【0166】
なお、図13の例では、繰り返し回数Niが所定回数Pr未満の場合(S415,Yes)、ステップS402に戻って第一の試料及び第二の試料の測定を繰り返したが、繰り返し時にステップS405,406を省略(スキップ)し、第一の試料のみ測定を繰り返す構成としても良い。
【符号の説明】
【0167】
1・・・・測定ユニット
2・・・・サンプリングユニット
3・・・・ボトルユニット
4・・・・入出力ユニット
51・・・・調整槽
70・・・・グリコヘモグロビン測定機構
80・・・・グルコース測定機構
81・・・・センサ部
85・・・・吸光度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の試料を測定部に供給し、
前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、
前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する測定方法。
【請求項2】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する請求項1に記載の測定方法。
【請求項5】
前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
下記要素を用いて、試料としての検体の所定物質濃度を求める請求項2、請求項3または請求項5に記載の測定方法。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項7】
前記測定では、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を前記測定部の電極により検出する請求項1から6の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項8】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項1から7の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項9】
試料に含まれる所定物質を測定する測定部と、
前記測定部に試料を供給する供給部と、
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させ、前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させ、前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させ、前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させる制御部と、
を備える測定装置。
【請求項10】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項9に記載の測定装置。
【請求項12】
前記制御部が、先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復させる請求項9に記載の測定装置。
【請求項13】
前記制御部が、前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1
回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記測定結果算出部が、下記要素を用いて検体の所定物質濃度を求める請求項13に記載の測定装置。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項15】
前記測定部が、酸化還元酵素を固定した酵素固定化層と、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を検出する電極とを備える請求項9から14の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項16】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項9から15の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項17】
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させるステップと、
前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させるステップと、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させるステップと、
前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させるステップとを
測定装置の制御部に実行させるための測定プログラム。
【請求項18】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項19】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項20】
先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項21】
前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項20に記載の測定プログラム。
【請求項22】
前記測定結果算出ステップでは、下記要素を用いて、検体の所定物質濃度を求める請求項18、請求項19または請求項21に記載の測定プログラム。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項23】
前記測定では、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を前記測定部の電極により検出する請求項17から22の何れか1項に記載の測定プログラム。
【請求項24】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項17から23の何れか1項に記載の測定プログラム。
【請求項25】
前記請求項17から24の何れか1項に記載の測定プログラムを記録した記録媒体。
【請求項1】
第一の試料を測定部に供給し、
前記第一の試料に含まれる所定物質を測定し、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記測定部に第二の試料を供給し、
前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定する測定方法。
【請求項2】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する請求項1に記載の測定方法。
【請求項5】
前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
下記要素を用いて、試料としての検体の所定物質濃度を求める請求項2、請求項3または請求項5に記載の測定方法。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項7】
前記測定では、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を前記測定部の電極により検出する請求項1から6の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項8】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項1から7の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項9】
試料に含まれる所定物質を測定する測定部と、
前記測定部に試料を供給する供給部と、
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させ、前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させ、前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させ、前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させる制御部と、
を備える測定装置。
【請求項10】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項9に記載の測定装置。
【請求項12】
前記制御部が、先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復させる請求項9に記載の測定装置。
【請求項13】
前記制御部が、前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1
回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記測定結果算出部が、下記要素を用いて検体の所定物質濃度を求める請求項13に記載の測定装置。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項15】
前記測定部が、酸化還元酵素を固定した酵素固定化層と、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を検出する電極とを備える請求項9から14の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項16】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項9から15の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項17】
前記供給部に第一の試料を測定部に供給させるステップと、
前記測定部に当該第一の試料に含まれる所定物質を測定させるステップと、
前記測定部の洗浄を実施せずに前記供給部によって前記測定部に第二の試料を供給させるステップと、
前記測定部に前記第一の試料及び前記第二の試料に含まれる所定物質を測定させるステップとを
測定装置の制御部に実行させるための測定プログラム。
【請求項18】
前記第一の試料が校正用液であり、前記第二の試料が検体である請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項19】
前記第一の試料が検体であり、前記第二の試料が校正用液である請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項20】
先の測定の後、前記測定部の洗浄を実施せずに次の測定を行うことを複数回反復する請求項17に記載の測定プログラム。
【請求項21】
前記測定のうち、試料として校正用液を用いて行う測定を少なくとも1回行い、前記校正用液を用いて行う測定以外の測定では、試料として検体を用いて測定を行う請求項20に記載の測定プログラム。
【請求項22】
前記測定結果算出ステップでは、下記要素を用いて、検体の所定物質濃度を求める請求項18、請求項19または請求項21に記載の測定プログラム。
Q1:校正用液の測定値
Q2:検体の測定値
f0:校正用液の所定物質濃度
【請求項23】
前記測定では、前記所定物質と前記酸化還元酵素との酵素反応生成物による酸化還元電流を前記測定部の電極により検出する請求項17から22の何れか1項に記載の測定プログラム。
【請求項24】
前記所定物質がグルコースであり、前記測定部が試料のグルコース濃度を測定する請求項17から23の何れか1項に記載の測定プログラム。
【請求項25】
前記請求項17から24の何れか1項に記載の測定プログラムを記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−247248(P2012−247248A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117938(P2011−117938)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]