測定系
【課題】ノイズとなる光を遮光でき測定精度を向上させることが可能な測定系を提供する。
【解決手段】第1稜線部を有する第1磁界発生部301と、第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部302と、当該間隙に所定の光を入射する光学系(光源部100、コリメートレンズ201、フィルタ202、第1レンズ203)と、を有し、光学系の光軸が、第1稜線部及び第2稜線部を含む面に垂直であって間隙を通る面内に位置する測定系を採用する。
【解決手段】第1稜線部を有する第1磁界発生部301と、第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部302と、当該間隙に所定の光を入射する光学系(光源部100、コリメートレンズ201、フィルタ202、第1レンズ203)と、を有し、光学系の光軸が、第1稜線部及び第2稜線部を含む面に垂直であって間隙を通る面内に位置する測定系を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光やラマン散乱光などの光強度を検出することによって、抗体と反応した被測定物質を定量的に測定するための測定系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている抗原抗体反応を利用した免疫測定方法として、蛍光免疫測定方法がある。この方法は、まず、試料中の被分析物質(抗原)を、抗体が結合された蛍光体と、抗体が結合された磁気粒子に反応させて、反応複合物を作成する。そして、上記反応複合物に光を照射した時に発する蛍光強度を測定して、該試料に含まれる被分析物質の量を測定する手法である。この時、反応複合物を磁石で集合させた上で、当該反応複合物に向けてレーザ光を照射すると、当該反応複合物から蛍光が発光する。この蛍光に基づいて、試料に含まれる被分析物質の濃度を測定することができる。
【0003】
上記のような蛍光免疫測定のための測定系が種々提案されており、例えば、特許文献1(特開平6−300762号公報)には、検査容器と、入射光学系、磁界発生装置、受光系5を備える測定系が開示されている。
【0004】
入射光学系は、レーザ光源、レーザ光導波用光ファイバ、レーザ光をレーザ光照射領域に照射するレーザ光照射用集光レンズを備える。また、受光系は、発光する蛍光を集光する蛍光集光用集光レンズ、集光された蛍光を導波する蛍光導波用光ファイバ、蛍光の強度を測定する光検出器を備える。
【0005】
ここで、検査容器は、抗体が結合された蛍光マイクロビーズと抗体が結合された磁性体標識体と被分析物質との反応複合体を含む混合溶液を収容する。入射光学系は、レーザ光を混合溶液の液面に導く。磁界発生装置は、磁界により液面のレーザ光照射領域の一点に反応複合体を集合させる。受光系5は、反応複合体からの蛍光を検出する。
【特許文献1】特開平6−300762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の測定系において、検査溶液内の反応複合体は、その一部が磁気粒子で構成されるため、磁心の周囲に集合する。一方、検査溶液内に収容された蛍光体物質(蛍光マイクロビーズ、ラベル物質)は、全てが、反応複合体を構成するわけではない。すなわち、検査溶液内には、抗体を介して、磁気粒子と反応していない、蛍光体物質が存在する。このとき、励起光が、集合した反応複合体を透過すると、抗原抗体反応していない蛍光体物質からも蛍光が発光する。また、励起光の光スポット形状が反応複合体集合形状よりも大きい場合も同様に、抗原抗体反応していない蛍光体物質から蛍光が発光する。この結果、未反応の蛍光体物質からのノイズ光も検出することになるため、測定精度が悪いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、本発明の測定系は、第1稜線部を有する第1磁界発生部と、前記第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部と、前記間隙に所定の光を入射する光学系と、を有し、前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に垂直であって前記間隙を通る面内に位置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の測定系は、前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に対して垂直であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部と第2磁界発生部は、異なる磁極を向か
い合わせに配置することが好ましい。
【0010】
また、本発明の測定系は、所定の光を検出する光検出部と、前記間隙から出射された光を前記光検出部に導く検出光学系と、を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、磁石と磁極部材とから構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、電磁石で構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の測定系は、前記間隙に透明部材が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定系によれば、抗体が結合されたラベル物質の中で、被測定物質と反応したものからの光を精度よく測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は実施の形態1に係る測定系の模式的断面図であり、図2は実施の形態に係る測定系の磁界発生部と検査容器の配置関係を示す図である。図2(A)は磁界発生部と検査容器との斜視図であり、図2(A)は磁界発生部と検査容器との断面図である。図1及び図2において、100は光源部、201はコリメートレンズ、202はフィルタ、203は第1レンズ、204は第2レンズ、300は磁界発生部、301は第1磁界発生部、302は第2磁界発生部、311は第1保持部材、312は第2保持部材、400は検査容器、500は光検出部、600は演算部をそれぞれ示している。
【0016】
実施の形態1の測定系においては、図1及び図2に示すように、概略、検査容器400と、検査容器400に光を照射するための入射光学系と、検査容器400内の反応複合体からの光を捕捉するための検出光学系と、検査容器400内の反応複合体を所定位置に集めるための磁界発生手段(磁界発生部300)とから構成されている。
【0017】
なお、図1及び図2に示す実施の形態1においては、磁界発生部300が上側に、検査容器400が下側に配置される構成となっているが、これらの天地を逆とした構成、すなわち、磁界発生部300を下側に、検査容器400を上側に配置する構成とすることもできる。この場合当然、光源部100から検査容器400への光照射の天地も逆さまとなる。なお、このような天地を逆とすることが可能であることは、実施の形態1以外の他の実施の形態についても同様に言えることである。
【0018】
入射光学系を構成する光源部100には、例えばハロゲンランプ、水銀ランプ、レーザ、レーザダイオード、またはLED等を用いることができる。この光源部100から発せられた光は、コリメートレンズ201によって平行光とされ、この平行光はフィルタ202へと導かれる。なお、光源部100から射出される光が平行光の場合、コリメートレンズ201は省略することができる。
【0019】
フィルタ202は、励起光選択フィルタやダイクロイックミラーや測定光選択フィルタ
などから構成することが可能であり、検査容器400に照射するための励起光を反射し、ラベル物質からの蛍光もしくはラマン散乱光等を透過する。すなわち、光線を分離する機能をもつ。
【0020】
第1レンズ203は、フィルタ202で分離された励起光を集光するとともに、測定対象(反応複合体)から発せられた蛍光もしくはラマン散乱光等を集光する。
【0021】
検査容器400の測定領域に励起光を集光する第1レンズ203には、開口数(NA)の大きいものが望ましい。理由は、NAが大きいと、光源のスポット径を10〜100um程度と小さく設定できるからである。すなわち、後述するように、第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302によって、反応複合体を所定の狭い領域に集合させるため、光源部100からの光は狭い領域に照射されることが望ましい。一方、反応していないラベル物質からの光は、ノイズ光である。従って、第1レンズ203の開口数が大きい場合、反応複合体を構成するラベル物質のみを効率よく励起できるとともに、未反応のラベル物質の励起を抑制することができる。さらに、集合させた反応複合体から発せられた光を効率よく集光するとともに、外部光の影響をほとんど無視することができる。
【0022】
第2レンズ204は、フィルタ202を透過した蛍光もしくはラマン散乱光等を、光検出部500に集光する。光検出部500は、第2レンズ204によって、集光された蛍光もしくはラマン散乱光等を測定する。光検出部500としては、分光器、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトンカウンティング等を用いることができる。なお、第1レンズ203、フィルタ202、第2レンズ204は、検査容器400内の反応複合体からの光を捕捉するための検出光学系を構成する。
【0023】
なお、光検出部500と、フィルタ202と、の間に干渉フィルタ等を入れて、励起光の影響を除くことも可能である。
【0024】
光検出部500は、光の強度を測定する。光検出部500の出力は、データ処理用コンピュータなどの演算部600に入力され、データの蓄積・解析に利用される。
【0025】
光検出部500の出力は、演算部600に入力され解析される。ここで、あらかじめ、被測定物質の濃度と、光検出部500で検出される光強度と、の関係(検量線)を求めておくことで、この検量線から検査容器400内の試料に含まれる被測定物質の濃度を高感度に測定できる。
【0026】
磁界発生部300は、図示するような極性を有する第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302とが対向配置されたものである。より具体的に言えば、磁界発生部300は、2つの磁石(第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302)を異なった磁極を向かい合わせに配置した構成である。
【0027】
第1保持部材311は第1磁界発生部301を保持する部材である。また、第2保持部材312は第2磁界発生部302を保持する部材である。第1磁界発生部301、第2磁界発生部302には比較的強力な磁性を有する磁石が用いられるため、これら保持部材には所定の保持力が要求される。なお、磁石としては、例えばネオジウム磁石等が挙げられる。
【0028】
図2に示すように、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302は直方体形状である。当該直方体形状を構成する一つの稜線は、磁界発生部の尖端部として、検査容器400内の反応複合体を効率的に集めるために利用される。
【0029】
ここで、検査容器400や検査容器400内の試料について説明する。図3は検査容器400の斜視図である。この検査容器400は、マイクロリットルからミリリットル程度の試料を入れることができるプラスチック製の容器であり、例えばエッペンドルフチューブやマイクロチューブを用いることができる。なお、検査容器400の材質は、磁力を通すものであればよく、ガラス製等であっても構わない。
【0030】
次に、検査容器400内に収容される試料について説明する。図4(A)は抗体が結合されたラベル物質、図4(B)は被測定物質(抗原)、図4(C)は抗体が結合された磁気粒子を模式的に示している。また、図5はこれらから生成される反応複合体を模式的に示す図である。図4(A)、(C)中における、Y字形状の物体が、抗体を示している。図4(A)、(C)に用いられている抗体は、図4(B)の被測定物質(抗原)と抗原抗体反応する。
【0031】
あらかじめ、反応容器内などで、抗体が結合されたラベル物質と、被測定物質(抗原)と、を抗原抗体反応させ所定の反応物を生成する。さらに、この反応物に、抗体が結合された磁気粒子を抗原抗体反応させることによって、図5に示すような反応複合体を作製する。このようにして生成される反応複合体が試料として検査容器400内に収容される。
【0032】
検査容器400が実施の形態1の測定系にセットされると、磁界発生部300の磁気が、検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用して、磁気粒子が、所定の位置に集められることとなる。
【0033】
上記のラベル物質としては、光照射によって蛍光が発光するもの、もしくは、ラマン散乱光等を発生するもの、例えば、蛍光マイクロビーズやSERSナノタグが用いられる。
【0034】
蛍光マイクロビーズは、多くの製造業者によって提供されており、例えば、Molecular Probes社からは、488nm励起で515nm−660nmの蛍光が発光するプローブ(フローサイトメトリーアラインメントビーズ)が提供されている。
【0035】
また、SERSナノタグとは、光照射によって強いラマン散乱光が発生する直径数10nm〜数100nmの大きさを持つ粒子である。例えば、US7192778に掲載されており、1000〜1700cm−1のラマン散乱光が発生する。たとえば、633nm励起光を照射すると670nm〜710nmのラマン散乱光が発生する。構造は、約60nmのラマン活性レポーター分子を付着させた金ナノ粒子を疎水性高分子でシールドした構造である。ここで、ラベル物質は、化学的に安定であること、光源部100からの発せられた光の波長で発光可能な吸収帯を有すること、ラベル物質と磁気粒子との非特異的な吸着が無い材質であることが望ましい。
【0036】
磁界発生部300は、上記に説明したような検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用することで、検査容器400内に反応複合体を集める。第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部は尖端部として、検査容器400内の反応複合体を効率的に集めるために利用される。
【0037】
図6は実施の形態1に係る測定系で反応複合体を集めるメカニズムを説明する図である。
【0038】
図6はいずれも実施の形態1の測定系の第1磁界発生部301、第2磁界発生部302と検査容器400を抜き出して示す図である。図6(A)は第1磁界発生部301、第2磁界発生部302の磁力線の様子を示す図である。図6(B)は第1磁界発生部301、第2磁界発生部302の磁気によって集められた反応複合体の様子を示す図である。
【0039】
第1磁界発生部301の第1の稜線L1(図6(B)のY方向の線)と第2磁界発生部302の第2の稜線L2(図6(B)のY方向の線)とを検査容器400に対して略当接し、かつ、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間に間隙dを設けて配置する。なお、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間隙dについては3mm以下に設定することが好ましい。さらに可能であれば、間隙dは1mm以下に設定することが好ましい。
【0040】
このとき、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302は、異なった磁極を向かい合わせに配置した構成であるため、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間には図6(A)に示されるように、異なった磁極を結んだ磁力線が生じる。そして、それに伴い、図6(B)に示すように、検査容器400の内壁部の最も磁力線が密となる箇所(磁力が強い箇所)に、反応複合体が集合する。
【0041】
ここで、磁界発生部300は、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部が、同一面内に対向して配置されているため、検査容器400の内壁部の所定のライン上に反応複合体を集めることができる。より具体的には、磁気粒子は、検査容器400の内壁部であって、磁界発生部300の磁力が強い箇所に集められる。なお、当然ではあるが、反応複合体は、所定の体積をもつため、完全に一本の線上に集められるのではなく、ある狭い領域に集められる。ここで、検査容器400を測定系にセットする際、第1レンズ203の焦点位置が、磁界発生部300の磁気が強い位置の近傍(磁気粒子が集められる領域)であることが好ましい。つまり、磁気粒子が集められる領域よりも、光源部100からの光の照射領域が、狭い方が好ましい。これにより、光源部100からの光を、効率よく反応複合体に照射することができる。
【0042】
実施の形態1の測定系では、検査容器400の内壁部に図6(B)に示すように、1ライン上に集合した反応複合体に対して、第1レンズ203によって集光した励起光を入射させる。これによって、検査容器400内に集められたラベル物質は、照射された励起光によって、蛍光が発光しもしくはラマン散乱光等が発生する。
【0043】
図1、6などに示されるように、第1レンズ203によって集光した励起光の光軸は、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)に垂直であって間隙dを通る面内(Y−Z面)に位置する。特に、測定のための励起光の光軸は、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に垂直となる位置が好ましい。このように、実施の形態1の測定系では、磁界発生部(磁石)を複数使用したため、磁束密度も高くなる。このため、磁界が強くなり、反応複合体を早く集め、測定時間を短くすることができる。
【0044】
なお、光軸と、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)と、の角が完全に90度である必要はなく、光が、間隙dを充分に通過できるように、測定系を配置すればよい。
【0045】
また、図1においては、光軸が、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)に垂直であって間隙dを通る面(Y−Z面)内に配置されている。これに代えて、光軸が、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に垂直であって間隙dを通る面内に位置し、かつ、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に対して所定の角度をもって位置してもよい。すなわち、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に対して、光源部100からの光を斜入射させてもよい。
【0046】
実施の形態1の測定系によれば、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間に間隙dを設け、かつ、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部が対向
して配置されている。このため、検査容器400の内壁部の最も磁力線が密となる1ライン上に、検査容器400内の反応複合体を効率よく集合させることができる。
【0047】
これにより、抗原抗体反応してないラベル物質が発する蛍光もしくはラマン散乱光等を効率的に遮光できる。この結果、未反応のラベル物質が発するノイズ光を少なくすることができるため、測定精度がより高くなる。
【0048】
以上のように実施の形態1の測定系によれば、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間隙dからの光(蛍光もしくはラマン散乱光等)を検出し、磁気粒子と未反応のラベル物質からの光を制限することができるため、精度よく測定することが可能となる。
【0049】
次に実施の形態2について説明する。図7は実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。図8は実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0050】
実施の形態2における磁界発生部300では、第1磁界発生部321の第1の稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部322の第2の稜線L2が形成する尖端部と、が実施の形態1のものと比べてより鋭い形状となっている。実施の形態1では、直方体形状の一辺を稜線として用いたのに対して、実施の形態2では、図示するようにθ1(<90°
)、θ2(<90°)である辺を稜線部として用いている。これにより、実施の形態2に
おける磁界発生部300は、先端がより尖った形状となっている。実施の形態2によれば、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、磁界発生部300によって反応複合体から発せられた光は、反応複合体を中心として発散する。ここで、実施の形態2では磁界発生部300が尖った形状をしているため、磁界発生部300によって発散光が遮蔽されることを防止することができる。したがって、反応複合体からの光を精度よく測定することができる。
【0052】
次に実施の形態3について説明する。図9は実施の形態3に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態3が実施の形態2と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態2と異なる点についてのみ説明する。
【0053】
実施の形態3における磁界発生部300では、第1の磁界発生部は第1磁石部材331とこれに取り付けられた第1磁極部材341とから構成され、第2の磁界発生部は第2磁石部材332とこれに取り付けられた第2磁極部材342とから構成されている。
【0054】
このような構成によれば、図7に示した実施の形態2と同様の効果を得ることができると共に、さらに磁界発生部300を簡単に製造することができる、というメリットを享受することができる。すなわち、実施の形態3では、第1磁石部材331、第2磁石部材332は磁石により構成するが、尖端部を有する第1磁極部材341や第2磁極部材342には、例えば鉄などの材料を用いる。尖端部を形成するこれらの磁極部材は、磁石材料とは異なり、加工性が良いために上記のように製造性がよい。
【0055】
次に実施の形態4について説明する。図10は実施の形態4に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態4が先の実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、先の実施の形態1
と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
実施の形態4における磁界発生部300では、第1磁界発生部351、第2磁界発生部352に電磁石が用いられる構成となっている。実施の形態4では、測定時つまり検査容器400が第1磁界発生部351、第2磁界発生部352の間に入っているときのみ、これらの電磁石に電流を流し、磁界発生部として使用することができる。
【0057】
このように、実施の形態4は、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができると共に、2つの磁石、磁極の間に働く磁力が、常に強く及ぼしあうことを防止できるため、保持部材の堅牢性を極端に高くする必要がなくなる。
【0058】
次に実施の形態5について説明する。図11は実施の形態5に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態5が先の実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0059】
実施の形態5における磁界発生部300では、第1磁界発生部301、第2磁界発生部302との間の間隙部に、透明部材350が設けられる。透明部材350としては、光学測定に支障を来さない材料が好ましく、例えばガラスなどが挙げられる。実施の形態5は、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができると共に、第1磁界発生部301、第2磁界発生部302をより簡単に保持することが可能となる。
【0060】
次に実施の形態6について説明する。図12は実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図であり、図13は実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。実施の形態6が、実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
実施の形態6における磁界発生部300では、第1磁界発生部361の第1の稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部362の稜線L2が形成する尖端部とが図1に示す実施の形態1のものと比べてより鋭い形状となっている。
図1に示す実施の形態1では、直方体形状の一辺を稜線として用いたのに対して、実施の形態6では、図示するようにθ3(<90°)、θ4(<90°)である辺を稜線部として用いている。これにより、実施の形態6における磁界発生部300は、先端がより尖った形状となっている。実施の形態6によれば、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、磁界発生部300によって反応複合体から発せられた光は、反応複合体を中心として発散する。ここで、実施の形態6では磁界発生部300が尖った形状をしているため、磁界発生部300によって発散光が遮蔽されることを防止することができる。したがって、反応複合体からの光を精度よく測定することができる。
【0062】
次に実施の形態7について説明する。図14は実施の形態7に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態7が実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、先の実施の形態と異なる点についてのみ説明する。
【0063】
実施の形態7では、第1磁界発生部301の第1の稜線L1と第2磁界発生部302の第2の稜線L2との間隙を調整する機構(不図示)が設けられてなるものである。このような調整機構によって、検査容器400の外周に沿って、第1磁界発生部301の第1の
稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部302の第2の稜線L2が形成する尖端部を、図14(A)→図14(B)→図14(C)のように移動させることができる。
【0064】
このような実施の形態7では、まず図14(A)のような状態で、それぞれの磁界発生部に反応複合体を集めておく。そして、徐々に2つの磁界発生部の間隙を狭めていき、最終的に図14(C)のような状態とする。このように検査容器400の外周に沿って、それぞれの磁界発生部の稜線部をスキャンさせる構成であるので、検査容器400内の反応複合体をもれなく集合させることが可能となる、という効果がある。
【0065】
実施の形態7では、以上のような効果に加え、先の実施の形態が奏する効果―間隙dによる遮光性や、反応複合体の集合性の良さ―なども有する。
【0066】
なお、以上、種々の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態の構成を任意に組み合わせて構成した実施の形態も本発明の範疇に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1に係る測定系の模式的断面図である。
【図2】実施の形態1に係る測定系の磁界発生部と検査容器の配置関係を示す図である。
【図3】検査容器の斜視図である。
【図4】(A)抗体が結合されたラベル物質、(B)被測定物質、(C)抗体が結合された磁気粒子を模式的に示す図である。
【図5】反応複合体を模式的に示す図である。
【図6】実施の形態1に係る測定系で反応複合体を集めるメカニズムを説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図8】実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。
【図9】実施の形態3に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図10】実施の形態4に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図11】実施の形態5に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図12】実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図13】実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。
【図14】実施の形態7に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0068】
100・・・光源部、201・・・コリメートレンズ、202・・・フィルタ、203・・・第1レンズ、204・・・第2レンズ、300・・・磁界発生部、301・・・第1磁界発生部、302・・・第2磁界発生部、311・・・第1保持部材、312・・・第2保持部材、321・・・第1磁界発生部、322・・・第2磁界発生部、331・・・第1磁石部材、332・・・第2磁石部材、341・・・第1磁極部材、342・・・第2磁極部材、350・・・透明部材、351・・・第1磁界発生部(電磁石)、352・・・第2磁界発生部(電磁石)、361・・・第1磁界発生部、362・・・第2磁界発生部、400・・・検査容器、500・・・光検出部、600・・・演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光やラマン散乱光などの光強度を検出することによって、抗体と反応した被測定物質を定量的に測定するための測定系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている抗原抗体反応を利用した免疫測定方法として、蛍光免疫測定方法がある。この方法は、まず、試料中の被分析物質(抗原)を、抗体が結合された蛍光体と、抗体が結合された磁気粒子に反応させて、反応複合物を作成する。そして、上記反応複合物に光を照射した時に発する蛍光強度を測定して、該試料に含まれる被分析物質の量を測定する手法である。この時、反応複合物を磁石で集合させた上で、当該反応複合物に向けてレーザ光を照射すると、当該反応複合物から蛍光が発光する。この蛍光に基づいて、試料に含まれる被分析物質の濃度を測定することができる。
【0003】
上記のような蛍光免疫測定のための測定系が種々提案されており、例えば、特許文献1(特開平6−300762号公報)には、検査容器と、入射光学系、磁界発生装置、受光系5を備える測定系が開示されている。
【0004】
入射光学系は、レーザ光源、レーザ光導波用光ファイバ、レーザ光をレーザ光照射領域に照射するレーザ光照射用集光レンズを備える。また、受光系は、発光する蛍光を集光する蛍光集光用集光レンズ、集光された蛍光を導波する蛍光導波用光ファイバ、蛍光の強度を測定する光検出器を備える。
【0005】
ここで、検査容器は、抗体が結合された蛍光マイクロビーズと抗体が結合された磁性体標識体と被分析物質との反応複合体を含む混合溶液を収容する。入射光学系は、レーザ光を混合溶液の液面に導く。磁界発生装置は、磁界により液面のレーザ光照射領域の一点に反応複合体を集合させる。受光系5は、反応複合体からの蛍光を検出する。
【特許文献1】特開平6−300762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の測定系において、検査溶液内の反応複合体は、その一部が磁気粒子で構成されるため、磁心の周囲に集合する。一方、検査溶液内に収容された蛍光体物質(蛍光マイクロビーズ、ラベル物質)は、全てが、反応複合体を構成するわけではない。すなわち、検査溶液内には、抗体を介して、磁気粒子と反応していない、蛍光体物質が存在する。このとき、励起光が、集合した反応複合体を透過すると、抗原抗体反応していない蛍光体物質からも蛍光が発光する。また、励起光の光スポット形状が反応複合体集合形状よりも大きい場合も同様に、抗原抗体反応していない蛍光体物質から蛍光が発光する。この結果、未反応の蛍光体物質からのノイズ光も検出することになるため、測定精度が悪いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、本発明の測定系は、第1稜線部を有する第1磁界発生部と、前記第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部と、前記間隙に所定の光を入射する光学系と、を有し、前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に垂直であって前記間隙を通る面内に位置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の測定系は、前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に対して垂直であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部と第2磁界発生部は、異なる磁極を向か
い合わせに配置することが好ましい。
【0010】
また、本発明の測定系は、所定の光を検出する光検出部と、前記間隙から出射された光を前記光検出部に導く検出光学系と、を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、磁石と磁極部材とから構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の測定系は、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、電磁石で構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の測定系は、前記間隙に透明部材が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定系によれば、抗体が結合されたラベル物質の中で、被測定物質と反応したものからの光を精度よく測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は実施の形態1に係る測定系の模式的断面図であり、図2は実施の形態に係る測定系の磁界発生部と検査容器の配置関係を示す図である。図2(A)は磁界発生部と検査容器との斜視図であり、図2(A)は磁界発生部と検査容器との断面図である。図1及び図2において、100は光源部、201はコリメートレンズ、202はフィルタ、203は第1レンズ、204は第2レンズ、300は磁界発生部、301は第1磁界発生部、302は第2磁界発生部、311は第1保持部材、312は第2保持部材、400は検査容器、500は光検出部、600は演算部をそれぞれ示している。
【0016】
実施の形態1の測定系においては、図1及び図2に示すように、概略、検査容器400と、検査容器400に光を照射するための入射光学系と、検査容器400内の反応複合体からの光を捕捉するための検出光学系と、検査容器400内の反応複合体を所定位置に集めるための磁界発生手段(磁界発生部300)とから構成されている。
【0017】
なお、図1及び図2に示す実施の形態1においては、磁界発生部300が上側に、検査容器400が下側に配置される構成となっているが、これらの天地を逆とした構成、すなわち、磁界発生部300を下側に、検査容器400を上側に配置する構成とすることもできる。この場合当然、光源部100から検査容器400への光照射の天地も逆さまとなる。なお、このような天地を逆とすることが可能であることは、実施の形態1以外の他の実施の形態についても同様に言えることである。
【0018】
入射光学系を構成する光源部100には、例えばハロゲンランプ、水銀ランプ、レーザ、レーザダイオード、またはLED等を用いることができる。この光源部100から発せられた光は、コリメートレンズ201によって平行光とされ、この平行光はフィルタ202へと導かれる。なお、光源部100から射出される光が平行光の場合、コリメートレンズ201は省略することができる。
【0019】
フィルタ202は、励起光選択フィルタやダイクロイックミラーや測定光選択フィルタ
などから構成することが可能であり、検査容器400に照射するための励起光を反射し、ラベル物質からの蛍光もしくはラマン散乱光等を透過する。すなわち、光線を分離する機能をもつ。
【0020】
第1レンズ203は、フィルタ202で分離された励起光を集光するとともに、測定対象(反応複合体)から発せられた蛍光もしくはラマン散乱光等を集光する。
【0021】
検査容器400の測定領域に励起光を集光する第1レンズ203には、開口数(NA)の大きいものが望ましい。理由は、NAが大きいと、光源のスポット径を10〜100um程度と小さく設定できるからである。すなわち、後述するように、第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302によって、反応複合体を所定の狭い領域に集合させるため、光源部100からの光は狭い領域に照射されることが望ましい。一方、反応していないラベル物質からの光は、ノイズ光である。従って、第1レンズ203の開口数が大きい場合、反応複合体を構成するラベル物質のみを効率よく励起できるとともに、未反応のラベル物質の励起を抑制することができる。さらに、集合させた反応複合体から発せられた光を効率よく集光するとともに、外部光の影響をほとんど無視することができる。
【0022】
第2レンズ204は、フィルタ202を透過した蛍光もしくはラマン散乱光等を、光検出部500に集光する。光検出部500は、第2レンズ204によって、集光された蛍光もしくはラマン散乱光等を測定する。光検出部500としては、分光器、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトンカウンティング等を用いることができる。なお、第1レンズ203、フィルタ202、第2レンズ204は、検査容器400内の反応複合体からの光を捕捉するための検出光学系を構成する。
【0023】
なお、光検出部500と、フィルタ202と、の間に干渉フィルタ等を入れて、励起光の影響を除くことも可能である。
【0024】
光検出部500は、光の強度を測定する。光検出部500の出力は、データ処理用コンピュータなどの演算部600に入力され、データの蓄積・解析に利用される。
【0025】
光検出部500の出力は、演算部600に入力され解析される。ここで、あらかじめ、被測定物質の濃度と、光検出部500で検出される光強度と、の関係(検量線)を求めておくことで、この検量線から検査容器400内の試料に含まれる被測定物質の濃度を高感度に測定できる。
【0026】
磁界発生部300は、図示するような極性を有する第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302とが対向配置されたものである。より具体的に言えば、磁界発生部300は、2つの磁石(第1磁界発生部301と、第2磁界発生部302)を異なった磁極を向かい合わせに配置した構成である。
【0027】
第1保持部材311は第1磁界発生部301を保持する部材である。また、第2保持部材312は第2磁界発生部302を保持する部材である。第1磁界発生部301、第2磁界発生部302には比較的強力な磁性を有する磁石が用いられるため、これら保持部材には所定の保持力が要求される。なお、磁石としては、例えばネオジウム磁石等が挙げられる。
【0028】
図2に示すように、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302は直方体形状である。当該直方体形状を構成する一つの稜線は、磁界発生部の尖端部として、検査容器400内の反応複合体を効率的に集めるために利用される。
【0029】
ここで、検査容器400や検査容器400内の試料について説明する。図3は検査容器400の斜視図である。この検査容器400は、マイクロリットルからミリリットル程度の試料を入れることができるプラスチック製の容器であり、例えばエッペンドルフチューブやマイクロチューブを用いることができる。なお、検査容器400の材質は、磁力を通すものであればよく、ガラス製等であっても構わない。
【0030】
次に、検査容器400内に収容される試料について説明する。図4(A)は抗体が結合されたラベル物質、図4(B)は被測定物質(抗原)、図4(C)は抗体が結合された磁気粒子を模式的に示している。また、図5はこれらから生成される反応複合体を模式的に示す図である。図4(A)、(C)中における、Y字形状の物体が、抗体を示している。図4(A)、(C)に用いられている抗体は、図4(B)の被測定物質(抗原)と抗原抗体反応する。
【0031】
あらかじめ、反応容器内などで、抗体が結合されたラベル物質と、被測定物質(抗原)と、を抗原抗体反応させ所定の反応物を生成する。さらに、この反応物に、抗体が結合された磁気粒子を抗原抗体反応させることによって、図5に示すような反応複合体を作製する。このようにして生成される反応複合体が試料として検査容器400内に収容される。
【0032】
検査容器400が実施の形態1の測定系にセットされると、磁界発生部300の磁気が、検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用して、磁気粒子が、所定の位置に集められることとなる。
【0033】
上記のラベル物質としては、光照射によって蛍光が発光するもの、もしくは、ラマン散乱光等を発生するもの、例えば、蛍光マイクロビーズやSERSナノタグが用いられる。
【0034】
蛍光マイクロビーズは、多くの製造業者によって提供されており、例えば、Molecular Probes社からは、488nm励起で515nm−660nmの蛍光が発光するプローブ(フローサイトメトリーアラインメントビーズ)が提供されている。
【0035】
また、SERSナノタグとは、光照射によって強いラマン散乱光が発生する直径数10nm〜数100nmの大きさを持つ粒子である。例えば、US7192778に掲載されており、1000〜1700cm−1のラマン散乱光が発生する。たとえば、633nm励起光を照射すると670nm〜710nmのラマン散乱光が発生する。構造は、約60nmのラマン活性レポーター分子を付着させた金ナノ粒子を疎水性高分子でシールドした構造である。ここで、ラベル物質は、化学的に安定であること、光源部100からの発せられた光の波長で発光可能な吸収帯を有すること、ラベル物質と磁気粒子との非特異的な吸着が無い材質であることが望ましい。
【0036】
磁界発生部300は、上記に説明したような検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用することで、検査容器400内に反応複合体を集める。第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部は尖端部として、検査容器400内の反応複合体を効率的に集めるために利用される。
【0037】
図6は実施の形態1に係る測定系で反応複合体を集めるメカニズムを説明する図である。
【0038】
図6はいずれも実施の形態1の測定系の第1磁界発生部301、第2磁界発生部302と検査容器400を抜き出して示す図である。図6(A)は第1磁界発生部301、第2磁界発生部302の磁力線の様子を示す図である。図6(B)は第1磁界発生部301、第2磁界発生部302の磁気によって集められた反応複合体の様子を示す図である。
【0039】
第1磁界発生部301の第1の稜線L1(図6(B)のY方向の線)と第2磁界発生部302の第2の稜線L2(図6(B)のY方向の線)とを検査容器400に対して略当接し、かつ、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間に間隙dを設けて配置する。なお、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間隙dについては3mm以下に設定することが好ましい。さらに可能であれば、間隙dは1mm以下に設定することが好ましい。
【0040】
このとき、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302は、異なった磁極を向かい合わせに配置した構成であるため、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間には図6(A)に示されるように、異なった磁極を結んだ磁力線が生じる。そして、それに伴い、図6(B)に示すように、検査容器400の内壁部の最も磁力線が密となる箇所(磁力が強い箇所)に、反応複合体が集合する。
【0041】
ここで、磁界発生部300は、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部が、同一面内に対向して配置されているため、検査容器400の内壁部の所定のライン上に反応複合体を集めることができる。より具体的には、磁気粒子は、検査容器400の内壁部であって、磁界発生部300の磁力が強い箇所に集められる。なお、当然ではあるが、反応複合体は、所定の体積をもつため、完全に一本の線上に集められるのではなく、ある狭い領域に集められる。ここで、検査容器400を測定系にセットする際、第1レンズ203の焦点位置が、磁界発生部300の磁気が強い位置の近傍(磁気粒子が集められる領域)であることが好ましい。つまり、磁気粒子が集められる領域よりも、光源部100からの光の照射領域が、狭い方が好ましい。これにより、光源部100からの光を、効率よく反応複合体に照射することができる。
【0042】
実施の形態1の測定系では、検査容器400の内壁部に図6(B)に示すように、1ライン上に集合した反応複合体に対して、第1レンズ203によって集光した励起光を入射させる。これによって、検査容器400内に集められたラベル物質は、照射された励起光によって、蛍光が発光しもしくはラマン散乱光等が発生する。
【0043】
図1、6などに示されるように、第1レンズ203によって集光した励起光の光軸は、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)に垂直であって間隙dを通る面内(Y−Z面)に位置する。特に、測定のための励起光の光軸は、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に垂直となる位置が好ましい。このように、実施の形態1の測定系では、磁界発生部(磁石)を複数使用したため、磁束密度も高くなる。このため、磁界が強くなり、反応複合体を早く集め、測定時間を短くすることができる。
【0044】
なお、光軸と、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)と、の角が完全に90度である必要はなく、光が、間隙dを充分に通過できるように、測定系を配置すればよい。
【0045】
また、図1においては、光軸が、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面(X−Y面)に垂直であって間隙dを通る面(Y−Z面)内に配置されている。これに代えて、光軸が、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に垂直であって間隙dを通る面内に位置し、かつ、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に対して所定の角度をもって位置してもよい。すなわち、第1の稜線L1及び第2の稜線L2を含む面に対して、光源部100からの光を斜入射させてもよい。
【0046】
実施の形態1の測定系によれば、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間に間隙dを設け、かつ、第1磁界発生部301及び第2磁界発生部302の稜線部が対向
して配置されている。このため、検査容器400の内壁部の最も磁力線が密となる1ライン上に、検査容器400内の反応複合体を効率よく集合させることができる。
【0047】
これにより、抗原抗体反応してないラベル物質が発する蛍光もしくはラマン散乱光等を効率的に遮光できる。この結果、未反応のラベル物質が発するノイズ光を少なくすることができるため、測定精度がより高くなる。
【0048】
以上のように実施の形態1の測定系によれば、第1磁界発生部301と第2磁界発生部302との間隙dからの光(蛍光もしくはラマン散乱光等)を検出し、磁気粒子と未反応のラベル物質からの光を制限することができるため、精度よく測定することが可能となる。
【0049】
次に実施の形態2について説明する。図7は実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。図8は実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0050】
実施の形態2における磁界発生部300では、第1磁界発生部321の第1の稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部322の第2の稜線L2が形成する尖端部と、が実施の形態1のものと比べてより鋭い形状となっている。実施の形態1では、直方体形状の一辺を稜線として用いたのに対して、実施の形態2では、図示するようにθ1(<90°
)、θ2(<90°)である辺を稜線部として用いている。これにより、実施の形態2に
おける磁界発生部300は、先端がより尖った形状となっている。実施の形態2によれば、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、磁界発生部300によって反応複合体から発せられた光は、反応複合体を中心として発散する。ここで、実施の形態2では磁界発生部300が尖った形状をしているため、磁界発生部300によって発散光が遮蔽されることを防止することができる。したがって、反応複合体からの光を精度よく測定することができる。
【0052】
次に実施の形態3について説明する。図9は実施の形態3に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態3が実施の形態2と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態2と異なる点についてのみ説明する。
【0053】
実施の形態3における磁界発生部300では、第1の磁界発生部は第1磁石部材331とこれに取り付けられた第1磁極部材341とから構成され、第2の磁界発生部は第2磁石部材332とこれに取り付けられた第2磁極部材342とから構成されている。
【0054】
このような構成によれば、図7に示した実施の形態2と同様の効果を得ることができると共に、さらに磁界発生部300を簡単に製造することができる、というメリットを享受することができる。すなわち、実施の形態3では、第1磁石部材331、第2磁石部材332は磁石により構成するが、尖端部を有する第1磁極部材341や第2磁極部材342には、例えば鉄などの材料を用いる。尖端部を形成するこれらの磁極部材は、磁石材料とは異なり、加工性が良いために上記のように製造性がよい。
【0055】
次に実施の形態4について説明する。図10は実施の形態4に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態4が先の実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、先の実施の形態1
と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
実施の形態4における磁界発生部300では、第1磁界発生部351、第2磁界発生部352に電磁石が用いられる構成となっている。実施の形態4では、測定時つまり検査容器400が第1磁界発生部351、第2磁界発生部352の間に入っているときのみ、これらの電磁石に電流を流し、磁界発生部として使用することができる。
【0057】
このように、実施の形態4は、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができると共に、2つの磁石、磁極の間に働く磁力が、常に強く及ぼしあうことを防止できるため、保持部材の堅牢性を極端に高くする必要がなくなる。
【0058】
次に実施の形態5について説明する。図11は実施の形態5に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態5が先の実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0059】
実施の形態5における磁界発生部300では、第1磁界発生部301、第2磁界発生部302との間の間隙部に、透明部材350が設けられる。透明部材350としては、光学測定に支障を来さない材料が好ましく、例えばガラスなどが挙げられる。実施の形態5は、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができると共に、第1磁界発生部301、第2磁界発生部302をより簡単に保持することが可能となる。
【0060】
次に実施の形態6について説明する。図12は実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図であり、図13は実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。実施の形態6が、実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
実施の形態6における磁界発生部300では、第1磁界発生部361の第1の稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部362の稜線L2が形成する尖端部とが図1に示す実施の形態1のものと比べてより鋭い形状となっている。
図1に示す実施の形態1では、直方体形状の一辺を稜線として用いたのに対して、実施の形態6では、図示するようにθ3(<90°)、θ4(<90°)である辺を稜線部として用いている。これにより、実施の形態6における磁界発生部300は、先端がより尖った形状となっている。実施の形態6によれば、図1に示した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、磁界発生部300によって反応複合体から発せられた光は、反応複合体を中心として発散する。ここで、実施の形態6では磁界発生部300が尖った形状をしているため、磁界発生部300によって発散光が遮蔽されることを防止することができる。したがって、反応複合体からの光を精度よく測定することができる。
【0062】
次に実施の形態7について説明する。図14は実施の形態7に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。実施の形態7が実施の形態1と異なる点は、磁界発生部300における構成であり、その他の点では共通である。以下、先の実施の形態と異なる点についてのみ説明する。
【0063】
実施の形態7では、第1磁界発生部301の第1の稜線L1と第2磁界発生部302の第2の稜線L2との間隙を調整する機構(不図示)が設けられてなるものである。このような調整機構によって、検査容器400の外周に沿って、第1磁界発生部301の第1の
稜線L1が形成する尖端部と、第2磁界発生部302の第2の稜線L2が形成する尖端部を、図14(A)→図14(B)→図14(C)のように移動させることができる。
【0064】
このような実施の形態7では、まず図14(A)のような状態で、それぞれの磁界発生部に反応複合体を集めておく。そして、徐々に2つの磁界発生部の間隙を狭めていき、最終的に図14(C)のような状態とする。このように検査容器400の外周に沿って、それぞれの磁界発生部の稜線部をスキャンさせる構成であるので、検査容器400内の反応複合体をもれなく集合させることが可能となる、という効果がある。
【0065】
実施の形態7では、以上のような効果に加え、先の実施の形態が奏する効果―間隙dによる遮光性や、反応複合体の集合性の良さ―なども有する。
【0066】
なお、以上、種々の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態の構成を任意に組み合わせて構成した実施の形態も本発明の範疇に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1に係る測定系の模式的断面図である。
【図2】実施の形態1に係る測定系の磁界発生部と検査容器の配置関係を示す図である。
【図3】検査容器の斜視図である。
【図4】(A)抗体が結合されたラベル物質、(B)被測定物質、(C)抗体が結合された磁気粒子を模式的に示す図である。
【図5】反応複合体を模式的に示す図である。
【図6】実施の形態1に係る測定系で反応複合体を集めるメカニズムを説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図8】実施の形態2に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。
【図9】実施の形態3に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図10】実施の形態4に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図11】実施の形態5に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図12】実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【図13】実施の形態6に係る測定系の磁界発生部と検査容器の斜視図である。
【図14】実施の形態7に係る測定系の磁界発生部と検査容器の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0068】
100・・・光源部、201・・・コリメートレンズ、202・・・フィルタ、203・・・第1レンズ、204・・・第2レンズ、300・・・磁界発生部、301・・・第1磁界発生部、302・・・第2磁界発生部、311・・・第1保持部材、312・・・第2保持部材、321・・・第1磁界発生部、322・・・第2磁界発生部、331・・・第1磁石部材、332・・・第2磁石部材、341・・・第1磁極部材、342・・・第2磁極部材、350・・・透明部材、351・・・第1磁界発生部(電磁石)、352・・・第2磁界発生部(電磁石)、361・・・第1磁界発生部、362・・・第2磁界発生部、400・・・検査容器、500・・・光検出部、600・・・演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1稜線部を有する第1磁界発生部と、
前記第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部と、
前記間隙に所定の光を入射する光学系と、を有し、
前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に垂直であって前記間隙を通る面内に位置することを特徴とする測定系。
【請求項2】
前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の測定系。
【請求項3】
前記第1磁界発生部と第2磁界発生部は、異なる磁極を向かい合わせに配置することを特徴とする請求項1または2に記載の測定系。
【請求項4】
所定の光を検出する光検出部と、
前記間隙から出射された光を前記光検出部に導く検出光学系と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3に記載の測定系。
【請求項5】
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、磁石と磁極部材とから構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定系。
【請求項6】
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、電磁石で構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の測定系。
【請求項7】
前記間隙に透明部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定系。
【請求項1】
第1稜線部を有する第1磁界発生部と、
前記第1稜線部と所定の間隙を置いて対向する第2稜線部を有する第2磁界発生部と、
前記間隙に所定の光を入射する光学系と、を有し、
前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に垂直であって前記間隙を通る面内に位置することを特徴とする測定系。
【請求項2】
前記光学系の光軸が、前記第1稜線部及び前記第2稜線部を含む面に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の測定系。
【請求項3】
前記第1磁界発生部と第2磁界発生部は、異なる磁極を向かい合わせに配置することを特徴とする請求項1または2に記載の測定系。
【請求項4】
所定の光を検出する光検出部と、
前記間隙から出射された光を前記光検出部に導く検出光学系と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3に記載の測定系。
【請求項5】
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、磁石と磁極部材とから構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定系。
【請求項6】
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部が、電磁石で構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の測定系。
【請求項7】
前記間隙に透明部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−112852(P2010−112852A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286141(P2008−286141)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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