測定系
【課題】レンズ同士の集光位置を一致させるための煩雑な調整作業が不要となる測定系を提供する。
【解決手段】測定系は、光を照射する光源部100と、前記光源部100から照射された光を、所定の集光位置に集光させるレンズ200と、光を検出する光検出部500と、磁界を発生し、かつ、レンズ200の集光位置の近傍に配置された磁界発生部300と、を備え、レンズ200は、第1の入射面211と、第2の入射面221と、第1の出射面212と、第2の出射面222と、を有し、光源部100と、第1の入射面211と、が対向しており、かつ、光検出部500と、第2の出射面222と、が対向しており、かつ、レンズ200の集光位置が、第1の出射面212と、第2の入射面221と、の何れに対しても対向していることを特徴とする。
【解決手段】測定系は、光を照射する光源部100と、前記光源部100から照射された光を、所定の集光位置に集光させるレンズ200と、光を検出する光検出部500と、磁界を発生し、かつ、レンズ200の集光位置の近傍に配置された磁界発生部300と、を備え、レンズ200は、第1の入射面211と、第2の入射面221と、第1の出射面212と、第2の出射面222と、を有し、光源部100と、第1の入射面211と、が対向しており、かつ、光検出部500と、第2の出射面222と、が対向しており、かつ、レンズ200の集光位置が、第1の出射面212と、第2の入射面221と、の何れに対しても対向していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光やラマン散乱光などの光強度を検出することによって、抗体と反応した被測定物質の濃度を測定するための測定系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている抗原抗体反応を利用した免疫測定系として、蛍光免疫測定系がある。このような蛍光免疫測定系を用いた測定方法では、まず、試料中の被測定物質(抗原)を、抗体が結合された蛍光体(発光標識)と、抗体が結合された磁気粒子に反応させて、反応複合体を作成する。そして、上記反応複合体に光を照射した時に発する蛍光強度を測定して、該試料に含まれる被測定物質の量を測定する。この時、反応複合体を磁石で集合させた上で、当該反応複合体に向けてレーザー光を照射することで測定の精度を向上させる。当該反応複合体から発せられる蛍光の強度は、被測定物質の量に比例することを利用して、被測定物質を定量測定する。(特許文献1)
【特許文献1】特開平5−249114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の測定系の光学系には、反応複合体に光を照射するための入射用レンズと、反応複合体からの発光を検出する検出用レンズとが設けられる。そして、反応複合体に対向して、入射用レンズと検出用レンズとが、別体となって配置されている。
【0004】
ここで、反応複合体からの発光を効率的に検出するためには、反応複合体が凝集した位置に励起光を集光させ、かつ検出レンズの集光位置を反応複合体に略一致させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の測定系では、2つのレンズが別体であるため、測定時に、これら二つのレンズの集光位置を略一致させる調整が必要であり、この調整は非常に煩雑であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、本発明の測定系は、光を照射する光源と、前記光源から照射された光を、所定の集光位置に集光させる光学部材と、光を検出する検出部と、磁界を発生し、かつ、前記集光位置の近傍に配置された磁界発生部と、を備え、前記光学部材は、第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有し、前記光源と、前記第1の入射面と、が対向しており、かつ、前記検出部と、前記第2の出射面と、が対向しており、かつ、前記集光位置が、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、の何れに対しても対向していることを特徴とする測定系である。
【0006】
また、本発明の測定系は、前記第1の入射面と、前記第2の出射面と、が同一の面であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の測定系は、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が同一の面であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の測定系は、前記光学部材が、前記光源から照射された光を、前記集光位置に位置する試料に集光し、かつ、前記試料からの発光を集光することが好ましい。
【0009】
また、本発明の測定系は、前記光学部材の前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、
が設けられる面に、切り欠き凹部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測定系においては、光学系に第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有する単一の光学部材が用いられている。このため、本発明の測定系によれば、入射用と検出用の二つのレンズの集光位置を一致させるための調整作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る測定系の模式的斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図3】検査容器の斜視図である。
【図4】(A)抗体を結合した発光標識(ラベル物質)、(B)被測定物質、(C)抗体が結合された磁気粒子を模式的に示す図である。
【図5】反応複合体を模式的に示す図である。
【図6】第2実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図7】第3実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図8】第4実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図9】検査容器の位置の違いによる測定状況の違いを模式的に示す図である。
【図10】第5実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図11】第5実施形態における位置決め部を拡大して示す図である。
【図12】第6実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図13】第7実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図14】第8実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、第1実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態に係る測定系の模式的斜視図であり、図2は第1実施形態に係る測定系の模式的断面図である。図1及び図2において、100は光源部、200はレンズ、300は磁界発生部、400は検査容器、500は光検出部、600は演算部をそれぞれ示している。第1実施形態に関わる測定系は検査容器400内の抗体と反応した被測定物質(抗原)の濃度を測定するためのものであり、そのための測定系としては、概略、入射光学系と、検出光学系と、磁界発生部とを有している。
【0013】
入射光学系は、検査容器400に励起光を照射する。これにより、検査容器400内の、反応複合体を構成する発光標識から蛍光等もしくはラマン散乱光等が発生する。検出光学系は、この光を検出する。磁界発生部は、検出容器400内の反応複合体を所定位置に集める。
【0014】
ここで、本実施形態の測定系では、特に、入射光学系と検出光学系とが同一の光学部材(第1実施形態ではレンズ200)で構成されているために、複数のレンズ同士の集光位置を一致させるための煩雑な調整作業が不要となる。
【0015】
次に、測定系の構成について、より具体的に説明する。
【0016】
本実施形態の測定系において、入射光学系と検出光学系とを構成するレンズ200には、片側の面が凸で、別の側の面は平面である平凸レンズが用いられる。また、レンズ200は、その光軸付近に穴部210が穿設されている。そして、当該穴部210に磁界発生部300が挿通可能に構成されている。光源部100からの光は、レンズ200の第1の入射面211から入射し、レンズ200の第1の出射面212から出射して、所定の位置
に集光される。この集光位置に、磁界発生部300によって集められた検査容器400内の反応複合体が存在する。また、反応複合体から発生する光は、レンズ200の第2の入射面221から入射し、レンズ200の第2の出射面222から出射して、光検出部500に導かれる。ここで、単一のレンズ200の集光位置が、検査容器400内の反応複合体が存在する位置となるように、レンズ200と検査容器400が配置される。これにより、従来のように複数のレンズの集光位置を一致させるために、複数のレンズの調整を行う必要がない。
【0017】
光源部100は、例えばハロゲンランプ、水銀ランプ、レーザー、レーザーダイオード、またはLED等から構成される。
【0018】
光源部100から発せられた光(励起光)は、レンズ200の光軸外側を通り、レンズ200の集光位置に集光する。また、反応複合体から発せられた発光は、レンズ200の光軸外側を通り光検出部500に集光する。そして、当該発光は、光検出部500によって検出される。
【0019】
このレンズ200としては、開口数(NA)の大きいものが好ましい。NAが大きいと、レーザースポット径を数10μm以下にできる。ここで、後述するように、磁界発生部300によって、反応複合体を所定の狭い領域に集合させるため、光源部100からの光は狭い領域に照射されていることが好ましい。また、反応していない発光標識物質からの光は、バックグラウンドノイズである。従って、レンズ200のNAが大きい場合、反応複合体を構成する発光標識物質のみ効率よく励起できるとともに、被測定物質と未反応の発光標識物質の励起を抑制することができる。同様に、レンズ200のNAが大きい場合、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を、効率よく、光検出部500に集光させることができる。
【0020】
また、レンズ200の集光位置を検査容器400の内側に配置すると、磁界発生部300によって集められた反応複合体に励起光を集光でき、同時に反応複合体からの発光を効率よく集光することができる。
【0021】
第1実施形態の構成では、レンズ200としては、平面と凸面のレンズを使用しているが、両凸レンズでもかまわない。このような両凸レンズ200を用いた第2実施形態は図6に示されている。図6に示す第2実施形態によれば、複数の曲面で光線を屈折させるため収差の発生を抑えられるため、光源スポット径を小さくでき、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を効率よく検出できる。
【0022】
さらに、レンズ200の曲面は非球面形状が好ましい。非球面レンズは、球面収差が少ないため、光源スポット径を小さくでき、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を効率よく検出できる。
【0023】
光検出部500は、光の強度を測定(スペクトルを測定)する。光検出部500は、例えば分光器、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトンカウンティング等から構成される。
【0024】
励起光の除去が必要ならば、干渉フィルタを光検出部500よりも光源部100側に配置することで、励起光の影響を除くことも可能である。
【0025】
磁界発生部300は、例えばネオジウム磁石や電磁石のような、比較的強力な磁力を有する磁石から構成される。磁界発生部300は、レンズ200の光軸上に配置されている。より具体的には、磁界発生部300の先端は、レンズ200の集光位置に対向する。図
1に示す第1実施形態では、磁界発生部300は、レンズ200の光軸上にドリル等によって形成された貫通穴(穴部210)に配置されているが、図7の第3実施形態のように、レンズ200に磁界発生部300を、接着部230を介して、直接接着する構成としても構わない。また、磁界発生部300は、光源部100からの励起光および、反応複合体からの発光を妨げない形状である。このような配置により、磁界発生部300は、磁界発生部300の先端の延長上に検査容器400内の反応複合体を集める。
【0026】
演算部600は、光検出部500の測定結果に基づいて、データの蓄積および解析を行う。より具体的には、演算部600は、光検出部500により検出された光強度に基づいて、発光標識の数、被測定物質(抗原)の数を算出する。演算部600としては、データ処理用のコンピュータ等を用いることができる。
【0027】
図3は検査容器400の斜視図である。この検査容器400は、マイクロリットルからミリリットル程度の試料を入れることができるプラスチック製のキュベットなどであり、例えばエッペンドルフチューブやマイクロチューブを用いることができる。なお、検査容器400の材質は、磁力を通すものであればよく、ガラス製等であっても構わない。また、検査容器400は、必ずしも測定系自体に、固定的に付属されるものではなく、使い捨てることもできる。
【0028】
検査容器400内に収容される試料について説明する。図4(A)は抗体が結合された発光標識(ラベル物質)、図4(B)は被測定物質(抗原)、図4(C)は抗体が結合された磁気粒子を模式的に示している。図5はこれらから生成される反応複合体を模式的に示す図である。図4(A)、(C)中における、Y字形状の物体が、抗体を示している。図4(A)、(C)に用いられている抗体は、図4(B)の被測定物質(抗原)と抗原抗体反応する。
【0029】
あらかじめ、検査容器400内などで抗体が結合された発光標識と、被測定物質(抗原)と、を抗原抗体反応させ所定の反応複合体を生成する。さらに、この反応複合体に、抗体が結合された磁気粒子を抗原抗体反応させることによって、図5に示すような反応複合体を作成する。このようにして生成される反応複合体が試料として検査容器400内に収容される。
【0030】
検査容器400が測定系にセットされると、磁界発生部300の磁気が、検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用して、反応複合体が、所定の位置に集められる。より具体的には、反応複合体は、検査容器400の内壁部であって、磁界発生部300の磁力が強い箇所に集められる。
【0031】
上記の発光標識としては、光照射によって蛍光等を発するもの、もしくは、ラマン散乱光等を発生するもの、例えば、蛍光マイクロビーズやSERSナノタグが用いられる。
【0032】
蛍光マイクロビーズは、多くの製造業者によって提供されており、例えば、Molecular Probes社からは、488nm励起で515nm−660nmの蛍光を発するプローブ(フローサイトメトリーアラインメントビーズ)が提供されている。
【0033】
また、SERSナノタグとは、光照射によって強いラマン散乱光が発生する直径数10nm〜数100nmの大きさを持つ粒子である。例えば、US7192778に掲載されており、800〜1800cm-1のラマン散乱光が発生する。たとえば、633nm励起光を照射すると670nm〜710nmのラマン散乱光が発生する。この構造は、約60nmのラマン活性レポーター分子を付着させた金ナノ粒子をポリマー、ガラスまたは任意の他の誘電性材料を含む被包シェルでシールドした構造である。ここで、発光標識は、化
学的に安定であること、光源部100から発せられた光の波長で励起可能な吸収帯を有すること、発光標識と磁気粒子との非特異的な吸着が無い材質であることが望ましい。
【0034】
磁気粒子(磁気ビーズ)は、ポリスチレンビーズであり、磁性物質(Fe2O3)が一様に分布したコアが親水性ポリマーで被われた直径数100nm〜数μmの大きさを持つ粒子状の物体である。このような磁気粒子としては、例えば、ダイナビーズ(ダイナル社製)が知られている。また、本実施形態の測定系で用いる磁気粒子としては、蛍光磁気ビーズであっても構わない。この蛍光磁気ビーズは、磁性物質のコアの周囲に蛍光色素が塗布されており、直径数100nm〜数μmの大きさを持つ粒子状物体である。例えば、nano−screenMAG(Chemicell社製)が知られている。なお、磁性物質は、磁力に引き付けられるのであって、磁気粒子自体や蛍光磁気ビーズ自体が磁力を発しているわけではない。すなわち、磁性物質は、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化するため、常磁性体である。
【0035】
以上のような本実施形態の構成によれば、入射光学系、検出光学系として、レンズ200を共通に用いる。このため、入射用レンズ、検出用レンズを設けて、これら2つのレンズの集光位置を略一致させる必要がなく、そのため、光学系調整が容易になる。
【0036】
次に、他の実施形態について説明する。図8は第4実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第4実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、第4実施形態では検査容器400とレンズ200とを接触させて、測定時における検査容器400の位置決めを行う点である。
【0037】
このようにレンズ200面を、検査容器400の位置決めのために用いることで、以下のようなメリットを享受することができる。
【0038】
本実施形態の測定系を用い、免疫測定などを行う場合には、検査容器400を順次交換しつつ測定を行うが、免疫測定では、測定するためのサンプル数(検査容器数)が多く、処理速度を高めないと膨大な測定時間を費やしてしまう。このため、測定系に検査容器400をセットする際には、細かい位置決めは省略される。検査容器400の位置決めの時、測定毎に励起光の集光位置と検査容器400の位置関係に変化が生ずると、測定再現性が悪くなる。この理由を以下に説明する。図9は検査容器の位置の違いによる測定状況の違いを模式的に示す図である。
【0039】
検査容器400の位置関係が適正である時は、図9(A)のように反応複合体の凝集位置は励起光の集光位置と略一致する。しかし、検査容器が所定の位置からずれている時、例えば検査容器400の位置が磁界発生部300に対して遠い側にずれている時は、図9(B)のように反応複合体は、励起光の集光位置から離れた位置に凝集する。そのため、励起光の集光スポット内に存在する反応複合体の数が図9(A)に比べて少なくなる。
【0040】
従って、反応複合体から得られる発光の光量が弱くなり、発光の光量にのみ基づいて、検体に含まれる被分析物質の濃度を求めた場合には、実際の値よりも低く見積もってしまうこととなる。
【0041】
測定時に検査容器400をレンズ200に接触させることで位置決めを行えば、レンズ200の光軸方向に関して、検査容器400と励起光の集光位置の位置関係を毎回同じにすることができる。そのため、検査容器400内にできる反応複合体の凝集体を、励起光の集光位置に略一致させることができ、検査容器400の位置再現性が原因の測定精度誤差を低減することができる。つまり、本実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を
得ることが可能であると共に、検査容器400とレンズ200の位置あわせを簡便に行い、測定誤差を低減することができる、という効果をも得ることが可能となる。
【0042】
次に、他の実施形態について説明する。図10は第5実施形態に係る測定系の模式的断面図であり、図11は第5実施形態における位置決め部を拡大して示す図である。第5実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第5実施形態が第1実施形態と異なる点は、第5実施形態ではレンズ200に切り欠き凹部240を設けて、この切り欠き凹部240を利用して、測定時における検査容器400の位置決めを行う点である。図11に示すように、測定時における検査容器400は、切り欠き凹部240の辺a(紙面に垂直な辺)及び辺b(紙面に垂直な辺)の2つの辺によって位置決めされる。
【0043】
このような実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、位置決め時において、検査容器400がレンズ200と接している箇所が多いため、測定時に検査容器400をレンズ200に接触させるだけで、検査容器400の位置精度を容易に確保できる、という効果を得ることができる。
【0044】
次に、他の実施形態について説明する。図12は第6実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第6実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第6実施形態は、第5実施形態と同様に切り欠き凹部240を有するものであるが、第6実施形態の切り欠き凹部240は、検査容器400の外形状に沿うような形状の凹面にて構成されている。
【0045】
このような実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、位置決め時において、検査容器400がレンズ200と接している面積が広いため、測定時に検査容器400をレンズ200に接触させるだけで、検査容器400の位置精度を容易に確保できる、という効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、レンズ200と検査容器400の間には、隙間ができず、空気が存在しないこととなるので、空気とレンズ200および、空気と検査容器400の間での反射による光量ロスを減らすことができる。
【0046】
次に、他の実施形態について説明する。図13は第7実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第7実施形態に係る測定系では、レンズ200の曲面は放物面形状である。そして、当該曲面上には反射層250が設けられている。このため、レンズ200は、反射放物面を持つ。このレンズ200は、上記放物面の集光位置がレンズ200の外側に位置するように、切断されている。また、磁界発生部300の先端は、上記放物面の焦点に対向してレンズ200内に固定されている。なお、磁界発生部300は、レンズ200に、必ずしも接着固定されていなくてもよい。
【0047】
励起光は、反応複合体が凝集している反射放物面の焦点に集光し、焦点から発光する反応複合体からの発光は反射放物面によってコリメートされ、光検出部500に入射する。
【0048】
なお、レンズ200の集光位置を検査容器400の内側に配置すると、磁界発生部300によって集められた反応複合体に励起光を集光でき、同時に反応複合体からの発光を効率よく検出できる。このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
次に、他の実施形態について説明する。図14は第8実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第8実施形態に係る測定系では、入射光学系と検出光学系とを兼ねる光学部材として、反射放物面を有する反射鏡260が用いられる。この反射鏡260の反射面は
放物面形状であり、開口部261を有しており、この開口部261を利用して検査容器400が配される。そして、反射鏡260の反射放物面の集光位置に、磁界発生部300により検査容器400内の反応複合体を集める。磁界発生部300は不図示の保持手段によって位置決めされ保持される。本実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、これまでの実施形態と異なりレンズなどに穴部を設けることなく磁界発生部300を配設することが可能となるので、測定系を容易に組むことができる、という効果も得ることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態において、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数は、厳密には、一定でない。すなわち、厳密には、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数は、ばらつきが存在する。例えば、ある磁気粒子は、被測定物質と、全く結合していない場合や、被測定物質が過剰に結合している場合もあり得る。
【0051】
しかしながら、反応複合体を複数集めて、反応複合体からの光をマクロ的に検出すれば、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数のばらつきは統計的に平均化される。従って、上述した、「反応複合体」との記載には、実際には反応複合体を構成していない磁気粒子も含むものとする。
【符号の説明】
【0052】
100・・・光源部、200・・・レンズ、210・・・穴部、211・・・第1の入射面、212・・・第1の出射面、221・・・第2の入射面、222・・・第2の出射面、230・・・接着部、240・・・切り欠き凹部、250・・・反射層、260・・・反射鏡、261・・・開口部、300・・・磁界発生部、400・・・検査容器、500・・・光検出部、600・・・演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光やラマン散乱光などの光強度を検出することによって、抗体と反応した被測定物質の濃度を測定するための測定系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている抗原抗体反応を利用した免疫測定系として、蛍光免疫測定系がある。このような蛍光免疫測定系を用いた測定方法では、まず、試料中の被測定物質(抗原)を、抗体が結合された蛍光体(発光標識)と、抗体が結合された磁気粒子に反応させて、反応複合体を作成する。そして、上記反応複合体に光を照射した時に発する蛍光強度を測定して、該試料に含まれる被測定物質の量を測定する。この時、反応複合体を磁石で集合させた上で、当該反応複合体に向けてレーザー光を照射することで測定の精度を向上させる。当該反応複合体から発せられる蛍光の強度は、被測定物質の量に比例することを利用して、被測定物質を定量測定する。(特許文献1)
【特許文献1】特開平5−249114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の測定系の光学系には、反応複合体に光を照射するための入射用レンズと、反応複合体からの発光を検出する検出用レンズとが設けられる。そして、反応複合体に対向して、入射用レンズと検出用レンズとが、別体となって配置されている。
【0004】
ここで、反応複合体からの発光を効率的に検出するためには、反応複合体が凝集した位置に励起光を集光させ、かつ検出レンズの集光位置を反応複合体に略一致させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の測定系では、2つのレンズが別体であるため、測定時に、これら二つのレンズの集光位置を略一致させる調整が必要であり、この調整は非常に煩雑であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、本発明の測定系は、光を照射する光源と、前記光源から照射された光を、所定の集光位置に集光させる光学部材と、光を検出する検出部と、磁界を発生し、かつ、前記集光位置の近傍に配置された磁界発生部と、を備え、前記光学部材は、第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有し、前記光源と、前記第1の入射面と、が対向しており、かつ、前記検出部と、前記第2の出射面と、が対向しており、かつ、前記集光位置が、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、の何れに対しても対向していることを特徴とする測定系である。
【0006】
また、本発明の測定系は、前記第1の入射面と、前記第2の出射面と、が同一の面であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の測定系は、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が同一の面であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の測定系は、前記光学部材が、前記光源から照射された光を、前記集光位置に位置する試料に集光し、かつ、前記試料からの発光を集光することが好ましい。
【0009】
また、本発明の測定系は、前記光学部材の前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、
が設けられる面に、切り欠き凹部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測定系においては、光学系に第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有する単一の光学部材が用いられている。このため、本発明の測定系によれば、入射用と検出用の二つのレンズの集光位置を一致させるための調整作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る測定系の模式的斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図3】検査容器の斜視図である。
【図4】(A)抗体を結合した発光標識(ラベル物質)、(B)被測定物質、(C)抗体が結合された磁気粒子を模式的に示す図である。
【図5】反応複合体を模式的に示す図である。
【図6】第2実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図7】第3実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図8】第4実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図9】検査容器の位置の違いによる測定状況の違いを模式的に示す図である。
【図10】第5実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図11】第5実施形態における位置決め部を拡大して示す図である。
【図12】第6実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図13】第7実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【図14】第8実施形態に係る測定系の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、第1実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態に係る測定系の模式的斜視図であり、図2は第1実施形態に係る測定系の模式的断面図である。図1及び図2において、100は光源部、200はレンズ、300は磁界発生部、400は検査容器、500は光検出部、600は演算部をそれぞれ示している。第1実施形態に関わる測定系は検査容器400内の抗体と反応した被測定物質(抗原)の濃度を測定するためのものであり、そのための測定系としては、概略、入射光学系と、検出光学系と、磁界発生部とを有している。
【0013】
入射光学系は、検査容器400に励起光を照射する。これにより、検査容器400内の、反応複合体を構成する発光標識から蛍光等もしくはラマン散乱光等が発生する。検出光学系は、この光を検出する。磁界発生部は、検出容器400内の反応複合体を所定位置に集める。
【0014】
ここで、本実施形態の測定系では、特に、入射光学系と検出光学系とが同一の光学部材(第1実施形態ではレンズ200)で構成されているために、複数のレンズ同士の集光位置を一致させるための煩雑な調整作業が不要となる。
【0015】
次に、測定系の構成について、より具体的に説明する。
【0016】
本実施形態の測定系において、入射光学系と検出光学系とを構成するレンズ200には、片側の面が凸で、別の側の面は平面である平凸レンズが用いられる。また、レンズ200は、その光軸付近に穴部210が穿設されている。そして、当該穴部210に磁界発生部300が挿通可能に構成されている。光源部100からの光は、レンズ200の第1の入射面211から入射し、レンズ200の第1の出射面212から出射して、所定の位置
に集光される。この集光位置に、磁界発生部300によって集められた検査容器400内の反応複合体が存在する。また、反応複合体から発生する光は、レンズ200の第2の入射面221から入射し、レンズ200の第2の出射面222から出射して、光検出部500に導かれる。ここで、単一のレンズ200の集光位置が、検査容器400内の反応複合体が存在する位置となるように、レンズ200と検査容器400が配置される。これにより、従来のように複数のレンズの集光位置を一致させるために、複数のレンズの調整を行う必要がない。
【0017】
光源部100は、例えばハロゲンランプ、水銀ランプ、レーザー、レーザーダイオード、またはLED等から構成される。
【0018】
光源部100から発せられた光(励起光)は、レンズ200の光軸外側を通り、レンズ200の集光位置に集光する。また、反応複合体から発せられた発光は、レンズ200の光軸外側を通り光検出部500に集光する。そして、当該発光は、光検出部500によって検出される。
【0019】
このレンズ200としては、開口数(NA)の大きいものが好ましい。NAが大きいと、レーザースポット径を数10μm以下にできる。ここで、後述するように、磁界発生部300によって、反応複合体を所定の狭い領域に集合させるため、光源部100からの光は狭い領域に照射されていることが好ましい。また、反応していない発光標識物質からの光は、バックグラウンドノイズである。従って、レンズ200のNAが大きい場合、反応複合体を構成する発光標識物質のみ効率よく励起できるとともに、被測定物質と未反応の発光標識物質の励起を抑制することができる。同様に、レンズ200のNAが大きい場合、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を、効率よく、光検出部500に集光させることができる。
【0020】
また、レンズ200の集光位置を検査容器400の内側に配置すると、磁界発生部300によって集められた反応複合体に励起光を集光でき、同時に反応複合体からの発光を効率よく集光することができる。
【0021】
第1実施形態の構成では、レンズ200としては、平面と凸面のレンズを使用しているが、両凸レンズでもかまわない。このような両凸レンズ200を用いた第2実施形態は図6に示されている。図6に示す第2実施形態によれば、複数の曲面で光線を屈折させるため収差の発生を抑えられるため、光源スポット径を小さくでき、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を効率よく検出できる。
【0022】
さらに、レンズ200の曲面は非球面形状が好ましい。非球面レンズは、球面収差が少ないため、光源スポット径を小さくでき、反応複合体から発せられた蛍光もしくは、ラマン散乱光等を効率よく検出できる。
【0023】
光検出部500は、光の強度を測定(スペクトルを測定)する。光検出部500は、例えば分光器、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトンカウンティング等から構成される。
【0024】
励起光の除去が必要ならば、干渉フィルタを光検出部500よりも光源部100側に配置することで、励起光の影響を除くことも可能である。
【0025】
磁界発生部300は、例えばネオジウム磁石や電磁石のような、比較的強力な磁力を有する磁石から構成される。磁界発生部300は、レンズ200の光軸上に配置されている。より具体的には、磁界発生部300の先端は、レンズ200の集光位置に対向する。図
1に示す第1実施形態では、磁界発生部300は、レンズ200の光軸上にドリル等によって形成された貫通穴(穴部210)に配置されているが、図7の第3実施形態のように、レンズ200に磁界発生部300を、接着部230を介して、直接接着する構成としても構わない。また、磁界発生部300は、光源部100からの励起光および、反応複合体からの発光を妨げない形状である。このような配置により、磁界発生部300は、磁界発生部300の先端の延長上に検査容器400内の反応複合体を集める。
【0026】
演算部600は、光検出部500の測定結果に基づいて、データの蓄積および解析を行う。より具体的には、演算部600は、光検出部500により検出された光強度に基づいて、発光標識の数、被測定物質(抗原)の数を算出する。演算部600としては、データ処理用のコンピュータ等を用いることができる。
【0027】
図3は検査容器400の斜視図である。この検査容器400は、マイクロリットルからミリリットル程度の試料を入れることができるプラスチック製のキュベットなどであり、例えばエッペンドルフチューブやマイクロチューブを用いることができる。なお、検査容器400の材質は、磁力を通すものであればよく、ガラス製等であっても構わない。また、検査容器400は、必ずしも測定系自体に、固定的に付属されるものではなく、使い捨てることもできる。
【0028】
検査容器400内に収容される試料について説明する。図4(A)は抗体が結合された発光標識(ラベル物質)、図4(B)は被測定物質(抗原)、図4(C)は抗体が結合された磁気粒子を模式的に示している。図5はこれらから生成される反応複合体を模式的に示す図である。図4(A)、(C)中における、Y字形状の物体が、抗体を示している。図4(A)、(C)に用いられている抗体は、図4(B)の被測定物質(抗原)と抗原抗体反応する。
【0029】
あらかじめ、検査容器400内などで抗体が結合された発光標識と、被測定物質(抗原)と、を抗原抗体反応させ所定の反応複合体を生成する。さらに、この反応複合体に、抗体が結合された磁気粒子を抗原抗体反応させることによって、図5に示すような反応複合体を作成する。このようにして生成される反応複合体が試料として検査容器400内に収容される。
【0030】
検査容器400が測定系にセットされると、磁界発生部300の磁気が、検査容器400内の反応複合体の磁気粒子部分に作用して、反応複合体が、所定の位置に集められる。より具体的には、反応複合体は、検査容器400の内壁部であって、磁界発生部300の磁力が強い箇所に集められる。
【0031】
上記の発光標識としては、光照射によって蛍光等を発するもの、もしくは、ラマン散乱光等を発生するもの、例えば、蛍光マイクロビーズやSERSナノタグが用いられる。
【0032】
蛍光マイクロビーズは、多くの製造業者によって提供されており、例えば、Molecular Probes社からは、488nm励起で515nm−660nmの蛍光を発するプローブ(フローサイトメトリーアラインメントビーズ)が提供されている。
【0033】
また、SERSナノタグとは、光照射によって強いラマン散乱光が発生する直径数10nm〜数100nmの大きさを持つ粒子である。例えば、US7192778に掲載されており、800〜1800cm-1のラマン散乱光が発生する。たとえば、633nm励起光を照射すると670nm〜710nmのラマン散乱光が発生する。この構造は、約60nmのラマン活性レポーター分子を付着させた金ナノ粒子をポリマー、ガラスまたは任意の他の誘電性材料を含む被包シェルでシールドした構造である。ここで、発光標識は、化
学的に安定であること、光源部100から発せられた光の波長で励起可能な吸収帯を有すること、発光標識と磁気粒子との非特異的な吸着が無い材質であることが望ましい。
【0034】
磁気粒子(磁気ビーズ)は、ポリスチレンビーズであり、磁性物質(Fe2O3)が一様に分布したコアが親水性ポリマーで被われた直径数100nm〜数μmの大きさを持つ粒子状の物体である。このような磁気粒子としては、例えば、ダイナビーズ(ダイナル社製)が知られている。また、本実施形態の測定系で用いる磁気粒子としては、蛍光磁気ビーズであっても構わない。この蛍光磁気ビーズは、磁性物質のコアの周囲に蛍光色素が塗布されており、直径数100nm〜数μmの大きさを持つ粒子状物体である。例えば、nano−screenMAG(Chemicell社製)が知られている。なお、磁性物質は、磁力に引き付けられるのであって、磁気粒子自体や蛍光磁気ビーズ自体が磁力を発しているわけではない。すなわち、磁性物質は、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化するため、常磁性体である。
【0035】
以上のような本実施形態の構成によれば、入射光学系、検出光学系として、レンズ200を共通に用いる。このため、入射用レンズ、検出用レンズを設けて、これら2つのレンズの集光位置を略一致させる必要がなく、そのため、光学系調整が容易になる。
【0036】
次に、他の実施形態について説明する。図8は第4実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第4実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、第4実施形態では検査容器400とレンズ200とを接触させて、測定時における検査容器400の位置決めを行う点である。
【0037】
このようにレンズ200面を、検査容器400の位置決めのために用いることで、以下のようなメリットを享受することができる。
【0038】
本実施形態の測定系を用い、免疫測定などを行う場合には、検査容器400を順次交換しつつ測定を行うが、免疫測定では、測定するためのサンプル数(検査容器数)が多く、処理速度を高めないと膨大な測定時間を費やしてしまう。このため、測定系に検査容器400をセットする際には、細かい位置決めは省略される。検査容器400の位置決めの時、測定毎に励起光の集光位置と検査容器400の位置関係に変化が生ずると、測定再現性が悪くなる。この理由を以下に説明する。図9は検査容器の位置の違いによる測定状況の違いを模式的に示す図である。
【0039】
検査容器400の位置関係が適正である時は、図9(A)のように反応複合体の凝集位置は励起光の集光位置と略一致する。しかし、検査容器が所定の位置からずれている時、例えば検査容器400の位置が磁界発生部300に対して遠い側にずれている時は、図9(B)のように反応複合体は、励起光の集光位置から離れた位置に凝集する。そのため、励起光の集光スポット内に存在する反応複合体の数が図9(A)に比べて少なくなる。
【0040】
従って、反応複合体から得られる発光の光量が弱くなり、発光の光量にのみ基づいて、検体に含まれる被分析物質の濃度を求めた場合には、実際の値よりも低く見積もってしまうこととなる。
【0041】
測定時に検査容器400をレンズ200に接触させることで位置決めを行えば、レンズ200の光軸方向に関して、検査容器400と励起光の集光位置の位置関係を毎回同じにすることができる。そのため、検査容器400内にできる反応複合体の凝集体を、励起光の集光位置に略一致させることができ、検査容器400の位置再現性が原因の測定精度誤差を低減することができる。つまり、本実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を
得ることが可能であると共に、検査容器400とレンズ200の位置あわせを簡便に行い、測定誤差を低減することができる、という効果をも得ることが可能となる。
【0042】
次に、他の実施形態について説明する。図10は第5実施形態に係る測定系の模式的断面図であり、図11は第5実施形態における位置決め部を拡大して示す図である。第5実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第5実施形態が第1実施形態と異なる点は、第5実施形態ではレンズ200に切り欠き凹部240を設けて、この切り欠き凹部240を利用して、測定時における検査容器400の位置決めを行う点である。図11に示すように、測定時における検査容器400は、切り欠き凹部240の辺a(紙面に垂直な辺)及び辺b(紙面に垂直な辺)の2つの辺によって位置決めされる。
【0043】
このような実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、位置決め時において、検査容器400がレンズ200と接している箇所が多いため、測定時に検査容器400をレンズ200に接触させるだけで、検査容器400の位置精度を容易に確保できる、という効果を得ることができる。
【0044】
次に、他の実施形態について説明する。図12は第6実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第6実施形態に用いる測定系の個々の構成については先の第1実施形態と同様のものを用いるので詳細な説明については省略する。第6実施形態は、第5実施形態と同様に切り欠き凹部240を有するものであるが、第6実施形態の切り欠き凹部240は、検査容器400の外形状に沿うような形状の凹面にて構成されている。
【0045】
このような実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、位置決め時において、検査容器400がレンズ200と接している面積が広いため、測定時に検査容器400をレンズ200に接触させるだけで、検査容器400の位置精度を容易に確保できる、という効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、レンズ200と検査容器400の間には、隙間ができず、空気が存在しないこととなるので、空気とレンズ200および、空気と検査容器400の間での反射による光量ロスを減らすことができる。
【0046】
次に、他の実施形態について説明する。図13は第7実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第7実施形態に係る測定系では、レンズ200の曲面は放物面形状である。そして、当該曲面上には反射層250が設けられている。このため、レンズ200は、反射放物面を持つ。このレンズ200は、上記放物面の集光位置がレンズ200の外側に位置するように、切断されている。また、磁界発生部300の先端は、上記放物面の焦点に対向してレンズ200内に固定されている。なお、磁界発生部300は、レンズ200に、必ずしも接着固定されていなくてもよい。
【0047】
励起光は、反応複合体が凝集している反射放物面の焦点に集光し、焦点から発光する反応複合体からの発光は反射放物面によってコリメートされ、光検出部500に入射する。
【0048】
なお、レンズ200の集光位置を検査容器400の内側に配置すると、磁界発生部300によって集められた反応複合体に励起光を集光でき、同時に反応複合体からの発光を効率よく検出できる。このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
次に、他の実施形態について説明する。図14は第8実施形態に係る測定系の模式的断面図である。第8実施形態に係る測定系では、入射光学系と検出光学系とを兼ねる光学部材として、反射放物面を有する反射鏡260が用いられる。この反射鏡260の反射面は
放物面形状であり、開口部261を有しており、この開口部261を利用して検査容器400が配される。そして、反射鏡260の反射放物面の集光位置に、磁界発生部300により検査容器400内の反応複合体を集める。磁界発生部300は不図示の保持手段によって位置決めされ保持される。本実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、これまでの実施形態と異なりレンズなどに穴部を設けることなく磁界発生部300を配設することが可能となるので、測定系を容易に組むことができる、という効果も得ることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態において、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数は、厳密には、一定でない。すなわち、厳密には、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数は、ばらつきが存在する。例えば、ある磁気粒子は、被測定物質と、全く結合していない場合や、被測定物質が過剰に結合している場合もあり得る。
【0051】
しかしながら、反応複合体を複数集めて、反応複合体からの光をマクロ的に検出すれば、個々の反応複合体を構成している被測定物質の数のばらつきは統計的に平均化される。従って、上述した、「反応複合体」との記載には、実際には反応複合体を構成していない磁気粒子も含むものとする。
【符号の説明】
【0052】
100・・・光源部、200・・・レンズ、210・・・穴部、211・・・第1の入射面、212・・・第1の出射面、221・・・第2の入射面、222・・・第2の出射面、230・・・接着部、240・・・切り欠き凹部、250・・・反射層、260・・・反射鏡、261・・・開口部、300・・・磁界発生部、400・・・検査容器、500・・・光検出部、600・・・演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源と、
前記光源から照射された光を、所定の集光位置に集光させる光学部材と、
光を検出する検出部と、
磁界を発生し、かつ、前記集光位置の近傍に配置された磁界発生部と、を備え、
前記光学部材は、第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有し、
前記光源と、前記第1の入射面と、が対向しており、かつ、
前記検出部と、前記第2の出射面と、が対向しており、かつ、
前記集光位置が、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、の何れに対しても対向していることを特徴とする測定系。
【請求項2】
前記第1の入射面と、前記第2の出射面と、が同一の面である請求項1に記載の測定系。
【請求項3】
前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が同一の面である請求項1又は2に記載の測定系。
【請求項4】
前記光学部材が、
前記光源から照射された光を、前記集光位置に位置する試料に集光し、かつ、前記試料からの発光を集光する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定系。
【請求項5】
前記光学部材の前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が設けられる面に、切り欠き凹部が設けられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の測定系。
【請求項1】
光を照射する光源と、
前記光源から照射された光を、所定の集光位置に集光させる光学部材と、
光を検出する検出部と、
磁界を発生し、かつ、前記集光位置の近傍に配置された磁界発生部と、を備え、
前記光学部材は、第1の入射面と、第2の入射面と、第1の出射面と、第2の出射面と、を有し、
前記光源と、前記第1の入射面と、が対向しており、かつ、
前記検出部と、前記第2の出射面と、が対向しており、かつ、
前記集光位置が、前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、の何れに対しても対向していることを特徴とする測定系。
【請求項2】
前記第1の入射面と、前記第2の出射面と、が同一の面である請求項1に記載の測定系。
【請求項3】
前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が同一の面である請求項1又は2に記載の測定系。
【請求項4】
前記光学部材が、
前記光源から照射された光を、前記集光位置に位置する試料に集光し、かつ、前記試料からの発光を集光する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定系。
【請求項5】
前記光学部材の前記第1の出射面と、前記第2の入射面と、が設けられる面に、切り欠き凹部が設けられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の測定系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−243441(P2010−243441A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95004(P2009−95004)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
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