説明

測定装置および全反射蛍光測定装置

【課題】マッチングオイルなどの液体を気泡が発生することなく自動で充填することと、焦点合わせ時間が少ない基板の交換が、装置自動化に関する。
【解決手段】本発明はマッチングオイルなどの液体を滴下した測定対象基板をターンテーブルなどの台に設置して、プリズムなどのマッチング対象物に対してスライドさせて、気泡の発生が無いマッチングを行うことを特徴とする自動化装置に関する。全反射顕微鏡や表面プラズモン共鳴装置などで行う液体のマッチング工程を自動化することで、測定対象基板の設置,試薬分注,液体のマッチング,温度調節,反応,検出,測定対象基板交換の一連の工程を完全自動化できるため、装置のスループットが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および全反射蛍光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全反射顕微鏡法は、ナノスケールの局所励起を可能とする高SN比の観察手法である。この手法の最大の特徴は、屈折率の異なる2物質界面での光の全反射に伴い発生するエバネッセント波を用いる点にある。屈折率n1の物質1と屈折率n2の物質2の界面に、屈折率の大きい物質2側から臨界角以上で光が入射するとその界面で光は全反射されるが、界面から屈折率の小さい物質1側に指数関数的に減衰するエバネッセント波が発生する。エバネッセント波は全反射界面から数十〜数百nm程度の領域に僅かに染み出す光であるため、全反射顕微鏡法においては、蛍光染色した試料とスライドガラスの界面でエバネッセント波を発生させることで、スライド近辺の試料の極一部に限定した高いSN比での蛍光観察が可能となり、1分子観察にも応用できる。
【0003】
全反射顕微鏡を用いたアプリケーションとしては、細胞生物分野における細胞膜活性や単分子事象の観察が非特許文献1に、電気化学分野におけるコロイド粒子の電気的特性が非特許文献2に記載されている。またブラウン運動の実験的解明が非特許文献3に記載されているなど全反射顕微鏡は多分野で大きく貢献しており、近年では核酸配列解析(DNAシークエンス)への応用が試みられている。これについて以下詳細に説明する。
【0004】
現在のDNAシークエンス法は、主にサンガー法と呼ばれるDNA断片調整法と電気泳動法を組合せたキャピラリーシークエンス方式が用いられており、ヒトゲノム解析等に用いられて大きな成果をあげている。しかしながらテーラーメイド医療などの観点から個人のゲノム解析を考えたとき、キャピラリーシークエンスで一度に解析できるDNA断片の長さよりもはるかに長い断片を、迅速・簡便・安価に解析できる技術が強く求められている。従来のヒトゲノム解析では一人のヒトゲノムを解読するのに約1000万ドルが必要であったが、将来は10000分の1の1000ドルでヒトゲノム解析を行うことでシークエンスの医療分野への応用が飛躍的に進むと期待されており、従来のキャピラリー法の改良のみではこれらの要求に応えることは不可能である。究極的には解読したい核酸をPCRなどの核酸増幅を行うことなく、単一分子レベルでシークエンスできれば、核酸増幅が無い分、試薬代が安価であり、迅速・簡便なシークエンスが可能となる。単一分子レベルでの検出を可能とする方法が全反射顕微鏡法である。更に単一分子シークエンスでは、核酸増幅に起因する増幅効率の差が無いため、従来法と比較して細胞中で発現しているmRNAなどの個数をより高精度に定量することが可能となる。従って新たな方式に基づく単一分子DNAシークエンスが待望されている。
【0005】
現在、光技術を用いた超並列解析法が提唱されており、既に数社から化学発光や蛍光の原理に基づく装置が市販されている。これらの方法の特徴は、マイクロビーズや微細加工技術を用いて反応場を区分けすることで、超並列解析を可能にしたことである。従来のキャピラリーシークエンス方式では、多チャンネル化(〜384本)によって解析効率の向上が図られているが、光技術を用いた超並列解析法では1億個以上の超並列解析も可能であり、キャピラリーシークエンス方式と比較して圧倒的に多い。従って読み取り塩基長では100塩基以下と1000塩基近い解読が可能なキャピラリーシークエンスに劣るものの、スループットとしては例えば100塩基×1億個(108)で1日当たり10ギガ(1010)塩基となり、キャピラリー方式と比較して1000倍以上のスループットが達成できている。また超並列解析により1サンプル当たりの試薬量は少なくなるため、結果的に試薬コストの低下に繋がる。従って解析コストは現状ヒトゲノム一人当たり約10万ドルとキャピラリーシークエンス方式の約100分の1から1000分の1となっている。但しこれらの方式の場合、解読したい核酸を核酸増幅してシークエンスしているため、これ以上の解析コスト低減は難しい。
【0006】
更なる解析コスト低減を達成するために、光技術を用いた超並列解析法による単一分子DNAシークエンスする方法が非特許文献4で提唱されている。この方法では全反射顕微鏡が用いられている。また前記文献よりも更にハイスループットな単一分子DNAシークエンスの方法として、リアルタイムでの単一分子シーケンスが非特許文献5で報告されており、全反射顕微鏡が使用されている。従来のDNAシークエンスの多くは、酵素としてDNAポリメラーゼを利用しているが、前記文献のように伸長反応とシークエンスを一塩基ごとに行う方法では、酵素に備わっている連続的に塩基を取り込む能力を無駄にしている。DNAポリメラーゼ1分子が塩基を取り込む能力は、1秒に約1000塩基で、10万塩基以上の長さにわたって読み取ることができ、更に取り込む塩基の正確性も非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−083800号公報
【特許文献2】特開2007−085915号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Alelrod, D. et al vol.2, pp. 764-774, (2001)
【非特許文献2】Prieve, D. C. and Frej, N. A., Langmuir, 6, pp. 396-403
【非特許文献3】Kihm, K. D. et al., in Fluids, 37, pp.811-824, (2004)
【非特許文献4】PNAS 2003, Vol. 100, pp. 3960-3964
【非特許文献5】PNAS 105(4): 1176-1181. (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したリアルタイムでの単一分子シークエンスで想定されるプロトコルは以下の通りである。酵素,鋳型DNA,プライマーをチューブに入れて、複合体を形成する。酵素活性の低下を防ぐために4℃で行うのが一般的である。次に酵素,鋳型DNA,プライマーの複合体を基板に送液して、複合体を基板に固定する。この時も酵素活性の低下を防ぐために4℃で行うのが一般的である。次に酵素,鋳型DNA,プライマーの複合体が固定された基板を顕微鏡に設置し、焦点をあわせてから顕微鏡撮影を開始する。次に蛍光標識されたdNTPを流して塩基の伸長反応を開始する。37℃で酵素活性が最大となる酵素を用いるのが一般的であるため、37℃に温度調節しながら行う。蛍光標識されたdNTPの蛍光標識部位は、塩基ではなく、末端のリン酸にホスホリンクヌクレオチドをつけることで、酵素が塩基を取り込む過程で蛍光色素を切り離す仕組みである。従って連続的に伸長反応が進むため、1回のシークエンスが終了するまでは視野を固定する必要がある。1視野あたりに要するシークエンス時間は、酵素活性が失われるまでの時間から0〜60分程度と想定される。測定が終了したら、視野を塩基の伸長反応が起こっていない別の場所へ移動する。視野移動後に、蛍光標識されたdNTPを流して塩基の伸長反応を開始し、再びリアルタイムでのシークエンスを行う。従って視野ごとに送液を制御する必要がある。この操作を1基板あたりに存在する視野数分行う。1基板あたり1視野の場合には、1回の測定が終わったら、次の基板をセットする。但し酵素は基板上へ固定された直後から活性の低下がはじまるため、リアルタイム反応の計測可能時間は、測定最初の視野では長いが、測定終了の視野に近づくにつれて短くなる傾向がある。視野ごとの送液制御やリアルタイム反応時間を極力長くするためには、1基板を1視野としてもよい。
【0010】
1基板に存在する全ての視野を検出し終わったら、基板を外して、新しい基板をセットする。プリズム型エバネッセント顕微鏡で基板交換を行う時には、プリズムと対物レンズの位置を基板から離して基板の着脱を行う。その後新しい基板を設置して、プリズムと基板との間にマッチングオイルを満たしてから、対物レンズを近づけて焦点を合わせる。但しマッチングオイル中に気泡が入ることでレーザーが気泡で乱反射して検出できなくなる危険性があることや、時間を要する焦点合わせの間は基板の測定ができないことから、スループットが低下するのが課題である。プリズムと対物レンズの位置を固定したまま、基板のみを引き抜くこともできるが、プリズムと対物レンズの距離は一般的に数mmしかないため、基板を引き抜いた際にプリズムと基板の間のマッチングオイルが対物レンズに接触してしまう。この場合、対物レンズ上に付着したマッチングオイルを拭き取らないと、次の基板の測定を行うことができないため、装置の自動化の障壁となっている。従って対物型/プリズム型全反射顕微鏡装置や、マッチングを必要とする表面プラズモン共鳴測定装置などの装置において、マッチングオイルなどの液体を気泡が発生することなく自動で充填することと、焦点合わせ時間が少ない基板の交換が、装置自動化への大きな課題である。
【0011】
なお、特許文献1に欠陥検査方法及び欠陥検査装置が開示されているが、液浸する面はウエハ上面であり、ウエハ下面を液浸した場合、検出系に液体が付着し、検出できない。また、1枚のウエハを検査し終えると、液浸部を除去して、乾燥させてから次のウエハを入れる。従ってウエハを乾燥・交換する間は検査を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に対して鋭意検討した結果、マッチングオイルなどの液体を滴下した測定対象基板を、プリズムなどマッチングさせたい対象物へスライドさせることで、気泡が発生することなくマッチングすることができ、本発明を完成するに至った。より具体的には、マッチングオイルなどの液体を滴下した測定対象基板をターンテーブルなどの台に設置して、プリズムなどのマッチング対象物に対してスライドさせて、気泡の発生が無いマッチングを行うことを特徴とする自動化測定装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
全反射顕微鏡や表面プラズモン共鳴装置などで行う液体のマッチング工程を自動化することで、測定対象基板の設置,試薬分注,液体のマッチング,温度調節,反応,検出,測定対象基板交換の一連の工程を完全自動化できるため、装置のスループットが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリズム型エバネッセント顕微鏡のターンテーブル図(プリズム上)。
【図2】ターンテーブル上視図(プリズム上)。
【図3】プリズム型エバネッセント顕微鏡のターンテーブル図(プリズム下)。
【図4】プリズム形状と動作機構図(プリズム上)。
【図5】プリズム形状と動作機構図(プリズム上)。
【図6】プリズム形状と動作機構図(プリズム下)。
【図7】フローセル図。
【図8】プリズム型エバネッセント顕微鏡の基板設置台図(プリズム上)。
【図9】プリズム型エバネッセント顕微鏡の基板設置台図(プリズム下)。
【図10】ターンテーブル上視図(プリズム下)。
【図11】ターンテーブルへの測定基板設置図(プリズム上)。
【図12】表面プラズモン共鳴の装置構成図(プリズム下)。
【図13】プリズム型エバネッセント顕微鏡の装置構成図(プリズム横)。
【図14】マッチングオイル溜め付きターンテーブル上視図(プリズム上)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の課題に対して鋭意検討した結果、マッチングオイルを滴下した測定対象基板を、気泡が発生しにくい構造のプリズムへスライドさせることで、気泡が発生することなくマッチングする。より具体的には、マッチングオイルを滴下した測定対象基板をターンテーブルに設置して、マッチングオイルをプリズムと測定対象基板との間に容易に入り込ませるためのテーパや曲面を有するプリズムに対して回転させて、マッチングオイルにプリズムが接触する近傍でターンテーブルの回転速度を遅くすることで、気泡の発生が無いマッチングを行うことを特徴とする自動化装置に関する。
【0016】
本発明は、前述したリアルタイムでの単一分子シークエンスだけではなく、1塩基ずつ塩基を伸長させてシークエンスを行う方法(逐次方式)に適用可能である。顕微鏡を用いて検出するプロトコル全般にも適用できることは、以下の実施例から容易類推可能である。逐次方式とリアルタイム方式で想定されるプロトコルの例を以下に示す。
【0017】
全反射顕微鏡を用いた逐次方式として、レーザー波長532nmおよび635nmを用い、それぞれ蛍光体Cy3および蛍光体Cy5の蛍光検出に用いる。試料溶液を2枚のスライドガラス間に挟んでから、スライドガラスと試料溶液との屈折率境界平面上の溶液層側に、単一の標的DNA分子をビオチン−アビジン結合を利用して固定化する。次に溶液中にCy3標識したプライマーを溶液交換によって一定濃度になるように導入すると、単一のCy3標識プライマー分子が標的DNA分子にハイブリダイズして、核酸二本鎖を形成する。その後洗浄操作により未反応のCy3標識プライマー分子を除く。標的DNA分子にハイブリダイズしたCy3標識プライマー分子はエバネッセント場の特定の位置に存在するため、標的DNA分子の結合位置を蛍光検出によって確認することができる。標的DNA分子にハイブリダイズするCy3標識プライマー分子が、エバネッセントの1視野内に複数存在する場合は、Cy3標識プライマー分子の位置を全て把握しておくことで、以降のシークエンスを並列的に行うことができる。更に標的DNA分子にハイブリダイズするCy3標識プライマー分子が、エバネッセントの1視野内に複数存在し、かつ複数視野に跨って存在する場合には、スライドガラスを保持しているステージを動かすことにより、視野を移動させながらCy3標識プライマー分子の位置を全て把握しておくことで、以降のシークエンスを超並列的に行うことができる。配列解析のスループットを上げるためには、顕微鏡を低倍率にして視野を大きくしたほうが良い。またステージの移動速度を上げて、蛍光観察できない視野間の移動時間を短くしたほうが良い。全てのプライマー分子の位置を確認後、Cy3を高出力の励起光で一定時間照射することによって蛍光退色(消光)させることで、以降の蛍光発光を抑制する。これは次工程以降でCy3を用いる際に、前工程のCy3が検出されてしまうことを防ぐのが目的である。次工程以降でCy3と異なる蛍光色素を用いる場合には、必ずしも消光しなくてよいが、Cy3の蛍光波長領域が他の蛍光色素の蛍光波長領域とオーバーラップする可能性もあるため、極力消光しておくことが望ましい。次に二本鎖核酸に塩基を付加する酵素と、Cy5で蛍光標識したdNTP(NはA(アデニン),C(シトシン),G(グアニン),T(チミン)のうちの1種類)を含む溶液を、溶液交換によって一定濃度になるように導入する。標的DNA分子に対して相補鎖の関係(AとT,CとG)である場合に限り、蛍光標識したCy5−dNTP分子が二本鎖核酸のうちのプライマー分子の伸長鎖に取り込まれる。通常Cy5で蛍光標識したdNTPがプライマー分子の伸長鎖に取り込まれると、酵素は次の塩基を取り込もうとするが、例えばCy5−dNTP分子の塩基の部分に特定の分子を結合させておくことにより、2塩基以上は連続して取り込まないような仕組みになっている。その後洗浄操作により、未反応のCy5−dNTP分子を除く。伸長鎖に取り込まれたCy5−dNTPは、エバネッセント場の特定の位置に存在するため、蛍光検出によってCy5−dNTPの結合位置を確認することができる。更にCy5−dNTPの結合位置と、前記標的DNA分子の結合位置が一致する箇所を特定することにより、エバネッセント場の特定位置に固定された標的DNA分子の配列を解読することができる。プライマー分子の伸長鎖に取り込まれるCy5−dNTPが、エバネッセントの1視野内に複数存在する場合は、結合したCy5−dNTPの位置を全て把握しておくことで、標的DNA分子の配列を並列的に解読することができる。
【0018】
またプライマー分子の伸長鎖に取り込まれるCy5−dNTPが、エバネッセントの1視野内に複数存在し、かつ複数視野に跨って存在する場合には、スライドガラスを保持しているステージを動かすことにより、視野を移動させながらCy5−dNTPの位置を全て把握しておくことで、標的DNA分子の配列を超並列的に解読することができる。配列解析のスループットを上げるためには、顕微鏡を低倍率にして視野を大きくしたほうが良い。またステージの移動速度を上げて、蛍光観察できない視野間の移動時間を短くしたほうが良い。全てのCy5−dNTPの配列(1塩基)を確認後、Cy5を高出力の励起光で一定時間照射することによって蛍光退色(消光)させることで、以降の蛍光発光を抑制する。次工程以降でCy5と異なる蛍光色素を用いる場合には、必ずしも消光しなくてよいが、Cy5の蛍光波長領域が他の蛍光色素の蛍光波長領域とオーバーラップする可能性もあるため、極力消光しておくことが望ましい。Cy5消光後、2塩基以上連続して取り込まないようにCy5−dNTP分子に結合させた特定の分子を、触媒や光解離などの手段を用いて切り離す。これで次の塩基を伸長させることができる。以上のCy5−dNTPの伸長反応プロセスを、例えばdATP→dCTP→dGTP→dTTP→dATPのように4種類の塩基を順番に繰り返して行うことにより、固定された標的DNA分子の塩基配列を決定することが可能である。dNTPの伸長反応プロセスを超並列処理することによって、複数のターゲットDNA分子を超並列的にシークエンスできるのである。この単一分子シークエンスの原理はCy3,Cy5の2色の蛍光色素を例に挙げて説明したが、これら2つの色素に限定されるものではなく、他の蛍光色素や方法で実現可能である。例えば4種類の異なる蛍光色素でdNTPをそれぞれ標識することにより、前記に示したdATP→dCTP→dGTP→dTTP→dATPの4種類の塩基を順番に繰り返して伸長反応させる必要がなくなるため、スループットは単純計算で4倍速くなる。またプライマー分子とdNTPを全て同じ蛍光色素(1色)で標識することもできる。
【0019】
次に全反射顕微鏡を用いたリアルタイム方式の例を示す。従来のDNAシークエンスの多くは、酵素としてDNAポリメラーゼを利用しているが、逐次方式では、酵素に備わっている連続的に塩基を取り込む能力を無駄にしている。DNAポリメラーゼ1分子が塩基を取り込む能力は、1秒に約1000塩基で、10万塩基以上の長さにわたって読み取ることができ、更に取り込む塩基の正確性も非常に高い。そこで2つの技術を用いて、核酸を連続的に伸長させながらリアルタイムでシークエンスしている。1つ目の技術は、蛍光標識を塩基ではなく、末端のリン酸にホスホリンクヌクレオチドをつけることで、酵素が塩基を取り込む過程で蛍光色素を切り離す仕組みである。これにより塩基を取り込んだ後には、完全に自然な二本鎖DNAが残る。酵素が塩基を取り込む時の塩基に対応した蛍光を、リアルタイムに検出することで、連続的なシークエンスが可能である。但し4種類の塩基はそれぞれ異なる蛍光標識をしておく必要がある。なお酵素が取り込むまでの一定時間のみ、蛍光色素はエバネッセント場の特定の場所に存在するため、この時の位置を把握することでシークエンスできる。なお2つ目の技術により、蛍光色素が切り離された後は、蛍光色素はブラウン運動で溶液中を漂うことになるため、シークエンスへの影響はない。また伸長反応とシークエンスを一塩基ごとに行う方法のように、高出力のレーザーを照射して蛍光色素を消光する工程も必要ない。2つ目の技術は、単一分子検出を可能にしたゼロモード導波技術である。これによりナノメートルサイズの穴内部の蛍光色素のみを測定できるため、塩基から切り離された蛍光色素や、伸長反応に寄与していない未反応の蛍光標識塩基を洗浄操作により除去すること無く測定できる。これらの技術によりリアルタイムDNAシークエンスの実現性が示唆されている。
【0020】
リアルタイムでの単一分子シークエンスにおいては、連続的に伸長反応が進むため、1回のシークエンスが終了するまでは、通常視野を固定する必要がある。従ってスループットを上げるためには、顕微鏡を低倍率にして視野をできるだけ大きくすることが有効である。但し対物レンズ型全反射顕微鏡を使用している場合には、60倍以上の高倍率検出に制限される。従って視野は狭くなる。以下に単一分子シークケンスなどに利用されている全反射顕微鏡として、2種類説明する。全反射顕微鏡で現在一般的に用いられているのは、対物レンズ型全反射顕微鏡である。倒立型にして対物レンズをスライドガラスの下方に油浸オイルを介して位置を決め、その対物レンズを経てエバネッセント波発生用のレーザー光をスライドガラス下方から斜めに入射させ、スライドガラス上の試料が置かれた界面近傍にエバネッセント波を発生させる。この配置の場合、対物レンズ上方(スライドガラス上方)の空間が自由に扱えるため操作性と利便性に優れており、かつ非常に明るい蛍光画像が得られるのが特徴である。しかし高開口数油浸対物レンズを用いるという原理上の制約により、倍率が60倍以上の高倍率観察に制限されるのが欠点である。高倍率観察に制限されないもう1種類の全反射顕微鏡として、プリズムを介してレーザーを入射するプリズム型全反射顕微鏡が使用されている。この顕微鏡では、試料を2枚のスライドガラス間、またはスライドガラスとカバーガラス間などに挟み、上方のスライドガラス上にプリズムを載せて、そのプリズムを経てエバネッセント波発生用のレーザー光を上方のスライドガラスの上方に斜めに入射させ、そのスライドガラスの試料と接する界面近傍にエバネッセント波を発生させる。この配置の場合、レーザー光を効率的に入射できることから、対物レンズ型よりも更に高いS/N比での観察が可能である。また対物レンズ型全反射顕微鏡とは異なり、高開口数油浸対物レンズを使用する必要は無く、空浸,水浸型の対物レンズを使用できる。
【0021】
従って倍率の制約がないため低倍率観察も容易である。低倍率観察により1視野は大きくなるため、例えば非特許文献5におけるスループットは向上する。ゆえに対物レンズ型よりもプリズム型全反射顕微鏡の方が、スループット向上の観点からは適していると言える。但しプリズム型全反射顕微鏡では、対物レンズ上方の空間がプリズムで塞がれてしまうため、試料の操作性や標本の自由度が著しく低いのが欠点である。試料の操作性と標本の自由度に優れ、他の光学観察手法との併用が容易でかつ低倍率観察を可能とするプリズム型全反射顕微鏡システムの開発が期待されている。DNAシークエンスのスループット向上のためには、一度に検出できる視野を広くすることが重要である。対物レンズ型全反射顕微鏡では倍率60倍以上の高倍率観察に限定されるが、プリズム型エバネッセント方式では倍率の制約が無いため、低倍率観察することによりスループットは向上する。例えば40倍の対物レンズの視野は60倍の対物レンズのそれと比較して2倍以上である。従って、プリズム型全反射顕微鏡を採用した場合、スループットは2倍以上向上すると期待される。
【0022】
またスループット向上のためには、酵素の反応速度を上げることも重要である。酵素の反応速度を上げる方法としては、基質濃度を高くすること、至適pHにすることの他に、酵素の至適温度にすることが考えられる。この中で基質濃度とpHに関しては、溶液中の組成を変えることで実現できる。但し酵素の至適温度(反応温度)の管理に関しては、温度調節を行う装置が別途必要となる。酵素の反応速度は温度とともに上昇するが、酵素はタンパク質であるために高温では変性する。従って酵素活性は逆に低下する。一般的に動物の酵素では40〜50℃、植物の酵素では50〜60℃である。但し好熱性細菌のように80〜90℃(超高熱菌には90℃以上)のものもある。以上より、温度制御機能付きのプリズム型全反射顕微鏡を用いることで、装置としてのスループットを最大にできる。以下に実施例の詳細を記載する。
【実施例1】
【0023】
上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について図面を参照しながら説明する。なお図面は説明のために用いるものであり、権利範囲を限定するものではない。プリズム型エバネッセント方式の顕微鏡ステージであるターンテーブルへの基板設置,試薬分注,温度調節,マッチングオイル分注,基板上での反応,顕微鏡検出を全自動かつ連続的に行うことで、本発明を完成するに至った。本発明の構成を図1で説明する。図1はプリズム型エバネッセント顕微鏡のターンテーブル図である。レーザー101から発振されたレーザービームは、λ/4波長板102で円偏光となり、集光レンズ103を通した後に、プリズム104へ垂直入射させる。プリズム用ガラスには極めて高い均質性で製造可能な光学ガラスが求められるため、合成石英または高透過率で高均質なBK7が一般的に用いられる。
【0024】
レーザービームは、測定基板105bの屈折率境界平面、即ち測定基板105bと溶液(測定基板105bの下面に接する溶液。実施例7参照。全ての実施例において、マッチング対象物とは反対側の面に試薬を保持または送液する機構を備えることができる。)の界面に対して、入射角度約68°(溶液:水)で入射することで、レーザービームを全反射させ、エバネッセント波を形成する。測定基板105bの種類としては、石英基板,基板に金属膜などを塗布した金薄膜基板,基板に化学修飾を施して官能基を導入した基板,基板に半導体プロセスで構造体を作製した基板,微粒子や異物などを固定化した基板の他、上述の基板に対して核酸,タンパク質,抗原,抗体,低分子,アプタマー、またはそれに類する生体分子などを結合した基板が使用できるが、これらに限定されるものではない。なお図1では測定基板105a,105bは測定基板ホルダ106bに固定された状態でターンテーブル107にセットされている。測定基板105と測定基板ホルダ106bを高い平行度で固定することで、ターンテーブル107に高い平行度でセットできる。それぞれの平行度は1°以下であることが望ましいが、これに限定されるものではない。測定基板105a,105bが大きければ、測定基板ホルダ106を介さずに直接ターンテーブル107上に設置することもできる。なおプリズム104と測定基板105bとの間を屈折率の近いマッチングオイル120bで充填することで、レーザービームがプリズム104と測定基板105b境界で全反射することを防いでいる。レーザーの光路には測定基板ホルダ106は無いため、プリズム104と測定基板105bとの間にはマッチングオイル120bしか存在しない。プリズム104と測定基板105bとの間の距離に制限はないが、距離が広がりすぎると、マッチングオイル120bをプリズム104と測定基板105bとの間に保持できなくなるため、3mm以下とすることが望ましい。距離が離れて少しでもプリズム104と測定基板105bとの間に空気層が入ると、その部分でレーザービームは全反射してしまう。従って気泡が入らない構造であることが必須である。XYZステージ付きターンテーブル回転軸108を回転させることで、ターンテーブル107を回転できる。XYZステージ付きターンテーブル回転軸108はXYZステージに固定されており、回転中心を任意の位置へ移動することができる。更にターンテーブル押さえ109a,109bを用いてターンテーブル107を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸108を回転させたときの測定基板105bの高さを常に一定することができる。ターンテーブル押さえ109a,109bの位置や個数に制限は無く、ターンテーブル107や測定基板105a,105bを押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム104と対物レンズ110の位置は固定されている。
【0025】
エバネッセント場では、励起光強度が屈折率境界平面から離れるに従って指数関数的に減衰し、50〜150nm程度の距離で励起光強度が1/e(eは自然対数)になる。落射蛍光検出と比較して、励起光照射体積が大幅に低減できるため、溶液中に浮遊している遊離蛍光体の蛍光発光や、水のラマン散乱を始めとする背景光を飛躍的に低減することが可能となる。エバネッセント波による蛍光は、対物レンズ用Z軸ステージ111で焦点を合わせた対物レンズ110から、フィルタユニット112を通して不要な波長成分を除去した後に、結像レンズ113を経て2次元検出器であるCCD114上に結像する。結像した信号は制御用PC115で処理され、結果がモニタ116に表示される。また試薬容器117から分注ユニット118で吸引した試薬を、送液チューブ119を通して測定基板105aに送液する。対物レンズ110は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの場合は気泡の混入が、主に水浸レンズの場合は水の蒸発があることから、これを防止する機構が必要となる。
【0026】
測定基板105aを検出するまでの手順を示す。まず送液チューブ119から測定基板105a上へマッチングオイル120aを滴下する。送液チューブ119はあくまでもマッチングオイル120aを滴下する機構の一例である。マッチングオイルの量は5〜50μLが好ましいが、プリズム104のマッチングオイル105aが満たされる部分の面積,プリズム104と測定基板105bとの距離により決定される。従ってこの量に制約されるものではない。マッチングオイル120aの液高さが、プリズム104と測定基板105bとの間の距離よりも高くなる液量を分注することで、プリズム104とマッチングオイル120aが接触して、プリズム104と測定基板105bとの間にマッチングオイル120aを満たすことができる。マッチングオイル120aの液高さが、プリズム104と測定基板105bとの間の距離よりも低くなる液量では、プリズム104とマッチングオイル120aが接触しないため、プリズム104と測定基板105bとの間にマッチングオイル120aを満たすことができない。従って顕微観察ができない。次にXYZステージ付きターンテーブル回転軸108を180°回転させることで、ターンテーブル107を180°回転させる。この際にマッチングオイル120aはプリズム104と測定基板105bとの間に侵入する。ターンテーブル107を回転させると、プリズム104とマッチングオイル120bは接触しているため、マッチングオイル120bは、その粘性によりターンテーブル107の回転方向に伸長した形状となる。従って送液チューブ119からマッチングオイル120aを滴下する位置は、測定基板105a上の回転方向前側かつXYZステージ付きターンテーブル回転軸108を中心とした対物レンズ110の焦点位置の同心円上であることが望ましい。こうすることで結果的にプリズム104と測定基板105bの中央部にマッチングオイル120bを満たすことができる。
【0027】
またマッチングオイル120aがプリズム104に接触してから、XYZステージ付きターンテーブル回転軸108の回転速度を下げることで、気泡が入りにくくなり、プリズム104と測定基板105bの中央部にマッチングオイル120bを満たすことができる。測定基板105bの高さずれなどにより、画像の位置ずれや焦点ずれを生じた場合には、XYZステージ付きターンテーブル回転軸108を固定しているXYZステージを移動させてずれを補正する。更に必要であれば、対物レンズ用Z軸ステージ111で対物レンズ110を上下させて焦点を合わせるか、プリズム104の位置を上下させる。測定が終わった測定基板105bは、ターンテーブル回転軸108を180°回転させることで、ターンテーブル107を180°回転させる。その後基板オートローダ121を用いて、基板ホルダ106aの取り外しと、新しい基板ホルダ106aの設置を行う。以上のプロセスを全自動で連続して行う。なお図1はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子蛍光検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム104を図1から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。
【実施例2】
【0028】
図2は図1のターンテーブル上視図である。図はあくまでも例であるため、これに限定されるものではない。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸201が回転することにより、基板オートローダアームが基板オートローダ202へアクセスできる。なお分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸201を中心とした点線は、分注アームまたは基板オートローダアームが回転する軌道を示している。また分注アームは分注チップ装着部203で分注チップを装着して、試薬容器204で試薬吸引して、使用済みの分注チップを分注チップ廃棄部205へ廃棄できる。なお分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸201は、それぞれ別々に配置することで、基板設置と分注を並行処理することができる。上記機構を用いて、分注チップ206でマッチングオイル207を、ターンテーブル208にセットされた測定基板ホルダ209に分注する。その後XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を180°回転させる。この時ターンテーブル押さえ211でターンテーブル208を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を回転させたときの測定基板212の高さを常に一定にすることができる。ターンテーブル押さえ211の位置や個数に制限は無く、ターンテーブル208や測定基板212を押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム213と対物レンズ214の位置は固定されている。XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を180°回転させる際に、マッチングオイル207はプリズム213と測定基板212との間に侵入する。ターンテーブル208を回転させると、プリズム213とマッチングオイル207は接触しているため、マッチングオイル207は、その粘性によりターンテーブル208の回転方向に伸長した形状となる。従って分注チップ206からマッチングオイル207を滴下する位置は、測定基板212上の回転方向前側かつXYZステージ付きターンテーブル回転軸210を中心とした対物レンズ214の焦点位置の同心円上であることが望ましい。こうすることで結果的にプリズム213と測定基板212の間で、対物レンズ214の中心位置にマッチングオイル207を満たすことができる。またマッチングオイル207がプリズム213に接触してから、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210の回転速度を下げることで、気泡が入りにくくなり、プリズム213と測定基板212の間で、対物レンズ214の中心位置にマッチングオイル207を満たすことができる。測定基板212の高さずれなどにより、画像の位置ずれや焦点ずれを生じた場合には、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を固定しているXYZステージを移動させてずれを補正する。測定が終わった測定基板ホルダ209bは、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を180°回転させることで、測定基板ホルダ209aの位置へ移動させる。その後分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸201の基板オートローダアームが測定基板ホルダ209aをターンテーブル208から外して、未測定の測定基板ホルダ209aを設置する。以上のプロセスを連続して全自動で行う。
【0029】
但し測定する基板数が増えるにつれて、ターンテーブル208上にはマッチングオイル207が溜まっていく。これはプリズム213に残ったマッチングオイル207が、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210の回転に伴い、測定基板ホルダ209以外のターンテーブル208上に塗布されるためである。これを防ぐ方法として、マッチングオイル拭き215をターンテーブル208に設置することができる。マッチングオイル拭き215の高さは、マッチングオイル207の付着しているプリズム213の下面部に到達できる高さとする。XYZステージ付きターンテーブル回転軸210の回転に伴い、マッチングオイル拭き215がマッチングオイル207の付着しているプリズム213の下面部を拭くことで、マッチングオイル207を拭き取ることができる。1回で拭き取ることができない場合には、マッチングオイル拭き215がプリズム213を通過後に、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210を反対方向に回転させることで、複数回の拭き取りができるため、マッチングオイル207を完全に拭き取ることができる。測定基板ホルダ209の測定が終了するごとに、マッチングオイル207を拭き取ることで、常にマッチングオイル207の量を一定に保つことができる。図2の実施例では、測定基板ホルダ209とマッチングオイル拭き215の位置が90°ずれているため、XYZステージ付きターンテーブル回転軸210の回転により、測定基板ホルダ209とマッチングオイル拭き215との間のターンテーブル208の領域に、マッチングオイル207が塗布される。これを防ぐためには、マッチングオイル拭き215を測定基板ホルダ209の近く、もしくは測定基板ホルダ209上に配置することで、マッチングオイル207が、ターンテーブル208へ塗布される領域を最小にできる。マッチングオイル拭き215としては、プリズム213を傷つけず、かつ残渣が付着しない材料であることが望ましく、フェルト,光学レンズ用ペーパーなどが挙げられる。マッチングオイル拭き215はターンテーブル208の任意の場所へ設置可能である。但しマッチングオイル207のターンテーブル208への塗布量が少ない場合や測定に影響を与えない場合には、必ずしもマッチングオイル拭き215は設置しなくてもよい。またマッチングオイル拭き215はターンテーブルに設置されている必要は無く、ターンテーブル押さえ211の構成要素として、ターンテーブル208とは独立に設置してもよい。また測定基板ホルダ209の任意の場所に試薬ポートとして、試薬Aポート216,試薬Bポート217を設けることができる。試薬ポートの数は任意に設定できる。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸201を回転させることで、図2に示すように分注アームまたは基板オートローダアームを測定基板ホルダ209の中央部や、試薬Aポート216,試薬Bポート217上に移動して、試薬などを滴下することができる。対物レンズ214は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの使用も可能であるが、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。その例として、送液チューブ218を通して、水219をポンプ220で対物レンズ214へ送液する方法が考えられるが、これに限定されるものではない。また219はマッチングオイルなど他の液体にすることができる。なお図2はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム213を図2から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。
【0030】
更にターンテーブル208を部分的に温度調節することで、測定基板ホルダ209aと209bを異なる温度に設定できる。温調方式としては、空気温調と局所温調がある。空気温調は加温または冷却装置と温調用の箱を用いて、保温したい箱の空気温度を調節する方法である。温度安定性は高いが、温度到達までの時間が長いこと、60℃以上の高温は難しいといった課題がある。全反射顕微鏡で空気温調用の箱を用いる場合、スライドガラスを保持する顕微鏡ステージ,プリズム,対物レンズ全てを覆う可能性が高いため、それらの熱膨張の影響が懸念される。特に対物レンズに関しては、高温での使用はメーカーの仕様範囲外であるため、極力室温に保つことが望ましい。また局所温調は加温または冷却装置を温度制御したい部分に直接接触させることで、温度調節する方法である。従って空気温調で懸念されるような対物レンズの熱膨張は発生しない。局所温調は空気温調と比較して温度安定性に劣るものの、温度到達までの時間が短いこと、60℃以上の高温も制御可能という特徴を持つ。例えば酵素反応と洗浄で温度を変える必要がある場合や、高耐熱性酵素を使用する場合には、空気温調よりも局所温調方式が適している。従って温度調節の方法としては、ターンテーブル208に対してペルチエ,ヒーターを接触させる方法や、ターンテーブル208に電熱線を埋め込んでおく方法,赤外線レーザーなどを用いる方法などが考えられるが、これらに限定されるものではない。ターンテーブル押さえ211にヒーターの役割を持たせても良い。これによりプリズム213と対物レンズ214で挟まれた測定基板212を検出している間に、もう一方の測定基板212に、試薬を送液して異なる温度で一定時間反応させた後に、検出を行うバイオアッセイが可能となる。例えばPCRでは一般的に3段階の温度サイクル(例.熱変性:95℃,ハイブリダイゼーション:58℃,伸長:72℃)を経ることで、核酸を2倍にすることができる。従ってターンテーブル208に測定基板ホルダ209を3枚設置して、3段階の温度設定にすることで、ターンテーブル208が1回転するたびに核酸が2倍になるため、その履歴を検出することで初期のDNA量を計測する定量PCRが実現できる。またその他にも、実施例に示したようにDNAとプライマーの2本鎖に対して1塩基ずつ蛍光標識塩基を伸長させてDNAシーケンスを行うなど、多くのアプリケーションがある。本発明のアプリケーションはこれらに限定されるものではない。
【実施例3】
【0031】
図3はプリズム型エバネッセント顕微鏡のターンテーブル図である。従って図3では、図1に示すマッチングオイル120が、測定基板105の下側にあり、対物レンズ110は水浸用対物レンズであるとして説明するが、これに限定されるものではない。レーザー301から発振されたレーザービームは、λ/4波長板302で円偏光となり、集光レンズ303を通した後に、プリズム304へ垂直入射させる。プリズム用ガラスには極めて高い均質性で製造可能な光学ガラスが求められるため、合成石英または高透過率で高均質なBK7が一般的に用いられる。レーザービームは、測定基板305bの屈折率境界平面、即ち測定基板305bと溶液(測定基板305bの上面に接する溶液)の界面に対して、入射角度約68°(溶液:水)で入射することで、レーザービームを全反射させ、エバネッセント波を形成する。なお図3では測定基板305a,305bは測定基板ホルダ306bに固定された状態でターンテーブル307にセットされている。測定基板305と測定基板ホルダ306bを高い平行度で固定することで、ターンテーブル307に高い平行度でセットできる。それぞれの平行度は1°以下であることが望ましいが、これに限定されるものではない。測定基板305a,305bが大きければ、測定基板ホルダ306を介さずに直接ターンテーブル307上に設置することもできる。なおプリズム304と測定基板305bとの間を屈折率の近いマッチングオイル320bで充填することで、レーザービームがプリズム304と測定基板305b境界で全反射することを防いでいる。レーザーの光路には測定基板ホルダ306は無いため、プリズム304と測定基板305bとの間にはマッチングオイルしか存在しない。プリズム304と測定基板305bとの間の距離に制限はないが、距離が広がりすぎると、マッチングオイル320bをプリズム304と測定基板305bとの間に保持できなくなる。距離が離れて少しでもプリズム304と測定基板305bとの間に空気層が入ると、その部分でレーザービームは全反射してしまう。従って気泡が入らない構造であることが必須である。XYZステージ付きターンテーブル回転軸308を回転させることで、ターンテーブル307を回転できる。XYZステージ付きターンテーブル回転軸308はXYZステージに固定されており、回転中心を任意の位置へ移動することができる。
【0032】
更にターンテーブル押さえ309a,309bを用いてターンテーブル307を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸308を回転させたときの測定基板305bの高さを常に一定することができる。ターンテーブル押さえ309a,309bの位置や個数に制限は無く、ターンテーブル307や測定基板305a,305bを押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム304と対物レンズ310の位置は固定されている。エバネッセント場では、励起光強度が屈折率境界平面から離れるに従って指数関数的に減衰し、50〜150nm程度の距離で励起光強度が1/e(eは自然対数)になる。落射蛍光検出と比較して、励起光照射体積が大幅に低減できるため、溶液中に浮遊している遊離蛍光体の蛍光発光や、水のラマン散乱を始めとする背景光を飛躍的に低減することが可能となる。エバネッセント波による蛍光は、対物レンズ用Z軸ステージ311で焦点を合わせた対物レンズ310から、フィルタユニット312を通して不要な波長成分を除去した後に、結像レンズ313を経て2次元検出器であるCCD314上に結像する。結像した信号は制御用PC315で処理され、結果がモニタ316に表示される。また試薬容器317から分注ユニット318で吸引した試薬を、送液チューブ319を通して測定基板305aに送液する。対物レンズ310は水浸用対物レンズを用いた例を示すが、空浸,油浸レンズの使用も可能であり、限定されるものではない。液体を用いた対物レンズ310を用いる際には、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。
【0033】
測定基板305aを検出するまでの手順を示す。まず送液チューブ319から測定基板305a上へ対物レンズ用の水320aを滴下する。水の量は蒸発を防ぐために50μL以上であることが好ましい。この量は測定基板305の測定時間,水の蒸発時間,測定温度などの影響で決定される。水320aの液高さが、対物レンズ310と測定基板305bとの間の距離よりも高くなる液量を分注することで、対物レンズ310と水320aが接触して、対物レンズ310と測定基板305bとの間に水320aを満たすことができる。水320aの液高さが、対物レンズ310と測定基板305bとの間の距離よりも低くなる液量では、対物レンズ310と水320aが接触しないため、対物レンズ310と測定基板305bとの間に水320aを満たすことができない。従って顕微観察ができない。次にXYZステージ付きターンテーブル回転軸308を180°回転させることで、ターンテーブル307を180°回転させる。この際に水320aは対物レンズ310と測定基板305bとの間に入り込む。図1に示すマッチングオイル120とは異なり、水の場合には、対物レンズ310と測定基板305bとの間に気泡が入ることは無い。測定基板305bの高さずれなどにより、画像の位置ずれや焦点ずれを生じた場合には、XYZステージ付きターンテーブル回転軸308を固定しているXYZステージを移動させてずれを補正する。更に必要であれば、対物レンズ用Z軸ステージ311で対物レンズ310を上下させるか、プリズム304を上下させる。
【0034】
測定が終わった測定基板305bは、ターンテーブル回転軸308を180°回転させることで、ターンテーブル307を180°回転させる。その後基板オートローダ321を用いて、基板ホルダ306aの取り外しと、新しい基板ホルダ306aの設置を行う。以上のプロセスを全自動で連続して行う。プリズム304と測定基板305との間のマッチングオイルに関しては、送液チューブ322を通して、マッチングオイル323をポンプ324でプリズム304へ送液する方法が考えられるが、これに限定されるものではない。また323は他の液体にすることができる。また図2に示すマッチングオイル拭き215に相当するものをターンテーブル307の下面に設置することもできる。またマッチングオイル溜め容器325で、プリズム304からこぼれたマッチングオイルを回収する。なお図3はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム304を図1から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。
【実施例4】
【0035】
マッチングオイルと接液するプリズム面が、ターンテーブルの回転面に対して垂直である場合、プリズムと測定基板との間に気泡が混入したり、測定視野中央部にマッチングオイルが入らないことある。この場合、マッチングオイルがプリズムに接触してから時間を置くことで、マッチングオイルを広がらせ、再度ターンテーブルを回転させることで、プリズムと測定基板との間にマッチングオイルを満たすことができる。但しこの方法では時間がかかること、多量のマッチングオイルを使用すること、必ずしも気泡の混入が防げないといった課題がある。そこで筆者らが鋭意検討した結果、マッチングオイルと接液するプリズム面を、ターンテーブルの回転面に対して鋭角に設定することで、プリズムでマッチングオイルが遮断された場合でも、ターンテーブルの回転力に伴うマッチングオイルの慣性力が、マッチングオイルとプリズムとの間に発生する摩擦力に打ち勝って、プリズムと測定基板との間にマッチングオイルが引き込まれるという考えに至った。この方法では気泡の混入が無く、短時間かつ少量のマッチングオイルで、プリズムと測定基板との間にマッチングオイルを満たすことができるのが特徴である。図4にプリズム形状と動作機構図を示す。
【0036】
これは図1〜図3のプリズム部分を拡大した図である。なおプリズム形状は例として挙げたものであり、これらに限定されるものではない。図4(a)〜図4(d)はテーパ付きプリズムである。図4(a)はプリズム立体図であり、測定基板ホルダ401に滴下されたマッチングオイル402が、矢印の方向へ移動して、テーパ付きプリズム403へ接触する。なおレーザー404は図に示すようにマッチングオイルのプリズムへの進行方向とは垂直の方向から照射するのが望ましい。これはマッチングオイル402とテーパ付きプリズム403が接触する面からレーザー404を照射する場合、レーザー404の入射部分にマッチングオイル402があると、乱反射するなどして測定できなくなるためである。従って、マッチングオイル402とテーパ付きプリズム403が接触しない面からレーザー404を照射するのが好ましい。図4(b)はプリズム斜視図である。測定基板ホルダ401に滴下されたマッチングオイル402が、テーパ付きプリズム403の方向へ移動する。レーザー404は紙面に垂直に照射されている。測定基板405は測定基板ホルダ401に固定されており、対物レンズ406が測定基板405の下にある。
【0037】
図4(c)はプリズム斜視図であり、マッチングオイル402が、テーパ付きプリズム403と接触して、テーパ付きプリズム403と測定基板405との間に満たされた状態を示す。マッチングオイルと接液するプリズム面を、ターンテーブルの回転面に対して鋭角に設定することで、テーパ付きプリズム403でマッチングオイル402が遮断された場合でも、テーパ付きプリズム403と測定基板405との間に、マッチングオイル402が引き込まれる。レーザー404の光路には測定基板ホルダ401は無いため、テーパ付きプリズム403と測定基板405との間にはマッチングオイルしか存在しない。図4(d)はプリズム上視図である。レーザー404は図に示すようにマッチングオイルのプリズムへの進行方向とは垂直の方向から照射するのが望ましい。またプリズム403と測定基板405との間にマッチングオイル402を満たすために、プリズム形状にR(Round)をつけた時の斜視図を図4(e)に示す。R付きプリズム407にすることで、R付きプリズム407と測定基板405との間に、マッチングオイル402が引き込まれるのはもちろんのこと、図2の215に示すマッチングオイル拭きによるオイル残しが、テーパ付きプリズム403と比較してR付きプリズム407では少なくなる。これはプリズムを曲面にすることで、常に測定基板面とプリズム面との角度が変化するため、マッチングオイル拭きの移動に従い、常にプリズム面との間に摩擦力が発生するためである。一方テーパ付きプリズムでは、測定基板面とプリズム面とが平行な部分では、マッチングオイル拭きが移動しても摩擦力はR付きプリズムのそれと比較して小さいため、マッチングオイルを拭き取る力は弱くなるためである。
【0038】
本実施例より、マッチングオイルと接液するプリズム面を、ターンテーブルの回転面に対して鋭角となるテーパや曲面構造に設定することで、気泡の混入が無く、短時間かつ少量のマッチングオイルで、プリズムと測定基板との間にマッチングオイルを満たすことができる効果がある。
【実施例5】
【0039】
図4では、マッチングオイルのプリズムへの進行方向に対してレーザーの照射面を垂直にすることで、レーザーのプリズムへの照射位置にマッチングオイルが付着するのを防いでいる。但しターンテーブル上のマッチングオイルを拭き取らずに測定を続けると、マッチングオイルがプリズムに溜まり、レーザー照射面へマッチングオイルが回り込む。結果としてレーザーのプリズムへの照射位置にマッチングオイルが付着する可能性がある。そこでレーザー照射面へマッチングオイルが回り込むのを防ぐ形状として、図5のプリズム形状が考えられる。図5にプリズム形状と動作機構図を示す。図5(a)はプリズム上視図であり、測定基板ホルダ501に滴下されたマッチングオイル502が、矢印の方向へ移動して、プリズム503へ接触する。プリズム503の上視図は蝶ネクタイの形をしており、中央部分の長さが短くなっている。測定基板ホルダ501が矢印の方向に移動することで、プリズム503で堰き止められて広がったマッチングオイル502は、測定基板ホルダ501の進行方向に対してプリズム503の面に角度がついていることから、マッチングオイル502は蝶ネクタイ型の中央部に集まっていく。結果として、レーザーのプリズムへの照射位置にマッチングオイルが付着する可能性が低くなる。
【0040】
図5(b)はプリズム側面図である。測定基板ホルダ501に滴下されたマッチングオイル502が、プリズム503の方向へ移動する。レーザー504は紙面に垂直に照射されている。測定基板505は測定基板ホルダ501に固定されており、対物レンズ506が測定基板505の下にある。
【0041】
図5(c)はプリズム側面図であり、マッチングオイル502が、プリズム503と接触して、プリズム503と測定基板505との間に満たされた状態を示す。マッチングオイルと接液するプリズム面を、ターンテーブルの回転面に対して鋭角に設定することで、プリズム503でマッチングオイル502が遮断された場合でも、プリズム503と測定基板505との間に、マッチングオイル502が引き込まれる。レーザー504の光路には測定基板ホルダ501は無いため、テーパ付きプリズム503と測定基板505との間にはマッチングオイルしか存在しない。図5(d)はプリズム側面図であり、図4(e)で示したR付きプリズムの構成となっている。プリズムを曲面にすることで、プリズム上の点における微分値が連続的に変化するため、常に測定基板面とプリズム面の傾き(微分値)との角度が変化することになり、マッチングオイル拭きの移動に従い、常にプリズム面との間に摩擦力が発生する。一方テーパ付きプリズムでは、測定基板面とプリズム面とが平行な部分では、マッチングオイル拭きが移動しても摩擦力はR付きプリズムのそれと比較して小さいため、マッチングオイルを拭き取る力は弱くなる。
【実施例6】
【0042】
図3に示すように、ターンテーブルの下にプリズムを配置する場合のプリズム形状を図6に示す。図6は図5の形状を変更したものであり、レーザーのプリズムへの照射位置にマッチングオイルが付着しないプリズム形状である。図6(a)はプリズム側面図である。測定基板ホルダ601とプリズム603との間にマッチングオイル602が保持されている。レーザー604は測定基板ホルダ601の進行方向と垂直の面で、測定基板605へ照射され、対物レンズ606を通して検出される。マッチングオイル602で、プリズム603から垂れたものは、マッチングオイル溜め容器607で回収される。送液チューブ608を通して、マッチングオイルボトル609からポンプ610を用いて、マッチングオイル602をプリズム603と測定基板605との間に満たす。図6(b)はプリズム上視図である。マッチングオイル602をプリズム603から落とすために、図5(a)と比較して蝶ネクタイ型の中央部をより短くした形状としている。図6(c)は図6(b)をレーザー604の照射方向から見た時のプリズム側面図である。レーザー入射・反射位置611のプリズム603面には、マッチングオイル602は付着しない。プリズム603から垂れるマッチングオイル602は、602b,602cのいずれかの点線上を通り、602dへ到達する。そして表面張力で自重を支えきれなくなると、マッチングオイル溜め容器607へ、602eとして落下して回収される。マッチングオイル602はレーザー入射・反射位置611のプリズム603面に付着しないが、別の問題として、レーザー入射・反射位置611のプリズム603面を、誤って手で触れてしまうことがある。この場合手の有機物がプリズム表面に付着するため、レーザー604がプリズム603面で乱反射して、測定基板605を測定できなくなる。これを回避する方法として、プリズム603のレーザー入射・反射位置611だけを、手で触れることができないように、くぼみ612をつけておく方法がある。立方体/直方体/円柱など柱構造であることが望ましい。また柱構造の大きさは、プリズム603のレーザー入射・反射位置611に手が触れられなければよいため、1mmから20mm程度が望ましい。柱構造の大きさが20mm程度の場合には、アスペクト比が大きくないと手で触れることができないため、くぼみ612の大きさ,深さはこの大きさに限定されるものではない。またくぼみ612の大きさはレーザー604より大きいのは当然であるが、プリズム603のレーザー入射・反射位置611は、時間経過と共に埃などが堆積し、レーザー604の乱反射の原因となる。従って定期的にレーザー入射・反射位置611を洗浄できる大きさのくぼみ612であることが望ましい。つまり光学レンズ用の綿棒などが入る大きさであれば、手では触れられないが、定期的に洗浄はできる。従ってくぼみ612の一例としては5mm程度の立方体が考えられる。またくぼみ構造の加工が難しい場合には、穴あき構造を持つもの(例えばナット)をプリズム603に貼付することもできる。なおこの構造は、実施例1〜12の全てのプリズムに対して適用できる。
【実施例7】
【0043】
図2で試薬ポートに分注する際の流路の例を図7に示す。但し図はあくまでも例であり、これに限定されるものではない。測定基板はマッチング対象物であるプリズムとは反対側の面に試薬を保持または送液する機構を備えることができる。これは全ての実施例に対して適用可能である。図7(a)はプリズムがターンテーブル上に配置されている場合の図である。測定基板ホルダ701上に、マッチングオイル702がプリズム703に挟まれた状態で存在する。測定基板704での反応を対物レンズ705で検出するために、流路付測定基板ホルダカバー707を測定基板ホルダ701と接合する。このとき測定基板704と対物レンズ705との距離は、対物レンズ固有の作動距離(ワーキングディスタンス)の条件を満たすことが必要である。図2に示す分注チップ206を用いて、試薬注入排出ポート708へ試薬を注入することで、測定基板704へ試薬を送液して、反応を検出する。試薬の送液は流路を親水性にして毛細管現象を利用する方法,試薬注入排出ポート708の一方を陰圧にして吸引する方法,遠心力を用いて外周方向に送液する方法などがある。また図7(b)はプリズムがターンテーブル上に配置されている場合の図である。プリズム703が測定基板704の下に配置されていることから、マッチングオイル溜め容器706が設置されている。
【実施例8】
【0044】
図1〜図3では、ターンテーブル方式を用いたマッチングオイルの自動充填方法などについて開示した。図1〜図3よりマッチングオイルの自動充填は、ターンテーブル以外の方法を用いても実現できることは言うまでもない。つまりマッチングオイルを載せた測定基板をプリズムへ移動させる方法の一例として図1〜図3ではターンテーブル型を開示した。従ってターンテーブルではなく、測定基板を設置した台が左右に移動することでも、同様の機能を実現することができる。図8にプリズムが測定基板の上に設置される場合のプリズム型エバネッセント顕微鏡の基板設置台図を開示する。図8(a)は基板設置台上視図、図8(b)は基板設置台側面図であり、測定基板を検出する前の状態である。またプリズムは測定基板の上に設置されている。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801が回転して、基板オートローダアームが基板オートローダ802へアクセスする。また分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801が回転して、分注アームが分注チップ装着部803へアクセスし、試薬容器804で試薬を吸引し、所望の位置で試薬を吐出後に分注チップ廃棄部805で分注チップを廃棄する。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801の回転方向は、時計回り/反時計回りのどちらも可能とする。分注チップ806でマッチングオイル807を滴下した図が図8(b)である。XYZステージ付基板設置台808上に、測定基板ホルダ809が設置されている。この時テーブル押さえ810でXYZステージ付基板設置台808を上下から押さえることで、XYZステージ付基板設置台808を移動させたときの測定基板812の高さを一定にすることができる。テーブル押さえ810の位置や個数に制限は無く、XYZステージ付基板設置台808や測定基板812を押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム813と対物レンズ814の位置は固定されている。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801の回転とXYZステージ付基板設置台808の移動により、任意の位置に試薬を滴下できる。試薬Aポート816,試薬Bポート817への分注や、測定基板812へのマッチングオイル807を滴下できる。図では分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801が2つ配置されているが、任意の個数にすることができる。また分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801ではなく、任意の位置にアクセス可能な分注器や基板オートローダで代用することもできる。またレーザー818は、XYZステージ付基板設置台808の進行方向に平行に入射している。但し図4〜図6に示すように、XYZステージ付基板設置台808の進行方向に対して、垂直にレーザー818を入射する方がより望ましい。これはマッチングオイル807がプリズム813のレーザー照射位置に付着して、乱反射することで、検出できなくなるのを防ぐためである。
【0045】
図8(c)は基板設置台上視図、図8(d)は基板設置台側面図であり、測定基板を検出している状態を示す。またプリズムは測定基板の下に設置されている。測定基板812aを検出するまでの手順を示す。まず分注チップ806aから測定基板812a上へマッチングオイル807aを滴下する。マッチングオイルの量は5〜50μLが好ましいが、プリズム813のマッチングオイル807aが満たされる部分の面積,プリズム813と測定基板812aとの距離により決定される。従ってこの量に制約されるものではない。マッチングオイル807aの液高さが、プリズム813と測定基板812aとの間の距離よりも高くなる液量を分注することで、プリズム813とマッチングオイル807aが接触して、プリズム813と測定基板812aとの間にマッチングオイル807aを満たすことができる。マッチングオイル807aの液高さが、プリズム813と測定基板812aとの間の距離よりも低くなる液量では、プリズム813とマッチングオイル807aが接触しないため、プリズム813と測定基板812aとの間にマッチングオイル807aを満たすことができない。従って顕微観察ができない。次にXYZステージ付基板設置台808をプリズム813の方向に移動させる。この際にマッチングオイル807aはプリズム813と測定基板812aとの間に侵入する。XYZステージ付基板設置台808を移動させると、プリズム813とマッチングオイル807aは接触しているため、マッチングオイル807aは、その粘性によりXYZステージ付基板設置台808の移動方向に伸長した形状となる。従って分注チップ806aからマッチングオイル807aを滴下する位置は、測定基板812a上の移動方向前側かつXYZステージ付基板設置台808の移動時に対物レンズ814の焦点を通過する位置であることが望ましい。こうすることで結果的にプリズム813と測定基板812aの中央部にマッチングオイル807aを満たすことができる。またマッチングオイル807aがプリズム813に接触する近傍で、XYZステージ付基板設置台808の移動速度を下げることで、気泡が入りにくくなり、プリズム813と測定基板812aの中央部にマッチングオイル807aを満たすことができる。測定基板812aの高さずれなどにより、画像の位置ずれや焦点ずれを生じた場合には、XYZステージ付基板設置台808を移動させてずれを補正する。それでも焦点合わないときには、対物レンズ用Z軸ステージで対物レンズ814を上下させるか、プリズム813を上下させる。測定が終わった測定基板812aは、XYZステージ付基板設置台808を図8(a)の方向に引き戻す。
【0046】
その後分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸801を回転させて基板オートローダアームにより、測定基板ホルダ809aの取り外しと、新しい測定基板ホルダ809aの設置を行う。以上のプロセスを全自動で連続して行う。但し測定する基板数が増えるにつれて、XYZステージ付基板設置台808上にはマッチングオイル807が溜まっていく。これはプリズム813に残ったマッチングオイル807が、XYZステージ付基板設置台808の移動に伴い、測定基板ホルダ809以外のXYZステージ付基板設置台808上に塗布されるためである。これを防ぐ方法として、マッチングオイル拭き815をXYZステージ付基板設置台808に設置することができる。マッチングオイル拭き815の高さは、マッチングオイル807の付着しているプリズム813の下面部に到達できる高さとする。XYZステージ付基板設置台808の移動に伴い、マッチングオイル拭き815がマッチングオイル807の付着しているプリズム813の下面部を拭くことで、マッチングオイル807を拭き取ることができる。1回で拭き取ることができない場合には、マッチングオイル拭き807がプリズム813を通過後に、XYZステージ付基板設置台808を反対方向に移動させることで、複数回の拭き取りができるため、マッチングオイル807を完全に拭き取ることができる。測定基板ホルダ809の測定が終了するごとに、マッチングオイル807を拭き取ることで、常にマッチングオイル807の量を一定に保つことができる。
【0047】
図8の実施例では、測定基板ホルダ809とマッチングオイル拭き815の位置は間が空いているため、XYZステージ付基板設置台の移動により、測定基板ホルダ809とマッチングオイル拭き815との間のXYZステージ付基板設置台808の領域に、マッチングオイル807が塗布される。これを防ぐためには、マッチングオイル拭き815を測定基板ホルダ809の近く、もしくは測定基板ホルダ809上に配置することで、マッチングオイル819が、XYZステージ付基板設置台808へ塗布される領域を最小にできる。マッチングオイル拭き815としては、プリズム813を傷つけず、かつ残渣が付着しない材料であることが望ましく、フェルト,光学レンズ用ペーパーなどが挙げられる。マッチングオイル拭き815はXYZステージ付基板設置台808の任意の場所へ設置可能である。但しマッチングオイル807のXYZステージ付基板設置台808への塗布量が少ない場合や測定に影響を与えない場合には、必ずしもマッチングオイル拭き815は設置しなくてもよい。またマッチングオイル拭き815はXYZステージ付基板設置台808に設置されている必要は無く、テーブル押さえ810として、XYZステージ付基板設置台808とは独立に設置してもよい。対物レンズ814は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの使用も可能であるが、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。なお図8はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム813を図8から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。図8の方式では、図1〜図3のターンテーブル方式と比較して、移動時の位置精度が劣る可能性が高いこと、分注機構などが複数必要になる可能性がある。
【実施例9】
【0048】
図9にプリズムが測定基板の下に設置される場合のプリズム型エバネッセント顕微鏡の基板設置台図を開示する。図9(a)は基板設置台上視図、図9(b)は基板設置台側面図であり、測定基板を検出する前の状態である。またプリズムは測定基板の上に設置されている。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901が回転して、基板オートローダアームが基板オートローダ902へアクセスする。また分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901が回転して、分注アームが分注チップ装着部903へアクセスし、試薬容器904で試薬を吸引し、所望の位置で試薬を吐出後に分注チップ廃棄部905で分注チップを廃棄する。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901の回転方向は、時計回り/反時計回りのどちらも可能とする。分注チップ906でマッチングオイル907を滴下した図が図9(b)である。XYZステージ付基板設置台908上に、測定基板ホルダ909が設置されている。この時テーブル押さえ910でXYZステージ付基板設置台908を上下から押さえることで、XYZステージ付基板設置台908を移動させたときの測定基板912の高さを一定にすることができる。テーブル押さえ910の位置や個数に制限は無く、XYZステージ付基板設置台908や測定基板912を押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム913と対物レンズ914の位置は固定されている。対物レンズ914は空浸用対物レンズの場合を示したが、これに限定されるものではなく、水浸,油浸用対物レンズの使用も可能である。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901の回転とXYZステージ付基板設置台908の移動により、試薬Aポート916,試薬Bポート917への分注など任意の位置に試薬を滴下できる。図では分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901が2つ配置されているが、任意の個数にすることができる。また分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901ではなく、任意の位置にアクセス可能な分注器や基板オートローダで代用することもできる。またレーザー918は、XYZステージ付基板設置台908の進行方向に平行に入射している。但し図4〜図6に示すように、XYZステージ付基板設置台908の進行方向に対して、垂直にレーザー918を入射する方がより望ましい。これはマッチングオイル907がプリズム913のレーザー照射位置に付着して、乱反射することで、検出できなくなるのを防ぐためである。マッチングオイル907は送液チューブ919を用いて、マッチングオイルボトル920からポンプ921で吸引され、プリズム913と測定基板912との間に満たされる。プリズム913から垂れたマッチングオイル907は、マッチングオイル溜め922に回収される。プリズム913のレーザー918照射部分にマッチングオイル907が付着しないプリズム構造としては、図6に開示した方法があるが、これに限定されるものではない。図9(c)は基板設置台上視図、図9(d)は基板設置台側面図であり、測定基板を検出している状態を示す。またプリズムは測定基板の下に設置されている。測定が終わった測定基板912aは、XYZステージ付基板設置台908を図9(a)の方向に引き戻す。その後分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸901を回転させて基板オートローダアームにより、測定基板ホルダ909aの取り外しと、新しい測定基板ホルダ909aの設置を行う。
【0049】
以上のプロセスを全自動で連続して行う。但し測定する基板数が増えるにつれて、XYZステージ付基板設置台908上にはマッチングオイル907が溜まっていく。これはプリズム913に残ったマッチングオイル907が、XYZステージ付基板設置台908の移動に伴い、測定基板ホルダ909以外のXYZステージ付基板設置台908上に塗布されるためである。これを防ぐ方法として、マッチングオイル拭き915をXYZステージ付基板設置台908の下面に設置することができる。マッチングオイル拭き915の高さは、マッチングオイル807の付着しているプリズム913の下面部に到達できる高さとする。XYZステージ付基板設置台908の移動に伴い、マッチングオイル拭き915がマッチングオイル907の付着しているプリズム913の下面部を拭くことで、マッチングオイル907を拭き取ることができる。1回で拭き取ることができない場合には、マッチングオイル拭き915がプリズム913を通過後に、XYZステージ付基板設置台908を反対方向に移動させることで、複数回の拭き取りができるため、マッチングオイル907を完全に拭き取ることができる。測定基板ホルダ909の測定が終了するごとに、マッチングオイル907を拭き取ることで、常にマッチングオイル907の量を一定に保つことができる。図9の実施例では、測定基板ホルダ909とマッチングオイル拭き915の位置は間が空いているため、XYZステージ付基板設置台の移動により、測定基板ホルダ909とマッチングオイル拭き915との間のXYZステージ付基板設置台908の領域に、マッチングオイル907が塗布される。これを防ぐためには、マッチングオイル拭き915を測定基板ホルダ909の近く、もしくは測定基板ホルダ909上に配置することで、マッチングオイル907が、XYZステージ付基板設置台908へ塗布される領域を最小にできる。マッチングオイル拭き915としては、プリズム913を傷つけず、かつ残渣が付着しない材料であることが望ましく、フェルト,光学レンズ用ペーパーなどが挙げられる。マッチングオイル拭き915はXYZステージ付基板設置台908の任意の場所へ設置可能である。但しマッチングオイル907のXYZステージ付基板設置台908への塗布量が少ない場合や測定に影響を与えない場合には、必ずしもマッチングオイル拭き915は設置しなくてもよい。またマッチングオイル拭き915はXYZステージ付基板設置台908に設置されている必要は無く、テーブル押さえ910として、XYZステージ付基板設置台908とは独立に設置してもよい。対物レンズ914は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの使用も可能であるが、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。
【0050】
なお図9はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム913を図9から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。図9の方式では、図1〜図3のターンテーブル方式と比較して、移動時の位置精度が劣る可能性が高いこと、分注機構などが複数必要になる可能性がある。
【実施例10】
【0051】
図10は図1のターンテーブル上視図であり、図3と同じ方式でプリズムが測定基板の下に配置されている。但し図3とは異なり、マッチングオイルをターンテーブル下面へ表面張力で付着させることで、図2と同様の方式でマッチングオイルを満たしている。図はあくまでも例であるため、これに限定されるものではない。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1001が回転することにより、基板オートローダアームが基板オートローダ1002へアクセスできる。また分注アームは分注チップ装着部1003で分注チップを装着して、試薬容器1004で試薬吸引して、使用済みの分注チップを分注チップ廃棄部1005へ廃棄できる。なお分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1001は別々にすることで、基板設置と分注を並行処理することができる。上記機構を用いて、分注チップ1006でマッチングオイル1007を、ターンテーブル1008にセットされた測定基板ホルダ1009に分注する。分注チップ1006をターンテーブル1008に近接させることで、マッチングオイル1007がターンテーブル1008下面に表面張力で付着する。分注チップ1006を傾けておくことで、マッチングオイル1007が垂れた場合に分注チップ1006へのマッチングオイルの付着を防げる。またマッチングオイル1007が垂れることを想定して、マッチングオイル1007の下にマッチングオイル溜め容器を設置することもできる。マッチングオイル1007を分注後に、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を180°回転させる。この時ターンテーブル押さえ1011でターンテーブル1008を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を回転させたときの測定基板1012の高さを常に一定にすることができる。ターンテーブル押さえ1011の位置や個数に制限は無く、ターンテーブル1008や測定基板1012を押さえることができる。ターンテーブル1008の回転中にマッチングオイル1007が垂れる場合には、測定位置の直前でマッチングオイル1007を測定基板1012に付着させても良い。
【0052】
なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム1013と対物レンズ1014の位置は固定されている。XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を180°回転させる際に、マッチングオイル1007はプリズム1013と測定基板1012との間に侵入する。ターンテーブル1008を回転させると、プリズム1013とマッチングオイル1007は接触しているため、マッチングオイル1007は、その粘性によりターンテーブル1008の回転方向に伸長した形状となる。従って分注チップ1006からマッチングオイル1007を付着させる位置は、測定基板1012上の回転方向前側かつXYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を中心とした対物レンズ1014の焦点位置の同心円上であることが望ましい。こうすることで結果的にプリズム1013と測定基板1012の中央部にマッチングオイル1007を満たすことができる。またマッチングオイル1007がプリズム1013に接触してから、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010の回転速度を下げることで、気泡が入りにくくなり、プリズム1013と測定基板1012の中央部にマッチングオイル1007を満たすことができる。測定基板1012の高さずれなどにより、画像の位置ずれや焦点ずれを生じた場合には、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を固定しているXYZステージを移動させてずれを補正する。測定が終わった測定基板ホルダ1009bは、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を180°回転させることで、測定基板ホルダ1009aの位置へ移動させる。その後分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1001の基板オートローダアームが測定基板ホルダ1009aをターンテーブル1008から外して、未測定の測定基板ホルダ1009aを設置する。以上のプロセスを連続して全自動で行う。但し測定する基板数が増えるにつれて、ターンテーブル1008上にはマッチングオイル1007が溜まっていく。これはプリズム1013に残ったマッチングオイル1007が、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010の回転に伴い、測定基板ホルダ1009以外のターンテーブル1008上に塗布されるためである。これを防ぐ方法として、マッチングオイル拭き1015をターンテーブル1008に設置することができる。マッチングオイル拭き1015の高さは、マッチングオイル1007の付着しているプリズム1013に到達できる高さとする。XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010の回転に伴い、マッチングオイル拭き1015がマッチングオイル1007の付着しているプリズム1013を拭くことで、マッチングオイル1007を拭き取ることができる。1回で拭き取ることができない場合には、マッチングオイル拭き1015がプリズム1013を通過後に、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010を反対方向に回転させることで、複数回の拭き取りができるため、マッチングオイル1007を完全に拭き取ることができる。測定基板ホルダ1009の測定が終了するごとに、マッチングオイル1007を拭き取ることで、常にマッチングオイル1007の量を一定に保つことができる。図10の実施例では、測定基板ホルダ1009とマッチングオイル拭き1015の位置が90°ずれているため、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1010の回転により、測定基板ホルダ1009とマッチングオイル拭き1015との間のターンテーブル1008の領域に、マッチングオイル1007が塗布される。これを防ぐためには、マッチングオイル拭き1015を測定基板ホルダ1009の近く、もしくは測定基板ホルダ1009上に配置することで、マッチングオイル1007が、ターンテーブル1008へ塗布される領域を最小にできる。プリズム1013から垂れたマッチングオイル1007は、プリズム下にマッチングオイル溜め容器を配置しておくことで回収される。プリズム1013のレーザー照射部分にマッチングオイル1007が付着しないプリズム構造としては、図6に開示した方法があるが、これに限定されるものではない。またマッチングオイル拭き1015としては、プリズム1013を傷つけず、かつ残渣が付着しない材料であることが望ましく、フェルト,光学レンズ用ペーパーなどが挙げられる。マッチングオイル拭き1015はターンテーブル1008の任意の場所へ設置可能である。
【0053】
但しマッチングオイル1007のターンテーブル1008への塗布量が少ない場合や測定に影響を与えない場合には、必ずしもマッチングオイル拭き1015は設置しなくてもよい。またマッチングオイル拭き1015はターンテーブルに設置されている必要は無く、ターンテーブル押さえ1011として、ターンテーブル1008とは独立に設置してもよい。また測定基板ホルダ1009の任意の場所に試薬ポートとして、試薬Aポート1016,試薬Bポート1017を設けることができる。試薬ポートの数は任意に設定できる。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1001を回転させることで、図10に示すように分注アームまたは基板オートローダアームを測定基板ホルダ1009の中央部や、試薬Aポート1016,試薬Bポート1017上に移動して、試薬などを滴下することができる。対物レンズ1014は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの使用も可能であるが、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。なお図10はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム1013を図10から外した構成要素となる。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。
【実施例11】
【0054】
図1〜図3,図10で示したターンテーブルへ測定基板ホルダを装着する方法を図11に開示する。但し図はあくまでも例であり、これに限定されるものではない。図11(a)は、測定基板の設置図であり、上視図と側面図を示した。XYZステージ付きターンテーブル回転軸1101を回転中心として、ターンテーブル1102が設置されている。測定基板ホルダ1103には、測定基板1104が固定されている。測定基板ホルダ押さえ1105とターンテーブル1102との間に、測定基板ホルダ1103を挿入して、その位置を固定する。測定基板ホルダ1103は、図10などで説明した基板オートローダアームを用いて運搬と設置を行う。測定基板1104を拡大したものを、図11(b)に示す。測定基板1104の上にプリズム1106があり、下には対物レンズ1107がある。測定基板1104とプリズム1106との間には、マッチングオイル1108がある。マッチングオイル1108の充填方法は図2で開示されている。測定基板ホルダ1103のターンテーブル1102への設置方法を図11(a)の側面図を用いて説明する。まずターンテーブル1102の測定基板ホルダを挿入する部分には、切り込みを入れている。これは測定基板ホルダ1103を、基板オートローダアームで上下からしっかりと挟んだ状態で、ターンテーブル1102へ挿入して位置を固定するためである。ターンテーブル1102のA−O−A′面での断面図より、Aに最も近い部分は、測定基板ホルダ1103しか存在しない。従ってこの領域を基板オートローダアームで上下から挟みこむ。
【0055】
次にB−O′−B′面で、Bに最も近いターンテーブル1102上へ測定基板1104の一端をのせる。B−O′−B′面でBに最も近い測定基板ホルダ押さえ1105の位置は、Bに最も近いターンテーブル1102上の位置よりもB′側に存在するため、測定基板ホルダ1103の一端を、測定基板ホルダ押さえ1105の左(B側)にした状態で、測定基板ホルダ1103をターンテーブル1102へ下げていくことで、測定基板ホルダ1103がターンテーブル1102にぶつかる。その後測定基板ホルダ1103をXYZステージ付きターンテーブル回転軸1101の方向へ押し込んでいくことで、測定基板ホルダ押さえ1105とターンテーブル1102との間へ挿入される。測定基板ホルダ1103の一端が、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1101近辺の側壁へぶつかることで、測定基板ホルダ1103を常に同じ位置へ固定できる。測定基板ホルダ押さえ1105で測定基板ホルダ1103を押さえているため、上下左右に測定基板ホルダ1103の位置がずれることは無い。測定終了後には、逆の手順を行う。測定基板ホルダ1103を基板オートローダアームで上下から挟みこみ、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1101から手前に引くことで、測定基板ホルダ1103をターンテーブル1102から外すことができる。
【0056】
この方法は、図9のようにターンテーブルではなく、基板設置台が左右に移動する場合にも適用できることは言うまでも無い。またターンテーブル1102のA−O−A′面での断面図より、A−Oでは測定基板ホルダ1103が挿入されており、O−A′では測定基板ホルダ1103が挿入されていないことがわかる。これより測定基板ホルダ1103が挿入されていない場合には、ターンテーブル1102に空洞部分が存在することがわかる。図11(b)でわかるように、この領域は少なくともプリズム1106と対物レンズ1107が入る大きさでなければならない。
【0057】
更にターンテーブル1102が回転したときに、この領域の厚みは常に測定基板ホルダ1103と同じであることが望ましい。そうでない場合には、ターンテーブル1102が回転したときに、ターンテーブル1102の一部がプリズム1106または対物レンズ1107に接触する危険性があることや、段差部分にマッチングオイル1108が溜まる可能性があるためである。測定基板ホルダ1103を挿入したときに、プリズム1106と対物レンズ1107で挟まれる部分の高さが、B−O′−B′面と、C−O−C′面で同じにしているのは、この理由によるものである。なおターンテーブル1102に挿入できる測定基板ホルダ1103の枚数は、図11の2枚に限定されるものではない。ターンテーブル1102と測定基板ホルダ1103の大きさ、測定したい測定基板ホルダ1103の数によって決定されるため、任意の数の測定基板ホルダ1103を設置できるターンテーブル1102を設計することができる。
【実施例12】
【0058】
図1〜図11では、プリズム型エバネッセント顕微鏡を想定した使用方法を開示してきたが、これらはマッチングオイルなどを自動充填して、全自動で測定を行う方法に関するものであり、他の分析方法にも応用できることはいうまでもない。図12に表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)の装置構成図を開示する。図はあくまでも例であるため、これに限定されるものではない。SPRとは、厚み50nm程度の金属薄膜表面にプリズムを介してレーザー光を入射して、全反射角領域のある一定角度において特有の光の吸収(反射光の減衰)を検出する手法で、金表面の屈折率を求めることができる。これにより生体分子間の反応・結合量の測定や速度論的解析が、蛍光などの標識無しで、かつリアルタイムに行うことができる。現在免疫応答・シグナル伝達,タンパク質・核酸など様々な物質間の相互作用の研究に利用されている。
【0059】
図12では、レーザー1201から発振されたレーザービームは、λ/4波長板1202で円偏光となり、集光レンズ1203を通した後に、プリズム304へ垂直入射させる。プリズム用ガラスには極めて高い均質性で製造可能な光学ガラスが求められるため、合成石英または高透過率で高均質なBK7もしくはBSC7が一般的に用いられる。レーザービームは、測定基板1205bの屈折率境界平面、即ち測定基板1205bと溶液の界面に対して、入射角度約68°で入射することで、レーザービームを全反射させ、エバネッセント波を形成する。なお図12では測定基板1205a,1205bは測定基板ホルダ1206bに固定された状態でターンテーブル1207にセットされている。測定基板1205と測定基板ホルダ1206を高い平行度で固定することで、ターンテーブル1207に高い平行度でセットできる。それぞれの平行度は1°以下であることが望ましいが、これに限定されるものではない。測定基板1205a,1205bが大きければ、測定基板ホルダ1206を介さずに直接ターンテーブル1207上に設置することもできる。なおプリズム1204と測定基板1205bとの間を屈折率の近いマッチングオイル1212bで充填することで、レーザービームがプリズム1204と測定基板1205b境界で全反射することを防いでいる。レーザーの光路には測定基板ホルダ1206は無いため、プリズム1204と測定基板1205bとの間にはマッチングオイルしか存在しない。プリズム1204と測定基板1205bとの間の距離に制限はないが、距離が広がりすぎると、マッチングオイル1212bをプリズム1204と測定基板1205bとの間に保持できなくなる。距離が離れて少しでもプリズム1204と測定基板1205bとの間に空気層が入ると、その部分でレーザービームは全反射してしまう。従って気泡が入らない構造であることが必須である。XYZステージ付きターンテーブル回転軸1208を回転させることで、ターンテーブル1207を回転できる。XYZステージ付きターンテーブル回転軸1208はXYZステージに固定されており、回転中心を任意の位置へ移動することができる。更にターンテーブル押さえ1209a,1209bを用いてターンテーブル1207を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1208を回転させたときの測定基板1205bの高さを常に一定することができる。
【0060】
ターンテーブル押さえ1209a,1209bの位置や個数に制限は無く、ターンテーブル1207や測定基板1205a,1205bを押さえることができる。なおプリズム1204の位置は固定されている。SPR検出器1210で検出した反射光信号は、制御用PC1214で処理され、結果がモニタ1215に表示される。これにより全反射角領域のある一定角度において特有の光の吸収(反射光の減衰)を検出して、金表面の屈折率を求める。分注チップ1211からマッチングオイル1212を、測定基板1205へ付着させる。これは図10で開示したのと同様の方法である。またプリズム1204は、図4で開示したように、マッチングオイル1212との接液部がテーパ構造になっている。マッチングオイル1212aの液高さが、プリズム1204と測定基板1205bとの間の距離よりも高くなる液量を分注することで、プリズム1204とマッチングオイル1212aが接触して、プリズム1204と測定基板1205bとの間にマッチングオイル1212aを満たすことができる。マッチングオイル1212aの液高さが、プリズム1204と測定基板1205bとの間の距離よりも低くなる液量では、プリズム1204とマッチングオイル1212aが接触しないため、プリズム1204と測定基板1205bとの間にマッチングオイル1212aを満たすことができない。次にXYZステージ付きターンテーブル回転軸1208を180°回転させることで、ターンテーブル1207を180°回転させる。この際にマッチングオイル1212aはプリズム1204と測定基板1205bとの間に入り込む。測定が終わった測定基板1205bは、ターンテーブル回転軸1208を180°回転させることで、ターンテーブル1207を180°回転させる。その後基板オートローダ1219を用いて、測定基板ホルダ1206aの取り外しと、新しい測定基板ホルダ1206aの設置を行う。以上のプロセスを全自動で連続して行う。必要に応じて、試薬容器1216から分注ユニット1217で吸引した試薬を、送液チューブ1218を通して測定基板1205aへ試薬を送液することもできる。また図2に示すマッチングオイル拭き215に相当するものをターンテーブル1207の下面に設置することもできる。図6で開示したように、マッチングオイル溜め容器1213で、プリズム1204からこぼれたマッチングオイルを回収することもできる。実施例1〜12で開示した光学素子などの配置図はあくまでも一例であり、これらに限定されるものではない。例えばλ/4波長板でレーザーを円偏光にしているが、測定のアプリケーションによっては、直線偏光させる必要がある。その場合には、λ/4波長板の替わりにλ/2波長板を挿入することができる。図12では表面プラズモン共鳴について開示しているが、分光プリズムを設置した蛍光体分離による物質同定など多くのアプリケーションに適用可能することができる。
【実施例13】
【0061】
図1,図3に示すようにターンテーブルの上または下にプリズムや対物レンズを配置するのではなく、ターンテーブルを垂直にして、プリズムや対物レンズをその横に配置することもできる。もちろんターンテーブルの傾斜配置も可能であることはいうまでもない。ターンテーブルを垂直にした場合のプリズム型エバネッセント顕微鏡の装置構成図を図13に示す。なおターンテーブルは割愛して記載している。測定基板ホルダ1301とプリズム1303との間にマッチングオイル1302が保持されている。レーザー1304は測定基板ホルダ1301の進行方向と垂直の面で、測定基板1305へ照射され、対物レンズ1306を通して検出される。マッチングオイル1302で、プリズム1303から垂れたものは、マッチングオイル溜め容器1307で回収される。送液チューブ1308を通して、マッチングオイルボトル1309からポンプ1310を用いて、マッチングオイル1302をプリズム1303と測定基板1305との間に満たす。但しターンテーブルが垂直に配置されているため、プリズム1303からマッチングオイル1302は垂れやすいため、1302b,1302cを通って1302dとしてマッチングオイル溜め容器1307へ回収される。プリズム1303と測定基板1305との間に、マッチングオイル1302が表面張力で保持されることが望ましいが、そうでない場合にはマッチングオイル溜めへ回収された量を、送液チューブ1308を通して、マッチングオイルボトル1309からポンプ1310を用いて、マッチングオイル1302をプリズム1303と測定基板1305との間に満たす必要がある。図6に示すプリズム構造により、マッチングオイル1302がプリズム1303のレーザー入射部に付着しないようにすることはいうまでもない。
【実施例14】
【0062】
図14はマッチングオイル溜め付きターンテーブル上視図である。但し図2とは異なり、マッチングオイルがターンテーブルの同心円状に満たされている構造を示している。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1401が回転することにより、基板オートローダアームが基板オートローダ1402へアクセスできる。なお分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1401を中心とした点線は、分注アームまたは基板オートローダアームが回転する軌道を示している。また分注アームは分注チップ装着部1403で分注チップを装着して、試薬容器1404で試薬吸引して、使用済みの分注チップを分注チップ廃棄部1405へ廃棄できる。なお分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1401は、それぞれ別々に配置することで、基板設置と分注を並行処理することができる。上記機構を用いて、分注チップ1406でマッチングオイル1407を、ターンテーブル1408にセットされた測定基板ホルダ1409に分注する。この時、多量のマッチングオイル1407を分注して、ターンテーブル1408の同心円状に満たすことにより、マッチングオイル1407の液面が、プリズム1413の下面よりも高くなるため、常に気泡が入らない状態でマッチングオイル1407をプリズム1413と測定基板1412との間に満たすことができる。埃がマッチングオイル1407に混入した場合、レーザーを乱反射する可能性があるため、マッチングオイルへの埃の混入を防ぐための埃よけカバー1421を設置することが好ましい(上視図では省略)。なお埃よけカバー1421は図に開示した以外にも様々な形状を取ることができるのは言うまでもない。
【0063】
マッチングオイル1407を分注後にXYZステージ付きターンテーブル回転軸1410を180°回転させる。この時ターンテーブル押さえ1411でターンテーブル1408を上下から押さえることで、XYZステージ付きターンテーブル回転軸1410を回転させたときの測定基板1412の高さを常に一定にすることができる。ターンテーブル押さえ1411の位置や個数に制限は無く、ターンテーブル1408や測定基板1412を押さえることができる。なお顕微鏡測定における焦点合わせの微調整を除いて、プリズム1413と対物レンズ1414の位置は固定されている。また測定基板ホルダ1409の任意の場所に試薬ポートとして、試薬Aポート1415,試薬Bポート1416を設けることができる。試薬ポートの数は任意に設定できる。分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸1401を回転させることで、図14に示すように分注アームまたは基板オートローダアームを測定基板ホルダ1409の中央部や、試薬Aポート1415,試薬Bポート1416上に移動して、試薬などを滴下することができる。対物レンズ1414は空浸,水浸,油浸レンズが知られているが、空浸レンズを用いるのが好ましい。もちろん水浸,油浸レンズの使用も可能であるが、気泡の混入と、液体(特に水)の蒸発が起こらない機構が必要となる。その例として、送液チューブ1417を通して、水1418をポンプ1419で対物レンズ1414へ送液する方法が考えられるが、これに限定されるものではない。また1418はマッチングオイルなど他の液体にすることができる。なお図14はプリズム型エバネッセント顕微鏡を示しているが、1分子検出可能な対物型エバネッセント顕微鏡の場合は、プリズム1413を図14から外した構成要素となる。この場合マッチングオイル1407は必要ない。レーザーは対物レンズの辺縁部から入射する。従ってプリズム型エバネッセント顕微鏡に限らず、対物型エバネッセント顕微鏡などの顕微鏡一般にも適用できる。
【0064】
更にターンテーブル1408を部分的に温度調節することで、測定基板ホルダ1409aと1409bを異なる温度に設定できる。温調方式としては、空気温調と局所温調がある。空気温調は加温または冷却装置と温調用の箱を用いて、保温したい箱の空気温度を調節する方法である。温度安定性は高いが、温度到達までの時間が長いこと、60℃以上の高温は難しいといった課題がある。全反射顕微鏡で空気温調用の箱を用いる場合、スライドガラスを保持する顕微鏡ステージ,プリズム,対物レンズ全てを覆う可能性が高いため、それらの熱膨張の影響が懸念される。特に対物レンズに関しては、高温での使用はメーカーの仕様範囲外であるため、極力室温に保つことが望ましい。また局所温調は加温または冷却装置を温度制御したい部分に直接接触させることで、温度調節する方法である。従って空気温調で懸念されるような対物レンズの熱膨張は発生しない。局所温調は空気温調と比較して温度安定性に劣るものの、温度到達までの時間が短いこと、60℃以上の高温も制御可能という特徴を持つ。例えば酵素反応と洗浄で温度を変える必要がある場合や、高耐熱性酵素を使用する場合には、空気温調よりも局所温調方式が適している。従って温度調節の方法としては、ターンテーブル1408に対してペルチエ,ヒーターを接触させる方法や、ターンテーブル1408に電熱線を埋め込んでおく方法,赤外線レーザーなどを用いる方法などが考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
ターンテーブル押さえ1411にヒーターの役割を持たせても良い。これによりプリズム1413と対物レンズ1414で挟まれた測定基板1412を検出している間に、もう一方の測定基板1412に、試薬を送液して異なる温度で一定時間反応させた後に、検出を行うバイオアッセイが可能となる。例えばPCRでは一般的に3段階の温度サイクル(例.熱変性:95℃,ハイブリダイゼーション:58℃,伸長:72℃)を経ることで、核酸を2倍にすることができる。従ってターンテーブル1408に測定基板ホルダ1409を3枚設置して、3段階の温度設定にすることで、ターンテーブル1408が1回転するたびに核酸が2倍になるため、その履歴を検出することで初期のDNA量を計測する定量PCRが実現できる。またその他にも、実施例に示したようにDNAとプライマーの2本鎖に対して1塩基ずつ蛍光標識塩基を伸長させてDNAシーケンスを行うなど、多くのアプリケーションがある。本発明のアプリケーションはこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
101,301,404,504,604,818,918,1201,1304 レーザー
102,302,1202 λ/4波長板
103,303,1203 集光レンズ
104,213,304,503,603,703,813,913,1013,1106,1204,1303,1413 プリズム
105,212,305,405,505,605,704,812,1012,1104,1305,1412 測定基板
106,209,306,401,501,601,701,809,909,1009,1103,1206,1301,1409 測定基板ホルダ
107,208,307,1008,1102,1207,1408 ターンテーブル
108,210,308,1010,1208,1410 XYZステージ付きターンテーブル回転軸
109,211,309,1011,1209,1411 ターンテーブル押さえ
110,214,310,406,506,606,705,814,914,1014,1107,1306,1414 対物レンズ
111,311 対物レンズ用Z軸ステージ
112,312 フィルタユニット
113,313 結像レンズ
114,314 CCD
115,315,1214 制御用PC
116,316,1215 モニタ
117,204,317,804,904,1004,1216,1404 試薬容器
118,318,1217 分注ユニット
119,218,319,322,608,919,1218,1308,1417 送液チューブ
120,207,323,402,502,602,702,807,907,1007,1108,1212,1302,1407 マッチングオイル
121,202,321,802,902,1002,1219,1402 基板オートローダ
201,801,901,1001,1401 分注アーム兼基板オートローダアーム回転軸
203,803,903,1003,1403 分注チップ装着部
205,805,905,1005,1405 分注チップ廃棄部
206,806,906,1006,1211,1406 分注チップ
215,815,915,1015 マッチングオイル拭き
216,816,916,1016,1415 試薬Aポート
217,817,917,1017,1416 試薬Bポート
219,320,1418 水
220,324,610,921,1310,1419 ポンプ
325,607,706,922,1213,1307 マッチングオイル溜め容器
403 テーパ付きプリズム
407 R付きプリズム
609,920,1309 マッチングオイルボトル
611 レーザー入射・反射位置
612 くぼみ
707 流路付測定基板ホルダカバー
708 試薬注入排出ポート
808,908 XYZステージ付基板設置台
810,910 テーブル押さえ
1105 測定基板ホルダ押さえ
1205 (金薄膜付)測定基板
1210 SPR検出器
1420 埃よけカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッチング対象物と、溶液を分注する機構と、測定対象基板と、前記溶液を前記基板と前記マッチング対象物との間に移動させる移動機構を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動機構が、回転軸と、前記基板を載置する機構を備えた台であり、前記マッチング対象物が近接していることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動機構が、平行移動する機構と、前記基板を載置する機構を備えた台であり、前記マッチング対象物が近接していることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板を載置する機構へ該基板を載置する機構として、該基板を保持する機構と、該基板を移動する機構と、該基板を離す機構を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の該基板を移動させる機構が、回転軸,平行移動,上下移動、またはそれらの組合せからなる機構であることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の移動機構を、上面,下面、または上下面から押さえる押さえ機構であり、該移動機構の移動時に該押さえ機構の位置は固定されていることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の移動機構が、前記溶液を拭き取る材料を載置する機構を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の材料が、フェルト,光学レンズ用ペーパー、またはそれに類する吸湿性の高い材料であることを特徴とする測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の溶液が、マッチングオイル,イマージョンオイル,グリセロール,水、またはそれに類する溶液であることを特徴とする測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の分注機構が、前記移動機構の上面に前記溶液を分注する構造であることを特徴とする測定装置。
【請求項11】
請求項1に記載の分注機構が、前記移動機構の下面に前記溶液を分注する構造であることを特徴とする測定装置。
【請求項12】
請求項1に記載の移動機構が、前記基板が前記マッチング対象物へ移動する方向に対して測定位置前方となる位置で停止して、前記分注機構が前記溶液を分注することを特徴とする測定装置。
【請求項13】
請求項1記載のマッチング対象物が、前記基板を計測するためのプリズム,対物レンズ、または該基板を測定するための部品のいずれかであることを特徴とする測定装置。
【請求項14】
請求項13に記載のマッチング対象物が、テーパ,曲面、またはそれに類する面で前記溶液と接液する構造であることを特徴とする測定装置。
【請求項15】
請求項13に記載のマッチング対象物が、前記溶液と接液する面で鈍角である構造を持つことを特徴とする測定装置。
【請求項16】
請求項13に記載のマッチング対象物が、立方体,直方体,円柱またはそれに類するくぼみ構造を持ち、該くぼみ部分に励起光を入射させることを特徴とする測定装置。
【請求項17】
請求項1に記載の移動機構が、マッチング対象物に前記溶液が接触する近傍で、その移動速度を遅くすることを特徴とする測定装置。
【請求項18】
請求項1に記載のマッチング対象物近傍における前記移動機構の移動方向に対して、それとは異なる角度から励起光を入射させる機構を持つことを特徴とする測定装置。
【請求項19】
請求項18に記載の角度が90°である機構を持つことを特徴とする測定装置。
【請求項20】
請求項1に記載の測定対象基板が、プリズム型全反射顕微鏡,対物型全反射顕微鏡,1分子蛍光測定,表面プラズモン共鳴,ラマン測定,分光分析のいずれかの方法により計測されることを特徴とする測定装置。
【請求項21】
請求項2または3に記載の台が、複数の加温冷却構造を持つことを特徴とする測定装置。
【請求項22】
請求項1記載のマッチング対象物が、その下に前記溶液を回収する機構を持つことを特徴とする測定装置。
【請求項23】
請求項1記載の測定対象基板が、前記マッチング対象物とは反対側の面に試薬を保持または送液する機構を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項24】
請求項1記載の移動機構が、前記溶液を保持する機構を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項25】
請求項24記載の溶液を保持する機構が、その上部に溶液保護用のカバーを備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項26】
マッチング対象物と、溶液を分注する機構と、測定対象基板と、前記溶液を前記基板と前記マッチング対象物との間に移動させる移動機構を備えており、前記移動機構は、回転軸と、前記基板を載置する機構を備えた台で、前記マッチング対象物が近接しており、前記基板を載置する機構へ前記基板を載置する機構として、前記基板を保持する機構と、前記基板を回転軸,平行移動,上下移動、またはそれらの組合せからなる移動する機構と、前記基板を離す機構を備えており、前記溶液が、マッチングオイル,イマージョンオイル,グリセロール,水、またはそれに類する溶液のいずれかであり、前記分注機構が、前記移動機構の上面または下面に前記溶液を分注する構造であり、前記移動機構が、前記基板が前記マッチング対象物へ移動する方向に対して測定位置前方となる位置で停止して、前記分注機構が前記溶液を分注する構造であり、前記マッチング対象物が、前記基板を計測するための励起光入射用プリズム,対物レンズ、または該基板を測定するための部品のいずれかであり、前記マッチング対象物が、テーパ,曲面、またはそれに類する面で前記溶液と接液する構造であり、前記マッチング対象物が、立方体,直方体,円柱またはそれに類するくぼみ構造を持ち、前記くぼみ部分に励起光を入射させることができ、前記マッチング対象物近傍における前記移動機構の移動方向に対して、それとは異なる角度から励起光を入射させる機構を持ち、前記移動機構が、複数の加温冷却構造を持ち、前記マッチング対象物が、その下に前記溶液を回収する機構を持ち、前記測定対象基板が、プリズム型全反射顕微鏡,対物型全反射顕微鏡,1分子蛍光測定,表面プラズモン共鳴,ラマン測定,分光分析のいずれかの方法により計測されることを特徴とする測定装置。
【請求項27】
測定対象基板上で塩基伸長反応させ、エバネッセント場を用いて蛍光観察を行う全反射蛍光測定装置であって、
測定対象基板へ励起光を照射する照射機構と、
照射機構からの励起光を測定対象基板上で全反射させるためのプリズムと、
塩基伸長反応で取り込まれた蛍光色素を観察する観察機構と、
測定対象基板と構造体との間に充填するマッチングオイルを分注するための分注機構とを有し、
測定対象基板とプリズムとの間に、マッチングオイルを移動させるための移動機構を備えていることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項28】
請求項27に記載の全反射蛍光測定装置であって、
移動機構は、軸を中心に回転する回転台を備え、
測定対象基板はこの回転台に固定され、回転台の回転により測定対象基板はプリズムに対向する位置に移動することを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項29】
請求項28に記載の全反射蛍光測定装置であって、
回転台の回転速度は可変であり、
マッチングオイルがプリズムに接触したときまたは接触する直前に、回転台の速度を下げることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項30】
請求項28に記載の全反射蛍光測定装置であって、
回転台上に、マッチングオイルを拭き取る、拭き取り機構を備え、回転台が回転して拭き取り機構がマッチングオイルを拭き取ることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項31】
請求項28に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムの測定対象基板側端部の少なくとも一部が回転台の面に対して鋭角に形成されていることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項32】
請求項31に記載の全反射蛍光測定装置であって、
鋭角に形成されている箇所は、回転台の回転によって最初にプリズムがマッチングオイルに接液する箇所であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項33】
請求項28に記載の全反射蛍光測定装置であって、
回転台は、測定対象基板を固定する基板固定ホルダを備え、基板固定ホルダに試薬送液流路を設けたことを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項34】
請求項28に記載の全反射蛍光測定装置であって、
回転台は、複数の測定対象基板保持部を備え、それぞれの測定対象基板保持部は独立して温度制御可能であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項35】
請求項27に記載の全反射蛍光測定装置であって、
移動機構は、測定対象基板を固定して載置する基台であり、この基台はプリズムに向かっていく方向およびプリズムから離れる方向に直線移動することを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項36】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
マッチングオイルがプリズムに接触したときまたは接触する直前に、基台の速度を下げることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項37】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
基台上に、マッチングオイルを拭き取る機構を備えていることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項38】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムの測定対象基板側端部の少なくとも一部が基台の面に対して鋭角に形成されていることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項39】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
鋭角に形成されている箇所は、基台の直線移動によって最初にプリズムがマッチングオイルに接液する箇所であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項40】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
基台は測定対象基板を固定する基板固定ホルダを備え、基板固定ホルダに試薬送液流路を設けたことを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項41】
請求項35に記載の全反射蛍光測定装置であって、
基台は、複数の測定対象基板保持部を備え、それぞれの測定対象基板保持部は独立して温度制御可能であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項42】
請求項27に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムの平面形状が、中心から外側に近づくほど幅が広くなる形状であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項43】
請求項27に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムの平面形状が、蝶ネクタイの形状であることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項44】
請求項42または43に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムの幅の狭い箇所に、最初にプリズムがマッチング溶液に接液することを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項45】
請求項27に記載の全反射蛍光測定装置であって、
プリズムのレーザー照射位置にくぼみを設けることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。
【請求項46】
測定対象基板上で塩基伸長反応させ、エバネッセント場を用いて蛍光観察を行う全反射蛍光測定装置であって、
測定対象基板へ励起光を照射する照射機構と、
照射機構からの励起光を測定対象基板上で全反射させるためのプリズムと、
塩基伸長反応で取り込まれた蛍光色素を観察する観察機構と、
測定対象基板と観察機構の対物レンズとの間に充填する水を分注するための分注機構とを有し、
プリズムが測定対象基板の下方に配置され、
測定対象基板と対物レンズとの間に、水を移動させるための移動機構を備えていることを特徴とする、全反射蛍光測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−112410(P2011−112410A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266920(P2009−266920)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】