説明

測定装置及び測定方法

【課題】体液中の被検物質に関する数値情報の測定に際して、温熱環境の変化が起こる状況下においても信頼性及び再現性の高い測定結果を得ることのできる技術を提供する。
【解決手段】体液中の被検物質に関する数値情報を測定する測定装置であって、被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて使用され、被検物質に関する数値情報に相関する電気信号を生成する電気化学センサと、被検物質が検出時におけるセンサ部の近傍温度である検出環境温度を前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節する温度制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液中の被検物質に関する数値情報を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者の腹部や腕部などに植え込んだ電気化学センサを利用して、体液中の被検物質に関する数値情報、例えば被検者の間質液中のグルコース濃度を連続的に測定する技術が知られている。電気化学センサは、電気化学反応を利用して微量な電流を検出可能なセンサであり、酸化還元反応を生じる微量な化学物質の検出に適している。
【0003】
グルコース濃度を測定するための電気化学センサとして、皮下に植え込んで配置されるセンサ部に酵素を固定化し、その酵素反応を利用して被検物質を検出するバイオセンサを用いることが多い。この種のバイオセンサは、通常、作用極及び対極を有しており、作用極には酵素(例えば、グルコース酸化酵素)が固定化されている。グルコース濃度は、作用極と対極との間に、定電圧(例えば、0.3〜0.6V程度)を連続的に印加する一方で、そのときに得られる応答電流に基づいて測定することができる。
【0004】
グルコース酸化酵素は、酸素の存在下、グルコースと選択的に反応してグルコン酸を生成する。その際に、酸素は還元される一方でグルコースの量に比例した過酸化水素が生成される。過酸化水素は、電気化学的に容易に酸化できるため、一対の電極を用いて測定することができる。すなわち、応答電流値は、このように酵素の酵素反応により発生した過酸化水素を、電気化学的に酸化することにより得ることができる。そして、グルコース濃度の演算は、連続的に得られる応答電流値から定期的に電流をサンプリングし、サンプリング電流に基づいて行うことができる。
【0005】
しかしながら、酵素は反応温度によって酵素活性が変動する。これに対して、被検者の生活環境(例えば、外気温)や、生活イベント(例えば入浴、運動)など、被検者を取り巻く温熱環境の変化によって、皮下の温度は大きく変動する。そのため、皮下植え込み式の電気化学センサによりグルコース濃度を比較的長期に亘って継続的に測定する場合、その測定結果に、温熱環境の変化に伴う影響が特に及び易くなる。
【0006】
そのため、皮下植え込み式の電気化学センサを使用してグルコース濃度を測定する場合、反応温度としてセンサ部近傍の温度を測定し、その測定温度に応じて演算値の補正を行う技術も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような温度補正は、予め経験によって得られた温度依存性を示す温度補正データを用いて行なわれるのが一般である。この温度補正データは、例えば常温(例として、25℃程度)を基準とし、常温に対する環境温度の温度差に基づいて補正量や補正係数を決定するものであり、この補正量に基づいて被検者を取り巻く温熱環境の変化による影響をキャンセルしようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6560471号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術のように、電気化学センサから得られた測定値を、例えば
温度補正式などを用いて補正する場合、その補正式は非常に複雑になることが多く、測定時における温熱環境の変動に伴う影響を精度良くキャンセルすることは困難を伴う。そのため、従来では、被検物質の測定結果の信頼性及び再現性を充分に高くすることが難しいという実情があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、体液中の被検物質に関する数値情報の測定に際して、温熱環境の変化が起こる状況下においても信頼性及び再現性の高い測定結果を得ることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、以下の手段を採用する。本発明に係る測定装置は、体液中の被検物質に関する数値情報を測定する測定装置であって、前記被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて使用され、該被検物質に関する数値情報に相関する電気信号を生成する電気化学センサと、前記センサ部の近傍温度である検出環境温度に相関する温度(この温度には、「検出環境温度」そのものも含まれる)を測定する温度センサ及び前記検出環境温度を調節する温度調節素子を有し、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記温度調節素子の作動状況を制御することにより、前記検出環境温度を前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節する温度制御部と、を備える。
【0011】
上述のとおり、本発明に係る電気化学センサは、被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて配置される。このセンサ部は、例えば基材の一部に形成されており、被検物質と酵素反応を起こす酵素等の生体材料が保持されていても良い。電気化学センサは、センサ部が皮下に配置される態様で使用されれば良いのであって、基材を含めて電気化学センサ全体が皮下に配置される必要はないのは勿論である。従って、例えば基材の先端側にセンサ部が形成されている場合、基材の基端側は被検者の皮膚表面に露出して配置されても良い。
【0012】
また、体液中の被検物質とは、例えばグルコース、乳酸などが例示できる。そして、被検物質に関する数値情報とは、被検物質の濃度、量などのように被検物質を定量的に評価するための数値情報のほか、ある被検物質が検出対象領域内に存在するかどうかや、あるレベルを超えているかどうか等のように、被検物質を定性的に評価するための数値情報を包括する概念である。
【0013】
本発明によれば、被検物質が検出される際に、センサ部の近傍温度である検出環境温度が、目標設定温度となるように温度制御部によって調節される。この目標設定温度は、センサ部による被検物質の検出時においての検出環境温度の目標温度としての役割を有しており、検出環境温度がこの温度近傍に維持された状態で被検物質に関する測定を行う限り、外部環境温度などのように温熱環境が変動してもその影響が測定結果に及ばないと考えられる温度である。目標設定温度は、例えば常温の範囲内で予め設定しておくことができる。なお、電気化学センサにおける使用形態の一例として一定期間毎に繰り返し継続的に被検物質を測定する場合、被検物質の測定期間と測定待機期間が交互に現れることで測定サイクルが形成される。本発明では、少なくとも被検物質の測定期間においての検出環境温度を目標設定温度に制御すれば良い。すなわち、被検物質の測定待機期間における検出環境温度については、上記目標設定温度に一致させても良いし、させなくても良い。
【0014】
本発明によれば、温熱環境の変化のある状況下においても、体液中の被検物質に関する数値情報の測定に際して、検出環境温度を目標設定温度と等しい温度、或いは目標設定温度に充分に近しい温度に維持することができる。つまり、検出環境温度を目標設定温度と同等な温度に維持させた状態で、被検物質の検出を行うことができる。そのため、例えば被検者を取り巻く温熱環境が変化しても、その影響が被検物質の測定結果に及ぶことを抑
制できる。更には、本発明によれば、電気化学センサが生成した被検物質に関する数値情報に相関する電気信号(例えば、センサ部の電極間を流れる応答電流値など)を、測定時における温熱環境に応じて温度補正処理を施す必要がない。従って、温熱環境の変化のある状況下においても、体液中の被検物質に関する数値情報の測定結果について、信頼性及び再現性を好適に向上させることができる。
【0015】
本発明における測定装置は、被検者に装着されることができる。また、この温度調節素子は、ペルチェ素子(Peltier device)であっても良い。ペルチェ素子とは、熱電変換素子(材料)の一種であり、2種類の導体、或いは半導体を接合して形成された閉回路に流す電流の極性を逆転させると、発熱部と吸熱部との関係が反転する。温度センサが測定した温度の測定結果に応じて、温度調節素子の作動状況を制御することによって、検出環境温度を精度良く目標設定温度に維持することができる。
【0016】
本発明に係る測定装置は、前記電気化学センサを制御するセンサ制御部を更に備えることができる。その場合、前記温度センサと前記温度調節素子と前記温度制御部のそれぞれは、前記センサ制御部を収容する筐体または前記電気化学センサに配置されても良い。また、センサ制御部は、更に、電気化学センサが生成した電気信号に基づいて被検物質に関する数値情報を演算するようにしても良い。
【0017】
また、測定装置は、前記センサ制御部による演算結果を取得するとともに該演算結果を表示するための結果表示部を更に備えることができる。その場合、前記温度センサと前記温度調節素子と前記温度制御部のそれぞれは、前記センサ制御部を収容する筐体、前記電気化学センサ、及び前記結果表示部が設けられる筐体、の少なくとも何れかに配置されても良い。また、体液中の被検物質は間質液中または血液中のグルコースであり、測定装置はグルコースの濃度を測定することができる。
【0018】
また、前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節しても良い。
【0019】
また、前記温度制御部は、前記電気化学センサを用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。
【0020】
また、前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記第一の数値情報及び第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更するようにしても良い。
【0021】
また、前記温度制御部は、前記第一の数値情報及び第二の数値情報に関して前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得しても良い。そして、前記温度制御部は、前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。
【0022】
また、前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更しても良い。
【0023】
また、本発明は、被検物質に関する数値情報を測定する測定システム、該被検物質に関する数値情報を測定する測定方法、プログラム、及びそのプログラムを記録する記録媒体として捉えることもできる。
【0024】
ここで、本発明に係る測定方法は、体液中の被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて配置されるセンサ部を有する電気化学センサを備えた測定装置が被検物質に関する数値情報を測定する測定方法であって、前記センサ部の近傍温度である検出環境温度が前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節される。
【0025】
そして、本発明における測定方法は、前記被検物質の測定時において前記センサ部の近傍温度である検出環境温度に相関する温度を測定する温度センサの測定結果を取得する温度取得ステップと、前記温度取得ステップにおいて取得した取得温度と目標設定温度とを比較し、該取得温度と目標設定温度との温度差が規定範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて前記温度差が前記規定範囲を超えていると判定した場合、前記検出環境温度が前記目標設定温度に近づくように該検出環境温度を調節するための温度調節素子の作動状況を制御する制御ステップと、を含んで、前記被検物質の検出時における前記検出環境温度の調節が行われ、前記判定ステップにおいて前記取得温度と前記目標設定温度との温度差が前記規定範囲内であると判定された場合に前記電気化学センサが生成した電気信号に基づいて前記被検物質に関する数値情報を演算する演算ステップを、更に有しても良い。また、本発明に係る測定方法は、前記演算ステップにおける演算結果を結果表示部に表示する結果表示ステップを、更に有することができる。
【0026】
また、本発明に係る測定方法は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節しても良い。
【0027】
また、本発明に係る測定方法は、前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。
【0028】
また、本発明に係る測定方法は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記第一の数値情報及び第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更しても良い。
【0029】
また、本発明に係る測定方法は、前記第一の数値情報及び第二の数値情報に関して前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得しても良い。そして、前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。また、本発明に係る測定方法は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度
を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合に、前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更しても良い。
【0030】
また、本発明に係る測定システムは、体液中の被検物質に関する数値情報を測定する測定システムであって、前記被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて使用され、該被検物質に関する数値情報に相関する電気信号を生成する電気化学センサと、前記電気化学センサを制御するとともに該電気化学センサが生成した電気信号に基づいて前記被検物質に関する数値情報を演算するためのセンサ制御部と、前記センサ部の近傍温度である検出環境温度を前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節する温度制御部と、を有する測定装置と、前記センサ制御部による演算結果を取得するとともに該演算結果を表示するための結果表示装置と、を含むことができる。
【0031】
測定システムにおいて、測定装置は被検者に装着されることができる。また、測定システムは、前記検出環境温度に相関する温度を測定する温度センサと、前記検出環境温度を調節する温度調節素子と、を更に備えることができる。そして、前記温度制御部は、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記温度調節素子の作動状況を制御することができる。
【0032】
また、前記温度センサと前記温度調節素子と前記温度制御部のそれぞれは、前記センサ制御部を収容する筐体または前記電気化学センサに配置されても良い。もっとも、前記温度センサと前記温度調節素子と前記温度制御部のそれぞれは、前記センサ制御部を収容する筐体、前記電気化学センサ、及び前記結果表示装置が設けられる筐体、の少なくとも何れかに配置されても良い。
【0033】
また、測定システムにおいて、前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節しても良い。
【0034】
また、測定システムにおける前記温度制御部は、前記センサ制御部が演算した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。
【0035】
また、測定システムにおける前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記第一の数値情報及び第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更するようにしても良い。
【0036】
また、測定システムにおける前記温度制御部は、前記第一の数値情報及び第二の数値情報に関して前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得しても良い。そして、前記温度制御部は、前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更しても良い。
【0037】
また、測定システムにおける前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前
記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節する場合、前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更しても良い。
【0038】
また、本発明に係るプログラムは、体液中の被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて配置されるセンサ部を有する電気化学センサを用いて該被検物質に関する数値情報を測定するためのコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記センサ部の近傍温度である検出環境温度に相関する温度を測定するための温度センサによる測定結果を取得する温度取得ステップと、前記温度取得ステップにおいて取得した取得温度と目標設定温度とを比較し、該取得温度と目標設定温度との温度差が規定範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて前記温度差が前記規定範囲を超えていると判定した場合、前記被検物質の測定時において前記検出環境温度が前記目標設定温度に近づくように該検出環境温度を調節するための温度調節素子の作動状況を制御する制御ステップと、を実行させる。このコンピュータとは、上述までの何れかの測定装置又は測定システムを制御するための制御コンピュータである。
【0039】
本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記判定ステップにおいて前記温度差が前記規定範囲内であると判定した場合、前記電気化学センサが生成した電気信号に基づいて前記被検物質に関する数値情報を演算する演算ステップを、更に実行させることができる。また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記演算ステップにおける演算結果を結果表示部に表示する結果表示ステップを、更に実行させることができる。
【0040】
また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記被検物質の測定待機時においては、前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節させても良い。
【0041】
また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得させ、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更させても良い。
【0042】
また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節させる場合、前記コンピュータに、前記第一の数値情報及び第二の数値情報を取得させ、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更させても良い。
【0043】
また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記第一の数値情報及び第二の数値情報に関して前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得させ、前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更させても良い。
【0044】
また、本発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記待機時目標設定温度となるように調節させる場合、前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合
に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更させても良い。
【0045】
また、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として、本発明を捉えることができる。また、上述した本発明の課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、体液中の被検物質に関する数値情報の測定に際して、温熱環境の変化が起こる状況下においても信頼性及び再現性の高い測定結果を得ることのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1における測定装置の概略構成図を示す図である。
【図2】実施例1におけるグルコースセンサを、要部拡大図とともに示した全体斜視図である。
【図3】実施例1におけるグルコースセンサを、要部拡大図とともに示した全体斜視図である。
【図4】実施例1におけるペルチェ素子を説明するための概念図である。
【図5】実施例1における測定装置の制御コンピュータによって実現される機能ブロック図である。
【図6】実施例1における温度制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】実施例1の測定装置においてグルコース濃度を測定する際の制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図8】実施例2に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図9】実施例3に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図10】実施例3の変形例に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図11】実施例4における測定装置の概略構成図を示す図である。
【図12】実施例4の第1変形例に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図13】実施例4の第2変形例に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図14】実施例4の第3変形例に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図15】実施例4の第4変形例に係る温度センサ、ペルチェ素子、温度制御部の配置位置を説明するための説明図である。
【図16】実施例5における測定装置の概略構成図を示す図である。
【図17】実施例5における温度制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図18】実施例6におけるグルコース濃度の測定サイクルを示したタイミングチャート図である。
【図19】実施例6の測定装置においてグルコース濃度を測定する際の第二の制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図20】第二測定装置の概略構成図である。
【図21】第二測定装置の機能構成図である。
【図22】実施例7に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図23】実施例7に係る第二の設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図24】実施例8に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図25】実施例8に係る第二の設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図26】実施例9に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について例示的に詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る測定装置の一例として、被検者に装着されて使用されるグルコース持続測定装置について説明する。なお、以下の図面において、既述の図面に記載された部品と同様の部品には同じ番号を付す。また、以下に説明する本発明に係る測定装置の各実施形態の説明は、測定システム、測定方法、プログラム及び該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の各実施形態の説明を兼ねる。
【0049】
<実施例1>
図1は、実施例1におけるグルコース持続測定装置(CGM(Continuous Glucose Monitoring)装置、以下「測定装置」と略す)の概略構成図を示す図である。測定装置1は
、血液や間質液中のグルコース濃度を連続的に測定可能なものである。測定装置1は、例えば人体(被検者)の腹部や腕部などの皮膚に好適に装着して使用することができるが、これに限定されるものではない。この測定装置1は、筐体(ハウジング)2、制御コンピュータ3および電気化学センサ4を備えている。
【0050】
この電気化学センサ4は、電気化学的反応を利用して特定の被検物質を検出するセンサである。本実施例における電気化学センサ4はいわゆるバイオセンサである。バイオセンサは、生物もしくは生物由来の材料を、被検物質を認識する素子として用いて、被検物質を測定、検出するセンサである。本実施例における電気化学センサ4は、体液中のグルコース濃度を測定するために用いられるため、以下、「グルコースセンサ」と称することにする。また、本実施例においては、体液中のグルコースが本発明における被検物質に該当し、且つ、グルコース濃度が本発明における被検物質に関する数値情報として挙げることができる。
【0051】
筐体2は、測定装置1の外形をなすものであり、カバー20および基板21を含んでいる。カバー20および基板21は相互に固定されており、これらによって画定される制御コンピュータ3が収容されている。筐体2は、防水性あるいは耐水性を有しているのが好ましい。このような筐体2は、たとえば少なくともカバー20(必要に応じて基板21)を金属やポリプロピレン樹脂などの透水性の極めて低い材料により形成される。
【0052】
基板21は、グルコースセンサ4が挿通される部分であり、グルコースセンサ4の基端側の端部(以下、「基端部」という)40を固定している。基板21には、接着フィルム5が固定されている。この接着フィルム5は、持続測定装置1を皮膚に固定するときに利用されるものである。接着フィルム5としては、両面に粘着性を有するテープを使用することができる。
【0053】
制御コンピュータ3は、測定装置1の所定の動作(たとえば電圧の印加、後述する検出環境温度に関する温度制御、グルコース濃度の演算など)に必要な電子部品を搭載したものである。この制御コンピュータ3はさらに、後述するグルコースセンサ4の電極42(図2参照)に接触させるための端子30を備えている。この端子30は、グルコースセンサ4に電圧を印加し、グルコースセンサ4から応答電流値を得るために利用されるものである。
【0054】
グルコースセンサ4は、血液や間質液中のグルコース濃度に応じた応答を得るためのも
のである。詳しくは後述するが、このグルコースセンサ4の先端部には、血液や間質液中のグルコースを検出するためのセンサ部としての固定化酵素部43が形成されており、この固定化酵素部43が少なくとも皮下に植え込まれて使用される。ここでは、グルコースセンサ4は、端部40が皮膚6から突出して制御コンピュータ3の端子30に接触しているとともに、その他の大部分(固定化酵素部43も含む)が皮膚6に挿入されている。
【0055】
図2及び図3は、グルコースセンサ4を、要部拡大図とともに示した全体斜視図である。図示のように、グルコースセンサ4は、基板41、電極42、固定化酵素部43、及びリード線44を有している。
【0056】
基板41は、電極42を支持するためのものであり、絶縁性および可撓性を有するシート状に形成されている。基板41は、端部41Aが筐体2の内部に存在している一方で、端部41Bが鋭利な形に形成されている。端部41Bを鋭利な構造とすれば、皮膚6へのグルコースセンサ4の挿入を容易に行うことができるようになり、使用者の痛みを低減することができる。但し、端部41Bの形状は特定の形状に限定されるものではなく、鋭利な形状以外の形状であっても良い。
【0057】
基板41のための材料としては、人体への害がなく、適切な絶縁性を有するものであれば良く、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの熱可塑性樹脂、あるいはポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0058】
電極42は、固定化酵素部43に電圧を印加し、固定化酵素部43から電子を取り出すために利用されるものである。電極42は、作用極42Aおよび対極42Bを含んでいる。作用極42Aは、グルコースと電子授受を行う部分である。対極42Bは、作用極42Aとともに電圧印加に利用されるものである。電極42は、例えばカーボンインクを用いたスクリーン印刷により形成することができる。
【0059】
固定化酵素43は、グルコースと作用極42Aとの間の電子授受を媒体するものである。この固定化酵素部43は、基板41の一方の面(ここでは、上面とする)において、作用極42Aの端部42Aaにグルコース酸化還元酵素を固定化することで形成されている。グルコース酸化還元酵素は、基質に由来する電子を受け取る部位である電子受容部位と、基質由来の電子を作用極42Aに供与する部位である電子供与部位を有する。
【0060】
グルコース酸化還元酵素としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)およびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)などを使用することができる。ただし、グルコース酸化還元酵素としては、GDHを使用するのが好ましく、特にチトクロムGDHを使用するのが好ましい。グルコース酸化還元酵素としてGDHを使用すれば、過酸化水素を生成させることなくグルコースから電子を取り出せる。そのため、過酸化水素がグルコースや生体細胞に損傷を与えることを回避でき、人体により安全で、かつ酵素の劣化の少ない安定性の高いグルコースセンサ4を実現できる。グルコース酸化還元酵素の固定化方法としては、公知の種々の方法、たとえば重合性ゲル、ポリアクリルアミドやリンなどの高分子、リン脂質ポリマーにシランカップリング剤を導入したMPC重合体あるいはタンパク質膜を利用する方法を採用することができる。
【0061】
リード線44は、温度センサ8において測定される情報を制御コンピュータ3に伝達するためのものである。このリード線44は、大部分がグルコースセンサ4における基板41の下面(すなわち、固定化酵素部43が形成されていない方の面)に形成されている。リード線44は、一端部が温度センサ8に接触している一方で、他端部がグルコースセンサ4の基板41の上面において露出している。
【0062】
温度センサ8は、グルコースセンサ4によって被検物質、すなわちグルコースが検出される際の固定化酵素部43の近傍温度である検出環境温度THsを測定するためのセンサである。この温度センサ8は、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の近傍の温度、すなわち人体(被検者)の皮下温度を測定できるようにグルコースセンサ4における基板40の下面において、固定化酵素部43に対応する位置に設けられている。この温度センサ8は、リード線44を介して、端部44Aにおいて制御コンピュータ3の端子30に接触している。温度センサ8としては、たとえばサーミスタの他、公知の種々のものを使用することができる。
【0063】
また、図1に示すように、測定装置1は熱電変換素子の一種であるペルチェ素子(Peltier device)9を備える。本実施例におけるペルチェ素子9は、後述するように検出環境温度THsを調節するための温度調節素子である。図4は、実施例1におけるペルチェ素子を説明するための概念図である。図示した概念図のように、ペルチェ素子9は、N型及びP型半導体をPN接合させて形成された閉回路を有しており、当該回路に流す電流の極性を切り替え可能に構成されている。ここで、N型及びP型半導体における一方の接合面を「第1の熱交換面9A」と称し、他方の接合面を「第2の熱交換面9B」と称する。ここで、ペルチェ素子9は、「第2の熱交換面9B」が被検者の皮膚側に対向するように、すなわち「第1の熱交換面9A」よりも「第2の熱交換面9B」の方が皮膚に近い位置に配置されている。また、本実施例では、図1に示すように、基板21に切り欠き部(貫通部)が形成されており、この切り欠き部にペルチェ素子9が設置されている。これは、「第2の熱交換面9B」からの放熱(発熱)現象による温熱、又は吸熱現象による冷熱を、効率的に皮下組織に伝達しようとするものである。
【0064】
上記のように配置されたペルチェ素子9において、そのPN接合部に電流を流すと、N→P接合部分では吸熱現象が、P→N接合部分では放熱現象が発生する。この図において、図示の矢印(→)方向への電流の流れる向きを「第1方向」とし、その逆方向を「第2方向」とする。
【0065】
ここで、図4に示すように、「第1方向」に電流を流す場合、第1の熱交換面9Aから吸熱現象が起こり、第2の熱交換面9Bから発熱現象が起こる。すなわち、この場合には、第1の熱交換面9A側から吸収した熱を第2の熱交換面9B側で放熱することで、該第2の熱交換面9Bの周囲領域を加熱する。また、第1の熱交換面9Aの周囲は、上記吸熱作用により冷却されることになる。一方、電流の極性を反転させ、「第2方向」に電流を流す場合、第2の熱交換面9Bから吸熱現象が起こり、第1の熱交換面9Aから発熱現象が起こる。従って、この場合には、第2の熱交換面9Bの周囲が冷却されるとともに、第1の熱交換面9Aの周囲が加熱されることになる。
【0066】
本実施例においては、ペルチェ素子9の「第2の熱交換面9B」が被検者の皮膚側に対向しているため、「第1方向」に電流を流すことによって皮膚表面が加熱される。そして、その温熱が皮下組織へと伝達されることで、固定化酵素部43の近傍の温度が上昇する。一方、電流の極性を切り替えて「第2方向」に電流を流すことにより今度は皮膚表面が冷却され、その冷熱が皮下組織へと伝達されることで、固定化酵素部43の近傍の温度が下降する。このようにして、本実施例では、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の近傍の温度を好適に調節することができる。
【0067】
次に、測定装置1の備える各機能について説明する。図5は、本実施例における測定装置1の制御コンピュータ3によって実現される機能ブロック図を示した図である。本実施形態に係る制御コンピュータ3は、命令およびデータを処理することで各機能部を制御する汎用または専用のプロセッサ、各種制御プログラムが格納されるROM(Read O
nly Memory)、制御プログラムが展開されるRAM(Random Access Memory)、必要に応じて測定装置1によって使用される各種データが記憶され
るハードディスク(Hard Disk)等を有するコンピュータである。プロセッサは
、RAMに展開された制御プログラムを解釈および実行する。これらの構成は、プロセッサを含めて、各機能部に夫々個別に設けられてもよいし、各機能部によって共有されても良い。
【0068】
センサ制御部12は、各種の動作、たとえば電圧印加のタイミング、印加電圧値、応答電流のサンプリング、グルコース濃度の演算、必要に応じて外部の情報処理端末との通信を制御する機能を実現する。温度制御部13は、グルコースセンサ4によって被検物質が検出される際の検出環境温度THsが目標設定温度THtgとなるように調節するために、温度センサ8及びペルチェ素子9と協働して機能する。検出環境温度THsは、固定化酵素部43の近傍温度である。また、目標設定温度THtgについては後述する。
【0069】
通信部11は、測定装置1と外部の情報処理端末との間でデータ通信を行う機能を実現する。この通信部11は送信部を有し、必要に応じて受信部を含んでいる。データ通信は、たとえば無線通信手段(赤外線を使ったIrDAあるいは2.4GHzの周波数帯を使ったブルートゥース)を利用することができる。もちろん、測定装置1の通信部11と外部の情報処理端末の通信部とをケーブルなどを用いて有線でデータ通信を行うようにしても良い。
【0070】
外部の情報処理端末としては、例えばグルコース濃度の測定結果を表示する表示ユニット部(結果表示部)、人体にインスリンを投与するためのインスリン注入装置(例えば、インスリンポンプ)、簡易型血糖値測定装置、外部のパーソナルコンピュータ、警報装置などを挙げることができる。上記警報装置は、測定装置1からのデータに基づいて、被検者が低血糖、高血糖、低血糖になりかかっている、高血糖になりかかっているなどの各状態を患者に報知する装置である。
【0071】
測定装置1とインスリン注入装置とのデータ通信は、たとえば測定装置1でのグルコース濃度の測定結果を、インスリン注入装置に送信することにより行なわれる。これにより、測定装置1からの測定データに基づいて、人体に投与すべきインスリン量をコントロールすることができる。
【0072】
測定装置1と簡易型血糖値測定装置とのデータ通信は、たとえば簡易血糖値測定装置での血糖値測定結果を、測定装置1に送信することにより行なわれる。これにより、測定装置1の測定結果と簡易血糖値測定装置での測定結果とを比較して、これらの測定結果が一定値以上乖離している場合には、測定装置1の校正を行うようにしても良い。また、簡易型血糖値測定装置に対しては、測定装置1において測定された生データ(応答電流)を送信するようにしても良い。
【0073】
測定装置1と表示ユニット部とのデータ通信は、たとえば測定装置1によるグルコース濃度の測定結果を表示ユニット部に送信することにより行なわれる。なお、表示ユニット部は、被検者に携帯(装着)可能な態様で用いられても良いし(例えば、腕時計型表示機や、測定装置1に近接して皮膚表面に装着されるタイプの携帯型表示機などが例示できる)、そうでなくても良い。また、表示ユニット部は、測定装置1と一体的に形成し、該測定装置1の一部として含まれるような態様で構成することもできる。このように、表示ユニット部に測定装置1の測定結果を送信し、表示させることによって、使用者に現在の血糖値を容易に認識、把握させることができる。
【0074】
測定装置1とパーソナルコンピュータとのデータ通信は、たとえば測定装置1の血糖値
測定結果や生データ(応答電流)をパーソナルコンピュータに送信することにより行なわれる。これにより、パーソナルコンピュータにおいて、グルコース濃度の変遷をモニタすることができる。
【0075】
記憶部14は、各種の演算に必要なプログラムおよびデータ(たとえば検量線に関するデータ、電圧印加パターンに関するデータなど)を記憶したものである。この記憶部14はさらに、グルコースセンサ4からの応答電流値や演算されたグルコース濃度を記憶できるものであっても良い。
【0076】
次に、温度制御部13について、より詳しく説明する。ここで、本実施例に係る測定装置1は、グルコースセンサ4における固定化酵素部43に保持された酵素の酵素反応を利用して体液中のグルコースを検出するものである。そして、測定装置1の連続動作期間は、好ましくは数日、より好ましくは1週間〜数週間程度であることが望まれる。
【0077】
従って、測定装置1の動作期間中には、被検者を取り巻く外部の温熱環境が刻々と変化することになる。すなわち、被検者の生活環境(例えば、外気温)の変化や、入浴、シャワー、運動などに代表される生活イベントに従事する場合には、皮下の温度が変動する要因となる。
【0078】
これに対して、固定化酵素部43におけるグルコース酸化還元酵素は、その反応温度によって酵素活性が変動するため、被検者を取り巻く温熱環境の変化の影響をキャンセルする必要がある。そこで、測定装置1においては、グルコースセンサ4によるグルコースの検出に際して、固定化酵素部43の近傍温度である検出環境温度THsが目標設定温度THtgとなるように調温する温度調節制御を行うようにした。
【0079】
目標設定温度THtgは、温度調節制御において検出環境温度THsを調節する際の目標温度であり、検出環境温度THsがこの目標温度近傍に維持された状態でグルコース濃度の測定を行う限り、温熱環境が変動してもその影響が測定結果に及ばないと考えられる温度である。本実施例における目標設定温度THtgは、予め経験則に基づいて、例えば常温の範囲内で設定しておくようにした。
【0080】
温度調節制御は、温度センサ8が測定した温度に基づいて、温度制御部13がペルチェ素子9の作動状況を制御することにより実現される。ここで、温度センサ8は温度制御部13とリード線44を介して接続されており、温度センサ8が測定した情報が制御コンピュータ3の温度制御部13へと入力される。また、制御コンピュータ3にはペルチェ素子9が電気的に接続されており、温度制御部13によってペルチェ素子9の作動状況が制御される。
【0081】
ここで、図6を参照して、温度制御部13の構成例を説明する。図6の構成例において温度制御部13は、温度解析部13A、電源スイッチ部13B、電流切り替え部13Cを含んで構成されている。また、温度制御部13には、電源10から直流電流が供給されるようになっている。電源10は、たとえば電源電圧が1〜3Vであるボタン電池を採用できるが、これに限定されるものではない。また、電源10は、制御コンピュータ3の他の機能部(例えば、センサ制御部12)、グルコースセンサ4などへ電力を供給することができる。
【0082】
電源スイッチ部13Bは、ペルチェ素子9に供給する電力のON、OFFを切り替える電子部品である。また、電流切り替え部13Cは、ペルチェ素子9に供給される直流電流の極性を反転させることの可能な電子部品であって、電流方向を「第1方向」及び「第2方向」の何れにするか切り替えることができる。また、温度解析部13Aは、温度センサ
8から入力される検出環境温度THsの測定結果を取得し、目標設定温度THtgとの対比結果に基づいて、ペルチェ素子9に関する制御内容を決定する。
【0083】
図7は、グルコース持続測定装置においてグルコース濃度を測定する際の処理フローを示したフローチャートである。測定装置1の電源がONの状態のときに、制御コンピュータ3によってそのROMに記憶されている制御プログラムがRAMに展開され、プロセッサによって一定時間ごとに実行されることで、本フローチャートにおける各処理が実現される。すなわち、図5において説明した制御コンピュータ3の備える各機能は、制御コンピュータ3のプロセッサがROMに格納された制御プログラムと協働することにより実現される。
【0084】
制御プログラムが実行開始されると、まず、ステップS101では、温度制御部13は、温度センサ8の出力信号に基づいて検出環境温度THsを取得する。ここでは、本制御プログラムの実行間隔ごと、すなわち予め定められている一定時間ごとに検出環境温度THsが温度センサ8によって測定され、その測定データが温度制御部13の温度解析部13Aへと入力される。本フローチャートにおいてはステップS101が、本発明の測定方法に係る温度取得ステップに対応する。
【0085】
ステップS102において、温度制御部13における温度解析部13Aは、取得した検出環境温度THsと目標設定温度THtgとを比較する。そして、検出環境温度THsと目標設定温度THtgとの差の絶対値が規定温度差ΔTHshの範囲内であるか否かが判定される。本ステップにおいて肯定判定された場合(|THs−THtg|≦ΔTHsh)、検出環境温度THsは目標設定温度THtgと一致しているか、該目標設定温度THtgと充分に近しい温度として見なすことができる。この場合、検出環境温度THsをこれ以上調節しなくても、固定化酵素部43に固定化された酵素の酵素活性が外部環境温度の影響によってばらつく虞がないと考えられる。つまり、この状態でグルコース濃度の測定を行った場合、外部環境温度の変動による測定誤差が生じる虞がないと判断され、ステップS103に進む。
【0086】
ステップS103では、電源スイッチ部13BがONである場合には該電源スイッチ部13BをOFFに切り替え、その結果、ペルチェ素子9への電力供給を停止する。すなわち、ペルチェ素子9の作動が停止される。なお、本ステップにおいて、もともと電源スイッチ部13BがOFFであった場合には、そのまま次のステップS104に進むと良い。
【0087】
ステップS104では、現在、グルコース濃度を測定すべきタイミング(測定要求タイミング)であるか否かを判定する。本実施例における測定装置1では、例えば予め設定された間隔(例えば、数分に1回の頻度で測定が行われても良い)ごと、或いは定められた時刻などにグルコース濃度の測定が自動で行われるようになっている。もっとも、使用者(被検者)から手動の測定要求が出されている場合(例えば、測定開始ボタンが押下された場合など)にも、別途、グルコース濃度の測定を行うことができる。本ステップにおいて、グルコース濃度の測定タイミングであると判定した場合にはステップS105に進み、そうでない場合には本制御プログラムの実行を一旦終了する。
【0088】
ステップS105では、センサ制御部12が、グルコースセンサ4における電極42間(作用極42Aと対極42Bとの間)に電圧を印加する。その結果、固定化酵素部43における酸化還元酵素によって体液中のグルコースが還元され(電子が取り出され)、その電子が電子供与部位を介して作用極に供給される。そして、作用極42Aに供給された電子の量は、応答電流値として測定される。そして、グルコースセンサ4によって、電圧印加時における応答電流値を示す電気信号が生成され、その電気信号がセンサ制御部12へと出力される。この応答電流値を示す電気信号は、被検物質であるグルコースの濃度に相
関がある電気信号である。グルコースセンサ4からの電気信号を入力したセンサ制御部12は、応答電流値に基づいて、グルコース濃度(血糖値)を演算する。ここでのグルコース濃度の演算時には、外部環境温度に応じた温度補正は行う必要がない。以上のように、本ステップでは、グルコースセンサ4を制御するセンサ制御部12が、グルコースセンサ4が生成した電気信号に基づいてグルコース濃度を演算する。そして、本フローチャートではステップS105が、本発明の測定方法に係る演算ステップに対応する。
【0089】
また、グルコース濃度の演算結果は、通信部10によって表示ユニット部に出力され、該表示ユニット部は取得したグルコース濃度の測定結果(演算結果)を表示する。これにより、グルコース濃度の測定結果が被検者(使用者)に報知される。また、グルコース濃度の演算結果は、その他の外部の情報端末に送信されても良い。本ステップの処理が終了すると、本制御プログラムの実行を一旦終了する。
【0090】
次に、ステップS102において、検出環境温度THsと目標設定温度THtgとの差の絶対値が所定温度差ΔTHshの範囲内にないと判定された場合(|THs−THtg|>ΔTHsh)について説明する。この場合、検出環境温度THsが目標設定温度THtgよりもある程度低いか、逆にある程度高いかの何れかに該当することになる。
【0091】
そこで、この場合には、ステップS106に進み、温度制御部13は、検出環境温度THsが目標設定温度THtgよりも低いかどうかを判定する。ここで、肯定判定された場合(THs<THtg)に、温度制御部13は、検出環境温度THsを上昇させる必要があると判断し、ステップS107に進む。一方、否定判定された場合、温度制御部13は、検出環境温度THsを下降させる必要があると判断し、ステップS108に進む。ここで、ステップS102の処理が本発明の測定方法に係る判定ステップに対応する。
【0092】
ステップS107において、温度制御部13は、電源スイッチ部13BがOFFである場合にはONに切り替えると同時に、ペルチェ素子9に供給される直流電流の方向が「第1方向」となるように電流切り替え部13Cを制御する。これにより、ペルチェ素子9近傍の皮膚が加熱される。ここで、グルコースセンサ4における固定化酵素部43は、通常、深くても皮膚から数mm程度の深さに埋め込まれるのであり、ペルチェ素子9によって皮膚表面を加熱することで、その熱を充分に固定化酵素部43近傍部位まで伝えることができる。その結果、検出環境温度THsを好適に目標設定温度THtgまで上昇させることができる。
【0093】
なお、ここでは、検出環境温度THsの変化速度(ここでは、上昇速度)が過度に速くなったり、過度に遅くならないように、ペルチェ素子9を構成する半導体の個数や、供給される電流値の大きさや、その他ペルチェ素子9に関係する物性値が、適正な範囲で設計されている。これは、後述するように、ペルチェ素子9に「第2方向」の電流を供給し、検出環境温度THsを下降させる場合についても同様である。本ステップの処理が終了すると、本制御プログラムの実行を一旦終了する。
【0094】
ステップS108において、温度制御部13は、電源スイッチ部13BがOFFである場合にはONに切り替えると同時に、ペルチェ素子9に供給される直流電流の方向が「第2方向」となるように電流切り替え部13Cを制御する。これにより、ペルチェ素子9近傍の皮膚からの吸熱が起こり、皮膚表面が冷却される。そして、この冷熱は、充分に固定化酵素部43の近傍部位に伝わるので、検出環境温度THsを好適に目標設定温度THtgまで下降させることができる。本ステップの処理が終了すると、本制御プログラムの実行を一旦終了する。本フローチャートにおいてはステップS107及びS108の処理が、本発明の測定方法に係る制御ステップに対応する。
【0095】
上述した制御プログラムは、一定時間毎に繰り返し実行される。そのため、例えばステップS107、或いはステップS108に係る処理は、次回以降のステップS102において肯定判定されるまで継続される。従って、本実施例における温度調節制御によれば、検出環境温度THsが目標設定温度THtgに一致するか、目標設定温度THtgと充分に近しい温度、例えば同等とみなせる温度に維持した上で、グルコース濃度の測定を行うことができる。また、本実施例に係るグルコース濃度の測定方法に関しては、被検物質たるグルコースが検出される際の検出環境温度THsが目標設定温度THtgとなるように調節される。
【0096】
本実施例に係る温度調節制御によれば、被検者を取り巻く外部の温熱環境が変化する状況下においても、グルコース濃度の測定に際して、温熱環境の変化が被検物質の測定結果に悪影響を及ぼすことを好適に抑制することができる。さらには、本制御によれば、グルコースセンサ4が生成した電気信号を、そのときの温熱環境に応じて温度補正する必要がない。従って、測定装置1に関する測定結果について、信頼性及び再現性を充分に高めることができる。
【0097】
なお、本発明を、制御コンピュータ3に図7において説明した各処理を実行させるための制御プログラム、すなわち、制御コンピュータ3の各機能を実現させるプログラム、或いはそれ記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えることができる。そして、当該コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【0098】
<実施例2>
ここで、図8を参照して実施例2を説明する。図8は、実施例2に係る温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置位置を説明するための説明図である。本実施例では、上記各部品の配置位置が実施例1と相違する点以外は共通である。以下、既述の実施例との相違点を中心に説明し、共通点については説明を省略する。
【0099】
図1に示した配置例では、温度制御部13及びペルチェ素子9が、制御コンピュータ3を収容する筐体2に配置され、温度センサ8がグルコースセンサ4に配置されていた。なお、筐体2は、センサ制御部12を収容する筐体2とも言い換えることができる。本実施例では、ペルチェ素子9もグルコースセンサ4の基板上に配置するようにした。なお、図8に示すように、温度センサ8及び温度制御部13の配置位置については、図1の例と同様である。図中、符号3の括弧内に符号13を記載しているのは、実施例1において述べたように、本実施例における温度制御部13は、制御コンピュータ3によって実現されるからである。以下の他の実施例においても、特記のない限り同様とする。
【0100】
近年、数ミリ角(例として1mm〜2mm角程度)の大きさに形成された小型のペルチェ素子も製品化されている(例として、ヤマハ株式会社製の品番YKMG、YKMK、YKMA、YKMF等)。従って、例えば、グルコースセンサ4の基板41の幅を例えば5mm程度とする場合、上記のように小型のペルチェ素子9を用いることで十分に基板41表面に形成することが可能であり、好適に実施可能である。この構成によれば、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の近傍部位を直接的に、加熱又は冷却することができる。
【0101】
<実施例3>
図9を参照して実施例3を説明する。図9は、実施例3に係る温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置位置を説明するための説明図である。本実施例における上記各部品の配置位置の図1との相違点は、ペルチェ素子9に加えて温度センサ8も筐体2に収容されている点である。また、温度制御部13については、図1で示した例と同様である。この図では、ペルチェ素子9と同様、温度センサ8を基板21の例えば切り欠き部(貫通部)に配置している。
【0102】
本実施例における温度センサ8は、皮下ではなく、皮膚表面上に配置されているため、温度センサ8が測定する温度は皮膚表面の温度に概ね一致する。皮膚表面の温度は、検出環境温度THsに相関する温度、或いは関連付けることのできる温度である。従って、本実施例では、皮下において固定化酵素部43が配置される位置と、温度センサ8が温度を測定する位置(温度センサ8が配置される位置)との位置関係、及び温度センサ8が測定した測定温度に基づいて、検出環境温度THsを推定するようにした。
【0103】
例えば、検出環境温度THs、温度センサ8が測定する皮膚表面温度、固定化酵素部43の皮下への埋め込み深さの関係式や、これらの関係が格納されたマップを作成しておき、当該皮膚表面温度及び埋め込み深さを代入することで検出環境温度THsを推定することができる。そして、推定した検出環境温度THsに基づいて、実施例1で説明した温度調節制御を好適に実施することができる。
【0104】
また、本実施例における構成では、温度センサ8が皮膚表面に配置することができる。このような配置の利点は、温度センサ8を皮下に埋め込む必要がなく、これによってグルコースセンサ4の基板41において、皮下に埋め込まれる部分のサイズをより小さくなし得ることにある。その結果、グルコースセンサ4の皮下への挿入時における被検者(使用者)の傷みの緩和、挿入しやすさの向上について有益である。
【0105】
なお、本実施例における変形例として、図10の配置例では、ペルチェ素子9がグルコースセンサ4の基板41上に配置されている点が図9の例と相違し、他の点は共通である。
【0106】
上記実施例1〜3で示したように、測定装置1における温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置位置は、種々のバリエーションについて採用することができる。また、各配置例において、温度制御部13は筐体2に収容されているが、グルコースセンサ4の基板41上に配置されていても構わない。すなわち、測定装置1における温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13のそれぞれは、センサ制御部12を収容する筐体2にまたはグルコースセンサ4の何れかに配置することができる。
【0107】
<実施例4>
次に、実施例4について説明する。図11は、実施例4におけるグルコース持続測定装置(測定システム)の概略構成図を示す図である。本実施例における測定装置1は、センサ制御部12によるグルコース濃度の演算結果を取得するとともに、その演算結果を表示するための表示パネル15を有する携帯型表示機16(結果表示部)を更に備える。すなわち、測定装置1は、携帯型表示機16を含んで構成することができる。携帯型表示機16の筐体17は、筐体2と同様、接着フィルム5などによって皮膚に固定されている。この図における携帯型表示機16は、ケーブル18を用いて有線でセンサ制御部12とのデータ通信を行っている。ここで、携帯型表示機16を、測定装置1と別体の携帯型表示装置16’として扱うこともできる。この場合、測定装置1と、携帯型表示装置16’とを含んだ測定システムとして本発明を捉えることもできる。この事項は、後述する図12〜
15についても同様である。
【0108】
次に、本実施例における温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置位置について説明する。図11に示した配置例では、温度センサ8がグルコースセンサ4の基板41に配置され、温度制御部13がセンサ制御部12を収容する筐体2に配置され、ペルチェ素子9が携帯型表示機16の筐体17に配置されている。この場合、ペルチェ素子9を、例えば図1に示したように筐体2に配置する場合に比べてグルコースセンサ4の固定化酵素部43からの距離が遠くなり易い。しかしながら、本実施例における携帯型表示機16の筐体17は、センサ制御部12を収容する筐体2に比べて、皮膚表面への投影面積が大きくなるように形成されている。そのため、温度調節対象となる固定化酵素部43から離間する分だけ、ペルチェ素子9を構成する半導体の数を増やすこと等により、上述した温度調節制御において検出環境温度THsを調節する際の効率が低下することを回避できる。
【0109】
図11と異なる温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置例を図12〜図15に例示する。図12に示した配置例では、温度センサ8が携帯型表示機16の筐体17に配置され、温度制御部13がセンサ制御部12を収容する筐体2に配置され、ペルチェ素子9がグルコースセンサ4の基板41に配置されている。ここで、図示のように温度センサ8を筐体17に配置した場合、例えば図9の例のように筐体2に配置する場合に比べて、さらにグルコースセンサ4の固定化酵素部43からの距離が遠くなり易い。しかしながら、温度センサ8が測定する皮膚表面の温度と、検出環境温度THsとは互いに関連付けが可能であるのは上述の通りである。従って、固定化酵素部43の位置と温度センサ8の配置位置と、温度センサ8による測定温度に基づいて、検出環境温度THsを推定することが可能であり、その推定結果に基づいて温度調節制御を好適に行うことができる。
【0110】
また、図13に示した配置例では、温度センサ8がセンサ制御部12を収容する筐体2に配置され、ペルチェ素子9及び温度制御部13が携帯型表示機16の筐体17に配置されている。また、図14に示した配置例では、ペルチェ素子9がセンサ制御部12を収容する筐体2に配置され、温度センサ8及び温度制御部13が携帯型表示機16の筐体17に配置されている。また、図15に示した配置例では、温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の全てが携帯型表示機16の筐体17に配置されている。ちなみに、図13〜図15に示すように、温度制御部13を筐体16に収容する場合、該筐体16の内部には温度制御部13の既述した機能を発揮させるためのCPU、ROM、RAM等を備えた第2のコンピュータ(制御コンピュータ3とは別のコンピュータ)が収容されており、この第2のコンピュータによって温度制御部13を実現することができる。
【0111】
上記実施例4及びその変形例で示したように、測定装置1における温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13の配置位置は、種々のバリエーションを採用することができる。また、上記各部品の配置例は、図11〜図15の例に限定されるものではなく、例えば、温度制御部13をグルコースセンサ4の基板41上に配置しても構わない。そして、測定装置1における温度センサ8、ペルチェ素子9、温度制御部13のそれぞれは、センサ制御部12を収容する筐体2、グルコースセンサ4、及び携帯型表示機16が設けられている筐体17、の少なくとも何れかに配置することができる。
【0112】
<実施例5>
上述までの実施例では、本発明に係る温度調節素子として、ペルチェ素子9を例示的に採用しているが、これに限られず、他の構成を採用しても勿論構わない。図16に示すように、図1等に示したペルチェ素子9の代わりに、第二温度調節素子90を配置しても良い。この第二温度調節素子90は、放熱部としてのマイクロヒータと、吸熱部としてヒートシンク、熱界面材料、ヒートスプレッダ、或いはこれらの組み合わせたものを有してい
る。
【0113】
図17は、実施例5における温度制御部の概略構成を示すブロック図である。図示の構成において温度制御部13は、温度解析部13A、電源スイッチ部13Bを備えており、図6に示す電流切り替え部13Cは備えていない。第二温度調節素子90のマイクロヒータ91は、電源スイッチ部13Bに接続されており、電源スイッチ部13Bからマイクロヒータ91に印加する電圧を制御することで、マイクロヒータ91からの放熱量が調節される。上記のように第二温度調節素子90は、吸熱部としてのヒートシンク、熱界面材料、ヒートスプレッダ等(不図示)を有しており、電源スイッチ部13Bからマイクロヒータ91への駆動電圧が印加されていない状態では、これら吸熱部によって受動的な吸熱が行われることで、検出環境温度THsの低下を促進させることができる。
【0114】
従って、検出環境温度THsを上昇させる際には電源スイッチ部13からマイクロヒータ91に駆動電圧を印加することでマイクロヒータ91を作動させ、検出環境温度THsを下降させる際にはマイクロヒータ91への電圧印加を止めることでその作動を停止させることで、検出環境温度THsを自在に調節することができる。例えば、図7の処理フローでは、ステップS107において、電源スイッチ部13をONとすることで、マイクロヒータ91を作動させることで、検出環境温度THsが上昇する。一方、ステップS108では、電源スイッチ部13をOFFとすることでマイクロヒータ91の作動を停止させると、検出環境温度THsが低下する。なお、ステップS103において電源スイッチ部をOFFにするステップは省略することができる。
【0115】
ここで、マイクロヒータ91自体は周知であるためここでの詳しい説明は省略するが、例えば特開昭53-122942号公報に記載された積層発熱体、特開2002-090357号公報に記載された微少ケミカルデバイス用の発熱体、特開2002-025757号公報、特開平07-014664号公報等に記載する面状発熱体等を用いても良い。同様に、ヒートシンクとしては、例えば特開2007-209523号公報における図2や、特開2010-162189号公報における図1〜図4に記載された体内埋め込み型の冷却装置に使用されるヒートシンクや、特許第4324673号公報に記
載する皮膚表面の凍結治療装置に用いられるヒートシンク等を用いるようにしても良い。また、熱界面材料として、ホワイトペースト(熱グリース)が挙げられる。ホワイトペーストに使用する材料としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、又は窒化ホウ素などを含むシリコンオイル等が例示できる。また、ヒートスプレッダは、熱伝導率の高い金属材料(例えば、タングステン・モリブデン・銅−タングステン系合金・銅−モリブデン系合金・窒化アルミニウムセラミックス等)により容易に形成することができる。なお、本実施例に係る第二温度調節素子90は、図8〜図15の配置例に対しても適用可能である。
【0116】
<実施例6>
次に、測定装置1に係る制御内容に関し、実施例1とは異なるバリエーションについて説明する。本実施例に係る測定装置1の概略構成は図1〜6に示したものと同様である。図18は、実施例6における測定装置1のグルコースセンサ4に係るグルコース濃度の測定サイクルを示したタイミングチャートである。図18の例では、t0〜t4で一の測定サイクルが構成されている。t2〜t3の期間はグルコースセンサ4を用いて被検物質の測定を行う「測定期間」であり、t0〜t1の期間はグルコースセンサ4を用いた被検物質の測定を行わない「測定待機期間」である。
【0117】
ここで、グルコースセンサ4の固定化酵素部43における酵素活性の至適温度は例えば36〜37℃程度であり、この温度範囲ではセンサ感度は非常に高い。しかし、固定化酵素部43の温度が上記至適温度域から高温に移行してしまうと酵素の失活が生じ、劣化等によってセンサの寿命を縮める要因となり得る。一方、固定化酵素部43における酵素の失活を防ぐため、至適温度域より低温でグルコース濃度の測定を行う場合、グルコースセ
ンサ4による出力結果の信頼性が低くなる虞がある。
【0118】
そこで、本実施例に係る温度調節制御では、グルコースセンサ4における劣化の抑制と、グルコース濃度の測定結果に関する信頼性及び再現性の向上を両立させるべく、測定期間では検出環境温度THsを目標設定温度THtgとなるように調節する一方、測定待機期間では検出環境温度THsを待機時目標設定温度THbとなるように調節する。待機時目標設定温度THbは、測定待機期間において検出環境温度THsを調節する際の目標温度であり、目標設定温度THtgに比べて低い温度に設定される。
【0119】
測定サイクルにおいて、測定待機期間(t0〜t1)から測定期間(t2〜t3)に移行する際には、ペルチェ素子9による加熱制御を行うことで検出環境温度THsを目標設定温度THtgまで上昇させる。測定期間(t2〜t3)においては、グルコースセンサ4が一又は複数回に亘り被検物質の検出を行うことでグルコース濃度が測定される。その後、測定期間から測定待機期間に移行する際には、ペルチェ素子9による冷却制御を行うことで、検出環境温度THsを待機時目標設定温度THbまで低下させる。なお、測定待機期間から測定期間への過渡期間(t1〜t2)を「加熱過渡期間」と称し、測定期間から測定待機期間への過渡期間(t3〜t4)を「冷却過渡期間」と称する。
【0120】
図18に示した測定サイクルは例示的なものであり、適宜の変更を加え得る。また、1測定サイクル(t0〜t4)の長さや、測定時間と測定待機時間の割合などは、ペルチェ素子9(温度調節素子)の面積に応じて変更しても良い。なお、ペルチェ素子9の面積が小さい場合には、当該面積が大きい場合に比べて、加熱過渡期間、及び冷却過渡期間を短くすることができる。すなわち、測定サイクルにおいて加熱過渡期間及び冷却過渡期間が占める割合を低くすることができる。その結果、測定期間及び測定待機期間の割合を設定するに際しての自由度を高めることができる。
【0121】
図19は、本実施例の測定装置1においてグルコース濃度を測定する際の第二の制御ルーチンを示したフローチャートである。図7に示した制御ルーチンと同じ処理を行うステップは同じ参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。本制御ルーチンに関する制御プログラムも制御コンピュータ3のROM等に記憶しておき、プロセッサによって一定時間毎にその制御プログラムが実行される。
【0122】
ステップS201では、温度制御部13が、現在、測定待機期間の終了要求があるかどうかを判定する。制御コンピュータ3は、時間を測定するための測時機(計時装置)を備えており、記憶部14には図18に示したような測定サイクルに関するデータが記憶されている。温度制御部13は、測時機が計測する時間、及び、記憶部14に記憶されている測定サイクルに関するデータを参照し、図18のt1に相当するタイミングが到来した時点で測定待機期間の終了要求があると判定する。なお、測定待機期間の終了要求が出されるタイミング(図18中、t1)を、測定期間の始期(図18中、t2)から所定時間だけ先行するタイミングとして定めておいても良い。
【0123】
本ステップにて、測定待機期間の終了要求があると判定された場合にはステップS101に進み、そうでない場合には本ルーチンを一旦終了する。ステップS101において、温度制御部13は、温度センサ8の出力信号に基づいて検出環境温度THsを取得する。次いで、ステップS102において、温度制御部13は、検出環境温度THsと目標設定温度THtgとを比較する。温度制御部13は、検出環境温度THsと目標設定温度THtgとの差の絶対値が規定温度差ΔTHshの範囲内であると判定した場合(|THs−THtg|≦ΔTHsh)、検出環境温度THsが目標設定温度THtgと略一致していると判断し、ステップS105に進む。
【0124】
一方、ステップS102において検出環境温度THsと目標設定温度THtgとの差の絶対値が所定温度差ΔTHshの範囲内にないと判定された場合(|THs−THtg|>ΔTHsh)、ステップS107に進む。ステップS107において、温度制御部13は、電源スイッチ部13BをONに制御すると共に、ペルチェ素子9に対して「第1方向」の電流が供給されるように電流切り替え部13Cを制御する。これにより、ペルチェ素子9近傍の皮膚が加熱される。ステップS107の処理が終了すると、ステップS102に戻る。ステップS102の処理において、再び否定判定された場合(S102:No)には先述のステップS107に進むのであるが、この場合には既にペルチェ素子9に「第1方向」の電流が供給されている状態にあるため、ステップS107では一定時間そのままの状態を維持した後、再びステップS102に戻る。その結果、検出環境温度THsが目標設定温度THtgとなるまでこの加熱処理が継続される。
【0125】
ステップS105では、グルコース濃度の測定が行われる。すなわち、センサ制御部12が、グルコースセンサ4における電極42間に電圧を印加すると共に、得られた応答電流値に基づいてグルコース濃度(血糖値)を演算する。本ステップにおけるグルコース濃度の測定回数は、一回であっても良いし、複数回であっても良い。
【0126】
ステップS105の処理が終了すると、ステップS202に進む。ステップS202において、温度制御部13は、現在、測定期間の終了要求があるかどうか判定する。温度制御部13は、例えば、測時機が計測する時間及び記憶部14に記憶されている測定サイクルに関するデータを参照し、図18のt3に相当するタイミングが到来した時点で測定期間の終了要求があるとの判定を行う。本ステップで否定判定された場合、一定時間だけ待機した後に再び本ステップに係る判定を繰り返し行い、肯定判定された場合にはステップS108に進む。なお、測定期間の終了要求が出されるタイミング(図18中、t3)は、測定期間の始期(図18中、t2)から所定時間だけ遅れたタイミングとして定めておいても良い。
【0127】
ステップS108において、温度制御部13は、電源スイッチ部13BをONに制御すると共に、ペルチェ素子9に対して「第2方向」の電流が供給されるように電流切り替え部13Cを制御する。これにより、ペルチェ素子9近傍の皮膚からの吸熱が起こり、皮膚表面が冷却される。そして、皮膚表面からの冷熱がグルコースセンサ4に伝わることで、その固定化酵素部43が冷却される。ステップS108の処理が終了すると、ステップS203に進む。
【0128】
ステップS203において、温度制御部13は、温度センサ8の出力信号に基づいて検出環境温度THsを取得する。次いで、ステップS203において、温度制御部13は、検出環境温度THsと待機時目標設定温度THbとを比較し、これらの差の絶対値が第二規定温度差ΔTHsh2の範囲内であるかどうかを判定する。上記の通り待機時目標設定温度THbは、測定待機期間において検出環境温度THsを調節する際の目標温度であり、目標設定温度THtgに比べて低い温度として設定されている。
【0129】
ステップS203において肯定判定された場合(|THs−THb|≦ΔTHsh2)、検出環境温度THsは待機時目標設定温度THbと一致しているか、充分に近しい温度として見なされる。一方、ステップS203において否定判定された場合(|THs−THb|>ΔTHsh2)、ステップS108の処理に戻る。このようにしてステップS108の処理に戻った場合、既に、ペルチェ素子9に「第2方向」の電流が供給されている状態にあるため、ステップS108では一定時間そのままの状態を維持した後、再びステップS203に進む。その結果、検出環境温度THsが待機時目標設定温度THbに下降するまでペルチェ素子9による冷却処理が継続される。ステップS203において肯定判定されると、検出環境温度THsは待機時目標設定温度THbまで低下したと判断される
。次いで、ステップS103に進み、電源スイッチ部13BがOFFにされた後、本ルーチンを一旦終了する。
【0130】
以上のように、本実施例に係る温度調節制御では、各測定サイクルの測定期間で検出環境温度THsを目標設定温度THtgと一致するように調節し、測定待機期間で検出環境温度THsを目標設定温度THtgよりも低温側に設定される待機時目標設定温度THbに維持する。そのため、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の近傍温度を、各測定サイクルの測定期間においてのみ酵素活性の至適温度域に維持し、その他の期間はこの至適温度域よりも低温側の温度域に維持することができる。従って、グルコースセンサ4における劣化の抑制、及び測定結果の信頼性及び再現性の向上を、良好に両立させることができる。
【0131】
なお、上記の制御例では測定待機期間における検出環境温度THsを積極的に待機時目標設定温度THbまで下降させたが、例えば測定待機期間については単にペルチェ素子9を非作動状態に維持するに留まっても良い。この場合、ペルチェ素子9による冷却制御は行われないため、ペルチェ素子9の駆動電力の節約に繋がる。また、測定待機期間における検出環境温度THsは成り行きで低下するので、固定化酵素部43の温度が至適温度域より高温側に移行することもない。
【0132】
<実施例7>
実施例7においては、測定装置1は、温度調節制御における目標設定温度THtgを調整する設定値調整制御を実施する。この設定値調整制御は、測定装置1及び後述する第二測定装置50によって得られたグルコース濃度の測定結果に基づいて行われる。本実施例に係る測定装置1のハード構成は、実施例1(図1〜6参照)と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0133】
図20は、第二測定装置50の概略構成図である。第二測定装置50は、体外に取り出した体液(血液、間質液等)中のグルコース濃度(血糖値)を測定可能な血糖自己測定器(SMBG:self monitoring of blood glucose)であり、指先血など体外へ出血させた血液を用いて血糖値を測定する。以下、被検者から体外へ採取した血液を第二試料と表記する場合がある。
【0134】
第二測定装置50は、バイオセンサ60を用いて電気化学的手法により第二試料におけるグルコース濃度の測定を行う。第二測定装置50は、筐体61、表示パネル62、操作ボタン63、及びセンサ挿入口68を備える。また、図示を省略しているが、第二測定装置50は、第二測定装置50の所定の動作(例えば、電圧の印加或いは外部との通信など)に必要なCPU、RAM、ROM等の電子部品が搭載された回路基板を有している。
【0135】
図20に示すように、筐体61に、表示パネル62及び複数の操作ボタン63が設けられている。複数の操作ボタン63は、各種測定条件の設定、測定の開始、終了等の動作を行うために使用される。複数の操作ボタン63は、接触式のタッチパネルであってもよい。表示パネル62は、測定結果やエラーを表示するとともに、設定時における操作手順や操作状況等を表示する。表示パネル62は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、Cathode Ray Tube(CRT)又はエレクトロルミネッセンスパネル等である。バイオセンサ60は、基板上に例えば電子伝達物質及び酸化還元酵素を含む試薬層が形成された公知のセンサである。
【0136】
第二測定装置50が備える各機能について説明する。図21は、第二測定装置50の機能構成図である。第二測定装置50は、通信部80、電源部81、制御部82、測定部83及び記憶部84を有している。通信部80は、測定装置1と第二測定装置50との間で
データ通信を行う。データ通信は、例えば、無線通信手段を利用することができる。また、USB(Universal Serial Bus)等のケーブルを介して測定装置1と第二測定装置50とを接続することにより、有線によりデータ通信を行うようにしてもよい。電源部81は、第二測定装置50が駆動するための電力を供給する。例えば、電源電圧が1〜3Vであるボタン電池を用いることにより、電源部81としての機能を実現してもよい。制御部82は、例えば、測定装置1との通信を制御する。
【0137】
測定部83は、バイオセンサ60のセンサ部(試薬層)に接触した血液(第二試料)中に含まれるグルコースの濃度(血糖値)を測定する。そして、記憶部84は、測定部83が測定したグルコース濃度を、その測定時刻情報と対応付けて記憶する。上記のように構成される第二測定装置50を用いた血液中のグルコース濃度の測定結果は、第二測定装置50の通信部80から、測定装置1への通信部11へと送信される。
【0138】
測定装置1によるグルコース濃度の連続測定は比較的長期(例えば、1週間程度)に亘って継続されることが多いため、固定化酵素部43におけるグルコース酸化還元酵素が繰り返される電圧印加の影響によって劣化したり、固定化酵素部43の周辺に徐々に細胞組織が付着・堆積すること等に起因して、グルコースセンサ4の感度が低下する場合がある。また、連続測定期間の増加に伴って徐々にグルコースセンサ4の感度が低下すると、そのグルコース濃度測定値と、真のグルコース濃度との間に誤差が生じる虞がある。
【0139】
本実施例では、測定装置1によるグルコース濃度の連続測定に際して、定期的に以下の設定値調整制御を実施する。図22は、本実施例に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。この制御ルーチンに係るプログラムは、測定装置1における制御コンピュータ3のROM内に記憶されており、第二測定装置50から設定値調整制御開始の信号を受信することを契機として実行される。
【0140】
本制御ルーチンが実行されると、ステップS301において、通信部11は、第二測定装置50が第二試料におけるグルコース濃度を測定した測定時刻情報と測定値(以下、「SMBG測定値Vsmbg(第二の数値情報に対応)」という)を、第二測定装置50の通信部80から受信する。そして、ステップS302において、測定装置1における記憶部14は、通信部11が受信したSMBG測定値Vsmbgをその測定時刻情報と対応付けて記憶する。
【0141】
また、記憶部14は、グルコース濃度の連続測定の開始後から現在までの、センサ制御部12によって測定されたグルコース濃度測定値(以下、「CGM測定値Vcgm(第一の数値情報に対応)」という)とその測定時刻情報とを互いに対応付けて記憶している。記憶部14にSMBG測定値Vsmbgの最新データが追加されると、温度制御部13は、ステップS303において、更新されたSMBG測定値Vsmbgに対応する測定時刻情報と直近の時刻に測定されたCGM測定値Vcgmを抽出する。その結果、温度制御部13は、ほぼ同時期に測定されたCGM測定値Vcgm,SMBG測定値Vsmbgを取得することができる。次いで、温度制御部13は、SMBG測定値VsmbgとCGM測定値Vcgmとの差の絶対値(以下、「絶対誤差ΔVa」という)を算出する。
【0142】
温度制御部13は、測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1を超えているか否かを判定する。測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1以下である場合、グルコースセンサ4の感度が適正であって、グルコース濃度に測定誤差は殆ど含まれないと判断される。そこで、本ステップにおいて、測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1以下と判定された場合(ΔVa≦ΔVb1)には、本ルーチンを一旦終了する。この場合には、グルコースセンサ4の感度を特段調整する必要が無いと判断されるからである。一方、測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1を超えていると判定された場合(ΔVa>ΔVb1)には、ス
テップS304に進む。
【0143】
ステップS304において、温度制御部13は、目標設定温度THtgの設定値を変更する。ここでは、測定絶対誤差ΔVaの大きさに応じて目標設定温度THtgの変更幅が調節される。SMBG測定値VsmbgからCGM測定値Vcgmを減算して得られる測定値の差を、「測定誤差ΔVr」と表記する。本ルーチンでは、測定誤差ΔVrに定数C1(但し、C1>0)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHtgを、現在の目標設定温度THtgに加えることで修正後の目標設定温度(以下、「目標修正温度THtgm」と称する)を算出する(THtgm=THtg+ΔTHtg,ΔTHtg=C1×ΔVr)。なお、当該算出式は例示であり、これに限定されるものではない。本ステップの処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0144】
SMBG測定値Vsmbgは、被検者から体外に採取された血液を試料としてグルコース濃度を測定したものである。そのため、皮下留置型のグルコースセンサ4を用いて測定したCGM測定値Vcgmに比べて、その測定結果の信頼性は高い。よって、ここではSMBG測定値Vsmbgを真のグルコース濃度と見なすことにする。
【0145】
グルコースセンサ4の感度が低い場合、SMBG測定値Vsmbgに比べてCGM測定値Vcgmの方が低くなることが多い。その場合、測定誤差ΔVrが正の値となることで温度設定変更値ΔTHtgも正の値となる。その結果、目標設定温度THtgが高温側に補正されることで固定化酵素部43における酵素活性が高まり、グルコースセンサ4のセンサ感度を高めることができる。一方、グルコースセンサ4の感度が高くなり過ぎると、SMBG測定値Vsmbgに比べてCGM測定値Vcgmの方が高くなることが想定される。その場合、測定誤差ΔVrが負の値となることで温度設定変更値ΔTHtgも負の値となる。その結果、目標設定温度THtgが低温側に補正されることで固定化酵素部43における酵素活性が低くなり、グルコースセンサ4のセンサ感度を低くすることができる。以上のように、本制御においては測定誤差ΔVrの大きさに応じて目標設定温度THtgが調節されるので、測定装置1に係るグルコース濃度の測定精度を高めることができる。更には、SMBG測定値Vsmbgに比べてCGM測定値Vcgmの方が高い場合には目標設定温度THtgを低温側に修正するようにしたので、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の温度が酵素の至適温度域よりも高温となることに起因する劣化の発生を、より確実に回避可能である。
【0146】
本実施例に係る設定値調整制御によれば、測定誤差ΔVrの大きさに応じて目標設定温度THtgの設定値を変更するようにしたので、グルコースセンサ4の連続使用に伴う劣化等が生じたとしても、グルコースセンサ4におけるセンサ感度を適正に維持することができ、測定精度及び測定結果の信頼性を高めることができる。
【0147】
(変形例)
次に、本実施例における設定値調整制御の変形例について説明する。記憶部14には、グルコースセンサ4からの応答電流値とグルコース濃度との対応関係を示す検量線データが、数式や対応テーブルとして記憶されている。また、検量線データは、グルコースセンサ4のセンサ感度に応じて複数用意されており、これらが記憶部14に記憶されている。この場合、測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1を超えた場合、センサ制御部12は、測定誤差ΔVrに応じて別の検量線データを選択することで、グルコースセンサ4によるグルコース濃度の測定精度を向上させても良い。このような場合においても検量線データの数には限りがある。そのため、前述した設定値調整制御のように、第二測定装置50側から送信されるSMBG測定値Vsmbgを参照して温度調節制御における目標設定温度THtgを調整することは、センサ感度を細やかに調整する上で非常に有効である。前述した設定値調整制御によって、各検量線データ同士の間を有効に補間することができる
からである。
【0148】
更に、図22に示したフローチャートでは、測定絶対誤差ΔVaに対する閾値を一つだけ設けるようにしたが、複数点設定しても良い。図23は、本実施例に係る第二の設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。本制御ルーチンに係るプログラムは、測定装置1における制御コンピュータ3のROM内に記憶されており、第二測定装置50から設定値調整制御開始の信号を受信することを契機として実行される。図22に示す処理フローと同じ処理を行うステップについては同じ参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0149】
ステップS303において、測定絶対誤差ΔVaが第一基準値ΔVb1を超えていると判定された場合(ΔVa>ΔVb1)にはステップS305に進む。ステップS305において、温度制御部13は、測定絶対誤差ΔVaが第二基準値ΔVb2を超えているかどうかを判定する。ここで、第二基準値ΔVb2は、グルコース濃度の演算に使用する検量線データを変更する必要があるかどうかを判別するための閾値であり、測定絶対誤差ΔVaよりも大きな値に設定される。測定絶対誤差ΔVaが第二基準値ΔVb2以下であると判定された場合(ΔVb1<ΔVa≦ΔVb2)には、グルコース濃度の演算に使用する検量線データを変更する必要が無いと判断される。その場合には、ステップS304に進み、測定絶対誤差ΔVaの大きさに応じて目標設定温度THtgの設定値が変更される。
【0150】
一方、測定絶対誤差ΔVaが第二基準値ΔVb2を超えていると判定された場合(ΔVa>ΔVb2)には、ステップ306に進む。ステップ306において、センサ制御部12は、グルコース濃度の演算に使用する検量線データを変更する。センサ制御部12は、測定誤差ΔVrが正の値であればセンサ感度がより高まるような検量線データを選択し直し、測定誤差ΔVrが負の値であればセンサ感度がより低くなるような検量線データを選択し直す。そして、本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップS306においては、検量線データの設定(選択)の変更に併せて、ステップS304と同様、目標設定温度THtgの設定値を変更しても良い。これにより、より細やかにグルコースセンサ4のセンサ感度を補正することができる。
【0151】
図23に示した制御例によれば、測定絶対誤差ΔVaが比較的小さい場合には、検量線データを選択し直すことなくグルコースセンサ4の感度を調整することができる。また、血糖値の連続測定期間の長期化等によってグルコースセンサ4の劣化が進行したとしても、グルコース濃度の測定に用いる検量線データを再選択することでグルコースセンサ4におけるセンサ感度の調整幅を広げることができる。更には、必要に応じて、目標設定温度THtgも併せて補正することにより、グルコースセンサ4におけるセンサ感度の調整幅の確保と、その繊細な調整とを両立することが可能となる。本実施例においては第一基準値ΔVb1が本発明における第一閾値に対応している。
【0152】
<実施例8>
上記実施例7では、各測定サイクルの測定期間における目標設定温度THtgの設定値を修正する制御例を説明したが、実施例7では、測定待機期間における待機時目標設定温度THbの設定値を調整する制御例について説明する。本実施例に係る測定装置1、及び第二測定装置50のハード構成は実施例6と同様である。図24は、本実施例に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。この制御ルーチンに係るプログラムは、測定装置1における制御コンピュータ3のROM内に記憶されており、第二測定装置50から設定値調整制御開始の信号を受信することを契機として実行される。図20、図21に示す処理フローと同じ処理を行うステップについては同じ参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0153】
本制御ルーチンが実行されると、ステップS301において、通信部11は、第二測定装置50が第二試料から測定したSMBG測定値Vsmbg及び対応する測定時刻情報を、第二測定装置50の通信部80から受信する。ステップS302において、記憶部14は、通信部11が受信したSMBG測定値Vsmbgをその測定時刻情報と対応付けて記憶する。記憶部14に第二グルコース濃度測定値Vg2の最新データが追加されると、温度制御部13は、続くステップS401において、更新された第二グルコース濃度測定値Vg2に対応する測定時刻と直近の時刻に測定された第一グルコース濃度測定値Vg1のデータ(情報)を抽出する。これにより、温度制御部13は、実質的に同時期(ほぼ同時期)に測定されたCGM測定値Vcgm,SMBG測定値Vsmbgを取得することができる。
【0154】
温度制御部13は、取得したSMBG測定値VsmbgからCGM測定値Vcgmを減算して測定誤差ΔVrを算出する。そして、測定誤差ΔVrが第三基準値ΔVb3を超えているか否かを判定する。第三基準値ΔVb3は、固定化酵素部43の劣化や皮下組織の付着・堆積等に起因するセンサ感度の低下の有無を判別するための閾値である。ここで、測定誤差ΔVrが第三基準値ΔVb3以下であると判定された場合(ΔVr≦ΔVb3)には、グルコースセンサ4の固定化酵素部43における劣化等によるセンサ感度の低下は殆ど無いと判断され、本ルーチンを一旦終了する。一方、測定誤差ΔVrが第三基準値ΔVb3を超えていると判定された場合(ΔVr>ΔVb3)には、固定化酵素部43における劣化等に起因してセンサ感度が低下していると判断され、この場合にはステップS402に進む。
【0155】
ステップS402において、温度制御部13は、各測定サイクルでの測定待機期間における待機時目標設定温度THbの設定値を変更する。待機時目標設定温度THbの変更幅は、測定誤差ΔVrの大きさに応じて調節される。本ルーチンでは、測定誤差ΔVrに定数C2(但し、C2>0)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHbを、現在の待機時目標設定温度THbから減算することで修正後の待機時目標設定温度(以下、「待機時目標修正温度THbm」という)とするようにした(THbm=THb−ΔTHb,ΔTHb=C2×ΔVr)。ここで、CGM測定値VcgmよりもSMBG測定値Vsmbgの方が大きい場合、温度設定変更値ΔTHbが正の値になるため、待機時目標修正温度THbmは現在の待機時目標設定温度THbよりも低温側に変更される。本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。なお、上記算出式は例示であり、これに限定されるものではない。
【0156】
このように、本実施例に係る設定値調整制御によれば、測定誤差ΔVrの大きさに応じて、測定待機期間における待機時目標設定温度THbの設定値を調整するようにしたため、グルコースセンサ4の劣化を阻止し、また、その進行を遅らせることができる。従って、グルコース濃度の連続測定期間が長期に及ぶようになっても、測定精度が低下することを抑制できる。本実施例においては第三基準値ΔVb3が本発明における第二閾値に対応している。
【0157】
(変形例)
次に、本実施例における設定値調整制御の変形例について説明する。図25は、本実施例に係る第二の設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。この制御ルーチンに係るプログラムは、測定装置1における制御コンピュータ3のROM内に記憶されており、第二測定装置50から設定値調整制御開始の信号を受信することを契機として実行される。図24に示したフローチャートでは、測定誤差ΔVrに対する閾値を一つだけ設けるようにしたが、ここでは複数点設定するようにした。本図において、図22〜図24に示す処理フローと同じ処理を行うステップについては同じ参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0158】
本制御ルーチンでは、ステップS401において、測定誤差ΔVrが第三基準値ΔVb3を超えていると判定された場合(ΔVr>ΔVb3)には、ステップS403に進む。ステップS403において、温度制御部13は、測定誤差ΔVrが第四基準値ΔVb4を超えているか否かを判定する。測定誤差ΔVrが第四基準値ΔVb4以下であると判定された場合(ΔVb3<ΔVr≦ΔVb4)にはステップS404に進み、そうでない場合(ΔVr>ΔVb4)にはステップS405に進む。なお、ステップS401において、測定誤差ΔVrが第三基準値ΔVb3以下であると判定された場合(ΔVr≦ΔVb3)には、本ルーチンを一旦終了する。
【0159】
ステップS404において、温度制御部13は、測定誤差ΔVrに定数C2(但し、C2>0)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHbを、現在の待機時目標設定温度THbから減算することで待機時目標修正温度THbmを算出する(THbm=THb−ΔTHb,ΔTHb=C2×ΔVr)。なお、上記算出式は例示であり、これに限定されるものではない。ステップS404の処理が終了するとステップS406に進む。ステップS406の処理内容については後述するため、ここでは先ずステップS405の処理内容について説明する。
【0160】
ステップS405において、温度制御部13は、測定誤差ΔVrが第五基準値ΔVb5を超えているか否かを判定する。第五基準値ΔVb5は、第四基準値ΔVb4よりも大きな値に設定される閾値であり、測定誤差ΔVrが第五基準値ΔVb5を超えた場合には、固定化酵素部43における劣化の進行が顕著であり、グルコースセンサ4の使用を中断すべきと判断される。本ステップにおいて、測定誤差ΔVrが第五基準値ΔVb5を超えていると判定された場合(ΔVr>ΔVb5)にはステップS407に進む。ステップS407において、温度制御部13は、グルコースセンサ3によるグルコース濃度の測定を中止する内容の指示(指令信号)をセンサ制御部12に出力し、グルコース濃度の測定を中断させる(ステップS407)。この場合、測定装置1は、グルコース濃度の連続測定を中断した旨、及び、グルコースセンサ4の新品への交換を促す内容の情報を、携帯型表示機16の表示パネル15などに表示させることで、ユーザに報知する。或いは、グルコース濃度の連続測定の強制的な中断までは行わず、ユーザに注意を喚起するためにグルコースセンサ4の新品への交換を促す内容の警告だけを行うようにしても良い。本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0161】
また、ステップS405において、測定誤差ΔVrが第五基準値ΔVb5以下であると判定された場合(ΔVb4<ΔVr≦ΔVb5)には、ステップS408に進む。ステップS408において、温度制御部13は、測定誤差ΔVrに定数C3(但し、C3>C2)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHb’を、現在の待機時目標設定温度THbから減算することで待機時目標修正温度THbmを算出する(THbm=THb−ΔTHb’,ΔTHb’=C3×ΔVr)。なお、当該算出式は例示であり、これに限定されるものではない。
【0162】
第五基準値ΔVb5は、第四基準値ΔVb4よりも大きな値に設定される閾値であるため、ステップS403において肯定判定、すなわち測定誤差ΔVrが第四基準値ΔVb4を超えていると判定された場合には、否定判定された場合に比べてグルコースセンサ4の劣化がより進行していると判断される。これに対し、待機時目標設定温度THbの低減係数としての定数C3を定数C2よりも大きく設定するようにしたので、ステップS408で算出される温度設定変更値ΔTHb’はステップS404で算出される温度設定変更値ΔTHbよりも大きな値となる。その結果、グルコースセンサ4の劣化度合いが高いほど待機時目標設定温度THbの下げ幅を大きくすることができ、グルコースセンサ4における劣化の進行を好適に遅らせることができる。
【0163】
ステップS408の処理が終了すると、ステップS406に進む。ステップS406において、温度制御部13は、ステップS404又はS408において算出した待機時目標修正温度THbmが所定の許容最低温度THbbよりも低いか否かを判定する。ここで、許容最低温度THbbは、被検者に違和感、不快感等を感じさせずにいられる検出環境温度THsの最低温度である。この許容最低温度THbbは、予め定めておくこともできるし、ユーザによるマニュアル入力を受け付けることで可変設定することも可能である。ステップS406において、肯定判定された場合(THbm<THbb)には前述のステップS407に進む。一方、本ステップにおいて否定判定された場合(THbm≧THbb)には、ステップS409に進む。
【0164】
なお、ステップS406における判定処理、すなわち、待機時目標修正温度THbmが許容最低温度THbbよりも低いか否かを判定する処理は必須の処理ではなく、省略しても良い。その場合には、そのままステップS409に進むと良い。ステップS409において、温度制御部13は、待機時目標設定温度THbの設定値を現在の設定値から待機時目標修正温度THbmへと変更する。この待機時目標修正温度THbmは、ステップS404又はS408において算出された値である。本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0165】
以上のように、本変形例に係る制御によれば、測定誤差ΔVrの大きさに対する閾値を複数点設けたので、グルコースセンサ4劣化の進行を防ぐための処置をその劣化度合いに応じて適切に行うことができる。また、待機時目標修正温度THbmの設定に際しては、検出環境温度THsが低くなり過ぎないように許容最低温度THbbを設定したので、被検者に違和感、不快感等を感じさせることも無い。
【0166】
また、本実施例に係る設定値調整制御では、各測定サイクルの測定待機期間における待機時目標設定温度THbを調整する場合を説明したが、先述した実施例6に係る制御、すなわち測定期間における目標設定温度THtgの調整を併せて実施しても良い。
【0167】
<実施例9>
実施例9では、グルコース連続測定に際して、第一タイミングTm1と、第一タイミングTm1から所定の第一期間ΔTm1(所定期間に対応)の経過前における第二タイミングTm2において取得したCGM測定値Vcgm同士の差に基づいて、測定サイクルにおける測定期間と測定待機期間の双方における検出環境温度THsを調節する。本実施例に係る測定装置1、及び第二測定装置50のハード構成は実施例7と同様である。
【0168】
図26は、本実施例に係る設定値調整制御ルーチンを示したフローチャートである。この制御ルーチンに係るプログラムは、測定装置1における制御コンピュータ3のROM内に記憶されている。図22〜図25に示す処理フローと同じ処理を行うステップについては同じ参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0169】
ステップS501において、温度制御部13は、記憶部14にアクセスし、通信部11を介して受信した最新のSMBG測定値Vsmbgを取得する。そして、温度制御部13は、取得した最新のSMBG測定値Vsmbg(以下、「第一SMBG測定値Vsmbg1」という)が測定された時刻から少なくとも上記第一期間ΔTm1以上遡った時刻であって、直近に記憶部14へと記憶されたSMBG測定値Vsmbg(以下、「第二SMBG測定値Vsmbg2」という)を取得する。
【0170】
次いで、ステップS502において、温度制御部13は、第一SMBG測定値Vsmbg1及び第二SMBG測定値Vsmbg2の差の絶対値(以下、「第二測定絶対誤差ΔV
a2」という)が第六基準値ΔVb6(第三閾値)以下であるかどうかを判定する。第二測定絶対誤差ΔVa2が第六基準値ΔVb6以下(ΔVa2≦ΔVb6)である場合にはステップS503に進み、そうでない場合(ΔVa2>ΔVb6)には本ルーチンを一旦終了する。
【0171】
第一期間ΔTm1は、測定装置1における連続測定の各測定サイクルに対して相対的に大きな期間、例えば数時間〜1日程度に設定されているが、これに限られず適宜変更できる。第六基準値ΔVb6は、このように設定される第一期間ΔTm1の経過前後において、被検者のグルコース濃度の変動が小さいかどうかを判別するための閾値であり、第二測定絶対誤差ΔVa2がこの閾値以下に収まっていれば当該グルコース濃度の変動が小さいと判別される。
【0172】
ステップS503において、温度制御部13は、記憶部14にアクセスし、第一SMBG測定値Vsmbg1の測定時刻に最も近いタイミングで測定されたCGM測定値Vcgm(以下、「第一CGM測定値Vcgm1」という)、及び、第二SMBG測定値Vsmbg2の測定時刻に最も近いタイミングで測定されたCGM測定値Vcgm(以下、「第二CGM測定値Vcgm2」という)を取得する。ここで、第一CGM測定値Vcgm1の測定時刻を第一タイミングTm1とし、第二CGM測定値Vcgm2の測定時刻を第二タイミングTm2とすると、第一タイミングTm1は第二タイミングTm2から概ね第一期間ΔTm1だけ経過した後のタイミングである。第二タイミングTm2から第一タイミングTm1までの経過期間が第一期間ΔTm1に対して多少の差異はあっても、その差異は第一期間ΔTm1に比べれば無視できる程度の短い期間といえる。
【0173】
ステップS504において、温度制御部13は、第一CGM測定値Vcgm1及び第二CGM測定値Vcgm2の差の絶対値(以下、「第三測定絶対誤差ΔVa3」という)を算出する。そして、温度制御部13は、第三測定絶対誤差ΔVa3が第七基準値ΔVb7(第四閾値)を超えているか否かを判定する。ここで、第七基準値ΔVb7は、グルコースセンサ4の感度が適正であるかどうかを判別するための閾値である。第三測定絶対誤差ΔVa3が第七基準値ΔVb7以下である場合、グルコースセンサ4の感度が適正であって、グルコース濃度に測定誤差は殆ど含まれないと判断される。本ステップにおいて、第三測定絶対誤差ΔVa3が第七基準値ΔVb7以下と判定された場合(ΔVa3≦ΔVb7)には、グルコースセンサ4の感度を特段調整する必要が無いと判断され、ステップS505に進む。一方、第三測定絶対誤差ΔVa3が第七基準値ΔVb7を超えていると判定された場合(ΔVa3>ΔVb7)には、ステップS506に進む。
【0174】
ステップS506において、温度制御部13は、測定サイクルの測定期間に関する目標設定温度THtgの設定値を変更する。ここで、第一CGM測定値Vcgm1から第二CGM測定値Vcgm2を減算して得られる測定値の差を、「第二測定誤差ΔVr2」と表記する。本ステップでは、第二測定誤差ΔVr2の大きさに応じて目標設定温度THtgの変更幅を調節する。具体的には、第二測定誤差ΔVr2に定数C4(但し、C4>0)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHtgを、現在の目標設定温度THtgに加えることで目標修正温度THtgmを算出する(THtgm=THtg+ΔTHtg,ΔTHtg=C4×ΔVr2)。なお、当該算出式は例示であり、これに限定されるものではない。
【0175】
ここで、第二測定誤差ΔVr2が正の値であれば温度設定変更値ΔTHtgが高温側に修正されるため、グルコースセンサ4のセンサ感度を高めることができる。一方、第二測定誤差ΔVr2が負の値であれば、温度設定変更値ΔTHtgが低温側に修正されるため、グルコースセンサ4のセンサ感度を低くすることができる。以上のように、本制御例においては、第二測定誤差ΔVr2の大きさに応じて目標設定温度THtgの変更幅が調節
されるので、測定装置1に係るグルコース濃度の測定精度を高めることができる。また、第一CGM測定値Vcgm1よりも第二CGM測定値Vcgm2の方が高い場合には目標設定温度THtgを低温側に修正するようにしたので、グルコースセンサ4における固定化酵素部43の温度が酵素の至適温度域よりも高温となることに起因する劣化の発生を、より確実に回避可能である。本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0176】
一方、ステップS505において、温度制御部13は、前述の測時機(図示省略)にアクセスし、グルコース濃度の連続測定が開始されてから第一タイミングTm1に至るまでの経過期間である経過期間である第二期間ΔTm2を取得する。次いで、ステップS507において、温度制御部13は、第二期間ΔTm2が所定の基準期間ΔTmbを超えているか否かを判定する。基準期間ΔTmbは、グルコースセンサ4の連続使用期間がこの期間以内であれば、グルコースセンサ4の固定化酵素部4が劣化し始めていないと判断できる閾値としての期間である。第二期間ΔTm2が基準期間ΔTmb以内であると判定された場合(ΔTm2≦ΔTmb)、そのまま本ルーチンを一旦終了する。一方、第二期間ΔTm2が基準期間ΔTmbを超えていると判定された場合(ΔTm2>ΔTmb)、ステップS508に進む。
【0177】
ステップS508において、温度制御部13は、各測定サイクルでの測定待機期間における待機時目標設定温度THbの設定値を変更する。待機時目標設定温度THbの変更幅は、第三測定絶対誤差ΔVa3の大きさに応じて調節される。ここでは、第三測定絶対誤差ΔVa3に定数C5(但し、C5>0)を乗算して得られた温度設定変更値ΔTHbを、現在の待機時目標設定温度THbから減算することで待機時目標修正温度THbmを算出する(THbm=THb−ΔTHb,ΔTHb=C5×ΔVa3)。なお、この算出式は例示であり、これに限定されるものではない。
【0178】
本ステップでは、第一期間ΔTm1を挟んで前後する二つの異なるタイミングにおいて測定装置1によって得られた第二CGM測定値Vcgm2及び第一CGM測定値Vcgm1の乖離量が大きいほど、待機時目標設定温度THbを現在の設定値からの下げ幅が大きく設定される。そして、グルコース濃度の連続測定が開始されてから第一タイミングTm1に至るまでの第二期間ΔTm2が基準期間ΔTmbを超えている場合には、待機時目標設定温度THbの設定値を低温側に変更することにより、グルコースセンサ4における劣化の進行を良好に阻止することができる。本ステップの処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0179】
図26に例示した制御ルーチンでは、第一CGM測定値Vcgm1及び第二CGM測定値Vcgm2の乖離量に基づいて、目標設定温度THtg及び待機時目標設定温度THbの双方における設定値を変更しているが、例えば何れか一方についての設定値を変更するようにしても良い。
【0180】
更に、図26に示す制御ルーチンの変形例として、例えばステップS506において、温度制御部13は、目標設定温度THtgの設定値を変更する前に、第一CGM測定値Vcgm1が第二CGM測定値Vcgm2よりも小さいか否かを判定し、肯定判定された場合(Vcgm1<Vcgm2)に上述した如く目標設定温度THtgの設定値を修正することもできる。そして、第一CGM測定値Vcgm1が第二CGM測定値Vcgm2以上であると判定された場合(Vcgm1≧Vcgm2)、そのまま本ルーチンを終了させても良い。第二タイミングTm2に比べて時系列的に後の第一タイミングTm1に対応する第一CGM測定値Vcgm1が第二CGM測定値Vcgm2よりも大きい場合には、グルコースセンサ4に劣化等の不具合が生じていない可能性が高いからである。なお、図26の制御例では、ステップS504で肯定判定された場合にステップS506の処理に進む
関係上、第一CGM測定値Vcgm1と第二CGM測定値Vcgm2が等しいことはない。或いは、第一CGM測定値Vcgm1が第二CGM測定値Vcgm2以上であると判定された場合(Vcgm1≧Vcgm2)、上記説明のように本ルーチンを抜ける代わりにステップS508の処理である待機時目標設定温度THbの設定値変更を行うようにしても良い。これによれば、グルコースセンサ4における劣化の抑制を、より確実なものにすることが可能となる。
【0181】
また、本実施形態における測定装置1は、グルコース濃度を例えば数日間〜数週間に亘り継続して、一定期間毎に定期的に測定する場合を例に説明したが、この例はあくまでも好適な適用例であって、これに限定されるものではない。また、測定装置1は、体液中のグルコース濃度を測定することで被検物質を定量しているが、被検物質が電気化学センサのセンサ部の周囲一定領域に被検物質が存在するか否か、或いは、被検物質があるレベルを超えているか否か等について判別する場合のように、被検物質を定性的に評価するために本発明を適用することも可能である。
【0182】
また、体液中の被検物質は、グルコースに限られるものではなく、例えば乳酸やその他の特定成分であっても良い。その場合、電気化学センサは乳酸のレベルを測定するための乳酸センサとして機能し、そのセンサ部(固定化酵素部)には、例えば乳酸オキシダーゼを固定化しても良い。また、その他の好適な被検物質として、例えば胆汁酸などを例示することができる。また、電気化学センサのセンサ部に保持される生体材料としては、酵素のほか、微生物、抗体、細胞などを好適に適用することができる。また、本実施形態では、人(被検者)の体液中における被検物質に関する数値情報を測定する際に本発明を適用する例を説明したが、他の被検対象(例えば、人以外の動物)の体液を試料としても良いのは勿論である。
【0183】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記測定装置、測定システム、測定方法、プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0184】
1・・・グルコース持続測定装置
2・・・筐体
3・・・制御コンピュータ
4・・・電気化学センサ(グルコースセンサ)
8・・・温度センサ
9・・・ペルチェ素子
10・・・電源
12・・・センサ制御部
13・・・温度制御部
41・・・基板
43・・・固定化酵素部
13A・・・温度解析部
13B・・・電源スイッチ部
13C・・・電流切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の被検物質に関する数値情報を測定する測定装置であって、
前記被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて使用され、該被検物質に関する数値情報に相関する電気信号を生成する電気化学センサと、
前記センサ部の近傍温度である検出環境温度に相関する温度を測定する温度センサ及び前記検出環境温度を調節する温度調節素子を有し、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記温度調節素子の作動状況を制御することにより、前記検出環境温度を前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節する温度制御部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記電気化学センサを制御するセンサ制御部を更に備える、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記センサ制御部は、更に、電気化学センサが生成した電気信号に基づいて前記被検物質に関する数値情報を演算する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節する、請求項1から3の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記温度制御部は、前記電気化学センサを用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更する、請求項1から4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記温度制御部は、
前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節し、
前記電気化学センサを用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更する、請求項1から5の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、前記電気化学センサを用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報に関して、前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得し、
前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更する、請求項1から6の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記温度制御部は、前記電気化学センサを用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、第二測定装置が被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報に関して、前記測定装置
の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得し、
前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節し、
前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更する、請求項1から7の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
体液中の被検物質を検出するためのセンサ部が皮下に植え込まれて配置されるセンサ部を有する電気化学センサを備えた測定装置が被検物質に関する数値情報を測定する測定方法であって、
前記センサ部の近傍温度である検出環境温度が前記被検物質の測定時において目標設定温度となるように調節される、
測定方法。
【請求項10】
前記被検物質の測定時において前記センサ部の近傍温度である検出環境温度に相関する温度を測定する温度センサの測定結果を取得する温度取得ステップと、
前記温度取得ステップにおいて取得した取得温度と目標設定温度とを比較し、該取得温度と目標設定温度との温度差が規定範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記温度差が前記規定範囲を超えていると判定した場合、前記検出環境温度が前記目標設定温度に近づくように該検出環境温度を調節するための温度調節素子の作動状況を制御する制御ステップと、
を含んで、前記被検物質の検出時における前記検出環境温度の調節が行われ、
前記判定ステップにおいて前記取得温度と前記目標設定温度との温度差が前記規定範囲内であると判定された場合に前記電気化学センサが生成した電気信号に基づいて前記被検物質に関する数値情報を演算する演算ステップを、
更に有する、
請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節する、請求項10に記載の測定方法。
【請求項12】
前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第一閾値を超えている場合に前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更する、請求項10又は11に記載の測定方法。
【請求項13】
前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節し、
前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報を取得し、前記第一及び第二の数値情報の差が所定の第二閾値を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更する、請求項10から12の何れか一項に記載の測定方法。
【請求項14】
前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報に関して、前記測定装置の測定開始後における第一タイミン
グと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得し、
前記第一及び第二タイミングにおける前記第二の数値情報同士の差が所定の第三閾値以内であって且つ前記第一及び第二タイミングにおける前記第一の数値情報同士の差が所定の第四閾値を超えている場合に、前記被検物質の測定時における前記目標設定温度の設定値を変更する、請求項10から13の何れか一項に記載の測定方法。
【請求項15】
前記演算ステップにおいて演算された前記被検物質に関する数値情報である第一の数値情報、及び、被検者から体外に採取された体液を用いて測定した前記被検物質に関する数値情報である第二の数値情報に関して、前記測定装置の測定開始後における第一タイミングと該第一タイミングから所定期間だけ遡った第二タイミングに対応する数値情報を各々取得し、
前記被検物質の測定待機時において前記検出環境温度を前記目標設定温度に比べて低い温度に設定される待機時目標設定温度となるように調節し、
前記測定開始から前記第二タイミングに至るまでの経過期間が所定の基準期間を超えている場合に前記被検物質の測定待機時における前記待機時目標設定温度の設定値を低温側に変更する、請求項10から14の何れか一項に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−167503(P2011−167503A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272492(P2010−272492)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】