説明

測定装置及び測定方法

【課題】 デルタ回路のような配線の測定対象部を測定する場合であっても、高周波の電圧源を用いて、短時間で且つ精度良く測定することができる測定方法及び測定装置を提供する。特に、上記の如く、従来技術に利用されるアンプを用いることなく測定を可能にする。
【解決手段】 測定対象となる第一測定部、第二測定部と第三測定部が三角結線にて形成される測定対象部の抵抗値を算出するための測定装置であって、二つの結線用接点と残り一つの結線用接点との間に電力を供給して算出される抵抗値を、夫々の場合に応じて算出し、その結果から、各測定部の抵抗値を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象となる測定部の抵抗値を精度良く且つ効率良く測定するための測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成される配線は、この基板に載置されるICや半導体部品又はその他の電子部品に電気信号を送受信するために用いられる。このような配線は、近年の電子部品の微細化に伴って、より微細に且つ複雑に形成されるようになるとともにより低抵抗に形成されている。
【0003】
このように基板の配線の微細化が進むにつれ、その配線の良/不良を検査する精度の高さが要求されている。
配線が微細化されると、配線自体の抵抗値が小さいものとなり、僅かな誤差や精度の悪さにより、配線の抵抗値を正確に測定できない問題がある。
【0004】
測定対象となる被測定物としては、例えば、プリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板や、半導体ウェハや半導体チップやCSP(Chip size package)などの半導体装置が該当する。
【0005】
被測定物が例えば基板であり、それに搭載されるものがIC等の半導体回路や抵抗器やコンデンサなどの電気・電子部品の場合には、基板に形成された検査対象部が配線や電極になる。その場合には、測定対象部の配線が、それらに電気信号を正確に伝達できることを保証するために、電気・電子部品を実装する前のプリント配線基板、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルの配線が形成された回路基板に設けられた測定点間の抵抗値やリーク電流等の電気的特性を測定し、その測定結果に基づいて、その配線の良否を判断している。
【0006】
このような基板に形成される配線には、図6(a)で示されるような配線の一端(測定点d)と他端(測定点e)間に形成される抵抗部(測定部D)を有する配線や、図6(b)のように三つの抵抗部(測定部A、測定部Bと測定部C)がデルタ形状に形成される配線がある。
【0007】
これらの配線の検査や測定を行う場合には、図7(a)に示される2点(測定点dと測定点e)で挟まれるように形成される線状の測定対象部T2(測定部D)や、図7(b)に示される3つの測定部(第一測定部A、第二測定部B、第三測定部C)を有するデルタ(三角結線)に形成される測定対象部T1が存在する。
このような測定部の抵抗値を実際に測定して算出することにより、測定部の良否判断を行うことになる。
【0008】
より具体的には、図7(a)に示される測定対象部T2では、2点間の抵抗値を測定することにより測定対象部T2の抵抗値を算出するが、図7(a)に示される如く、測定点dと測定点eに導電性の接触子P4、P5を夫々導通接触させ、交流電源を用いて所定電圧を印加し、測定対象部T2を流れる電流を測定する。このようにして、測定対象部T2(測定部D)の抵抗値を算出する(図7(a)参照)。
【0009】
また、図7(b)に示されるごとく、3つの測定部(第一測定部A,第二測定部Bと第三測定部C)を有する測定対象部T1を測定する場合の従来の方法を説明する。
この測定対象部T1では、第一測定点a、第二測定点bと第三測定点cに夫々接触子P1乃至接触子P3を導通接触させて、3つの測定部の測定を実施する。このような場合、測定対象となる測定部にのみ測定電圧を印加するようにして測定が実施されることになる。具体的には、図7(b)で示される如く、測定対象に測定部Bを選択する場合には、測定点aに導通接触する接触子P1と測定点cに導通接触する接触子P3を等電位とするようにアンプAMP(所謂、アクティブガード)を接続する。この図7(b)で示される回路を構成することにより、測定部Bにのみ測定電圧が印加され、測定部Bの抵抗値を算出することになる。なお、アンプを用いて、アクティブガード機能を奏する方法については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0010】
しかしながら、このようにアンプAMPを用いて電位差を無くす方法では、低周波の電圧源しか使用することができなかった。このため、近年の高周波により測定対象部を測定することができない問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平02−49151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、デルタ回路のような配線の測定対象部を測定する場合であっても、高周波の電圧源を用いて、短時間で且つ精度良く測定することができる測定方法及び測定装置を提供する。特に、上記の如く、従来技術に利用されるアンプを用いることなく測定を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、測定対象となる第一測定部、第二測定部と第三測定部が三角結線にて形成される測定対象部の抵抗値を算出するための測定装置であって、前記測定対象部へ測定のための電力を供給するとともに、一方端子と他方端子を有する電力供給手段と、前記測定対象部の電流を検出するとともに、一方端子と他方端子を有する電流検出手段と、前記電力供給手段が印加する電力値と、前記電流検出手段が検出する電流値を基に、抵抗値を算出する算出手段と、前記電力供給手段の両端子と前記電流検出手段の両端子とを、前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点と、該第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点と、前記第三測定部と該第一測定部の間の第三結線用接点に夫々導通接触させる接触子とを電気的に接続する切替手段と、前記電力供給手段、前記電流検出手段、前記算出手段と、前記切替手段を夫々制御する制御手段を有してなり、前記制御手段は、前記切替手段が、前記第一結線用接点に導通接触する接触子と第二結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第一接続状態を算出するよう促し、前記第一接続状態が算出された後に、前記切替手段が、前記第二結線用接点に導通接触する接触子と第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第一結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第二接続状態を算出するよう促し、前記第二接続状態が算出された後に、前記切替手段が、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と第一結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第三接続状態を算出するよう促し、前記第三接続状態が算出された後に、前記算出手段が、前記第一接続状態乃至第三接続状態を基に、前記第一測定部乃至第三測定部の抵抗値を算出するよう促すことを特徴とする測定装置を提供する。
請求項2記載の発明は、前記測定装置は、算出された前記第一測定部乃至第三測定部の抵抗値を基に、該第一測定部乃至第三測定部の良否判定を行う判定する機能を有することを特徴とする請求項1記載の測定装置を提供する。
請求項3記載の発明は、測定対象となる第一測定部、第二測定部と第三測定部が三角結線に形成される測定対象部を測定し、前記測定結果から夫々の測定対象部の良否結果を判定する測定方法であって、前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点と該第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点とを一方側とし、前記第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、前記第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点と該第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点とを一方側とし、前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、前記第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点と該第一測定部と前記第二測定部の間の第二結線用接点とを一方側とし、前記第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、各前記所定電力値と測定電流を基に、前記第一測定部乃至前記第三測定部の抵抗を算出することを特徴とする測定方法を提供する。
請求項4記載の発明は、前記算出された第一測定部乃至前記第三測定部の抵抗値を基に、該第一測定部乃至第三測定部の夫々の良否判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の測定方法を提供する。
これらの発明を提供することによって、上記課題を悉く解決する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1と3に記載の発明によれば、デルタ回路のような配線の測定対象部を測定する場合であっても、高周波の電圧源を用いて、短時間で且つ精度良く測定することができる測定方法及び測定装置を提供することができる。
請求項2と4の記載の発明によれば、デルタ回路のような配線の測定対象部を測定する場合であっても、高周波の電圧源を用いて、短時間で且つ精度良く測定し、良否の判定を行うことができる測定方法及び測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の測定装置を示す概略構成図である。
【図2】制御手段の動作を説明するための概略構成図である。
【図3】本測定装置が測定対象部の測定部を測定する一実施形態の状態図である。なお、測定装置の一部を省略して示している。
【図4】本測定装置が測定対象部の測定部を測定する一実施形態の状態図であり、図3の状態の次の状態を示している。
【図5】本測定装置が測定対象部の測定部を測定する一実施形態の状態図であり、図4の状態の次の状態を示している。
【図6】配線の概略を示しており、(a)は線状配線を示し、(b)はデルタ配線を示している。
【図7】図6の各配線を測定するための従来技術を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明の測定装置1を示す概略構成図である。
本発明の測定装置1は、電力供給手段2、電圧検出手段3、電流検出手段4、制御手段5、算出手段6、切替手段7とスイッチ素子SWを有している。なお、図1では、本発明の特徴の説明の都合、測定対象となる対象部上に設けられる測定点と導通接触するための接触子(図中の符号P1,P2,P3)が三本示されているが、この接触子Pの本数は測定対象により適宜変更されることになる。また、スイッチ素子SW(図1では、6個のスイッチ素子SW1・・・SW6)も接触子Pの数に応じて適宜変更されることになる。
【0017】
電力供給手段2は、測定対象部へ電圧を印加する。この電力供給手段2は、一方端子と他方端子を有しており、これらの測定対象部の一方へこの一方端子を接続し、測定対象部の他方へこの他方端子を接続することにより、測定対象部へ測定のための電力を供給する。
図1の実施形態では、電力供給手段2として交流電源を用いている。
【0018】
電圧検出手段3は、測定対象部の電圧を検出する。この電圧検出手段3が測定対象部の電圧を検出して、この検出情報を制御手段5に送信することにより、電力供給手段2の動作を制御することができるようになる。この電圧検出手段3は、電圧計を採用することができるが、特に限定されるものではない。
【0019】
電流検出手段4は、測定対象部の電流を検出する。この電流検出手段4は、一方端子と他方端子を有しており、これらの測定対象部の一方へこの一方端子を接続し、測定対象部の他方へこの他方端子を接続することにより、測定対象部を流れる電流を検出する。
この電流検出手段4は、電流計を採用することができるが、特に限定されるものではない。
【0020】
制御手段5は、電力供給手段2、電圧検出手段3と電流検出手段4や、後述する算出手段6、切替手段7の動作を制御する制御信号を送信する。この制御手段5により、各手段の動作を制御することにより、本発明の測定方法を実施することになる。この制御手段5は、例えば、CPUを備える演算処理手段やRAM(Random Access Memory)を備える記憶素子等を用いて構成することができる。
【0021】
この制御手段5が行う具体的な動作は、例えば、電力供給手段2、電圧検出手段3や電流検出手段4に対しては、夫々の手段が測定を実施し、その測定した測定結果(測定情報)を、制御手段5へ返送するように促す信号を送信する。また、制御手段5は、このような測定情報が返送される際に、この測定情報に属性情報を付与して格納する。
一方、制御手段5が算出手段6の動作を制御する場合には、制御手段5に格納される数値情報や測定情報並びに演算方法を利用して、所定の演算方法に沿って演算が実施されるよう促す信号や各情報が送信されることになる。
制御手段5が切替手段7の動作を制御する場合には、詳細は後述するが、切替手段7が有する複数のスイッチ素子のON/OFF制御動作を促す信号を、各スイッチ素子に送信することになる。なお、本発明にかかる測定方法に関する制御手段5の具体的な動作は、後ほど説明する。
【0022】
算出手段6は、電力供給手段2が印加する電力値と、電流検出手段3が検出する電流値を基に、抵抗値を算出する。この算出手段6は制御手段5によりその動作が制御され、算出手段6が算出する算出結果(抵抗値)を制御手段5へ返送する。
【0023】
この算出手段6が行う抵抗値の算出は、上記の電力値と電流値を基に行われることになるが、その具体的な動作を説明する。この算出手段6には、数1の計算式が記憶されており、電圧値(V)は電流値(I)と抵抗値(Z)の積に等しい。この数1に測定される電圧値や電流値を入力して、所定の抵抗値が算出されることになる。
(数1)
V=Z・I
【0024】
切替手段7は、電力供給手段2の一方端子及び他方端子並びに電流検出手段3の一方端子及び他方端子を、夫々所望する接触子と接続する。この切替手段7により、接触子を介して、測定対象に電力を供給し、この測定対象から電気信号をからとなる抵抗値を算出することになる。
この切替手段7は、複数のスイッチ素子SWを備えており、各スイッチ素子SWのON/OFF動作を制御することにより、上記の接触子と各手段との接続を可能にする。この切替手段7は、制御手段5からの動作信号により、切替手段7の動作が制御され、その動作制御を受けた切替手段7が具体的に夫々のスイッチ素子SWを制御することになる。
【0025】
図1の実施形態では、切替手段7は、6つのスイッチ素子SW(SW1〜SW6)に、信号を送信することになる。この場合、切替手段7は、夫々のスイッチ素子SWに対して、夫々個別にON/OFF動作するための信号を送信する。例えば、スイッチ素子SW1とスイッチ素子SW4が共にON(接続)動作をする場合には、スイッチ素子SW1とスイッチ素子SW4にON動作の信号が送信され、スイッチ素子SW2、スイッチ素子SW3、スイッチ素子SW5とスイッチ素子SW6にはOFF動作の信号が送信されることになる。なお、スイッチ素子SW1乃至スイッチ素子SW6の全てが、OFF状態である場合には、ON状態に動作すべきスイッチ素子にだけにON動作の信号を送信して制御することもできる。
【0026】
本発明の測定装置1の制御手段5の動作を説明する。
図2は、制御手段5の動作を説明するための概略構成図である。なお、図2では、測定対象部T1の各測定部(測定部A乃至測定部C)を測定するために、各測定点(測定点a乃至測定点c)に夫々接触子(接触子P1乃至接触子P3)を接触させている。なお、後述するスイッチ素子SW1乃至スイッチ素子SW6は全てOFF状態で示されている。
【0027】
本測定装置1がデルタ型の測定対象部T1の各測定部を測定する場合には、三本の接触子Pから二本の接触子Pを上流側(電力供給手段の一方側)として選択し、残り一本の接触子Pを下流側(電力供給手段の他方側)として選択する。この状態で、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。この場合に得られる測定電圧値、測定電流値や後述する算出抵抗値が第一接続状態での取得情報となる。
なお、図3で示される第一接続状態では、上流側として接触子P1と接触子P3が選択され、下流側として接触子P2が選択されている。この第一接続状態での算出抵抗値には、測定部Bと測定部Cの抵抗成分が含まれていることになる。
【0028】
制御手段5が行う具体的な動作は、電力供給手段2の一方端子と電圧検出手段3の一方端子と電流検出手段4の一方端子とを、第一測定点aに導通接触する接触子P1と第三測定点cに導通接触する接触子P3へ夫々電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW1がONする信号とスイッチ素子SW2がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促す。
また同時に、制御手段5は、電力供給手段2の他方端子と電圧検出手段3の他方端子と電流検出手段4の他方端子とを、第二測定点bに導通接触する接触子P2へ電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW6がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促すことになる。
【0029】
次に、制御手段5は、電力供給手段2に測定対象部T1へ所定の電流を印加する制御信号を送信し、電流検出手段4に電流を測定する制御信号を送信するとともに電圧検出手段3に電圧を測定する制御信号を送信する。これらの制御信号を受けて、電力供給手段2は電流を供給(又は電圧を印加)し、電圧検出手段3は電圧を測定し、電流検出手段4は電流を測定することになる。このとき、電力供給手段2が供給する電流に基づく測定対象部T1の電圧と電流が測定され、これらの電流値情報と電圧値情報が制御手段5に送信される。制御手段5は、これらの情報を第一接続状態として記憶することになる。
【0030】
第一接続状態の測定が完了すると、次に、第一接続状態の場合と相違する組み合わせによる二本の接触子を上流側として選択し、残り一本の接触子Pを下流側として選択する。そして、第一接続状態と同じように、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。この場合に得られる測定電圧値、測定電流値や後述する算出抵抗値が第二接続状態での取得情報となる。
なお、この第二接続状態は、例えば、図4で示されるような接続状態であり、この第二接続状態では、接触子P2と接触子P3が上流側として選択され、接触子P1が下流側として選択されている。この第二接続状態では、測定部Aと測定部Bの抵抗成分が、算出抵抗値に含まれて算出されることになる。
【0031】
制御手段5が行う具体的な動作は、電力供給手段2の一方端子と電圧検出手段3の一方端子と電流検出手段4の一方端子とを、第二測定点bに導通接触する接触子P2と第三測定点cに導通接触する接触子P3へ夫々電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW2がONする信号とスイッチ素子SW3がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促す。
また同時に、制御手段5は、電力供給手段2の他方端子と電圧検出手段3の他方端子と電流検出手段4の他方端子とを、第一測定点aに導通接触する接触子P1へ電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW4がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促すことになる。
なお、この第二接続状態は先の第一接続状態から変移するため、制御手段5が、スイッチ素子SW2とスイッチ素子SW5は、状態を変移させないよう制御信号を送信し、スイッチ素子SW1とスイッチ素子SW6が夫々OFFとなる制御信号を送信することもできる。
【0032】
次に、制御手段5は、電力供給手段2に測定対象部T1へ所定の電流を印加する制御信号を送信し、電流検出手段4に電流を測定する制御信号を送信するとともに電圧検出手段3に電圧を測定する制御信号を送信する。これらの制御信号を受けて、電力供給手段2は電流を供給(又は電圧を印加)し、電圧検出手段3は電圧を測定し、電流検出手段4は電流を測定することになる。このとき、電力供給手段2が供給する電流に基づく測定対象部T1の電圧と電流が測定され、これらの電流値情報と電圧値情報が制御手段5に送信される。制御手段5は、これらの情報を第二接続状態として記憶することになる。
【0033】
第二接続状態の測定が完了すると、次に、第一及び第二接続状態の場合と相違する組み合わせによる二本の接触子(残りの組)を上流側として選択し、残り一本の接触子Pを下流側として選択する。そして、第一及び第二接続状態と同じように、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。この場合に得られる測定電圧値、測定電流値や後述する算出抵抗値が第三接続状態での取得情報となる。
なお、この第三接続状態は、例えば、図5で示されるような接続状態であり、この第三接続状態では、接触子P1と接触子P2が上流側として選択され、接触子P3が下流側として選択されている。この第三接続状態では、測定部Aと測定部Cの抵抗成分が、算出抵抗値に含まれて算出されることになる。
【0034】
制御手段5が行う具体的な動作は、電力供給手段2の一方端子と電圧検出手段3の一方端子と電流検出手段4の一方端子とを、第一測定点aに導通接触する接触子P1と第二測定点bに導通接触する接触子P2へ夫々電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW1がONする信号とスイッチ素子SW3がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促す。
また同時に、制御手段5は、電力供給手段2の他方端子と電圧検出手段3の他方端子と電流検出手段4の他方端子とを、第三測定点cに導通接触する接触子P3へ電気的に接続するための制御信号(スイッチ素子SW5がONする信号)を切替手段7へ発信するよう促すことになる。
なお、この第三接続状態は先の第二接続状態から変移するため、制御手段5が、スイッチ素子SW2とスイッチ素子SW4が夫々OFFとなる制御信号を送信し、スイッチ素子SW3とスイッチ素子SW6には状態を変移させないよう制御信号を送信することもできる。
【0035】
次に、制御手段5は、電力供給手段2に測定対象部T1へ所定の電流を印加する制御信号を送信し、電流検出手段4に電流を測定する制御信号を送信するとともに電圧検出手段3に電圧を測定する制御信号を送信する。これらの制御信号を受けて、電力供給手段2は電流を供給(又は電圧を印加)し、電圧検出手段3は電圧を測定し、電流検出手段4は電流を測定することになる。このとき、電力供給手段2が供給する電流に基づく測定対象部T1の電圧と電流が測定され、これらの電流値情報と電圧値情報が制御手段5に送信される。制御手段5は、これらの情報を第三接続状態として記憶することになる。
【0036】
制御手段5は、第一接続状態、第二接続状態と第三接続状態の夫々の電圧情報と電流情報が得られると、算出手段6へこれらの情報を送信する。このとき、制御手段5は、これらの情報から算出手段6が抵抗値情報を算出するように促す。制御手段5は算出手段6が算出した抵抗値情報を受け取ることになる。
【0037】
算出手段6が、デルタ型測定対象部T1の測定する場合に、制御手段5から電圧情報と電流情報を受け取った際には、各測定部の抵抗値を算出する処理が行われることになる。
まず、算出手段6は、第一接続状態乃至第三接続状態における各接続状態での抵抗値を算出する。この場合、算出手段6の動作は、数1を利用して、第一接続状態での第一抵抗値情報を算出する。この第一抵抗値情報は、測定部Bと測定部Cの抵抗成分を含む抵抗値情報であり、測定部Bと測定部Cが並列接続した状態の影響を受けている。
算出手段6は、数1を利用して、第二接続状態や第三接続状態での第二抵抗値情報と第三抵抗値情報が算出される。このとき、第二抵抗値情報は、測定部Aと測定部Bの抵抗成分を含む抵抗値情報であり、測定部Aと測定部Bが並列接続した状態の影響を受けている。第三抵抗値情報は、測定部Aと測定部Cの抵抗成分を含む抵抗値情報であり、測定部Aと測定部Cが並列接続した状態の影響を受けている。
【0038】
算出手段6が、第一抵抗値情報乃至第三抵抗値情報を算出し、これらの抵抗値情報から、測定部A乃至測定部Cの夫々の抵抗値を算出する。
この算出手段6が行う具体的な動作は、上記の如き三つの条件式(第一抵抗値情報乃至第三抵抗値情報)となる抵抗値情報から三つの変数(測定部A、測定部Bと測定部C)を求めることができれば特に限定されないが、例えば、三つの条件式を和算して、各条件式に戻して、各変数を算出する方法を例示することができる。
【0039】
算出手段6が、各測定部の抵抗値を算出すると、これらの抵抗値の情報を制御手段5へ返信する。このとき、算出手段6は各測定部の情報と抵抗値の情報を関連付けて返信される。制御手段5は、算出手段6からの算出結果である各測定部の抵抗値の情報を測定部の情報と関連付けられて受け取ることになる。
【0040】
制御手段6は、算出手段6からの抵抗値の情報を基に、各測定部の良否判定を行う機能を有することが好ましい。
制御手段6は、算出手段6から第一測定部Aの抵抗値の情報、第二測定部Bの抵抗値の情報と第三測定部Cの抵抗値の情報を得るため、予め記憶している各測定部の基準抵抗値と比較して、各測定部の良否判定を行う。この場合、制御手段6は、基準抵抗値を所定の幅に設定しておき、算出された測定部の抵抗値がこの基準抵抗値内に存在するか否かで判定することができる。
【0041】
制御手段5や算出手段6は、例えば、演算素子や記憶素子を用いて構成することができ、上記の動作を行うことができるのであれば、その構成部品は特に限定されるものではない。
以上が本発明の測定装置の構成の説明である。
【0042】
次に、測定装置の動作について説明する。
本測定装置では、まず、測定対象となる複数の配線が形成される基板(デルタ回路を有する基盤)が測定を行うための載置台(図示せず)に載置される。基板が載置台に載置されると、この基板の複数の配線の抵抗値を夫々測定するために設定される測定点に導通接触する複数の接触子を備える治具を、所定の位置にて基板と接触するよう位置決めする。
基板に対して治具が位置決めされて、所定の測定点に所定の接触子が導通接触すると、測定が実施されることになる。
上記の如く、基板を測定するための準備がなされ、測定が開始されることになる。なお、基板に形成されるデルタ回路部以外の信号配線などは、配線の両端に接触子が導通接触されており、これらの接触子により電圧が印加されるとともに、これらの接触子に流れる電流を測定することにより、この配線の抵抗値を算出し、配線の良否を判定することになる。
【0043】
基板に形成されるデルタ回路部を測定する場合を説明する。
デルタ回路部である測定対象部T1には、第一測定部A、第二測定部Bと第三測定部Cが設けられており、第一測定部Aと第二測定部Bの結線接点となる第一測定点a、第二測定部Bと第三測定部Cの結線接点となる第二測定点bと第三測定部Cと第一測定部Aの結線接点となる第三測定点cを有している(図6(b)参照)。この場合、図2で示される状態に準備されていることになる。
【0044】
測定対象部T1を測定するために、まず、本測定装置1がデルタ型の測定対象部T1の各測定部を測定する場合には、接触子P1と接触子P3を上流側として選択し、接触子P2を下流側として選択する(図3参照)。この状態で、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。そして、この場合に得られる測定電圧値、測定電流値を第一接続状態として情報を取得する。
【0045】
次に、接触子P2と接触子P3を上流側として選択し、接触子P1を下流側として選択する(図4参照)。この状態で、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。そして、この場合に得られる測定電圧値、測定電流値を第二接続状態として情報を取得する。
【0046】
次いで、接触子P1と接触子P2を上流側として選択し、接触子P3を下流側として選択する(図5参照)。この状態で、電力供給手段2により電力を供給し、電圧検出手段3により電圧を測定し、電流検出手段4により電流を測定する。そして、この場合に得られる測定電圧値、測定電流値を第三接続状態として情報を取得する。
【0047】
第一接続状態、第二接続状態と第三接続状態の夫々の測定電圧値と測定電流値が取得されると、夫々の算出抵抗値情報が算出される。ここで、第一接続状態での算出抵抗値情報は、測定部Bと測定部Cの抵抗成分を有しており、第二接続状態での算出抵抗値情報は、測定部Aと測定部Bの抵抗成分を有しており、第三接続状態での産出抵抗値情報は、測定部Aと測定部Cの抵抗成分を有していることになる。
【0048】
そして、これら3つの接続状態から各測定部の抵抗値を算出する。測定部A乃至測定部Cの夫々の抵抗値が算出されると、夫々の測定部での基準抵抗値と比較される。このとき、基準抵抗値の許容範囲内に算出抵抗値が存在する場合には良として判断され、この許容範囲に無い場合には不良と判定されることになる。
以上が本発明の測定方法の説明である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・測定装置
2・・・・電力供給手段
3・・・・電圧検出手段
4・・・・電流検出手段
5・・・・制御手段
6・・・・算出手段
7・・・・切替手段
A・・・・第一測定部
a・・・・第一測定点
B・・・・第二測定部
b・・・・第二測定点
C・・・・第三測定部
c・・・・第三測定点
P・・・・接触子
SW・・・スイッチ素子
T1・・・測定対象部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる第一測定部、第二測定部と第三測定部が三角結線にて形成される測定対象部の抵抗値を算出するための測定装置であって、
前記測定対象部へ測定のための電力を供給するとともに、一方端子と他方端子を有する電力供給手段と、
前記測定対象部の電流を検出するとともに、一方端子と他方端子を有する電流検出手段と、
前記電力供給手段が印加する電力値と、前記電流検出手段が検出する電流値を基に、抵抗値を算出する算出手段と、
前記電力供給手段の両端子と前記電流検出手段の両端子とを、前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点と、該第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点と、前記第三測定部と該第一測定部の間の第三結線用接点に夫々導通接触させる接触子とを電気的に接続する切替手段と、
前記電力供給手段、前記電流検出手段、前記算出手段と、前記切替手段を夫々制御する制御手段を有してなり、
前記制御手段は、
前記切替手段が、前記第一結線用接点に導通接触する接触子と第二結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、
前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、
前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、
前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第一接続状態を算出するよう促し、
前記第一接続状態が算出された後に、前記切替手段が、前記第二結線用接点に導通接触する接触子と第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第一結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、
前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、
前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、
前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第二接続状態を算出するよう促し、
前記第二接続状態が算出された後に、前記切替手段が、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と第一結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の一方端子と前記電流検出手段の一方端子とを導通接続させ、かつ、前記第三結線用接点に導通接触する接触子と、前記電力供給手段の他方端子と前記電流検出手段の他方端子とを導通接続させるよう促し、
前記電力供給手段が所定電力を供給するように促し、
前記電流検出手段が電流を検出するよう促し、
前記算出手段が、前記所定電力値と前記電流値を基に第三接続状態を算出するよう促し、
前記第三接続状態が算出された後に、前記算出手段が、前記第一接続状態乃至第三接続状態を基に、前記第一測定部乃至第三測定部の抵抗値を算出するよう促すことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定装置は、算出された前記第一測定部乃至第三測定部の抵抗値を基に、該第一測定部乃至第三測定部の良否判定を行う判定する機能を有することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
測定対象となる第一測定部、第二測定部と第三測定部が三角結線に形成される測定対象部を測定し、前記測定結果から夫々の測定対象部の良否結果を判定する測定方法であって、
前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点と該第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点とを一方側とし、前記第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、
前記第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点と該第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点とを一方側とし、前記第一測定部と前記第二測定部の間の第一結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、
前記第三測定部と前記第一測定部の間の第三結線用接点と該第一測定部と前記第二測定部の間の第二結線用接点とを一方側とし、前記第二測定部と前記第三測定部の間の第二結線用接点を他方側として、前記一方側と前記他方側の間に所定電力を供給して電流値を測定し、
各前記所定電力値と測定電流を基に、前記第一測定部乃至前記第三測定部の抵抗を算出することを特徴とする測定方法。
【請求項4】
前記算出された第一測定部乃至前記第三測定部の抵抗値を基に、該第一測定部乃至第三測定部の夫々の良否判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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