説明

測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置

【課題】 補正精度を向上することができる、測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置を提供する。
【解決手段】 試験治具26と基準治具16とで、相対補正データ取得用試料を測定し、試験治具26での測定値から基準治具16での測定値の推定値を算出するための第1の数式を求める。周波数ごとに、試験治具26と基準治具16とで、残留誤差補正データ取得用試料を測定し、第1の数式を用いて算出した基準治具16での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を求める。任意の電子部品について、試験治具26で測定し、試験治具26での測定値から第1の数式を用いて基準治具16での測定値の推定値を算出し、この推定値を第2の数式を用いて補正する。第2の数式は多項式又は有理式である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置に関し、詳しくは、電子部品の電気特性を、試験治具に実装した状態で測定した結果から、その電子部品を基準治具に実装して測定したならば得られるであろう電気特性の推定値を算出する、測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面実装型電子部品などの同軸コネクタを有しない電子部品は、同軸コネクタを有する治具に実装し、治具と測定装置の間を同軸ケーブルを介して接続して、電気特性が測定されることがある。このような測定においては、個々の治具の特性のばらつきや、個々の同軸ケーブル及び測定装置の特性のばらつきが、測定誤差の原因となる。
【0003】
同軸ケーブル及び測定装置については、基準特性を有する標準器を同軸ケーブルを介して測定装置に接続して測定することにより、標準器を接続した同軸ケーブル先端よりも測定装置側の誤差を同定することができる。
【0004】
しかし、治具については、電子部品を実装する部分の接続端子と同軸ケーブルに接続するための同軸コネクタとの間の電気特性の誤差を精度よく同定することができない。また、治具間の特性が一致するように調整することは容易ではない。特に広い帯域幅で、治具間の特性が一致するように治具を調整することは、極めて困難である。
【0005】
そこで、標準試料を複数の治具に実装して測定し、治具間における測定値のばらつきから、ある治具(以下、「基準治具」という。)と他の治具(以下、「試験治具」という。)との間の相対的な誤差を補正する数式を予め導出しておき、任意の電子部品の電気特性について、試験治具に実装した状態で測定した測定値(以下、「試験治具測定値」ともいう。)から、この数式を用いて、その電子部品を基準治具に実装して測定した測定値(以下、「基準治具測定値」ともいう。)の推定値を算出する、いわゆる相対補正法が提案されている。
【0006】
例えば、基準治具はユーザに対して電気特性を保証するために用い、試験治具は電子部品の製造工程における良品選別のための測定に用いる。具体的には、各ポートについて、試験治具誤差を除去する散乱行列と基準治具誤差の散乱行列を合成した散乱行列(これを、「相対補正アダプタ」という。)をそれぞれ導出する。その相対補正アダプタを、試験治具測定値の散乱行列に対し合成することで、基準治具測定値の推定値を算出する。相対補正アダプタは、各ポートについて、それぞれ少なくとも3つの標準試料を、基準治具と試験治具の両方で測定し、その測定結果から計算できる(例えば、非特許文献1、2参照)。
【非特許文献1】GAKU KAMITANI(Murata manufacturing Co.,Ltd.) "A METHOD TO CORRECT DIFFERENCE OF IN−FIXTURE MEASUREMENTS AMONG FIXTURES ON RF DEVICES" APMC Vol.2, p1094−1097, 2003
【非特許文献2】J.P.DUNSMORE, L.BETTS (Agilent Technologies) "NEW METHODS FOR CORRELATING FIXTURED MEASUREMENTS" APMC Vol.1, p568−571, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
相対補正アダプタは、線形回路網モデルを用い、伝達関数は周波数によって変化せず一定であることを前提として導出されている。そのため、高周波電気特性測定系における線形的な治具間差異要因は補正できる。
【0008】
しかし、例えば測定時に試料に加えられた荷重によって試料の電気特性が変化したり、治具のポート間において無視し得ない大きさの漏洩が発生したりするといった非線形的な治具間差異要因までは、補正アダプタでは補正できない。そのため、試験治具に実装した状態での測定値から相対補正アダプタを適用して算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、測定周波数によって大きさが変動する誤差(以下、「残留誤差」という。)が残存する。特に、構造の大きく異なる治具間について補正を行う場合には、残留誤差が拡大する。
【0009】
電子部品の製造工程において、相対補正アダプタを適用して電子部品の良品選別を行った場合、残留誤差は製品の歩留まりを低下させる要因となる。そのため、補正精度の向上が望まれる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑み、補正精度を向上することができる、測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した測定誤差の補正方法を提供する。
【0012】
測定誤差の補正方法は、第1ないし第6のステップを備える。前記第1のステップにおいて、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とで、相対補正データ取得用試料をそれぞれ測定する。前記第2のステップにおいて、前記第1のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を求める。前記第3のステップにおいて、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態と前記基準治具に実装した状態とで、残留誤差補正データ取得用試料をそれぞれ測定する。前記第4のステップにおいて、前記第3のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を求める。前記第5のステップにおいて、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定する。前記第6のステップにおいて、前記第5のステップでの測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は多項式である。
【0013】
上記方法において、第3のステップでは、第2の数式(多項式)の次数に応じた最低個数(次数+1個)以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定し、第4ステップでは、第3ステップでの測定結果から、多項式の係数を決定する。第2の数式が多項式であれば、第4のステップは、計算機を用いて計算処理を簡単に行うことができる。
【0014】
上記第2ステップにおいて、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した測定誤差の補正方法を提供する。
【0016】
測定誤差の補正方法は、第1ないし第6のステップを備える。前記第1のステップにおいて、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とで、相対補正データ取得用試料をそれぞれ測定する。前記第2のステップにおいて、前記第1のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を求める。前記第3のステップにおいて、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態と前記基準治具に実装した状態とで、残留誤差補正データ取得用試料をそれぞれ測定する。前記第4のステップにおいて、前記第3のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を求める。前記第5のステップにおいて、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定する。前記第6のステップにおいて、前記第5のステップでの測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は有理式である。
【0017】
上記方法において、第3のステップでは、第2の数式(有理式)の次数に応じた最低個数以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定し、第4ステップでは、第3ステップでの測定値から有理式の係数を決定する。第2の数式が有理式であれば、第4のステップは計算機を用いて計算処理を簡単に行うことができる。
【0018】
上記第2ステップにおいて、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0019】
好ましくは、上記各方法において、上記第2の数式が1次式である。
【0020】
ここで、多項式が1次式であるとは、指数が1のパラメータにかけあわせる係数が0以外であり、指数が2以上のパラメータにかけあわせる項がない場合をいう。有理式が1次式であるとは、有理式を多項式の商で表したとき、分母が1次の多項式となり、分子が0次又は1次の多項式となる場合である。
【0021】
残留誤差の補正精度は、第2の数式が1次式であれば、実用上十分である。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくてすむため、第3ステップでの残留誤差補正データ取得用試料の測定時間を短縮することができる。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくなれば、残留誤差補正データ取得用試料を管理する負担も軽減される。
【0022】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電子部品特性測定装置を提供する。
【0023】
電子部品測定装置は、電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出するタイプのものである。電子部品特性測定装置は、記憶手段と、第1の数式決定手段と、第2の数式決定手段と、電気特性推定手段とを備える。前記記憶手段は、前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果とを格納する。前記第1の数式決定手段は、前記記憶手段に格納された前記第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を決定する。前記第2の数式決定手段は、前記記憶手段に格納された前記第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を決定する。前記電気特性推定手段は、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は多項式である。
【0024】
上記構成において、第2の数式決定手段は、第2の数式(多項式)の次数に応じた最低個数(次数+1個)以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定した測定結果から、多項式の係数を決定する。第2の数式が多項式であれば、第2の数式決定手段は、計算処理を簡単に行うことができる。
【0025】
上記構成において、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0026】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電子部品特性測定装置を提供する。
【0027】
電子部品特性測定装置は、電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出するタイプのものである。電子部品特性測定装置は、記憶手段と、第1の数式決定手段と、第2の数式決定手段と、電気特性推定手段とを備える。前記記憶手段は、前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果とを格納する。前記第1の数式決定手段は、前記記憶手段に格納された前記第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を決定する。前記第2の数式決定手段は、前記記憶手段に格納された前記第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を決定する。前記電気特性推定手段は、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は有理式である。
【0028】
上記構成において、第2の数式決定手段は、第2の数式(有理式)の次数に応じた最低個数以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定した測定結果から、有理式の係数を決定する。第2の数式が有理式であれば、第2の数式決定手段は、計算処理を簡単に行うことができる。
【0029】
上記構成において、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0030】
好ましくは、上記各構成において、上記第2の数式が1次式である。
【0031】
ここで、多項式が1次式であるとは、指数が1のパラメータにかけあわせる係数が0以外であり、指数が2以上のパラメータにかけあわせる項がない場合をいう。有理式が1次式であるとは、有理式を多項式の商で表したとき、分母が1次の多項式となり、分子が0次又は1次の多項式となる場合である。
【0032】
残留誤差の補正精度は、第2の数式が1次式であれば、実用上十分である。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくてすむため、残留誤差補正データ取得用試料の測定時間を短縮することができる。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくなれば、残留誤差補正データ取得用試料を管理する負担も軽減される。
【0033】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電子部品特性測定装置を提供する。
【0034】
電子部品測定装置は、電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出するタイプのものである。電子部品特性測定装置は、記憶手段と、電気特性推定手段とを備える。前記記憶手段は、a)前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式と、b)周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式とを記憶する。前記電気特性推定手段は、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は多項式である。
【0035】
上記構成において、第2の数式(多項式)の次数に応じた最低個数(次数+1個)以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定した測定結果から、多項式の係数が決定される。
【0036】
上記構成において、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0037】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電子部品特性測定装置を提供する。
【0038】
電子部品特性測定装置は、電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出するタイプのものである。電子部品特性測定装置は、記憶手段と、電気特性推定手段とを備える。前記記憶手段は、a)前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するために第1の数式と、b)周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式とを記憶する。前記電気特性推定手段は、任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する。前記第2の数式は有理式である。
【0039】
上記構成において、第2の数式(有理式)の次数に応じた最低個数以上の残留誤差補正データ取得用試料を、試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とでそれぞれ測定した測定結果から、有理式の係数が決定される。
【0040】
上記構成において、第1の数式は各測定周波数毎に定義される。しかし、試験治具に実装した状態での測定値から第1の数式を用いて算出した基準治具に実装した状態での測定値の推定値には、各測定周波数毎に大きさが異なる誤差(すなわち、残留誤差)を含むことがある。このような残留誤差は、第2の数式を用いて補正することができる。
【0041】
好ましくは、上記各構成において、上記第2の数式が1次式である。
【0042】
ここで、多項式が1次式であるとは、指数が1のパラメータにかけあわせる係数が0以外であり、指数が2以上のパラメータにかけあわせる項がない場合をいう。有理式が1次式であるとは、有理式を多項式の商で表したとき、分母が1次の多項式となり、分子が0次又は1次の多項式となる場合である。
【0043】
残留誤差の補正精度は、第2の数式が1次式であれば、実用上十分である。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくてすむため、残留誤差補正データ取得用試料の測定時間を短縮することができる。残留誤差補正データ取得用試料の個数が少なくなれば、残留誤差補正データ取得用試料を管理する負担も軽減される。
【発明の効果】
【0044】
本発明の測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置は、補正精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0046】
図5(a)及び(b)に示すように、電子部品は、異なる測定系10,20で測定する。いずれの測定系10,20においても、治具16,26の実装部18,28に電子部品を実装した状態で、測定装置12,22を用いて電気特性の測定を行う。測定時には、治具16,26に設けられた同軸コネクタ17a,17b,17c;27a,27b,27cに、測定装置12,22に接続された同軸ケーブル13a,13b,13c;23a,23b,23cの先端に設けられた同軸コネクタ14a,14b,14c;24a,24b,24cを接続する。
【0047】
図示していないが、治具16,26の実装部18,28には、電子部品の各端子にそれぞれ圧接する接続端子が設けられ、その接続端子が同軸コネクタ17a,17b,17c;27a,27b,27cにそれぞれ電気的に接続されている。
【0048】
測定装置12,22は、予め、同軸コネクタ14a,14b,14c;24a,24b,24cに、既知の電気特性を有する標準器(例えば、同軸形状の電子部品)を接続してキャリブレーションを行う。したがって、測定装置12、22が同一であってもよい。
【0049】
測定装置12,22には、例えばベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)を用いる。VNAは、複数のポートを有し高周波で用いられる電子部品の電気特性を単に測定するだけでなく、測定した生データを任意に設定したプログラムにより演算して出力する機能も備え、演算に用いるデータやプログラムを適宜に入力することができる。
【0050】
一方の測定系10の治具16(以下、「基準治具16」と言う。)は、例えばユーザに対して電気特性を保証するために用いる。他方の測定系20の治具26(以下、「試験治具26」と言う。)は、例えば電子部品の製造工程における良品選別のための測定に用いる。
【0051】
基準治具16に実装して測定系10で測定したときの電子部品の電気特性の測定値(以下、「基準治具測定値」という。)と、試験治具26に実装して測定系20で測定したときの電子部品の電気特性の測定値(以下、「試験治具測定値」という。)とは、それぞれ測定誤差を含む。同軸コネクタ14a,14b,14c;24a,24b,24cから測定装置12,22側は、標準器を接続して予めキャリブレーションを行っているので、治具16,26の測定誤差を相対補正法によって補正することができる。
【0052】
すなわち、予め、治具16,26間の相対的な測定誤差を補正する相対補正アダプタ(第1の数式)を導出しておく。そして、任意の電子部品について、試験治具26に実装し、測定装置22を用いて測定した試験治具測定値から、予め導出した補正アダプタ(第1の数式)を用いて、その電子部品を基準治具16に実装して測定したならば得られるであろう基準治具測定値の推定値を算出する。
【0053】
〔相対補正法〕
ここで、電子部品を試験治具26に実装して測定した試験治具測定値から、相対補正アダプタを用いて、基準治具16に実装して測定した基準治具測定値の推定値を算出する相対補正法の基本原理について、説明する。以下では、簡単のため、2ポート間の電気特性について2端子対回路を例に説明するが、n端子対回路(nは、1、又は3以上の整数)に対しても拡張することができる。
【0054】
図6(a)は、2ポートの電子部品(以下、「試料DUT」と言う。)を実装した基準治具16の2端子対回路を示す。試料DUTの特性を散乱行列(SDUT)で表している。基準治具16における同軸コネクタと試料DUTのポートとの間の誤差特性を散乱行列(ED1),(ED2)で表している。回路の両側の端子において、基準治具に試料DUTを実装した基準状態での測定値S11D,S21Dが得られる。
【0055】
図6(b)は、試料DUTを実装した試験治具26の2端子対回路を示す。試料DUTの特性を散乱行列(SDUT)で表している。試験治具26における同軸コネクタと試料DUTのポートとの間の誤差特性を散乱行列(ET1),(ET2)で表している。回路の両側の端子において、試験治具に試料DUTを実装した基準状態での測定値S11T,S21Tが得られる。
【0056】
図6(c)は、図6(b)の回路の両側に、誤差特性(ET1),(ET2)を中和するアダプタ(ET1−1,(ET2−1を接続した状態を示す。このアダプタ(ET1−1,(ET2−1は、理論上は、誤差特性の散乱行列(ET1),(ET2)を伝送行列に変換し、その逆行列を求め、再度散乱行列に変換することにより得られる。誤差特性(ET1),(ET2)とアダプタ(ET1−1,(ET2−1との間の境界部分30,32において、試験治具26に試料DUTを実装して測定した試験治具測定値S11T,S21Tが得られる。図6(c)の回路は、試験治具26の誤差が除去され、回路の両側の端子において、試料DUTそのものの測定値S11DUT,S21DUTが得られる。
【0057】
図6(c)の回路は試料DUTのみと等価であるので、図6(a)と同様に、両側に、基準治具16の誤差特性の散乱行列(ED1),(ED2)を接続すると、図7(a)のようになる。
【0058】
図7(a)において符号34で示した(ED1),(ET1−1を合成した散乱行列を(CA1)とし、符号36で示した(ET2−1,(ED2)を合成した散乱行列を(CA2)とすると、図7(b)のようになる。これらの散乱行列(CA1),(CA2)は、いわゆる「相対補正アダプタ」であり、試験治具測定値S11T,S21Tと基準治具測定値S11D,S21Dとを関係付ける。したがって、相対補正アダプタ(CA1),(CA2)が決まれば、任意の電子部品を試験治具に実装した状態での測定値S11T,S21Tから、相対補正アダプタ(CA1),(CA2)を用いて、基準治具測定値S11D,S21Dを算出(推定)することができる。
【0059】
各相対補正アダプタ(CA1),(CA2)は、それぞれ、4つの係数c00,c01,c10,c11;c22,c23,c32,c33を含むが、相反定理により、c01=c10、c23=c32となる。したがって、従来は、各ポートについて、特性の異なった3種類の1ポート標準試料(補正データ取得用試料)を基準治具16と基準治具26とに実装して測定し、各係数c00,c01,c10,c11;c22,c23,c32,c33を決定していた。
【0060】
〔残留誤差の補正〕
上述したように、試験治具に実装した状態で電子部品の特性(試験治具測定値)を測定し、その測定結果に相対補正アダプタを適用して、基準治具に実装した状態での特性(基準治具測定値)を推定することができる。しかし、実際には、試料の電気特性測定時に試料に加えられる荷重によって生じる試料の電気特性変化や無視し得ない大きさの治具のポート間漏洩といった非線形的な治具間差異要因のため、相対補正アダプタを用いただけでは、試験治具測定値を基準治具測定値に完全に補正することができず、残留誤差(基準治具測定値の推定値と実測値と誤差)が残る。そこで、残留誤差補正式(第2の数式)を用いて補正精度の向上を図る。
【0061】
次に、残留誤差補正式を用いて補正精度を向上する場合の手順の概要について、説明する。
【0062】
まず、例えば少なくとも3個の補正データ取得用試料を、基準治具と試験治具の双方で測定し、その測定結果より、試験治具で測定した試験治具測定値から基準治具で測定したならば得られるであろう基準治具測定値の推定値を導出するための相対補正アダプタ(第1の数式)を算出する。
【0063】
次に、測定対象と類似した特性を持つ任意の試料(以下、「残留誤差補正データ取得用試料」という。)を、基準治具と試験治具の双方で測定する。そして、試験治具で測定した試験治具測定値から、相対補正アダプタを用い、基準治具で測定したならば得られるであろう基準治具測定値(推定値)を算出し、実際に基準治具で測定したときの測定値(実測値)との差、すなわち残留誤差を求める。周波数ごとに、測定と残留誤差の算出を行い、周波数をパラメータとして残留誤差の近似関数、すなわち残留誤差補正式(第2の数式)を求める。
【0064】
そして、測定対象の試料について、試験治具に実装した状態で測定し、その試験治具測定値に相対補正アダプタを適用して、基準治具で測定したならば得られるであろう基準治具測定値(推定値)を算出し、これに対して、残留誤差の近似関数(残留誤差補正式)を用いて算出した残留誤差の予測値をオフセットとして加える。
【0065】
次に、残留誤差補正式(第2の数式)には多項式又は有理式を用いることができることを説明する。
【0066】
〔多項式による補正〕
周波数fにおいて、次式を想定する。
【数1】

ここで、Sは図5に示したような、電気部品の電気特性を測定する測定系において、補正アダプタ法の適用対象試料を基準治具に実装した状態で測定したときの測定値(以下、「基準治具測定値」という。)、Sは同じく補正アダプタ法の適用対象試料を試験治具に実装した状態で測定したときの測定値(以下、「試験治具測定値」という。)、g()は補正アダプタ法による変換関数、εは残留誤差であり、それぞれ複素数である。
【0067】
(1)式を複素数zの関数と考えると、任意の測定値aの周辺ではテイラーの公式より以下が成り立つ。
【数2】

ここで、A,B,C,Dは、定数である。
【0068】
zを狭い範囲で考えると、(2)式は少ない次数の項までで近似できる。近似に必要な次数を設定し、(次数+1)個の残留誤差補正データ取得用試料の測定を行い、測定値と誤差の連立方程式を解くことにより、εを求めることができる。
【0069】
具体例として、(2)式が1次式の場合には、次の(3)のような形で表すことができる。
【数3】

【0070】
(3)式を(1)式に代入すれば、すなわち、補正アダプタを適用して求めた基準治具測定値の推定値g(St)について、Stの関数として求めたεを加算すれば、試験治具測定値Stから基準治具測定値Sdを推定することができる。
【0071】
残留誤差補正式、すなわち、残留誤差補正データ取得用試料を用いて定数A,Bを求めた(3)式を、その他の試料の残留誤差の補正に用いることにより、残留誤差を低減することができる。すなわち、補正アダプタを適用して求めた基準治具測定値の推定値g(St)に、残留誤差補正データ取得用試料の測定から求めた残留誤差の予測式である残留誤差補正式を用いて算出した残留誤差の予測値を加算する補正を行う。これにより、試料測定時における補正アダプタ法の残留誤差を低減することができる。
【0072】
次に、このような残留誤差補正方法の妥当性について検証する。
【0073】
伝達系における代表的な誤差要因としては、ポート間の漏洩(Leakage)が挙げられる。漏洩はシグナルフローダイヤグラムにおいてモデル化はされているものの、正確には表現できないため、現実の測定においては十分に小さい(換言すれば、寄与しない)ことを前提としている。測定系が全て同軸系で完結していれば、このような扱いでも間題を生じないが、現実に高周波デバイスを運用する環境は表面実装などであるため、漏洩が常に十分に小さいとは言えないのが現状である。
【0074】
図1に、漏洩が存在する場合のシグナルフローダイヤグラムを示す。式を簡潔に表現するため、入力側の治具の挿入損失は出力側の治具の挿入損失と一体にして扱う。図1における試料(DUT)の伝達係数S21DUTと、漏洩が重畳されて測定される伝達係数S21Mの関係は、次の(4)式で表せる。なお、(4)式では、4個以上の変数の積から構成される項を省略している。
【数4】

【0075】
(4)式において、本来の伝達係数は、E21F21DUT=S21dと表せるので、漏洩によって発生する誤差の補正式は、次の(5)式のように表せる。
【数5】

【0076】
(5)式は次の(6)式のように表せる。
【数6】

ここで(1)式より、S21d−g(S21t)=εと表せるので、(6)式は次の(7)式のように変形できる。
【数7】

【0077】
ここで−EXF/(1−EXF)をA、EXF/(1−EXF)をBと見なすと、(7)式は(5)式を(3)式の形式で表現したものと言える。したがって、主に漏洩によって発生する伝達係数における補正アダプタ法残留誤差の補正には、多項式による補正が有効なことが分かる。
【0078】
なお、上述した補正式は、テイラー展開に基づく誤差の近似による一般的な補正式であるため、反射係数の補正の場合においても有効なことは明らかである。
【0079】
〔有理式による補正〕
補正アダプタ法は高周波電気特性測定系における線形的な治具間差異要因を補正できるが、何らかの要因により反射系において誤差要因が残留した場合、補正アダプタ法により推定された値であるg(S)がその残留した誤差によって受ける影響は、3つのパラメータで表現され、本来推定するべき値であるSとは、図2に示すような関係を有する。
【0080】
すなわち、本来の反射係数Sと、残留した誤差要因が重畳されて測定された反射係数g(S)との間の関係は、次の(8)式で表せる。
【数8】

【0081】
したがって、誤差要因を補正する関係式は(8)式を整理することで得られ、次の(9)式のように表される。ここで、A,B,Cは定数であり、以下に説明するようにしてこれらを求めることで、補正を行なうことができる。
【数9】

【0082】
(9)式を解くのに必要な数量(3個=未知の定数)の残留誤差補正データ取得用試料について測定を行い、連立方程式を解いて上記の未知の定数A,B,Cを導出し、補正アダプタ法適用済みの試験治具測定値Sと、基準治具測定値Sとの間の補正式を導出する。
【0083】
上記方法によりA,B,Cを決定した(9)式を、その他試料の補正アダプタ法適用結果に適用することにより、試料測定時における補正アダプタ法残留誤差を低減することができる。
【0084】
導出過程から明らかなように、有理式を用いた補正は、反射係数(反射波)において発生する誤差要因の補正に適しているが、伝達係数(伝達波)の補正においても有効である。すなわち、伝達係数の測定経路は反射係数のそれを含んでいるため、反射系において発生した誤差要因は伝達系においても寄与を生じ得るためである。
【0085】
〔電子部品特性測定装置〕
次に、測定装置12,22の構成について、図8のブロック図を参照しながら説明する。
【0086】
測定装置12,22は、表示部52と、操作部54と、測定部56と、制御部58と、記憶部60と、演算部62と、インターフェース部64とを備える。
【0087】
表示部52は、表示パネル等を含み、測定装置12,22の動作状況や操作指示などを表示する。操作部54は、ボタンやスイッチなどを含み、オペレータからの電子部品測定装置12,22に対する操作を受け付ける。測定部56は、同軸ケーブル13a〜13c;23a〜23c及び治具16,26を介して電子部品の端子に接続され、電子部品の端子を適宜に選択して信号を入力し出力信号を測定する。制御部58は、測定装置12,22全体の制御を統括する。記憶部60には、制御部58や演算部62を動作させるためのプログラム、測定部56からの測定データ、演算部62の演算結果データなどが格納される。演算部62は、測定部56からのデータや記憶部60に格納されたデータを用い、所定のプログラムに従って演算を行う。インターフェース部64は、外部機器とデータを送受信するためのインターフェースであり、記憶部60に格納するためのデータやプログラムや、演算部62からの演算結果データなどを受け付け、入出力を行う。
【0088】
測定装置12,22は、記憶部60に格納されたプログラムに従って動作する。測定装置12,22は、校正モードと測定モードを含む複数の動作モードで動作させることができる。
【0089】
校正モードでは、基準治具16と試験治具26との間の相対的な測定誤差を補正するためのデータを取得し、電気特性を推定するための第1及び第2の数式を決定する。すなわち、測定部56は、基準治具16や試験治具26に、標準試料、相対補正データ取得用試料又は残留誤差補正データ取得用試料が実装された状態で、順次、電気特性の測定を行う。このとき、例えば表示部52に測定対象の試料の種別が表示される。オペレータは、表示された測定対象の準備が完了すると、操作部54を操作する。この操作を操作部54が受け付けると、測定部56は測定を開始し、測定データは記憶部60に格納される。
【0090】
演算部62は、記憶部60に格納された測定データを、適宜なタイミングで読み出して、補正アダプタ(CA1),(CA2)などについて演算し、電気特性を推定するための第1の数式を決定する。また、演算部62は、記憶部60に格納された残留誤差補正データ取得用試料を測定したデータを読み出し、残留誤差補正データ取得用試料について、測定部56で測定した基準治具測定値(実測値)と、測定部56で測定した試験治具測定値に第1の数式を用いて算出した基準治具測定値(測定値)とから、第2の数式を決定する。
【0091】
測定モードでは、試験治具26を用いた試験状態の測定データから、基準治具16を用いた基準状態での電気特性を推定する。すなわち、測定部56は、試験治具26に任意の電子部品が実装された状態で測定を行う。演算部62は、測定部56からの測定データから、その電子部品の電気特性の推定値を算出する。このとき、演算部62は、校正モードで決定された第1及び第2の数式を記憶部60から読み出し、それらの数式を用いて、電子部品の電気特性の推定値を算出する。算出された推定値は、表示部52に表示されたり、インターフェース部64から外部機器に出力されたりする。
【0092】
なお、標準試料、相対補正データ取得用試料、残留誤差補正データ取得用試料を基準治具16に実装して測定したデータは、試験治具26を含む測定系20の測定装置22の記憶部60に記憶しておくようにしてもよい。この場合、校正モードにおいて、標準試料、相対補正データ取得用試料、残留誤差補正データ取得用試料を試験治具26に実装したときの測定値は測定装置22を用いて測定し、基準治具16に実装したときの測定値については、記憶部60に記憶されているデータを用いる。個々の測定装置22で標準試料、相対補正データ取得用試料、残留誤差補正データ取得用試料を基準治具16に実装して測定する必要がないので、測定装置22の台数を容易に増やすことができる。
【0093】
さらには、基準治具16や試験治具26を別の測定装置に接続して、相対補正データ取得用試料や残留誤差補正データ取得用試料を測定して相対補正アダプタ(第1の数式)や残留誤差補正式(第2の数式)を求め、そのようにして求めた相対補正アダプタ(第1の数式)や残留誤差補正式(第2の数式)のデータを、試験治具26を含む測定系20の測定装置22の記憶部60に記憶しておくようにしてもよい。この場合、試験治具26を含む測定系20で、相対補正データ取得用試料や残留誤差補正データ取得用試料を試験治具26に実装して測定する作業を省略することができる。
【実施例1】
【0094】
実施例1として、表面弾性表面フィルタの反射波及び伝達波の治具間差異補正について説明する。
【0095】
試料には表面弾性波フィルタ、基準治具には検査基板、試験治具にはプローブ治具を用いる。
【0096】
まず、基準治具とする検査基板において、補正データ取得用試料3個の基準治具測定値を測定する。
【0097】
補正データ取得用試料は、各ポートにおいて開放、短絡、終端を実現した試料であり、各ポート間は25dB以上のアイソレーションを持つ。また、補正データ取得用試料の外形は、試料と同様に治具に実装して測定できるような形状とされている。
【0098】
続いて、試験治具とするプローブ治具において、補正データ取得用試料3個の試験治具測定値を取得する。
【0099】
取得した補正データ取得用試料の基準治具測定値及び試験治具測定値から、前述した相対補正法により、試料の試験治具測定値から基準治具測定値を推定する補正式(補正アダプタ)を導出する。
【0100】
試料とは同一品種の、平均的な特性を持つ表面弾性波フィルタ2個を任意に選択し、それらの基準治具測定値を取得する。この2個の表面弾性波フィルタが、先に述べた残留誤差補正データ取得用試料である。この表面弾性波フィルタ2個(残留誤差補正データ取得用試料)については、上記補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値の推定値も算出する。
【0101】
残留誤差補正データ取得用試料の測定により得られた表面弾性波フィルタの基準治具測定値及び上記補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値から、前述した補正アダプタ法残留誤差補正式の(3)式における未知数を決定する。
【0102】
1個目の表面弾性波フィルタの基準治具測定値をSd1、2個目の表面弾性波フィルタの基準治具測定値をSd2、1個目の表面弾性フィルタの補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値をSc1、2個月の表面弾性波フィルタの補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値をSc2とする。Sd1、Sd2、Sc1、及びSc2は、いずれもSパラメータである。
【0103】
これらを(3)式に代入すると、以下の2式が得られる。
【数10】

これらは、A及びBについての連立方程式であるので、これを解くことにより、(3)式における未知数A及びBを導出できる。
【0104】
続いて、測定対象試料の、補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値を取得する。この試料の試験治具測定値を(3)式に代入して((3)式におけるA、Bの値は、上で導出した値を用いる。)、補正アダプタ法を適用した試験治具測定値における残留誤差を予測し、試料の補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値の推定値に加算する。
【0105】
これら基準治具測定値及び上記補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値、及び補正アダプタ法残留誤差補正式の係数導出及び該補正アダプタ法残留誤差補正式による残留誤差の予測、補正アダプタ法を適用した状態での試料の試験治具測定値への加算は、測定している全Sパラメータについて行う。
【0106】
なお、残留誤差補正データ取得用試料の選別方法として、平均的な特性を持つ試料から任意に(無作為に)選択する場合を説明したが、母集団とする試料の特性分布を評価し、母集団の分散をより効果的に表現し得る試料を選別して残留誤差補正データ取得用試料とすれば、より高い補正精度を得られることは明らかである。
【0107】
また、補正アダプタ法残留誤差補正式の次数として1次式を選択する場合を説明したが、補正アダプタ法残留誤差が小さければ1次式である必要はなく、0次式でも十分な補正精度を得られる。したがって、残留誤差が小さい場合には、次数の低い補正式を運用することによって、測定が必要な残留誤差補正データ取得用試料の個数を減らし、残留誤差補正に伴う段取りを簡略化する一方、残留誤差が比較的大きい、もしくは残留誤差の特性が測定周波数に対して比較的複雑であれば1次式以上の補正式を適用して補正精度を確保するといった運用法の使い分けも可能である。
【0108】
図3に、試料(表面弾性波フィルタ)の基準治具測定値(Definition)、試験治具測定値(Test)、補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値(Corrected_A)、補正アダプタ法を適用した上で本補正アダプタ法残留誤差補正法を適用した試料の試験治具測定値(Corrected_B)を、それぞれ示す。図3(a)は反射波、図3(b)は伝達波について、それぞれ示す。
【0109】
反射波及び伝達波のいずれにおいても、治具間差異補正誤差(すなわち、基準治具測定値の推定値と実測値との差異)は、補正アダプタ法に本補正アダプタ法残留誤差補正法を併用した場合の方が、補正アダプタ法のみを適用した場合に比べて小さい。
【0110】
したがって、本補正アダプタ法残留誤差補正法が、反射波もしくは伝達波に関わらず、補正アダプタ法残留誤差の補正に有効であり、結果として治具間差異補正の補正精度向上に有効であることが分かる。
【実施例2】
【0111】
実施例2では、残留誤差の補正式に有理式を用いる。
【0112】
試料には表面弾性波フィルタ、基準治具には検査基板、試験治具にはプローブ治具をそれぞれ用いる。
【0113】
まず、基準治具とする検査基板において、補正データ取得用試料3個の基準治具測定値を測定する。
【0114】
補正データ取得用試料は、各ポートにおいて開放、短絡、終端を実現した試料であり、各ポート間は25dB以上のアイソレーションを持つ。また、補正データ取得用試料の外形は、試料と同様に治具に実装して測定できるような形状とされている。
【0115】
続いて、試験治具とするプローブ治具において、補正データ取得用試料3個の試験治具測定値を取得する。
【0116】
上で取得した補正データ取得用試料の基準治具測定値及び試験治具測定値から、前述した相対補正法により、試料の試験治具測定値から基準治具測定値を推定する補正式(補正アダプタ)を導出する。
【0117】
試料とは同一品種の、平均的な特性を持つ表面弾性波フィルタ3個を任意に選択し、それらの基準治具測定値を取得する。この3個の表面弾性波フィルタが、先に述べた残留誤差補正データ取得用試料である。この表面弾性波フィルタ3個(残留誤差補正データ取得用試料)については、上記補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値の推定値も算出する。
【0118】
残留誤差補正データ取得用試料の測定により得られた表面弾性波フィルタの基準治具測定値及び上記補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値から、前述した補正アダプタ法残留誤差補正式の(9)式における未知数を決定する。
【0119】
1個目の表面弾性波フィルタの基準治具測定値をSd1、2個目の表面弾性波フィルタの基準治具測定値をSd2、3個目の表面弾性波フィルタの基準治具測定値をSd3、1個目の表面弾性フィルタの補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値をSc1、2個目の表面弾性波フィルタの補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値をSc2、3個目の表面弾性波フィルタの補正アダプタを適用した状態での試験治具測定値をSc3とする。Sd1、Sd2、Sd3、Sc1、Sc2、及びSc3は、いずれもSパラメータである。
【0120】
これらを(9)式に代入すると、以下の3式が得られる。
【数11】

【0121】
これらはA、B及びCについての連立方程式であるので、この3式を解くことによって(11)式における未知数A、B及びCを全て導出できる。
【0122】
続いて試料の、補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値を取得する。この試料の試験治具測定値を(9)式に代入して((9)式における定数A,B及びCの値は、上で導出した値を用いる。)、補正アダプタ法を適用した試験治具測定値における残留誤差を予測し、試料の補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値に加算する。
【0123】
これら基準治具測定値や試験治具測定値の測定、補正アダプタを適用した基準治具測定値の推定値の算出、残留誤差補正式の係数導出、残留誤差補正式を用いた残留誤差の予測、基準治具測定値の残留誤差分の補正は、測定している全Sパラメータについて行う。
【0124】
図4に、試料(表面弾性波フイルタ)の基準治具測定値(Definition)、試験治具測定値(Test)、補正アダプタ法を適用した状態での試験治具測定値(Correctin_A)、補正アダプタ法を適用した上で本補正アダプタ法残留誤差補正法を適用した試料の試験治具測定値(Correction_B)を示す。図4(a)は反射波、図4(b)は伝達波について、それぞれ示す。
【0125】
反射波及び弾性波のいずれにおいても、治具間差異補正誤差(すなわち、基準治具測定値の実測値と推定値との差異)は、補正アダプタを用いた相対補正法に、残留誤差補正式を用いて残留誤差分の補正を併用した場合の方が、補正アダプタを用いた相対補正法のみを適用した場合に比べて小さい。
【0126】
したがって、補正アダプタを用いた相対補正法に、残留誤差補正式を用いて残留誤差分の補正を併用することには、反射波もしくは伝達波に関わらず、残留誤差の補正に有効であり、結果として治具間差異補正の補正精度向上に有効であることが分かる。
【0127】
以上に説明したように、本発明の測定誤差の補正方法及び電子部品特性測定装置は、相対補正法における残留誤差を補正することにより、補正精度を向上することができる。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、種々の変形を加えて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】漏洩を含むシグナルフローダイヤグラムである。
【図2】反射系におけるシグナルフローダイヤグラムである。
【図3】補正結果を示すグラフである。(実施例1)
【図4】補正結果を示すグラフである。(実施例2)
【図5】測定系の構成図である。
【図6】誤差補正の基本原理を示す2端子対回路図である。
【図7】誤差補正の基本原理を示す2端子対回路図である。
【図8】測定装置のブロック図である。(実施例)
【符号の説明】
【0130】
12 測定装置(電子部品特性測定装置)
16 基準治具
26 試験治具
52 表示部
54 操作部
56 測定部
58 制御部
60 記憶部(記憶手段)
62 演算部(第1の数式決定手段、第2の数式決定手段、電気特性推定手段)
64 インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とで、相対補正データ取得用試料をそれぞれ測定する、第1のステップと、
前記第1のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を求める、第2のステップと、
周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態と前記基準治具に実装した状態とで、残留誤差補正データ取得用試料をそれぞれ測定する、第3のステップと、
前記第3のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を求める、第4のステップと、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定する、第5のステップと、
前記第5のステップでの測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、第6のステップとを含み、
前記第2の数式は多項式であることを特徴とする、測定誤差の補正方法。
【請求項2】
試験治具に実装した状態と基準治具に実装した状態とで、相対補正データ取得用試料をそれぞれ測定する、第1のステップと、
前記第1のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を求める、第2のステップと、
周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態と前記基準治具に実装した状態とで、残留誤差補正データ取得用試料をそれぞれ測定する、第3のステップと、
前記第3のステップでの測定結果に基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を求める、第4のステップと、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定する、第5のステップと、
前記第5のステップでの測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、第6のステップとを含み、
前記第2の数式は有理式であることを特徴とする、測定誤差の補正方法。
【請求項3】
上記第2の数式が1次式であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定誤差の補正方法。
【請求項4】
電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出する、電子部品特性測定装置であって、
前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果とを格納する、記憶手段と、
前記記憶手段に格納された前記第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を決定する、第1の数式決定手段と、
前記記憶手段に格納された前記第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を決定する、第2の数式決定手段と、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、電気特性推定手段とを備え、
前記第2の数式は多項式であることを特徴とする、電子部品特性測定装置。
【請求項5】
電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出する、電子部品特性測定装置であって、
前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果とを格納する、記憶手段と、
前記記憶手段に格納された前記第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式を決定する、第1の数式決定手段と、
前記記憶手段に格納された前記第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式を決定する、第2の数式決定手段と、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、電気特性推定手段とを備え、
前記第2の数式は有理式であることを特徴とする、電子部品特性測定装置。
【請求項6】
上記第2の数式が1次式であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の電子部品特性測定装置。
【請求項7】
電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出する、電子部品特性測定装置であって、
前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式とを記憶する、記憶手段と、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、電気特性推定手段とを備え、
前記第2の数式は多項式であることを特徴とする、電子部品特性測定装置。
【請求項8】
電子部品を試験治具に実装した状態で測定した結果から、当該電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう前記電子部品の電気特性の推定値を算出する、電子部品特性測定装置であって、
前記基準治具に実装した状態で、相対補正データ取得用試料を測定した第1の測定結果と、前記試験治具に実装した状態で、前記相対補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出するための第1の数式と、周波数ごとに、前記基準治具に実装した状態で、残留誤差補正データ取得用試料を測定した第2の測定結果と、周波数ごとに、前記試験治具に実装した状態で、前記残留誤差補正データ取得用試料を測定した測定結果とに基づき決定された、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて算出した前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値に含まれる誤差を算出するための第2の数式とを記憶する、記憶手段と、
任意の電子部品について、前記試験治具に実装した状態で測定した測定結果に基づき、当該電子部品について、前記試験治具に実装した状態での測定値から前記第1の数式を用いて前記基準治具に実装した状態での測定値の推定値を算出し、該推定値を前記第2の数式を用いて補正する、電気特性推定手段とを備え、
前記第2の数式は有理式であることを特徴とする、電子部品特性測定装置。
【請求項9】
上記第2の数式が1次式であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の電子部品特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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