説明

湾曲複合フレーム及び湾曲複合フレームの製造方法

【課題】航空機用途に必要な仕様を満たしながら、重量、材料及び作業を削減する航空機の胴体構造のフレームを提供する。
【解決手段】航空機の湾曲した複合フレーム36は、おおむねZ形状の断面を有する複数層の複合積層体を含む。少なくとも特定の積層体の層は、フレームの湾曲に沿ったほぼ全てのポイントにおいて実質的に接触している単向性強化用繊維を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、機体構成部品等の複合構造物に関し、さらに具体的には一体型シャータイを有する航空機の胴体の湾曲した一体構造の複合フレーム部分、及び複合フレーム部分を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高強度で軽量の、高度に輪郭成形されたマルチレッグ構造物は、例えば航空宇宙ビークル等の多様な用途に使用することができる。航空宇宙用途に使用される様々なフレーム及び同様の構造物は、構造物の長さに沿って高度に湾曲した又は輪郭成形されたレッグを有することができる。例えば、航空機の胴体のフープ形フレーム部分は、留め具で互いに結合されたC形チャネル及びL形部材からなる2つの独立した部品からできていてよい。L形チャネルは、航空機の外板が固定されたシャータイとして機能する。
【0003】
上述したツーピース構造のフレームは作製と、独立したツール、及び別々の検査工程が必要になる。さらに、積層配置は移動デカルト座標を基準として行われるため、強度、剛性及び重量を含む様々な性能要件を満たすためのフレームの積層の調整作業が複雑になる。また、ツーピース構造のフレームは、部品を作製するのに必要な手作業、及び複数の留め具を含む必要な追加材料のために、比較的加工の費用も高くなる。
【0004】
したがって、航空機用途に必要な仕様を満たしながら、重量、材料及び作業を削減する航空機の胴体用途の構造フレームが必要である。また、大量生産環境における加工に適した高性能の構造フレームも必要である。
【発明の概要】
【0005】
開示の実施形態により、重量効率が良く信頼性がある一方で、航空機の胴体のフープ方向において偏向を制御し機体の剛性を維持することができる、航空機用途に適した湾曲複合フレームが提供される。開示の複合フレームは航空機の外板を取り付けることができる一体型シャータイを有する一体構造物である。このフレームは、層/繊維の配向がフレームの湾曲を画定する極座標系を基準とする単向性強化用繊維を含む積層複合層を含む。極座標系内の層の配向により、少なくとも特定の層内の繊維がフレームの湾曲に沿ってほぼすべてのポイントでフレームの湾曲に実質的に接触して位置づけされることが可能になる。フレームの湾曲に接した0度の層を維持することで、フレームの断面内のフープ方向にフレームの係数を増加させ得るフレームのウェブ、内側コード、外側コードの積層配向率の選択が可能になり、したがって構造的効果並びに重量の削減が最適化される。一体型のフレームはシャータイをフレームに一体化させることができる、最適化された断面形状を有する。
【0006】
ある開示の実施形態によれば、湾曲複合航空機のフレームは複数層の複合積層体を含む。少なくとも特定の積層体の層は、フレームの湾曲に沿ったほぼ全てのポイントにおいて実質的に接触する単向性の強化用繊維を含む。積層体は、ウェブ、内側コード、外側コードを含む一体型の単一構造物である。内側コードはウェブと一体型に形成され、ウェブの一端から外側に横方向に延在する。外側コードは、航空機の外板に固定されるように構成されており、また、ウェブと一体的に形成されている。外側コードは、内側コードの方向と反対の方向にウェブのもう一方の端から外側に横方向に延在する。各層は、フレームの湾曲を画定する極座標基準系内に整列した繊維配向性を有する。
【0007】
別の実施形態によれば、湾曲した一体型の航空機の胴体フレームが提供されている。このフレームは、第1端部及び第2端部を有するウェブと、ウェブの第1端部の内側コードと、ウェブの第2端部の外側コードを含む。ウェブ、内側コード及び外側コードは、繊維強化樹脂の積層体で一体型に形成されており、Z及びJのうちの一つの形状の断面を有する。少なくとも一つのウェブ、内側コード及び外側コードは、フレームの湾曲に実質的に接触する単向性の強化用繊維を有する層を含む。
【0008】
さらなる実施形態によれば、一体型のシャータイを有する湾曲複合胴体フレームが提供されている。フレームは、胴体の外板に固定されるように構成されているウェブ、内側コード、及び外側コードによって画定される断面を有する一体型の複数層の積層体を含む。内側及び外側コードはそれぞれ、ウェブの反対端に位置づけされ、ウェブから反対方向に外側に延在する。積層体は実質的にZ及びJのうちの一つの形状の断面形状を有する。
【0009】
別の実施形態によれば、航空機の胴体の湾曲した一体型の複合フレームを加工する方法が提供されている。この方法は、繊維強化樹脂層の積層体を作製し、積層体をウェブ、内側コード及び外側コードを有する形状に成形するステップを含む。積層体は、フレームの湾曲を画定する極座標系を使用して作製される。少なくとも特定の層の単向性強化用繊維は、フレームの湾曲に実質的に接触して配向している。単向性強化用繊維をフレームの湾曲に実質的に接触するように配向させるステップは、コンピュータ制御の自動繊維配置機械を使用して行われる。積層体をZ形状断面に成形するステップは、ツール上で積層体の縁を曲げることを含む。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、湾曲複合胴体フレームを加工する方法が提供されている。この方法は、各々単向性の強化用繊維を有する複合層の積層体を作製し、湾曲ツール上の積層体を、ウェブと、ウェブの反対端でそれぞれ反対方向に延在するコードを有する断面形状に成形するステップを含む。積層体の作製は、少なくとも特定の層を、層の強化用繊維がフレームの湾曲に沿ったほぼ全てのポイントにおいて実質的に接触するように配置することを含む。
【0011】
本発明はまた、航空機の胴体の湾曲した一体構造のフレームに関し、このフレームは:
第1及び第2端部を有するウェブと、
ウェブの第1端部の内側コードと、
ウェブの第2端部の外側コード
を含み、
ウェブ、内側コード及び外側コードは繊維強化樹脂の積層体で一体型にできており、おおむねZ及びJの内の一つの形状の断面を有する。
【0012】
上述したフレームは、外側コードが胴体の外板に固定されるように構成されていてよい。
上述したフレームは、少なくとも特定の層がウェブ、内側コード及び外側コードを通じてほぼ連続的に延在するものであってよい。
【0013】
上述したフレームは、ウェブ、内側コード及び外側コードのうちの少なくとも一つが、フレームの湾曲に実質的に接触している単向性強化用繊維を有する層を含んでいてよい。
上述したフレームは、ウェブ、内側コード及び外側コードの各々が、フレームの湾曲に実質的に接触する単向性強化用繊維を有する層を含むものであってよい。
【0014】
上述したフレームは、ウェブ、内側コード及び外側コードの各々が、フレームの湾曲を画定する極座標系の動径座標に実質的に接触する単向性強化用繊維を有する層を含むものであってよい。
上述したフレームは、ウェブが、ウェブを強化する層ダブラーのパッドアップ部分を含むものであってよい。
【0015】
本発明はまた、一体型のシャータイを有する湾曲した複合胴体フレームにも関し、このフレームは:
胴体の外板に固定されるように構成されているウェブ、内側コード及び外側コードを画定する断面を有し、内側及び外側コードがそれぞれウェブの反対端に位置づけされ、ウェブから反対方向に外向きに延在している、一体構造の複数層の積層体
を含む。
上述したフレームは、積層体が、実質的にZ及びJの内の一つの形状の断面を有するものであってよい。
【0016】
上述したフレームは、ウェブ、内側コード及び外側コードの各々が、フレームの湾曲に沿ったほぼ全てのポイントで実質的に接触している単向性強化用繊維を含むものであってよい。
【0017】
本発明はまた、湾曲した複合胴体フレームを加工する方法にも関し、この方法は:
各々単向性強化用繊維を有する複合層の積層体を作製し、これには、少なくとも特定の層を、層の強化用繊維がフレームの湾曲に沿ったほぼ全てのポイントで実質的に接触するように配置することが含まれるステップと;
湾曲ツール上の積層体を、ウェブと、ウェブの反対端でそれぞれ反対の位置に延在するコードを有する断面形状に成形するステップ
を含む。
【0018】
上述した方法は、特定層の配置が、コンピュータ制御の自動繊維配置機械を使用して行われるものであってよい。
上述した方法は、層の作製が、フレームの湾曲を画定する極座標基準系を使用して行われるものであってよい。
【0019】
上述した方法は、積層体の成形が、ツール上で積層体の縁部を曲げることによって行われるものであってよい。
【0020】
本発明はまた、一体型のシャータイを有する航空機の湾曲した一体構造のフレームを加工する方法にも関し、この方法は:
極座標基準系を使用してフレームの湾曲を画定するステップと;
複合積層体を作製するステップであって−
単向性繊維で強化された樹脂を含む複合材料の複数層を積層し、各層は傾斜した繊維配向性を有し、
層が積層されている間に、極座標基準系を使用して、フレームの湾曲に対して各層を配向させ、これにはコンピュータ制御の自動繊維配置機械を使用して、繊維が湾曲に沿ったほぼ全てのポイントにおいてフレームの湾曲に実質的に接触するように、ツール上に複合繊維を置くことが含まれる
ことを含むステップと;
第1、 第2及び第3ツール表面を有するツール上に積層体を配置するステップと;
ツール上の積層体を真空バッグ成形するステップであって、積層体を第1ツール表面上に引き下げて内側コードを成形し、積層体を第2表面上に引き下げて外側コードを成形し、積層体を第3表面に引き下げて、内側及び外側コードをつなぐウェブを成形することが含まれるステップと;
成形された積層体を硬化させる
ステップを含む。
【0021】
本発明はまた、フレームを胴体の外板につなぐ一体型のシャータイを有する航空機の胴体の一体構造の複合フレームにも関し、この方法は:
ウェブ、内側コード及び外側コードを画定するほぼZ形断面を有する複数層の複合積層体であって、外側コードが外板に固定されるように構成され、ウェブの一端から上向きに横方向に延在しており、内側コードがウェブの別の端から外側コードの方向とは反対の方向に外向きに横方向に延在している複数層の複合積層体と、
フレームの湾曲を画定する極座標基準系内で配向する単向性強化用繊維を有する層を含む、各ウェブ、内側コード及び外側コード、
湾曲の全長にほぼ沿ってフレームの湾曲に実質的に接触するように配向した強化用繊維を含む、少なくとも特定の層
を含む。
【0022】
開示の実施形態の他の機構、利点及び長所は、添付の図面及び添付の請求項に従って下記の実施形態の説明を読むときに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は航空機の胴体のバレル部分の斜視図である。
【図2】図2は図1に示す胴体に使用される高度に輪郭成形された複合フレーム部分の斜視図である。
【図3】図3は図1の線3−3に沿って切り取った断面図である。
【図3A】図3Aは図3と同様の図であるが、代替断面形状を有するフレーム部分を示す。
【図4】図4は図2に示すフレーム部分の層が積層された様子を示す断面図である。
【図4A】図4Aは本開示の実施形態によるフレームを用いた航空機の胴体の断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aで「A」に指定される領域の図である。
【図4C】図4Cは図4Bで「B」に指定される領域の図である。
【図4D】図4Dは一体型のシャータイを有する一体構造のフレームを加工する方法の簡略フロー図である。
【図5】図5は図2及び4Bに示すフレーム部分の加工に使用される平坦な層のスタックの斜視図である。
【図6】図6は層のスタックを配置するのに使用されるAFPロボット機械の斜視図である。
【図7】図7は図6に示すロボットのエンドディフェクタとして使用されるAFP機械の斜視図である。
【図8】図8は図2及び4Aのフレーム部分における層の配向を画定するのに使用される極座標系及びデカルト座標系を示す図である。
【図9】図9は0度に配向した繊維を含む層の平面図である。
【図10】図10はトウ及びテープウェッジの使用を示す、45度及び90度に配向した繊維をそれぞれ含む層の図である。
【図11】図11は層の平坦なスタックの斜視図である。
【図12】図12は図11と同様の図であるが、層のスタックの一端に沿って形成されている切り抜き部分を示す斜視図である。
【図13】図13はフレーム部分の内側コードをドレープ成形するのに使用されるドレープ成形装置を示す断面図である。
【図14】図14は図13のドレープ成形装置の一部を含む成形マンドレルに位置づけされた平坦な層のスタックの斜視図である。
【図15】図15は図14と同様の図であるが、成形マンドレル周囲に完全に成形された内側コードを示す図である。
【図16】図16は柔軟膜が開放位置にあるドレープ成形装置の斜視図である。
【図17】図17は図16と同様の図であるが、閉鎖されてツールアセンブリ周囲に引き下げられた状態の柔軟膜を示す図である。
【図18】図18はフレーム部分の外側コードをドレープ成形する高温ドレープ成形装置の断面図である。
【図19】図19は図18に示す高温ドレープ成形装置の斜視図である。
【図20】図20は図18のドレープ成形ツールアセンブリの一部を含む成形/硬化マンドレルの斜視図であり、ドレープ成形ツールアセンブリに位置づけされた部分的に成形されたフレーム部分を示す。
【図21】図21は図20に同様の図であるが、成形/硬化マンドレルの上に完全に成形された外側コードを示す図である。
【図22】図22はフレーム部分を硬化させるのに使用する成形/硬化マンドレルバッグアセンブリの断面図である。
【図23】図23は連続的な輪郭成形された複合構造物を加工する方法を示すフロー図である。
【図24】図24は本発明の実施形態にしたがって成形可能な連続的な複合構造物の断面形状を示す図である。
【図25】図25は極座標系における配置に関連して基板上に配置されているテープ部分の平面図を示す。
【図26】図26は図25の「A」で指定される領域の拡大図である。
【図27】図27は代替的な端部の切り口を示す単一テープ部分の平面図である。
【図28】図28は自動テープ配置機械の斜視図である。
【図29】図29は一定の幅のテープ部分を使用して、輪郭成形された複合構造物を加工する方法を示すフロー図である。
【図30】図30は航空機の製造及び就航方法を示すフロー図である。
【図31】図31は航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず図1〜3を参照すると、バレル形状の胴体部分30は、フレーム構造物32の上に形成され、フレーム構造物32に固定されている外板34を含む。フレーム構造物32は、複数の縦方向に配置されたバレルフレーム32aと、バレルフレーム32aを貫通する縦方向に延在するストリンガー32bを含む。各バレルフレーム32aは、例えば非限定的に、スプライスプレート(図示せず)及び留め具(図示せず)等の任意の好適な手段を使用して互いに接合される、複数の一体構造のフレーム部分36を含むことができる。しかしながら、ある用途においては、半フレーム及び全フレーム部分(図示せず)が可能であり得る。バレル形状のフレーム32aは実施形態ではほぼ円形であるように図示されているが、例えば非限定的に、楕円形、又はセグメント的円形、又は一又は複数の輪郭又は湾曲を有する他の非円形形状を含む他のフレーム形状も可能である。本明細書に使用されるように、「輪郭」及び「湾曲した」又は「湾曲」という用語は交互に使用される。
【0025】
図3から良く分かるように、一体構造のフレーム部分36は、おおむねZ形状の断面を有し、ウェブ42によって内側コード40に接続された外側コード38を含む湾曲した複数層の積層体を含む。内側コード40は、一方向にウェブ42の一端から横方向に延在し、外側コード38は内側コード40の方向とは反対方向にウェブ42の一方の端から離れるように横方向に延在する。断面(図3)を見ると、外側コード38及び内側コード40は効率的に、ウェブ42に対して横に延在し、ウェブ42と一体的に形成された構造レッグ又はフランジを形成する。実施形態においては、コード38、40はウェブ42に対してほぼ直角に延在するが、他の実施形態ではコード38、40とウェブ42の間の角度は、直角よりも大きい又は小さい可能性がある。ウェブ42は、層ダブラーから形成された任意の強化用パッド44を含むことができる。
【0026】
外側コード38は、外板34を結合させる及び/又は固定することができるシャータイを形成する。外側コード38とウェブ42の一端は、複数の間隔を置いて配置されたマウスホール形状のストリンガーの切抜き部分53を含むことができ、この切抜き部分53を通ってストリンガー32bが延在する。後に説明するように、フレーム部分36は例えばカーボンファイバーエポキシー等の繊維強化合成樹脂の積層体からできている。図4に示すように、フレーム部分36は、効果的で繰り返し可能な、後に説明する加工方法の使用を促進しながら、最大の構造性能を得るために、配置及び配向される全体層46及び部分層48を含む積層体を含むことができる。
【0027】
シャータイ38として機能する一体的に形成されたコード36を有する一体構造のフレーム部分36は、特定用途に最適化された、Z形状以外の断面形状を有することができる。例えば非限定的に、フレーム部分36は図3Aに示すようなJ形状の断面を有することができ、この断面において内側コード33はウェブ42の反対方向に、ウェブ42に対して横に延在するキャップ又はフランジを含む。
【0028】
図4Aに示すように、通常の胴体部分30は、各々フレーム32aに接続した上部客室フロア41及び下部貨物フロア43を含むことができる。下部の貨物フロア43は、これもまたフレーム32aに固定されているスタンション45によって支持され得る。ここで図4B及び4Cも参照すると、各フレーム部分36を含むフレーム32aは、極座標基準系35に基づき設計され配置されている。極座標系は、平面上の各ポイントが固定方向から傾斜した固定ポイントからの距離によって決定される二次元座標系である。したがって、この実施例では、極座標系35は、極39から延びた半径座標又は半径「r」と、角度座標又は本明細書で0°で表示される基準軸に対する半径rの極角と呼ぶことができる角度θを含む。各フレーム部分36の湾曲37と、フレーム部分36の層スケジュールもまた極座標系35を基準とする。フレーム部分36を画定するのに極座標系35を使用することで、最小重量で必要な強度を付与しながら単一部品に機構を一体化させることによる設計最適化もまた可能になり得る。
【0029】
極座標系35を使用したフレーム設計により、調整された軸剛性及び一体化された故障安全性を有する複合フレーム部分36の加工が可能になり得る。例えば非限定的に、ウェブ42を、所定の性能要件を満たすために0°繊維含有量が約40〜50%の範囲で、ゲージ(厚さ)を増加させるように設計することが可能である。層配置を含むフレーム部分36の設計に極座標系35を使用することにより、例えば非限定的に、内側及び外側コード38、40とパッドアップ44の厚さ、またストリンガーの切抜き部分52の形状及び寸法等の他の特徴の設計も最適化することが可能になり得る。
【0030】
下に更に詳細に説明するように、各フレーム部分36は所定の層スケジュールにしたがって積層される単向性繊維で強化された合成樹脂の積層体を含む。各層は、例えば非限定的に、繊維の配向が極座標系35を基準とする積層工程中にツール(図示せず)上に置かれたスリットテープの形態のプリプレグ・トウを含むことができる。後に説明するように、極座標系35を使用して層を形成するプリプレグテープを積層し配向させることにより、本明細書において0°層と呼ばれる、少なくとも特定の層の繊維配向を、フレーム部分36の湾曲37に接触するように位置づけすることが可能になり、これはフレーム32a周囲のフープ方向49(図4A及び4B)と一致する。
【0031】
ウェブ42、内側コード40及び外側コード38はそれぞれ、特定の層スケジュールによって一又は複数の0°層を有することができる。0°繊維の、内側コード40、ウェブ42及び外側コード38上のほぼ全てのポイントにおけるフープ方向での接触を維持することによって積層体の配向率を変更して、フレーム断面全体のフープ方向49のヤング率(E)を増加させることができる。ある実施形態では、この変更軸面積は、内側コード40について、0°層を40〜50%に調整することが可能である。
【0032】
別の実施形態では、内側コードの圧縮荷重について、比較的高い軸弾性率で内側コード40を調整することができる。ウェブ42は、内側のせん断荷重を移動させるために、低い軸弾性率で調整可能な縮小されたゲージを有していてよい。パッドアップ44は非常に高い軸弾性率で調整可能である。最後に、内側コード38を低い軸弾性率で調整して、より高い半径剛性、留め具軸受及びせん断荷重移動性能を得ることができる。
【0033】
開示の実施形態によれば、フレーム部分36の少なくとも特定の積層体の層では、単向性繊維が、湾曲37に沿ったほぼ全てのポイントにおいてフレーム部分36の湾曲37に実質的に接触して配向されている。したがって、図4Cに示すように、ウェブ42内の通常の層42は、フレーム部分36の湾曲37に沿った単向性の強化用繊維59を含む。繊維59は、湾曲37を画定する半径「r」にほぼ直角の接線57に沿って位置している。
【0034】
ここで、湾曲した複合フレーム部分36を加工する方法のステップをおおまかに示す図4Dに注目する。ステップ61で開始し、フレーム部分36の輪郭又は湾曲37だけでなく、フレーム部分36の層の配向性を含むフレーム部分36の特徴は、極座標基準系35内で画定される。複合積層体はステップ63において形成される。積層工程63はステップ65において、極座標基準系35を使用して、フレーム部分36の湾曲37に接触している0°の単向性繊維の配向性を有する少なくとも特定の層を積層することを含む。積層工程63はまた、ステップ67において、これもまた極座標基準系35を基準とする非0°の単向性繊維の配向性を有する層を積層することも含む。積層工程が完了したら、後に説明するステップ69に示すようなツールを使用して、湾曲した積層体をZ形状断面又はJ形状断面に成形することができる。
【0035】
ここで図5〜7を参照すると、AFP機械58をロボット60のエンドエフェクタとして使用して繊維プリプレグテープの繊維トウ又はストリップを置き、平坦な層のスタック50を形成することができる。AFP機械58は、進入してくるプリプレグ・トウ62を受けるコーム64を含むことができ、このプリプレグ・トウ62はトウカッター68で切断される前にリボナイザ66を通過する。切断されたトウ72は従属ローラ70の下を通過し、従属ローラ70は基板(図示せず)又は下部層(図示せず)上にトウ62を当てて圧縮する。図5から良く分かるように、AFP機械58を使用して繊維トウ62又はテープを置くことができ、繊維トウ62又はテープでは、繊維はデカルト座標系47の所定の角度に配向されている。実施例では、層のスタック50は、繊維トウが0度に配向している層52、繊維トウが+45度に配向している層56、及び繊維トウが−45度に配向している層54を含む。図示しないが、層のスタック50には、繊維トウが90度に配向している層が組み込まれている。
【0036】
図8はさらに、層のスタック50に単向性繊維トウ又はテープが置かれているデカルト座標系47の配向性と、フレーム部分36の輪郭を画定する極座標系の関係を分かりやすく示す。数字37で指定されるフレーム部分36の輪郭は、極39から始まって0°で表示される参照座標に対して極角θを形成する半径座標「r」によって画定することができる。したがって、フレーム部分36のそれぞれ輪郭成形された特徴は、角度θをなす値「r」(半径座標)によって画定することができる。ここで、図示したフレーム部分36は一定の半径(湾曲)を有し、ウェブ42は一定のゲージ(厚さ)を有するが、フレーム部分36の湾曲、ウェブ42のゲージ、内側コード40のゲージ及び外側コード38のゲージはそれぞれ、フレーム部分36の長さに沿って変動してもよいことに注目すべきである。
【0037】
実施例においては、層のスタック50は、少なくとも特定の単向性プリプレグ繊維が、半径座標「r」に接して位置合わせされているデカルト座標系47内で配向されている複数の層52、54、56で形成されている。後にさらに詳しく説明するように、実施例においては、0度、−45度、+45度及び+90度の繊維配向が採用されているが、フレーム部分36の特定用途、及び形状を含む様々な要因によって、他の角度配向も可能である。前述したように、0°トウ(図5)を含む層52の場合には、トウは、湾曲37に沿ったほぼ全てのポイントにおいてフレーム部分36の湾曲37に実質的に接触している。
【0038】
ここで、平坦な層のスタック50のうちの幾つかの層の繊維配向を示す図9〜12に注目する。図9は、トウ又はテープストリップが0度配向、湾曲37(図8)に接して、フレーム部分36の全長に延在した状態で、AFP機械58(図6)に置かれている層52を示す。本明細書に使用されるように、「テープ」は予め含浸した単向性繊維を指し、「トウ」は例えば非限定的に、幅が0.125、0.25または0.5インチであってよい狭い帯状にその長さに沿って切断されたテープを含むことができる。「コース」はAFP機械58によって帯として適用されたトウを指す。「ドロップ」は、AFP機械58が一又は複数のトウを途中で途切れさせることを指し、隣接したトウ又はテープ間の間隔を含むことができる。切断/追加合流ゾーンとは、同じ層内の異なる配向のコースにおいてあるコースが終了することを意味し、したがってそこに隙間及び重なり合った領域ができる。
【0039】
0°層52は、AFP機械58を使用してスリットテープの配置を「誘導」して形成することができ、層52の幅は共形性及び傾斜によって決まる。図9に全体層52を示すが、部分層又は傾斜した層もまた可能である。後に外側コード、内側コード及びウェブに成形される層52の部分はそれぞれ、番号38、40及び42で指定される。ある用途では、外側コード40を形成する層は、AFP機械58を使用して置かれる代わりに、幅が予め切断され、後に説明するツール上に配置されるトウ又はテープの層の分離した帯を使用して成形することができることに注目すべきである。
【0040】
0度以外の角度に配向されたトウ又はテープを含む層は、各々先細りのウェッジ形状を有する隣り合ったトウ/テープの群又はセグメント55、74で形成されている。セグメント55、74は、上向きで側面を決めるドロップ部分にゆとりのあるテープを使用して形成することができる。例えば、図10は各セグメント55の繊維配向がおおむね+45度であるセグメント55で形成された層54を示す。
【0041】
図11は、各セグメント74の繊維がおおむね90度に配向され、フレーム部分36の輪郭37(図8)を画定する半径座標「r」の角度に実質的に位置合わせされた、隣り合わせに置かれたセグメント74で形成された層76を示す。トウ72がセグメント74を形成するように置かれているところでは、個々のトウは層76の湾曲方向に角度をなしている。傾斜したトウ72は個別に互いに隣り合わせの状態で配置される。あるいは、これらのセグメントはAFP機械58又は同様の装置によって互いに隣り合わせの状態に置かれた繊維テープの先細り形状のウェッジ75で形成されてもよい。
【0042】
ここで図12を参照すると、平坦な層のスタック50が完全に配置された後、層のスタック50の一方の縁部51に沿ってマウスホール型切抜き部分53を作製することができる。切抜き部分53は例えば非限定的に、NC制御超音波カッター(図示せず)を使用する等の任意の多様な技術を使用して作製することができる。
【0043】
実施例では、切抜き部分53によりストリンガー32bがそれを通って延びる開口部が得られる(図1)。しかしながら他の用途においては、重量を削減するために及び/又はあとに続く加工工程における層の皺形成の可能性を低減するために同様の切抜き部分53を設けることが望ましい場合がある。
【0044】
ここで、ドレープ成形工程を使用して、内側コード40が形成される様子を示す図13〜17に注目する。層のスタック50は成形マンドレル80の上部の平面80aに配置される。成形マンドレル80は湾曲した又は輪郭成形された表面80bを含み、実施例においては、上部の平面80aに対してほぼ90度の角度をなしている。外側コード40を形成するのに使用できる0度層は全て、輪郭成形面80bに直接配置される。層のスタック50の外側縁部50aは、湾曲した縁部80bを通って延び、続いて図13に示す位置まで移動される積層シェルフ86によって層が配置される間、支持されることが可能である。成形マンドレル80は、グラスファイバーブリーザ82によって分離され、真空バッグツール84に支持される。真空バッグ88は、層のスタック50と成形マンドレル80の上に配置される。ブリーザ90とFEP(フッ素化エチレンプロピレン)の層92は、バッグ88と層のスタック50の間に配置することができる。バッグ88はまた、その内面にチャネル(図示せず)を有することができ、この場合ブリーザ90は必要ない。
【0045】
ツール縁部80bを層のスタック50の縁部50aで覆い、バッグ88を真空化して層のスタック50に圧力をかけて、縁部50aが当接してほぼ平坦になり、成形マンドレル80の前面80bの輪郭に実質的に沿うまで、縁部50aを図13の矢印94の方向に下向きに曲げる。層のスタックの縁部50aはこのように、前部ツール面80bの半径Rと実質的に同一の半径を有する内側コード40に成形される。
【0046】
上述した成形工程は、図16及び17に示すドレープ成形装置96において行うことができる。バッグ88は、例えば非限定的に、レッグ100に支持される真空テーブル98に回転可能に取り付けられたフレーム102に装着されたシリコン等でできた気体不浸透性膜を含むことができる。真空テーブル98は空気をテーブル98を通って引き込むことを可能にするポート又は貫通孔(図示せず)を含む。成形マンドレル80は層のスタック50及び積層シェルフ86とともに真空テーブル98に配置することができ、フレーム102は真空テーブル98に当接して閉じられている。
【0047】
図17に示すように、真空システム(図示せず)を使用して、フレーム102及びテーブル98によって形成された密封された空洞の空気を排出することができる。この空洞からの排出の結果、膜88が成形マンドレル80の上を覆うことにより成形マンドレル80の前面80b上で縁部50aが成形される。成形工程の間、積層シェルフ86が部分的に膜88を支持し、これにより膜88の縁部50aに印加された力が制御及び方向づけされる。
【0048】
内側コード40が完成したら、加工方法の次のステップは図18〜21に示されており、ここで外側コード38が成形される。外側コード38は、例えば非限定的に、図19に示すドレープ成形装置124を使用して、張力、高温ドレープ成形によって加工することができる。ドレープ成形装置124は、レッグ134で支持される下部フレーム128に保持される加熱真空テーブル130を含む。上部の回転フレーム126は、例えばシリコンを含むことができる気体不浸透性膜132を含む。成形/硬化マンドレル106の形態のツール、及び輪郭成形ブロック112は真空テーブル130上に支持され、フレーム126が閉じられて下部フレーム128に当接して密封されている時に、膜132で覆われる。
【0049】
図18から良く分かるように、成形/硬化マンドレル106は層のスタック50を支持する平坦な上部ツール面106aを含む。成形/硬化マンドレル106の第2平坦面106bはツール面106aから上向きに延びて内側コード40と係合する。成形/硬化マンドレル106はさらに、ツール面106aから下向きに延び、外側コード38を成形するのに使用される第3面106cを含む。
【0050】
成形/硬化マンドレル106は真空テーブル130上に支持される。グラスファイバー又は他の好適な材料でできた任意のブリーザ110を真空テーブル130と成形/硬化マンドレル106の間に配置することができる。輪郭成形された増圧器120を層のスタック50の上に配置して、半径122を内側コード40に隣接するように完全に維持することができる。非限定的に、テフロン(登録商標)等の材料の層116とブリーザ118を増圧器と層のスタック50の間に配置することができる。FEPの追加層123を成形/硬化マンドレルと層のスタック50の縁部の間に配置することができる。FEP層123をブロック112に覆いかけ、この組み合わせにより、ドレープ成形工程の間に、バッグ膜132が層のスタック50の外側縁部50bに圧力を印加する角度が制御される。
【0051】
外側コード38は成形/硬化マンドレル106の上で高温ドレープ成形することができ、次にオーブン、又は例えば赤外線ランプ等の他の手段の内部で、例えば約140度(華氏)等の予め選択された温度に加熱することができる。バッグ膜132を真空化し、予め選択された期間保持する。張力が制御された高温ドレープ成形工程の間は、加熱によりマトリックス樹脂の粘性が低下して、繊維が層内で滑動することが可能になる。これにより、必要に応じて繊維がまとまる又は広がる、又はそうでなければ繊維自体が再配置されることが可能になる。スタック50下の張力を維持することで皺の形成が最小限に抑えられる。半径増圧器120は、外側コード38が成形される間、内側コードの半径122(図3の40a)を保持する。
【0052】
図20は成形された内側コード40がツール面106aに当接して保持されている成形/硬化マンドレル106に位置づけされている部分的に成形された層のスタック50を示す。層のスタック50の外側縁部50bはツール面106b上にはみ出した形で置かれている。図21に示すように、膜132が成形/硬化マンドレル106の上に覆いかぶさると、膜132はブロック112によって部分的に制御される角度で外側縁部50bに圧力を印加する。層のスタック50の縁部50bは次に、ツール面106cに当接して完全に成形されて外側コード38が形成されるまで、矢印114の方向に下向きに曲げられる。
【0053】
フレーム部分36の内側及び外側コード38、40が成形されたら、次にフレーム部分36を硬化させる必要があり、これに関連して図22に注目する。成形されたフレーム部分36と成形/硬化マンドレル106が高温ドレープ成形装置124から取り外される。コールプレート139を外側コード38の上に配置して、半径141を圧縮するのを補助することができる。同様に、増圧器142を取り付けて半径122の圧縮を補助することができる。従来技術の真空バッグ138がフレーム部分36の上に配置され、密封材140で硬化マンドレル136に密封される。ブリーザ(図示せず)及びFEPの剥離層(図示せず)をまた、成形/硬化マンドレル106とバッグ138の間に配置することもできる。
【0054】
ここで、輪郭成形された複合構造物を製造する方法で使用される全ステップを示す図23に注目する。プリプレグ繊維トウ及び/又はテープを含む原材料がステップ144において受け入れられ、検査される。ステップ146において、前述した成形マンドレル80、及び成形/硬化マンドレル106が洗浄され準備される。次にステップ148において、外側のグラスファイバー層を成形マンドレル80の上に配置することが可能である。
【0055】
ステップ150において、スタック50の様々な層が全て、一又は複数のAFP機械58を使用して置かれる。平坦な層のスタック50が形成されたら、次にステップ152で要求されるように、層のスタック50にマウスホール型切抜き部分53が形成される。次にステップ154において、層のスタック50が成形マンドレル80と積層シェルフ86に配置される。次にステップ156において、これに続く成形工程で積層シェルフ86が使用される位置に移動される。ステップ158において、上述したドレープ成形技術を使用して内側コード40が成形される。
【0056】
ステップ160において、部分的に成形された層のスタック50が成形/硬化マンドレル106に配置される。ステップ162において、外側コード38が成形/硬化マンドレル106上に高温ドレープ成形される。次にステップ164において、成形されたフレーム部分36は硬化ツール136に移されて、内側のグラスファイバー層がフレームの上に配置される。次にステップ166において、コールプレート139と増圧器142が取り付けられ、続いてオートクレーブ硬化の準備のためにアセンブリの真空バッグ処理が行われる。ステップ168において、フレーム部分36がオートクレーブ装置(図示せず)で硬化され、続いてステップ170において硬化され完全に成形されたフレーム部分36がデバッグ及びデフラッシュ処理される。ステップ172において、数値制御カッターを使用してフレーム部分36を調整することができ、調整されたフレーム部分36を次に、従来の非破壊検査技術を利用してステップ174において検査することができる。
【0057】
開示の実施形態では、Z形状断面を有する輪郭成形された複合構造物の加工方法の使用が図示されているが、一又は複数のレッグが例えばウェブ等の構造機構から外向きに延在している他の様々な輪郭成形構造物も可能である。例えば図24に示すように、例えば非限定的に、C形状176、J形状178、L形状180、I形状182、変更されたJ形状184及び一又は複数の形態のU形状186等の他のレッグ構成又は断面形状を有する、輪郭成形された連続的な構造物の加工に開示の実施形態を用いることができる。
【0058】
ここで、ほぼ一定幅、単向性のプリプレグ繊維テープでできた重なり合った層セグメント188を使用して、輪郭成形層201を積層する別の方法を示す図25及び26に注目する。一定幅の層セグメント188は、標準あるいは非標準幅のテープのスプール(図示せず)から引き出されたテープから切り取ることができる。図25及び26に示す実施例では、層セグメント188の形状はほぼ長方形だが、層セグメント188がほぼ同じ幅を有していれば、他の形状を有していてよい。層セグメント188は基板(図示せず)上に配置され、積層されている輪郭成形された層201の輪郭成形された中央線192に沿って配置される。各層セグメント188はそれぞれ内側コード38及び外側コード40を越えて半径方向に延在して、層セグメント188で形成された全体層201が構造物36(図2)の輪郭とほぼ一致するように後に調整される延長部200を形成する。
【0059】
各層セグメント188は配置工程において、極座標系190の極39から始まる半径座標「r」に位置あわせされる縦方向の中央線194を含む。各中央線194は、図25において0°で示す基準線に対して角度θを形成する。極座標系190を使用して、構造物36(図2)の一又は複数の輪郭が画定される。開示の実施形態によれば、一定幅のテープセグメント188は、重なり量が好ましくはほぼ一定に保持されるように、相互に重なり合った状態191で配置される。各層セグメント188が配置される際に、各層セグメント188はすでに配置されている隣接セグメント188からわずかに角度193(図26)をなして配向される。層セグメント188を重なり合った状態191で配置した結果、層セグメント188a、188bの隣接した層セグメントにより、内側コード38近辺のパイ型の重なり部分196、及び外側コード40に隣接したパイ型の隙間198が形成される。重なり部分196及び隙間198は、テープセグメント188の幅を変えることによって特定用途の構造要件を満たすように調節することができる。上述した一定幅テープの積層方法により、小規模の、高度に輪郭成形された複合構造物においてさえも、比較的速い速度で非ゼロ層の積層が可能になる。
【0060】
図26で良く分かるように、重なり部分196は層201の中央線192からおおむね延びており、層201において重なり部分204の幅204は中央線192からの距離が広まるごとに徐々に大きくなる。同様に、隣接する層セグメント188a、188bの間の隙間198の幅202は、中央線192からの距離が広まるにつれて大きくなる。開示の実施形態によれば、重なり部分196及び隙間198は両方とも実質的に最小化される。図11に示す実施形態において使用される外周切断テープセグメント74とは異なり、一定幅の簡素な端部切断層セグメント188の使用により、重なり部分196及び隙間198を最小限にするような所定の方法で層セグメント188を配置するのに自動機器(後に記載)が使用しやすくなる。
【0061】
上述したように、一定幅の層セグメント188を重ね合わせて配置することにより、重なり部分196及び隙間198によって画定された実質的に均等に変位した切れ目のある層201ができる。
【0062】
テープセグメント188の選択幅は用途によって変化する。重なり部分196及び/又は隙間198を縮小するために、より狭いテープセグメント188を用いることができる。同様に、より広いテープ幅を採用して、置く速度を上げることができる。45度層201の重なり部分196及び隙間199は、層セグメント188を+/−60度配向に変更することによって縮小することができる。
【0063】
図27を参照すると、各テープセグメント188の重なり合った端部200はステップ206において角度Фで切断して、内側コード38と外側コード40の外側輪郭をそれぞれ実質的に一致させることができる。したがってセグメント188の切断された端部206は構造物36(図2)の輪郭にほぼ合ったものであってよく、これによりおおむね台形の形を有したセグメント188ができる。
【0064】
開示の実施形態によれば、各層セグメント188は図28に示す自動テープ配置機械208を使用して基板(図示せず)に配置することができ、この配置機械は、構造物36(図2)の輪郭に関連する極配向において中央線194(図25及び26)を調整する。図28を参照すると、自動テープ配置機械208は、ツールであってよい基板214の輪郭に対して回転運動するために、ガントリー214に装着された回転テープ配置ヘッド210、212を含む。各ヘッド210、212は、テープの長さを切断し、切断した長さのテープを基板214に配置する切断及び配置機構(図示せず)とともに複合テープ(図示せず)の供給装置を含む。テープヘッド210、212及び/又は基板214は、テープヘッド210、212が基板214全体で横方向になり、自動的に、通常CNCコントローラ(図示せず)の制御下で複合テープが配置されるように、互いに相対的に移動する。好適な自動テープ配置機械208の更なる詳細は、本明細書に参照することで全体の内容が組み込まれる、2006年11月21日に発行された米国特許第7137182号明細書に開示されている。
【0065】
ここで、一又は複数のレッグを有する、輪郭成形された複合構造物を作製する方法の全ステップを示す図29に注目する。層201は、ステップ218で開始する一連のステップ216で置かれ、一定幅の、単向性繊維プリプレグテープを所望の長さに切断することによって層セグメント188が作製される。次にステップ220において、層セグメント188は隣り合わせに重なりあった状態で複合構造物の輪郭に沿って基板に配置される。配置工程の間は、層セグメント188の縦方向の中央線194は構造物の輪郭に関連する極配向に位置あわせされる。ステップ222においては、隣接する層セグメント188a、188bの間の重なり部分196及び隙間198が制御される。通常、この制御は図28に示す種類の自動テープ配置機械を使用している時は自動的に実施される。
【0066】
ステップ224において、各完成層201、又は層201のスタックを必要に応じて最終形状になるように調整することができる。ステップ226において、完成した層のスタック50(図8)は、一又は複数のレッグの成形を含むことができる、本明細書で前述した技術を使用して成形することができる。最後にステップ228において、成形された層のスタック50を圧縮し硬化させることができる。
【0067】
本発明の実施形態は、様々な可能性のある用途、特に例えば航空宇宙、海洋、及び自動車用途を含む運送業において使用することができる。したがって、ここで図30及び31を参照すると、本発明の実施形態は図30に示すような航空機の製造及び就航方法230及び図31に示すような航空機232において使用可能である。開示の実施形態の航空機の用途は、例えば非限定的に、スティフナー、ビーム、及びストリンガーを含むことができるが、これはごく一部に過ぎない。試作段階においては、例示の方法230は、開示の輪郭成形構造物が航空機232での使用に指定されている、航空機230の仕様及び設計234と、材料調達236を含むことができる。製造段階においては、様々な部品及びサブアセンブリが開示の方法を用いて加工される、航空機230の部品及びサブアセンブリの製造238と、システム統合240がおこなわれる。そのあとに、航空機232は、認可及び納品242を経て就航244される。顧客によって就航されている間、航空機232には、開示の輪郭成形構造物の使用が含まれうる、所定の整備及び保守246(変更、再構成、改装も含むことができる)が予定される。
【0068】
方法230の各プロセスは、システム・インテグレーター、第三者、及び/又はオペレータ(例:顧客)によって行われる又は実施されることが可能である。この説明の目的のために、システム・インテグレーターは、非限定的に、任意の数の航空機メーカー及び主要なシステム下請業者を含むことができ、第三者は、非限定的に、任意の数の供給メーカー、下請業者及びサプライヤを含むことができ、オペレータは、航空機、リース会社、軍部、サービス組織等であってよい。
【0069】
図31に示すように、例示の方法230によって製造された航空機232は、複数のシステム250及び内部装飾252を有する機体248を含むことができる。高レベルシステム250の実施例は、一又は複数の推進システム254、電気システム256、油圧システム258、及び環境システム260を含む。任意の数の他のシステムを含むことができる。航空宇宙における実施例を示したが、本開示の原理を海洋及び自動車産業等の他の業界に応用することができる。
【0070】
本明細書に具現化されたシステム及び方法は、製造及び就航方法230の一又は複数の任意の段階において採用することができる。例えば、製造プロセス208に対応する部品又はサブアセンブリは、航空機232が就航している間に製造される部品又はサブアセンブリと同じ方法で加工又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせを、例えば、航空機232を実質的に組立てしやすくする、又は航空機232にかかる費用を削減することによって、製造段階238及び240において用いることが可能である。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、またはこれらの組み合わせを、航空機232が就航している間に、例えば非限定的に、整備及び保守246に用いることができる。
【0071】
本発明の実施形態を特定の実例となる実施形態に関連させて説明してきたが、当然ながら特定の実施形態は説明のためであり、限定するものではなく、当業者が他の変形例を発想することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
30 バレル形状の胴体部分
32 フレーム構造物
32a バレルフレーム
32b ストリンガー
33 内側コード
34 外板
35 極座標系
36 フレーム部分、コード
37 フレーム部分36の湾曲
38 外側コード、シャータイ
39 極
40 内側コード
41 上部客室フロア
42 ウェブ
43 下部の貨物フロア
44 パッドアップ
45 スタンション
46 全体層
47 デカルト座標系
48 部分層
49 フープ方向
50 平坦な層のスタック
50a 層のスタック50の外側縁部
52 ストリンガーの切抜き部分、繊維トウが0度に配向している層
53 ストリンガーの切抜き部分
54 繊維トウが−45度に配向している層
55 セグメント
56 繊維トウが+45度に配向している層
58 AFP機械
60 ロボット
62 プリプレグ・トウ
64 コーム
70 従属ローラ
72 切断されたトウ
74 セグメント
75 ウェッジ
80 成形マンドレル
80a 成形マンドレル80の上部の平面
80b 成形マンドレル80の湾曲した又は輪郭成形された表面
82 グラスファイバーブリーザ
84 真空バッグツール
86 積層シェルフ
88 真空バッグ
90 ブリーザ
92 FEP(フッ素化エチレンプロピレン)の層
96 ドレープ成形装置
98 真空テーブル
100 レッグ
102 フレーム
106 成形/硬化マンドレル
106a 平坦な上部ツール面
106b ツール面
106c ツール面
110 ブリーザ
112 輪郭成形ブロック
118 ブリーザ
120 半径増圧器
122 内側コードの半径
123 FEPの追加層
124 ドレープ成形装置
126 上部の回転フレーム
128 下部フレーム
130 加熱真空テーブル
132 気体不浸透性膜
134 レッグ
176 C形状
178 J形状
180 L形状
182 I形状
184 変更されたJ形状
186 U形状
188 層セグメント
190 極座標系
192 中央線
196 パイ型の重なり部分
198 パイ型の隙間
201 輪郭成形された層
204 重なり部分
208 自動テープ配置機械
210 ヘッド
212 ヘッド
214 ガントリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の湾曲した複合フレームであって:
少なくとも特定の積層体の層がフレームの湾曲に沿ったほぼすべてのポイントで実質的に接触している単向性強化用繊維を含んでいる複数層の複合積層体
を含むフレーム。
【請求項2】
積層体が、一体構造の単一構造物でできており、Z及びJのうちの一つの形状の断面を有する、請求項1に記載のフレーム。
【請求項3】
積層体が:
ウェブ、
ウェブと一体的に形成され、ウェブの一端から外向きに横方向に延在する内側コード、
航空機の外板に固定されるように構成されており、ウェブと一体的に形成され、ウェブの別の端から、内側コードの方向とは反対の方向に外向きに横方向に延在する外側コード
を含む、請求項1に記載のフレーム。
【請求項4】
少なくとも特定の層が、ウェブ、内側コード及び外側コードを通じてフレームの湾曲方向にほぼ連続的に延在する、請求項3に記載のフレーム。
【請求項5】
層が各々ポリマーマトリクスを含み、
繊維がエポキシマトリクス内部に保持されるカーボンファイバーを含む、
請求項1に記載のフレーム。
【請求項6】
各層が、フレームの湾曲を画定する極座標基準系内で位置合わせされた繊維配向性を有する、請求項1に記載のフレーム。
【請求項7】
航空機の胴体の、湾曲した一体構造の複合フレームを加工する方法であって:
フレームの湾曲を画定する極座標系を使用して繊維強化樹脂層の積層体を作製することであって、フレームの湾曲に実質的に接触している少なくとも特定の層の単向性強化用繊維を配向させることが含まれること、並びに
積層体をウェブ、内側コード及び外側コードを含む形状に成形すること
を含む方法。
【請求項8】
フレームの湾曲に実質的に接触している単向性強化用繊維を配向させることを、コンピュータで制御された自動繊維配置機械を使用して行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
積層体を成形することが、ツールの上で積層体の縁部を曲げることを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−251677(P2011−251677A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104200(P2011−104200)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】