説明

湿気硬化型オルガノシロキサン組成物

a)ケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を2つ以上有するオルガノポリシロキサン;b)一般式G−Si−Rを有するシラン(式中、各々の基は(a)のヒドロキシル基または加水分解性基と反応性があり、また各々のRは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはフッ素化したアルキル基である);c)1つ以上のフィラーおよびd)光触媒を含むエラストマー体へと硬化可能な湿気硬化型組成物。好ましくは、少なくとも1つのR基は不飽和だが、これがない場合、e)不飽和短鎖シロキサン、不飽和環状シロキサン、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールまたは不飽和脂肪酸エステルの群から選択される不飽和化合物の形態の添加成分が含まれる。硬化製品は一般的に封緘剤として用いられ、硬化後の吸塵を防止し、空気との封緘剤界面上に防護層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型オルガノシロキサン組成物であって、エラストマー固体へと硬化可能であり、かつ硬化後の吸塵を防止する組成物に関する。この出願はまた、封緘物質としてのこのような組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー固体へと硬化するオルガノシロキサン組成物は、よく知られている。典型的には、このような組成物は、反応性末端基、一般的にシラノール基を有するポリジオルガノシロキサンと、ポリジオルガノシロキサンと反応するシラン架橋剤、例えばアセトキシシラン、オキシモシラン、アミノシランまたはアルコキシシランとの混合により得られる。これらの物質は、しばしば室温で大気水分に暴露して硬化させる。
【0003】
上記記載の硬化型組成物の重要な適用の一つは、封緘剤としての使用である。封緘剤としての使用では、組成物は比較的厚い層で硬化し、約2mmを超える厚さを有するエラストマー体を与えられることが重要である。組成物には、数時間の間に防音シールを与えるのに充分な速さですばやく硬化するが、適用後表面を短時間で望ましい形状に仕上げられないほど速くではなく硬化することがしばしば望まれている。このような組成物に対する特に望ましい特性のなかでは、速い表面硬化速度、形成された被膜の良好な弾性および約24時間硬化後には、表面がべたつかないことが挙げられる。最終使用者は、表面のべたつきの残る封緘剤にはいくつかの欠点があることを考慮することが知られており、例えば製品が完全に硬化せず、その結果、導かれるであろう、典型的には正しくないことであるが、劣ったバルク特性をも生じるという問題を信じることである。しかしながら、べたつく表面は、工場などのほこりっぽい環境ではさらに吸塵性が高まる。さらに、その色または半透明を保持し、硬化後に着色せず、封緘剤と空気との界面で経時的に吸塵しない封緘剤表面を有する封緘剤を得ることが長い間望まれてきた。
【0004】
アルコキシシラン架橋剤を用いるヒドロキシまたは加水分解性ポリマーの望ましい硬化速度を達成するため、トリまたはテトラアルコキシシランを、縮合反応触媒である有機スズまたはチタン化合物と組み合わせて架橋剤として用いることが一般的に行われてきた。工業的には、架橋剤が互いに複数の鎖と橋かけ可能であるように、架橋剤は反応性のあるまたは架橋性のある基を少なくとも3つ含まれなければならないと一般的に理解されている。この目的に最も一般的に好ましいチタン化合物は、第一級、第二級または第三級アルコール、例えばイソプロピルアルコールおよびn−ブチルアルコールの誘導体である。使用されるチタン化合物は、しばしばチタン化合物の促進剤および安定化剤であるキレート剤、例えばアセチルアセトナートと組み合わせて用いられる。
【0005】
硬化後の吸塵および/または変色が最小であるまたは全くない硬化最終製品を使用者に提供するというゴールは、広くて多様な特許文献の主題となっている。よって、これがシリコーン封緘剤業界で認識され長らく知られてきた問題であると認められるであろう。以下に示すように、数多くの高価で複雑な添加剤と組成物が、吸塵の最小のまたは全くない「きれいな」封緘剤を与えると提案されてきた。多くの場合、このような添加剤の導入は、吸塵を減らすけれども、硬化最終製品に別の好ましくない効果、例えば変色および退色を与え、そして、「きれいな」封緘剤を与えるという簡単な証明された手段自体が、封緘剤業界のゴールとして残っている。下記の先行技術では、この困難でよく知られた問題を解決する先行の試みが議論されている。
【0006】
国際公開パンレットWO 01/42365には、分子あたり平均で1を超え2未満の反応性部位を含むオルガノポリシロキサン、分子あたり加水分解性基を1つ以上およびポリマーの反応性部位と反応できる官能基を少なくとも1つ含む多官能性オルガノシリコン、縮合硬化触媒およびフィラーを有するシリコーン封緘剤組成物が記載されている。典型的には、ポリマー反応基はケイ素結合した水素、ヒドロキシル基またはアルケニル基であり、そしてオルガノ多官能性オルガノシリコン化合物はRSi構造を有する。ここで、少なくとも1つのR基は水素、アルコキシまたはアルケニルであり、少なくとも他の1つのR基はアルコキシ、オキシモ、アミノ、アミノキシまたはアシロキシである。しかしながら、この定義の範囲内に広大な範囲にわたる製品が包含されるが、標準的化合物が特に挙げられ、すなわち、オルガノ多官能性オルガノシリコン化合物の好適な例は、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランまたはこれらの混合物を含む。シランベースの架橋剤のこの選択は、当業者に3または4のいずれかのアルコキシ基がこの発明に必要であることを教示している。さらに、触媒は、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウムまたはゲルマニウムと同様にチタンおよびジルコニウムを含むあらゆる適切な縮合触媒とすることができる。得られる封緘剤製品は変色を低下すると言われる。
【0007】
米国特許US5,432,218には、末端ケイ素に結合したヒドロキシル基または加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素結合した加水分解性基を少なくとも2つ有するケイ素含有架橋剤、および不飽和脂肪酸、例えば桐油と、ケイ素結合したアミノ、エポキシまたはヒドロキシル基の少なくとも1つを含むジオルガノポリシロキサンとの反応生成物が記載されている。これらの製品は吸塵を低下させるが、実質的に製剤中に添加剤が存在することにより、これらの組成物の製品は色を消失する傾向がある。
【0008】
米国特許US5,733,960には、ケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、加水分解性架橋剤、典型的に分子あたりケトオキシモ基を少なくとも3つ有するケトオキシモシラン、スズまたはチタンベースの触媒および桐油を含む組成物に酸化亜鉛を導入することにより、吸塵の少ないタイプのシリコーン封緘剤組成物の寿命を延ばす手段が記載されている。
【0009】
米国特許US5,326,816には、オルガノポリシルエチレンシロキサン、メチルトリブタンオキシモシランに例証される2より多くの加水分解性基を有するオルガノシラン、UV吸収剤および/または酸化防止剤と組み合わせて記載されている。この組成物は、発明者の知らない後者の性質の理由にもかかわらず、良好な低い吸塵性を持つと言われている。
【0010】
欧州特許EP 541074A(Sunrise Meisei Corp)には、シリコーン変性ポリエーテルを、溶媒中の少なくとも2つのメタアクリルエステルのコポリマーと、同じ溶媒中で40〜100℃の融点を持つ固形の長鎖第一級または第二級飽和モノまたはジアミンと共に使用する1成分封緘剤組成物が主張されている。後者の2成分は、封緘剤に吸塵性を低減するバリアー層を形成すると言われる。この組成物はまた、フィラー、オレフィン、エポキシ、メタアクリル、アミノまたはメルカプト官能性シラン架橋剤とスズベース触媒を含む。
【0011】
米国特許US4618646には、シラノール末端ジオルガノポリシロキサン、平均で分子あたり2.01の加水分解性基を有するシラン架橋剤、例えばメチルトリメトキシシランおよびビニルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、シリカフィラーおよびシリコーン変性ポリオキシアルキレン化合物を含む封緘剤組成物が記載されている。後者はたれ防止を提供する。
【0012】
米国特許US5357025は、エラストマー封緘剤組成物を提供し、この組成物は空気と封緘剤との界面で、シロキサンと親和性のない表面層(フルオロカーボン化合物を含む)を提供する。シロキサンと親和性のない表面層は、分子あたり式C(2x+1)(式中、xは少なくとも6の平均値を有する)のフルオロカーボン基を少なくとも1つ含むフルオロカーボン化合物と、(ii)乾燥オイル酸化製品を含む。シロキサンと親和性のない表面層は、汚くならないと言われ、かつ変色を防止する。
【0013】
米国特許US5,264,603は、封緘剤組成物について記載し、その調製方法は、シラノール末端ポリジメチルシロキサンと加水分解性シラン混合物との混合を含む。得られる封緘剤は、少なくとも6個の炭素を有するフルオロカーボン化合物と乾燥オイル、例えば桐油との混合物を混合することにより、空気と封緘剤との界面で薄い防護層を形成することを意図している。
【特許文献1】国際公開パンレットWO 01/42365
【特許文献2】米国特許US5,432,218
【特許文献3】米国特許US5,733,960
【特許文献4】米国特許US5,326,816
【特許文献5】欧州特許EP 541074A
【特許文献6】米国特許US4618646
【特許文献7】米国特許US5357025
【特許文献8】米国特許US5,264,603
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の提案から、広範で多様な添加剤を含む複合組成物がこの問題を解決するのに求められることが、当該分野において理解されていることがわかる。しかしながら、場合によっては、使用される添加剤は、得られる封緘剤に否定的な副作用、例えば硬化製品の増大した色の消失を有することができる。したがって、吸塵のない硬化シリコーン封緘剤を得ることの安価で簡単な手段が未だ求められている。
【0015】
本発明は、吸塵を防止し、硬化後半透明の改質した表面と、美的に好ましくない黄色の変色を防止する、「ウォーターホワイト」または白色の硬化製品を最終使用者に提供する、改良した「きれいな」封緘剤を提供することを求める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、第1の態様ではエラストマー体へと硬化可能な湿気硬化型組成物を提供し、この組成物は、
a)ケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を2つ以上有するオルガノポリシロキサン;
b)式G−Si−Rを本質的に有するシラン(式中、各々の基Gは同一であっても異なっていてもよく、かつ、(a)のヒドロキシル基または加水分解性基と反応性があり、また各々のRは独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基などのアリール基、またはフッ素化したアルキル基を表す);
c)1つ以上のフィラーおよび
d)光触媒;を含み
ここで、R基がアルケニル基またはアルキニル基のいずれでもない場合:
e)不飽和短鎖シロキサン、不飽和環状シロキサン、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪酸エステルの群から選択される不飽和化合物
を含むものである。
【0017】
本発明の第1の態様に係る組成物では、成分(a)、すなわちケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンは、一般式J−Q−Jを有してもよい。ここで、Qは、式RSiO4−s/2のシロキサン単位を有するポリジオルガノシロキサン鎖であり、各々のRは独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基例えばビニル、プロペニルおよび/またはヘキセニル基;アリール基例えばフェニル基、またはフッ素化したアルキル基を表し、かつsは0、1または2である。好適な材料は直鎖の材料、すなわちすべての単位についてs=2である。好適な材料は、一般式−(RSiO)−に係るポリジオルガノシロキサン鎖を有する。ここで、各々のRは、アルキル基、例えばメチル、エチルまたはイソブチル基を表し、かつmは約200〜1500である。適切な材料は、約500mPa・s〜200,000mPa・sのオーダーの粘度を有する。
【0018】
オルガノポリシロキサンの基Jは、ヒドロキシル基または加水分解性基であり、同一であっても異なっていてもよい。J基は、例えば−Si(ROH、または
−Si(R−(D)−RSiR(OR3−k
から選択してもよい。
ここで、Dは、−R−(Si(R−O)−Si(R−であり、かつRは前述のとおりであり、(そして好ましくはメチルであり)、Rは二価の炭化水素基であり、rは、1と6の間の整数であり、dは、0または整数であり、もっとも好ましくはdは、0、1または2であり、Rは、アルキル基が6個まで炭素原子を有する、アルキル基またはオキシアルキル基であり、かつkは、0、1または2である。好ましくは、Rは、メチレンまたはエチレン基のいずれかであり、kは0または1であり、かつRはメチルまたはエチル基である。もっとも好ましくは、Rはエチレン基であり、kは0であり、かつRはエチル基である。好ましくは、少なくとも1つのJ基は、−Si(R−(D)−R−SiR(OR3−k基である。一部のJ基は、(アルキル)Si−基(ここで、アルキル基は好ましくはメチル基である)であってもよい。好ましくは、オルガノポリシロキサン(成分(a))は、組成物の32〜70重量%を含む。
【0019】
成分(b)は、式G−Si−Rを本質的に有するシランである。各々の基Gは、同一であっても異なっていてもよく、かつ、ヒドロキシル基または加水分解性基と反応性がある。好ましいG基の例は、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、およびヒドロキシ基の群から選択される。もっとも好ましくは、反応性基は、1と10個の間の炭素原子を含むアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、およびt−ブトキシ基である。各々のR基は同一であっても異なっていてもよく、独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基などのアリール基、またはフッ素化したアルキル基を表す。好ましくは、少なくとも1つのR基は、アルケニル基またはアルキニル基であるが、もっとも好ましくはアルケニル基である。アルケニル基は、例えば直鎖または分岐したアルケニル基、例えばビニル基、プロペニル基およびヘキセニル基から選択してもよい。もっとも好ましくは、1つのRはアルケニル基であり、他のR基は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチルまたはイソプロピルである。本発明の成分bの適切なシランの特定の例は、アルケニル−アルキル−ジアルコキシシラン例えばビニル−メチル−ジメトキシシラン、ビニル−エチルジメトキシシラン、ビニル−メチルジエトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、アルケニルアルキルジオキシモシラン例えばビニル−メチル−ジオキシモシラン、ビニル−エチルジオキシモシラン、ビニル−メチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシラン、アルケニルアルキルジアセトキシシラン例えばビニル−メチル−ジアセトキシシラン、ビニル−エチルジアセトキシシラン、ビニル−メチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシランおよびアルケニルアルキルジヒドロキシシラン例えばビニル−メチル−ジヒドロキシシラン、ビニル−エチルジヒドロキシシラン、ビニル−メチルジヒドロキシシラン、ビニルエチルジヒドロキシシランを含む。
【0020】
成分(b)は、貯蔵の間の組成物の適切な安定性と、大気中の水分に暴露した際の組成物の成分(a)との適切な相互反応を確保するのに充分な量が用いられる。好ましくは、成分(b)は、100重量部の成分(a)に対して2〜22重量部の範囲であり、すなわち典型的には、組成物の1.4〜7.1重量%を含む。好ましくは、成分(b)は0.2〜7重量部のアルケニル含有量(典型的にはビニル基)を含み、より好ましくは0.2〜4重量部のアルケニル含有量を含む。もっとも好ましくは、成分(b)は、4〜10重量部の量で存在する。式G−Si−RまたはG−Si(ここで、式中、GおよびRは上記と同様である)を有するシラン架橋剤は、本発明の組成物中に存在しないのが好ましい。
【0021】
1つ以上のフィラー(成分(c))は適切な1つ以上のいかなるフィラーを含んでもよく、それらは、補強用および/または非補強用フィラーまたはそれらの組み合わせであってもよい。補強用フィラーは、通常、粒径が小さく、典型的にはその外部表面に反応基を含む表面活性である。補強用フィラーの例として、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、チタニア、酸化亜鉛、クレーおよびマイカを含み、これらすべては得られる硬化製品に機械的強度を付与するために用いられる。非補強用フィラーには、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石英、ケイ藻土、硫酸バリウム、および硫酸カルシウムが含まれる。一部のフィラー、例えば沈殿炭酸カルシウムは、組成物にある程度の補強を与えることから、半補強用として考慮できることも特筆される。フィラーは、処理剤、例えばオルガノクロロシラン、オルガノポリシロキサン、およびヘキサメチルジシラザンとin-situで前処理または処理してもよく、またあるいは脂肪酸またはそれらの誘導体と処理してもよい。任意には、処理剤はある程度の不飽和を有してもよい。
【0022】
本発明では、上記のいずれのフィラーを用いることができる一方で、沈殿炭酸カルシウムが好ましく、特に脂肪酸またはそれらの誘導体と処理したものが好ましい。好ましくは、成分(c)は、使用するフィラーに依存して100重量部の成分(a)あたり、組成物中に2〜180重量部の範囲で存在する。炭酸カルシウムの場合、例えば使用されるフィラーの量は100重量部の成分(a)あたり40〜180重量部の範囲である。すなわち、組成物中に28〜60重量%で存在し、シリカベースのフィラーの場合、100重量部の成分(a)あたりフィラーが2〜22重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
発明者らは、本発明の本質的な特徴は組成物中に存在する光触媒(成分(d))にあることを見出した。好ましくは、光触媒はチタネートまたは酸化亜鉛であり、一方もっとも好ましくはチタネートである。チタネートは空気−封緘剤界面での封緘剤上の防護層形成を光触媒するために使用されるが、好ましくは本発明に係る組成物を硬化するための縮合触媒としても作用する。これは光触媒として作用する、すなわちUV活性化反応を開始するチタネートの能力のためと信じられており、空気−封緘剤界面での封緘剤上の防護層形成に関与すると信じられている
【0024】
適切なチタネートのいずれも、本発明の成分(d)に使用してもよく、例えばチタネートは一般式Ti[OR(ここで、式中、各々のRは同一であっても異なっていてもよく、1〜10個の炭素原子を含む直鎖または分岐した、一価の第一級、第二級または第三級脂肪族炭化水素基を表す)に係る化合物を含んでもよい。任意には、チタネートは部分的に不飽和基を含んでもよい。しかしながら、Rの好適な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチルおよび分岐した第二級アルキル基、例えば2,4−ジメチル−3−ペンチルを含むがこれらに限定はされない。好ましくは、各々のRが同一の場合、Rはイソプロピル、分岐した第二級アルキル基またはtert-アルキル基、特に、tert-ブチル基である。
【0025】
あるいは、チタネートはキレート化されていてもよい。キレート化は、適切なキレート剤のいずれか、例えばアルキルアセチルアセトネート、例えばメチルまたはエチルアセチルアセトネートで行ってもよい。したがって、触媒は、
(i)M(OR
(ii)M(OR(Z)
からなる群から選択される化合物の
(I)混合物、および
(II)反応生成物であって、
[ここで、式中、Mは、周期表のIVB族から選択される価数4を有する金属であり、各々のRおよびRは同一であっても異なっていてもよく、下記:
(i’)第一級脂肪族炭化水素基、
(ii’)第二級脂肪族炭化水素基、
(iii’)第三級脂肪族炭化水素基、および
(iv’)−SiR
からなる群から選択され、
ここで、各々のRは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基かつ、
Zは式−O−L−Oの基であり、ここでLは下記:
(i’’)1〜8個の炭素原子を含むアルキレン基、および
(ii’’)1〜8個の炭素原子を含む分岐したアルキレン基であって、かつyは0または2である基(ここで、yが0の場合、zは2であり、yが2の場合、zは1である);および
(iii’’)下記式:
【化1】

を有する化合物
からなる群から選択され、
ここで、式中、Rは下記:
a’)メチレン基および
b’)1〜6個の炭素原子を有する置換したメチレン基
からなる群から選択され、
ここで、A’は下記:
(!)−(CXC(R10(式中、nは0〜5である)、
(!!)アダマンチル基および
(!!!)アダマンチル誘導体
からなる群から選択され、
B’は下記:
a’’)−(CXC(R10(式中、tは0〜5である)、
b’’)1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基、および
c’’)OR11
からなる群から選択され、
ここで、R11は下記:
a’’’)−(CXC(R10および
b’’’)1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基
からなる群から選択され、
ここで、各々のXは同一であっても異なっていてもよく、下記:
i)ハロゲン基および
ii)水素
からなる群から選択され、
かつ、各々のR10は同一であっても異なっていてもよく、下記:
i)ハロゲン基および
ii)1〜8個の炭素原子を有するアルキル基
iii)水素
からなる群から選択される]
からなる群から選択される材料を含む触媒を含んでもよい。
【0026】
好ましくは、ハロゲン基はフルオロ基である。
【0027】
これらの材料は、例えばα−またはβ−ジケトンまたはこれらの誘導体と上述したアルコラートの反応により製造される。より好ましくは、チタンに結合した2つのアルコラート基を有する、部分的にキレート化したチタン化合物である。もっとも好ましくは、2つのアルコラート基が3個を超える炭素原子からなる、例えばビス(ジエチレングリコキシ)−チタン−(2,4−ペンタンジオネート)などのオルガノチタン化合物である。
【0028】
Zが−O−L−O−の場合、各々の酸素原子は直接チタン原子に結合していて、xは約2である。好ましくは、Lは1〜8の炭素原子を含むアルキレン基である。O−L−O基の例は、1,3−ジオキシプロパン(O−(CH−O),2,4−ジメチル−2,4−ジオキシペンタン(O−C((CH)−CH−C((CH)−O)および2,3−ジメチル−2,3−ジオキシブタン(O−C((CH)−C−((CH)−O)を含んでもよい。
【0029】
化合物(ii)について、好ましくは少なくとも1つの、もっとも好ましくは各々のXがハロゲン基である。もっとも好ましくはハロゲン基はフッ素基である。好ましくは同様に少なくとも1つの、もっとも好ましくは各々のR10基がハロゲン基であり、もっとも好ましくはフッ素基であり、あるいは各々のR10基がアルキル基、もっとも好ましくはメチルまたはエチルまたはブチル基である。もっとも好ましい式では、nはゼロである。Rはもっとも好ましくはメチレン基であるが、1〜5個の炭素原子を有する1つのアルキルまたはハロゲン置換アルキル基を有してもよい。アダマンチル基は、アダマンタン誘導体または3つの融合したシクロヘキサン環をベースとする固い環系を有するトリシクロ−3,3,1,1−デカンである。
【0030】
好ましくは、B’はOR11であり、ここで、R11は、1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、もっとも好ましくはR11は、メチル、エチルまたはイソプロピル基である。B’が−(CXC(R10を含む場合、tは好ましくは1または0であり、もっとも好ましくは0である。
【0031】
化合物(iii’’)の例は、メチルピバロイルアセテート(MPA)、エチル4,4,4−トリフルオロアセトアセテート(TFA)、ペンタン酸5,5,5,4,4−ペンタフルオロ−3−オキソエチルエステル、ジピバロイルメタン、メチル−3−オキソ−4,4−ジメチルヘキサノエートおよびエチル−3−(1−アダマンチル)−3−オキソプロピオネートを含む。MPAは、あるいはペンタン酸,4,4−ジメチル−3−オキソ−,メチルエステルとして知られており、ここで、各々のR10はメチル基であり、nはゼロであり、Rはメチレン基であり、かつB’はOR11であり、ここでR11はメチル基である。MPAは下記式:
【化2】

を有する。
エチル4,4,4−トリフルオロアセトアセテート(TFA)は、あるいはブタン酸,4,4,4−トリフルオロ−3−オキソ−,エチルエステルおよびエチルトリフルオロメチルアセトアセテートとして知られており、ここで、各々のR10はフルオロ基であり、nはゼロであり、Rはメチレン基であり、かつB’はOR11であり、ここでR11はエチル基である。TFAは下記式:
【化3】

を有する。
ペンタン酸5,5,5,4,4−ペンタフルオロ−3−オキソエチルエステル(以下エチルペンタフルオロエチルアセトアセテートと呼ぶ)は、式C−C(=O)−CH−C(=O)−O−Cを有する。
ジピバロイルメタンは式(CHCC(=O)CHC(=O)C(CHを有する。
メチル−3−オキソ−4,4−ジメチルヘキサノエートは式
−C((CH)−C(=O)−CH−C(=O)−O−CH
を有する。エチル−3−(1−アダマンチル)−3−オキソプロピオネートは、A’はアダマンチル基であり、Rはメチレン基でありかつB’はOR11であり、ここでR11はエチル基である。
【化4】

上記式では、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、かつt-Buはtert-ブチル基を表す。
【0032】
よって、成分(d)のキレート化したチタネート触媒は、下記のように表してもよい。
【化5】

【0033】
しかしながら、もっとも具体的な例では、未反応化合物(i)および(ii)とpが0からpが4の上記式を含む化合物(i)および(ii)のすべての異なる意味の混合物および/または反応生成物が存在すると理解される。
【0034】
同様にZが−O−L−O−の場合、反応は好ましくは下記の互変異性構造であるが、典型的には、未反応化合物(i)および(ii)を含むすべての可能な代替物を含む混合物および/または反応生成物であろう。
【化6】

【0035】
化合物(ii)と化合物(i)のモル比は、好ましくは4:1以下であり、より好ましくはモル比は約0.5:1と2:1の間であるが、もっとも好ましくは1:1の範囲内である。
【0036】
好ましくは、成分(d)は、100重量部の成分(a)あたり0.3〜6重量部の量、すなわち組成物の約0.2〜2重量%で存在する。成分(d)は、キレート剤を用いる場合、6重量部を超える量で存在してもよい。
【0037】
1つ以上の不飽和化合物は、不飽和短鎖シロキサン、不飽和環状シロキサン、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールまたは不飽和脂肪酸エステルの群から選択される。成分(e)の不飽和化合物は、一般的に成分(b)の両方のR基がアルキル基の場合のみ存在する。成分(e)のもっとも好ましい不飽和化合物は、不飽和短鎖シロキサン(重合度(dp)2〜50)オルガノポリシロキサンである。不飽和種は、好ましくは直鎖または分岐したアルケニル基、例えばビニル、プロペニル、ヘキセニルであるが、あるいはアルキニル基であってもよい。不飽和短鎖シロキサンは、成分(a)のヒドロキシ基または加水分解性基と反応性のあるおよび少なくとも1つの不飽和基を含むケイ素結合官能基を2つ以上含んでもよい。存在する場合、反応性基がアルコキシ、アセトキシ、オキシムまたはヒドロキシ基とすることができ、もっとも好ましくは反応性基は1から10個の間の炭素原子を含むアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシおよびt−ブトキシ基である。不飽和短鎖シロキサンの好ましい例は、ヒドロキシ、アルコキシ、アセトキシまたはオキシモ末端のアルケニルアルキルシロキサン、例えばヒドロキシ末端のビニルメチルシロキサンおよびアルコキシ末端のビニルメチルシロキサンを含み、ここでアルコキシ基は好ましくはメトキシまたはエトキシである。
【0038】
成分(e)で使用できる他の化合物は、あるいは、未反応性不飽和シロキサンを含む。このシロキサンでは、各々の不飽和種は、好ましくは直鎖または分岐したアルケニル基、例えばビニル、プロペニル、ヘキセニルであるが、あるいはアルキニル基であってもよく、典型例ではメチルアルケニル環状オルガノポリシロキサンでもよい。さらに、代替物は、用いられる組成物と化学的に適合性がある、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールまたは不飽和脂肪酸エステル、例えばオレイルアルコールを含む。成分(e)は、Rが不飽和基を含む場合に存在してもよいが、これは必須ではなく典型的には避けられている。典型的には、本発明の組成物中に存在する場合、成分(e)は、100重量部の成分(a)あたり1〜22重量部の量で存在する。
【0039】
好ましくは、本発明に係る組成物は、
・100重量部の成分(a)
・2〜22重量部の成分(b)
・2〜180重量部の成分(c)、および
・0.3〜6重量部の成分(d)
を含む。
【0040】
組成物中に含まれてもよい他の成分は、顔料、可塑剤、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウムまたはゲルマニウムを含む縮合触媒およびジリコニウムベースの縮合触媒;光開始剤、組成物のツーラビリティを改善するためのレオロジー添加物、例えばシリコーングリコールおよび粘着促進剤、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン単独またはγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせである。硬化したエラストマーの弾性率を減らすための可塑剤として使用できる慣用的な成分の1つは、末端トリオルガノシロキシ基を有するポリジメチルシロキサンであって、その有機置換基は例えばメチル、ビニルまたはフェニルまたはそれらの組み合わせのものである。このようなポリジメチルシロキサンは通常、25℃で約100〜100,000mPa・sの粘度を有し、100重量部の重合材料あたり約80重量部までの量で使用することができる。他の可塑剤は、石油留出物などで当業者によく知られている有機可塑剤を含んでもよい。
【0041】
また、本発明の範囲には、上記組成物の硬化したエラストマー製品と接合部、穴などをシーリングするためのこの組成物の使用が含まれる。
【0042】
本発明の第1の態様に係る湿気硬化型組成物は、構成成分をあらゆる適切な順で混合することにより製造してもよい。例えば、成分(b)および(d)のスラリーを最初に調合し、任意の添加剤、例えば粘着促進剤を加えてもよい。次いで、スラリーをポリマー(成分(a))の一定割合、典型的には40と75%の間、と混合し、その後フィラー(成分(c))を添加・混合し、次いでポリマーの残部を添加・混合してもよい。
【0043】
本発明に係る組成物は、好ましくは貯蔵に適した1パートの剤型に調合されるが、大気中の水分に暴露されて硬化し、これはいくつかの先行技術製品を超えた主たる利点である。しかしながら、組成物は、また2つの部分に分けられてもよい。得られる封緘剤製品は、各種適用に、例えばコーティング、コーキングおよびカプセル化剤として使用してもよい。しかしながら、これらは、特に相対的移動を受ける物品および構造物における接合部、穴および他の空間をシーリングするのに適している。したがって、それらは、特にグレージング封緘剤として適しており、かつ建築構造物をシーリングするのに適している。それらは、望ましい硬化特性を有し、たいていの工業基準では弾性率が充分低く、かつ、たいていの工業基準では、破壊に対して、充分高い伸びを持つ硬化した封緘を与える。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも2つの表面に接着した表面間におけるエラストマー塊の形成方法を提供し、この方法は、表面間に、エラストマー体へと硬化可能な湿気硬化型組成物の塊を導入し、前記組成物を水分の存在下で硬化させることを含む。ここで、この組成物は、
a)ケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を2つ以上有するオルガノポリシロキサン;
b)式G−Si−Rを本質的に有するシラン(式中、各々の基Gは同一であっても異なっていてもよく、かつ、(a)のヒドロキシル基または加水分解性基と反応性があり、また各々のRは独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基などのアリール基、またはフッ素化したアルキル基を表す);
c)1つ以上のフィラーおよび
d)チタネートおよび酸化亜鉛の群から選択される光触媒を含み、
ここで、R基がアルケニル基またはアルキニル基のいずれでもない場合:
e)不飽和短鎖シロキサン、不飽和環状シロキサン、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪酸エステルの群から選択される不飽和化合物
を含む。
【0045】
好ましくは、硬化過程は約室温、すなわち15〜25℃の範囲の温度で起こるが、所望であれば加熱で硬化過程を促進することを用いてもよい。本発明の場合、水分の存在下で組成物の一般的な硬化が分/時間単位で起こるが、本発明で述べた防護層の形成が、形成に数週間かかるが、その結果、触ると比較的粘着性があり、またはべたつく、従来の空気−封緘剤界面と異なり、触ると滑らかな表面となる。
【0046】
本発明の範囲を明らかにするため、実施例として本発明を例証する記載のため選択した封緘剤組成物の実施例を以下に記載する。記載中、他に表示のない限りすべての組成は重量%で表し、すべての粘度は25℃のものである。
【0047】
[実施例]
(すべてのサンプルの硬化条件)
約100mm厚の平板を注型し、蛍光灯の存在下、相対湿度(RH)50%、20℃の温度で硬化させた。
【0048】
(表面改質の定量化)
表面改質は、各々のサンプルの表面摩擦係数および/または光沢値を測定して下記の実施例で定量した。硬化状態および防護層の形成を、周期的に探触および目視基準で検査した。典型的には、最初のサンプルで最初の硬化から21日後に行い、次いで必要ならば7日ごとに行った。
【0049】
(光沢値)
光沢の測定は、ASTM D 523に従い、水平に対して85°の角度で行った。塗料およびコーティング業界で定義されている異なる仕上げの典型的な光沢/マット値もまた測定し、参考として下記に示す。
【表1】

【0050】
われわれのサンプルの定量化のため、改質した表面はマット仕上げを有し、光沢値は45未満である。45を超える光沢値を与えるサンプルは光沢性があり、改質した表面ではないと判断する。
【0051】
(表面改質を定量化するための摩擦テスト方法)
この方法は、Monitor/Slip and Friction(登録商標)モデル32-06-00テスター(Testing Machines Inc.)を用いて表面改質現象を定量化するため、所定の荷重ブロックの移動に対する種々のシリコーン表面の表面抵抗の違いを決定するのに用いた。サンプルの摩擦係数は、下記に示した方法に従って決定し、すべての結果をグラム(g)単位で測定した。
【0052】
摩擦係数を決定するため、荷重ブロック(200g)を、分あたり6インチ(分あたり15.24cm)の速度で、硬化した封緘剤の平板(少なくとも20cm長)の上部表面に沿って8インチ(20.32cm)の距離にわたって引っ張った。各々のテストの結果、2つの量、静的摩擦係数と動的摩擦係数を決定した。静的摩擦係数は、テストの最初の数秒間、荷重ブロックが封緘剤表面に止まっている際に測定する。動的摩擦係数は、荷重ブッロクを引っ張るのに必要な力を基に決定する。動的摩擦係数は、正確には、テストした封緘剤表面の表面改質の違いによる移動抵抗を表す。
【0053】
下記実施例で与えられた動的摩擦係数の結果の場合、75gまでの力の値では表面改質したサンプルの特徴であり、表面改質を示さないサンプルでは150〜300gの範囲の値である。
【0054】
2つのいずれかのフィラーを下記の実施例で用いた。両者とも脂肪酸で処理した沈殿炭酸カルシウムで、フィラー1は平均粒径が0.075μ、比重は2.66かつ水分含有量は0.5%であり、フィラー2は平均粒径が0.15μ、比重は2.7かつ水分含有量は<0.2%であった。
【0055】
[実施例]
(実施例4cを除いて)各々の組成物は実施例1Aに記載したのと同一の方法で製造した。
[実施例1]
(ビニル(より一般的には不飽和種)の非存在下で表面改質のない例示)
【0056】
すべての成分を加えて完全に混合して、ホイップミキサーで下記の2つの製剤を製造した。実施例1Aの場合、成分(b)のスラリー、ビニルメチルジメトキシシランおよび成分(d)ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)を50%の成分(a)、トリアルコキシ末端ポリジメチルシロキサンと混合した。混合物を30秒間混合し、次いで得られる混合物にフィラーを導入した。フィラーを1分間にわたって組成物中に混合し、その後ポリマー残部を導入し、組成物全体をさらに1分間混合した。最後に、得られる組成物を30秒間揮発分を除去した。
A 重量%
トリアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン
(PDMS)(粘度65 000mPa・s) 59.12
フィラー1 34.89
ビニルメチルジメトキシシラン(VMDM) 4.99
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100
摩擦力 63.78g
光沢 22.62

B(比較) 重量%
トリアルコキシ末端PDMS 59.04
フィラー1 35.01
ジメチルジメトキシシラン(DMDM) 4.96
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 0.99
100
摩擦力 258.5g
光沢 82.74
【0057】
製剤Aは他の成分のなかでも、ビニルメチルジメトキシシランを含む。2つの製剤のもっとも顕著な違いは、Aは〜1.02%のビニル種を含むが、それに対しBはビニルまたは他のいかなる不飽和種も含まないことである。製剤Aでは材料の平板を注型した後2〜3週間の間に表面改質が見られたが、それに対しBでは9週間後でも目立った表面改質はまったく見られなかった。
【0058】
[実施例2]
(ビニルシロキサン流体のみの表面改質の効果の例示)
成分(e)を、成分(b)および(d)の最初のスラリーに導入した以外は、実施例1Aに記載したようにすべての成分を加えて、Hauschild(dental)ミキサーで下記製剤を製造した。
重量%
トリアルコキシ末端PDMS(粘度65000mPa・s) 46.27
フィラー2 45.51
ジエチレンジアミンプロピルジメトキシシラン 0.20
テトラtert-ブチルチタネート(TtBT) 0.60
メチルアセトアセテート(MAA) 0.40
DMDM 4.02
ヒドロキシ末端ビニルメチルシロキサン流体(粘度30mPa・s) 3.01
100
摩擦力 53.5g
光沢 10.26
【0059】
この製剤は、系中で唯一の不飽和源であるビニルメチルシロキサン由来の〜0.93%のビニルを含む。表面改質は、硬化のため材料の平板を注型した後2〜3週間の間に得られた。
【0060】
[実施例3]
(ビニル以外の不飽和種の表面改質の効果の例示)
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、Hauschild(dental)ミキサーで下記製剤を製造した。
重量%
トリアルコキシ末端PDMS(粘度65000mPa・s) 46.16
フィラー2 45.52
ジエチレンジアミンプロピルジメトキシシラン 0.24
TtBT 0.61
MAA 0.40
アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン 7.07
100.00
摩擦力 69.33g
光沢 28.92
【0061】
この製剤は、系中で唯一の不飽和源としてアクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランを含む。表面改質は、硬化のためサンプル平板の注型の6週間後に得られた。
【0062】
[実施例4]
(三官能性系を用いた表面改質効果の遅れ、かくして二官能性系の優位性の例示)
[実施例4a(比較)]
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、ホイップミキサーで下記製剤を製造した。
重量%
トリアルコキシ末端PDMS 58.86
フィラー1 35.83
VTM 5.07
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 0.24
100.00
摩擦力 97.83g
光沢 59.72
【0063】
この製剤は、二官能性VMDMの代わりにビニルトリメトキシシラン(三官能性架橋剤)を5.07%含む。このサンプルはビニル種を〜0.93%含むにもかかわらず、表面改質を示し始めるまで6週間を超える時間がかかった。この長い時間は、表面改質の効果を結局のところ導くビニル種の移動を制限する可能性のある三官能性シランの存在によると考えられる。
【0064】
[実施例4b(比較)]
メチルトリメトキシシラン架橋剤とtert-ブチルチタネート触媒を用いる、Dow Corning(登録商標)9−1370シリコーン封緘剤のサンプルをブロック状とし、硬化させた。しかしながら、下記の結果を得るまでに9週間かかった。光沢60.75および摩擦力172.5グラム。
【0065】
[実施例5(比較)]
(光触媒(この場合チタネート)の非存在下での表面改質効果のないことの例示)
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、ホイップミキサーで下記製剤を製造した。
重量%
トリアルコキシ末端PDMS(粘度65000mPa・s) 59.16
フィラー1 35.82
VMDM 5.01
ジブチルスズジアセテート 0.02
100
摩擦力 233.7g
光沢 79.04
【0066】
この製剤は、チタネート触媒の代わりにスズベースの触媒を用い、ビニル種を〜1.02%含むが、硬化長時間後でも表面改質は見られなかった。これは、上記実施例に示した表面改質効果を導く反応の促進に必須と考えられる光触媒の欠乏による。他の実施例で用いたチタネート触媒は光触媒の一例である。
【0067】
[実施例6]
(ヒドロキシ末端PDMSの表面改質の効果の例示)
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、ホイップミキサーで下記製剤を製造した。
重量%
OH末端ポリジメチルシロキサン(粘度50000cP) 58.83
フィラー1 35.16
VTM 1.54
VMDM 3.48
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100.00
摩擦力 61.37g
光沢 8.18
【0068】
上記製剤は、他の実施例(〜0.99%ビニル)で用いたトリアルコキシ末端PDMSの代わりにヒドロキシ末端PDMSを含む。表面改質は、硬化のためサンプルの平板の注型の4週間後に得られた。
【0069】
[実施例7A]
(光がない場合に表面改質効果がない例示)
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、ホイップミキサーで下記製剤(実施例6と同様)を製造した。2つのサンプルの平板を注型し、20℃/50%RHで硬化させた。片方の平板はラボ台上(蛍光灯下)で硬化させたが、もう片方は暗いキャビネット内に置いた。
光暴露 重量%
OH末端ポリジメチルシロキサン(粘度50000cP) 58.83
フィラー1 35.16
VTM 1.54
VMDM 3.48
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100.00
摩擦力 61.37
光沢 8.18

暗いキャビネット(比較) 重量%
OH末端ポリジメチルシロキサン(粘度50000cP) 58.83
フィラー1 35.16
VTM 1.54
VMDM 3.48
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100.00
摩擦力 292g
光沢 88.2
【0070】
暗いキャビネット内で硬化した平板では、高い光沢値で示されるような表面改質が見られなかった。
【0071】
[実施例7B]
(光がない場合に表面改質効果がない例示)
実施例1Aについて記載した方法で、すべての成分を加えて、ホイップミキサーで下記製剤(実施例1Aと同様)を製造した。2つのサンプルの平板を注型し、20℃/50%RHで硬化させた。片方の平板はラボ台上(蛍光灯下)で硬化させたが、もう片方は暗いキャビネット内に置いた。
光暴露 重量%
トリアルコキシ末端PDMS(粘度65000mPa・s) 59.12
フィラー1 34.89
VMDM 4.99
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100
摩擦力 63.78
光沢 22.62

暗いキャビネット(比較) 重量%
トリアルコキシ末端PDMS(粘度65000mPa・s) 59.12
フィラー1 34.89
VMDM 4.99
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 1.00
100
摩擦力 246.15
光沢 84.55
【0072】
暗いキャビネット内で硬化した平板では、高い光沢値で示されるような表面改質が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ケイ素結合したヒドロキシル基または加水分解性基を2つ以上有するオルガノポリシロキサン;
b)式G−Si−Rを本質的に有するシラン(式中、各々の基Gは同一であっても異なっていてもよく、かつアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、およびヒドロキシ基からなる群から選択され、また各々のRは独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基などのアリール基、またはフッ素化したアルキル基を表す);
c)1つ以上のフィラーおよび
d)光触媒;を含み
ここで、R基がアルケニル基またはアルキニル基のいずれでもない場合:
e)不飽和短鎖シロキサン、不飽和環状シロキサン、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪酸エステルの群から選択される不飽和化合物
が含まれるエラストマー体へと硬化可能な湿気硬化型組成物。
【請求項2】
成分(b)が、アルケニル−アルキル−ジアルコキシシラン、アルケニルアルキルジオキシモシラン、アルケニルアルキルジアセトキシシラン、および/またはアルケニルアルキルジヒドロキシシランを一つ以上含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
成分(b)が、ビニル−メチル−ジメトキシシラン、ビニル−エチルジメトキシシラン、ビニル−メチルジエトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニル−メチル−ジオキシモシラン、ビニル−エチルジオキシモシラン、ビニル−メチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシラン、ビニル−メチル−ジアセトキシシラン、ビニル−エチルジアセトキシシラン、ビニル−メチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシラン、ビニル−メチル−ジヒドロキシシラン、ビニル−エチルジヒドロキシシラン、ビニル−メチルジヒドロキシシランおよびビニルエチルジヒドロキシシランの群から選択される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(c)が、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、チタニア、酸化亜鉛、クレー、マイカ、重質炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石英、ケイ藻土、硫酸バリウム、および硫酸カルシウムを1つ以上含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(c)が、脂肪酸処理した沈殿炭酸カルシウムを含む請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記光触媒(成分(d))が、チタネートである請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記チタネートが、一般式Ti[ORを有し、式中、各々のRは同一であっても異なっていてもよく、1〜10個の炭素原子を含む直鎖または分岐した、一価の第一級、第二級または第三級脂肪族炭化水素基を表す請求項6記載の組成物。
【請求項8】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチルおよび2,4−ジメチル−3−ペンチルの群から選択され得る請求項7記載の組成物。
【請求項9】
成分(a)が、−Si(ROH、および−Si(R−(D)−R−SiR(OR3−k[式中、Dは、−R−(Si(R−O)−Si(R−であり、Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基、フェニル基およびフッ素化したアルキル基から選択され、Rは、二価の炭化水素基であり、rは、1と6の間の整数であり、dは、0または整数であり、Rは、アルキル基が6個まで炭素原子を有する、アルキル基またはオキシアルキル基であり、かつkは、0、1または2である]から選択される末端基を有する、直鎖または本質的に直鎖のポリジオルガノシロキサンである請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項10】
成分(e)が、2〜50の重合度を有し、かつ成分(a)のヒドロキシ基または加水分解性基と反応性のある少なくとも2つのケイ素結合官能基を有する不飽和オルガノポリシロキサンを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
100重量部の成分(a)、
2〜22重量部の成分(b)、
40〜180重量部の成分(c)、および
0.3〜6重量部の成分(d)を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の湿気硬化組成物を含むエラストマー製品。
【請求項13】
最大光沢値45を有する空気−封緘剤界面の表面を有する、請求項12に記載のエラストマー製品からなる硬化封緘剤。
【請求項14】
封緘剤としての請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
少なくとも2つの表面に接着した表面間でのエラストマー塊の形成方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の湿気硬化型組成物の塊を、この表面間に導入し、かつ前記組成物を水分の存在下で硬化させることを含む方法。

【公表番号】特表2006−522199(P2006−522199A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507207(P2006−507207)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/007873
【国際公開番号】WO2004/094503
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】