説明

湿気硬化型接着剤組成物及び温水床暖房構造体

【課題】合成樹脂製の暖房配管の劣化抑制効果を有する湿気硬化型接着剤組成物、及び高耐久性の温水床暖房構造体を提供する。
【解決手段】 (A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)エステル系可塑剤、を含有するようにした。
【化1】



(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿気硬化型接着剤組成物及び温水床暖房構造体に関し、特に、床暖房に用いる発熱パネルと床材とを接着するのに適した湿気硬化型接着剤組成物、及びポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製パイプに温水を通水するタイプの床暖房ユニットに好適な温水床暖房構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床暖房を採用する住宅が多くなり、特に、床暖房に用いる発熱パネルと床材とを接着するのに適した接着剤が各種提案されている。床暖房に用いる発熱パネルは、合成樹脂製温水管等の暖房配管が、断熱材等の基材上面に敷設又は一部埋設され、さらに基材上面に露出している暖房配管を被覆するようにアルミニウム箔等の伝熱層を設けてなるものである。この伝熱層上に床材を設置することによって、床暖房装置が得られる。
伝熱層と床材とは、硬化型樹脂を主成分とする接着剤によって接着されるが、接着剤が発熱パネルの端部における配管のつなぎ目や、電熱層に破れが生じ露出した配管などに作用し、劣化させるということがあった。また、暖房配管の素材として、その可撓性や軽量性等の観点からポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製の暖房配管、特にポリエチレン製配管が多用されているが、ポリエチレン製配管の場合は劣化しやすく、暖房配管としてこのような温水管を用いた場合には、その劣化により水漏れが生じる恐れがあり、重大な欠陥となる。
【0003】
ポリエチレン製配管の劣化を防止するために、特許文献1は、床暖房ユニットと床材とが、架橋可能な加水分解性シリル基を分子中に有する重合体をバインダー樹脂の主成分とし、ヒンダードアミン系安定剤と層状珪酸塩とを含有する接着剤を用いて接着されてなる床構成体を開示している。しかしながら、近年、ポリエチレン製配管の更なる耐久性が求められており、該接着剤ではポリエチレン製配管の劣化抑制効果が充分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−3305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、合成樹脂製の暖房配管の劣化抑制効果を有する湿気硬化型接着剤組成物、及び高耐久性の温水床暖房構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)エステル系可塑剤、を含有することを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。Rが結合した炭素が不斉炭素原子となる場合の立体配置は、R,S表示法でのR構造及び/又はS構造を表す。)
【0009】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることが好適である。
【0010】
前記(C)エステル系可塑剤が、アルキルスルホン酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル及び安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、アルキルスルホン酸フェニルエステルであることがより好ましい。
【0011】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、床用接着剤として好適に用いることができ、特に、ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットと床材との接着に用いられることが好適である。
【0012】
本発明の温水床暖房構造体は、ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットと床材とが、本発明の湿気硬化型接着剤組成物を用いて接着されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物によれば、ポリオレフィン製の暖房配管の劣化を抑制することができる。本発明の温水床暖房構造体は、暖房配管の劣化が抑制されており、耐久性に優れた温水床暖房構造体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の温水床暖房構造体の一つの実施の形態を示す断面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0016】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)エステル系可塑剤を必須成分として含有するものである。
【0017】
前記(A)湿気硬化型有機重合体としては、湿気により硬化する公知の有機重合体を使用することができるが、架橋性シリル基含有有機重合体や、湿気硬化型ウレタン系有機重合体が好ましく、架橋性シリル基含有有機重合体がより好ましい。該(A)湿気硬化型有機重合体は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。前記(A)湿気硬化型有機重合体の数平均分子量は1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000が更に好ましい。
【0018】
前記架橋性シリル基含有有機重合体は、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基、すなわち架橋性シリル基を有する有機重合体である。
架橋性シリル基の数は特に限定されないが、分子内に0.1〜5個含まれることが好ましく、0.5〜4個含まれることがより好ましい。また、架橋性シリル基の位置は特に限定されず、有機重合体分子鎖の末端あるいは内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
前記式(2)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。Xは水酸基又は加水分解性基であり、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシル基、アシルオキシル基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシル基及びアミノオキシル基から選択される基が好ましく、アルコキシル基がより好ましく、メトキシル基が最も好ましい。Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。nは1、2又は3である。
【0021】
前記架橋性シリル基含有有機重合体において、架橋性シリル基が複数存在する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、さらに、前記式(2)中のnの数も同じであっても異なっていてもよい。また、含有される架橋性シリル基の異なる有機系重合体を2種類以上用いてもよい。
【0022】
前記架橋性シリル基含有有機重合体における重合単位は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体、ポリイソブチレン系重合体及びこれらの共重合体(例えば、特開2003−238795号公報、特開2000−169544号公報、特開2004−059782号公報、特開2004−51830号公報、特開2003−138151号公報、特開2001−40037号公報及び特開平10−182991号公報等参照。)が好適な例として挙げることができる。これらの重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、本発明において、アクリルとメタクリルを併せて(メタ)アクリルと称する。
【0023】
前記架橋性シリル基含有有機重合体としては、具体的には、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基を有するポリイソブチレン系重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
【0024】
前記架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、アクリル酸エステルを単量体単位として含む重合体又は共重合体、または架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、アクリル酸エステルと他の単量体単位を含む共重合体が好適である。該重合体は、常温において固形であり、ガラス転移点温度が10℃以上のものが好ましい。
該架橋性シリル基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体の製造法は、特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等の各種重合法等の公知の重合法が挙げられるが、制御ラジカル重合法が好ましく、リビングラジカル重合法がより好ましい。
前記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、ポリオキシプロピレンを主鎖とする重合体を例示できる。このような重合体の製造法は、特に限定されないが、例えば、末端に水酸基を有するポリオキシプロピレンの末端水酸基をアリルオキシ基等の不飽和基に変換したのち、メチルジメトキシシラン等のヒドロシランを用いてヒドロシリル化反応によりポリオキシプロピレンに架橋性シリル基を導入して得ることができる。
【0025】
前記湿気硬化型ウレタン系有機重合体としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる公知のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを広く用いることができる。
【0026】
上記ポリオールとしては、活性水素基を2個以上有する活性水素含有化合物であればよく特に限定されるものではないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アミンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール及びアクリルポリオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はアミンポリオールが好ましく用いられ、特にポリエーテルポリオールが好適である。上記ポリオールとしては、分子量が100〜12000、1分子中のOH基が2〜4個のものが好ましく使用できる。これらポリオールは単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0027】
より具体的には、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、アンモニア、エチレンジアミン等のアミン類の1種または2種以上の存在下にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダムまたはブロック共重合体等のポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0028】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の存在下にアジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸等を重縮合させて得られる共重合体等のポリエステルポリオール等があり、その他ビスフェノールA、ヒマシ油のラムエステル等の活性水素基2個以上を有する低分子活性水素化合物が挙げられる。
【0029】
前記アミンポリオールとしては、例えば、アミン化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させて得ることができ、平均的に3官能以上のポリアミンポリオールが好ましい。アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、プロピレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、メチルアミノプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(3−アミノプロピル)エタン、1,4−ジアミノブタン、ラウリルアミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミンおよびメタキシレンジアミン等の芳香族ポリアミンが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
上記ポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類が挙げられるが、これらの中では毒性や価格面等の点からMDIの使用が好ましい。
【0031】
前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。2種以上組み合わせて使用する場合、その組み合わせも特に限定されず、使用したポリオールやポリイソシアネートの異なるプレポリマー同士、例えば、ポリプロピレングリコールを使用したプレポリマーとアミンポリオールを使用したプレポリマー等を併用しても良い。
【0032】
前記(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体は、下記式(1)で示される酸化防止作用のある化合物である。
【0033】
【化3】

【0034】
前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
前記一般式(1)において、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rが結合した炭素が不斉炭素原子となる場合の立体配置は、R,S表示法でのR構造及び/又はS構造を表す。Rが下記式(3)又は下記式(4)であることが好適である。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
前記(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体の配合割合は特に限定されないが、(A)湿気硬化型有機重合体100質量部に対して0.1質量部以上配合することが好ましく、1〜10質量部がより好ましく、3〜8質量部がさらに好ましい。(A)湿気硬化型有機重合体100質量部に対して(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体の配合量を0.1質量部以上とすることにより、ポリエチレン製配管の劣化抑制効果を向上させることができ、充分なポリエチレン製配管の劣化抑制効果を得ることができる。また10質量部を超えて添加しても劣化抑制効果の更なる向上は見られず、且つコストも高くなるため、10質量部以下配合することが好適である。
【0039】
前記(C)エステル系可塑剤としては、例えば、アルキルスルホン酸フェニルエステル等のアルキルスルホン酸エステル;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のアジピン酸エステル;フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ベンジルブチル等のフタル酸エステル;二安息香酸ジエチレングリコール等の安息香酸エステル;コハク酸ジイソデシル等のコハク酸エステル;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル;グリセリンモノオレイン酸エステル等のオレイン酸エステル;トリメリット酸トリノルマルオクチル等の多価塩基酸エステル;リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル;などが挙げられ、アルキルスルホン酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステルが好ましく、アルキルスルホン酸フェニルエステルがより好ましい。
【0040】
前記(C)エステル系可塑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。前記(C)エステル系可塑剤の配合割合は特に限定されないが、(A)湿気硬化型有機重合体100質量部に対して1〜500質量部配合することが好ましい。
【0041】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、前記成分(A)〜(C)に加えて、必要に応じて、硬化触媒、接着付与剤、充填剤、脱水剤、希釈剤、物性調整剤、他の可塑剤、揺変剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、着色剤、蓄熱粒子、香料などの添加剤や溶剤を配合してもよい。
【0042】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、必要に応じて一成分型とすることもできるし、二成分型とすることもできるが、特に一成分型として好適に用いることができる。
【0043】
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、建築物用、自動車用、土木用、電気・電子分野用等の各種用途に用いることができるが、床用接着剤として特に好適に用いられる。本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、ポリオレフィン製の暖房配管の劣化を抑制することができる為、ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットと床材との接着に用いられることが好適である。
【0044】
図1は、本発明の温水床暖房構造体の一つの実施の形態を示す断面概略説明図である。図1において、符号10は本発明の温水床暖房構造体であり、符号2は、本発明の湿気硬化型接着剤組成物を用いて形成される接着剤層である。温水床暖房構造体10は、ポリオレフィン製配管5に温水を通水するタイプの床暖房ユニット3と床仕上げ材である床材1とが、本発明の湿気硬化型接着剤組成物を用いて接着されてなるものである。
【0045】
本発明の温水床暖房構造体10を製造する方法は特に制限はなく、例えば、床暖房ユニット3上に本発明の湿気硬化型接着剤組成物を公知の方法で塗布し、その上に床材1を重ね合わせて接着する方法が挙げられる。
【0046】
図1では、床仕上げ材1と床下地材7との間に床暖房ユニット3が挟持された例を示したが、本発明において床材は床仕上げ材に限定されるものではなく、本発明の温水床暖房構造体としては、例えば、床下地材の下面に床暖房ユニットを積層し、床下地材と床暖房ユニットとを本発明の湿気硬化型接着剤組成物を用いて接着してなる温水床暖房構造体や、床下地材として、暖房用エレメントが針葉樹合板やラワン合板によってパネル化された床暖房ユニットを用い、床仕上げ材と床下地材とを本発明の湿気硬化型接着剤組成物を用いて接着してなる温水床暖房構造体も含まれる。
【0047】
前記床仕上げ材1としては、例えば、合板、MDF等の木質フローリング、タイル、塩化ビニルシート、石材等が用いられる。また、前記床下地材7としては、例えば、合板、木根太、石膏ボード、スレート板、コンクリート等が用いられる。
【0048】
図1では床暖房ユニット3として、発泡ボード等の断熱材6に、暖房配管であるポリオレフィン製配管5が配設させてなり、上部に伝熱層4(図1では伝熱層4としてアルミニウム箔を用いた)を有する発熱パネルを示したが、本発明において床暖房ユニットは、ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットであれば特に限定されず、例えば、断熱材等の間にポリオレフィン製配管を配した構造のユニットであってもよいし、パネル内にポリオレフィン製配管を組み込んだハードパネルや、根太間に配置される温水マット式のものであってもよい。
【0049】
前記ポリオレフィン製配管5としては、例えば、ポリエチレン製配管、ポリプロピレン製配管、及びポリエチレンとポリプロピレンからなる配管等が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0051】
(実施例1〜8)
表1に示す組成にて各配合物質を混合攪拌し、本発明の湿気硬化型接着剤組成物を調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1において、各配合物質の配合量は質量部で示され、各配合物質の詳細は下記の通りである。
*1)湿気硬化型有機重合体:商品名サイリルSAT200((株)カネカ製、メチルジメトキシシリル基を含有するポリオキシプロピレン重合体、数平均分子量9000)
*2)6−ヒドロキシクロマン誘導体:商品名イルガノックス(チバ ホールディング インコーポレーテッドの登録商標)E201、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール[下記式(5)]。
【0054】
【化6】

【0055】
*3)エステル系可塑剤C1:商品名メザモール、ランクセス社製、アルキルスルホン酸フェニルエステル。
*4)エステル系可塑剤C2:フタル酸ジオクチル
*5)エステル系可塑剤C3:アジピン酸ジオクチル
*6)充填剤:商品名ホワイトンSB(白石カルシウム(株)製、炭酸カルシウム)
*7)接着付与剤:商品名KBM−603(信越化学工業(株)製、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
*8)水分吸収剤:商品名エチルシリケート28(コルコート(株)製、テトラエトキシシラン)
*9)錫触媒:商品名ネオスタンU−100(日東化成(株)製、ジブチル錫ジラウレート)
【0056】
前記得られた湿気硬化型接着剤組成物を、ポリエチレン製試験片に付着させ、以下のような耐熱老化性試験を行った。結果を表2に示した。
三菱化学社製架橋ポリエチレン管(内径5mm)を用いて、ダンベル3号形の試験片を準備した。即ち、10cmの長さに切ったポリエチレン管を、軸方向に半裁し、それぞれダンベル3号形(JIS K 6251(2004))に打ち抜いて、ポリエチレン製試験片を準備した。
ポリエチレン製試験片の標線間部(ダンベル3号形の中央部分)の表裏全面に、湿気硬化型接着剤組成物を塗布した。その後、23℃で1日以上養生した後、140℃で空気置換率5回/分に設定した強制通風循環式オーブンに、ポリエチレン製試験片を1200時間放置した。
【0057】
試験片をオーブンから取り出し、室温中に放置して23℃まで冷却させた後、引張速度50mm/分の条件で、破断伸びの測定を行った。なお、以上の試験は、同一の湿気硬化型接着剤組成物を塗布したものについて2点行いその平均値を当該湿気硬化型接着剤組成物を塗布した場合の破断伸びとした。
リファレンス(湿気硬化型接着剤組成物を塗布せず、加熱暴露しなかったポリエチレン製試験片)の破断伸び(L0)に対して、湿気硬化型接着剤組成物を塗布し加熱暴露した試験片の破断伸びを(L1)としたとき、(L1/L0)×100なる式で保持率(%)を測定した。保持率の値が大きいほど、ポリエチレン製試験片の劣化が少ないということであり、耐熱老化性に優れているということである。保持率60%以上を◎、保持率50%以上60%未満を○、保持率50%未満を×として評価した。
【0058】
【表2】

【0059】
(比較例1〜4)
表3に示した如く組成を変更した以外は、実施例1と同様の方法で湿気硬化型接着剤組成物を調製し、耐熱老化性試験を行った。結果を表4に示した。
【0060】
【表3】

【0061】
表3において、各配合物質の配合量は質量部で示され、各配合物質の詳細は、*1〜3、6〜9は表1と同様であり、*10〜12は下記の通りである。
*10)ヒンダートアミン系光安定剤:商品名アデカスタブLA-62((株)アデカ製、HALS)
*11)ヒンダートフェノール系酸化防止剤:商品名IRGANOX 1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
*12)高分子可塑剤:アクトコールD-3000(三井化学(株)製、ポリオキシプロピレン重合体、数平均分子量3000)
【0062】
【表4】

【0063】
表2及び4に示した如く、本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、ポリオレフィン製試験片の耐熱老化性試験において、ポリオレフィン製試験片の劣化を著しく抑制することができた。
【符号の説明】
【0064】
1:床材、2:接着剤層、3:床暖房ユニット、4:伝熱層、5:ポリオレフィン製配管、6:断熱材、7:床下地材、10:本発明の温水床暖房構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)湿気硬化型有機重合体、
(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び
(C)エステル系可塑剤、
を含有することを特徴とする湿気硬化型接着剤組成物。
【化1】

(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることを特徴とする請求項1記載の湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)エステル系可塑剤が、アルキルスルホン酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル及び安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記(C)エステル系可塑剤が、アルキルスルホン酸フェニルエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
床用接着剤として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットと床材との接着に用いられることを特徴とする請求項5記載の湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
ポリオレフィン製配管に温水を通水するタイプの床暖房ユニットと床材とが、請求項1〜6のいずれか1項記載の湿気硬化型接着剤組成物を用いて接着されてなることを特徴とする温水床暖房構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−38033(P2011−38033A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188592(P2009−188592)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】