説明

湿紙搬送用ベルト

【課題】湿紙を湿紙搬送用ベルトに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で湿紙を受渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能とを向上させることができ、且つ、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部等の反りを抑制できる湿紙搬送用ベルトを提供する。
【解決手段】湿紙搬送用ベルト1は、樹脂と親水性繊維体30とを含む湿紙側層31と、機械側層32とを有している。ベルト内部に設けられた基布33は、湿紙W側に配置される第1の製織布34と、プレスロール10側に配置される第2の製織布35とを積層して構成されている。親水性繊維体の少なくとも一部が湿紙側層の表面37に露出している。第1の製織布の坪量が第2の製織布の坪量より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズドドロー抄紙機に使用されて湿紙を高速で搬送するための湿紙搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、ワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートとを備えている。これらワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。
抄紙機には、オープンドローにて湿紙の受渡しを行うタイプのものがある。このオープンドロー抄紙機はベルトで湿紙を支持していない。その結果、湿紙の受渡し部分で紙切れなどが発生しやすいので、抄紙機の高速化が困難であった。
このため、近年は、クローズドドローにて湿紙の受渡しを行うタイプが主流になっている。このクローズドドロー抄紙機では、湿紙搬送用ベルトに湿紙を載置した状態で搬送して湿紙の受渡しを行う。その結果、抄紙機の高速化や作業の安定化が可能になる。
このようなクローズドドロー抄紙機において、湿紙は、ワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートの順に次々と受け渡されながら搬送される。プレスパートでは、湿紙は、湿紙搬送用ベルトで搬送されるとともにプレス装置で水分を搾り出され(搾水され)、その後、ドライヤーパートで乾燥される。
【0003】
本出願人は、特許文献1(特開2004−277971号公報)で、湿紙を貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程に湿紙を渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能とを兼ね備えた湿紙搬送用ベルトを提案している。この湿紙搬送用ベルトにおいて、湿紙側層は高分子弾性部と繊維体とからなり、この繊維体は、親水性で一部が表面に露出している。
湿紙側層の表面から露出した親水性の繊維体が、湿紙からの水を保持するので、湿紙搬送用ベルトに湿紙を貼り付けて搬送する第1の機能が発揮される。また、繊維体の一部が湿紙側層の表面から露出しているので、次工程に湿紙を渡す際にこの湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能が発揮される。
【0004】
通常、湿紙搬送用ベルトの幅寸法は、プレス部やガイドローラなどの幅寸法とほぼ同一になるように構成されている。しかし、このベルトが、抄紙機を走行してプレス部やガイドローラなどを周回するときに、プレス部とガイドローラとの間やガイドローラとガイドローラとの間で、このベルトの両端部(ベルトの走行方向に対する、ベルトの左右両端部)およびその近傍にいわゆる「反り」が発生することがある。
このベルトの反りは「バイメタル現象」とも言われており、ベルトの両端部およびその近傍が下方に曲がったり上方に曲がったりする。湿紙搬送用ベルトにこの反りが起きると、抄紙機における湿紙搬送用ベルトの高速走行が困難になってしまう。
そこで、本出願人は、特許文献2(特開2000−110090号公報)で、抄紙用ベルトにおいて、このベルト端縁部のカール(反り)を減少させる提案を行なっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−277971号公報
【特許文献2】特開2000−110090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の湿紙搬送用ベルトは、前記二つの機能を両立させているが、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍の反りを抑制するための対策は採られていなかった。
また、湿紙に含まれている水分の一部が、湿紙側層の親水性の繊維体(たとえば、レーヨン繊維)に吸収されると、この繊維体が膨張するので、湿紙搬送用ベルトの寸法が不安定になる。特に、近年は、湿紙搬送用ベルトの走行速度が高速化しているので、親水性繊維体が吸水することによるベルト幅寸法の伸張を抑制する必要があった。
【0007】
他方、特許文献2に記載の抄紙用ベルトでは、この抄紙用ベルトは樹脂層の方向にカールする傾向があるから、抄紙用ベルトを構成する樹脂層の幅方向両端部を中央部よりも薄く形成することにより、抄紙用ベルト端部の反りが起こり難くなるように構成している。
しかしながら、特許文献2には、抄紙用ベルトにおいて前記二つの機能を両立させるための構成、およびベルト基布の重心位置を湿紙側に近付けるという技術的思想については、いずれも開示されていなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、湿紙を湿紙搬送用ベルトに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で湿紙を受渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能とを向上させることができ、且つ、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍の反りを抑制することができる湿紙搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
湿紙搬送用ベルトの湿紙側層は、高分子弾性体など樹脂を含む樹脂層になっている。そのため、特許文献2にも記載されているように、本来、湿紙搬送用ベルトが走行しているか否かにかかわらず、ベルト両端部は湿紙側(シュー側)から離れる方向に反る性質(傾向)がある。
ところで、走行中の湿紙搬送用ベルトには、このベルトを走行方向に引っ張るための張力がかかっている。この張力の大部分は、ベルトの強度を確保するための基布にかかっている。基布にかかる張力の中心は、基布の重心位置に概略一致することになる。
そこで、本発明者は、走行中の湿紙搬送用ベルトの基布にかかる張力と、この張力が作用する基布の重心位置との関係により、湿紙搬送用ベルトの走行中に、ベルト両端部およびその近傍に反りが発生する場合がある点に着目した。
すなわち、本発明者の実験では、ベルトの基布自体の重心の上下方向に関する位置を湿紙側に近付けた(すなわち、プレスロール側から離した)構成の湿紙搬送用ベルトを使用した。すると、走行中の湿紙搬送用ベルトの基布にかかる張力の中心は湿紙側に偏るので、湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍が湿紙側に反ることが分かった。
したがって、湿紙搬送用ベルトが走行すると、その両端部が湿紙から離れる方向に反る本来の性質と、湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍が湿紙側に反る作用とが打ち消し合う(すなわち、相殺される)ことになる。その結果、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍の反りが抑制される。
特に、複数枚の製織布を重ね合わせて構成されるラミネート構造の基布において、湿紙側に配置される上布には坪量の大きい製織布を用い、プレスロール側に配置される下布には坪量の小さい製織布を用いる。
そして、これら上布と下布を積層して基布を形成すると、基布自体の重心は上布内に位置する(すなわち、湿紙側に近付く)ことになる。したがって、この基布を有する湿紙搬送用ベルトは、走行する際にベルト両端部およびその近傍の反りがなくなる。
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる湿紙搬送用ベルトは、樹脂と親水性の繊維体とを含んで湿紙側に配置される湿紙側層と、プレスロール側に配置される機械側層とを有するとともに内部に基布が設けられ、グローズドドロー抄紙機に使用されて前記湿紙を搬送するためのベルトである。
前記基布は、前記湿紙側に配置される第1の製織布と、前記プレスロール側に配置される第2の製織布とを積層して構成されている。前記親水性繊維体の少なくとも一部は、前記湿紙側層の表面に露出している。そして、前記第1の製織布の坪量を前記第2の製織布の坪量より大きくしている。
好ましくは、前記第1の製織布および前記第2の製織布のいずれか一方または両方の製織布の緯糸は、吸水率の小さい材質の糸である。本発明で使用する製織布の緯糸は、ポリエステル,芳香族ポリアミド,芳香族ポリエステルおよびポリエーテルケトンからなる群から選択された材質の糸であるのが好ましい。
好ましい一例として、前記第1の製織布は二重織りで、前記第2の製織布は平織りである。他の例として、前記第1の製織布は三重織りで、前記第2の製織布は二重織りであってもよい。さらに他の例として、前記第1の製織布は三重織りで、前記第2の製織布は平織りであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を有する本発明にかかる湿紙搬送用ベルトは、湿紙を湿紙搬送用ベルトに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で湿紙を受渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能とを向上させることができ、且つ、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍の反りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる湿紙搬送用ベルトについて説明する。
図1ないし図8は本発明を説明するための図である。図1は、本発明の湿紙搬送用ベルトを使用したクローズドドロー抄紙機の概略構成図、図2は、このクローズドドロー抄紙機の一部を示す概略斜視図、図3は、このクローズドドロー抄紙機のシュープレス機構の概略断面図である。
図1ないし図3に示すように、紙の原料から水分を除去するクローズドドロー抄紙機(以下、抄紙機と記載)2は、ワイヤーパート(図示せず)と、プレスパート3と、ドライヤーパート4とを備えている。これらワイヤーパート,プレスパート3およびドライヤーパート4は、この工程順で湿紙Wの搬送方向(矢印B方向)に沿って配置されている。
湿紙Wは、ワイヤーパート,プレスパート3およびドライヤーパート4に次々と渡されながら搬送される。湿紙Wは、プレスパート3で搾水された後、最終的にはドライヤーパート4で乾燥される。湿紙搬送用ベルト1(以下、ベルト1と記載)は、抄紙機2のプレスパート3に設けられて、湿紙Wを矢印B方向に搬送するのに使用される。
湿紙Wは、プレスフェルト5,6,ベルト1,ドライヤーファブリック7にそれぞれ支持されて、矢印B方向に搬送される。これらプレスフェルト5,6,ベルト1,ドライヤーファブリック7は、それぞれ無端状に構成された帯状体であり、ガイドローラ8で支持されている。
【0013】
シュー9は、プレスロール10に対応した凹状になっている。シュー9は、シュープレス用ベルト11を介してプレスロール10とともに、プレス部12を構成している。
シュープレス機構13は、プレスロール10と、プレスロール10の上方(または、下方)に設けられたシュー9とを有している。シュープレス用ベルト11が、プレスロール10とシュー9との間に配置されて回転走行する。複数のシュープレス機構13を、湿紙Wの搬送方向(矢印B方向)に沿って直列に並べて配置することにより、抄紙機2のプレスパート3が構成される。
湿紙Wは、ワイヤーパート(図示せず)からプレスパート3に渡された後、プレスフェルト5からプレスフェルト6に渡される。そして、湿紙Wは、プレスフェルト6によりシュープレス機構13のプレス部12に搬送される。
プレス部12において、湿紙Wは、プレスフェルト6とベルト1とで挟持された状態で、シュープレス用ベルト11を介したシュー9と、プレスロール10とにより加圧される。その結果、湿紙W中の水分が搾水される。
プレスフェルト6は透水性が高く、ベルト1は透水性が低く構成されている。したがって、プレス部12において、湿紙W中の水分はプレスフェルト6に移行する。湿紙Wは、こうしてプレスパート3で搾水されるとともに表面が平滑化される。
【0014】
プレス部12を脱出した直後においては、急激に圧力から開放されるので、湿紙W,プレスフェルト6およびベルト1の各体積が膨張する。この膨張と、湿紙Wを構成するパルプ繊維の毛細管現象とにより、プレスフェルト6内の一部の水分が湿紙Wに移行するいわゆる「再湿現象」が生じる。
しかし、ベルト1は透水性が低いので、その内部に水分を保持することは少ない。したがって、ベルト1から湿紙Wに水分が移行する再湿現象はほとんど発生せず、ベルト1は湿紙Wの平滑性の向上に寄与している。
プレス部12を通過した湿紙Wは、ベルト1により矢印Bに示す方向に搬送される。そして、湿紙Wは、サクションロール14に吸引され、ドライヤーファブリック7によりドライヤーパート4に搬送されて乾燥される。
ベルト1には、プレス部12を脱出した直後の湿紙Wを、積極的にベルト表面に貼り付ける第1の機能が要求される。また、ベルト1には、次工程(ここでは、ドライヤーパート4)との間で湿紙Wを受け渡す際に、湿紙Wをベルト1からスムーズに離脱(紙離れ)させる第2の機能も要求される。
【0015】
次に、ベルト1について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態にかかるベルト1の断面図である。図5は、本発明の第2の実施形態にかかる湿紙搬送用ベルト1a(以下、ベルト1aと記載)の断面図で、図4相当図である。図6は、本発明の第3の実施形態にかかる湿紙搬送用ベルト1b(以下、ベルト1bと記載)の断面図で、図4相当図である。図7は、ベルト1,1a,1bの平面図である。
図1ないし図7において、ベルト1,1a,1bは、所定のベルト幅方向(CMD方向)の寸法Dを有し、上面に湿紙Wが載置された状態で経方向(MD方向)に走行するようになっている。そのために、ベルト1,1a,1bには、このベルトを走行方向(MD方向)に引っ張るための張力が常にかかっている。
ベルト1,1a,1bは、樹脂と親水性の繊維体30とを含んで湿紙W側に配置される湿紙側層31と、プレスロール10側に配置される機械側層32とを有している。ベルト1,1a,1bの内部には、基布33,33a,33bが設けられている。基布33,33a.33bの両側に、湿紙側層31と機械側層32がそれぞれ配置されて、ベルト1,1a,1bは、全体として層状をなしている。
なお、親水性繊維体30における「親水性」とは、水分を引き寄せる性質および/または水分を保持する性質を指している。本発明では、「親水性」の特性を、JIS L0105(繊維製品の物理試験法通則)に記載された「公定水分率」で表す。
【0016】
湿紙W側に配置される上布である第1の製織布34と、プレスロール10側に配置される下布である第2の製織布35とを積層することにより、ラミネート構造の基布33,33a,33bが構成されている。また、親水性繊維体30の少なくとも一部が、湿紙側層31の表面37に露出している。
ここで、「露出」とは、親水性繊維体30が湿紙側層31の表面37に表れている状態をさすものであり、親水性繊維体30が湿紙側層31の表面37から外方に突出しているか否かを問わない。図7は、湿紙側層31の表面37に、親水性繊維体30が露出した状態の一例を示したものであるが、この状態に限定されない。
ベルト1,1a,1bは、湿紙Wをベルト1,1a,1bに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で湿紙Wを受渡す際に湿紙Wをスムーズに離脱させる第2の機能とを向上させるために、ベルト1,1a,1bの湿紙側層31に親水性繊維体30をニードルパンチで形成している。
【0017】
ラミネート構造の基布33,33a,33bでは、湿紙W側に配置される第1の製織布34の坪量を、プレスロール10側に配置される第2の製織布35の坪量より大きくしている。
第1の製織布34と第2の製織布35を積層して、基布33,33a,33bが形成される。すると、ベルト1,1a,1bにおける基布33,33a,33b自体の重心Gの上下方向に関する位置が、第1の製織布34側に移動して湿紙W側に近付くことになる。
たとえば、ベルト1,1a,1bにおけるそれぞれの基布33,33a,33bの重心Gの位置から第1の製織布34の上面までの寸法L1が、重心Gの位置から第2の製織布35の下面までの寸法L2より小さくなっている。
【0018】
ベルト1,1a,1bの走行中には、このベルト1,1a,1bを走行方向(MD方向)に引っ張るための張力がかかっている。この張力の大部分は、ベルト1,1a,1bの強度を確保するための基布33,33a,33bにかかることになる。
ところが、基布33,33a,33bにかかる張力は、基布の中心位置より湿紙W側に偏っている。そのため、ベルト1,1a,1bには、その両端部(ベルトの走行方向(MD方向)に対する、ベルトの左右両端部)Eおよびその近傍を湿紙Wに近づけようとする力が加わる。
他方、ベルト1,1a,1bの湿紙側層31は、高分子弾性体39など樹脂を含む樹脂層になっている。そのため、ベルト1,1a,1bには、このベルトが走行しているか否かにかかわらず、ベルト両端部Eが湿紙Wから離れる方向に反る本来の性質がある。
したがって、ベルト1,1a,1bが走行すると、ベルト1,1a,1bの両端部Eが湿紙Wから離れる方向に反る本来の性質と、張力によりベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍が湿紙W側に近づく方向に反る作用とが、互いに打ち消し合う(すなわち、相殺される)ことになる。その結果、走行中のベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍の反りが抑制される。
なお、図2のハッチ部は、従来の湿紙搬送用ベルトでは走行中にベルト両端部およびその近傍に反りが発生していた範囲を示している。本発明の走行中のベルト1,1a,1bでは、図示するハッチ部(ベルト両端部およびその近傍)に反りは発生していない。
【0019】
ところで、ベルト1,1a,1bは、親水性繊維体30の吸水作用によりベルト幅寸法Dが伸張する傾向がある。そこで、第1の製織布34および第2の製織布35のいずれか一方または両方の製織布の緯糸36を、吸収率の小さい材質の糸にしている。その結果、ベルト1,1a,1bにおけるベルト幅寸法Dの伸張を抑制することができる。
【0020】
湿紙側層31の湿紙側バット層38は、親水性繊維体30により構成されているので、湿紙側バット層38は吸水性が高くなっている。そして、湿紙側バット層38には高分子弾性体39が含浸されており、親水性繊維体30の一部が、湿紙側層31の表面37に露出している。
高分子弾性体39としては、ウレタン,エポキシ,アクリルなどの熱硬化性樹脂、または、ポリアミド,ポリアリレート,ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。このように、湿紙側層31は、高分子弾性体39を含む樹脂層になっている。
ベルト1,1a,1bは、その通気性がゼロであるのが好ましいが、抄紙機2によっては、ベルト1,1a,1bに多少の通気性がある方がよい場合もある。この場合には、高分子弾性体39の含浸量を少なくしたり、湿紙側層31の表面37を研磨したり、連続気泡入りの高分子弾性体を使用すれば、所望の通気性が発揮される。
【0021】
湿紙側層31を構成する湿紙側バット層38と、機械側層32を構成する機械側バット層40は、ステープルファイバーにより構成されている。湿紙側バット層38には、そのステープルファイバーとして親水性繊維体30が使用されている。機械側バット層40のステープルファイバーとして、親水性繊維体30よりも公定水分率の低い繊維が使用されている。
湿紙側バット層38は、ニードルパンチングにより基布33,33a,33bの湿紙側に絡合一体化されている。機械側バット層40は、基布33,33a,33bの機械側(プレスロール10側)に絡合一体化されている。なお、湿紙側バット層38を一体化させる手段と、機械側バット層40を一体化させる手段としては、ニードルパンチングの他に、接着剤や静電気植毛などを用いて行うこともできる。
【0022】
親水性繊維体30は、公定水分率が4%以上のものが好ましく用いられる。具体的には、親水性繊維体30は、ナイロン(公定水分率4.5%),ビニロン(同5.0%),アセテート(同6.5%),レーヨン(同11.0%),ポリノジック(同11.0%),キュプラ(同11.0%),綿(同8.5%),麻(同12.0%),絹(同12.0%),羊毛(同15.0%)などからなる親水性繊維の群から選択される。ここで、かっこ内の数値は公定水分率である。
公定水分率が4.0%未満の繊維を用いた場合には、湿紙Wからの水分が十分に保持されなくなるので、ベルト1,1a,1bに湿紙Wを貼り付けて搬送する第1の機能を十分に発揮することができない。
【0023】
後述する実施例,比較例では、湿紙側バット層38と機械側バット層40に、レーヨン繊維またはナイロン繊維を使用した場合を示している。
親水性繊維体30として、繊維の表面に化学的な親水処理を施したものを使用することもできる。具体的には、マーセライズ加工,樹脂加工,電離放射線照射によるスパッタリング,グロー放電加工などを行なったものがある。
なお、親水処理を行う場合に、この親水処理を施されたモノフィラメントまたは紡績糸の水分が30〜50%になるように調湿した条件下で、水との接触角が30度以下であると、良好な結果を得ることができる。また、前記モノフィラメントまたは紡績糸の水分のパーセンテージは、(水/全体重量)×100の式で算出される。
【0024】
湿紙側バット層38に高分子弾性体39を含浸して硬化させた後、湿紙側バット層38の表面をサンドペーパーや砥石などで研磨する。この研磨の際に、親水性繊維体30の繊維がフィブリル化(細片化)されるのを防止するためには、親水性繊維体30は、0.8g/dtex以上の強度があるのが望ましい。
その結果、湿紙側層31の表面37に、親水性繊維体30の少なくとも一部が露出することになる。したがって、ベルト1,1a,1bは、次工程に湿紙Wを渡す際に、湿紙Wをスムーズに離脱させる第2の機能を発揮する。
【0025】
機械側バット層40に使用される繊維体41は、湿紙側バット層38の親水性繊維体30より親水性の低いもの、すなわち公定水分率の低い繊維で構成されている。具体的には、親水性繊維体30に対する公定水分率の差が4%以上になる繊維を選択するとよい。
これとは別に、繊維体41としては、公定水分率の低いビニリデン(公定水分率0%),ポリ塩化ビニル(同0%),ポリエチレン(同0%),ポリプロピレン(同0%),ポリエステル(同0.4%),芳香族ポリアミド(同0.4%),ポリウレタン(同0.4%),ポリウレタン(同1.0%),アクリル(同2.0%)などからなる繊維群の中から選択してもよい。
機械側バット層40はプレスロール10に接触するので、耐摩耗性に優れているナイロン繊維を主成分とし、他の繊維と混合したものを、機械側バット層40に使用することができる。
【0026】
湿紙側層31を構成する湿紙側バット層38の坪量は、50〜600g/m2の範囲で、機械側層32を構成する機械側バット層40の坪量は、0〜600g/m2の範囲で、それぞれ適宜設定するのが好ましい。
基布33,33a,33bは、第1の製織布34と第2の製織布35とを積層して構成されている。第1の製織布34と第2の製織布35は、MD方向の経糸42と、CMD方向の緯糸36とを織成することにより得られた製織布である。
【0027】
第1製織布34と第2の製織布35のいずれか一方または両方の製織布の緯糸36は、吸水率の小さいポリエステル,芳香族ポリアミド,芳香族ポリエステルおよびポリエーテルケトンからなる群から選択された材質の糸である。
このようにすれば、湿紙側バット層38を構成する親水性繊維体30の吸水作用によるベルト幅寸法Dの伸張を、抑制することができる。
【0028】
第1の製織34と第2の製織布35は、それぞれ以下に示すような平織り,二重織りおよび三重織りのうちいずれかの組織を有している。また、第1の製織布34の坪量を、第2の製織布35の坪量より大きくしている。
ベルト1,1a,1bを製造する際には、ニードル機械が使用される。この場合、第1の製織布34と第2の製織布35とを積層して、基布33,33a,33bを構成する。次いで、湿紙側バット層38をニードルパンチする際には、積層構造の基布33,33a,33bをニードル機械のガイドロールに沿って走行させながらニードルパンチする。このとき、基布の下布(第2の製織布35)がガイドロールに接するので、下布の寸法の伸びに合わせて、基布の上布(第1の製織布34)が伸張する必要がある。
【0029】
しかも、上布(第1の製織布34)の坪量が、下布(第2の製織布35)の坪量より大きいので、坪量の小さい下布が上布より伸張しやすくなる。その結果、湿紙側バット層38をニードルパンチする際に下布に弛みが生じてしまい、この弛みがニードル機械のガイドロールと接触すると、このガイドロールの押圧力で下布に皴が生じる恐れがある。
そこで、本発明では、まず、ニードル機械に上布(第1の製織布34)を掛け入れた後、この上布の上に下布(第2の製織布35)を積層して基布33,33a,33bを形成し、下布(第2の製織布35)の上に機械側バット層40をニードルパンチする。
次いで、この積層基布33,33a,33bの表裏を反転してから、上布(第1の製織布34)の上部に湿紙側バット層38をニードルパンチする。
このようにすれば、坪量の小さい下布の皴の発生を抑制することができる。また、上布と下布(第1の製織布34と第2の製織布35)の各経方向の寸法を互いに一致させることができる。
本発明では、このようないわゆる「たけあわせ」ができるので、第1の製織布34と第2の製織布35の経方向の位置ずれのない良好な構成の基布33,33a,33bを得ることができる。
【0030】
基布において、第1の製織布34の坪量を、第2の製織布35の坪量より大きく構成するための一つのケース(基布33の場合)としては、上布(第1の製織布34)は二重織りで、下布(第2の製織布35)は平織りの場合がある(図4)。
別のケース(基布33aの場合)として、上布(第1の製織布34)は三重織りで、下布(第2の製織布35)は二重織りの場合がある(図5)。
さらに別のケース(基布33bの場合)として、上布(第1の製織布34)は三重織りで、下布(第2の製織布35)は平織りの場合がある(図6)。
【実施例】
【0031】
下記に示す具体的な実施例1〜3および比較例1〜6について、実験装置20で実験した。図8は、湿紙搬送用ベルトの性能を評価するための実験装置20の概略構成図である。
実験装置20は、プレス部PPを形成する一対のプレスロールPR,PRと、プレスロールPR,PRに挟持されるプレスフェルトPFと、ベルト1,1a,1bとにより構成されている。
プレスフェルトPFとベルト1,1a,1bは、複数のガイドローラGRにより、一定の張力を保ちつつ支持されている。プレスフェルトPFとベルト1,1a,1bは、プレスロールPRの回転動作に従って連れ回りする。ドライヤーファブリックDFは、プレスフェルトPF,ベルト1,1a,1bと同様に、無端状に構成され、ガイドローラに支持されながら走行する。
【0032】
実験装置20において、湿紙Wは、プレス部PPよりも上流側に位置するベルト1,1a,1b上に載置される。湿紙Wは、ベルト1,1a,1bにより搬送されて、プレス部PPを通過した後、サクションロールSRまで到達する。すると、湿紙Wは、サクションロールSRの吸引によりドライヤーファブリックDFに渡される。
なお、実験装置20における、ベルト1,1a,1bのMD方向の走行速度としては、クローズドドロー抄紙機の高速化に合わせて、2,000m/minで走行するように調整してある。
また、実験装置20において、ベルト1,1a,1bのCMD方向の幅寸法Dは、プレス部PPおよびガイドローラGRの幅寸法よりも長くなるように構成されている。実験装置20のプレス部PPの上流側から、ベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍の反りの有無や状態を観察することができる。
【0033】
基布33,33a,33bの内容:
(A)組織と坪量
1.平織り・・・坪量 100〜400(g/m2
2.二重織り・・坪量 400〜700(g/m2
3.三重織り・・坪量 500〜900(g/m2
(B)糸材(経糸42と緯糸36)
1.モノフィラメントやマルチフィラメント
2.モノフィラメントの撚糸
3.マルチフィラメントの撚糸
4.モノフィラメントとマルチフィラメントを一緒に撚った混撚糸
(C)糸(経糸42と緯糸36)の材質
1.ナイロン
2.ポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタラート(PET))
3.芳香族ポリアミド
4.芳香族ポリエステル
5.ポリエーテルケトン
(D)基布の積層構成(上布/下布)
1.二重織り/平織り・・・(図4参照)
2.三重織り/二重織り・・(図5参照)
3.三重織り/平織り・・・(図6参照)
・これら基布は、上布の方が下布より坪量が大きくなっている。
【0034】
(実施例1)
1.基布33:
・上布(第1の製織布34)は、経二重織り組織(経糸42はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸36はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪量400g/m2
・下布(第2の製織布35)は、1/1平織り組織(経糸42はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸36はPETの単糸)で坪量200g/m2
2.バット層:
湿紙側バット層38には、親水性繊維体30であるレーヨン繊維をニードルパンチで坪量600/m2で形成した。機械側バット層40には、ナイロン繊維をニードルパンチで坪量250/m2で形成した。
3.高分子弾性体39の含浸:
上述のようにして形成したニードルパンチ後のフェルトの湿紙側バット層に、ウレタン樹脂を含浸量500g/m2で含浸した。
4.実験装置20による実験:
・実験開始直後の湿紙搬送用ベルトの寸法(走行方向および幅方向)を100とし、実験100時間後のベルト寸法を計測して、ベルト寸法の変化を評価した。
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(1.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0035】
(実施例2)
1.基布33a:
・上布(第1の製織布34)は、経三重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m2
・下布(第2の製織布35)は、経二重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量400g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体39の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(0.6%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0036】
(実施例3)
1.基布33b:
・上布(第1の製織布34)は、経三重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m2
・下布(第2の製織布35)は、1/1平織り組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量200g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体39の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(0.4%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0037】
(比較例1)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪量400g/m2
・下布(プレスロール側の製織布)は、1/1平織り組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量200g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(2.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0038】
(比較例2)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経三重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪量600g/m2
・下布は使用しない。
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(2.5%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0039】
(比較例3)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪量400g/m2
・下布(プレスロール側の製織布)は、1/1平織り組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量200g/m2
2.バット層:
湿紙側バット層には、ナイロン繊維をニードルパンチで坪量600/m2で形成した。ロール側バット層には、ナイロン繊維をニードルパンチで坪量250/m2で形成した。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.0%伸張)、幅方向(0.5%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りはなかった。
【0040】
(比較例4)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、1/1平織り組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量200g/m2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経二重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪量400g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(1.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りの発生を確認した。
【0041】
(比較例5)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量400g/m2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経三重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(0.6%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りの発生を確認した。
【0042】
(比較例6)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、1/1平織り組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量200g/m2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経三重織り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅方向(0.4%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有無:反りが顕著で、ベルトを走行速度2,000m/minで走行するように調整することができなかった。
【0043】
実験装置20を使用した実験によれば、比較例1〜3にかかる湿紙搬送用ベルトと比べて、実施例1〜3にかかる基布33,33a,33bを使用したベルト1,1a,1bは、湿紙側バット層に親水性繊維体であるレーヨン繊維を設けても、この親水性繊維体の吸水作用によるベルト幅寸法Dの伸張を抑制することができる。
【0044】
すなわち、比較例1〜3にかかる湿紙搬送用ベルトにおけるベルト幅寸法Dの伸張が0.5〜2.5%であるのに対して、実施例1〜3にかかるベルト1,1a,1bのベルト幅寸法Dの伸張は、0.4〜1.0%であり抑制されていることが分かる。
なお、比較例3にかかる湿紙搬送用ベルトは、幅方向の寸法安定性は良いが、湿紙搬送用ベルトとしての機能が不十分であることが本実験から判明した。すなわち、湿紙Wを湿紙搬送用ベルトに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で湿紙を受け渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる第2の機能とが不十分であった。
これに対して、実施例1〜3にかかるベルト1,1a,1bは、上述の第1の機能と第2の機能を良好に発揮することが本実験から判明した。
【0045】
比較例4〜6にかかる湿紙搬送用ベルトは、上布(湿紙側の製織布)より下布(プレスロール側の製織布)の方が坪量が大きいので、ベルト両端部Eおよびその近傍に反りが発生している。
これに対して、実施例1〜3にかかるベルト1,1a,1bは、上布(第1の製織布34)の方が下布(第2の製織布35)より坪量が大きいので、走行中のベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍の反りを抑制できることが、本実験から判明した。
すなわち、実施例1〜3にかかる基布33,33a,33bを使用したベルト1,1a,1bは、比較例4〜6にかかる湿紙搬送用ベルトと比べて、走行中にベルト両端部Eおよびその近傍の反りを顕著に改善できることが判明した。その結果、ベルト1,1a,1bは、高速走行が可能で且つ走行安定性がよくなる。
【0046】
以上、本発明の実施形態(実施例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の湿紙搬送用ベルトは、クローズドドロー抄紙機を構成するプレスパートで湿紙を搬送するベルトに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1ないし図8は本発明を説明するための図である。図1は、本発明の湿紙搬送用ベルトを使用したクローズドドロー抄紙機の概略構成図である。
【図2】クローズドドロー抄紙機の一部を示す概略斜視図である。
【図3】クローズドドロー抄紙機のシュープレス機構の概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる湿紙搬送用ベルトの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる湿紙搬送用ベルトの断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態にかかる湿紙搬送用ベルトの断面図である。
【図7】湿紙搬送用ベルトの平面図である。
【図8】湿紙搬送用ベルトの性能を評価するための実験装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1b 湿紙搬送用ベルト
2 クローズドドロー抄紙機
10 プレスロール
30 親水性の繊維体
31 湿紙側層
32 機械側層
33,33a,33b 基布
34 第1の製織布
35 第2の製織布
36 緯糸
37 表面
39 高分子弾性体(樹脂)
W 湿紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と親水性の繊維体とを含んで湿紙側に配置される湿紙側層と、プレスロール側に配置される機械側層とを有するとともに内部に基布が設けられ、グローズドドロー抄紙機に使用されて前記湿紙を搬送するための湿紙搬送用ベルトであって、
前記基布は、前記湿紙側に配置される第1の製織布と、前記プレスロール側に配置される第2の製織布とを積層して構成され、
前記親水性繊維体の少なくとも一部が前記湿紙側層の表面に露出しており、前記第1の製織布の坪量を前記第2の製織布の坪量より大きくしたことを特徴とする湿紙搬送用ベルト。
【請求項2】
前記第1の製織布および前記第2の製織布のいずれか一方または両方の製織布の緯糸は、吸水率の小さい材質の糸であることを特徴とする請求項1に記載の湿紙搬送用ベルト。
【請求項3】
前記製織布の前記緯糸は、ポリエステル,芳香族ポリアミド,芳香族ポリエステルおよびポリエーテルケトンからなる群から選択された材質の糸であることを特徴とする請求項2に記載の湿紙搬送用ベルト。
【請求項4】
前記第1の製織布は二重織りで、前記第2の製織布は平織りであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト。
【請求項5】
前記第1の製織布は三重織りで、前記第2の製織布は二重織りであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト。
【請求項6】
前記第1の製織布は三重織りで、前記第2の製織布は平織りであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−223170(P2008−223170A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63218(P2007−63218)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】