説明

溝ブロックへのグレーチングの取付け構造

【課題】車両走行によるハネ上げ防止や盗難防止を実現し、グレーチングの取外し作業を円滑にする溝ブロックへのグレーチングの取付け構造を提供する。
【解決手段】両側部70が天板部71と繋がり、上面に開口72を設けた溝ブロックへのグレーチングの取付け構造であって、両端板域に設けた取付口16に、取付板15が端板11と隙間17を設けてグレーチング本体に固着され、取付板15にボルト軸18bが立設する金属製グレーチング1と、通孔20を設けて取付板15に載る平板部2aの一端縁から垂直部分25を延設し、更に平板部2aから離れるように張出部分26を延設する掛止金具2と、ボルト軸18bに螺合する雌ねじ部82を形成し、外面に突起80bを設けた異形ナット8と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上面開口のある可変側溝等の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
側溝本体には、例えば、図1に示すような両側部70が天板部71と繋がり且つ上面略中央にグレーチングが載置する開口72を設けた溝ブロックが存在する。該溝ブロックは下方開口の可変側溝や自由勾配側溝とも呼ばれ、上面両端部に天板部71を設けて上面中央開口72にグレーチングが被着される側溝本体である。また、側面視略U字形,側面視ロ字形の側溝本体において、両側部が天板部と繋がり且つ該天板部の上面略中央にグレーチングが載置する開口を設けた溝ブロックも存在する(特開2001−40753号公報,特開2006−322242号)。
こうした溝ブロックは、その開口にグレーチングが被着されると、グレーチングが単に溝ブロック上に載置されているにすぎないので、車両走行時のグレーチングの跳ね上がりが問題になる。そして、その問題を解決する発明がこれまでにいくつか提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−177571公報
【特許文献2】特開2005−155281公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1,2等の発明は跳ね上がり防止に効果を発揮するものの、以下のような問題があった。
特許文献1,2の発明は、その構造から誰でもグレーチングの取外しが可能なものであった。溝ブロックの上面に載置するグレーチングには、強度的な観点から一般に金属製グレーチングが多用されている。ところが、グレーチングが金属製であるため、金属価格の高騰とともに全国各地で盗難被害のニュースが報じられるようになってきている。グレーチングが盗難にあうと、上面開口の側溝に車両が落ち交通事故につながったり、子供の転落事故を招いたりするので、安全性の面からも盗難防止の要請が高まっている。特許文献1,2の発明は、その構造から手際よく取り外される危険性があった。
加えて、グレーチングは溝ブロックに半永久的に載置するものでなく、メンテナンス等で定期的に取り外される。メンテナンス時の作業性にも配慮した取付け構造が求められるが、実際のところその対応策は難しいとされてきた。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するもので、車両走行によるハネ上げ防止に役立つだけでなく、低コストで完璧な盗難防止を可能とし、さらにメンテナンス時,緊急時にグレーチングの取外し作業を円滑にする溝ブロックへのグレーチングの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、両側部が天板部と繋がり且つ上面にグレーチングが被着される開口を設けた溝ブロックへのグレーチングの取付け構造であって、左右の両端板域に設けた取付口に、取付板がそれぞれの端板との間に隙間を設けてグレーチング本体に固着され、更に該取付板にボルト軸を立設させた金属製グレーチングと、前記ボルト軸の挿入用通孔を設けて前記取付板に載る平板部の一端縁から、垂直部分を該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部分の延設先から、該平板部と遠ざかるように張出部分を延設してなる掛止金具と、前記ボルト軸に螺合する雌ねじ部を形成し、且つ外面に突起又は凹溝を設けた異形ナットと、を具備し、前記開口に前記グレーチングが被着され、前記通孔に前記ボルト軸を挿通して前記取付板に前記係止金具の平板部を載置すると共に該係止金具が前記隙間を通って下降し、グレーチングの外方へ前記張出部分を張り出すようにして、該ボルト軸に前記異形ナットを嵌め、さらに該異形ナットに嵌合する専用治具で該異形ナットを締め付けることにより、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ前記張出部分が天板部の下方領域に潜り込むようにしたことを特徴とする溝ブロックへのグレーチングの取付け構造にある。
請求項2の発明たる溝ブロックへのグレーチングの取付け構造は、請求項1で、取付口を形成する壁部の一部たる前記端板の下縁側に切欠部を設けることを特徴とする。請求項3の発明たる溝ブロックへのグレーチングの取付け構造は、請求項2で、異形ナットが雌ねじ部を設けたナット本体の上部を被冠部で覆った袋ナットであることを特徴とする。請求項4の発明たる溝ブロックへのグレーチングの取付け構造は、請求項1〜3で、張出部分の先端部位側から切り込みを入れ、さらに該切り込みにより張出部分から分割された舌片を、その基端側から突端に向け、張出部分よりも上昇傾斜するよう形成し、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ該張出部分が天板部の下方領域に潜り込む状態で、該舌片を該天板部の下面に当接させることを特徴とする。請求項5の発明たる溝ブロックへのグレーチングの取付け構造は、請求項4で、係止金具の通孔を前記L板部の張り出す方向に長い長孔とする一方、前記グレーチングの取付板が前記端板との間に平面視で隙間を設けて略水平にグレーチング本体に固着されることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明のごとく、取付板に前記係止金具の平板部を載置すると共に該係止金具が前記隙間を通って下降し、グレーチングの外方へ前記張出部分を張り出すようにすると、グレーチングの左右二カ所にこのような掛止金具を設けるだけで車両走行によるハネ上げ防止に機能発揮できる。異形ナットに嵌合する専用治具で該異形ナットを締め付けることにより、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ前記張出部分が天板部の下方領域に潜り込むようにすると、グレーチングが上動して開口から抜け出ようとしても、張出部分が天板部に掛止,阻止されるので、ハネ上げ防止に役立ち、車両走行等でグレーチングが開口から外れることはない。また、掛止金具を該取付板に固着し且つ前記張出部分が天板部の下方領域に潜り込むようにすると、両者が剛性の高いものであっても、張出部分と天板部とは離間しているので、車両走行による振動が天板部に伝わったとしても、その振動が張出部分、掛止金具には直接伝達されない。異形ナットのねじの弛みも起こらない。グレーチング上を車両走行してグレーチング側がガタついても、そのガタつき振動が天板部に直接伝わることもない。そして、ボルト軸に前記異形ナットを嵌め、さらに該異形ナットに嵌合する専用治具で該異形ナットを締め付けることにより、前記掛止金具を該取付板に固着すると、グレーチングを取り外す場合は、この専用治具を使って簡単に取り外せる。その一方で、該専用治具がなければグレーチングの取外しができない。低コスト構造にして、盗難防止対策が万全となる。
請求項2の発明のごとく、取付口を形成する壁部の一部たる前記端板の下縁側に切欠部を設けると、掛止金具の出し入れが容易になり、掛止金具の取付板への取付け,取外しの作業性を高める。
請求項3の発明のごとく、異形ナットが雌ねじ部を設けたナット本体の上部を被冠部で覆った袋ナットであると、異形ナットとボルト軸の螺合部に雨水が侵入しづらくなるので、その部分のサビ防止につながる。
請求項4の発明のごとく、張出部分から分割された舌片を、その基端側から突端に向け、張出部分よりも上昇傾斜するよう形成し、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ該張出部分が天板部の下方領域に潜り込む状態下で、該舌片を該天板部の下面に当接させると、グレーチング上を車両が走行した場合のガタ付き振動を、上昇傾斜する舌片が撓んでそのバネ作用で吸収するので、振動騒音を抑えることができる。
請求項5の発明のごとく、係止金具の通孔を前記L板部の張り出す方向に長い長孔とする一方、前記グレーチングの取付板が前記端板との間に平面視で隙間を設けて略水平にグレーチング本体に固着されると、溝ブロックから本グレーチングを取り外す場合、異形ナットを少し弛めるだけで、掛止金具の張出部分がグレーチング側に寄って天板部と掛止金具との間に余裕空間ができるので、掛止金具をグレーチングに取り付けたままで開口からグレーチングを取り外せるようになる。グレーチングの取外しを楽にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造は、車両走行によるハネ上げ防止に威力を発揮するだけでなく、盗難防止対策が低コストで万全なものになり、さらに、溝ブロックからの取外しが楽で、メンテナンス維持管理からも極めて優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る溝ブロックへのグレーチングの取付け構造(以下、単に「グレーチングの取付け構造」という)について詳述する。
図1〜図9はグレーチングの取付け構造の一形態で、図1はその取付けに使用する各構成部材の分解斜視図、図2は図1の各構成部材でグレーチングが溝ブロックに取付けられたグレーチングの取付け構造の平面図、図3は図1の要部斜視図、図4は取付板に平板部を載置し且つL板部が隙間を通ってグレーチングの外方へ張り出すようにした拡大斜視図、図5は図4の状態から異形ナットで掛止金具を取付板に固着してL板部が天板部の下方領域に潜り込む状態の拡大断面図、図6は図5の状態から異形ナットを弛めた状態を示す拡大断面図、図7は図1〜図6の異形ナットに代わる他態様の異形ナットで掛止金具を取付板に固着してL板部が天板部の下方領域に潜り込む状態の拡大断面図、図8は図7に代わる他態様の異形ナットの説明図で、(イ)がその斜視図、(ロ)がその平面図である。図9は図8とはまた異なる別態様の異形ナットの説明図で、(イ)がその斜視図、(ロ)がその正面図、(ハ)がその縦断面図である。尚、図2は異形ナットを簡単図示し、また通孔の図示を省略する。図1〜図3は張出部分に設けた舌片の図示を省略する。
【0010】
本グレーチングの取付け構造は、溝ブロック7とグレーチング1と掛止金具2と異形ナット8の構成部材を備える(図1)。
溝ブロック7は両側部70が板状の天板部71と繋がり且つ上面略中央にグレーチング1が被着される平面視略長方形の開口72を設けたコンクリート製品である。ここでの溝ブロック7は図1のような公知の可変側溝を用いる。上面両端部に厚みWの天板部71を設けて上面中央開口72に一のグレーチング1が被着される溝ブロック7である。両側部70の上半部を両外方へ張出し、張出部70aを形成する一方、上面開口72から流水溝74内へ向け一段下がった両側部70に受部73を設ける。グレーチング1を受部73上に載置することによって、開口72がグレーチング1で蓋がされる格好になる(図2)。図2中、符号75はグレーチングを取り外す時に手を突っ込み易くするために形成した窪み(図1では省略)を示す。
【0011】
グレーチング1は図1〜図3ごとくの金属製グレーチングである。全体形状が規格化された長方形盤状をなし、主部材12と連結材13と側板10と端板11と取付け用仕切板14と取付板15とボルト18とを備えるグレーチング1である。多数の金属製帯板からなる主部材12とこれに直交する連結材13とで格子状に形成して、その両側を側板10で塞ぐ(図1,図2)。主部材12の左右の両端を端板11として、長方形盤のグレーチング本体1aとする。尚、本発明で用いる左右(方向)、横方向とは図2の紙面左右(方向)、横方向をいい、縦方向とは図2の紙面上下方向をいう。また本発明で用いる上方向、下方向とは図2の紙面垂直上方向、紙面垂直下方向をいい、水平方向とは図2の紙面に対し平行な水平面の方向をいう。
ここでの連結材13は通称クロスバーとも呼ばれ、金属製棒状材を捩ったツイスト棒からなる。連結材13は、主部材12をその帯幅方向を垂直起立させ且つ所定ピッチで複数配設した状態を確保した後、これらと直交するようにして所定間隔離して主部材12上面に載置される。その後、主部材12と連結材13とを電気圧接固定して格子状とし、両側横方向に側板10を固着して長方形盤に組み立てられる。本実施形態のグレーチング1にはさらに嵩上げ部材19が取着される。該長方形盤のグレーチング本体1aの下面に、両側板10に沿って角筒状の嵩上げ部材19を固着する。符号SLは主部材12と連結材13とを格子状に配設することによってできるスリットを示す。開口72に被着されたグレーチング1にあって、路面に降り注いだ雨水は該スリットSLを通って流水溝74へと流れ落ちる。
【0012】
前記長方形盤のグレーチング本体1aには左右の両端板域にそれぞれ取付口16が設けられる。少なくとも両端板11に最も近い主部材12の長手方向(縦方向)略中央部を切欠き、この切り欠かれた該主部材12に仕切板14を固着して、該仕切板,該主部材,端板11とで平面視略四角形の取付口16を形成する。取付口16を形成する壁部の一部を端板11が担う。そして、図3,図4に示すごとく取付口16の空所を形成する主部材12,仕切板14の各下縁寄りに、板片からなる取付板15が、図2の平面視で、端板11との間に隙間17を設けてグレーチング本体1aに略水平に固着される。
【0013】
さらに、前記取付板15の上面にボルト軸18bを立設させた金属製グレーチング1にする。図5のごとく、取付板15に穿設した透孔15aに下側から上方へ汎用ボルト18を貫通させた後、ボルト頭部18aを取付板15の下面に溶接固定WDすることによって、ボルト軸18bが取付板15の略中央に起立する本グレーチング1が出来上がる。本実施形態のグレーチング1では、図2の平面視で、取付板15と端板11との間に隙間17を設けるのみならず、図3,図4のごとく取付口16を形成する壁部の一部たる端板11の下縁側に冂型状の切欠部11aを設ける。該取付板への掛止金具2の取付けを容易にするためである。該切欠部の幅X(端板11の長手方向の切欠幅)は掛止金具2の幅Yよりも大きい。グレーチング1が開口72に被着され、該取付板に掛止金具2を固着すると、該掛止金具2の張出部分26が隙間17を貫通して溝ブロック7の天板部71の下方領域に潜り込むことができる。
【0014】
掛止金具2は、ボルト軸の挿入用通孔20を設けて取付板15に載る平板部2aの一端縁から、垂直部分25を該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部分の延設先から、該平板部と遠ざかるように張出部分26を延設してなる金属製板状片である。平板部2aの一端縁から、垂直部分25を該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部分が延設された先(先端縁)で、該平板部から離れるように張出部分26を延設する。平板部2aの一端縁から、垂直部分25が該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部分が延設した先で、該平板部から離れるように張出部分26が延設する。掛止金具2はボルト軸18bの通孔20を設けて取付板15に載る平板部2aと、その一端縁から垂直部分25が平板部2aに対し略垂直に延設し、更に側面視L字状に該平板部から離れるようにして張出部分26が延設するL板部2bとを備える。取付板15に載る平板部2aの一端縁から、垂直部分25が該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部の先で、該平板部から離れるようにして該垂直部分とで側面視L字状につくる張出部分26が延設する。L板部2bは水平に配する平板部2aの一端縁から垂直部分25が下降した後、側面視L字状に平板部2aから離れる張出部分26が延設する。垂直部分25,張出部分26は図示のごとくそれぞれ平板状である。通孔20は丸孔でもよいが、ここではL板部2bが張り出す方向に長い長孔とする(図3)。掛止金具2はグレーチング1の左右の取付板15に取付けられるため、二個用意される。掛止金具2の幅Yを前記取付板の幅Zよりも小さく設定し、通孔20にボルト軸18bが挿通するようにして、取付板15に平板部2aが載置可能とする。取付板15に掛止金具2の平板部2aが載置固定されると、該掛止金具が隙間17から下降した後、張出部分26が水平外方へ張り出す。そして、該張出部分26の少なくとも先端部位26aが天板部71の下方領域に潜り込む構成とする。通孔20にボルト軸18bを挿通して取付板15に係止金具2の平板部2aを載置すると共に、該係止金具が隙間17を通って、張出部分26がグレーチング1の水平外方へL板部2bを張り出すようにする(図4)。ボルト軸18bに異形ナット8を嵌めた後、異形ナット8に嵌合する専用治具で該異形ナット8を締め付けることによって、掛止金具2が取付板15に固着される(図5)。該異形ナットの締め付け固定で、係止金具2が隙間17を貫通してその張出部分26が溝ブロック7の天板部71の下方領域に潜り込めるように設定される。この設定によって、図5のごとく、L板部2bの張出部分26と天板部71とが平面視で長さKZの領域で干渉,重複する。と同時に、側面視で張出部分26と天板部71との間に空間SPが確保される。
【0015】
本実施形態は、図4〜図6のごとく張出部分26から分割した舌片27をさらに設ける。舌片27を設けると、騒音防止対策等を一層進めることができ好ましくなる(後述)。舌片27は張出部分26の一部分を切り込みカットして設けられる。張出部分26の先端部位26a側から基端部位へ直線状の切り込みを二カ所入れ、該切り込みにより張出部分26から分割された舌片27を、垂直部分25に近い基端側から突端27aに向け、張出部分26よりも上昇傾斜するよう形成する(図4)。基端側を張出部分26につなげて、該張出部分の張出し方向と並行の舌片27を形成する。ここで、張出部分26が垂直部分25の下縁からほぼ水平に延設するのに対し、舌片27は基端側が張出部分26とつながって、そこでは該張出部分と高さレベルを同じくするが、突端27aに向け上昇傾斜して、該突端では張出部分26よりも高い位置に設定される(図4)。掛止金具2を取付板15に固着し且つ該張出部分が天板部71の下方領域に潜り込む図5の状態で、側面視で張出部分26と天板部71との間に空間SPが確保される一方、舌片27は該天板部の下面に当接させる。該舌片はその基端側だけが張出部分26につながる構成なので、ばね作用が働く。舌片27の突端27aと天板部71の下面とが少し干渉するようにして、舌片27を張出部分26側に少し押し戻す格好で該天板部の下面に当接させることも可能である。そのため、舌片27はその上昇傾斜する寸法許容範囲が広く、厳しい精度が要求されず、掛止金具2の製作や溝ブロック7へのグレーチング1の取付け作業も楽になる。
【0016】
異形ナット8は、前記ボルト軸18bに螺合する雌ねじ部82を形成し、且つ外面に突起80b又は凹溝を設けた締め付け部材である。異形ナット8は掛止金具2と同様、二個用意される。ここでの異形ナット8はその外形が図1,図4のような異形体Kとする。異形体Kはナット本体80に鍔80dと突起80bとを一体化したものである。本異形体Kはナット本体80の本体部分が汎用ナットの六角柱(六角形)した外形と違って円柱形とする。そして、該ナット本体80の下縁に外方へ張り出す鍔70dを設ける一方、ナット本体80の側面部分80aに水平外方向に延びるリブ状突起80bを突設する。突起80bは平面視で本体側面部分80aから外方へ凸状部を突出形成してなる。突起80bは、平面視でナット本体80の中心軸を中心にして、側面部分80aから放射線状に複数設けられる。突起80bの下部は鍔80dに結合する。鍔80dの領域を除き、突起80bがあるナット本体80の領域では、垂直方向ほぼ等断面形状になっている。図1のように専用治具9を異形体Kの上方から矢印のごとく垂直下降して異形体Kに深く且つ十分に嵌合させ、専用治具9による異形体Kの異形ナット8の取付け取外しを円滑にするためである。突起80bの形成によって市販の汎用レンチは使用できない。該突起80bが設けられた異形体Kに嵌合する専用治具9のみによりその異形ナット8の取付けや取外しができる。さらに、本実施形態の異形ナット8は雌ねじ部82を設けたナット本体80の上部を被冠部85で覆った袋ナットとする。戸外に置かれるグレーチング1にあって、雌ねじ部82とボルト軸18bの雄ねじ部との螺合部に、雨水が浸入するのを阻止し、異形ナット8,ボルト軸18bが傷まないようにするためである。
【0017】
突起80bは図1〜図6のごとくナット本体80の側面部分80aから放射線状にいくつも形成されることによって、突起80bへの専用治具9の係止が強化されるが、該突起80bの大きさ,形状,個数等を変えてもよい。図7,図8は図1〜図6のものと異なる異形体Kの異形ナット8としたものである。符号80cは突起80bの形成によって該突起と本体側面部分80aとでつくる凹所を示す。図7,図8の異形ナット8は雌ねじ部82がナット本体80を貫通する貫通タイプである。また、図9のような異形ナット8とすることもできる。図9の異形ナット8は図1〜図6の異形ナット8の鍔部80dを円筒部にし、該円筒部の内壁にも雌ねじ部82を形成する。雌ねじ部82が長くなる分、ボルト軸18bも長くでき、両者の螺着固定がより確かなものとなる。斯かる異形体Kの異形ナット8を用いても、本発明のグレーチング1の取付構造になる。図示を省略するが、異形ナット8は上蓋円筒体の筒内面に雌ねじ部82を形成し、その上蓋部上側に凹溝を形成する異形体Kでもよい。また図示を省略するが、ボルト軸18bへの異形ナット螺着時に、ボルト軸18bと異形ナット8との間に介在させるスプリングワッシャが準備される。
【0018】
本グレーチングの取付け構造へと導くには、さらに専用治具を必要とする。専用治具9は、異形ナット8の異形体Kの外形と略同形の雌形嵌合部91を形成する。前記凹溝を形成した異形ナット8については、該凹溝に嵌合する雄形嵌合部を形成する。そして、治具本体90の上端外面部には、異形ナット8への嵌合後に該専用治具9を作動させることのできる汎用レンチとの係合部92が設けられる。図1の専用治具は六角形レンチに対応する係合部92を設けたものである。図7の専用治具は六角形レンチに対応する係合部92の他、またその上に四角形レンチに対応する第二係合部93を設けたものになっている。
【0019】
次に、グレーチング1を溝ブロック7へ取付ける一手順を説明する。図4のごとく溝ブロック7の開口72の受部73にゴム板5(図7では省略)を敷いた後、嵩上げ部材19が受部73に載るようにして、開口72をグレーチング1で蓋をする。開口72にグレーチング1が被着され、グレーチング1の上面と天板部の天面71aが略面一になる。
その後、通孔20にボルト軸18bを挿通して取付板15に平板部2aを載置し、さらに、隙間17を通ってグレーチング1の外方へ張出部分26を張り出すようにして(図4)、該ボルト軸18bに異形ナット8を嵌める(図6)。ボルト軸18bに異形ナット8を嵌める際は、スプリングワッシャを介在させる。そして、該異形ナットに嵌合する専用治具9で該異形ナットを締め付ける(図1,図5)。手と専用治具9とを使って異形ナット8に嵌合し、ボルト18と異形ナット8間の掛止金具2と取付板15を締め付ける。この締め付けによって、異形ナット8とボルト軸18bとが螺着強化され、掛止金具2の平板部2aを該取付板に固着し且つ係止金具2が隙間17を貫通して、該係止金具の張出部分26が溝ブロック7の天板部71の下方領域に潜り込む。図5のごとく天板部71よりも下方領域の流水溝74域で、L板部2bの張出部分26がグレーチング1から水平外方向に突き出す構造にする。図5では右側取付口16の右側張出部分26がグレーチング1から水平外方向、すなわちグレーチング1から右側天板部71のある方向へ突き出している。左側の張出部分26は図示を省略するが、左側張出部分26はグレーチング1から左側天板部71のある方向へ突き出している。二つの張出部分26がグレーチング1から水平外方向に互いに離れるように突き出す(図3参照)。左右二カ所在る取付板15に固着された掛止金具2の両張出部分26が、天板部71よりも下方に位置して、且つ図2の平面視で、左右の天板部71とそれぞれ重なる部分を形成して、該天板部71の下方領域に潜り込む。
【0020】
また、本実施形態のごとく舌片27を設けた場合は、通孔20にボルト軸18bを挿通して取付板15に平板部2aを載置し、隙間17を通ってグレーチング1の外方へ張出部分26を張り出すようにして、ボルト軸18bに異形ナット8を嵌めた段階で、未だ図6の鎖線図示のごとく張出部分26及び舌片27が天板部71の下方で取付板15側へ引っ込んだ状態になっている。その後、ボルト18と異形ナット8の螺着固定によって、掛止金具2と取付板15とが締め付けられ、掛止金具2が該取付板に固着され且つ係止金具2が隙間17を貫通して、張出部分26が溝ブロック7の天板部71の下方領域に潜り込む。L板部2bの張出部分26が、図5のごとく天板部71よりも下方領域の流水溝74域でグレーチング1から水平外方向に突き出し、且つ天板部71との間に空間SPが確保される一方、舌片27の突端27aが天板部71の下面に当接する。図5,図6では舌片27の突端27aが軽いタッチで天板部71の下面に当接するが、図7では空間が若干小さくなっているため、突端27aが天板部71に少し押さえつけられ、舌片27がそのバネ作用で張出部分26側へ戻っている。
かくして、グレーチング1を溝ブロック7へ取付けが完了する。その後、取付口16にゴムキャップが嵌め込まれる(図3)。
【0021】
このように構成したグレーチング1の取付構造は、左右二カ所在る取付板15に固着された掛止金具2の両張出部分26が、グレーチング1から水平外方向に互いに離れるように突き出し、天板部71の下方領域に潜り込むので、グレーチング1の上を車両が走行して該グレーチングが跳ね上がろうとしても、掛止金具2の両張出部分26が天板部71の裏面に掛止されることによってこれを阻止し、跳ね上がりの問題を解決する。グレーチング1の左右に固定された掛止金具2が、車両走行によるグレーチング1の上動に対し、天板部71にぶつかってロック機能を発揮する。しかし、常態下では、車両走行時の振動があっても、天板部71と剛性のある張出部分26との間に空間SPが確保されるので、異形ナット8が弛むことはない。
【0022】
また、溝ブロック7にグレーチング1が一旦取付られると、異形体Kに嵌合する専用治具9がないとグレーチング1を溝ブロック7から取り外すことができず、盗難にあう危険がない。異形体Kは汎用ナットと違って、突起70bによって特殊ロックの形状になっている。カギ(キー)に相当する異形体Kとカギ穴に相当する専用治具9で、カギの嵌合メカニズムを構成する。構造を複雑化してもその構造が理解されると簡単に溝ブロック7からグレーチング1が取り外されてしまう従来品と違って、異形体Kを見てこれに嵌合する治具を現場で造ろうとしても不可能に近い。その取付け構造からコスト的にも安価になっている。グレーチング1の取付板15と掛止金具2を螺着固定する異形ナット8を、汎用ナットに代えて異形体Kの異形ナット8にするだけでよい。それでいて、ほぼ完璧な盗難防止のグレーチングの取付構造になる。加えて、突起80bや凹溝はその形状,大きさ,個数等を変えることによって異形体Kを簡単に造り変えることもでき、コストをさほどかけずに盗難に対して盤石体制となる。
【0023】
その一方で、グレーチング1の管理者はメンテナンス等でグレーチング1を外す必要があるが、その時は、専用治具9を用いて簡単に取外しできる。異形体Kの異形ナット8に専用治具9を被せるようにして、異形体Kに嵌合部91を嵌合させ、後は汎用レンチを使って係合部92を回すだけである。グレーチング1の取付け,取外しの作業性にも優れる。
特に、メンテナンス等で厄介なグレーチング1の取外しにあって、本グレーチングの構造は、異形ナット8を少し弛めるだけで、天板部71に干渉していた掛止金具2が干渉しなくなるので、楽になる。異形ナット8を少し弛めてその状態を確保した後、グレーチング1を持ち上げれば、溝ブロック7からグレーチング1に掛止金具2を付けたまま簡単に外すことができる。掛止金具2をグレーチング1から取り外していないので、該掛止金具を紛失することはない。部品管理の面からも優れる。異形ナット8を少し弛めると、掛止金具2がその自重で図6の鎖線ごとく傾いて、天板部71の下方領域に潜り込んでいた張出部分26がグレーチング1側に寄って、天板部71と掛止金具2との間に余裕空間εが生まれる。余裕空間εは、グレーチングの取付板15が端板11との間に平面視で隙間17を設けること、また切欠部11aを設けること、さらに通孔20をL板部2bの張り出す方向に長い長孔にすることによって一層生まれ易くなる。左右の掛止金具2をこの状態にして、グレーチング1を持ち上げれば、溝ブロック7の開口72から掛止金具2付きグレーチング1を難なく取出すことができる。異形ナット8をボルト軸18bからいちいち外す必要がなく、頗る便利になる。異形ナット8を少し弛めた後に、掛止金具2が図6の鎖線のように傾かない時は、L板部2bに近い平板部2aの部位を指で少し押してやれば簡単に傾くなど極めて有益なグレーチング1の取付け構造になっている。
【0024】
加えて、舌片27の形成によって、掛止金具2を取付板15に固着し且つ張出部分26が天板部71の下方領域に潜り込む状態で、該舌片が該天板部の下面に当接するので、グレーチング1上を車両が走行する際にグレーチング1が発するガタつき音を確実に防止できる。常態下で、張出部分26と天板部71との間に空間SPを確保しつつ、該張出部分から一部分割した舌片27が天板部下面に当接するので、グレーチング1のガタつき騒音をなくす。騒音防止に貢献する。舌片27が天板部下面に当接する構造であっても、車両走行が与える振動,衝撃に対し、舌片27はバネ作用で自らが変形してそれを吸収するので、天板部71側に損傷を与えない。舌片27が撓むそのバネ作用で車両走行の衝撃を吸収するので、異形ナット8のねじの弛みも誘発しない。舌片27の形成によって、跳ね上げ防止,騒音防止,異形ナットの弛み防止等に更なる効果を上げることができる。
【0025】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。グレーチング1,掛止金具2,異形ナット8,専用治具9,溝ブロック7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態のグレーチング1と異なり嵩上げ部材19なしのグレーチング1にも適用できる。両端板11域のそれぞれ一カ所に取付口16を設けたが、例えばグレーチング1の四隅の四カ所に取付口16を設けて、その四カ所に掛止金具2を取り付けることもできる。溝ブロック7に可変側溝や自由勾配側溝と呼ばれるものを採用したが、これに限ることなく、特開2001−40753号公報,特開2006−322242号等に記載の側面視略U字形,側面視ロ字形の側溝本体で、両側部70が天板部71と繋がり且つ該天板部71の上面略中央にグレーチング1が載置する開口72を設けた溝ブロック7を採用することも勿論できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】溝ブロックへのグレーチングの取付け構造に使用する各構成部材の分解斜視図である。
【図2】図1の各構成部材でグレーチングが溝ブロックに取付けられたグレーチングの取付け構造の平面図である。
【図3】図1の要部斜視図である。
【図4】取付板に平板部を載置し且つL板部が隙間を通ってグレーチングの外方へ張り出すようにした拡大斜視図である。
【図5】図4の状態から異形ナットで掛止金具を取付板に固着してL板部が天板部の下方領域に潜り込む状態の拡大断面図である。
【図6】図5の状態から異形ナットを弛めた状態を示す拡大である。
【図7】図1〜図6の異形ナットに代わる他態様の異形ナットで掛止金具を取付板に固着してL板部が天板部の下方領域に潜り込む状態のである。
【図8】図7に代わる他態様の異形ナットの説明図で、(イ)がその斜視図、(ロ)がその平面図である。
【図9】図8とはまた異なる別態様の異形ナットの説明図で、(イ)がその斜視図、(ロ)がその正面図、(ハ)がその縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 グレーチング
1a グレーチング本体
11 端板
11a 切欠部
15 取付板
16 取付口
17 隙間
18b ボルト軸
2 掛止金具
2a 平板部
2b L板部
26 張出部分
27 舌片
20 通孔
7 溝ブロック
70 側部
71 天板部
72 開口
8 異形ナット
82 雌ねじ部
85 被冠部
9 専用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側部が天板部と繋がり且つ上面にグレーチングが被着される開口を設けた溝ブロックへのグレーチングの取付け構造であって、
左右の両端板域に設けた取付口に、取付板がそれぞれの端板との間に隙間を設けてグレーチング本体に固着され、更に該取付板にボルト軸を立設させた金属製グレーチングと、
前記ボルト軸の挿入用通孔を設けて前記取付板に載る平板部の一端縁から、垂直部分を該平板部に対し略垂直に延設し、更に該垂直部分の延設先から、該平板部と遠ざかるように張出部分を延設してなる掛止金具と、
前記ボルト軸に螺合する雌ねじ部を形成し、且つ外面に突起又は凹溝を設けた異形ナットと、を具備し、
前記開口に前記グレーチングが被着され、前記通孔に前記ボルト軸を挿通して前記取付板に前記係止金具の平板部を載置すると共に該係止金具が前記隙間を通って下降し、グレーチングの外方へ前記張出部分を張り出すようにして、該ボルト軸に前記異形ナットを嵌め、さらに該異形ナットに嵌合する専用治具で該異形ナットを締め付けることにより、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ前記張出部分が天板部の下方領域に潜り込むようにしたことを特徴とする溝ブロックへのグレーチングの取付け構造。
【請求項2】
前記取付口を形成する壁部の一部たる前記端板の下縁側に切欠部を設ける請求項1記載の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造。
【請求項3】
前記異形ナットが雌ねじ部を設けたナット本体の上部を被冠部で覆った袋ナットである請求項2記載の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造。
【請求項4】
前記張出部分の先端部位側から切り込みを入れ、さらに該切り込みにより張出部分から分割された舌片を、その基端側から突端に向け、張出部分よりも上昇傾斜するよう形成し、前記掛止金具を該取付板に固着し且つ該張出部分が天板部の下方領域に潜り込む状態で、該舌片を該天板部の下面に当接させる請求項1乃至3のいずれかに記載の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造。
【請求項5】
前記係止金具の通孔を前記L板部の張り出す方向に長い長孔とする一方、前記グレーチングの取付板が前記端板との間に平面視で隙間を設けて略水平にグレーチング本体に固着される請求項4記載の溝ブロックへのグレーチングの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−228295(P2009−228295A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74718(P2008−74718)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(599147218)東北岡島工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】