説明

溶接操作中に溶接プロセスを変更する方法および溶接操作前に熱入力する方法

本発明は、溶接操作中に溶接プロセスを変更する方法であって、溶融する溶接ワイヤ(9)とワークピース(14)との間の短絡中に、実施された溶接プロセスから次の溶接プロセスまで変更が実行される方法、および溶接操作の前に熱を入力する方法に関する。高いプロセスの安定性によって溶接プロセスを達成するために、実施される前記溶接プロセスの短絡を検出して、前記溶接ワイヤ(9)が前記次の溶接プロセスの溶接電流(I)の閾値(34)に依存して移動方向に規定された継続期間(32)の間さらに移動した後停止し、前記溶接電流(I)が前記閾値(34)に到達すると、前記次の溶接プロセスを開始するために、前記溶接ワイヤ(9)が反対方向に移動することが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接操作中に溶接プロセスを変更する方法に関するものであり、該変更は、実施された溶接プロセスから次の溶接プロセスまで、溶融溶接ワイヤとワークピースとの間の短絡中に実行される。
【背景技術】
【0002】
さらに、本発明は、溶接操作前に熱入力する方法に関するものである。
【0003】
WO2006/089322には、溶接ワイヤがワークピースに接触するまでワークピースに向かって移動し、その後、短絡を引き起こした後、短絡段階中に移動方向を逆転し、短絡が切断されるまで、溶接ワイヤをワークピースから離れる方向に移動させて、アークを点火した後にコールドメタルトランスファー(CMT)溶接プロセスを実行する、溶接装置および/または溶接電流源を制御かつ/または規制する方法が記載されている。ワークピースへの熱入力および/または追加の材料の導入を制御するために、溶接電流および/または溶接電圧の極性は、少なくともいくつかの短絡段階中に、溶接ワイヤおよび/または短絡ブリッジが溶融するのを回避するために規定値にセットされた溶接電流および/または溶接電圧の振幅に応じて変更される一方で、ワークピースから溶接ワイヤを除去して信頼性のあるアークの再点火を保証する。したがって、変更は、“負のCMTプロセス(negative CMT process)”と“正のCMTプロセス(positive CMT process)”の間でなされる。
【0004】
これと関連がある欠点は、極性逆転処置の間、障害が見られない点である。結果として、電流変更の継続期間が溶接電流回路の長さによって生じるインダクタンスによって変わるので、極性の逆転を高出力で行うことができる。このことは、特に短絡の不安定につながる。さらに、溶融池での揺らぎは、プロセス変更中の短絡の切断につながり、非制御の熱入力や溶接スパッタの原因になる。変更の間、極性の逆転の方向も見られない。これらの障害は、プロセスの安定性を減少させる主な要因である。
【0005】
一般に、溶接プロセス前のワークピースへの“熱入力(heat application)”を有するいわゆる“ホットスタート(hot start)”は先行技術からも知られている。ここでの欠点は、この“ホットスタート”がスプレーアーク(spray arc)を用いて実行される点である。結果として、特に、2枚の薄い金属シートの間のギャップを埋めなければならない場合、入力された熱は高すぎる。これにより、材料が溶けてしまう。これは、実質的にホットスタートの継続期間のみを規制できるように、スプレーアークが高出力を必要とするからである。これにより、材料に適さない熱入力によって、多量のエネルギーおよび/または熱が、短時間にワークピースに加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/089322号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、高いプロセスの安定性を有し、低くて柔軟に調整可能な熱入力を可能にし、高い溶着速度と歪みの少なさを同時に提供する溶接プロセスに対して上で特定した方法のような方法を作ることである。公知の方法の欠点は、減少させるか、または取り除かなければならない。
【0008】
本発明の目的は、溶接操作中に溶接プロセスを変更する上述の方法によって達成される。本発明では、実施される前記溶接プロセスの短絡を検出して、前記溶接ワイヤが前記次の溶接プロセスの溶接電流の閾値に依存して移動方向に規定された継続期間の間さらに移動した後停止し、前記溶接電流が前記閾値に到達すると、前記次の溶接プロセスを開始するために、前記溶接ワイヤが反対方向に移動する。ここでの利点は、短絡を検出して溶接ワイヤを溶融池の中にさらに移動させるので、溶接プロセス変更の継続期間の間、短絡が溶融池内部の揺らぎおよび溶滴サイズによって切断されない点である。別の利点は、変更が溶接電流回路の長さに依存しないという点である。なぜなら、高いプロセスの安定性が変更によって阻止されないように、電流変更の継続期間がインダクタンスのために見られているからである。溶接電流回路という用語は、電源、線およびワークピースによって形成された電気回路を示すために使用される。別の利点は、電流変更が完了しない限り、次の溶接プロセスへの変更および/または短絡の切断が開始されないので、短絡での溶接プロセスの信頼性のある変更が保証される点である。このようにして、短絡は、少なくとも電流変更の継続期間の間維持される。さらに、特に薄い金属シートを扱うときに、先行技術から知られるよりも高いプロセスの安定性を有してより大きなギャップを埋めることができる。これは、公知のCMTプロセスと比較すると、より高い溶着速度が低く均等な熱入力によって達成され、かつ/またはより低い均等な熱入力が均等な溶着速度で達成されるからである。そのため、連続的に増加し、かつ/または減少する幅を有するギャップを、例えば、溶接操作によって埋めることができる。さらに、異なる溶接プロセスにより、熱入力および/または溶着速度を柔軟にセッティングすることができる。
【0009】
溶接プロセスの変更は、実施される溶接プロセスの溶接電流の閾値に到達することによって有利に実行される。したがって、逆転が規定された閾値で実行されるとき、極性の逆転は低能力で実行される。結果として、費用効率が高いハードウェアを使用できる。
【0010】
別の利点は、反対の極性を有する2つの溶接プロセスの間で交互に入れ替わることである。なぜなら、これによって、短絡がこの時間の間維持されるとき、カバーされなければならない大きな電流の差が短絡の溶接電流回路のインダクタンスに依存するからである。溶接プロセスおよび極性の変更も、有利な方法で、信頼性のある短絡で実行される。
【0011】
有利な方法では、溶接電流の閾値および溶接プロセス用の特徴的なカーブに依存した継続期間を記憶する手段により、ユーザーのためにパラメーターの値を自動的にセットすることができる。
【0012】
本発明の目的は、溶接操作の間溶接プロセスを変更する上述の方法によって達成される。該変更は、短絡溶接プロセスとパルス溶接プロセスの間で生じ、実施される溶接プロセスに依存して、変更段階の間に、溶接ワイヤの先端を、次の溶接プロセスに適合させる。それによって、ワイヤの先端は、高いプロセスの安定性を保証する次の溶接プロセスに対して完璧に準備される(溶滴サイズ、温度伝導、およびアーク長)。別の利点は、溶滴がほぼずっと、ワイヤの先端に存在している点である。そのため、ワイヤの先端は冷却されない。この溶滴は、完成した次の溶接プロセスに依存した電流/時間のプロファイルによって形成される。したがって、電流/時間のプロファイルは、熱入力も規制している。
【0013】
変更段階の間、次の溶接プロセスに依存して溶接ワイヤを配置することによって、パルス溶接プロセス用の正確なアーク長をセットすることができ、短絡溶接プロセス用の短絡を作ることができる。
【0014】
別の利点は、プロセスおよび極性が同時に変更されるように、変更段階に極性逆転処置を組み合わせられることである。
【0015】
極性を逆転した後、変更段階の間に、溶接ワイヤの先端で、適合の後に直ちに続くパルス溶接プロセスのパルスによって引き離される溶滴を形成する手段によって、第1サイクルのグラウンド電流段階が変更段階で生じ、それ故に素早く変更できることが有利な方法で達成される。初めからすぐの所で高いプロセスの安定性を有することも利点である。
【0016】
もし、少なくとも1つのパラメーターが、パルス溶接プロセスに変更後、開始値から最終値に変更されるならば、適切に狙いを定めた次のパルス溶接プロセスでのパルスパラメーターの適合を、バランスが取られたエネルギー状態に回復するために、ワイヤ先端の修正された温度プロファイルを弱めるように使用することができる。
【0017】
このパラメーターは、例えば、パルス溶接プロセスの溶接電流、パルス幅、パルス周波数、またはワイヤ送給速度であってもよい。
【0018】
極性を逆転する処置の前の変更段階において、短絡溶接プロセス用の短絡を作るために、溶接ワイヤの送給速度を変更してもよい。そして、溶滴を形成するために、溶接電流を適合させてもよい。それによって、短絡溶接プロセス用の溶接ワイヤの先端を適合させ、極性を逆転できるように短絡を作る。
【0019】
さらに、本発明の目的は、溶接操作前に熱入力する上述の方法を達成する。本発明では、溶接操作を開始する前に、ワークピースへの熱入力が少なくとも1回の溶接プロセスの調整可能なサイクル数によって規制される間に開始段階が実行される。ここでの利点は、材料が溶接プロセスの前に、完全に予熱されている点である。なぜなら、サイクル数によって熱入力を正確に規制でき、かつ/または、材料に正確に適合するように熱入力を調整できるからである。結果として、長時間にわたって、ワークピースにエネルギーおよび/または熱がほとんど加えられない。
【0020】
異なる極性のサイクルまたは異なる溶接プロセスをこれに使用してもよい。
【0021】
異なる溶接プロセスのサイクルの間で変更するとき、上で特定したような溶接プロセスを変更する方法が望ましくは実行される。
【0022】
さらにこれによって生じる利点は、既に説明された利点からも理解される。
【0023】
本発明は、添付図面によってより詳細に説明され、全体説明に含まれる開示を、類似した方法で、同じ部分に同じ符号を付して参照する。さらに、示された例示の実施形態の特徴のみによって、個々の解決策を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】溶接装置の概略図。
【図2】パルス幅がパルス溶接プロセスの間に変更される、本発明にかかる変更段階および極性逆転処置を含む短絡溶接プロセスおよびパルス溶接プロセスを有する溶接操作での溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図3】本発明にかかる極性逆転処置を含む2つの短絡溶接プロセスを有する溶接操作での溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図4a】詳細図での極性逆転処置中の溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図4b】詳細図での極性逆転処置中の溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図5】溶接電流のアンペア数がパルス溶接プロセスの間に変更される、本発明にかかる変更段階および極性逆転処置を含む短絡溶接プロセスおよびパルス溶接プロセスを有する溶接操作での溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図6】パルス周波数がパルス溶接プロセスの間に変更される、本発明にかかる変更段階および極性逆転処置を含む短絡溶接プロセスおよびパルス溶接プロセスを有する溶接操作での溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図7】移動速度がパルス溶接プロセスの間に変更される、本発明にかかる変更段階および極性逆転処置を含む短絡溶接プロセスおよびパルス溶接プロセスを有する溶接操作での溶接電流および溶接ワイヤの移動速度の図式的な時間的経過を示す図。
【図8】本発明にかかる開始段階を含む溶接操作の溶接電流の図式的な時間的経過を示す図。
【図9】本発明にかかる開始段階を含む溶接操作の溶接電流の別の図式的な時間的経過を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
導入として、例示の実施形態の同じ部分を示すために、同じ符号が使用されていることに留意されたい。
【0026】
図1は、MIG/MAG溶接および/またはTIG溶接または電極溶接、二重ワイヤ/タンデム溶接操作、プラズマ操作、またはロウ付け/はんだ付け操作等のような多くの異なるプロセスおよび/または操作用の溶接装置1および/または溶接設備を示す。溶接装置1は、電力素子3が配置された電源2、制御ユニット4、およびスイッチング部材、制御弁等のような図示しない構成要素およびワイヤを備えている。制御ユニット4は、ガス5、特に、二酸化炭素、ヘリウム、またはアルゴン、および同類のもののようなシールドガスの供給ラインのガス貯蔵器6と(溶接)トーチ7の間に配置された制御弁に接続してもよい。
【0027】
加えて、制御ユニット4は、MIG/MAG溶接で一般的であるように、ワイヤ送給ユニット8も制御するように使用し、追加の材料および/または溶接ワイヤ9を供給ロール10および/またはワイヤコイルから供給ラインを介して溶接トーチ7の領域に供給してもよい。もちろん、図1に示したカート12の上に配置された追加の装置と対照的に、先行技術から知られているように、ワイヤ送給ユニット8を溶接装置1、特に電源2のハウジング11に一体化することは可能である。このことは、小型の溶接装置1として参照されている。ここで、ワイヤ送給ユニット8は溶接装置1の頂部に直接置くことも可能である。すなわち、電源2のハウジング11は、カート12を省くことができるように、ワイヤ送給ユニット8を受ける頂面に形成されている。さらに、ワイヤ送給ユニット8により、溶接トーチ7の外側で溶接ワイヤ9および/または追加の材料をプロセス部位に供給できる。その場合、TIG溶接で一般的であるように、溶融していない電極は、望ましくは、溶接トーチ7の内部に配置されている。
【0028】
アーク13および/または作られたプラズマビームによってプロセス用の電気回路を作ることができるように、溶接されるワークピース14が図示しない別の電位用の別の溶接ライン、特に戻りのリード線を介して電源2に連結され、アーク13、特に電極および/または溶接ワイヤ9と、望ましくは、1つ以上の部分からなるワークピース14の間の使用可能なアークを作る電流は、電源2の電力素子3から溶接トーチ7、特に電極および/または溶接ワイヤ9に、図示しない溶接ラインを介して供給される。内部アーク13を有するトーチを使用するとき、図示しない両方の溶接ラインは、プラズマトーチの場合であってもよいが、適切な電気回路をトーチ内部で確立できるようにトーチにつながっている。
【0029】
溶接トーチ7を冷却するために、溶接トーチ7を、冷却装置15およびフローコントローラのような考えられる中間構成要素を介して、液体タンク、特にレベルインジケータ17を有する水タンク16に接続してもよい。溶接トーチ7の冷却を生じさせるために、冷却装置15、特に、水タンク16内部の液体用に使用される液体ポンプは、溶接トーチ7を起動して開始される。例示の実施形態に示されるように、冷却装置15は、電源2を置く前にカート12に配置されている。溶接設備の個々の構成要素、すなわち、電源2、ワイヤ送給ユニット8、および冷却装置15は、それらが個々の突起および/または窪みを有するように形成されている。そのため、それらを積み重ねて頂部に安全に配置することができる。
【0030】
溶接装置1、特に電源2は、溶接装置1の様々な溶接パラメーター全て、動作モード、溶接プログラムをセットし、かつ/または読み出し、表示する入力および/または出力装置18をさらに備えている。入力および/または出力装置18によってセットされた溶接パラメーター、動作モード、または溶接プログラムは、制御ユニット4に通信されている。制御ユニット4は、溶接設備の個々の構成要素および/または溶接装置1を作動させ、かつ/または、規制または制御する対応のセットポイントを規定する。ここで、溶接トーチ7が溶接トーチの入力および/または出力装置18を備える場合、適切な溶接トーチ7を用いると、溶接トーチ7を介して手順のセッティングを実行することも可能である。この場合、溶接トーチ7は、望ましくは、溶接装置1、特に電源2またはワイヤ送給ユニット8に、データバス、特にシリアルデータバスを介して接続されている。溶接プロセスを開始するために、溶接トーチ7は、通常、図示されていない開始スイッチを備えている。そのため、開始スイッチを作動させることによってアーク13を点火することができる。アーク13の高い熱放射からユーザーを保護するために、溶接トーチ7に熱保護シールド20を設けてもよい。
【0031】
さらに、示された例示の実施形態では、溶接トーチ7は、溶接装置1および/または溶接設備にホースパック21を介して連結されている。該ホースパック21は、抗座屈手段22によって溶接トーチ7に取り付けられている。ホースパック21では、供給ラインおよび/または溶接ワイヤ9のライン、ガス5のライン、冷却回路のライン、データ送信のライン等のような個々のラインは、溶接装置1から溶接トーチ7に配置されている。一方、戻りのリード線は、望ましくは、電源2に単独で接続されている。ホースパック21は、図示しないカップリング装置によって電源2またはワイヤ送給ユニット8に連結されている。一方、ホースパック21内部の個々のラインは、抗座屈手段によって、溶接トーチ7に、または溶接トーチ7内部に取り付けられている。ホースパック21に対する適切な張力緩和を保証するために、ホースパック21を電源2やワイヤ送給ユニット8のハウジング11に図示しない張力緩和装置を介して連結してもよい。
【0032】
一般に、異なる溶接操作、および/またはTIG装置、MIG/MAG装置、またはプラズマ装置のような溶接装置1に対して、上述した全ての構成要素を使用し、かつ/または組み込まなければならないわけではないことに留意すべきである。例えば、溶接トーチ7を空冷の溶接トーチ7のように形成することも考えられる。そうすると、例えば、冷却装置15を省いてもよい。結果として、溶接装置1は、少なくとも電源2、ワイヤ送給ユニット8、および冷却装置15によって形成されていると言える。これらも、共通ハウジング11に配置することができる。さらに、ワイヤ送給ユニット8の引き込み保護物23またはガス貯蔵器6等のホルダー25上の任意のキャリア24のような追加的な部品および/または構成要素を配置し、かつ/または含めることは可能である。交流(AC)溶接と呼ばれる操作用に設計された溶接装置1は、インバータモジュール37をさらに備えている。これにより、溶接電流Iの極性を変更できる。インバータモジュール37は、ハウジング11に一体化してもよいし、インバータモジュール37自身のハウジングを有してもよい。この場合、インバータモジュールのハウジングは、望ましくは、冷却装置15とハウジング11の間に配置されている。
【0033】
したがって、前記溶接装置1は、異なる溶接プロセスを実行するように設計されている。このことは、例えば、正極性を有する溶接プロセスおよび負極性を有する溶接プロセスが周期的に交互に入れ替わる方法で、各溶接プロセスの少なくとも1サイクルが実行され、少なくとも2つの溶接プロセスを溶接操作中に組み合わせてもよいことを意味する。この場合、溶接プロセスの変更は、短絡で達成される。
【0034】
本発明によれば、溶接ワイヤ9は溶融池にターゲットされ、溶接ワイヤ9の先端が変更段階30の間に適合され、パルス溶接プロセス26の少なくとも1つのパラメーターが開始値から最終値に変更され、かつ/または開始段階31が溶接プロセスの前に実行されるということが提供される。このようにして、薄い金属シートに対する低い熱入力および高い溶着速度を同時に達成する要件を満たすことができる。このため、溶接プロセスの変更は、溶接ワイヤ9の前進および後退する動きにリンクされる。
【0035】
本発明は、図2〜9を参照して、以下で説明される。
【0036】
概要を説明するために、本発明または少なくとも個々の発明の一部分を適用した2つのプロセスの異なるものが図2および3に示されている。図2は、パルス溶接プロセス26またはスプレーアーク溶接プロセスと負のCMTプロセス27(短絡溶接プロセス)とを組み合わせたものを示す。一方、図3は、正のCMTプロセス28(短絡溶接プロセス)と負のCMTプロセス27、すなわち2つの短絡溶接プロセスを組み合わせたものを示す。基本的に、パルス溶接プロセス26および正のCMTプロセス28は、正極性を有している。一方、負のCMTプロセス27は、溶接電流Iの負極性を示す。それぞれの極性変更において、溶接ワイヤ9の極性は変更される。そのプロセスでは、正の極性は、ワークピース14の表面に作用するアーク13の追加の洗浄効果とともに、ワークピース14への熱入力に関与している。さらに、ピンチ(pinch)力として知られる力が生じ、例えばパルス溶接プロセス26の溶滴の離脱を引き起こす。反対に、負の極性は、熱入力に関連した溶着速度の程度に関与している。結果として、実質的に、フローラインが低密度であるために溶滴を自動的に引き離すピンチ力が生じないので、溶接ワイヤ9の先端での溶滴のサイズを大幅に増加させることができる。
【0037】
したがって、図2によれば、パルス溶接プロセス26および負のCMTプロセス27は、望ましくは、図示された溶接電流Iおよび溶接ワイヤ9の移動速度vdの経過の一部を有して周期的に交互に入れ替わる。したがって、溶接プロセスおよび極性は、短絡では常に一緒に変更している。十分に高いプロセスの安定性および必要とされる熱入力によってこれを達成するために、変更は、極性逆転処置29および変更段階30によってなされる。これに対する特別な理由は、パルスから短絡への溶接プロセスと極性の両方が変更されていることである。極性逆転処置29では、溶接ワイヤ9は、望ましくは、溶融池にターゲットされる一方で、変更段階30では、溶接ワイヤ9の先端が適合されている。この場合、パルス溶接プロセス26のパラメーターも開始値から最終値に変更してもよい。そして、開始段階31を溶接プロセスの前に実行してもよい。
【0038】
図3によれば、正のCMTプロセス28および負のCMTプロセス27は、望ましくは、図示された溶接電流Iおよび溶接ワイヤ9の移動速度vdの経過の一部分を有して周期的に交互に入れ替わる。再び、溶接プロセスおよび極性の両方が変更される。しかしながら、ここでは、変更が反対の極性を有する2つの短絡溶接プロセスの間で生じるので、変更段階30は必要とされていない。上述したように、溶接ワイヤ9は、望ましくは、極性逆転処置29で溶融池にターゲットされ、かつ/または溶接ワイヤ9の移動は停止される。この場合、開始段階31も溶接プロセスの前に実行してもよい。
【0039】
基本的に、図2および3に対して必要とされるセッティングは溶接装置1に記憶されていると言える。このことは、もし、溶接者がいわゆる特徴的なカーブを選択し、該特徴的なカーブにワーキングポイントを置くならば、本発明にかかる方法は、自動的に実行される。もちろん、溶接者が、アプリケーションに適合する個々の溶接プロセスのサイクル数を調整することもできる。そのため、必要とされる熱入力を柔軟な方法でセットすることができる。ダイアグラムによれば、溶接ワイヤ9の移動速度vdの方向は、溶接ワイヤ9を後方に、すなわちワークピース14から離れる方向に移動させることによって、短絡中に変更される。
【0040】
本発明の個々の部分は、以下で詳細に説明する。個々の溶接プロセスは、それらが先行技術から知られているので、詳細に説明しない。
【0041】
図4aおよび4bは、極性逆転処置29すなわち極性の変更がどのように実行されるかについて詳細に示す。時間t1の点に至るまで、正のCMTプロセス28またはパルス溶接プロセス26のような先行技術から知られる正極性を有する溶接プロセスが実行され、時間t1の点で溶接ワイヤ9とワークピース14の間に短絡が検出される。本発明によれば、時間t1の点からずっと、溶接ワイヤ9は、(例えば、約1ミリ秒までの範囲の)規定された継続期間32の間さらに移動するだろう。そのため、溶接ワイヤ9は、溶融池の中により深く沈む。これは、例えば約20m/分から40m/分の範囲の移動速度vdでなされ、溶滴が付着した溶接ワイヤ9の先端が、規定された長さまで溶融池の中に沈むことを達成する。この間、溶融池の下方のワークピース14の材料は、つっかえつっかえ進むことを回避しプロセスの安定性を保証するために接触されない。結果的に、この継続期間32は、溶接ワイヤ9の送給機のモータによって引き起こされる遅延を含む。それゆえに、継続期間32内での水平方向の前進が、前記さらなる移動に対応する一方で、降下は、遅延の移動速度vdに対応する。このことは、溶接ワイヤ9の移動が時間t2の点で、すなわち継続期間32が終了した後に停止されることを保証する。しかしながら、このことは、極性逆転処置29のための短絡が安全に提供されていることも意味する。極性逆転処置29では、溶接電流Iの極性を、それ相応に変更しなければならない。示されるように、極性は、正の極性から負のCMTプロセス27のような負の極性に逆転される。この電流変更の速度は、溶接電流回路の変更可能な長さから生じるインダクタンスによって影響される。それゆえに、極性逆転処置29の継続期間は変わる。最初に、時間t1の点と時間t3の点の間で、溶接電流Iは短絡で閾値33に下げられる。それに応じて、極性の変更がインバータモジュール37のハードウェアによって達成することができるように、この(例えば約30アンペアから170アンペアまでの範囲の)閾値33は規定されている。その結果として、もし、溶接電流Iが時間t1の点で閾値33よりも上であれば、溶接電流Iを、時間t3の点で見られるように、閾値33に下げなければならない。この低下のための継続期間は、溶接電流回路のインダクタンスに依存している。実質的に、時間t3の点での極性の変更は、インバータモジュール37によって達成される。極性を変更した後、電流Iは、時間t3の点と時間t4の点の間で溶接電流回路のインダクタンスに依存して閾値34に上昇する。したがって、図4aに記載の溶接ワイヤ9の移動速度vdは、短絡が完全なまま残るように時間t3の点と時間t4の点の間で停止したままである。この(例えば約120アンペアの範囲の)閾値34は、溶接ワイヤ9の先端が適切に予熱され、短絡の切断が開始されるように、特徴的なカーブに依存して規定される。このことは、主に、次の溶接プロセスの実行領域およびワークピース14の材料に依存する。その結果として、図4aによれば、閾値34の到達は、短絡の切断が溶接ワイヤ9の逆方向の移動によって開始されるまで待たれる。その後、次の溶接プロセスは、短絡の切断によって開始される。このことは、時間t4の点の場合と同様に、極性逆転処置29の前、すなわち、極性が変更され、かつ/または電流変更が実行される前に、短絡の切断が開始されてはならないことを意味する。このようにして、短絡は、時間t1の点から時間t4の点までの極性逆転処置29の間保証されている。図4aによれば、これは、時間t1の点と時間t2の点の間で、溶接ワイヤ9を溶融池の中にターゲットすること、および時間t2の点から時間t4の点まで溶接ワイヤ9の移動を停止させることによって達成される。時間t4の点では、短絡の切断は、溶接ワイヤ9を後方に、すなわちワークピース14から離れる方向に移動させることによってそれ相応に開始され、その後対応のアーク13を点火する。その結果として、極性逆転処置29の後に予定された次の溶接プロセスを実行することができる。
【0042】
図4aによれば、溶接ワイヤ9の移動は、時間t2の点から時間t4の点まで停止する。類似の方法では、図4bによれば、時間t2の点と時間t4の点が一致するとき、停止は必要とされない。この場合、溶接ワイヤ9の移動方向はより長期間の間、溶接ワイヤ9を停止させることなく逆転される。しかしながら、溶接電流が閾値33および閾値34に到達し、かつ/または閾値33および閾値34より低いかどうかについて、チェックが時間t2の点で実行されることにも留意されたい。この場合、移動方向は、実質的に時間t2の点で逆転される(図4b)。そうでない場合、溶接ワイヤ9の移動は停止され、装置は、閾値33および閾値34に到達するのを待つ(図4a)。このことは、溶接ワイヤ9が閾値34に依存して停止されることを述べることによってまとめられる。すなわち、閾値34に到達するか、または溶接ワイヤ9の移動方向を逆転するかのいずれかまでである。
【0043】
本発明、図4aおよび4bによれば、溶接ワイヤ9は、時間t1の点と時間t2の点の間で溶融池の中に沈む。その結果として、これらの時点間の期間および移動速度vdは溶接ワイヤがどのぐらい深く沈むかを決定する。沈む深さは、主に、材料、ワークピース14の材料の厚さ、必要とされ望まれた溶接ビード、溶融池の粘性、極性および極性逆転処置29の前に実行された溶接プロセスの極性および実行領域(特に溶融池の振動は、これに依存する)に依存している。このようにして、沈む深さは、特徴的なカーブと同期し、アプリケーションに適合するようになっている。ここで、極性は、溶接ワイヤ9の先端での溶滴のサイズに影響する。沈む間、この溶滴は表面張力によって引き離され、理想的な極性逆転処置29を実行するために、短絡を切断してはならない。その結果として、沈む深さは、極性逆転処置29の前に実施される溶接プロセスに実質的に適合される。
【0044】
しかしながら、極性逆転処置29は、溶接プロセスのみが短絡で変更される、すなわち極性が同じままであるときを含めてもよい。この場合、溶接プロセスを変更するときに信頼性のある短絡が保証されるように、溶接ワイヤ9は、実質的に溶融池により深く沈み、かつ/または溶接ワイヤ9の移動は停止される。例えば、パルス溶接プロセス26から正のCMTプロセス28に変更するときにこれを使用してもよい。もちろん、この極性逆転処置29も、逆方向で実行してもよい。
【0045】
図2および5〜7を参照して、変更段階30およびパルス溶接26のパラメーターの開始値から最終値への変更を詳細に説明する。この接続では、変更段階30は、実質的に、パルス溶接プロセス26に負のCMTプロセス27または正のCMTプロセス28のような短絡溶接プロセスを組み合わせるために使用される。変更段階30は、極性逆転処置29において、溶接ワイヤ9が溶融池にターゲットされ、かつ/または、該当する場合、変更段階30で溶接ワイヤ9の先端を調整するために溶接ワイヤ9の移動が停止されるように、それ相応に極性逆転処置29に連結されている。溶接ワイヤ9の移動をどのように停止するか、および溶接ワイヤ9の溶融池の中への沈降についての説明は、図4aおよび4bの記載に見つけることができる。パルスと短絡の間の溶接プロセスおよび極性の両方が変更されているので、溶接ワイヤ9の先端の適合は必要とされる。特に、溶接ワイヤ9の先端の溶滴、熱入力、および/またはアーク長は、調節されている。溶接プロセスは、通常、周期的に切り替えられるので、実施される溶接プロセスおよび次の溶接プロセスに依存して必要とされる適合を実行するのに2つの変更段階30が必要とされる。このことは、実質的に、変更段階30がパルス溶接プロセス26を短絡溶接プロセスから切り離すことも意味する。極性逆転処置の後、短絡溶接プロセスからパルス溶接プロセス26への第1変更段階30aが必要とされる。この第1変更段階30aは、実質的に極性逆転処置29の時間t4の点で、すなわちアーク13とともに開始する。極性逆転処置29の前には、パルス溶接プロセス26から短絡溶接プロセスへの第2変更段階30bが必要とされる。第2変更段階30bの終わりに、短絡が、極性逆転処置29とともに適切に開始される。
【0046】
図2によれば、このことは、負のCMTプロセス27からパルス溶接プロセス26への変更が第1変更段階30aで生じることを意味する。負のCMTプロセス27では、アーク13は、極めて安定した方法でワイヤ先端を包囲し、ワイヤ先端を高温に加熱する。もし、短絡でパルス溶接プロセス26への変更が変更段階30なしに生じるならば、初めに、必要とされるよりはるかに多いエネルギーが溶滴の短絡のない離脱に利用可能である。これにより、溶接スパッタが溶滴とともに引き離される。これを回避するために、第1変更段階30aは、極性逆転処置29の後に続いている。実質的に、それは、負のCMTプロセス27で高温に加熱されたワイヤ先端から溶滴を形成する電流パルスを有している。加えて、この変更段階30aでは、溶接ワイヤ9は、引き戻され、かつ/またはパルス溶接プロセス26用のアーク長にセットするのに十分に遠い溶融池の外に配置されている。この適合のために、変更段階30aは、例えば約1ミリ秒から15ミリ秒の範囲の適切な継続期間を必要とする。
【0047】
したがって、パルス電流のアンペア数は、形成された溶滴が必要とされるサイズを有するように、この継続期間に適合されている。ここでのアンペア数は、例えば、約20アンペアから170アンペアの範囲であり、パルス溶接プロセス26のサイクルが約500ヘルツ以下の周波数で繰り返され、かつ、パルスのアンペア数が約200アンペアから300アンペアまでの範囲である。溶滴は、実質的に、第1変更段階30aの後、直ちに続くパルス溶接プロセス26のパルスによって引き離される。その結果として、第1変更段階30aは、実質的に、パルス溶接プロセス26の第1サイクルの基礎電流段階に置き換わる。第1変更段階30aの継続期間が温度に適合させるのに十分でないならば、該当する場合、パルス溶接プロセス26の少なくとも1つのパラメーターを、低い開始値からより高い最終値に変更してもよい。このことは、変更段階30aに続くサイクルにおいて、対応する最終値に到達するまで、開始値で開始するパルスのパルス幅の段階的な調整(図2)、パルスのアンペア数および/またはグラウンド電流(図5)、パルスの周波数(図6)、および/または、溶接ワイヤ9の移動速度vdの連続的かつ/または段階的な適合(図7)は影響されるだろう。これによれば、熱入力は、徐々に増加するだろう。
【0048】
第2変更段階30bでは、パルス溶接プロセス26から負のCMTプロセス27への変更がなされる。パルス溶接プロセス26では、特に、一定のパルスアンペア数およびパルス幅が、パルスの周波数に依存したピンチ効果を介して最適な溶滴の離脱を達成するために必要とされる。これに対する重要な要因は、とりわけ、溶接ワイヤ9の移動速度vdの調整、溶接ワイヤ9の直径、シールドガス5、および/またはアーク長である。したがって、このことは、パルス溶接プロセス26に対して理想的なワイヤ先端の一定した温度につながる。もし、負のCMTプロセス27への変更が、規定されたサイクル数、および/または刻み幅のパルス溶接プロセス26の後に起こるならば、この溶接プロセスに適合された温度が必要とされる。この温度は、パルス溶接プロセス26の間よりも適切に低く、極性逆転処置29の前に起こる第2変更段階30bでセットされる。この第2変更段階30bでは、溶融池で短絡によって引き離された溶滴が電流パルスとともに形成される。短絡を達成するために、溶接ワイヤ9の移動速度vdは、例えば20メートル/分以下の範囲で第2変更段階30bでそれ相応に変更される。示されたように、この速度は、例えば変更、すなわち実施されたパルス溶接プロセス26の実行領域に依存した増加または減少によって増加してもよい。それゆえに、第2変更段階30bは、短絡を生じさせて終了することができる。そして、図4aおよび4bに記載の極性逆転処置29を実行することができる。さらに、第2変更段階30bは、負のCMTプロセス27用の溶接ワイヤ9の温度、移動速度等に適合させるための一定量の時間を必要とする。
【0049】
基本的に、溶接操作は、極性逆転処置29および/または変更段階30が常に短絡を有して繋げられるので、溶接プロセスを変更するときに極性逆転処置29および/または変更段階30によって阻止されない。その結果として、平均すると、常に高い溶着速度を有する一定の熱入力が溶接操作中に生じる。
【0050】
実質的に、説明したことは、正のCMTプロセス28とパルス溶接プロセス26の間の周期的な変更にも適用する。主な違いは、第1変更段階30aの後、すなわち正のCMTプロセス28からパルス溶接プロセス26に変更する間に、パルス溶接プロセスの少なくとも1つのパラメーターが高い開始値からより低い最終値に変更される点である。したがって、熱入力は減少する。
【0051】
本発明によれば、溶接ワイヤ9の低い熱入力および高い溶着速度が、溶接プロセスの間に同時に達成される。これに対する必須条件は、アルミニウムやアルミニウム合金のような材料を実質的に予熱する予熱ゾーンである。溶接プロセスが以前に実施されておらず、それ故に、材料および/またはワークピース14への熱入力が生じていないので、これは、溶接プロセスの開始時に最も重要である。溶接プロセスの初めの熱入力は、主に材料および埋められるギャップに依存している。そのため、調整可能な熱入力が必要とされる。本発明によれば、これは、溶接プロセスの前の開始段階31で熱入力を規制することによって解決される。このため、サイクル数は、柔軟な方法で調整できる。ここでのサイクルは、望ましくは、溶接プロセス中にもそれ相応に組み合わされるパルス溶接プロセス26、負のCMTプロセス27、および/または正のCMTプロセス28のサイクルに対応する。それゆえに、正および負のサイクルの割合をセットすることによって、熱入力を開始段階31で規制することができる。しかしながら、基本的に、サイクルの割合は、溶接プロセスのサイクルの割合から独立している。熱入力の規制に関して、1サイクルの正の極性(正のCMTプロセス28および/またはパルス溶接プロセス26)は、1サイクルの負の極性(負のCMTプロセス27)よりも多くの熱を加える。その結果として、必要とされる加熱ゾーンは、最適な溶接プロセスを実施できるように、溶接プロセスの初めにも存在している。
【0052】
開始段階31の例は、図8および9に示されている。ここでは、最初に、アーク13が点火段階35で点火され、その後、熱がホットスタート段階36と呼ばれる段階でスプレーアークによって、ワークピースに素早く加えられる一方で、熱入力は、後に続く開始段階31で溶接プロセスに適合される点を見ることができる。それゆえに、ワークピース14の材料が溶融してなくならずに、理想的な溶接結果が達成されるように、開始段階31までに制御された方法で熱入力を増加させる。開始段階31は、規定された数の正のサイクル(図8)または交互に入れ替わる正および負のサイクル(図9)を含んでいてもよい。望ましくは、開始段階31は、溶接プロセスの第1サイクルに対して反対の極性を有するサイクルで終了すべきである。このようにして、ほぼ一定の熱入力が保証される。開始段階31の規定は、例えば溶接者によって溶接装置1の制御パネルでセットされる。同様に、ユーザーは、ホットスタート段階36を実行するかどうかを制御パネルで選択することができる。したがって、ホットスタート段階36は、溶接されるワークピース14のために必要とされるときのみ含まれる。開始段階31で規定された数のサイクルが実行された後、溶接プロセスが対応する方法で実施される。
【0053】
溶接操作を実行するために、ユーザーは、望ましくは、本発明にかかる方法が記憶された特徴的なカーブを選択する。それに応じて、特徴的なカーブの全てのパラメーターは、アプリケーションおよびその実行領域に適合するようになっている。しかしながら、もちろん、ユーザーが、本発明にかかる方法を手動でセットするか、または関連の記憶されたパラメーターを変更することも可能である。同様の方法で、ユーザーがサイクル数をセットすることも可能である。例えば、開始段階31に10サイクルを使用してもよいし、溶接プロセスに60サイクルを使用してもよい。アプリケーションによれば、特に、必要とされる熱入力および溶着速度が達成されるように、適切な溶接プロセスが自動的に選択される。
【符号の説明】
【0054】
1 溶接装置
2 電源
3 電力素子
4 制御ユニット
5 ガス
6 ガス貯蔵器
7 溶接トーチ
8 ワイヤ送給ユニット
9 溶接ワイヤ
10 供給ロール
11 ハウジング
12 カート
13 アーク
14 ワークピース
15 冷却装置
16 水タンク
17 レベルインジケータ
18 入力および/または出力装置
20 熱保護シールド
21 ホースパック
22 抗座屈手段
23 引き込み保護物
24 キャリア
25 ホルダー
26 パルス溶接プロセス
27 負のCMTプロセス
28 正のCMTプロセス
29 極性逆転処置
30 変更段階
30a 第1変更段階
30b 第2変更段階
31 開始段階
32 継続期間
33 閾値
34 閾値
35 点火段階
36 ホットスタート段階
37 インバータモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接操作中に溶接プロセスを変更する方法であって、溶融する溶接ワイヤ(9)とワークピース(14)との間の短絡中に、実施された溶接プロセスから次の溶接プロセスまで前記変更が実行される方法において、
実施される前記溶接プロセスの短絡を検出して、前記溶接ワイヤ(9)が前記次の溶接プロセスの溶接電流(I)の閾値(34)に依存して移動方向に規定された継続期間(32)の間さらに移動した後停止し、
前記溶接電流(I)が前記閾値(34)に到達すると、前記次の溶接プロセスを開始するために、前記溶接ワイヤ(9)が反対方向に移動することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記変更は、実施される前記溶接プロセスの前記溶接電流(I)が閾値(33)に到達して実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更は反対の極性を有する2つの溶接プロセスの間で実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶接電流(I)の前記閾値(34)および前記継続期間(32)は、特徴的なカーブに依存して前記溶接プロセスに対して記憶されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶接操作中に溶接プロセスを変更する方法であって、溶融する溶接ワイヤ(9)とワークピース(14)との間の短絡中に実施された溶接プロセスから次の溶接プロセスまで前記変更が実行される方法において、
前記変更は短絡溶接プロセスおよびパルス溶接プロセス(26)の間でなされ、
前記溶接ワイヤ(9)の先端は、変更段階(30)で実施された前記溶接プロセスに依存して前記次の溶接プロセスに適合されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記変更段階(30)において、前記溶接ワイヤ(9)は前記次の溶接プロセスに依存して配置されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変更段階(30)は極性逆転処置(29)と組み合わされることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性逆転処置(29)の後、前記変更段階(30)において、溶滴が前記溶接ワイヤ(9)の先端で形成され、前記適合の直後の前記パルス溶接プロセス(26)のパルスによって引き離されることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記パルス溶接プロセス(26)への変更後に前記パルス溶接プロセス(26)の少なくとも1つのパラメーターが開始値から最終値に変更されることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記パルス溶接プロセス(26)のパラメーターとして、溶接電流(I)がパルスを通じて徐々に変更されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パルス溶接プロセス(26)のパラメーターとして、パルス幅がパルスを通じて徐々に変更されることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス溶接プロセス(26)のパラメーターとして、パルス周波数がパルスを通じて徐々に変更されることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記パルス溶接プロセス(26)のワイヤ移動速度(Vd)が、少なくとも1つの範囲でパルスを通じて連続的に変更されることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記極性逆転処置(29)の前の前記変更段階(30)において、前記溶接ワイヤ(9)の送給速度は、前記短絡溶接プロセスのために短絡を作るために変更され、前記溶接電流(I)は溶滴を形成するために適合されることを特徴とする請求項5ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
溶接操作の開始前に、ワークピース(14)への熱入力が少なくとも1つの溶接プロセスの調整可能なサイクル数によって規制され、開始段階(31)が実行されることを特徴とする溶接操作前に熱を入力する方法。
【請求項16】
異なる極性のサイクルが使用されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
異なる溶接プロセスのサイクルが使用されていることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
異なる溶接プロセスのサイクルの間で変更するときに、請求項1に記載の方法が実行されていることを特徴とする請求項15ないし17のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−529991(P2012−529991A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515284(P2012−515284)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000213
【国際公開番号】WO2010/144931
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】