説明

溶接方法

【課題】 本発明は塗装を施した一方の部材に他方の部材を溶接する場合に、溶接強度を低下させないようにすることを保護することを課題とする。
【解決手段】塗装を施した一方の部材1と他方の部材10とを溶接する場合、該一方の部材1の溶接個所6をマスキング材7を被覆した上で塗装を施し、塗装後該マスキング材7を該溶接個所6から除去し、該一方の部材1の溶接個所6に該他方の部材10を溶接する。したがって本発明においては、マスキング材7を取付けたり取りはずす場合の手間が省略出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば鉄製の建物基礎フレームの隅角に鉄柱を溶接する場合に適用される溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄製の建物基礎フレームには腐食防止のために電着塗装が施され、その上で該基礎フレームの隅角に鉄柱を溶接する等して建物躯体フレームを構築する。この際該基礎フレームの隅角には柱取付け突部が形成され、該柱取付け突部に該鉄柱を外側嵌合して溶接が施される。
しかし該基礎フレームの柱取付け突部の溶接部分にも電着塗装が施されると、鉄柱を溶接する場合に該電着塗装の塗膜の悪影響によって溶接強度が低下すると云う不具合が生ずる。
そこで従来は電着塗装に先立って該柱取付け突部の溶接個所に粘着テープ等を巻き付けておいたり、ゴムを材料とする環状のマスキング材を嵌着することによって、この部分に電着塗装が施されることを阻止する対策が施されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしこのような対策では、溶接個所に粘着テープやマスキング材を取付け取りはずす手間が掛かり、大量生産工程ではこのような手間が大きな支障となる、と云う問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、塗装を施した一方の部材1と他方の部材10とを溶接する場合、該一方の部材1の溶接個所6をマスキング材7を被覆した上で塗装を施し、塗装後該マスキング材7を該溶接個所6から除去し、該一方の部材1の溶接個所6に該他方の部材10を溶接する溶接方法を提供するものである。
該マスキング材7は熱可塑性プラスチックの発泡体成形物からなり、塗装後該マスキング材7を加熱収縮することによって該溶接個所から除去することが望ましく、該マスキング材7の少なくとも該一方の部材1の溶接個所接触面には水溶性高分子が塗布されていることが望ましく、更に該マスキング材7の該一方の部材1の少なくとも溶接個所接触面には水溶性高分子とフェノール系樹脂との混合物が塗布されていることが好ましい。
例えば一方の部材1の溶接個所6が嵌合突部であった場合、該マスキング材7は環状であって所定個所には切込み9が設けられていることが好ましい。
また該マスキング材7の該一方の部材1の溶接個所接触面の一部または全部には粘着層11が設けられていることが望ましい。
例えば該塗装は電着塗装である。
本発明が有用に適用される場合は、例えば該一方の部材は建物基礎フレーム1であり、該他方の部材は該基礎フレーム1の隅角に立設される柱10であり、該一方の部材1の溶接個所6とは基礎フレーム1の隅角に立設される柱取付け突部4の柱10との接触面である。
【発明の効果】
【0005】
〔作用〕
一方の部材1の溶接個所6にマスキング材7を被覆した上で塗装を施せば、該溶接個所6に塗装が及ばない。該一方の部材の溶接個所6に他方の部材を溶接する場合には、上記のようなマスキングによって該溶接個所6には塗装による塗膜Cが存在しないので、溶接強度が塗膜Cによって低下するような不具合は回避される。
熱可塑性プラスチック発泡体成形物からなるマスキング材7を使用した場合には塗装後この個所を該マスキング材7の材料である熱可塑性プラスチックの軟化点以上の温度に加熱すれば、該マスキング材7は軟化し急激に収縮して該溶接個所6から離脱する。塗装を施した後は塗装によって形成された塗膜Cは通常加熱キュアーされる。この際の加熱温度は一般にマスキング材7の軟化収縮温度以上に設定されているから、塗膜Cの加熱キュアーと同時にマスキング材7を軟化収縮させ溶接個所から離脱させることが出来る。
該マスキング材の少なくとも該一方の部材の溶接個所接触面には水溶性高分子が塗布されていると、該水溶性高分子の離型作用によって、該マスキング材7を加熱収縮させて該溶接個所6から離脱させることが円滑に行われる。更に該マスキング材の該一方の部材の少なくとも溶接個所6接触面には水溶性高分子とフェノール系樹脂との混合物が塗布されていると、該水溶性高分子の離型作用はフェノール系樹脂によって向上せしめられ、該マスキング材7の加熱収縮離脱がより一層円滑に行われる。
該マスキング材7は環状であって所定個所には切込み9が設けられている場合、該マスキング材7の加熱収縮時に該切込み9から開裂するので該マスキング材7は円滑に収縮離脱する。
また該マスキング材7の該一方の部材1の溶接個所接触面の一部または全部には粘着層11が設けられていると、該マスキング材7が該一方の部材1の溶接個所に確実に固定され、塗装中等にはずれてしまうような不具合が解消される。
【0006】
〔効果〕
本発明では、塗装を施した一方の部材に他方の部材を溶接する場合、該一方の部材の溶接個所には塗膜が存在しないから、溶接強度が塗膜によって低下すると云う不具合が回避され、また該溶接個所へのマスキング材の取付け取りはずしが手間なく行われるから大量生産工程であっても支障をきたさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって以下に詳細に説明する。
図1に示すのは建物の基礎フレーム1であり、該基礎フレーム1は鉄等の金属製であって外周梁部2と該外周梁部2の内側に差渡される複数本の補強梁部3とからなり、四隅角には筒状の柱取付け突部4が取付けられている。
【0008】
図2および図3に示すように該柱取付け突部4は各筒本体5と、該各筒本体5の上部内側に取付けられ該各筒本体5上端から外出している柱嵌合部6とからなり、該柱嵌合部6の上端部6Aは内側に折曲げられている。
【0009】
上記基礎フレーム1の各柱取付け突部4の柱嵌合部6の外周面が柱との溶接個所であり、該柱嵌合部6の外周には角環状のマスキング材7が嵌着される。
【0010】
該マスキング材7はポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックの発泡体の成形物であり、例えば上記熱可塑性プラスチックの発泡性ビーズの予備発泡体を型に充填して加熱膨張せしめるビーズ成形によって製造される。
【0011】
該マスキング材7の内面には水溶性高分子とフェノール系樹脂との混合物の水溶液が塗布され、離型膜8が形成される。
【0012】
上記水溶性高分子としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウム等のポリアクリル酸やポリメタクリル酸の塩類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビスコース、澱粉、変性澱粉、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、ペクチン等が使用され、また上記フェノール系樹脂とは、フェノール、レゾルシノール、アルキルレゾルシノール、オイルシェール分溜物(アルキルレゾルシノール混合物)等のフェノール系化合物の一種または二種以上と、ホルムアルデヒド、あるいはヘキサメチレンジアミン、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド供与体との縮合反応によって製造される熱硬化性樹脂である。
【0013】
上記マスキング材7は一辺に切込み9が設けられている。
【0014】
上記マスキング材7を取付けた基礎フレーム1は電着槽に導入され、電着塗装が施される。上記したように該基礎フレーム1の各柱取付け突部4の柱嵌合部6の外周(溶接個所)はマスキング材7によって保護されているから、上記電着塗装の際上記溶接個所6には塗膜Cが形成されない。
【0015】
電着塗装後は該基礎フレーム1は加熱炉内に導入され、加熱キュアーされ、この際該マスキング材7は軟化収縮し、切込み9部分から開裂して溶接個所6から自然に離脱する。
【0016】
加熱キュアー後は、図4に示すように上記基礎フレーム1の柱取付け突部4の柱嵌合部6には鉄柱10の根端部が外側嵌合され、溶接Wによって該鉄柱10を該柱嵌合部6に固定する。この際、該柱嵌合部6(溶接個所)には電着塗装の塗膜Cが形成されていないから、溶接強度が該塗膜Cによって低下することはない。
【0017】
このようにして該基礎フレーム1の四隅角にはそれぞれ鉄柱10が取付けられるが、離型膜8としては、フェノール系樹脂を使用せず、水溶性高分子のみを使用しても良い。また切込み9は省略してもよい。
【0018】
上記実施例ではマスキング材7の材料として熱可塑性プラスチック発泡体を使用したが、それ以外エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミド、メチルペンテンコポリマー、セルロースアセテート等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂、熱硬化型ポリアミド樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド−トリアジン系熱硬化型芳香族ポリイミド等の熱硬化性合成樹脂等の非発泡成形体を材料としてもよく、また木、紙、セラミック、金属等を材料としてもよい。
【0019】
また図5に示すようにマスキング材7の底面(溶接個所接触面の一部)に粘着層11を設けてもよい。該粘着層11は該マスキング材7の所定個所に粘着剤を塗布したり、あるいは両面テープを貼着することによって設ける。
【0020】
本発明は建物の躯体フレームの構築以外、例えばボスにナットを溶接したり、ボルト穴にボルトを溶接するような場合にも適用される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は部材と部材との溶接強度を手間をかけずに向上させるので、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】基礎フレームの斜視図
【図2】柱取付け突部とマスキング材の斜視図
【図3】マスキング材取付け状態の柱取付け突部の側断面図
【図4】柱溶接状態柱取付け突部の側断面図
【図5】他の実施例のマスキング材取付け状態の柱取付け突部の側断面図
【符号の説明】
【0023】
1 基礎フレーム(一方の部材)
4 柱取付け突部
5 各筒本体
6 柱嵌合部(溶接個所)
7 マスキング材
8 離型膜
9 切込み
10 鉄柱(他方の部材)
11 粘着層
C 塗膜
W 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装を施した一方の部材と他方の部材とを溶接する場合、該一方の部材の溶接個所をマスキング材を被覆した上で塗装を施し、塗装後該マスキング材を該溶接個所から除去し、該一方の部材の溶接個所に該他方の部材を溶接することを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
該マスキング材は熱可塑性プラスチックの発泡体成形物からなり、塗装後該マスキング材を加熱収縮することによって該溶接個所から除去する請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
該マスキング材の少なくとも該一方の部材の溶接個所接触面には水溶性高分子が塗布されている請求項1または2に記載の溶接方法。
【請求項4】
該マスキング材の該一方の部材の少なくとも溶接個所接触面には水溶性高分子とフェノール系樹脂との混合物が塗布されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項5】
該マスキング材は環状であって所定個所には切込みが設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項6】
該マスキング材の該一方の部材の溶接個所接触面の一部または全部には粘着層が設けられている請求項1に記載の溶接方法。
【請求項7】
該塗装は電着塗装である請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項8】
該一方の部材は建物基礎フレームであり、該他方の部材は該基礎フレームの隅角に立設される柱であり、該一方の部材の溶接個所とは基礎フレームの隅角に立設される柱取付け突部の柱接触面である請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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