溶接用鋼板
【課題】溶接後も形状変化がほとんど生じない溶接用鋼板を提供する。
【解決手段】溶接が施される鋼板1の幅方向内部に圧縮の残留応力を付与し、幅方向両端部に引張の残留応力を付与する。ミクロ視的には、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力を付与する。
【解決手段】溶接が施される鋼板1の幅方向内部に圧縮の残留応力を付与し、幅方向両端部に引張の残留応力を付与する。ミクロ視的には、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力を付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、橋梁や船舶等の構造材としては、通常、厚鋼板と呼ばれる鋼板が用いられている。
かかる厚鋼板を製造する際には、熱間圧延機で所定寸法に圧延後、引き続いて、加速冷却装置での水冷による冷却処理を施す。しかしながら、熱間圧延時の温度や水冷開始温度の不均一、さらには、加速冷却装置の水冷ムラに起因する冷却不均一が発生し、それらを原因として冷却後の厚鋼板に残留応力が発生して、曲がりや波打ち等の形状不良になることがあった。
【0003】
残留応力が存在する厚鋼板であると、後加工により多数の条に切断して使用に供するような場合、厚鋼板内に不均一に分布した残留応力が切断によって開放され、条切断された鋼材が曲がってしまう「条曲がり(キャンバ)」という問題が起きていた。
このような「厚鋼板に発生した残留応力」をなくす技術としては、レベラにより、厚鋼板に曲げ歪を与える方法が採用されていた。熱間レベラは形状を矯正する能力は高く、冷間レベラは不均一な残留応力を除去する能力が高いため、矯正する必要のある厚鋼板の状況に応じて、熱間レベラ又は冷間レベラを選択し鋼板矯正を行っていた。
【0004】
一方、レベラ矯正を行った厚鋼板であっても、それらを橋梁や船舶等の溶接用の構造材(溶接用鋼板)として用いた場合には、溶接に伴う材料収縮が当該溶接用鋼板に発生し、その形状が大きく変形することが当業者の間では広く知られていた。
図16には、その変形の状況が示されている。例えば、特許文献1などの技術を採用して製造され鋼板長手方向の残留応力が板幅方向にほぼ0となっている溶接用鋼板を、橋梁や船舶等の構造材として用いることを想定し、その幅方向内部に対し長手方向(図の上下方向)にリブ取り付けの溶接を行うことを考える。
【0005】
その結果、図16(b)に示すように、溶接前には長方形であった溶接用鋼板が、3条の溶接後には、幅方向端部より中央部が長手方向に大きく収縮し、溶接用鋼板の上下辺が凹状に変形する。その理由は、溶接された部分に関しては、溶接時に一旦材料が溶融しその後再度凝固するが、その際に凝固部には材料収縮が発生して縮もうとするからである。
すなわち、条切断後の変形を抑制するために残留応力を略0とした厚鋼板であっても、それを溶接用鋼板として採用した場合、材料収縮に起因する変形が生じることがあり、非常に大きな問題となっていた。
【0006】
従来、このような変形を回避するために、当該変形を見越した寸法取りが行われているが、溶着するリブやフランジの形状により、溶接用鋼板の変形量は様々であって、予測が非常に難しかった。加えて、変形量が予測できたとしても、長方形から大きく変形した溶接用鋼板を互いに水平又は直角に付き合わせて溶接する場合、両鋼板間には大きな隙間(例えば3mm以上)が生じ溶接作業が困難となって、鋼板の切り直しを行う必要性が生じていた。特に、板厚が25mm以下の溶接用鋼板については、溶接に伴う材料収縮が大きく、切り直し加工がほとんどの場合必要とされていた。
【0007】
特許文献1には、上述した溶接時の変形に着目した技術が開示されている。この技術は、熱間レベラにより熱間矯正された厚鋼板の表面の温度分布を温度計により測定し、コンピュータにより厚鋼板の温度分布から残留応力分布等を演算し、この残留応力分布から溶接時の変形量のばらつきを表す所定のパラメータを演算するものとなっている。さらに、ユーザーの溶接条件等に応じてあらかじめ設定されている許容値とパラメータとを比較し、パラメータが許容範囲内にないときは、レベラや熱処理炉を用いて残留応力を低減させるものである。
【特許文献1】特開2001−316757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、溶接したときの変形量のバラツキが一定範囲内となるようにする技術であって、溶接に伴う変形量をゼロ若しくは最小にするためのものとはなっていない。仮に変形量のバラツキを一定範囲内とできたとしても、前述した如く、溶接後の変形が生じた鋼板を互いに付き合わせて溶接する場合、両者間に隙間が生じてしまえば、切り直し等の必要性が生じることは否めない。
【0009】
そこで、上記問題点を鑑み、本発明は、溶接後も矩形形状変化がほとんど生じない技術を明らかとし、その技術を適用した溶接用鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかる溶接用鋼板は、幅方向内部に長手方向を向く溶接が施される溶接用鋼板であって、前記幅方向内部に対しては予め圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に対しては予め引張の残留応力が付与されていることを特徴とする。
本願発明者らは、溶接後も矩形形状変化がほとんど無い溶接用鋼板(以下、鋼板と呼ぶこともある)を開発すべく、実験・研究を行い、溶接に起因する変形は、溶接が施される鋼板の内側に存在する残留応力が関係していると考えるに至った。
【0011】
そこで、まず、鋼板内の残留応力を熱的な方法で低減したり、熱間レベラや冷間レベラを用いてほぼ0まで均一化した鋼板を準備し、図1(b)のような条跡で溶接実験を行った。
その実験により、
(i)ほとんどの鋼板がその端部に比して、中央部の方が長手方向の収縮量が大きくなる、
(ii)鋼板間での収縮量のバラツキは、残留応力を低減した鋼板の方が一様に小さい、
との結果を得た。
【0012】
この結果より、本願発明者らは「溶接に伴う収縮量に対して、残留応力が何らかの関係で影響している」ことを突き止めるに至った。
次に、本願発明者らは、溶接後の鋼板の非変形度合い(溶接前に長方形状であったものが、溶接後もその形状を維持するか否か)という観点から溶接実験を行ってみた。その結果、残留応力を制御していない鋼板の幾つかは、残留応力を略0にコントロールした鋼板より、非変形度合いが優れていた。その好ましい性質を有する鋼板の残留応力分布を調査した結果、図1(a)の如く「鋼板の幅方向両端部に引張応力、幅方向内部に圧縮応力が残存している」であった。
【0013】
この結果に基づき、本発明にかかる溶接用鋼板を、溶接が施される幅方向内部に圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に引張の残留応力が付与されているものとしている。この鋼板は溶接後も形状変化がほとんど生じず矩形形状を維持する。
かかる残留応力分布は、鋼板に対してマクロ視的なものであるため、本願発明者らは、ミクロ視的な観点から検討を重ねた。その結果、リブやフランジ取り付けの溶接を行った際には、ガス炎やアーク放電により溶融した材料部分が冷えて再び凝固する際に収縮し、その収縮に起因する引張応力が発生し、鋼板の長手方向の変形が生じるというメカニズムを明らかにした。
【0014】
そこで、図2に示すように、溶接が施される部位の近傍に、前記引張応力に抗する圧縮の残留応力が予め付与されておれば良いとの考えに達し、このような残留応力分布を有する溶接用鋼板であれば、溶接後は、収縮変形は生じるものの矩形からの変形度が少ない(矩形形状を維持している)ことを明らかにした。
この考えに基づき、本発明にかかる溶接用鋼板を、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与されているものとしている。この鋼板は溶接後も形状変化がほとんど生じない。
【0015】
なお、本願発明者らはコンピュータシミュレーション実験などを通して、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から100mm以上離れた場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向両側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
【0016】
また、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm以内の場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
また、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm〜100mmの場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域及び溶接が施される部位の幅方向端部側であって50mm以上の領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
【0017】
なお好ましくは、前記圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下とするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の溶接用鋼板を用いることで、溶接後の材料収縮を当該鋼板の板幅方向に沿って略均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる溶接用鋼板を、図を基に以下説明する。
図1,図2には、本発明にかかる溶接用鋼板1が示されている。
図1(a)に示すように、溶接用鋼板1(以下、単に鋼板と呼ぶこともある)は、幅方向断面の残留応力を計測した場合、幅方向内部に圧縮の残留応力が付与され、幅方向両側部に引張の残留応力が付与されているものである。その応力分布曲線は下に凸の台形状となっている。
【0020】
この鋼板1で規定される残留応力は、板厚方向の平均値であって、板厚方向の残留応力分布は如何様であってもかまわない。また、引張残留応力の積算値と圧縮残留応力の積算値とはほぼ等しく、鋼板1全体での残留応力値は略ゼロとなっている。
図2(a)には、このような残留応力分布を備える鋼板1の幅方向内部に対し、その長手方向(鋼板圧延方向)にリブ2を溶接した状況を示している。
【0021】
この状況をミクロ視したもの(溶接部W近傍のみを見たもの)が、図2(b)である。この図からわかるように、溶接部Wは、ガス炎やアークにより一旦溶融し、当初からあった圧縮残留応力がキャンセルされる。その後、溶融部Wが凝固するにつれ材料収縮が発生するが、かかる溶接部Wはその周囲の鋼板により拘束されているため、引張の残留応力が残存する部位となり、この材料収縮や残留する引張応力に起因して、鋼板の長手方向の変形が生じる。
【0022】
ところが、溶接部W(収縮部)の幅方向外側には、予め圧縮残留応力が付与されていて、前記材料収縮を起こさせない状況となっている。ゆえに、鋼板1全体としても長手方向の収縮は起こっていない。
[シミュレーション実験および結果]
次に、本実施形態の鋼板1に予め付与される圧縮残留応力の具体的な値について説明する。
【0023】
本願発明人らは、溶接時に変形の少ない鋼板を得るべく、熱弾塑性3次元FEMモデルを用いて、リブ溶接した際の鋼板1の変形挙動を詳細に調べてみた。
図3に示すように、モデル実験で用いた鋼板1のサイズは、厚さ16mm、幅2000mm、長さ500mmである。取り付けたリブ2の形状は、厚さ15mm、幅(高さ)150mm、長さ500mmであり、取り付けリブ数を1〜5本の範囲で可変とした。
【0024】
溶接が施される鋼板1として、(i)通常鋼(残留応力制御無し)、(ii)残留応力低減鋼(幅方向内部の残留応力値が5MPa)、(iii)無残留応力鋼(全く残留応力が存在しない理想的な鋼板)の3つを用いた。
リブ溶接の条件として、溶接による入熱量を1.7kJ/mm(320A×32V×24cm/min.)、溶接脚長(ウィービング幅)を8mmの一般的なものとした。この溶接条件は、鋼板の厚さやリブ2の厚みが変化してもほとんど同じである。
【0025】
この条件の下、リブ2を溶接した際に発生する残留応力の値や、リブ溶接後における溶接部Wの周囲への影響等を確認した。
その結果、
(i) リブ溶接によって、溶接部Wには約300MPaの引張残留応力が発生する
(ii) リブ溶接によって、初期残留応力が変化する領域(熱影響領域)はリブ溶接位置の両側±50mm
(iii) 溶接部Wの材料収縮が周囲に与える影響は圧縮応力の増加であり、リブ本数により、その影響度は変化する(6MPa/本)
以上のことを鑑み、本願発明者らは、溶接後に形状変化の少ない鋼板を得るための条件を、実験条件を変えてシミュレーションを行った。
【0026】
その結果、リブ溶接の位置が鋼板1の端部から100mm以上の内側(幅方向内部側)の場合、リブ溶接の位置を基準として、−100〜−50mm及び50〜100mmの領域(溶接部Wの両側50〜100mmの領域)において、予め圧縮の残留応力が付与され、その値が0MPa〜50MPaの範囲にあればよいことを突き止めるに至った。
ゆえに、図4(a)に示すような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、リブ溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。また、溶接部Wは、一旦溶融状態となり、残留応力がキャンセルされるため、図4(b)に示すように、リブ溶接位置の初期残留応力が−50MPa以下(例えば−70MPa)であっても構わない。しかしながら、リブ2が取り付けられる位置は厳密に定まっている訳ではないので、図4(a)の残留応力分布とすることが好ましい。
【0027】
リブ溶接の位置が、鋼板1の端部から50mm以内の場合、リブ溶接の位置より内部側(幅方向内部側)50〜100mmの領域に、予め圧縮の残留応力が付与されており、その値が0MPa〜50MPaの範囲にあればよいことを突き止めた。ゆえに、図4(c)に示す実線や破線のような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、リブ溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。
【0028】
また、リブ2の取り付け位置が、鋼板1の端部から50mm〜100mmの範囲にある場合、リブ2の取り付け位置より内部側(幅方向内部側)50〜100mmの領域に予め0MPa〜50MPaの範囲の圧縮の残留応力が付与されており、同時に、リブ2の取り付け位置より鋼板外側(幅方向端部側)50mm以上の領域に0MPa〜50MPaの圧縮の残留応力が予め付与されているとよいことを突き止めるに至った。ゆえに、図4(d)に示す実線や破線のような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。
【0029】
なお、溶接部Wは、一旦溶融状態となり、初期の残留応力がキャンセルされるため、図4(d)の実線の如く、リブ溶接位置の初期残留応力が−50MPa以下(例えば−70MPa)であっても構わない。
本願発明者らは、圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下であると非常に良好な結果(溶接の後の変形が少ない)を得ることができることを明らかにしている。
【0030】
以上述べた図4は、変形の少ない鋼板に初期に付与された残留応力分布をミクロ視したものであるが、図5には、初期残留応力分布をマクロ視したもの(鋼板の幅方向全体での分布)を記している。図1(a)も同様に初期残留応力分布をマクロ視したものである。
本願発明にかかる鋼板は、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与され、図5(a)〜図5(c)に示すように、リブ2取り付け位置に対応して前述した条件を満たす圧縮応力(溶接部Wの両側50〜100mmの領域で0MPa〜50MPaの初期残留圧縮応力)が付与されている。加えて、鋼板1全体として残留応力の値が略0であるため、圧縮の残留応力を打ち消す引張の残留応力も付与されている。ゆえに、残留応力分布は幅方向に凸凹状となっている。
【0031】
しかしながら、鋼板1のどの位置にリブ溶接が施されるかは、本発明にかかる鋼板1を製造する時点では厳密にはわからないことが多い。これは、ユーザーで鋼板1のトリミング切断を実施する場合が大多数であり、工場出荷ままをそのまま部材として使用するケースは少ない等の事情によるためである。したがって、リブ2取り付け位置に対応して前述した条件を満たす圧縮応力が付与されていると共に、図1(a)のように、長手方向を向く溶接が施される幅方向内部に対しては圧縮の残留応力、幅方向両端部に対しては引張の残留応力となっている応力分布を備える鋼板1であることが非常に好ましい。なお、鋼板1の幅方向内部とは、リブ溶接が行われる部位のことであり、前述の如く鋼板1の端部から100mm以上の内側であってもよいが、鋼板1の端部から200mm以上の内側としても何ら問題はない。
【0032】
[残留応力測定の方法]
なお、鋼板1の残留応力を計測するにあたり、その測定方法は数々採用することが可能である。例えば、(i)対象とする鋼板に穴を穿ち、その部位に直接歪ゲージを貼り付け、この歪ゲージにより残留応力値を測定する方法(穿孔法)、(ii)熱間矯正が完了した時点における鋼板の表面温度分布と、冷間レベラによる押し込み量等とを基に、残留応力の板厚方向の平均値を求める方法などがある。
本実施形態では、穿孔法を用いて初期の残留応力を計測するようにしている。具体的には、対象鋼板の幅方向両端部から100mmピッチで分割試験片(条片)を考え、当該分割試験片の中心線上且つ長手方向の端部から、「鋼板を矯正した冷間レベラのロール中心間距離+100mm」の位置に歪ゲージを貼り付けるようにしている。
[実験例]
図6〜図10には、前述した条件を満たす残留応力分布が付与された鋼板1(本発明鋼1と呼ぶこともある)に対し、その長手方向に5条のリブ2を溶接で取りつけ、その時の板長手方向の矩形変形度δを求めた実験結果が示されている。なお、図6〜図10中の◆は穿孔法用いて実測した残留応力値であり、実線は鋼板1の温度分布や矯正条件を考慮して算出した計算残留応力値を示す。
【0033】
本発明鋼1は、各図(d)のようであって、幅方向両端部から100mm以上内側の残留応力値が、0MPa〜ー50MPaとなっている。比較例として、従来鋼(通常鋼であって残留応力の制御無し、各図(a))と、残留応力低減鋼(各図(b))と、通常矯正鋼(従来鋼をレベラー等で矯正した鋼、各図(c))にリブ溶接を施している。
リブ2を溶接した鋼板1は5種類あり、その板厚は12,16,22,28,34mmであって、幅は2000mm、長さ9000mmである。取り付けたリブ2の形状はシミュレーション実験と同様で、厚さ15mm、幅(高さ)150mm、長さ9000mmであった。
【0034】
鋼板1の矩形変形度δは、例えば、図1(b)の鋼板1において、上下(圧延方向)どちらか一方の縁部の収縮量を左右(幅方向)どちらかの一方の端面を基準として測定し、長さ10m当りの値に換算したものとする。本実験例では、矩形変形度δの上限値を1.2mmとする。なぜならば、溶接が可能な鋼板ギャップは約3mm(鋼板一枚あたりでは約1.5mm)ということが現場の実績より明らかとなっているからである。
【0035】
図6〜図10の結果からわかるように、全ての板厚において、本発明鋼1は、矩形変形度δが1.2mm以下となっていることがわかる。
幅方向中心部と両端部に圧縮応力が残存し、前記中心部と両端部との間の領域に引張応力が残存する従来鋼では、全ての板厚において1.5mm以上の矩形変形度δが生じ、溶接用としては不適切であることが明らかとなった。
【0036】
板幅方向において50MPa以下の残留引張応力が存在する残留応力低減鋼や通常矯正鋼では、矩形変形度δが1mm〜3mmとなり長手方向の収縮量が大きく、溶接用としては不適切である。
また、従来鋼等においては、幅方向内部の収縮量が両端部に比して非常に大きいものとなっている。一方、本発明鋼1では、幅方向での矩形変形度δは略同じ値であって矩形形状を維持しているため、当該本発明鋼1を付き合わせて溶接を行う場合に、付き合わせた鋼板1,1間の隙間が幅方向の位置によって異なるといった不都合が生じにくく、溶接が非常に行いやすい。
【0037】
本願発明者らは、以上の実験に加え、様々な板厚の本発明鋼1や、残留応力の分布形状は略同一であるものの応力値が異なる本発明鋼1に対して、長手方向に5条のリブ2を溶接で取りつけ矩形変形度δを求めた。その結果を、図11,図12に示している。
図11からわかるように、実用上問題ない矩形変形度δ(<1.2mm)となるためには、鋼板1の幅方向内部に付与された圧縮の残留応力が0MPa〜70MPa、好ましくは0MPa〜50MPaであるとよい。かかる点はコンピュータシミュレーションの結果と一致するものである。
【0038】
図12は、溶接実験の複数の結果を、平均残留応力が(i)−40〜−20MPa、(ii)−20〜0MPa、(iii)0〜20MPa、(iv)20〜40MPaの4種類に区分けして、その板厚と矩形変形度δとの関係を示した図である。この図から明らかなように、本発明鋼1に属する鋼板(幅方向内部の残留応力値が−50MPa〜0MPa、すなわち(i),(ii))であって板厚10mm以上であれば、確実に矩形変形度δが1.2mm以下となり、溶接に適する鋼板となる。
【0039】
加えて、幅方向内部の残留応力値が0〜20MPaであっても、板厚が25mm以上であったり、幅方向内部の残留応力値が20〜40MPaであっても、板厚が35mm以上であれば、確実に矩形変形度δが1.2mm以下となり、溶接に適する鋼板となることがわかった。
図13,図14は、本実施例の鋼板1、従来鋼、残留応力低減鋼と、通常矯正鋼の各々に2,3,5,7条(本)のリブ2を溶接で取りつけ、その時の板長手方向の矩形変形度δを求めた結果が示されている。
溶接で取り付けるリブ2の条数が増えるほど、全ての鋼板で矩形変形度δが増加しているが、本発明鋼1はその増加度合いが小さく、リブ2が7条以内であれば矩形変形度δが1.2mmを越えることはない。
【0040】
[鋼板の製造設備]
図15には、本発明にかかる溶接用鋼板1(厚鋼板)の圧延装置3の概略が示されている。この圧延装置3の上流側にはスラブ4を加熱する加熱炉5が備えられ、加熱炉5の下流側には一対のワークロール6,6と一対のバックアップロール7,7とを備える粗圧延機8が備えられている。さらに、粗圧延機8の下流側には、一対のワークロール9,9と一対のバックアップロール10,10とを有する仕上げ圧延機11が備えられている。
【0041】
仕上げ圧延機11の下流側には、仕上げ圧延機11で圧延が終了した鋼板1を冷却する加速冷却装置12(冷却装置)が設けられている。加速冷却装置12は、鋼板1に冷却水を吹き付けることで鋼板1を強制的に冷却し、所定の板温度を実現する。
加速冷却装置12の出側近傍には、放射温度計やサーモビュアなどの出側板温度計13が設置されており、鋼板表面の温度分布を計測可能となっている。これにより、冷却直後の鋼板1の表面温度分布を知ることができる。表面温度分布と鋼板1内の残留応力分布とは、所定の関係を有していることが過去の実績より明らかとなっているため、この計測結果より、鋼板1内の残留応力分布を推定できる。
【0042】
加速冷却装置12の下流側には、熱間レベラ14が設けられている。この熱間レベラ14は、上下に千鳥に配置された複数のレベリングロール15,15,・・・を備えている。
加えて、本圧延ラインとはオフラインの位置に、多機能レベラ16が設けられている。この多機能レベラ16は、上下に千鳥に配置された複数のレベリングロール17,17,・・・を備える構成であって、各レベリングロール17には、当該レベリングロール17をバックアップするバックアップロール18が配備されている。このバックアップロール18は、分割バックアップロール(図示せず)が軸心方向に複数(例えば3〜5つ)連なることで構成されており、圧下調整装置(図示せず)により、各分割バックアップロールを独立して圧下可能となっている。ゆえに、レベリングロール17の一部分のみを鋼板1側に押しつけ、鋼板1の一部形状を修正したり、鋼板1に幅方向の残留応力を付与したりできる。
【0043】
以上述べた圧延装置3を用いて、本発明に係る溶接用鋼板1を製造する手順を述べる。
まず、加熱炉5により、所定の温度(1200℃程度)に加熱されたスラブ4は、粗圧延機8を経て仕上げ圧延機11へと導入され、予め設定されたパススケジュールに則ってリバース圧延される。仕上げ圧延後の鋼板1は加速冷却装置12に導入され、例えば、冷却速度一定の条件下のもと、目標板温度まで冷却される。
【0044】
冷却された鋼板1は、出側板温度計13により表面温度を計測され、その結果から、鋼板1に残存する残留応力分布が算出される。
通常、鋼板1に残留応力が存在した場合、製品の後加工(条切り)を行うと、変形が発生するため、熱間レベラ14や、多機能レベラ16を冷間レベラとして機能させ、圧延後の鋼板1を長手方向に順に曲げおよび曲げ戻しの変形を繰り返して加えることにより、鋼板内の応力状態を修正し、残留応力がほぼ0となるようにする。合わせて、鋼板1の形状を修正し、圧延後発生していた中波や耳波を無くすようにする。
【0045】
その後、鋼板1を本発明にかかる溶接用鋼板とするために、鋼板1を再度多機能レベラ16に導入するようにする。
詳しくは、多機能レベラ16の各分割バックアップロールの圧下量を個別に設定し、板幅方向の残留応力分布を図1(a)のように調整する。例えば、幅方向に5つの分割バックアップロールからなる場合、中央の1つ乃至3つの分割バックアップロールの圧下量を増やし、レベリングロール17による鋼板1中央の曲げ量が増えるようにする。かかる設定下の多機能レベラ16に鋼板1を通すことで、幅方向内部に圧縮の残留応力を付加できる。
【0046】
なお、図5(a)〜(c)に示されているような応力分布を付与する場合は、バックアップロールを10個程度の分割バックアップロールから構成し、圧縮応力を付与する位置に対応する分割バックアップロールのみを圧下させ、鋼板1に圧縮残留応力を付与するとよい。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0047】
すなわち、長手方向を向く溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力を付与し、溶接用鋼板の長手方向の収縮(板縮み)を抑制又は均一化するといった技術的思想を有するものは、本願発明に属する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布ならびに溶接後の収縮状態を示す概念図である(マクロ視)。
【図2】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布を示す概念図である(ミクロ視)。
【図3】シミュレーション実験における対象モデルを示す図である。
【図4】シミュレーション実験で得られた結果を示す図である。
【図5】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布を示す概念図である(別実施形態)。
【図6】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚12mm)。
【図7】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚16mm)。
【図8】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚22mm)。
【図9】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚28mm)。
【図10】溶接用鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚34mm)。
【図11】平均残留応力値と矩形変形度との関係を示した図である。
【図12】板厚と矩形変形度との関係を示した図である。
【図13】リブ条数と矩形変形度との関係を示した図である。
【図14】本発明の溶接用鋼板におけるリブ条数と矩形変形度との関係を示した図である。
【図15】圧延装置の概略図である。
【図16】従来例にかかる鋼板の残留応力分布ならびに溶接後の収縮状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1 溶接用鋼板
2 リブ
3 圧延装置
8 粗圧延機
11 仕上げ圧延機
12 加速冷却装置
16 多機能レベラ
17 レベリングロール(多機能レベラ)
18 バックアップロール(多機能レベラ)
W 溶接部
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、橋梁や船舶等の構造材としては、通常、厚鋼板と呼ばれる鋼板が用いられている。
かかる厚鋼板を製造する際には、熱間圧延機で所定寸法に圧延後、引き続いて、加速冷却装置での水冷による冷却処理を施す。しかしながら、熱間圧延時の温度や水冷開始温度の不均一、さらには、加速冷却装置の水冷ムラに起因する冷却不均一が発生し、それらを原因として冷却後の厚鋼板に残留応力が発生して、曲がりや波打ち等の形状不良になることがあった。
【0003】
残留応力が存在する厚鋼板であると、後加工により多数の条に切断して使用に供するような場合、厚鋼板内に不均一に分布した残留応力が切断によって開放され、条切断された鋼材が曲がってしまう「条曲がり(キャンバ)」という問題が起きていた。
このような「厚鋼板に発生した残留応力」をなくす技術としては、レベラにより、厚鋼板に曲げ歪を与える方法が採用されていた。熱間レベラは形状を矯正する能力は高く、冷間レベラは不均一な残留応力を除去する能力が高いため、矯正する必要のある厚鋼板の状況に応じて、熱間レベラ又は冷間レベラを選択し鋼板矯正を行っていた。
【0004】
一方、レベラ矯正を行った厚鋼板であっても、それらを橋梁や船舶等の溶接用の構造材(溶接用鋼板)として用いた場合には、溶接に伴う材料収縮が当該溶接用鋼板に発生し、その形状が大きく変形することが当業者の間では広く知られていた。
図16には、その変形の状況が示されている。例えば、特許文献1などの技術を採用して製造され鋼板長手方向の残留応力が板幅方向にほぼ0となっている溶接用鋼板を、橋梁や船舶等の構造材として用いることを想定し、その幅方向内部に対し長手方向(図の上下方向)にリブ取り付けの溶接を行うことを考える。
【0005】
その結果、図16(b)に示すように、溶接前には長方形であった溶接用鋼板が、3条の溶接後には、幅方向端部より中央部が長手方向に大きく収縮し、溶接用鋼板の上下辺が凹状に変形する。その理由は、溶接された部分に関しては、溶接時に一旦材料が溶融しその後再度凝固するが、その際に凝固部には材料収縮が発生して縮もうとするからである。
すなわち、条切断後の変形を抑制するために残留応力を略0とした厚鋼板であっても、それを溶接用鋼板として採用した場合、材料収縮に起因する変形が生じることがあり、非常に大きな問題となっていた。
【0006】
従来、このような変形を回避するために、当該変形を見越した寸法取りが行われているが、溶着するリブやフランジの形状により、溶接用鋼板の変形量は様々であって、予測が非常に難しかった。加えて、変形量が予測できたとしても、長方形から大きく変形した溶接用鋼板を互いに水平又は直角に付き合わせて溶接する場合、両鋼板間には大きな隙間(例えば3mm以上)が生じ溶接作業が困難となって、鋼板の切り直しを行う必要性が生じていた。特に、板厚が25mm以下の溶接用鋼板については、溶接に伴う材料収縮が大きく、切り直し加工がほとんどの場合必要とされていた。
【0007】
特許文献1には、上述した溶接時の変形に着目した技術が開示されている。この技術は、熱間レベラにより熱間矯正された厚鋼板の表面の温度分布を温度計により測定し、コンピュータにより厚鋼板の温度分布から残留応力分布等を演算し、この残留応力分布から溶接時の変形量のばらつきを表す所定のパラメータを演算するものとなっている。さらに、ユーザーの溶接条件等に応じてあらかじめ設定されている許容値とパラメータとを比較し、パラメータが許容範囲内にないときは、レベラや熱処理炉を用いて残留応力を低減させるものである。
【特許文献1】特開2001−316757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、溶接したときの変形量のバラツキが一定範囲内となるようにする技術であって、溶接に伴う変形量をゼロ若しくは最小にするためのものとはなっていない。仮に変形量のバラツキを一定範囲内とできたとしても、前述した如く、溶接後の変形が生じた鋼板を互いに付き合わせて溶接する場合、両者間に隙間が生じてしまえば、切り直し等の必要性が生じることは否めない。
【0009】
そこで、上記問題点を鑑み、本発明は、溶接後も矩形形状変化がほとんど生じない技術を明らかとし、その技術を適用した溶接用鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかる溶接用鋼板は、幅方向内部に長手方向を向く溶接が施される溶接用鋼板であって、前記幅方向内部に対しては予め圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に対しては予め引張の残留応力が付与されていることを特徴とする。
本願発明者らは、溶接後も矩形形状変化がほとんど無い溶接用鋼板(以下、鋼板と呼ぶこともある)を開発すべく、実験・研究を行い、溶接に起因する変形は、溶接が施される鋼板の内側に存在する残留応力が関係していると考えるに至った。
【0011】
そこで、まず、鋼板内の残留応力を熱的な方法で低減したり、熱間レベラや冷間レベラを用いてほぼ0まで均一化した鋼板を準備し、図1(b)のような条跡で溶接実験を行った。
その実験により、
(i)ほとんどの鋼板がその端部に比して、中央部の方が長手方向の収縮量が大きくなる、
(ii)鋼板間での収縮量のバラツキは、残留応力を低減した鋼板の方が一様に小さい、
との結果を得た。
【0012】
この結果より、本願発明者らは「溶接に伴う収縮量に対して、残留応力が何らかの関係で影響している」ことを突き止めるに至った。
次に、本願発明者らは、溶接後の鋼板の非変形度合い(溶接前に長方形状であったものが、溶接後もその形状を維持するか否か)という観点から溶接実験を行ってみた。その結果、残留応力を制御していない鋼板の幾つかは、残留応力を略0にコントロールした鋼板より、非変形度合いが優れていた。その好ましい性質を有する鋼板の残留応力分布を調査した結果、図1(a)の如く「鋼板の幅方向両端部に引張応力、幅方向内部に圧縮応力が残存している」であった。
【0013】
この結果に基づき、本発明にかかる溶接用鋼板を、溶接が施される幅方向内部に圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に引張の残留応力が付与されているものとしている。この鋼板は溶接後も形状変化がほとんど生じず矩形形状を維持する。
かかる残留応力分布は、鋼板に対してマクロ視的なものであるため、本願発明者らは、ミクロ視的な観点から検討を重ねた。その結果、リブやフランジ取り付けの溶接を行った際には、ガス炎やアーク放電により溶融した材料部分が冷えて再び凝固する際に収縮し、その収縮に起因する引張応力が発生し、鋼板の長手方向の変形が生じるというメカニズムを明らかにした。
【0014】
そこで、図2に示すように、溶接が施される部位の近傍に、前記引張応力に抗する圧縮の残留応力が予め付与されておれば良いとの考えに達し、このような残留応力分布を有する溶接用鋼板であれば、溶接後は、収縮変形は生じるものの矩形からの変形度が少ない(矩形形状を維持している)ことを明らかにした。
この考えに基づき、本発明にかかる溶接用鋼板を、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与されているものとしている。この鋼板は溶接後も形状変化がほとんど生じない。
【0015】
なお、本願発明者らはコンピュータシミュレーション実験などを通して、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から100mm以上離れた場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向両側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
【0016】
また、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm以内の場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
また、前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm〜100mmの場所に位置する場合、当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域及び溶接が施される部位の幅方向端部側であって50mm以上の領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaとするとよいことを明らかにしている。
【0017】
なお好ましくは、前記圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下とするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の溶接用鋼板を用いることで、溶接後の材料収縮を当該鋼板の板幅方向に沿って略均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる溶接用鋼板を、図を基に以下説明する。
図1,図2には、本発明にかかる溶接用鋼板1が示されている。
図1(a)に示すように、溶接用鋼板1(以下、単に鋼板と呼ぶこともある)は、幅方向断面の残留応力を計測した場合、幅方向内部に圧縮の残留応力が付与され、幅方向両側部に引張の残留応力が付与されているものである。その応力分布曲線は下に凸の台形状となっている。
【0020】
この鋼板1で規定される残留応力は、板厚方向の平均値であって、板厚方向の残留応力分布は如何様であってもかまわない。また、引張残留応力の積算値と圧縮残留応力の積算値とはほぼ等しく、鋼板1全体での残留応力値は略ゼロとなっている。
図2(a)には、このような残留応力分布を備える鋼板1の幅方向内部に対し、その長手方向(鋼板圧延方向)にリブ2を溶接した状況を示している。
【0021】
この状況をミクロ視したもの(溶接部W近傍のみを見たもの)が、図2(b)である。この図からわかるように、溶接部Wは、ガス炎やアークにより一旦溶融し、当初からあった圧縮残留応力がキャンセルされる。その後、溶融部Wが凝固するにつれ材料収縮が発生するが、かかる溶接部Wはその周囲の鋼板により拘束されているため、引張の残留応力が残存する部位となり、この材料収縮や残留する引張応力に起因して、鋼板の長手方向の変形が生じる。
【0022】
ところが、溶接部W(収縮部)の幅方向外側には、予め圧縮残留応力が付与されていて、前記材料収縮を起こさせない状況となっている。ゆえに、鋼板1全体としても長手方向の収縮は起こっていない。
[シミュレーション実験および結果]
次に、本実施形態の鋼板1に予め付与される圧縮残留応力の具体的な値について説明する。
【0023】
本願発明人らは、溶接時に変形の少ない鋼板を得るべく、熱弾塑性3次元FEMモデルを用いて、リブ溶接した際の鋼板1の変形挙動を詳細に調べてみた。
図3に示すように、モデル実験で用いた鋼板1のサイズは、厚さ16mm、幅2000mm、長さ500mmである。取り付けたリブ2の形状は、厚さ15mm、幅(高さ)150mm、長さ500mmであり、取り付けリブ数を1〜5本の範囲で可変とした。
【0024】
溶接が施される鋼板1として、(i)通常鋼(残留応力制御無し)、(ii)残留応力低減鋼(幅方向内部の残留応力値が5MPa)、(iii)無残留応力鋼(全く残留応力が存在しない理想的な鋼板)の3つを用いた。
リブ溶接の条件として、溶接による入熱量を1.7kJ/mm(320A×32V×24cm/min.)、溶接脚長(ウィービング幅)を8mmの一般的なものとした。この溶接条件は、鋼板の厚さやリブ2の厚みが変化してもほとんど同じである。
【0025】
この条件の下、リブ2を溶接した際に発生する残留応力の値や、リブ溶接後における溶接部Wの周囲への影響等を確認した。
その結果、
(i) リブ溶接によって、溶接部Wには約300MPaの引張残留応力が発生する
(ii) リブ溶接によって、初期残留応力が変化する領域(熱影響領域)はリブ溶接位置の両側±50mm
(iii) 溶接部Wの材料収縮が周囲に与える影響は圧縮応力の増加であり、リブ本数により、その影響度は変化する(6MPa/本)
以上のことを鑑み、本願発明者らは、溶接後に形状変化の少ない鋼板を得るための条件を、実験条件を変えてシミュレーションを行った。
【0026】
その結果、リブ溶接の位置が鋼板1の端部から100mm以上の内側(幅方向内部側)の場合、リブ溶接の位置を基準として、−100〜−50mm及び50〜100mmの領域(溶接部Wの両側50〜100mmの領域)において、予め圧縮の残留応力が付与され、その値が0MPa〜50MPaの範囲にあればよいことを突き止めるに至った。
ゆえに、図4(a)に示すような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、リブ溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。また、溶接部Wは、一旦溶融状態となり、残留応力がキャンセルされるため、図4(b)に示すように、リブ溶接位置の初期残留応力が−50MPa以下(例えば−70MPa)であっても構わない。しかしながら、リブ2が取り付けられる位置は厳密に定まっている訳ではないので、図4(a)の残留応力分布とすることが好ましい。
【0027】
リブ溶接の位置が、鋼板1の端部から50mm以内の場合、リブ溶接の位置より内部側(幅方向内部側)50〜100mmの領域に、予め圧縮の残留応力が付与されており、その値が0MPa〜50MPaの範囲にあればよいことを突き止めた。ゆえに、図4(c)に示す実線や破線のような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、リブ溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。
【0028】
また、リブ2の取り付け位置が、鋼板1の端部から50mm〜100mmの範囲にある場合、リブ2の取り付け位置より内部側(幅方向内部側)50〜100mmの領域に予め0MPa〜50MPaの範囲の圧縮の残留応力が付与されており、同時に、リブ2の取り付け位置より鋼板外側(幅方向端部側)50mm以上の領域に0MPa〜50MPaの圧縮の残留応力が予め付与されているとよいことを突き止めるに至った。ゆえに、図4(d)に示す実線や破線のような初期残留応力分布を有する鋼板であれば、溶接後に上記条件を満たすことになり、溶接後に形状変化が少ない鋼板となる。
【0029】
なお、溶接部Wは、一旦溶融状態となり、初期の残留応力がキャンセルされるため、図4(d)の実線の如く、リブ溶接位置の初期残留応力が−50MPa以下(例えば−70MPa)であっても構わない。
本願発明者らは、圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下であると非常に良好な結果(溶接の後の変形が少ない)を得ることができることを明らかにしている。
【0030】
以上述べた図4は、変形の少ない鋼板に初期に付与された残留応力分布をミクロ視したものであるが、図5には、初期残留応力分布をマクロ視したもの(鋼板の幅方向全体での分布)を記している。図1(a)も同様に初期残留応力分布をマクロ視したものである。
本願発明にかかる鋼板は、溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与され、図5(a)〜図5(c)に示すように、リブ2取り付け位置に対応して前述した条件を満たす圧縮応力(溶接部Wの両側50〜100mmの領域で0MPa〜50MPaの初期残留圧縮応力)が付与されている。加えて、鋼板1全体として残留応力の値が略0であるため、圧縮の残留応力を打ち消す引張の残留応力も付与されている。ゆえに、残留応力分布は幅方向に凸凹状となっている。
【0031】
しかしながら、鋼板1のどの位置にリブ溶接が施されるかは、本発明にかかる鋼板1を製造する時点では厳密にはわからないことが多い。これは、ユーザーで鋼板1のトリミング切断を実施する場合が大多数であり、工場出荷ままをそのまま部材として使用するケースは少ない等の事情によるためである。したがって、リブ2取り付け位置に対応して前述した条件を満たす圧縮応力が付与されていると共に、図1(a)のように、長手方向を向く溶接が施される幅方向内部に対しては圧縮の残留応力、幅方向両端部に対しては引張の残留応力となっている応力分布を備える鋼板1であることが非常に好ましい。なお、鋼板1の幅方向内部とは、リブ溶接が行われる部位のことであり、前述の如く鋼板1の端部から100mm以上の内側であってもよいが、鋼板1の端部から200mm以上の内側としても何ら問題はない。
【0032】
[残留応力測定の方法]
なお、鋼板1の残留応力を計測するにあたり、その測定方法は数々採用することが可能である。例えば、(i)対象とする鋼板に穴を穿ち、その部位に直接歪ゲージを貼り付け、この歪ゲージにより残留応力値を測定する方法(穿孔法)、(ii)熱間矯正が完了した時点における鋼板の表面温度分布と、冷間レベラによる押し込み量等とを基に、残留応力の板厚方向の平均値を求める方法などがある。
本実施形態では、穿孔法を用いて初期の残留応力を計測するようにしている。具体的には、対象鋼板の幅方向両端部から100mmピッチで分割試験片(条片)を考え、当該分割試験片の中心線上且つ長手方向の端部から、「鋼板を矯正した冷間レベラのロール中心間距離+100mm」の位置に歪ゲージを貼り付けるようにしている。
[実験例]
図6〜図10には、前述した条件を満たす残留応力分布が付与された鋼板1(本発明鋼1と呼ぶこともある)に対し、その長手方向に5条のリブ2を溶接で取りつけ、その時の板長手方向の矩形変形度δを求めた実験結果が示されている。なお、図6〜図10中の◆は穿孔法用いて実測した残留応力値であり、実線は鋼板1の温度分布や矯正条件を考慮して算出した計算残留応力値を示す。
【0033】
本発明鋼1は、各図(d)のようであって、幅方向両端部から100mm以上内側の残留応力値が、0MPa〜ー50MPaとなっている。比較例として、従来鋼(通常鋼であって残留応力の制御無し、各図(a))と、残留応力低減鋼(各図(b))と、通常矯正鋼(従来鋼をレベラー等で矯正した鋼、各図(c))にリブ溶接を施している。
リブ2を溶接した鋼板1は5種類あり、その板厚は12,16,22,28,34mmであって、幅は2000mm、長さ9000mmである。取り付けたリブ2の形状はシミュレーション実験と同様で、厚さ15mm、幅(高さ)150mm、長さ9000mmであった。
【0034】
鋼板1の矩形変形度δは、例えば、図1(b)の鋼板1において、上下(圧延方向)どちらか一方の縁部の収縮量を左右(幅方向)どちらかの一方の端面を基準として測定し、長さ10m当りの値に換算したものとする。本実験例では、矩形変形度δの上限値を1.2mmとする。なぜならば、溶接が可能な鋼板ギャップは約3mm(鋼板一枚あたりでは約1.5mm)ということが現場の実績より明らかとなっているからである。
【0035】
図6〜図10の結果からわかるように、全ての板厚において、本発明鋼1は、矩形変形度δが1.2mm以下となっていることがわかる。
幅方向中心部と両端部に圧縮応力が残存し、前記中心部と両端部との間の領域に引張応力が残存する従来鋼では、全ての板厚において1.5mm以上の矩形変形度δが生じ、溶接用としては不適切であることが明らかとなった。
【0036】
板幅方向において50MPa以下の残留引張応力が存在する残留応力低減鋼や通常矯正鋼では、矩形変形度δが1mm〜3mmとなり長手方向の収縮量が大きく、溶接用としては不適切である。
また、従来鋼等においては、幅方向内部の収縮量が両端部に比して非常に大きいものとなっている。一方、本発明鋼1では、幅方向での矩形変形度δは略同じ値であって矩形形状を維持しているため、当該本発明鋼1を付き合わせて溶接を行う場合に、付き合わせた鋼板1,1間の隙間が幅方向の位置によって異なるといった不都合が生じにくく、溶接が非常に行いやすい。
【0037】
本願発明者らは、以上の実験に加え、様々な板厚の本発明鋼1や、残留応力の分布形状は略同一であるものの応力値が異なる本発明鋼1に対して、長手方向に5条のリブ2を溶接で取りつけ矩形変形度δを求めた。その結果を、図11,図12に示している。
図11からわかるように、実用上問題ない矩形変形度δ(<1.2mm)となるためには、鋼板1の幅方向内部に付与された圧縮の残留応力が0MPa〜70MPa、好ましくは0MPa〜50MPaであるとよい。かかる点はコンピュータシミュレーションの結果と一致するものである。
【0038】
図12は、溶接実験の複数の結果を、平均残留応力が(i)−40〜−20MPa、(ii)−20〜0MPa、(iii)0〜20MPa、(iv)20〜40MPaの4種類に区分けして、その板厚と矩形変形度δとの関係を示した図である。この図から明らかなように、本発明鋼1に属する鋼板(幅方向内部の残留応力値が−50MPa〜0MPa、すなわち(i),(ii))であって板厚10mm以上であれば、確実に矩形変形度δが1.2mm以下となり、溶接に適する鋼板となる。
【0039】
加えて、幅方向内部の残留応力値が0〜20MPaであっても、板厚が25mm以上であったり、幅方向内部の残留応力値が20〜40MPaであっても、板厚が35mm以上であれば、確実に矩形変形度δが1.2mm以下となり、溶接に適する鋼板となることがわかった。
図13,図14は、本実施例の鋼板1、従来鋼、残留応力低減鋼と、通常矯正鋼の各々に2,3,5,7条(本)のリブ2を溶接で取りつけ、その時の板長手方向の矩形変形度δを求めた結果が示されている。
溶接で取り付けるリブ2の条数が増えるほど、全ての鋼板で矩形変形度δが増加しているが、本発明鋼1はその増加度合いが小さく、リブ2が7条以内であれば矩形変形度δが1.2mmを越えることはない。
【0040】
[鋼板の製造設備]
図15には、本発明にかかる溶接用鋼板1(厚鋼板)の圧延装置3の概略が示されている。この圧延装置3の上流側にはスラブ4を加熱する加熱炉5が備えられ、加熱炉5の下流側には一対のワークロール6,6と一対のバックアップロール7,7とを備える粗圧延機8が備えられている。さらに、粗圧延機8の下流側には、一対のワークロール9,9と一対のバックアップロール10,10とを有する仕上げ圧延機11が備えられている。
【0041】
仕上げ圧延機11の下流側には、仕上げ圧延機11で圧延が終了した鋼板1を冷却する加速冷却装置12(冷却装置)が設けられている。加速冷却装置12は、鋼板1に冷却水を吹き付けることで鋼板1を強制的に冷却し、所定の板温度を実現する。
加速冷却装置12の出側近傍には、放射温度計やサーモビュアなどの出側板温度計13が設置されており、鋼板表面の温度分布を計測可能となっている。これにより、冷却直後の鋼板1の表面温度分布を知ることができる。表面温度分布と鋼板1内の残留応力分布とは、所定の関係を有していることが過去の実績より明らかとなっているため、この計測結果より、鋼板1内の残留応力分布を推定できる。
【0042】
加速冷却装置12の下流側には、熱間レベラ14が設けられている。この熱間レベラ14は、上下に千鳥に配置された複数のレベリングロール15,15,・・・を備えている。
加えて、本圧延ラインとはオフラインの位置に、多機能レベラ16が設けられている。この多機能レベラ16は、上下に千鳥に配置された複数のレベリングロール17,17,・・・を備える構成であって、各レベリングロール17には、当該レベリングロール17をバックアップするバックアップロール18が配備されている。このバックアップロール18は、分割バックアップロール(図示せず)が軸心方向に複数(例えば3〜5つ)連なることで構成されており、圧下調整装置(図示せず)により、各分割バックアップロールを独立して圧下可能となっている。ゆえに、レベリングロール17の一部分のみを鋼板1側に押しつけ、鋼板1の一部形状を修正したり、鋼板1に幅方向の残留応力を付与したりできる。
【0043】
以上述べた圧延装置3を用いて、本発明に係る溶接用鋼板1を製造する手順を述べる。
まず、加熱炉5により、所定の温度(1200℃程度)に加熱されたスラブ4は、粗圧延機8を経て仕上げ圧延機11へと導入され、予め設定されたパススケジュールに則ってリバース圧延される。仕上げ圧延後の鋼板1は加速冷却装置12に導入され、例えば、冷却速度一定の条件下のもと、目標板温度まで冷却される。
【0044】
冷却された鋼板1は、出側板温度計13により表面温度を計測され、その結果から、鋼板1に残存する残留応力分布が算出される。
通常、鋼板1に残留応力が存在した場合、製品の後加工(条切り)を行うと、変形が発生するため、熱間レベラ14や、多機能レベラ16を冷間レベラとして機能させ、圧延後の鋼板1を長手方向に順に曲げおよび曲げ戻しの変形を繰り返して加えることにより、鋼板内の応力状態を修正し、残留応力がほぼ0となるようにする。合わせて、鋼板1の形状を修正し、圧延後発生していた中波や耳波を無くすようにする。
【0045】
その後、鋼板1を本発明にかかる溶接用鋼板とするために、鋼板1を再度多機能レベラ16に導入するようにする。
詳しくは、多機能レベラ16の各分割バックアップロールの圧下量を個別に設定し、板幅方向の残留応力分布を図1(a)のように調整する。例えば、幅方向に5つの分割バックアップロールからなる場合、中央の1つ乃至3つの分割バックアップロールの圧下量を増やし、レベリングロール17による鋼板1中央の曲げ量が増えるようにする。かかる設定下の多機能レベラ16に鋼板1を通すことで、幅方向内部に圧縮の残留応力を付加できる。
【0046】
なお、図5(a)〜(c)に示されているような応力分布を付与する場合は、バックアップロールを10個程度の分割バックアップロールから構成し、圧縮応力を付与する位置に対応する分割バックアップロールのみを圧下させ、鋼板1に圧縮残留応力を付与するとよい。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0047】
すなわち、長手方向を向く溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力を付与し、溶接用鋼板の長手方向の収縮(板縮み)を抑制又は均一化するといった技術的思想を有するものは、本願発明に属する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布ならびに溶接後の収縮状態を示す概念図である(マクロ視)。
【図2】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布を示す概念図である(ミクロ視)。
【図3】シミュレーション実験における対象モデルを示す図である。
【図4】シミュレーション実験で得られた結果を示す図である。
【図5】本発明にかかる溶接用鋼板の残留応力分布を示す概念図である(別実施形態)。
【図6】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚12mm)。
【図7】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚16mm)。
【図8】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚22mm)。
【図9】溶接を施した鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚28mm)。
【図10】溶接用鋼板の矩形変形量を示した図である(板厚34mm)。
【図11】平均残留応力値と矩形変形度との関係を示した図である。
【図12】板厚と矩形変形度との関係を示した図である。
【図13】リブ条数と矩形変形度との関係を示した図である。
【図14】本発明の溶接用鋼板におけるリブ条数と矩形変形度との関係を示した図である。
【図15】圧延装置の概略図である。
【図16】従来例にかかる鋼板の残留応力分布ならびに溶接後の収縮状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1 溶接用鋼板
2 リブ
3 圧延装置
8 粗圧延機
11 仕上げ圧延機
12 加速冷却装置
16 多機能レベラ
17 レベリングロール(多機能レベラ)
18 バックアップロール(多機能レベラ)
W 溶接部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与されていることを特徴とする溶接用鋼板。
【請求項2】
幅方向内部に長手方向を向く溶接が施される溶接用鋼板であって、
前記幅方向内部に対しては予め圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に対しては予め引張の残留応力が付与されていることを特徴とする溶接用鋼板。
【請求項3】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から100mm以上離れた場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向両側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項4】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm以内の場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項5】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm〜100mmの場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域及び溶接が施される部位の幅方向端部側であって50mm以上の領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項6】
前記圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の溶接用鋼板。
【請求項1】
溶接が施される部位の近傍に予め圧縮の残留応力が付与されていることを特徴とする溶接用鋼板。
【請求項2】
幅方向内部に長手方向を向く溶接が施される溶接用鋼板であって、
前記幅方向内部に対しては予め圧縮の残留応力が付与され、幅方向両端部に対しては予め引張の残留応力が付与されていることを特徴とする溶接用鋼板。
【請求項3】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から100mm以上離れた場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向両側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項4】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm以内の場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項5】
前記溶接が施される部位が、幅方向端部から50mm〜100mmの場所に位置する場合、
当該溶接が施される部位の幅方向内部側であって50mm〜100mmの領域及び溶接が施される部位の幅方向端部側であって50mm以上の領域に予め圧縮の残留応力が付与されていて、前記圧縮の残留応力の値が0MPa〜50MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接用鋼板。
【請求項6】
前記圧縮の残留応力のバラツキが±10MPa以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の溶接用鋼板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−167937(P2007−167937A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372617(P2005−372617)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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