説明

溶接領域の監視装置および監視方法

【課題】大量の詳細な情報および精密な溶接領域の映像の作成を可能とした溶接領域の監視装置の提供。
【解決手段】溶接対象となる部材14の溶接領域を監視するための装置2であって、該装置は、前記溶接領域を撮像するための手段3と、前記撮像手段3の中または前方に設けられた少なくとも1つのフィルタ4と、紫外線放射可能な前記溶接領域を照明するための手段5と、を備え、前記フィルタ4は、ほぼ紫外線波長範囲内の波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタから成り、前記撮像するための手段3は、前記フィルタリングされた紫外線放射に基づいて、溶接領域の映像を処理するように配置されており、前記映像から溶接幅を測定することに適した映像処理手段9と、前記溶接幅を用いて溶接パラメータの制御を行う制御手段10と、をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接と関連して部材の溶接領域を監視する装置に関し、この装置は、溶接領域を撮像(再生)するための手段と、撮像手段(再生手段)の中または前方に設けられた少なくとも1つのフィルタと、紫外線放射可能な溶接領域を照明するための手段とを備える。本発明はまた、溶接領域を監視する方法に関する。例えば、前記撮像手段は、ビデオカメラ、とりわけCCD(Charge Couple Device)型式から成り、作成された映像(イメージ、画像)は、テレビモニタに最適に表示される。
【0002】
本発明は、更に溶接のための手段と、前述の監視装置と、撮像手段によって得られた映像を処理するための手段と、1つ以上の溶接パラメータおよび/または溶接ヘッドの位置を映像からの情報に基づいて制御するための手段とを含む溶接作業を制御するための装置に関する。更にまた、本発明は溶接作業を制御する方法に関する。
【0003】
高品質な溶接物を得るためおよび溶接実施のコストを削減するために、今日ではオートメーション化された溶接が使用され、そこでは、様々な種類のセンサが、溶接処理過程を制御するための基準として、例えば、溶接の前に溶接の接合部(ジョイント、継ぎ目)の位置や、隙間、そして、一緒に溶接されるパーツ間の不整列、または溶接の接合部の幅が測定される。それに、溶接領域の映像を作成するためのビデオカメラ、例えばアナログまたはデジタルCCDカメラを使用することが既に公知となっている。またリアルタイム映像処理プログラムを有するコンピュータが使用され、それはカメラに接続されており、これにより映像の自動測定が可能となる。測定された情報を用いて、溶接ロボットまたは溶接装置は制御され、溶接処理過程をオンラインで制御することが可能となる。
【0004】
アーク(電弧)からの光および溶融からの熱放射(黒体放射)は、カメラで溶融や溶融の詳細を見たり、検出したりすることを可能とするために、減らさなければならない。さもなければ、カメラにより作成される映像は、アークおよび溶解周辺の極めて明るい領域に曝されるために不規則になる。既に周知のシステムには、大量の詳細な情報を有する溶接領域の明確な映像を作成するという課題がある。
【0005】
既に公知である溶接領域を監視するこの種の装置は、特許文献1に記載されている。それには、溶接領域を照らすために紫外線放射を発するストロボスコープが使用され、更にまた、カメラが溶接領域を撮像するために配置されており、カメラのシャッタがストロボスコープに同期されている。
【特許文献1】特願平11−187111号
【発明の開示】
【0006】
本発明の第1の目的は、既に周知の技術に関して、大量の詳細な情報および/または精密な溶接領域の映像の作成を可能とした溶接領域の監視装置を提供することである。
【0007】
この目的は、フィルタが、ほぼ紫外線波長範囲内の波長がフィルタリングされることに適したバンドパスフィルタから成ることにより達成される。例えば、この種の装置は、溶接処理過程を管理し、そして、循環フロー、溶融から固体材料への相転移、材料上の溶融の隆起と幾何学的な形状、スラグ生成物の存在、更にまた酸化の発生のような溶融で生じる特殊な現象、および詳細に溶融を検査するために使用することができる。監視/管理される溶接領域は、例えば、溶接される接合部、溶融および固化した溶接部の一つ以上から成ることができる。
【0008】
本発明の好ましい実施例によれば、前記フィルタ波長が、照明手段が放射する光の波長をほぼ中心としている。例えば、発光源として水銀灯が使用される。水銀スペクトルは、特定の波長に位置する多数のスペクトル線を有し、そして、これらの1つ以上にフィルタ波長が集中している。
【0009】
本発明の好ましい実施例によれば、前記波長が、280〜450nm(ナノメートル)の波長範囲内にあり、またこの実施例の広義には、紫外線の範囲、すなわち約380および450nm間の範囲に近接する短波可視波長の範囲の一部が含まれる。そして、可視範囲(可視光線の範囲)を超える約300および380nm間の紫外線波長範囲以上をフィルタリングするためのバンドパスフィルタで非常に良い結果が達成されることが分かっている。特に良い結果は、ほぼ365nmの波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタと、ほぼ320nmの波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタとで成し遂げられる。
【0010】
本発明の他の好ましい実施例によれば、バンドパスフィルタが、狭帯域をフィルタリングすることに適している。バンドパスフィルタが、前記フィルタ波長を90nmFWHMよりも小さい範囲内でフィルタリング、更に好ましくは、ほぼ10nmFWHMの範囲内でフィルタリングすることに適している。FWHMは、広く一般に認められたバンドフィルタの幅の単位であって、半値全幅を表す。
【0011】
本発明の第2の目的は、従来技術に対して、より高い溶接品質を有する溶接物を十分に供給できる溶接作業の制御装置を提供することである。
【0012】
この目的は、溶接領域を撮像するための手段と、撮像手段の前方または中に設けられた少なくとも1つのフィルタと、紫外線放射可能な溶接領域を照明するための手段とを備え、前記フィルタが、ほぼ紫外線波長範囲内の波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタから成る装置により達成される。また、この装置は、撮像手段によって得られた映像を処理するための手段と、1つ以上の溶接パラメータおよび/または溶接手段の溶接ヘッドの位置を映像からの情報に基づいて制御するための手段とを備える。
【0013】
好ましい実施例によれば、映像処理手段が、映像から溶接幅を測定することに適しており、溶接パラメータは、その後この溶接幅から制御される。
【0014】
本発明の第3の目的は、既に周知の技術に対して、大量の詳細な情報および/または精密な溶接領域の映像の作成を可能とした溶接領域の監視方法を提供することである。
【0015】
この目的は、溶接領域が紫外線放射で明るくされ、溶接領域が撮像され、フィルタをかけられた前記撮像手段の方向に向く溶接領域からの放射(光)を、バンドパスフィルタによって、ほぼ紫外線波長の範囲内の波長でフィルタリングすることにより達成される。
【0016】
本発明の第4の目的は、既に周知の技術に対して、より高い溶接品質を有する溶接物を十分に供給できる溶接作業の制御方法を提供することである。
【0017】
この目的は、溶接領域が紫外線放射で明るくされ、溶接領域が撮像され、フィルタをかけられた撮像手段の方向に向く溶接領域からの放射(光)が、バンドパスフィルタによって、ほぼ紫外線波長の範囲内の波長でフィルタリングされ、そして、撮像手段によって得られた映像を処理し、1つ以上の溶接パラメータおよび/または溶接ヘッドの位置を映像からの情報に基づいて制御することにより達成される。
【0018】
本発明の更なる好ましい実施例および効果は、他の請求項および以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
添付図面に示される例証的な実施例を参照して、以下に本発明をより詳細に説明する。
【0020】
図1および図2は、溶接作業の制御装置1の第1実施例を示す。制御装置1は、部材14の溶接領域を監視するまたは管理する装置2から構成されており、この監視装置は、順番に溶接領域を撮像(再生)するための手段3を含み、この撮像手段(再生手段)は、カメラと、カメラのレンズ15の前に配置されたバンドパスフィルタ4と、紫外線放射可能な溶接領域を照明のための手段5とからなる。撮像手段3および照明手段5は、溶接ロボットの形状を成す溶接手段7と同じ側に配置される。そして、より詳しくは溶接方向の溶融22の後方に配置される。前記部材14は、例えば一緒に溶接される2枚のプレートからなり得る。
【0021】
フィルタ4は、溶接棒(電極)、アーク(電弧)、溶融からの放射(光)および反射といった溶接領域から発せられる放射(光)から生じる特定の波長を分離することに適している。フィルタ4は、紫外線範囲内の特定の波長をフィルタリングするための狭帯域干渉フィルタから成る。したがって、溶接領域が紫外線放射で明るくされるために、同時にカメラが狭帯域紫外線範囲内の放射(光)のみを記録する。より詳しくは、フィルタ波長が、照明手段が発する放射(光)の1つ以上の波長をほぼ中心とすることに適している。
【0022】
照明手段5は、照明のためのノズルまたは放出口から成り、それは、例えば繊維導線13などの光学光導体(光ファイバー)を介して紫外線源12に連結され、適切な角度で溶接領域を照明することに適している。
【0023】
第1実施例によれば、撮像手段3および照明手段5は、実質的に並列および互いに近接して配置されている。
【0024】
監視装置はまた、カメラによって作成された溶接領域の映像を表示するための手段6を含んでおり、この手段は、テレビモニタまたはディスプレイ装置からなる。テレビモニタを用いて、溶接手順の詳細な視覚化は成し遂げられる。したがって、カメラ3は、テレビモニタ6に接続される。
【0025】
カメラ6は、例えばCCDカメラまたはCMOS(Charge Metal Oxide Conductor)カメラなどの小型ビデオカメラから構成されることが適している。制御装置1はまた、溶接ヘッド11を含む溶接ロボットからなる、前記溶接手段7を備えている(図2参照)。
【0026】
制御装置1はまた、カメラ3によって作成される映像を処理するための手段9を備えており、この手段は、中央処理装置(CPU)またはコンピュータを含む。制御装置1はまた、1つ以上の溶接パラメータおよび/または溶接ヘッド11の位置を映像からの情報に基づいて制御するための手段10を備えている。したがって、中央処理装置9は、カメラ3および溶接ロボット8の制御手段10に接続される。
【0027】
中央処理装置9は、映像処理のため、より詳しくは映像から直接的に溶接の幅を測定するためにソフトウエアを備えている。これは、通常リアルタイム映像演算処理システムと称する。溶接の幅が提案された方法によって測定されるときに、判断に使用されるのは、エッジ(縁部)検出アルゴリズム、または、その他のタイプの映像処理アルゴリズムであり、それは、コントラスト差を溶接幅の測定のために利用する。この場合に、材料特性および溶接中に材料上に現れる酸化は、映像のコントラスト差を作り出す観点から良好な結果をもたらす。これは、特にステンレス鋼(例えば316L)を溶接するときに指標となる。
【0028】
より具体的には、コンピュータ9は、測定された溶接幅(Wi)を名目上の溶接幅(Wr)のための基準値と比較して、偏差(e)を測定された溶接幅および前記基準値の差分(e=Wr−Wi)として算出する。偏差の値は、それから溶接ロボット8の制御手段10に送られる。測定された溶接幅、または、より詳しくは前記算出偏差(e)を基礎として、特定の溶接パラメータ、例えば、溶接速度、溶接電流および溶接電圧および/または溶接ヘッド11と溶接される部材14との間の間隔などが制御される。この場合は、溶接幅はオンラインで測定され、そして、溶接浸透は測定された溶接幅を基礎として直接制御される。
【0029】
本発明は、アーク溶接、特に、GTAW(ガス・タングステン・アーク溶接)とも称する、TIG溶接(タングステン不活性ガス溶接)の監視および制御を主な目的とするが、エネルギー供給が行われるその他の融合溶接方法にも使うことができる。例えば、赤外線を有するガス炎またはレーザー溶接、または、他のスペクトル範囲の電磁放射、荷電粒子または、電気加熱または音響加熱といった他のエネルギー供給によっても使用することができる。本発明は、様々な材料、例えばステンレス鋼やインコネル718およびグリークアスコロイ(Greek-Ascoloy)を溶接するために適しているが、いかなる形であれこれらの材料に限られるものではない。図1〜6には、充填部材なしで溶接が行われる場合についての本発明が示されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、充填部材を用いる溶接にも適用することができる。
【0030】
狭帯域フィルタリングと組み合わせて紫外線放射を出力することによって、従来技術に対して、改良された画質を有する映像の均一な表示を得ることができる。紫外照明および同時にフィルタリングを組み合わせることでの更なる効果は、アーク(電弧)および溶融からの大多数の紫外線放射がフィルタリングされるということであり、それは、カメラを飽和状態にさせる溶融からの放射(光)のない溶接電極の溶融を(減衰フィルタと組み合わせて)純粋に見る機会を与える。これは、溶融および溶接幅の幾何学的な範囲を測定することを可能にする。紫外線照射の更なる効果は、溶融および固化領域における映像のコントラストおよび大量の細部がかなり増加されるということである。
【0031】
ここで、カメラ3は、280nm以上の波長にスペクトル感度を有するCCDカメラからなる。カメラは内蔵型自動利得制御(AGC)を有しており、そして、狭帯域干渉フィルタ4は受像レンズ15の前に配置される。あるいは、フィルタはレンズおよびカメラ検出器の間に配置することもできる。更なる変形例または補足として、カメラは適切な露出を与える開口(虹彩)を備えている。第1実施例によれば、絞り16は、虹彩絞りの形で露出および映像の被写界深度を制御するためにカメラの前に配置されている。絞りの直径は、例えば、範囲0.5〜2.0mm(ミリメートル)の範囲で変化させることができ、そして、1.4mmの直径が溶接幅を測定することに適することがわかった。レンズの焦点距離は、8〜15mmの範囲が好ましく、12mmの焦点距離が良い結果をもたらした。尚、この実施例は、絞りおよびレンズの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
カメラ3および照明手段5は、ホルダーまたはフレームを介して溶接ヘッド7に最適に取り付けられている(図示略)。カメラ3は、後方から溶接溶融の方向を見ることができ、そして、溶接ヘッドに対して適切な角度は、好ましくは10〜80°、第1実施例によれば約70°となっている。尚、本発明は、いかなる手段であってもこれに限られておらず、例えば、カメラを正面から又は側面から、10〜80°の最適な角度で溶接溶融を見るために配置することもできる。
【0033】
変形例または補足によれば、記載されている溶接幅の測定に、接合部の追跡のための装置を使用することもできる。第1実施例の第1の変形例によれば、装置が接合部の追跡の用途にだけに使うことができる。本出願において、接合部の追跡のためのカメラは、移動を意図する方向の溶接ヘッドの前に取り付けられ、溶接領域の方向を見るようになっている。照明手段は、カメラと同じ溶接領域の側、すなわち溶接領域の前に配置されている。第1実施例の第2の変形例によれば、溶接幅の測定は、接合部の追跡と組み合わせて行われる。それから装置は、第1の変形例によるカメラおよび照明手段の相対的な位置合わせに使用される。したがって、溶融の接合部および前方部分と全く同一の映像を検出することができる。映像における接合部の位置を測定し、これを溶融の位置と比較することによって、それが接合部に続くように、映像演算処理システムによりリアルタイムに溶接を制御することが可能になっている。また、この手段は、溶融に直接的に近接した溶接されるプレート間の隙間を測定するために使うことができる。
【0034】
紫外線源12は、280〜450nmの範囲、特に280〜380nmの範囲、好ましくは320〜380nmの範囲の放射(光)の放出に適している。ここでは、紫外線源12は、水銀灯で構成されている。水銀のスペクトルは、302nm、313nm、334nm、365nm、405nm、435nmの波長に位置する多くの強く発する紫外線スペクトル線を有する。
【0035】
紫外線発光源12はまた、紫外線がよくカメラの撮像部域を満たし、様々な角度に適用できるように構成されており、好ましくは光(紫外線)の量がCCDカメラの方向に最大になるよう構成されている。このようにして、映像中の部材の光の強度(有益な信号)は、周囲の背景レベル(アークおよび溶接溶融からの光および反射)に関して増加し、そして、このようにして、より均一な露出レベルは、溶接溶融およびその周囲の状況に関する非常に詳細な情報を有する映像を得られるようにする。
【0036】
前述したある特定のスペクトル線をフィルタリングすることによって、非常に良い結果が得られるということがわかった。干渉フィルタは、それがフィルタのバンド幅に基づいて、これらスペクトル線のうちの1本以上の放射(光)を通過させるために、対象となるバンド幅を有している。第1に365nmのスペクトル線が使用される。水銀スペクトルは、この波長でピークに達する強力な光を有している。この波長が可視範囲に比較的近い位置にあり、カメラの構成部分が溶接領域の良い撮像を行うように、カメラは同時に高い感度を有している。
【0037】
更に、スペクトル範囲の低い部分で、すなわち350nmより短い波長でのフィルタリングによって、非常に良い結果を得られることが分かった。この範囲において、アーク(電弧)および溶融によって映像中に発生する非常に明るい領域の影響は減少する。330nmより短い波長で特に良い結果が得られる。第2に320nmのフィルタリングが使用される。フィルタリングは、好ましくは290nmより長い波長で、特に好ましくは、ほぼ300nmまたはそれより長い波長で実行される。前記フィルタリングのための好適な波長は、300から370nmの紫外線範囲内にある。
【0038】
バンドパスフィルタはまた、狭帯域フィルタリングに、より詳しくは、前記波長周辺の90nmFWHMより小さい範囲内のフィルタリングに適している。溶接炎のアークからも紫外線範囲の光が発せられるためフィルタは狭帯域幅を有している。バンドパスフィルタは、前記波長周辺で70nmFWHMより小さく、とりわけ50nmFWHMより小さく、特に30nmFWHMより小さい範囲内でのフィルタリングに適していることが好ましい。バンドパスフィルタは、とりわけ20nmFWHMより小さく、特に、およそ10nmFWHMの範囲内でのフィルタリングに適しており、しかもまた、5nmFWHMのようなより小さい範囲内でのフィルタリングも可能となっている。
【0039】
従って、波長および帯域通過(バンドパス)の多数の異なる組合せも考えられる。第1の好ましい実施例によれば、365nm波長および10nmFWHMを備えたバンドパスフィルタが用いられている。第2の好ましい実施例によれば、320nm波長および10nmFWHMを備えたバンドパスフィルタが用いられている。第3の好ましい実施例によれば、402nm波長および10nmFWHMを備えたバンドパスフィルタが用いられている。
【0040】
フィルタ4はまた、照明手段が照らすことに適した波長範囲に合わせて調整され、特定の波長帯域の範囲内でフィルタリングすることに適している。逆にいえば、特定の選択されたフィルタを、出力される放射(光)によって補うこともできる。従って、発せられた光とフィルタの波長範囲の多数の異なる組合せが考えられる。
【0041】
良い結果を得られたバンドパスフィルタの更なる実施例は、以下の通りである。300nm(10nmFWHM)、310nm(10nmFWHM)、330nm(10nmFWHM)、342nm(10nmFWHM)、400nm(25nmFWHM)、402nm(36nmFHWM)、419nm(10nmFWMH)。
【0042】
溶接領域の映像から多くの情報を得て、この情報に基づいて溶接パラメータおよび/または溶接ヘッド11と溶接される部材14との間の間隔を制御することができる。溶接幅だけでなく、この種の情報の実施例は、以下の通りである。溶融の幅、溶融のジオメトリ(外形)または形状(すなわち楕円形、表層平滑性など)、アーク(電弧)の特性(アークの幅や突出サイズなど)、およびそれらの位置、そして、溶融で生じ得る渦の流れの状態など。
【0043】
図3は、照明手段(光導体)5、バンドパスフィルタ4および撮像手段(カメラ)3を備えた装置の第2の好ましい実施例を例示する。ここでカメラ3は、光導体5に対して溶接手段7の反対側に配置されている。カメラ3および光導体5はまた、概略的に図示するホルダーまたはフレーム23を介して溶接ヘッド7に取り付けられている。溶接手段7は、図中右側方向に、すなわち溶接される接合部に沿って移動するようになっており(矢印17参照)、光導体5およびカメラ3は、溶接領域における溶接の前後でそれぞれ移動する。
【0044】
カメラ3およびバンドパスフィルタ4の間には、カメラから順に、レンズ15、絞り16、更なるフィルタ18(好ましくは減衰フィルタの形態)が配置されている。第2の実施例に記載の絞り16は、第1実施例に記載の絞りと関連して、好ましくは直径1mmより小さく、最適には0.5〜1.0mmの範囲のかなり小さな開口を有している。減衰フィルタは、ND(ニュートラル・デンシティ)フィルタタイプを用いて、最適には0.5〜3.0の密度係数を有している。この種のNDフィルタは、バンドパスフィルタを通過する全ての波長を同じ程度に減衰させる。NDフィルタのおかげで、アークを通して正確に見ることが可能になり、溶融のジオメトリ(外形)の状態と、発生する溶融現象の調査は向上することとなる。
【0045】
ここで、カメラ3および照明手段5は、それらが実質的に垂直に伸びるように配置され、それは、実質的に表面に対して直角および溶接ヘッド7と平行になっている。従って、紫外線は照明手段から垂直に下方へ発せられる。第1の鏡20が、照明手段5の下方に配置され、そして、適切な角度で、好ましくは第1の鏡の角度が、溶接領域によって反射される紫外線照明がカメラに反射する角度と同じまたは近い角度で傾けられる。これに対応する方法で、第2の鏡21が、カメラ3の下方に配置され、紫外線照明が溶接領域によって反射されてカメラに反射するために適切な角度で傾けられる。この第2の実施例では、カメラ3および照明手段が、溶接ヘッド7に接するか、または、溶接ヘッド7に沿って配置され、比較的コンパクトな装置を提供している。
【0046】
照明手段5からの紫外線は、カメラに向かって比較的小さい角度で、実質的には、カメラの視野角度と同様に、または、表面とほとんど平行に、最適には10〜40°、好ましくはおよそ20°で、溶融領域において反射される。これは、溶接電極およびアークから反射された放射の非常に低い背景レベルを有する溶融のジオメトリ(外形)の非常に良い映像を提供する。
【0047】
この監視装置を用いて、例えば、幅および溶融の幾何学的な形状を測定または管理することができる。そしてそれは、ドロップ形状、楕円形状または円形の形状などを測定することができる。更に、溶融の表層を監視して、溶融の表面の流れ、例えば渦巻を測定することができ、そして、処理変化(プロセスバリエーション)、振動などを管理することができる。また、アークからの圧力によって生じる表面の低下および/またはゆがみを測定することができる。更に、溶融のダイナミックな反応をみることができる。従って、溶融に関する多くの情報を得ることができ、そして、この情報に基づく判断が溶接処理について出される。カメラが溶接の前方に配置されるときに、溶接の前方での接合部の位置を検出することができ、そして、この情報から溶接ヘッドの位置を変化させることができる。
【0048】
従って、溶接処理は、溶解した領域からの情報に基づいて直ぐに早い段階で調整され得る。
【0049】
このカメラ3の比較的小さい角度、および表層と関連する照明手段5で、特に、溶融の幅および位置または溶融の循環フロー渦の回転速度が非常に正確に測定され、または少なくとも管理される。
【0050】
溶融の表層上の流れが視覚化されるため、溶接する材料に存在したり、若しくは加えられる粒子/スラグ/不純物の視覚化に有利である。
【0051】
装置は、アークの特性に関する情報に基づいて、溶接処理を制御するために使うことができる。例えば、アークの横方向の範囲または突出されたサイズから、溶接処理の溶接パラメータを構成することができる。また、溶融において観察される流れ現象を制御パラメータとして使用することができる。例えば、溶融の循環渦の位置および/または回転速度を使うこともできる。
【0052】
この実施例の変形例によれば、溶接ロボットが、矢印17に対して反対方向に、すなわち図中の左方向に移動される。そしてカメラ3は前方から溶融を観察するようになっている。前述の情報に加えて、それから更に接合部の位置および、溶接の位置が監視できる。同時に、溶接するために溶融に関する接合部の位置およびプレート間の隙間を測定することができる。
【0053】
図4は、本発明の第3の実施例を例示する。本実施例における第2の実施例との違いは、照明手段5およびカメラ3が、表面に対して比較的小さい角度で、最適には10〜40°、好ましくは、およそ20°で配置されているということである。照明手段5は、中間の鏡なしで直接溶接領域を照らし、そして、カメラ3は、中間の鏡なしで直接溶接領域の方を向いている。
【0054】
図5は、本発明の第4の実施例を示す。本実施例における第3の実施例との違いは、照明手段5およびカメラ3が、表面に対して比較的大きな角度、最適には45〜85°、好ましくは、およそ65°で配置されているということである。この比較的大きな角度で、カメラ3および照明手段5は、表面に対して、特に溶融の形状(楕円形など)およびサイズ(表面積)を、非常に正確に測定することができる。
【0055】
図6は、本発明の第5の実施例を示す。本実施例における第3の実施例との違いは、照明手段5およびカメラ3が、溶接される接合部の別々の側方に配置されているということである。したがって、カメラ3は溶接方向に対して90°で、実質的に側方から接合部の方を見るために配置されている。側方から溶接領域を照らすために、照明手段5は、溶接方向に対して90°で、実質的に接合部の反対側に配置されている。溶接手段7は、溶接中、溶接領域の別々の側方に光導体5およびカメラ3と共に、前方に、すなわち図中上方に移動するようになっている。このような方法で、溶融の範囲および溶融の形状を正確に認識して情報を得ることができる。
【0056】
中心装置9は、メモリ(記憶装置)を備え、それは、プログラムが動くときに、測定方法を実行するためのコンピュータプログラムセグメントまたはプログラムコードを有するコンピュータプログラムを含んでいる。このコンピュータプログラムを、伝達信号によるさまざまな手段で、例えば、他のコンピュータからダウンロードしたり、導線および/または無線を介したり、または組込式の記憶回路により、中心装置9に送ることができる。特に、伝達信号は、インターネットを介して送ることができる。
【0057】
本発明はまた、プログラムが動くときに、測定方法を実行するためのコンピュータプログラムセグメントを含むコンピュータ可読手段に記憶されたコンピュータプログラム製品にも関する。例えば、コンピュータプログラム製品はディスケットで構成することができる。
【0058】
紫外線発光源は、連続的に照明を出力するために構成されている。
【0059】
本発明は、前記した例証的な実施例に制限されると見なされてはならず、数多くの更に他の変形例および改変が、特許請求の範囲内において考えられ得る。例えば、前記した実施例(単数または複数)を1つ以上組み合わせて用いることができる。そして、例えば照明およびカメラを双方とも溶接手段7の両側に配置することもできる。
【0060】
カメラ3によって作成される映像を処理するための前記手段9および1つ以上の溶接パラメータを制御するための前記手段10は、同じ1つの装置、例えばコンピュータで構成することができる。
【0061】
他の紫外線発光源として、レーザー放射または他の種類のポテンシャル紫外線エミッタを、放射のために使うことができる。
【0062】
溶接手段7が、必ずしも溶接ロボットを含む必要はなく、変形例によれば、自立的に機能することのない従来の溶接装置を用いることが可能である。
【0063】
監視装置は、様々な溶接パラメータまたは制御される溶接手段の動作を伴わず、単独で使用することができる。すなわち監視することのみ、または管理することのみ、または発生する溶接領域および現象を調査することのみの用途に使用できる。
【0064】
前記実施例によれば、1本のスペクトル線を対象とした狭帯域バンドパスフィルタが使用されていたが、代わりに、多くのスペクトル線を通過させる広帯域のフィルタを使用することが可能である。これの1つの効果は、溶接領域に対する総放射力が増加するということである。同時に、しかし、フィルタを通過する好ましくない背景放射の量も増加する。
【0065】
第2の実施例によれば、絞り16が別部材となっている。しかし一部のカメラにおいて、絞り(開口)はレンズに組み込まれており、これもまた、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施例における溶接作業を制御する装置を示す概略図である。
【図2】図1における溶接ヘッド、カメラおよび発光源の相対的な位置決めを示す拡大図である。
【図3】第2実施例における溶接作業の制御装置を示す、図2に対応した図である。
【図4】第2実施例の変形例を示す、第3、第4および第5実施例における溶接作業の制御装置を示す図である。
【図5】第2実施例の変形例を示す、第3、第4および第5実施例における溶接作業の制御装置を示す図である。
【図6】第2実施例の変形例を示す、第3、第4および第5実施例における溶接作業の制御装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象となる部材(14)の溶接領域を監視するための装置(2)であって、該装置は、前記溶接領域を撮像するための手段(3)と、前記撮像手段(3)の中または前方に設けられた少なくとも1つのフィルタ(4)と、紫外線放射可能な前記溶接領域を照明するための手段(5)と、を備え、前記フィルタ(4)は、ほぼ紫外線波長範囲内の波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタから成り、前記撮像するための手段(3)は、前記フィルタリングされた紫外線放射に基づいて、溶接領域の映像を処理するように配置されており、前記映像から溶接幅を測定することに適した映像処理手段(9)と、前記溶接幅を用いて溶接パラメータの制御を行う制御手段(10)と、をさらに備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記制御するための手段(10)が、測定された溶接幅を基礎として、溶接浸透を直接制御するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
溶接対象となる部材(14)の溶接領域を監視するための装置(2)であって、該装置は、前記溶接領域を撮像するための手段(3)と、前記撮像手段(3)の中または前方に設けられた少なくとも1つのフィルタ(4)と、紫外線放射可能な前記溶接領域を照明するための手段(5)と、を備え、前記フィルタ(4)は、ほぼ紫外線波長範囲内の波長をフィルタリングすることに適したバンドパスフィルタから成り、前記撮像するための手段(3)は、前記フィルタリングされた紫外線放射に基づいて、溶接領域の映像を処理するように配置されており、前記映像から情報を得ることに適した映像処理手段(9)と、前記情報を用いて溶接パラメータの制御を行う制御手段(10)と、をさらに備えることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
前記情報が、溶融の幅と、溶融の形状と、溶融内にある渦の流れの状態と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
溶接と関連する部材(14)の溶接領域の監視方法であって、前記溶接領域が紫外線放射で明るくされ、前記溶接領域が撮像され、フィルタをかけられた前記撮像手段(3)の方向に向く前記溶接領域からの放射を、バンドパスフィルタ(4)によって、ほぼ紫外線波長の範囲内の波長でフィルタリングするようになっており、前記撮像するための手段(3)は、前記フィルタリングされた紫外線放射に基づいて、溶接領域の映像を処理するようになっており、映像処理手段(9)が前記映像から溶接幅を測定するとともに、制御手段(10)が前記溶接幅を用いて溶接パラメータの制御を行うことを特徴とする監視方法。
【請求項6】
前記測定された溶接幅を基礎として、溶接浸透を直接制御するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の監視方法。
【請求項7】
溶接と関連する部材(14)の溶接領域の監視方法であって、前記溶接領域が紫外線放射で明るくされ、前記溶接領域が撮像され、フィルタをかけられた前記撮像手段(3)の方向に向く前記溶接領域からの放射を、バンドパスフィルタ(4)によって、ほぼ紫外線波長の範囲内の波長でフィルタリングするようになっており、前記撮像するための手段(3)は、前記フィルタリングされた紫外線放射に基づいて、溶接領域の映像を処理するようになっており、映像処理手段(9)が前記映像から情報を得るとともに、制御手段(10)が前記情報を用いて溶接パラメータの制御を行うことを特徴とする監視方法。
【請求項8】
前記情報が、溶融の幅と、溶融の形状と、溶融内にある渦の流れの状態と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−107024(P2009−107024A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326132(P2008−326132)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【分割の表示】特願2003−583692(P2003−583692)の分割
【原出願日】平成15年3月4日(2003.3.4)
【出願人】(500204267)ボルボ エアロ コーポレイション (26)
【Fターム(参考)】